休車損とは?事故による休車損害が認められる要件と算定方法

休車損とは?事故による休車損害が認められる要件と算定方法

営業車が交通事故で損傷し、修理・買替えに要する期間、営業できず損害が生じた場合、休車損(休車損害)が認められます。休車損が認められる要件、休車損の算定方法について解説します。

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貨物自動車やタクシーなど営業用の自動車が事故により損傷し、車両の修理や買替えのために営業ができず損失が生じた場合、休車損(休車損害)が認められます。

 

休車損が認められるための具体的な要件、休車損の算定方法について、詳しく見ていきましょう。

 

休車損(休車損害)とは?

休車損(休車損害)とは、事故により営業用車両が損傷し、修理や買替えのために使用不能となった期間、車両を運行していれば得られたであろう営業利益の損失のことです。その性質上、営業用車両についてのみ認められます。

 

事故により減少した営業収益であり、物損における消極損害(逸失利益)の性格を有する損害です。基本的な考え方は、人損における休業損害と同じです。

 

休車損は、交通事故によって通常生ずべき損害と解され(最高裁判決・昭和33年7月17日)、要件を満たせば損害賠償を受けられます。

 

休車損は、車両を使えなかったことにより生じる損害ですから、代車を使用することができ、代車料が認められる場合には、休車損の請求はできません。

休車損が認められるための要件

休車損が認められるには、次のような要件を満たすことが必要です。その立証責任は、被害者の側にあります。

 

被害車両が営業用車両であり、代車の調達が困難であること

休車損は、車両を運行していれば得られたであろう営業利益の損失ですから、その車両が営業に用いられ、利益を上げていたことが必要です。

 

また、代車を利用できる場合には、代車料を請求すればよいので、休車損が問題となるのは、代車の調達が困難である場合ということになります。

 

つまり、休車損は、通常は緑ナンバーの営業車両(タクシー、ハイヤー、路線バス、観光バス、営業用貨物トラックなど)で発生します。

 

緑ナンバー車両による運送業は、許認可の関係があり、レンタカー等を使用して行うわけにいきません。休車損とは、白ナンバー車両の代車料に代わって、緑ナンバー車両の稼働できない期間の営業利益を補償するものです。

 

ただし、白ナンバー車両は休車損を請求できない、というわけではありません。例えば、冷蔵車など設備のある特殊な車両は、代車を調達することが困難ですから、白ナンバー車両であっても、休車損が認められる場合があります。

 

また、営業免許を有していない白ナンバーの営業車であっても、行政法規違反による制裁の問題と私法上の損害賠償の問題は別ですから、休車損害の賠償請求は認められる場合があります(最高裁判決・昭和39年10月29日)

 

利用可能な遊休車が存在しないこと

利用可能な遊休車(代替車両・予備車両)を保有していれば、事故車両の代わりに遊休車を稼働させることで、休車損の発生を回避できます。したがって、利用可能な遊休車が存在する場合は、休車損が否定されます。

 

被害者も、信義則上、損害の拡大を防止する義務を負っているので、遊休車があればそれを利用して、損害の拡大を防止することが求められるのです。

 

ただし、遊休車を保有していれば、休車損が否定されるわけではありません。ポイントは、保有している遊休車が、事故車の代わりに利用できる状態にあるか否かです。

 

遊休車を保有していても、遊休車の活用が容易でない場合にまで、それを強いることは相当ではない、とされています。例えば、その車両が車検や定期点検中である場合や、遠隔地の営業所にあり回送に時間や費用がかかる場合、運転者の手配が困難である場合などです。

 

利用可能な遊休車が存在しないことの立証

利用可能な遊休車が存在しないことの立証責任は、休車損の発生を主張する被害者側にあります。

 

立証方法は、保有車の実働率、保有台数と運転手の数、運転手の勤務体制、営業所の配置・配車数、仕事の受注体制などから、被害者が保有車をできる限り稼働させていたことを証明すれば足りるとされています。

 

路線バスのように、法令上、予備車両の保有が事業許可の条件となっている場合は、予備車両によって代替することが想定されているので、特段の事情がない限り、休車損の請求は認められません。

 

営業収入の減少

休車損の賠償は、事故車両の休車にともなう営業利益の損失を補填するものですから、被害者の営業収入の減少を要件とする場合があります。

 

ただし、現在の裁判実務では、営業収入の減少がない事実のみを理由に、休車損の発生を否定することはありません。営業収入は、事故車の稼働状況だけでなく、被害者の営業努力や景況などによっても左右されるからです。

 

例えば、営業用普通貨物自動車の事故につき、被害者は事故前と同程度の売上を確保していたが、それは被害者の営業努力による面も大きいとして、休車損を認めた裁判例があります(名古屋地裁判決・平成15年5月16日)

 

このようなことから、単に営業収入減少の有無のみならず、その原因にも着目して判断しているのです。営業収入の減少は、休車損を認定する際に考慮はされますが、決定的な要素とはなりません。

休車損の算定方法

休車損は、被害車両によって得られるであろう 1日あたりの営業利益に、休車日数を乗じて算定されます。

 

1日あたりの営業利益は、被害車両が稼働した場合の1日あたりの営業収入(売上高)から、稼働に必要とされる経費を控除して算出する方法が一般的です。

 

つまり、休車損は、次の計算式で算定されます。

 

休車損 =(1日あたりの営業収入-経費)× 休車日数

 

なお、営業利益は、経費を控除する方法以外にも、営業収入に利益率を乗じて算出する方法もあります。

 

事故車の1日あたりの営業収入の認定方法

事故車両の1日あたりの営業収入は、人損における休業損害の場合と同様に考え、事故直前の3ヵ月間の実績にもとづき算出します。

 

ただし、季節により売上高に変動がある業種等については、事故前年の1年間の売上高を見た上で適宜修正する方法をとるなど、別途考慮されます。

 

事故車両が大型観光バスであった事案について、休車時期の前年同期の稼働実績にもとづき、被害車両の事故前の売上を算定した例もあります(京都地裁判決・平成12年11月9日)

 

営業収入から控除する経費

営業収入から控除する経費とは、事故車両を運行できなかったことで支出を免れた経費です。つまり、燃料費、修繕費、有料道路通行料など、車両の実働率に応じて発生額が比例的に増減する変動経費です。

 

車両の減価償却費、自動車保険料、駐車場使用料などの固定経費は、休車期間中も支出を免れないものですから、控除しません。

 

人件費は、乗務手当など支出を免れる部分(変動経費的な部分)は控除しますが、固定給など休車期間中も支出を免れない部分(固定経費的な部分)は控除しません。

 

休車日数

休車損が認められる休車期間は、事故車を修理するのに相当な期間、または、買替えに要する相当な期間です。

 

休車期間(休車日数)の相当性は、基本的に代車の使用期間と同様の考え方です。

売上高・経費の立証資料

売上高や経費の立証資料として望ましいのは、損益明細表や輸送実績報告書です。これらは、監督官庁に提出されるものだけに客観性も担保されているといえるからです。

 

個人の場合も同様に、確定申告書、納税証明書等の公的書類による証明が求められます。

庸車損害

貨物運送事業者は、原則として緑ナンバー車両を使用する必要があるため、代車手配が困難ないし不可能な場合が多く、事故車両が担っていた業務を外部業者に委託する場合があります。これを庸車といいます。

 

庸車利用料(外注費)が発生した場合、庸車料の全額が損害とはなりません。庸車料から、庸車を利用することにより支出を免れた事故車両にかかる変動経費を控除した額が損害となります。

まとめ

営業用車両が事故により運行できない期間、代替車両やレンタカーの利用などができなければ、営業利益が喪失します。この損害を休車損(休車損害)といいます。休車損は、事故車両の1日あたりの営業収益と休車期間により算出します。

 

休車損は、代車利用が困難な緑ナンバー車両の場合に発生し、代車料が請求できる場合には、休車損は請求できません。

 

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【参考文献】
・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 234~237ページ
・『交通関係訴訟の実務』商事法務 439~442ページ
・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 100~111ページ
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・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 184~186ページ
・『物損交通事故の実務』学陽書房 52~54ページ
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・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 215~216ページ、234~239ページ
・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 277~280ページ
・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 300~304ページ
・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 212~216ページ
・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 57~58ページ
・「東京地裁民事第27部における民事交通訴訟の実務について」別冊凡例タイムズ38号18ページ

公開日 2021-09-27 更新日 2023/03/18 13:28:15