交通事故トラブル解決ガイド|損害賠償請求・示談交渉の悩みを解決!

検索結果

「 人身傷害保険 」の検索結果
  • 人身傷害保険のメリット・デメリット
    人身傷害保険(人身傷害補償保険)のメリット・デメリット
    人身傷害保険(人身傷害補償保険)は、被保険者が事故の被害者となった場合に、被保険者自身に生じる人身損害を補償する保険です。ここでは、人身傷害保険のメリット・デメリット、人身傷害保険金を請求するときの注意点をご紹介します。人身傷害保険と人身傷害補償保険の違いは、名称が違うだけです。最初は人身傷害補償保険として発売されましたが、代位の範囲をめぐる問題もあり、今は「補償」を外し、人身傷害保険としているものが多いようです。人身傷害保険のメリット人身傷害保険は、被保険者が事故で負傷し損害を被った場合に、被保険者の過失の有無・割合に関わらず、約款所定の基準(人傷基準)によって算定される損害額の全額につき、保険金を支払う保険です。そのような性格の保険であることから、人身傷害保険には、次のようなメリットがあります。人身傷害保険のメリット被保険者に過失があっても、過失相殺せず保険金が支払われます。相手方と示談が成立していなくても、迅速に保険金が支払われます。自損事故や加害者不明の事故も、保険金が支払われます。被保険者の過失が大きい場合、事故の責任や過失割合について争いがあり損害賠償金の受領までに時間がかかる場合、相手が任意自動車保険に加入していないため賠償資力がない場合に、特に有効です。人身傷害保険のデメリット人身傷害保険は、人傷基準(約款所定の損害額基準)で損害額を算定し、被害者の過失分も含めて迅速に保険金が支払われるのがメリットですが、実は、この人傷基準で損害額を算定することがデメリットにもなります。人傷基準が、裁判所基準よりも低いからです。そのため、人傷基準で算定した損害額(人傷基準損害額)は、裁判所基準で算定する損害額(裁判基準損害額)よりも低い金額となるのです。さらに、契約した保険金額が支払限度額となります。例えば、人傷基準損害額が8,000万円であったとしても、保険金額が5,000万円であれば、支払われる保険金額は5,000万円です。人傷基準と裁判所基準は、どれくらい差があるのか、例えば、慰謝料(人傷基準では精神的損害といいます)を比べると、裁判所基準人傷基準死亡慰謝料2,800万円2,000万円後遺障害14級の慰謝料110万円40万円※裁判所基準は「赤い本」、人傷基準は「東京海上日動社の約款」を参考。ただし、逸失利益については、被保険者の現実収入が少なくても、年齢別平均賃金によって休業損害や将来の逸失利益を算定することが認められている場合があるので、人傷基準損害額が裁判基準損害額を上回るケースがあります。人身傷害保険金が、民事上認められるべき損害額より低額に抑えられていることについて、「高額化してきた対人賠償保険金の支払いに代えて、人身傷害保険の支払基準にもとづく、より低額な保険金の支払いで解決できる状況を実現したいという保険会社側の意図が背景にあるのではないか」という指摘があります。(東京弁護士会法友全期会・交通事故実務研究会『改定版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 48~49ページ)損害賠償請求と人傷保険金請求は両方できる加害者(相手方保険会社を含む)に対する損害賠償請求と、自分の加入する人身傷害保険に対する保険金の支払い請求は、両方請求することができます。もちろん、損害が二重に填補されないように調整されます。両方に請求することで損害を100%回復できる可能性がある両方に請求することで、それぞれのデメリットをカバーすることができ、損害を100%回復できる可能性があります。損害賠償請求は、裁判所基準で損害賠償額を算定できますが過失相殺があります。人身傷害保険は、過失相殺されませんが、人傷基準で損害額を算定します。双方が互いに、デメリットをメリットでカバーしあえるのです。どちらを先に請求してもかまいません。人身傷害保険を受け取った上で損害賠償請求してもよいし、逆に、損害賠償金を受け取った上で過失相殺された額を人身傷害保険に請求することも可能です。人身傷害保険金を受領した後で損害賠償請求するときは、保険会社は支払った保険金の範囲で被害者の損害賠償請求権を代位取得しますから、保険会社に移転する額を、損害賠償請求額から控除しなければなりません。逆に、損害賠償金を受領した後で人身傷害保険金を請求するときは、受領した賠償額を控除して人身傷害保険金が支払われます。なお、どちらを先行するかによって、トータルで受領できる金額に差が生じることがありますから、注意が必要です。どちらを先に請求するか、個別事情を考慮して判断する必要がありますから、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に頼むメリットなお、人身傷害保険は、被保険者に保険金として支払われます。約款所定の損害額基準にしたがって損害額を算定し、保険金の支払上限額は保険契約により決まっています。つまり、人身傷害保険は、裁判所基準で算定した損害賠償額を請求できるわけではありません。そのため、人身傷害保険金の支払い請求を弁護士に頼んでも、損害賠償請求のように金額が増えるわけではありません。もっとも、加害者(相手方保険会社を含む)に対する損害賠償請求に関しては、弁護士に頼むことで増額が期待できます。損害賠償と人身傷害保険の両方を請求することで、被害者に過失があっても損害の全額を回収できる可能性がありますから、弁護士に頼む意義は大きいのです。【相談無料】交通事故に強い弁護士事務所はこちら人身傷害保険金が支払われる事故・支払われない事故人身傷害保険の保険金支払いの要件・対象、保険金の算定方法について、見てみましょう。東京海上日動社の約款(2022年1月時点)を参考にしています。人身傷害保険金が支払われる事故(保険事故)人身傷害保険金が支払われるのは、人身傷害事故が生じ、被保険者またはその父母・配偶者・子に損害が生じた場合(約款第1条1項)です。人身傷害事故とは?人身傷害事故については、次のように定義しています(約款1条2項)。人身傷害事故とは、日本国内において、次のいずれかに該当する急激かつ偶然な外来の事故により、被保険者が身体に傷害を被ることをいいます。①自動車または原動機付自転車の運行に起因する事故②被保険自動車の運行中の、次のいずれかに該当する事故ア.飛来中または落下中の他物との衝突イ.火災または爆発ウ.被保険自動車のの落下加害者の損害賠償責任の有無は関係ないので、自損事故や無保険車との事故も補償されます。被保険者のほか、その父母・配偶者・子に生じた損害も支払い対象人身傷害保険は、被保険者本人に生じた損害のほか、その被保険者が損害を被ったことにより、その被保険者の近親者である父母・配偶者・子に生じた損害も、保険金支払いの対象となります。被保険者の父母・配偶者・子に生じた損害とは、近親者の固有の精神的損害を指します。近親者が負担した治療費などは、運用上、被保険者本人の損害となります。被害者が死亡した場合、民法711条の規定により、被害者の父母・配偶者・子は、固有の権利として、加害者に対して精神的な損害の賠償を請求することが可能です。被害者に重度の後遺障害が残った場合も同様です。近親者に固有の慰謝料請求権について詳しくはこちらをご覧ください。人身傷害保険では、被保険者を次のように定義しています(約款2条1項)。① 被保険自動車の正規の乗車装置またはその装置のある室内に搭乗中の者② ①以外の者で被保険自動車の保有者③ ①②以外の者で被保険自動車の運転者ただし、②③とも被保険自動車の運行に基因する事故の場合に限る。保険法は、損害保険契約における被保険者を「損害保険契約により填補することとされる損害を受ける者」(保険法2条4号イ)と定めていますが、人身傷害保険における被保険者は、それよりも狭く、保険事故の客体のみを指している、と解されています。(参考:『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社 376ページ)特約により、保険事故・被保険者の範囲が拡張他車搭乗中や車外自動車事故の補償特約を付けることにより、保険事故と被保険者を拡張することができます。この特約により、被保険自動車以外の自動車に搭乗中の事故、歩行中に自動車に衝突された事故なども補償対象となります。主な被保険者は、次の通りです(人身傷害の他車搭乗中および車外自動車事故補償特約3条)。記名被保険者記名被保険者の配偶者(内縁を含む)記名被保険者またはその配偶者の同居の親族記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子上記以外で被保険自動車の正規の乗車装置または正規の乗車装置のある室内に搭乗中の者契約車両に乗車中以外の事故を補償する特約は、各社によって名称も内容も異なります。「人身傷害の他車搭乗中および車外自動車事故補償特約」「人身傷害車外事故特約」「自動車事故特約」などがあります。なお、こうした契約車両に乗車中以外の事故に対する補償は、人身傷害保険が発売された当初は、特約でなく普通保険約款に含まれていたものです。普通保険約款において、保険事故・被保険者の範囲を限定する方向で改定が行われています。人身傷害保険金が支払われない事故とは?免責事由に該当すると、人身傷害保険金は支払われません。例えば、次のような場合が免責事由に該当します。免責事由の例戦争、核燃料物質、放射能汚染等によって生じた損害地震、噴火、これらによる津波によって生じた損害被保険自動車を競技、曲技または試験のために使用すること被保険者の故意または重大な過失によって、その本人に生じた損害被保険者の無免許運転、酒気帯び運転、麻薬等の影響を受けた運転によって、その本人に生じた損害対人・対物賠償責任保険と異なり、台風・洪水・高潮は免責事由となりません。また、対人・対物賠償責任保険と異なり、故意以外に重大な過失が免責事由となっている場合があります。重大な過失を免責事由とするかどうかは、保険会社によって異なります。どの程度の過失で「重大な過失」となるかについては、故意に準じるものに限定すべきという見解と、一般人を基準として甚だしい不注意であれば足りるとの見解の対立があります。酒気帯びは、社会通念上、酒気帯びといわれる状態をいい、外観上(顔色、呼気等)認知できる状態であることをいうものと解されています。酒に酔った状態であることや、運転への影響が外観上認知できることは必要ないと解されています。人身傷害条項の規定は、被保険者ごとに個別に適用されます(約款第2条3項)。そのため、仮に、運転者本人が、無免許運転で免責になったり、酒気帯び運転で免責になったとしても、運転者以外の被保険者の損害については免責になりません。【関連】任意自動車保険に共通する免責事由対人・対物賠償責任保険に特有の免責事由傷害保険に特有の免責事由人身傷害保険金の算定方法人身傷害保険は、人傷基準にもとづき算出した損害額につき、契約保険金額(支払限度額)の範囲で支払われます。例えば、人傷基準により算定される損害額が8,000万円だったとすると、契約保険金額が5,000万円の場合は、5,000万円の保険金が支払われ、契約保険金額が1億円の場合は、8,000万円が支払われます。なお、保険約款には支払限度額に関する特則があり、被害者に重度の後遺障害が残った場合は、支払限度額が保険証券記載の保険金額の2倍になります。先に損害賠償金や自賠責保険金などを受領していれば、控除して人身傷害保険金を請求することになります。その場合の計算方法について、詳しくはこちらをご覧ください。まとめ人身傷害保険は、加害者の過失の有無や割合に関係なく、契約した保険金額を限度に、約款所定の損害額基準(人傷基準)で算定して支払われる保険です。人身傷害保険は、被害者に過失があっても過失相殺されることなく、全損害に対して保険金が支払われることが最大のメリットです。ただし、人傷基準は裁判所基準より低いため、人身傷害保険金の額は、裁判所基準で算定した損害額よりも低額になるのが通例です。この点が、人身傷害保険のデメリットです。被害者の過失が大きい場合は、過失相殺により損害賠償額が大きく減額されます。そんなとき、人身傷害保険金を併せて請求すれば、過失相殺された部分を含め全損害が補償される可能性があります。人身傷害保険は、保険会社によっても、保険商品の発売時期によっても異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社 364~421ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 45~49ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 329~331ページ・『Q&A 新・自動車保険相談』ぎょうせい 357~369ページ・『Q&Aハンドブック交通事故診療 全訂新版』創耕舎 48~51ページ
    Read More
  • 人身傷害保険と損害賠償のどちらを先に請求するか
    人身傷害保険金と損害賠償金のどちらを先に請求すると有利か?
    人身傷害保険金と損害賠償金は、両方を受け取ることができますが、どちらを先に請求するかによって、最終的に受領できる金額に差が出る場合があります。人身傷害保険金の計算方法人傷保険金と損害賠償金のどちらの請求を先行させるのがよいか、を考える前に、人傷保険金の算出方法を見ておきましょう。人身傷害保険は、保険金の支払い対象となる損害額を、約款所定の人身傷害条項損害額基準(人傷基準)で算定し、保険金額(保険証券記載の金額)を限度に支払われます。既払金があれば控除するその際、すでに損害賠償金等を受領していれば、既払金として控除します。二重給付を受けることによる利得防止のためです。つまり、こうです。[支払保険金]=[人傷基準損害額か保険金額の少ない方の額]-[既払金]※人傷基準で算定した損害額を「人傷基準損害額」と呼びます。最近は、既払金額をそのまま控除するのでなく、人傷基準損害額と支払われる人傷保険金との差額を自己負担額とし、「既払金の合計額が自己負担額を超えるときは、その超過額を控除して保険金を支払う」と定める約款が多くなっています。そうすると、既払金は、人身傷害保険で補償されない自己負担部分に優先的に充当されます。既払金が自己負担額以下のときは、保険金額(支払限度額)がそのまま保険金として支払われ、既払金が自己負担額を超過するときは、その超過額を差し引いて保険金が支払われます。具体的に、次のような事例で考えてみましょう。【事例】裁判基準損害額:1億円(民事上認められる損害額=裁判所基準で算定した損害額)人傷基準損害額:8,000万円(人身傷害保険の損害算定基準(人傷基準)で算定した損害額)人傷保険金:5,000万円(人身傷害保険から支払われる保険金額=保険契約した限度額)被害者の過失割合:30%(過失相殺後の損害賠償請求額 7,000万円)加害者(相手方保険会社)から損害賠償金7,000万円を受領した上で、人傷保険金を請求するとします。自己負担額は、人傷基準損害額8,000万円と人傷保険金5,000万円との差ですから、3,000万円です。既払金7,000万円が自己負担額3,000万円を超えるので、人傷保険金5,000万円から超過額4,000万円を控除し、支払われる人傷保険金は1,000万円です。損害賠償金7,000万円と人傷保険金1,000万円を合わせて、8,000万円を受領することになります。つまり、加害者への損害賠償請求と人身傷害保険金の請求を両方行うと、人傷基準損害額分が填補されることになります。ちなみに、自己負担額を考慮しない場合は、人傷保険金額5,000万円から既払金7,000万円を控除すると、マイナス2,000万円となり、人傷保険金は支払われないことになります。被害者が受領する金額は、損害賠償金の7,000万円のみです。損害額算定の特則(読替規定)今の人身傷害保険は、損害額算定の特則(読替規定)を定めているのが一般的です。例えば、東京海上日動社の人身傷害保険の約款には、次のような特則(読替規定)があります。賠償義務者があり、かつ、判決または裁判上の和解において、賠償義務者が負担すべき損害賠償額がこの人身傷害条項の別紙の規定と異なる基準により算定された場合であって、その基準が社会通念上妥当であると認められるときは、自己負担額の算定にあたっては、その基準により算定された額を損害額とみなします。※参考:東京海上日動社の約款(2017年4月)。2022年1月~の約款も同じです。各損保会社とも、おおむね同様の内容です。ポイントは次の点です。加害者(賠償義務者)がいる。加害者に対して訴訟を提起し、判決または裁判上の和解において、裁判所が人傷基準と異なる基準で損害額を算定した。裁判所が用いた基準が社会通念上妥当。この場合には、裁判所が用いた基準(裁判所基準)で算定された額を損害額とみなす。つまり、人身傷害保険金は、原則として人傷基準損害額をもとに算出しますが、訴訟が提起され、判決または裁判上の和解により損害額が確定したときは、裁判所が認定した損害額をもとに、人身傷害保険金を算出するということです。この場合でも、人身傷害保険から支払われる保険金の額は、人傷基準損害額が限度となります。社会通念上妥当であることを要件としているのは、被害者が裁判所基準を超える基準で提訴し、かつ相手方が欠席して、そのまま欠席判決がなされた場合などを除外する趣旨です。保険会社により表現は異なりますが、こうした読替規定が約款に定められたことにより、人傷保険金と損害賠償金のどちらを先に請求するかによって被害者の受領額に差が生じていた問題は、おおむね解決されています。約款の読み替えは「判決または裁判上の和解」の場合のみ約款の読み替えは、「判決または裁判上の和解」において損害額が確定した場合に限られます。訴訟を提起することなく示談・和解した場合は含みません。したがって、ADR機関による示談の斡旋や裁定は、判決または裁判上の和解ではないので、人傷基準による支払いとなります。具体例で考えると…それでは、人傷保険金と損害賠償金のどちらの請求を先行させるのがよいか、具体的に見ていきましょう。上と同じ事例を考えます。【事例】裁判基準損害額:1億円(民事上認められる損害額=裁判所基準で算定した損害額)人傷基準損害額:8,000万円(人身傷害保険の損害算定基準(人傷基準)で算定した損害額)人傷保険金:5,000万円(人身傷害保険から支払われる保険金額=保険契約した限度額)被害者の過失割合:30%(過失相殺後の損害賠償請求額 7,000万円)【ケース①】示談後に人傷保険金を請求裁判によらず示談で解決した場合です。示談ではありますが、損害額・賠償額は同じとします。損害賠償額7,000万円を受領後に、人身傷害保険金を請求するケースです。自己負担額は、8,000万円-5,000万円=3,000万円超過額は、7,000万円-3,000万円=4,000万円支払われる人傷保険金は、5,000万円-4,000万円=1,000万円受領する金額は、7,000万円+1,000万円=8,000万円人傷基準損害額分は受領できます。ちなみに、約款に自己負担額を定めていない場合は、従来の方式で、人傷保険金の支払額を計算することになります。請求できる人傷保険金が5,000万円ですから、受領した損害賠償額が7,000万円を控除すると、マイナス2,000万円です。この場合は、人傷保険金が支払われません。【ケース②】判決後に人傷保険金を請求損害賠償請求訴訟を提起し判決をもらって解決した場合です。裁判所が損害額を1億円と認定。30%の過失相殺により損害賠償額7,000万円を受領。その後、人傷保険金を請求するケースです。もともと自己負担額は、人傷基準損害額と人傷保険金との差額とされていますが、読替規定により、裁判基準損害額1億円と人傷保険金5,000万円との差額が、自己負担額となります。つまり、自己負担額は5,000万円です。既払金の合計額が自己負担額を超えるときは、その超過額を控除して人傷保険金を支払いますから、既払金の合計額は、受領した損害賠償額7,000万円、自己負担額が5,000万円ですから、超過額は2,000万円。支払われる人傷保険金は、5,000万円-2,000万円=3,000万円受領する金額は、損害賠償金と人傷保険金を合わせて、7,000万円+3,000万円=1億円裁判基準損害額分を受領できることになります。ちなみに、約款に読替規定や自己負担額の定めがない場合は、従来の方式で人傷保険金の支払額を計算しますから、ケース①と同じ結果となります。【ケース③】人傷保険金を受領後に訴訟提起人傷保険金5,000万円を受領後に、損害賠償請求訴訟を提起するケースです。この場合は、人傷保険会社による損害賠償請求権の代位の問題があります。人傷保険金を先に受領すると、人傷保険金を支払った保険会社が、被害者の損害賠償請求権を代位取得します。代位の範囲については、被害者に最も有利な「裁判基準差額説」を最高裁が採用しました(最高裁第一小法廷平成24年2月20日判決)。すなわち、人傷保険金は、被保険者の過失分に優先的に充当し、それを超える部分のみ人傷保険会社が代位します。この事例の場合、支払われた人傷保険金5,000万円は、被害者の過失分3,000万円に優先的に充当され、残り2,000万円分につき、人傷保険会社が損害賠償請求権を代位取得します。被害者の有する損害賠償請求権7,000万円分のうち2,000万円分が保険会社に移転し、被害者の請求権は5,000万円です。被害者が損害賠償請求訴訟を提起し、裁判所が、1億円の損害額、5,000万円の賠償を認定したとすると、被害者の受領する金額は、人傷保険金5,000万円と損害賠償金5,000万円の合わせて1億円です。こうして、裁判基準損害額分を受領できることになります。【ケース④】人傷保険金を受領後に示談交渉人傷保険金5,000万円を受領後に、相手方と示談交渉するケースです。相手方に賠償請求できる金額はケース③で見たように5,000万円です。基本的にはケース③と同じなのですが、被害者、相手方、人傷保険会社の3者の利害が対立している上に、訴訟外ということもあり、ケース③と同様の金額で示談を成立させることは困難です。示談で解決する場合は、ある程度譲歩することが必要です。結局、訴訟での解決となることが多く、このケース④は、ケース③の一過程ということになります。まとめ従前は、人身傷害保険金を受領した後で損害賠償請求するか、損害賠償金を受領した後で人身傷害保険金を請求するかによって、被害者の取得総額に差が生じていました。最高裁が裁判基準差額説を採用し(平成24年2月20日判決)、その後、約款に読替規定が設けられたことから、訴訟を提起して判決・裁判上の和解により裁判所が損害額を確定すれば、人傷先行でも賠償先行でも、人傷保険金と損害賠償金の両方を請求すrことにより、過失相殺前の損害額(裁判基準損害額)を確保できることができようになりました。ただし、人身傷害保険には標準約款が存在せず、保険会社や保険商品の発売時期によって約款内容が異なるので、約款を十分に確認することが必要です。最も有利な損害回復方法を検討するには、個別事情を考慮して判断する必要がありますから、詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故実務入門』司法協会 147~154ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 242~255ページ・『交通事故事件21のメソッド』第一法規 93~103ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 165~169ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 410~425ページ・『新版交通事故の法律相談』青林書院 385~391ページ
    Read More
  • 人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違い
    人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違い
    人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険は、被保険自動車に乗っていて事故に遭い、運転者や同乗者が死傷したときに保険金が支払われる保険で、よく似ています。2つの保険は、どう違うのでしょうか?「補償の範囲」も「保険の性格」も異なる人身傷害保険も搭乗者保険も、被保険自動車の搭乗者全員を補償対象とする点は同じですが、補償範囲、保険の性格が異なります。人身傷害保険は、例えば被保険者が歩行中に事故に遭ったときなども補償対象とされ、補償範囲が広くなっています。また、人身傷害保険は被保険者の損害を填補する「損害填補型保険」ですが、搭乗者傷害保険は契約金額に応じて一定の保険金が給付される「給付型保険」で、そもそも保険の性格が異なります。補償範囲の違い人身傷害保険も搭乗者傷害保険も、被保険自動車に乗っていて事故に遭ったとき、その搭乗者(運転者・同乗者)の全員が補償対象となる点は同じです。人身傷害保険は、それ以外の事故も補償されます。人身傷害保険は、被保険自動車に搭乗中の事故のほか、記名被保険者(保険証券記載の被保険者)やその配偶者、同居の家族、別居の未婚の子などが、他の自動車に搭乗中の事故や、歩行中に車やバイクにはねられたなど車外での自動車事故により死傷した場合も、補償の対象となります。つまり、人身傷害保険の方が、搭乗者傷害保険よりも補償の範囲が広いのです。搭乗者傷害保険の被保険者は、被保険自動車の搭乗者ですが、人身傷害保険の被保険者は、記名被保険者とその配偶者、同居の家族、別居の未婚の子、被保険自動車の搭乗者です。保険の性格の違い人身傷害保険と搭乗者傷害保険は、搭乗者に対する補償ということで同じように見えても、実は、そもそも保険の性格が異なります。人身傷害保険は、保険契約の範囲内で、被害者(被保険者)が実際に被った損害を填補する保険です(損害填補型・実損填補型)。一方、搭乗者傷害保険は、被保険者の損害を填補する保険ではなく、被保険者が該当する事故に遭ったときに、保険契約の範囲内で一定額の保険金を給付する保険です(給付型)。そのため、人身傷害保険は、相手側から既に支払いがあった場合などには、支払いのあった額(相手自動車の自賠責保険などからの支払額、加害者からの賠償金など)を損害額から控除した額が、保険金として支払われます。それに対して、搭乗者傷害保険は、加害者からの賠償額や相手自動車の自賠責保険からの支払額などに関係なく、保険契約金額に応じて一定額が支払われます。他の保険と重ねて支払いを受けることができます。また、人身傷害保険は「損害を填補する保険」ですから、治療費などのほか、休業損害や慰謝料も補償の対象になります。一方、搭乗者傷害保険は「損害を填補する保険ではない」ので、休業損害や慰謝料は支払われません。このように、人身傷害保険と搭乗者傷害保険は、そもそも保険の性格が異なるのです。まとめ人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違いをまとめておきます。人身傷害補償保険搭乗者傷害保険補償の範囲被保険自動車の搭乗者全員そのほか、被保険者が歩行中の事故や被保険自動車に搭乗中の事故なども補償被保険自動車の搭乗者全員保険の性格【実損填補型】被保険者の損害を填補する保険で、すでに損害が填補されている部分は、その額を控除される【給付型】契約にもとづき一定額の保険金を給付する保険で、賠償金や他の保険から支払いを受けていても重ねて受け取れる人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険について、詳しくは次のページをご覧ください。人身傷害保険は、過失相殺なしで被害者の損害を全額補償搭乗者傷害保険は、定額で支払われ損害賠償額から控除されないここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
    Read More
  • 人身傷害保険
    人身傷害保険金を支払った保険会社が代位取得する賠償請求権の範囲
    被害者が、人身傷害保険金を先に受領し、あとから加害者に損害賠償請求する場合は、人傷保険会社が、被害者の損害賠償請求権を代位取得するため、代位の範囲が問題となります。被害者が損害賠償請求できる額に差が生じるからです。代位の範囲には、絶対説、比例説、人傷基準差額説、裁判基準差額説という4つの見解がありますが、最高裁は、裁判基準差額説に立つことを明らかにしました。詳しく見ていきましょう。なぜ、代位の範囲が問題となるのか?人身傷害保険は損害填補型の保険ですから、人傷保険金を支払った保険会社は、支払った保険金額の限度において、被保険者の損害賠償請求権を代位取得します(保険法25条)。その結果、被害者(被保険者)は、加害者に対する損害賠償請求権を失います。被害者に過失がない場合には、支払った保険金額につき、損害賠償請求権を代位取得することに問題はありません。損害賠償請求額が人傷保険金の支払額を下回る場合は、損害賠償請求権の全額を保険会社が代位取得することになります。しかし、被害者に過失があり過失相殺される場合には、人傷保険会社が、被害者の有する損害賠償請求権をどの範囲で代位取得するかが問題となります。支払われた人傷保険金が、被害者の損害全体のうち、被害者の過失部分に充当されるか、それとも加害者の過失部分に充当されるかによって、被害者が最終的に受領できる総額が違ってくるからです。被害者の過失部分に優先的に充当できれば、それだけ、被害者が加害者に対して損害賠償請求できる額が多くなりますから、人傷保険金と損害賠償金を合わせた被害者の受領額が多くなります。逆に、加害者の過失部分に優先的に充当されるとすれば、その分、被害者の損害賠償請求権が減り、被害者が受領できる総額が少なくなってしまうのです。絶対説、比例説、人傷基準差額説、裁判基準差額説被害者にも過失があり過失相殺される場合の保険代位の範囲については、大別すると4つの説があります。絶対説、比例説、人傷基準差額説、裁判基準差額説の4つです。絶対説は、支払った保険金「全額」について代位するという見解です。比例説は、支払った保険金のうち「加害者の過失割合に対応する部分」について代位するという見解です。差額説とは、支払った保険金と、過失相殺後の損害賠償金との合計額が、「被保険者の損害」を上回る場合に限り、その上回る部分について代位するという見解です。「被保険者の損害」は補償すべきという考え方です。補償する損害を、人傷基準で算定した損害額とするか、裁判所基準で算定した損害額とするかで、人傷基準差額説、裁判基準差額説に分かれます。絶対説保険会社は、支払った人傷保険金全額に相当する損害賠償請求権を代位取得する。比例説保険会社は、支払った人傷保険金額のうち、加害者の過失割合に対応する範囲で損害賠償請求権を代位取得する。人傷基準差額説保険会社は、支払った人傷保険金と過失相殺後の損害賠償金との合計額が、人傷基準損害額を上回る場合に、その上回る額について、損害賠償請求権を代位取得する。裁判基準差額説保険会社は、支払った人傷保険金と過失相殺後の損害賠償金との合計額が、裁判基準損害額を上回る場合に、その上回る額について、損害賠償請求権を代位取得する。絶対説、比例説、人傷基準差額説、裁判基準差額説について、次のような事例で具体的に考えてみましょう。【事例】裁判基準損害額:1億円(民事上認められる損害額)人傷基準損害額:8,000万円(人身傷害保険の損害算定基準(人傷基準)で算定した損害額)人傷保険金:5,000万円(人身傷害保険から支払われる保険金の額(保険契約した限度額))被害者の過失割合:30%(加害者に対する損害賠償請求額7,000万円)絶対説絶対説とは、保険会社は、支払った人傷保険金全額に相当する損害賠償請求権を代位取得するという考え方です。したがって、支払われた人傷保険金は、加害者過失分に優先的に充当されます。事例のケースを絶対説で考えると、保険会社は、支払った保険金5,000万円の全額について請求権を代位します。保険金5,000万円は、加害者過失分7,000万円に優先的に充当され、被害者は、7,000万円から5,000万円を控除した残り2,000万円を加害者に損害賠償請求できます。被害者が最終的に受領できる額は、人傷保険金5,000万円と損害賠償金2,000万円を合わせた7,000万円です。裁判基準損害額(1億円)加害者過失分(7,000万円)被害者過失分(3,000万円)被害者請求可能額(2,000万円)保険会社代位(5,000万円)損害賠償額(2,000万円)人傷保険金(5,000万円)比例説比例説とは、保険会社は、支払った人傷保険金額のうち、加害者の過失部分に対応する範囲で損害賠償請求権を代位取得するという考え方です。支払われた人傷保険金は、過失割合に応じて、加害者過失分と被害者過失分に充当されます。事例のケースを比例説で考えると、人傷保険金5,000万円のうち70%にあたる3,500万円の請求権を保険会社が代位取得します。被害者が加害者に損害賠償請求できる額は、7,000万円から3,500万円を控除した3,500万円です。被害者が最終的に受領できる金額は、人傷保険金5,000万円と損害賠償金3,500万円を合わせた8,500万円です。裁判基準損害額(1億円)加害者過失分(7,000万円)被害者過失分(3,000万円)被害者請求可能額(3,500万円)保険会社代位(3,500万円)保険会社負担額(1,500万円)損害賠償額(3,500万円)人傷保険金(5,000万円)人傷基準差額説人傷基準差額説とは、支払われた人傷保険金と、被害者の有する損害賠償請求権の額(過失相殺後の額)との合計が、人傷基準損害額を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する損害賠償請求権を保険会社が代位取得するという考え方です。被害者が、人傷保険金と損害賠償金とを合わせて、人傷基準損害額については、損害を回復できるようにするものです。事例のケースを人傷基準差額説で考えると、人傷保険金が5,000万円、過失相殺後の損害賠償請求額が7,000万円、合計1億2,000万円。人傷基準損害額が8,000万円ですから、保険会社が代位取得する請求権は4,000万円です。被害者が加害者に損害賠償請求できる額は、7,000万円から4,000万円を差し引いた3,000万円です。被害者が最終的に受領できる額は、人傷保険金5,000万円と損害賠償金3,000万円を合わせた8,000万円です。裁判基準損害額(1億円)加害者過失分(7,000万円)被害者過失分(3,000万円)被害者請求可能額(3,000万円)保険会社代位(4,000万円)保険会社負担額(1,000万円)損害賠償額(3,000万円)人傷保険金(5,000万円)人傷基準損害額(8,000万円)裁判基準差額説裁判基準差額説とは、支払われた人傷保険金額と、被害者の有する損害賠償請求権の額(過失相殺後の額)との合計が、裁判基準損害額(訴訟で認定された損害額)を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する損害賠償請求権を保険会社が代位取得するという考え方です。訴訟基準差額説ともいいます。被害者が、人傷保険金と損害賠償金とを合わせて、裁判基準損害額を回復できるようにするもので、被害者に最も有利な見解です。支払われた人傷保険金は、被害者の過失部分の損害額(過失相殺される額)に優先的に充当されます。事例のケースを裁判基準差額説で考えると、人傷保険金5,000万円と過失相殺後の損害賠償額7,000万円との合計額が1億2,000万円。裁判基準損害額が1億円ですから、保険会社が代位取得する請求額は2,000万円です。言い換えると、人傷保険金5,000万円は、被害者過失分3,000万円に充当され、それを上回る2,000万円について、保険会社が、被害者の損害賠償請求権を代位取得するということです。被害者が加害者に損害賠償請求できる額は、過失相殺後の7,000万円から保険会社が代位取得する2,000万円を控除して、5,000万円です。被害者が最終的に受領できる額は、人傷保険金の5,000万円と損害賠償額の5,000万円を合わせた1億円です。被害者は、民事上認められる全損害の填補を受けられることになります。裁判基準損害額(1億円)加害者過失分(7,000万円)被害者過失分(3,000万円)被害者請求可能額(5,000万円)保険会社代位(2,000万円)保険会社負担額(3,000万円)損害賠償額(5,000万円)人傷保険金(5,000万円)裁判基準差額説と訴訟基準差額説は同じものです。最高裁判決で裁判基準差額説が使われたことから、現在は裁判基準差額説ということが多くなっています。最高裁の判断は?最高裁は、平成24年2月20日、裁判基準差額説に立つことを明らかにしました。最高裁第一小法廷判決(平成24年2月20日)本件約款によれば、訴外保険会社は、交通事故等により被保険者が死傷した場合においては、被保険者に過失があるときでも、その過失割合を考慮することなく算定される額の保険金を支払うものとされているのであって、上記保険金は、被害者が被る損害に対して支払われる傷害保険金として、被害者が被る実損をその過失の有無、割合にかかわらず填補する趣旨・目的の下で支払われるものと解される。上記保険金が支払われる趣旨・目的に照らすと、本件代位条項にいう「保険金請求権者の権利を害さない範囲」との文言は、保険金請求権者が、被保険者である被害者の過失の有無、割合にかかわらず、上記保険金の支払によって民法上認められるべき過失相殺前の損害額(裁判基準損害額)を確保することができるように解することが合理的である。そうすると、上記保険金を支払った訴外保険会社は、保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように、上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。裁判基準差額説に立つと、人身傷害保険金は被害者の過失部分に優先的に充当され、人傷保険会社は、訴訟で認定された被害者の過失割合に対応する損害額を上回る保険金額を支払った場合に、その上回る額について、被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得することになります。損害賠償金を受領した後で人身傷害保険金を請求する場合先に人傷保険金を受領し、あとから損害賠償請求する場合(人傷先行)は、上で見たように、トータルで裁判基準損害額を全額受領することができます。ところが、先に損害賠償金を受領し、あとから人傷保険金を請求する場合(賠償先行)は、約款に基づき、人傷基準損害額(契約保険金額が限度)から既払金を控除して支払います。上の事例でいえば、人傷先行の場合には、被害者の取得総額は1億円ですが、賠償先行の場合には、人傷保険金額5,000万円から受領した損害賠償金7,000万円を控除するとマイナス2,000万円となり、人傷保険金は支払われず、被害者の取得額は損害賠償金の7,000万円だけとなります。このように、人傷先行と賠償先行とで被害者の取得総額に差が生じる結果となることは不合理であるため、現在は約款に特則を定め、訴訟により裁判所が損害額を認定した場合には、人傷先行でも賠償先行でも、最終的に受け取る金額は同じになるようになっています。詳しくは、次のページをご覧ください。人身傷害保険金と損害賠償金のどちらを先に請求すると有利か?まとめ被害者にも過失があるときは、人身傷害補償保険金の請求を併用すると、過失相殺による減額分についても保険金給付を受けることができます。訴訟を提起した場合は、人身傷害補償保険金と損害賠償金のどちらを先に請求しても、最終的に被害者が受け取れる金額に差が生じない仕組みになっていますが、裁判をせずに和解する場合は、どちらを先に請求するかで受領できる金額に差が生じることがあります。ただし、裁判を起こすとなると、時間も費用もかかり、精神的負担も大きくなります。そういった事情も考慮して判断することが大切です。人身傷害補償保険は、保険会社によって約款の規定が異なり、事故日によっても適用される約款が異なります。適用される約款を確認した上で、対応することが必要です。人身傷害補償保険金の請求や、人傷保険金請求と損害賠償請求との調整について、疑問やお困りのことがあるときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 279~284ページ・『交通事故診療と損害賠償実務の交錯』創耕舎 90~106ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 107~111ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 329~333ページ・『改定版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 49~55ページ・『民事交通事故訴訟の実務』ぎょうせい 293~299ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 288ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 93~96ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 108~111ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 201ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 99~101ページ・『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社 382~388ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 385~391ページ・『Q&A 新自動車保険相談』ぎょうせい 370~374ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 410~425ページ
    Read More