自動車事故で店舗が損壊した場合の営業損害に対する賠償請求

自動車事故で店舗が損壊した場合の営業損害に対する賠償請求

自動車が店舗に衝突するなどして店舗が損傷し、休業を余儀なくされた場合、店舗の修理費用のほか、営業損害や商品損害なども損害賠償請求できます。

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自動車事故で店舗が損壊したときは、店舗(建物)の修理費用のほか、修理のため休業を余儀なくされたことによる営業損害も、損害賠償請求できます。

 

その他、商品損害、商品の仕入れのための交通費、営業再開のための広告費用なども、損害として認められる場合があります。

 

営業損害の賠償請求

自動車が衝突するなどして店舗が損壊し、その修理のため休業を余儀なくされた場合、店舗の修理期間中、営業できないことにより生じる損失を損害賠償請求することができます。

 

ただし、営業損害の額については、妥当な休業期間であるとともに、かなり厳格な立証が求められます。

 

営業損害の算定方法

営業損害は、基本的には事故前3ヵ月の売上平均を基準とします。時期・季節により売上に変動がある場合は、同時期の3年分の売上平均を基準とするなどして算出する場合もあります。

 

経費については、変動経費か固定経費かにより異なります。原材料の仕入原価など変動経費は、休業期間中は原材料の仕入もないと考えられるので損害から控除します。地代家賃など固定経費は、休業期間中も発生しますから営業損害として認められます。

 

営業損害を認めた裁判例

営業損害を認めた裁判例として、次のものがあります。

 

大阪地裁判決(昭和59年3月15日)

自動車が飲食店店舗に衝突し、店舗が破損したことで営業できなくなった事案です。

 

事故前3ヵ月の売上から算出した1ヵ月分の平均売上げ173万836円から、原材料費の仕入原価や光熱費などの必要諸経費を控除し、所得率39.6%に相当する利益68万5,411円があったものとして、7日間の休業期間につき合計16万円5,438円を損害と認めました。

 

東京地裁判決(平成23年11月25日)

ペットショップ店舗に自動車が衝突した事案です。

 

基礎収入額の算定について、季節による売上変動を考慮して、事故前年同時期の実績値にもとづき算定するのが相当であるとしつつ、さらに、事故発生年に売上が減少傾向にあったことを指摘して減額修正を行いました。

 

横浜地裁判決(平成24年7月30日)

開店直前の不動産業の店舗に、自動車が衝突した事案です。

 

事故後も若干の売上を上げていたことから、想定された売上額と現実の売上額との差額を営業損害として認定しました。

 

名古屋地裁判決(平成26年2月5日)

不動産仲介業者の店舗に、自動車が衝突した事案です。

 

不動産仲介業者は、営業活動が売上に直結しているわけではないこと、営業活動の成果が入金となって得られるまでには一定の期間を要すること等を理由として、民事訴訟法248条を適用して休業損害を認定しました。

 

民事訴訟法248条(損害額の認定)
損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

 

東京地裁判決(平成29年1月18日)

自動車の衝突により、駐車場入り口ゲートや料金精算機などを損壊した事案です。

 

駐車場の営業利益が時期によって変動があることから、過去3年間の同時期の売上合計額を日割し、1日あたりの変動経費を控除して算定した額を基礎に損害額を認めました。

 

名古屋地裁判決(平成29年6月16日)

基礎収入の算定方法について、最終所得額に固定経費にあたる租税公課、損害保険料、減価償却費、利子割引料、地代家賃等を加えて加算するのが相当としました。

什器・商品などの損害

自動車が店舗に飛び込んできたような場合には、店舗内の什器や商品も損傷することがあります。

 

店舗内の什器や商品も、損害賠償の対象となります。

 

什器の損害

什器の損害については、事故発生時、すでに購入して相当の年月が経っていたり、什器管理が厳格になされていない等の理由から、損害の立証が困難なことがあります。

 

裁判例では、什器の損害について、客観的に裏付ける証拠がないことを指摘しつつも、事故態様や建物の損傷状況から、什器に損傷が生じたと認め得るとして、民事訴訟法248条により相当額の損害を認定したものがあります(横浜地裁判決・平成26年2月17日)。

 

商品の損害

商品の損害については、次のような裁判例があります。

 

岡山地裁判決・平成14年9月6日

紳士服量販店に自動車が飛び込み、礼服、ジャケット、スラックスなどの商品が被害を受けた事案です。

 

各商品についての得べかりし利益の額について、販売価格に粗利益率を乗じた額に仕入原価を加え戻したものに販売率を乗じたものとして商品損害額を算定しました。

その他の損害

営業損害や商品損害のほかにも、次のような損害が認められています。

 

  • 事故により店舗内の多数の商品が損傷し、海外への出張を余儀なくされたことにつき、出張交通費25万円を損害と認めました(東京地裁判決・平成13年8月28日)。
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  • 店舗改修工事後、リニューアルオープンのための営業再開案内のハガキやチラシ配布の集客活動の費用34万円余りを損害と認めました(東京地裁判決・平成23年11月25日)。
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  • 事故によりショーウィンドウが破損したままの状態で営業を係属したことにより生じた夜間警備費用を損害として認めました(岡山地裁判決・平成14年9月6日)。

まとめ

自動車が店舗に衝突するなどして、建物が損壊した場合、店舗や什器の修理費のほか、店舗修理のため休業を余儀なくされたことによる営業損害も賠償請求できます。

 

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【参考文献】
・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 249~250ページ
・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 142~145ページ
・『物損交通事故の実務』学陽書房 86~87ページ

公開日 2021-10-31 更新日 2023/03/18 13:28:15