交通事故被害車両の修理費の損害賠償額はどう決まる?

交通事故被害車両の修理費の損害賠償額はどう決まる?

交通事故で自動車が損傷したとき、修理費の損害賠償額はどう決まるのか?損傷の事故起因性(便乗修理)や修理の必要性・相当性(過剰修理)で揉めたときの立証方法とは?

※当サイトでは記事内にアフィリエイト広告を含む場合があります。

 

交通事故による被害車両の修理費は、必要かつ相当な範囲で損害賠償を受けられます。必要かつ相当な修理費とは、どのような金額で、どうやって決まるのか、どう主張・立証すればよいのか、見ていきましょう。

 

損害と認められる修理費

被害車両の修理費については、必要かつ相当な修理費が損害として認められます。また、修理費の損害賠償額には上限があり、それは事故時の車両価額(車両時価額)です。修理費が車両時価額を超える場合は、車両時価額が損害賠償額となります。

 

つまり、車両損害については、修理費か車両時価額のいずれか低い方の金額を賠償すればよいルールです。例えば、実際の修理費が100万円であったとしても、車両時価額が50万円であれば、損害賠償を受けられるのは50万円です。

 

修理費が車両時価額を超える場合を「経済的全損」といいます。古い車両の場合は、車両時価額が低いため、修理費が全額賠償されないことがありますから注意が必要です。

 

修理費の上限が車両時価額とされる理由とは?

損害賠償は、不法行為により被害者が被った損害を加害者が填補し、不法行為がなかった状態に回復させることです。修理不能なら時価額の賠償、修理可能なら修理費の賠償が基本です。

 

ただし、修理可能でも、時価額を超える修理費の支払は、かえって被害者を利得させる結果となり、損害賠償の趣旨にそぐわないと考えられるため、修理費の上限を車両時価額としています。

 

未修理でも修理費を賠償請求できる

未修理でも、事故によって現実に損傷を受けている以上、すでに損害は発生しているため、修理費相当額の請求が認められます(大阪地裁平成10年2月24日判決)

 

ただし、修理費見積額が適正か否かが争点となっている場合は要注意です。修理しないまま長期間経過すると、修理の必要性に疑念を抱かれ、修理をしていない合理的説明が必要となる場合があり得ます。

車両修理費の認定方法

任意保険の実務上、車両修理費の認定は、損害保険会社のアジャスターが事故車両を検分し、修理工場との間で修理内容を協議し、修理費について協定が結ばれることによって行われています。

 

アジャスターとは?

アジャスターとは、一般社団法人・日本損害保険協会にアジャスター登録された資格保有者です。損保会社から委嘱を受け、保険事故の損害調査業務(自動車の損害額や事故の原因・状況などの調査)を行います。

 

修理費認定の流れ

具体的な修理費認定の流れは、こうです。

 

車両の所有者が、事故車両を修理工場に入庫し、所有者自身もしくは修理工場から、その旨を保険会社に連絡します。修理工場では、車両の損傷を確認し、修理の見積もりを出します。

 

保険会社は、アジャスターに車両の損害調査を委託します。アジャスターが事故車両の損害調査を行い、修理工場との間で修理の範囲や方法、修理費について協議します。協議がまとまれば、保険会社と修理工場との間で修理費協定を結びます。こうして修理費協定を結ぶと、保険会社が修理費を認定したことになります。

 

保険会社と修理工場との間で修理費協定が締結されていれば、あとから修理費が争いになることは特別な事情がない限りありません。

 

修理費協定とは?

保険会社と修理工場との修理費協定は、法律的な行為というよりも、保険会社が修理費用として支払い可能な保険金額を合意する事実的な行為と理解されています。

 

実際の修理費と保険会社から支払われる保険金額に差が生じると、当事者が負担を余儀なくされます。修理費協定は、そんなリスクを回避し、修理費の損害賠償を円滑に進める機能があるのです。

 

協定済にもかかわらず修理費が争いになるケースとは?

修理費協定が成立すれば、その金額を前提とする限り、争いとなることはありません。

 

ただし、協定に法的拘束力はなく、協定後に修理費の見積もりが変わると、争いとなることがあり得ます。例えば、次のような場合です。

  • 被害者が、「アジャスターの検分時に発見されなかった損傷が発見された」として、協定額を上回る修理費を請求する場合。
  • 保険会社が、「協定内容を検証した結果、事故と相当因果関係がないとの判断に至った」として、協定額を下回る修理費が相当と主張する場合。

 

事前に保険会社に連絡せずに修理をしたり、協定が未成立のまま修理すると、「損傷の事故起因性」や「修理の必要性・相当性」が問題となり、修理費の全部または一部が認められない場合があります。

修理費を請求するとき、何を主張・立証する?

車両の修理費を請求しようとする場合は、請求する側が次のことを主張・立証する必要があります。

  • 車両が当該事故によって損傷した事実
  • 修理済または修理予定の事実
  • 修理費の額または見込額

 

ただし、損傷の事故起因性や修理の必要性・相当性について争いがある場合は、これでは足りません。

 

損傷の事故起因性が争われる場合

損傷の事故起因性とは、その損傷が、当該事故によるものか、ということです。事故前や事故後に生じた損傷箇所まで便乗修理しようとしているのではないか、と争いになる場合があります。

 

損傷の事故起因性が争われる場合は、事故直後の被害車両と加害車両の写真、両車両の本来の形状を示す資料、アジャスターの意見書などを参考に、損傷の個所・形状と事故態様(衝突の部位・角度、衝撃の程度など)との整合性をふまえ、その損傷が当該事故によるものと言えるかを判断します。

 

修理の必要性・相当性が争われる場合

修理の必要性・相当性とは、修理が必要か、修理の内容や金額が適正か、といういことです。

 

例えば、次のような点につき、過剰修理ではないのか、と争いになることがあります。

  • ドアの損傷につき、板金修理が相当か、それとも交換修理が必要か。
  • 部分塗装で足りるか、全面塗装が必要か。
  • 修理費が、過大に見積もられていないか。

 

修理の必要性や相当性が争われるときは、修理内容の明細を明らかにするために修理見積書や修理明細書、事故車両の損傷状況と修理内容が分かる写真、アジャスターや修理業者の意見書、当該車両の修理マニュアルなどにもとづき、必要かつ相当な修理の範囲や金額が認定されます。

まとめ

交通事故による被害車両の修理費は、必要かつ相当な修理費が損害賠償額として認められます。ただし、修理費が事故車両の時価額を超える場合は、車両時価額が損害賠償額の上限となります。こういうケースを経済的全損といいます。

 

車両を修理するときは、事前に保険会社に連絡をし、保険会社による損害調査を受け、保険会社と修理会社の間で協定をした上で修理すると、あとから修理費の支払いで揉める心配がありません。

 

修理費協定が未成立のまま修理すると、損傷の事故起因性(便乗修理の問題)、修理の必要性・相当性(過剰修理の問題)について、争いとなることがあります。

 

交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響
 

弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。


交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!


交通事故の被害者専用フリーダイヤル

0120-690-048 ( 24時間受付中!)

  • 無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。
  • メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。

※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。

 

【参考文献】
・『交通関係訴訟の実務』商事法務 429~431ページ
・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 227~228ページ
・『物損交通事故の実務』学陽書房 31~32ページ
・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 216~221ページ
・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 164~168ページ
・『交通事故損害主張のポイント』新日本法規 253~257ページ
・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 206~208ページ
・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 58~60ページ
・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 193ページ
・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 337ページ
・『別冊判例タイムズ38』17ページ

公開日 2021-09-13 更新日 2023/05/03 11:58:52