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  • 自賠責保険と任意保険の違い
    自賠責保険(強制保険)と任意保険の違い
    自動車保険には、法律で保険契約の締結が義務づけられている強制保険(自賠責保険・自賠責共済)と、加入が自由な任意保険があります。自賠責保険も自賠責共済も制度は同じですから、ここでは、自賠責保険と任意自動車保険の違いについて説明します。自賠責保険と自賠責共済の違いはこちらをご覧ください。自賠責保険と任意自動車保険の比較まず、自賠責保険と任意自動車保険の特徴と違いについて、概要をまとめておきます。自賠責保険任意自動車保険契約法律で契約を義務づけ契約は任意目的自動車の運行によって人の生命・身体が害された場合の損害賠償を補償する自賠責保険で不足する損害賠償額を補う補償範囲自動車の運行に起因する人的損害のみ契約により、人損・物損の両方を補償保険金支払基準・上限額を法令で規定上限額は契約により自由に選択免責免責事由が限定免責事由が多い過失相殺被害者に重大な過失がある場合にのみ過失相殺過失割合に応じて過失相殺支払い示談成立前でも、被害者による直接請求や仮渡金の制度あり自賠責保険分を含め、任意保険会社による一括払い制度あり示談代行なしあり自賠責保険と任意自動車保険の違いについて、詳しく見ていきましょう。自賠責保険は法律で契約の締結を義務づけ自賠責保険は、自動車損害賠償保障法(自賠法)で保険契約が義務づけられています。自賠法5条(責任保険又は責任共済の契約の締結強制)自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。この「自動車損害賠償責任保険」「自動車損害賠償責任共済」が、通称「自賠責保険」「自賠責共済」と呼ばれているものです。自賠責保険の契約を締結していない自動車を公道で運転することはできません。違反すると、罰則があります。自賠責保険に未加入、あるいは有効期限切れで運転すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科されます(自賠法86条の3)。加入していても、自賠責保険証明書を自動車に備え付けていなかったり、保険標章を車体に貼っていないと、30万円以下の罰金を科されます(自賠法88条)。これが、自賠責保険が「強制保険」と呼ばれる所以です。なぜ、自賠責保険の契約締結を法律で義務づけているのか?自賠責保険の契約締結を法律で義務づけているのは、自動車による人身事故の被害者を救済するためです。ここで、被害者とは、事故により死傷した人のことをいいます。事故の責任割合が小さい「被害者」を指すものではありません。自賠法は、被害者の保護・救済を図るため、加害者に損害賠償責任を課しています。しかし、加害者に賠償資力がなければ、損害賠償責任を果たすことができず、被害者を救済することができません。そこで、自賠法は、自賠責保険制度を定め、すべての車両に自賠責保険が付保されている状況を作り出すことによって、加害者の損害賠償責任を補償し、被害者を保護・救済できる仕組みにしているのです。なぜ、任意自動車保険にも加入する必要があるのか?自賠責保険は、人身事故による損害賠償を補償するためのもので、保険金の支払額は最低限の金額でしかありません。そのため、自賠責保険だけでは、被害者の損害を賠償しきれないケースがあり得ます。例えば、被害者に重度の後遺障害が残った場合には、損害賠償額が1億円や2億円を超えることがあり得ますが、こういう場合でも、自賠責保険の支払限度額は、最大で4千万円です。自賠責保険だけでは、全然足りません。そこで、自賠責保険では不足する損害賠償額を補填するため、任意保険への加入が不可欠なのです。被害者の立場からすると、加害者の側が任意保険に加入していないと、十分な損害賠償を受けられないことがあり得る、ということです。加害者が任意保険に加入しているかどうかは、被害者にとっても重要です。自賠責保険の保険金の支払限度額についてはこちら補償範囲の違い自賠責保険は、保険金を支払う保険事故の対象が制限されています。自賠責保険と任意保険の補償範囲の違いを簡単にまとめると、こうです。相手方への補償自分への補償その他ケガ・死亡車・物ケガ・死亡車・物ロードサービス弁護士費用自賠責保険〇×××××任意保険〇〇〇〇〇〇〇:支払い対象  ×:支払われない自賠責保険の補償範囲自賠責保険の支払い対象となるのは、自動車の運行によって他人を死傷させた場合です。自賠法における他人とは、「運行供用者と運転者」以外の者を指します。運行供用者とは「自己のために自動車を運行の用に供する者」(自賠法3条)、運転者とは「他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者」(自賠法2条4項)をいいます。マイカーの運転者は、通常、運行供用者に当たります。自賠責保険の支払い対象となる場合、ならない場合について、注意が必要なケースを挙げておきます。自賠責保険の支払い対象となる場合、支払い対象とならない場合対象とならない場合対象となる場合物損は、対象外です。人損でも、自動車の運行によらない場合は、対象でありません。自動車を正当に使用する権利を有しない者が起こした人身事故は、対象となりません。家族でも自賠法上の他人に該当する場合は、自賠責保険の支払い対象となります。さらに詳しくは、次のページをご覧ください。自動車の「運行によって」とは?運行供用者とは?自賠法が定める「運行供用者」「運転者」「保有者」「被保険者」の違い自賠責保険は家族間の事故でも保険金の支払いを請求できる任意自動車保険の補償範囲任意自動車保険は、自動車の運行に限らず、広く「被保険自動車の所有、使用または管理に起因」した損害を、保険金の支払い対象としています。人損だけでなく、物損も支払い対象です。自動車保険の約款では、「対人事故」「対物事故」を次のように定義しています。対人事故被保険自動車の所有、使用または管理に起因して他人の生命または身体を害することをいいます。対物事故被保険自動車の所有、使用または管理に起因して他人の財物を滅失、破損または汚損することをいいます。※参考:『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社 24ページここでいう「所有、使用または管理」とは、自動車のおかれている全ての状態を包含する概念とされています。自動車が格納・陳列されている状態も含み、自動車の運行によらない事故も、保険金の支払い対象となります。例えば、タバコの不始末による車両火災で搭乗者が負傷したような場合は、自動車の運行によって発生した事故とはいえないので自賠責保険金は支払われませんが、民法709条の不法行為責任が認められる場合は、対人賠償責任保険金の支払い対象となります。任意自動車保険には、次のような保険・特約があり、保険会社はそれらを組み合わせて販売しています。対人賠償責任保険、対物賠償責任保険他人の身体や財物に損害を与えた場合の損害賠償を補償する保険人身傷害保険、搭乗者保険運転者自身や同乗者が被った身体の損害を補償する保険車両保険自分の自動車が被った損害を補償する保険弁護士費用特約(弁護士保険)加害者との交渉を弁護士に相談・依頼する費用を補償する保険さらに詳しくは、次のページをご覧ください。自動車の「運行によって」と「所有、使用または管理」の違い任意自動車保険の種類・内容免責事由や過失相殺の違い自賠責保険は被害者の保護・救済が目的であるため、任意自動車保険と比べて、免責事由や過失相殺を制限しています。自賠責保険と対人賠償保険(任意保険)の免責事由と過失相殺の違いを見てみましょう。自賠責保険と対人賠償保険の免責事由の違い自賠責保険と対人賠償保険の免責事由には、次のような違いがあります。自賠責保険金が支払われない場合とは?自賠責保険の免責事由は、重複契約の場合(自賠法82条の3)と、保険契約者または被保険者の悪意によって損害が生じた場合(自賠法14条)のみに限定されています。免責事由に該当しても「被害者請求」は可能自賠責保険は、悪意免責により被保険者(加害者)に保険金が支払われない場合でも、被害者が、加害者の加入する自賠責保険に直接請求(被害者請求)することはできます。自賠責保険は免責事由に該当しても被害者請求は可能対人賠償保険金が支払われない場合とは?これに対して、対人賠償保険では、保険契約者・被保険者の故意による事故や親族間事故のほか、戦争・暴動災害による損害、自然災害による損害、原子力による損害、競技・曲技・試験による損害など、広範な免責事由を設けています。対人・対物賠償責任保険に特有の免責事由任意自動車保険に共通の免責事由親族間事故の取り扱い自賠責保険は、親族間で発生した事故であっても、被害者が他人(運行供用者と運転者以外の者)であれば、保険金の支払い対象となります。自賠責保険は家族間の事故でも保険金請求できる自賠責保険と対人賠償保険の過失相殺の違い任意自動車保険では、過失割合に応じて厳格に過失相殺されますが、自賠責保険では、過失相殺の要件や減額割合を制限する「重過失減額制度」をとっています。自賠責保険は、被害者の過失割合が70%未満の場合は過失相殺による減額はありません。過失相殺されるのは、被害者に70%以上の重大な過失がある場合のみで、しかも、被害者の過失割合に応じて減額されるのでなく、20~50%の減額にとどまります。自賠責保険は、被害者に重過失があるときにのみ過失相殺する被害者の過失割合が大きいときは、先に自賠責保険に請求する方が有利被害者の過失が大きい場合には、任意保険による一括払いでなく、先に、自賠責保険に被害者請求する方が有利になることがあります。自賠責保険に被害者請求した方が得する4つのケース自賠責保険は示談成立前でも被害者から直接請求できる自賠責保険は、被害者が、相手方の自賠責保険に対し、損害賠償額の直接請求または仮渡金請求をできる仕組みになっています(自賠法16条・17条)。この請求は、示談が成立する前や判決確定の前でも可能です。早く支払いを受けたい事情がある場合や示談交渉が難航している場合には、自賠責保険に対する直接請求(被害者請求)の制度を利用する方がよい場合があります。任意自動車保険にも、被害者(損害賠償請求権者)の直接請求権の規定はありますが、たいてい保険会社が加害者に代わって示談代行し、損害賠償額が確定すれば支払われるので、任意保険会社を相手に直接請求権を行使する実益は、通常ありません。まとめ自賠責保険(自賠責共済を含む)は、交通事故被害者の救済を目的とし、法律で加入が義務づけられた強制保険です。保険金が支払われるのは人身損害のみで、物損はカバーされません。支払金額には上限があります。任意自動車保険は、加入は任意ですが、契約内容によっては幅広く交通事故全般の損害を補償します。任意保険は、自賠責保険を補完する保険です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 306~309ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 341~346ページ・『損害保険の法律相談Ⅰ〈自動車保険〉』青林書院 12~17ページ、322~329ページ・『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社・『自賠責保険のすべて 13訂版』保険毎日新聞社 46ページ
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  • 保険金の支払要件
    自動車の「運行によって」と「所有、使用または管理」の違い
    任意自動車保険の対人賠償責任保険は、自賠責保険の上積み保険ですから、自賠責保険で填補できない損害をカバーします。とはいえ、自賠責保険と対人賠償責任保険では、保険金の支払い要件(保険事故)は少し異なり、全く同じではありません。自賠責保険から保険金が支払われるのは、自動車の運行によって他人の生命・身体を害したときです。それに対して、対人賠償責任保険から保険金が支払われるのは、自動車の所有、使用または管理に起因して他人の生命・身体を害したときです。自動車の「運行によって」と「所有、使用または管理に起因して」の違いと関係を見ていきましょう。「自動車の運行によって」とは?自賠責保険から保険金が支払われるのは、自動車の保有者に、自賠法(自動車損害賠償保障法)3条に規定する損害賠償責任が発生した場合です(自賠法11条)。保有者とは、自動車の所有者や使用する権利を有する者のことです。自賠法3条に基づく損害賠償責任が発生するのは、自動車の「運行によって他人の生命・身体を害したとき」です。自賠法3条自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。…(後略)…「運行」については、次のように定義されています。自賠法2条2項この法律で「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。「当該装置」とは、自動車の構造上設備されている装置です。原動機(エンジン)装置のみならず、ハンドル・ブレーキなどの走行装置、ドア、荷台のほか、クレーン車のクレーンなど特殊自動車の特殊装置も含みます。「当該装置の用い方に従い用いる」とは、それぞれの装置を本来の目的に従って使用することです。「人または物を運送するとしないとにかかわらず」とありますから、自動車走行中の事故はもとより、駐停車中であっても、ドアの開閉や積荷の積み下ろし、特殊自動車の特殊装置の操作などに起因する事故も、運行による事故と解される場合があります。駐車中であっても「運行」に当たるケースがあるとはいえ、車両を車庫に格納しているだけの状態は「運行」に当たらないと解されています。「自動車の所有、使用または管理に起因して」とは?対人賠償責任保険(任意保険)から保険金が支払われるのは、対人事故により、被保険者が法律上の損害賠償責任を負う場合です(普通保険約款 第1章2条2項)。対人事故については、普通保険約款において、次のように定義しています。対人事故の定義被保険自動車の所有、使用または管理に起因して他人の生命または身体を害することをいいます。(普通保険約款 第1章1条(用語の定義)より)自動車の「所有、使用または管理」は、自賠法の「運行」より広く、自動車の置かれているすべての状態を包含する概念とされています。すなわち、自動車の運転中(使用)における過失による事故だけでなく、車両の管理における過失による事故についても、補償の対象となります。自動車が車庫に格納されている状態において発生した事故も含みます。対人賠償責任保険は、自賠法3条(運行供用者責任)に基づく損害賠償責任に限らず、民法709条(不法行為責任)や民法715条(使用者責任)などに基づく損害賠償責任が発生する場合も、保険金の支払い対象となります。自賠責は無責でも対人賠償保険は有責となる場合がある自動車の所有者が、自賠法の運行供用者責任を問われず、民法上の不法行為責任のみを問われた場合、自賠責保険は支払われませんが、対人賠償責任保険は保険金の支払い対象となります。例えば、エンジンキーを差したまま駐車していた車が盗まれ、その自動車が人身事故を起こした場合に、自賠法の運行供用者責任は否定し、自動車所有者の管理上の過失に基づく不法行為責任を認めた裁判例があります。このような場合、自賠責保険は支払われませんが、対人賠償保険は支払い対象となります。所有に起因して他人を死傷させるケースとは?ところで、「自動車の所有、使用または管理に起因して他人の生命または身体を害すること」とありますが、「所有」に起因する事故は存在しません。事故の発生原因となるのは「使用または管理」です。ここで「所有」は、法律上の損害賠償責任の負担原因として理解されます。例えば、自分が所有する自動車を友人に貸与中の事故に関して、所有者としての責任を問われたような場合を想定しています。(参考:『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社26ページ)対人賠償責任保険による支払額対人賠償責任保険は自賠責保険の上積み保険で、自賠責保険(強制保険)では填補しきれない損害を、対人賠償責任保険(任意保険)でカバーする仕組みです。対人賠償責任保険から支払われる額は?対人賠償責任保険が支払う保険金の額は、被保険者が支払う損害賠償額のうち、自賠責保険によって支払われる額を超過する金額です。すなわち、損害賠償額と自賠責保険金額との差額です。普通保険約款において、次のように規定しています。普通保険約款 第1章2条(保険金を支払う場合-対人賠償)(1)当会社は、対人事故により、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、この賠償責任条項および基本条項に従い、保険金を支払います。(2)当会社は、1回の対人事故による(1)の損害の額が自賠責保険等によって支払われる金額(注)を超過する場合に限り、その超過額に対してのみ保険金を支払います。(注)被保険自動車に自賠責保険等の契約が締結されていない場合は、自賠責保険等によって支払われる金額に相当する金額をいいます。※条文中の「自賠責保険等」とは、自賠責保険と自賠責共済です(普通保険約款 第1章1条)。対人賠償責任保険を引き受けている任意保険会社が、自賠責保険分を含めて一括払いしますから、自賠責保険と対人賠償保険を別々に請求する必要はありません。自賠責保険が付保されていない場合被保険自動車に自賠責保険が付保されていない場合には、「自賠責保険が付保されていたら支払われたであろう額」の超過額に対してのみ支払われます。自賠責保険が付保されていない場合としては、2つのケースがあり得ます。自賠責無保険車自賠責保険の付保を怠っている場合自賠責適用除外車自賠責保険の付保を免除されている車両の場合項目名ここに説明文を入力)★ -->自賠責無保険車による被害者は、政府の自動車損害賠償保障事業に対し、損害に対する補償を請求することができます。政府保障事業の支払限度額は、自賠責保険の支払限度額と同じですが、健康保険や労災保険等の使用を前提とし、他の法令による給付との調整が必ず行われるため、政府保証事業から支払われる金額は、「自賠責保険によって支払われたであろう額」を下回ることがあります。その場合でも、対人賠償責任保険は、「自賠責保険によって支払われたであろう金額」の超過額についてのみ、保険金を支払うことにしています。自賠法の「運行」に当たらない事故の場合自賠法の「運行」に当たらない事故の場合は、保有者に自賠法3条の運行供用者責任が発生しませんから、自賠責保険が付保されていても、自賠責保険金は支払われません。ただし、自賠法の「運行」に当たらなくても、保険約款の「所有、使用または管理」に当たり、被保険者が、民法709条等に基づく損害賠償責任を負う場合は、その損害の全額が、対人賠償責任保険から支払われます。対人賠償責任保険では、自賠責保険によって支払われる金額の超過額が保険金として支払われます。この場合は、損害の全額が、自賠責保険によって支払われる金額(0円)の超過額となるのです。まとめ交通事故による人身損害に対する損害賠償は、強制保険である自賠責保険と、任意保険である対人賠償責任保険の2階建て構造となっています。対人賠償責任保険は、損害賠償額のうち自賠責保険によって支払われる金額を超過する金額に対して保険金を支払う、上積み保険です。自賠責保険は、自動車の「運行」によって他人を死傷させた場合に保険金が支払われ、対人賠償責任保険は、自動車の「所有、使用または管理」に起因して他人を死傷させた場合に保険金が支払われます。対人賠償責任保険は、自賠責保険よりも広い保険事故をカバーします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『自賠責保険のすべて 13訂版』保険毎日新聞社 88~92ページ・『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社 24~30ページ・『交通事故事件対応のための保険の基本と実務』学陽書房 77~79ページ、122~125ページ・『新版逐条解説自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 50~59ページ・「逐条解説自動車損害賠償保障法第2版』弘文堂 6~19ページ
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  • 自動車保険の支払方法
    加害者側の自動車保険から被害者が損害賠償額の支払を受ける方法
    自賠責保険と対人賠償責任保険の被保険者は、人身事故により損害賠償責任を負った加害者です。本来、被保険者として保険金の支払いを請求できるのは、加害者です。他方で、被害者が、加害者の加入している自賠責保険や対人賠償責任保険から、直接、損害賠償額の支払いを受けることもできます。2つの方法があり、どちらの方法で損害賠償額の支払いを受けるかは、被害者が選択できます。自動車保険の構造と被害者の直接請求権まず、自賠責保険と任意保険の関係、被害者の直接請求権について、簡単に見ておきましょう。自賠責保険と任意保険の違いについて詳しくはこちらをご覧ください。自動車保険は強制保険と任意保険の2階建て構造自動車保険には、自賠責保険と任意保険があります。自賠責保険は、保険契約が法律(自動車損害賠償保障法)で義務付けられた強制保険です。対人賠償を補償する保険で、支払基準は国が定め、最低限の補償にとどまります。任意保険は、加入が任意・自由な自動車保険です。自賠責保険でカバーされない損害を補償する保険で、支払基準は各保険会社が定めます。事故の相手への損害賠償を補償する保険(対人・対物賠償責任保険)と、自身の怪我や物損を補償する保険(人身傷害保険や車両保険など)があります。任意保険の種類はこちらをご覧ください。対人賠償については、自賠責保険が最低限の補償をし、不足分を対人賠償責任保険が上積みしてカバーする 2階建て構造となっています。対人賠償責任保険が支払うのは、損害賠償額のうち、自賠責保険によって支払われる金額を超過する部分だけです。自動車保険標準約款は、対人賠償責任保険に関し、「被保険者が法律上の賠償責任を負担することによって被る損害の額」が、「自賠責保険等によって支払われる金額」を超過する場合に限り、その超過額に対してのみ保険金を支払うと定めています(標準約款第1章2条2項)。自賠責保険・対人賠償保険に対する被害者の直接請求権自賠責保険と対人賠償責任保険に対し、被害者が損害賠償額の支払いを直接請求することができます。被害者請求ともいいます。自賠責保険に対する被害者の直接請求権は、自賠法(自動車損害賠償保障法)第16条1項と第17条1項で、対人賠償責任保険に対する被害者の直接請求権は、自動車保険標準約款第1章11条1項で、それぞれ定めています。自賠法16条1項(保険会社に対する損害賠償額の請求)第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。※第3条の規定とは、運行供用者責任(自動車損害賠償責任=自賠法3条)についての規定です。自賠法17条1項(被害者に対する仮渡金)保有者が、責任保険の契約に係る自動車の運行によって他人の生命又は身体を害したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、政令で定める金額を第16条第1項の規定による損害賠償額の支払のための仮渡金として支払うべきことを請求することができる。自動車保険標準約款第1章11条1項(損害賠償請求権者の直接請求権―対人賠償)対人事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合は、損害賠償請求権者は、当会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、当会社に対して第3項に定める損害賠償額の支払を請求することができます。自動車保険に被害者が直接請求して支払を受ける2つの方法それでは、被害者が、加害者の加入している自動車保険から損害賠償額の支払いを受ける2つの方法について、見ていきましょう。加害者側の自動車保険から、被害者が直接支払いを受ける2つの方法とは?被害者が、加害者の加入している自賠責保険や対人賠償責任保険から、損害賠償額の支払を受ける方法とは、次の2つの方法です。先に自賠責保険から支払いを受け、不足額を任意保険から支払いを受ける方法任意保険から自賠責保険分を含めて一括で支払いを受ける方法上で見たように、対人賠償責任保険(任意保険)は、自賠責保険の支払額で足りない金額を補填する保険ですから、まず自賠責保険の支払いを受け、その上で、不足する額を任意保険から支払いを受ける、というのが本来の姿です。ですが、この方法だと、自賠責保険と任意保険の両方に請求しなければならず、手間がかかります。そこで、任意保険会社が、自賠責保険分を含めて一括で支払うサービスを行っています。任意保険会社が立て替えて支払った自賠責保険分は、あとで自賠責保険に求償する仕組みです。自賠責保険分を先に支払を受けるか、任意保険会社に自賠責保険分を含めて一括払いしてもらうか、いずれの方法で損害賠償額の支払を受けるかは、被害者が選択できます。たいていは任意保険会社による一括払いを選択しますが、先に自賠責保険に直接請求して支払いを受ける方が、最終的に受領できる損害賠償額が多くなる場合がありますから、慎重に考えて選択することが大切です。自賠責保険に対する直接請求について詳しく見る任意保険会社による一括払いについて詳しく見る任意保険会社による一括払い対応を希望する場合は、任意保険会社に一括払いの同意書を提出すればよいだけです。もし、一括払いに同意していても、自賠責保険に直接請求したいときは、同意を撤回すれば、いつでも任意保険会社による一括払いを中止できます。先に自賠責保険に請求して支払を受ける方がよいケースとは?先に自賠責保険に直接請求をして、不足額を後で任意保険に請求する方法がよいのは、次のようなケースです。被害者の過失が大きい場合被害者の過失が大きい場合は、先に自賠責保険から支払いを受ける方が、最終的に受領できる損害賠償額が多くなる可能性があります。任意保険会社による一括払いは、過失割合に応じて厳格に過失相殺するので、被害者の過失割合が大きいと、それだけ損害賠償額が減ります。例えば、被害者の過失割合が6割だったとすると、損害額の4割しか賠償を受けられません。6割が過失相殺により減額となります。それに対し、自賠責保険は、被害者の保護・救済を目的としていますから、被害者に7割以上の重大な過失がある場合に限り減額し、しかも、減額の割合が通常の過失相殺と比べて小さいのです。例えば、被害者の過失が6割だったとしても、自賠責保険は過失相殺せず支払われます。自賠責保険の支払額を超える損害賠償額があれば、その超過額については任意保険が6割の過失相殺をして支払うことになります。 後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受ける場合後遺症が残る場合は、認定される後遺障害等級によって損害賠償額が決まるので、適正な後遺障害等級の認定を受けることが重要になります。任意保険会社による一括払いの場合は、任意保険会社が、自賠責に後遺障害の認定を受けるための申請書類を出します。保険会社が手続きをしてくれるので被害者は手間がかからないのですが、形式的に書類をそろえて申請するだけですから、後遺障害が非該当となったり、低い後遺障害等級しか認定されないことが少なくないのです。ですから、後遺障害等級の認定を受ける際には、被害者が、自賠責に直接請求する方がよいのです。ただし、この場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談・依頼することが大切です。このほかにも、先に自賠責保険に直接請求しておく方が良い場合もあります。詳しくは、次のページをご覧ください。相手の自賠責保険に被害者請求した方が得する4つのケースまとめ被害者が、加害者の加入している自動車保険(自賠責保険・任意保険)から支払いを受けるには、①自賠責保険から支払いを受け、その上で不足する額を任意保険から支払いを受ける方法、②任意保険会社から、自賠責保険分を含めて一括で支払いを受ける方法、の2つの方法があります。いずれの方法で支払いを受けるかは、被害者が選択することができます。任意保険会社による一括払いの方が便利ですが、先に自賠責保険に直接請求して損害賠償額の支払いを受ける方が、最終的に受領額が増え、有利な結果となる場合がありますから、慎重に選択することが大切です。お困りのことがあれば、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社 28~30ページ、56~62ページ
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  • 自動車保険に未加入
    交通事故加害者が任意自動車保険・自賠責保険に入っていないとき
    加害者が、任意自動車保険(対人賠償責任保険)や自賠責保険に入っていなかったら、被害者は十分な損害賠償を受けられません。そんなとき、被害者の負担を少しでも減らせる方法をご紹介します。加害者が任意保険に加入していなかったら?加害者が任意保険(対人賠償責任保険)に加入していなかった場合、被害者の自己負担を減らすには、2つの方法があります。相手方の自賠責保険に直接請求する1つは、加害者の加入している自賠責保険に、損害賠償額を直接請求する方法です。自賠責保険は法律(自動車損害賠償保障法=自賠法)で契約締結が義務づけられていますから(自賠法5条)、基本的には最低でも自賠責保険による補償は受けられます。自賠責保険に対する被害者請求権を活用する自賠責保険の被保険者は加害者ですから、保険金を請求できるのは加害者です。しかも、被害者に損害賠償金を支払ってからでないと、保険金を請求できない仕組みになっています。これでは、加害者に資力がなければ、被害者は、自賠責保険分すら損害賠償を受けられません。そこで、自賠法(自動車損害賠償保障法)では、被害者が、加害者の加入する自賠責保険に直接請求する権利が認められています(自賠法16条)。これを「直接請求権」または「被害者請求権」といいます。加害者に損害賠償責任が発生した場合、被害者は、直接、自賠責保険会社に対し、保険金額の限度において損害賠償額の支払を請求できます。また、治療費等の差し迫った出費にあてるため、被害者には仮渡金の請求も認められています(自賠法17条)。仮渡金請求は、加害者の損害賠償責任の有無に関わりなく、また損害賠償額が確定していない段階でも、請求可能です。加害者が任意保険に加入していなければ、任意保険会社による一括払いはありませんから、治療費は、被害者が支払うことになります。治療費の支払に困るようなときは、相手方の自賠責保険会社に対し、まず仮渡金請求(自賠法17条請求)をし、治療が終了・症状固定となった段階で本請求(自賠法16条請求)をすることもできます。自賠責保険に対する直接請求自賠責保険に対する仮渡金請求自賠責保険から保険金または損害賠償額が支払われるのは、厳密には「保有者に損害賠償責任が発生したとき」です。保有者とは「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するもの」です(自賠法2条3項)。なので、泥棒運転中の事故のように、保有者に損害賠償責任が発生しない場合は、自賠責保険に対する損害賠償額の請求はできません。健康保険や労災保険を使う自賠責保険には、支払限度額があります。例えば、傷害による損害であれば、治療費・休業損害・慰謝料等すべて合わせて、被害者1人につき上限120万円です。ですから、健康保険等を使って治療することが大切です。交通事故による怪我の治療は、原則として自由診療なので10割負担ですが、健康保険を使用することで、3割の自己負担で済みます。治療費は病院への支払いで消えますから、治療費の支出を低く抑えることで、休業損害や慰謝料として受け取れる金額が増えるのです。交通事故は健康保険を使えない? 病院が健康保険診療を嫌う本当の理由交通事故で健康保険や国民健康保険を使うメリット・デメリット交通事故の治療で健康保険を使うべきケース・自由診療でよいケース勤務中や通勤中の事故で、労災保険を使用できる場合は、必ず労災保険を使いましょう。治療費の自己負担がゼロになるほか、多くのメリットがあります。交通事故で労災保険を使うメリット・デメリット・注意点交通事故が業務災害・通勤災害だったときの労災保険給付・補償の内容自分の加入している人身傷害保険に請求するもう1つは、被害者自身が加入している人身傷害保険(任意保険の1つ)に請求する方法です。人身傷害保険は、被保険者が事故で負傷して被った損害(治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料など)について、加害者との示談が成立していなくても、また過失割合に関係なく、たとえ被害者の過失が大きくても、約款所定の損害額基準にもとづいて算定した保険金を支払う保険です。ただし、人身傷害保険の損害額基準は、裁判所基準に比べて低いので、裁判所基準で算定した損害額(適正な損害賠償額)を全額補償されるわけではありませんが、それでも自賠責保険による支払いを上回る金額を受領できる可能性があります。人身傷害保険のほかにも、搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険などの利用も可能ですから、加入していればその利用を検討するとよいでしょう。人身傷害保険(人身傷害補償保険)のメリット・デメリット人身傷害保険金と損害賠償金のどちらを先に請求すると有利か?搭乗者傷害保険は定額で支払われ損害賠償額から控除されない人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違い無保険車傷害保険は無保険車による死亡・後遺障害を補償加害者が自賠責保険に加入していなかったら?自賠責保険の加入は法律で義務付けられていますが(自賠法5条)、自賠責保険に加入していない車両もあります。このような無保険車が交通事故(人身事故)を起こした場合には、自賠責保険による最低限の救済すら受けることができません。この場合は、国による自動車損害賠償保障事業(政府保障事業)に請求することにより、おおむね自賠責保険と同程度の金額の支払を受けることができます。なお、政府保障事業は、健康保険法や労災保険法などの法令で定める給付を受けられる場合には、他法令給付が優先され、それを控除して政府保障事業から填補が行われます。そのため、健康保険や労災保険等を使って治療したり、給付を受けておくことが大切です。政府保障事業の対象となる事故は?政府保障事業と自賠責保険の違いまとめ交通事故の加害者が、任意自動車保険(対人賠償責任保険)に加入していないときは、被害者が、加害者の加入する自賠責保険に対して損害賠償額の支払いを直接請求したり、自分の加入する任意保険の人身傷害保険等に保険金の支払を請求することで、自己負担を軽減することができます。また、加害者が自賠責保険に加入していない場合は、政府保障事業に請求することができます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『自賠責保険のすべて 13訂版』保険毎日新聞社 120~122ページ・『交通事故事件対応のための保険の基本と実務』学陽書房 97~99ページ・『新版 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 128~130ページ、152~153ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 36~39ページ
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  • 任意自動車保険
    任意自動車保険の種類と内容|責任保険と自身の損害に備える保険
    任意自動車保険には、相手への賠償責任に備える保険と自身の損害に備える保険があり、備えたいリスクに応じて、補償内容や保険金額を選んで契約することができます。任意自動車保険は、自動車事故により生じるリスクのうち、自賠責保険でカバーできないリスクに備えるための保険です。任意保険の種類任意自動車保険には、大きく2つの保険があります。1つは、事故を起こして損害賠償責任が発生したとき、相手に生じた損害を賠償するための保険です。これを責任保険といいます。もう1つは、自身に生じた損害を補償するための保険です。相手に賠償資力がない場合や自損事故の場合などに活用できます。それぞれ、人損と物損について、保険があります。次のように分類されます。人損物損相手への賠償・対人賠償責任保険・対物賠償責任保険自身の補償・人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険・無保険車傷害保険・自損事故傷害保険・車両保険このほか、保険でカバーされる事故の範囲を広げる特約、逆に保険事故を限定して保険料を安くする限定特約があります。最近は弁護士費用特約も普及しています。各保険の概要を見ていきましょう。相手への賠償責任に備える保険(責任保険)責任保険は、自動車事故により、人を死傷させたり、物を損壊させたりしたりして、損害賠償責任を負ったときに、相手への賠償によって生じる損害を填補する保険です。つまり、自動車事故を起こして、加害者になったときの賠償責任に備える保険です。保険法は、責任保険契約について「損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害を填補するものをいう」と規定しています(保険法17条2項)。任意自動車保険の責任保険には、「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」があります。対人賠償責任保険対人賠償責任保険は、自動車事故によって他人を死傷させたことにより、法律上の損害賠償責任を負った場合に、自賠責保険で支払われる限度額を超える損害賠償額に対して、保険金を支払う保険です。人身損害については、自賠責保険からも保険金が支払われますが、自賠責保険には支払限度額があるため、限度額を超える部分を対人賠償保険がカバーする仕組みです。契約保険金額は、被害者1名あたりです。現在は、賠償額の高額化にともない、保険金額を無制限とする保険契約が主流になっています。なお、対人賠償は、1事故あたりの保険金額については設定していません。対物賠償責任保険対物賠償責任保険は、自動車事故によって他人の財物を損傷させたことにより、法律上の損害賠償責任を負った場合に、保険金を支払う保険です。他人の財物に損害を与えたときは、修理費用や買替費用などのほか、例えば、店舗に車が突っ込んだ場合の休業損害や営業損失、相手がトラックやタクシーなど業務車両だった場合の休車損害などが発生します。このような相手の直接的・間接的損害を補償する保険です。契約保険金額は、1事故あたりです。複数の相手に損害を与えたときは、それらの合計額について、契約保険金額を限度に支払われます。契約保険金額が、対人賠償は被害者1名あたりであるのに対し、対物賠償は1事故あたりです。基準が異なりますから、注意が必要です。保険金が支払われないケース対人・対物賠償責任保険は、「他人」に損害を与え、賠償責任が生じた場合に損害賠償を補償するものです。ここで注意が必要なのは、自賠責保険と任意保険では、「他人」の定義が異なること。自賠責保険では、運行供用者以外は家族であっても「他人」ですが、任意保険では、家族は「他人」に該当しません。任意保険では、同居する親族は経済的に同一と見なされ、同一生計の家族に対する損害賠償のための保険金支払いは、適切でないと考えられているからです。任意保険と自賠責保険では「他人」の範囲が異なり、任意保険は、相手が家族の場合や家族が所有・管理する物の損害は免責になるので注意が必要です。例えば、事故の相手が配偶者の車だった場合や、自宅で車庫入れの際に家族を轢いてしまった、自宅の車庫にぶつけて壁やガレージが破損したという場合には、対人・対物保険金は支払われません。対人・対物賠償保険に特有の免責事由について詳しくはこちら示談代行サービス現在の対人・対物賠償保険は、示談代行サービス付きが一般的です。被保険者の同意があれば、保険会社が、被保険者の代理人として、被害者との示談交渉、調停、訴訟を行い、損害賠償額を確定させて解決するサービスです。そのため、被害者は、保険会社の担当者と示談交渉することになります。なお、示談代行は「保険会社が被保険者に対して支払責任を負う限度」で行うものです。なので、被保険者が法律上の損害賠償責任を負わない事故(無責事故)や免責条項に該当する事故(免責事故)など、保険会社が支払い責任を負わない場合には、保険会社は示談代行できません。また、被保険者が保険会社による示談代行に同意しない場合、被害者が保険会社と直接交渉することに同意しない場合なども、保険会社が示談代行することはできません。「もらい事故」は保険会社が示談代行できない自身の損害に備える保険(傷害保険・車両保険)自身の損害に備える保険には、保険契約している自動車(被保険自動車)の運転者・同乗者が死傷した場合などの損害(人損)を補償する「傷害保険」と、被保険自動車の損害(物損)を補償する「車両保険」があります。なお、これらの保険は、対人・対物賠償責任保険よりも免責事由を広く定めているので、注意が必要です。傷害保険・車両保険に特有の免責事由について詳しくはこちら傷害保険傷害保険には、「人身傷害補償保険」「搭乗者傷害保険」「無保険車傷害保険」「自損事故傷害保険」があります。人身傷害補償保険人身傷害補償保険は、自動車事故の被害者になった場合に備える保険です。人身傷害保険とも呼ばれます。自動車事故で被保険者が死傷した場合に、加害者の有無や過失割合に関係なく、保険約款に定める基準で算定した損害額につき、契約した限度額の範囲で保険金が支払われる保険です。相手方の責任保険から損害賠償を受ける場合には過失相殺による賠償金が減額されますが、人身傷害保険は過失相殺されることなく、損害の全額が保険金として支払われるのが特徴です。相手との示談交渉も不要です。なお、特に定めがない限り、通常は被保険自動車に搭乗中の事故が保険金支払いの対象です。人身傷害補償保険について詳しく見る搭乗者傷害保険搭乗者傷害保険は、被保険自動車に搭乗中の運転者や同乗者が死傷した場合に備える保険です。被保険自動車に搭乗中の被保険者が事故で死傷した場合、被害の内容に応じ定額の保険金(約款で定められた金額)が支払われます。相手の自賠責保険・任意保険が支払われる場合でも、重ねて受け取ることができます。損害を填補する保険ではないので、損害賠償額から控除されることもありません。人身傷害保険金、無保険車傷害保険金、自損事故傷害保険金と重ねて受け取れます。搭乗者傷害保険について詳しく見る無保険車傷害保険無保険車傷害保険は、賠償資力の乏しい加害車によって被害を被った場合に備える保険です。対人賠償保険が付いていない等の無保険自動車との事故により、被保険者が死亡または後遺障害を被り、相手方から十分な賠償を受けられない場合に支払われる保険です。死亡・後遺障害のみが対象で、後遺障害に至らない傷害のときは対象となりません。自賠責保険超過分について、対人賠償保険の基準により支払われ、過失相殺があります。無保険自動車とは、相手自動車が次のような場合をいいます。対人賠償保険が付いていない場合対人賠償保険が付いていても免責に該当し、対人賠償保険金が支払われない場合相手自動車の対人賠償保険金額が、被害車両の無保険車傷害保険金額よりも低い場合当て逃げにより相手自動車が不明の場合無保険車傷害保険について詳しく見る自損事故傷害保険自損事故傷害保険は、単独事故や相手が無過失で賠償責任の生じない場合に備える保険です。傷害を受けた被保険者に自賠法3条にもとづく損害賠償請求権が発生しない場合に保険金が支払われます。保険金には、死亡保険金、後遺障害保険金、介護費用保険金、医療保険金があり、保険約款に定められた定額の保険金です。人身傷害保険が組み込まれている保険商品の場合には、そちらでカバーされます。自損事故傷害保険について詳しく見る車両保険車両保険は、被保険自動車が、衝突、接触、墜落、転覆、物の飛来・落下、火災、爆発、盗難、台風、洪水、高潮など偶然な事故によって損害を被った場合に保険金が支払われる保険です。補償範囲や保険金額は契約内容によって異なります。車両保険について詳しく見るまとめ任意自動車保険は、自動車事故の加害者になったときの損害賠償責任に備えるだけでなく、自身の損害にも備える保険です。相手方から十分な賠償を受けられないときは、自身の任意保険を確認し、補償を受けられないかチェックしてみましょう。ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。任意保険の対人・対物賠償責任保険には、ほとんどの場合、示談代行サービスが付いているので、交通事故の示談交渉は、通常、損害保険会社の担当者が相手となります。交渉相手は自動車保険のプロです。過失割合で揉めそうなときや、示談交渉に不安があるときは、早めに弁護士に相談することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 325~328ページ、345~347ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 372~378ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 357~366ページ・『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社
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  • 人身傷害保険のメリット・デメリット
    人身傷害保険(人身傷害補償保険)のメリット・デメリット
    人身傷害保険(人身傷害補償保険)は、被保険者が事故の被害者となった場合に、被保険者自身に生じる人身損害を補償する保険です。ここでは、人身傷害保険のメリット・デメリット、人身傷害保険金を請求するときの注意点をご紹介します。人身傷害保険と人身傷害補償保険の違いは、名称が違うだけです。最初は人身傷害補償保険として発売されましたが、代位の範囲をめぐる問題もあり、今は「補償」を外し、人身傷害保険としているものが多いようです。人身傷害保険のメリット人身傷害保険は、被保険者が事故で負傷し損害を被った場合に、被保険者の過失の有無・割合に関わらず、約款所定の基準(人傷基準)によって算定される損害額の全額につき、保険金を支払う保険です。そのような性格の保険であることから、人身傷害保険には、次のようなメリットがあります。人身傷害保険のメリット被保険者に過失があっても、過失相殺せず保険金が支払われます。相手方と示談が成立していなくても、迅速に保険金が支払われます。自損事故や加害者不明の事故も、保険金が支払われます。被保険者の過失が大きい場合、事故の責任や過失割合について争いがあり損害賠償金の受領までに時間がかかる場合、相手が任意自動車保険に加入していないため賠償資力がない場合に、特に有効です。人身傷害保険のデメリット人身傷害保険は、人傷基準(約款所定の損害額基準)で損害額を算定し、被害者の過失分も含めて迅速に保険金が支払われるのがメリットですが、実は、この人傷基準で損害額を算定することがデメリットにもなります。人傷基準が、裁判所基準よりも低いからです。そのため、人傷基準で算定した損害額(人傷基準損害額)は、裁判所基準で算定する損害額(裁判基準損害額)よりも低い金額となるのです。さらに、契約した保険金額が支払限度額となります。例えば、人傷基準損害額が8,000万円であったとしても、保険金額が5,000万円であれば、支払われる保険金額は5,000万円です。人傷基準と裁判所基準は、どれくらい差があるのか、例えば、慰謝料(人傷基準では精神的損害といいます)を比べると、裁判所基準人傷基準死亡慰謝料2,800万円2,000万円後遺障害14級の慰謝料110万円40万円※裁判所基準は「赤い本」、人傷基準は「東京海上日動社の約款」を参考。ただし、逸失利益については、被保険者の現実収入が少なくても、年齢別平均賃金によって休業損害や将来の逸失利益を算定することが認められている場合があるので、人傷基準損害額が裁判基準損害額を上回るケースがあります。人身傷害保険金が、民事上認められるべき損害額より低額に抑えられていることについて、「高額化してきた対人賠償保険金の支払いに代えて、人身傷害保険の支払基準にもとづく、より低額な保険金の支払いで解決できる状況を実現したいという保険会社側の意図が背景にあるのではないか」という指摘があります。(東京弁護士会法友全期会・交通事故実務研究会『改定版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 48~49ページ)損害賠償請求と人傷保険金請求は両方できる加害者(相手方保険会社を含む)に対する損害賠償請求と、自分の加入する人身傷害保険に対する保険金の支払い請求は、両方請求することができます。もちろん、損害が二重に填補されないように調整されます。両方に請求することで損害を100%回復できる可能性がある両方に請求することで、それぞれのデメリットをカバーすることができ、損害を100%回復できる可能性があります。損害賠償請求は、裁判所基準で損害賠償額を算定できますが過失相殺があります。人身傷害保険は、過失相殺されませんが、人傷基準で損害額を算定します。双方が互いに、デメリットをメリットでカバーしあえるのです。どちらを先に請求してもかまいません。人身傷害保険を受け取った上で損害賠償請求してもよいし、逆に、損害賠償金を受け取った上で過失相殺された額を人身傷害保険に請求することも可能です。人身傷害保険金を受領した後で損害賠償請求するときは、保険会社は支払った保険金の範囲で被害者の損害賠償請求権を代位取得しますから、保険会社に移転する額を、損害賠償請求額から控除しなければなりません。逆に、損害賠償金を受領した後で人身傷害保険金を請求するときは、受領した賠償額を控除して人身傷害保険金が支払われます。なお、どちらを先行するかによって、トータルで受領できる金額に差が生じることがありますから、注意が必要です。どちらを先に請求するか、個別事情を考慮して判断する必要がありますから、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に頼むメリットなお、人身傷害保険は、被保険者に保険金として支払われます。約款所定の損害額基準にしたがって損害額を算定し、保険金の支払上限額は保険契約により決まっています。つまり、人身傷害保険は、裁判所基準で算定した損害賠償額を請求できるわけではありません。そのため、人身傷害保険金の支払い請求を弁護士に頼んでも、損害賠償請求のように金額が増えるわけではありません。もっとも、加害者(相手方保険会社を含む)に対する損害賠償請求に関しては、弁護士に頼むことで増額が期待できます。損害賠償と人身傷害保険の両方を請求することで、被害者に過失があっても損害の全額を回収できる可能性がありますから、弁護士に頼む意義は大きいのです。【相談無料】交通事故に強い弁護士事務所はこちら人身傷害保険金が支払われる事故・支払われない事故人身傷害保険の保険金支払いの要件・対象、保険金の算定方法について、見てみましょう。東京海上日動社の約款(2022年1月時点)を参考にしています。人身傷害保険金が支払われる事故(保険事故)人身傷害保険金が支払われるのは、人身傷害事故が生じ、被保険者またはその父母・配偶者・子に損害が生じた場合(約款第1条1項)です。人身傷害事故とは?人身傷害事故については、次のように定義しています(約款1条2項)。人身傷害事故とは、日本国内において、次のいずれかに該当する急激かつ偶然な外来の事故により、被保険者が身体に傷害を被ることをいいます。①自動車または原動機付自転車の運行に起因する事故②被保険自動車の運行中の、次のいずれかに該当する事故ア.飛来中または落下中の他物との衝突イ.火災または爆発ウ.被保険自動車のの落下加害者の損害賠償責任の有無は関係ないので、自損事故や無保険車との事故も補償されます。被保険者のほか、その父母・配偶者・子に生じた損害も支払い対象人身傷害保険は、被保険者本人に生じた損害のほか、その被保険者が損害を被ったことにより、その被保険者の近親者である父母・配偶者・子に生じた損害も、保険金支払いの対象となります。被保険者の父母・配偶者・子に生じた損害とは、近親者の固有の精神的損害を指します。近親者が負担した治療費などは、運用上、被保険者本人の損害となります。被害者が死亡した場合、民法711条の規定により、被害者の父母・配偶者・子は、固有の権利として、加害者に対して精神的な損害の賠償を請求することが可能です。被害者に重度の後遺障害が残った場合も同様です。近親者に固有の慰謝料請求権について詳しくはこちらをご覧ください。人身傷害保険では、被保険者を次のように定義しています(約款2条1項)。① 被保険自動車の正規の乗車装置またはその装置のある室内に搭乗中の者② ①以外の者で被保険自動車の保有者③ ①②以外の者で被保険自動車の運転者ただし、②③とも被保険自動車の運行に基因する事故の場合に限る。保険法は、損害保険契約における被保険者を「損害保険契約により填補することとされる損害を受ける者」(保険法2条4号イ)と定めていますが、人身傷害保険における被保険者は、それよりも狭く、保険事故の客体のみを指している、と解されています。(参考:『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社 376ページ)特約により、保険事故・被保険者の範囲が拡張他車搭乗中や車外自動車事故の補償特約を付けることにより、保険事故と被保険者を拡張することができます。この特約により、被保険自動車以外の自動車に搭乗中の事故、歩行中に自動車に衝突された事故なども補償対象となります。主な被保険者は、次の通りです(人身傷害の他車搭乗中および車外自動車事故補償特約3条)。記名被保険者記名被保険者の配偶者(内縁を含む)記名被保険者またはその配偶者の同居の親族記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子上記以外で被保険自動車の正規の乗車装置または正規の乗車装置のある室内に搭乗中の者契約車両に乗車中以外の事故を補償する特約は、各社によって名称も内容も異なります。「人身傷害の他車搭乗中および車外自動車事故補償特約」「人身傷害車外事故特約」「自動車事故特約」などがあります。なお、こうした契約車両に乗車中以外の事故に対する補償は、人身傷害保険が発売された当初は、特約でなく普通保険約款に含まれていたものです。普通保険約款において、保険事故・被保険者の範囲を限定する方向で改定が行われています。人身傷害保険金が支払われない事故とは?免責事由に該当すると、人身傷害保険金は支払われません。例えば、次のような場合が免責事由に該当します。免責事由の例戦争、核燃料物質、放射能汚染等によって生じた損害地震、噴火、これらによる津波によって生じた損害被保険自動車を競技、曲技または試験のために使用すること被保険者の故意または重大な過失によって、その本人に生じた損害被保険者の無免許運転、酒気帯び運転、麻薬等の影響を受けた運転によって、その本人に生じた損害対人・対物賠償責任保険と異なり、台風・洪水・高潮は免責事由となりません。また、対人・対物賠償責任保険と異なり、故意以外に重大な過失が免責事由となっている場合があります。重大な過失を免責事由とするかどうかは、保険会社によって異なります。どの程度の過失で「重大な過失」となるかについては、故意に準じるものに限定すべきという見解と、一般人を基準として甚だしい不注意であれば足りるとの見解の対立があります。酒気帯びは、社会通念上、酒気帯びといわれる状態をいい、外観上(顔色、呼気等)認知できる状態であることをいうものと解されています。酒に酔った状態であることや、運転への影響が外観上認知できることは必要ないと解されています。人身傷害条項の規定は、被保険者ごとに個別に適用されます(約款第2条3項)。そのため、仮に、運転者本人が、無免許運転で免責になったり、酒気帯び運転で免責になったとしても、運転者以外の被保険者の損害については免責になりません。【関連】任意自動車保険に共通する免責事由対人・対物賠償責任保険に特有の免責事由傷害保険に特有の免責事由人身傷害保険金の算定方法人身傷害保険は、人傷基準にもとづき算出した損害額につき、契約保険金額(支払限度額)の範囲で支払われます。例えば、人傷基準により算定される損害額が8,000万円だったとすると、契約保険金額が5,000万円の場合は、5,000万円の保険金が支払われ、契約保険金額が1億円の場合は、8,000万円が支払われます。なお、保険約款には支払限度額に関する特則があり、被害者に重度の後遺障害が残った場合は、支払限度額が保険証券記載の保険金額の2倍になります。先に損害賠償金や自賠責保険金などを受領していれば、控除して人身傷害保険金を請求することになります。その場合の計算方法について、詳しくはこちらをご覧ください。まとめ人身傷害保険は、加害者の過失の有無や割合に関係なく、契約した保険金額を限度に、約款所定の損害額基準(人傷基準)で算定して支払われる保険です。人身傷害保険は、被害者に過失があっても過失相殺されることなく、全損害に対して保険金が支払われることが最大のメリットです。ただし、人傷基準は裁判所基準より低いため、人身傷害保険金の額は、裁判所基準で算定した損害額よりも低額になるのが通例です。この点が、人身傷害保険のデメリットです。被害者の過失が大きい場合は、過失相殺により損害賠償額が大きく減額されます。そんなとき、人身傷害保険金を併せて請求すれば、過失相殺された部分を含め全損害が補償される可能性があります。人身傷害保険は、保険会社によっても、保険商品の発売時期によっても異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社 364~421ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 45~49ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 329~331ページ・『Q&A 新・自動車保険相談』ぎょうせい 357~369ページ・『Q&Aハンドブック交通事故診療 全訂新版』創耕舎 48~51ページ
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  • 人身傷害保険と損害賠償のどちらを先に請求するか
    人身傷害保険金と損害賠償金のどちらを先に請求すると有利か?
    人身傷害保険金と損害賠償金は、両方を受け取ることができますが、どちらを先に請求するかによって、最終的に受領できる金額に差が出る場合があります。人身傷害保険金の計算方法人傷保険金と損害賠償金のどちらの請求を先行させるのがよいか、を考える前に、人傷保険金の算出方法を見ておきましょう。人身傷害保険は、保険金の支払い対象となる損害額を、約款所定の人身傷害条項損害額基準(人傷基準)で算定し、保険金額(保険証券記載の金額)を限度に支払われます。既払金があれば控除するその際、すでに損害賠償金等を受領していれば、既払金として控除します。二重給付を受けることによる利得防止のためです。つまり、こうです。[支払保険金]=[人傷基準損害額か保険金額の少ない方の額]-[既払金]※人傷基準で算定した損害額を「人傷基準損害額」と呼びます。最近は、既払金額をそのまま控除するのでなく、人傷基準損害額と支払われる人傷保険金との差額を自己負担額とし、「既払金の合計額が自己負担額を超えるときは、その超過額を控除して保険金を支払う」と定める約款が多くなっています。そうすると、既払金は、人身傷害保険で補償されない自己負担部分に優先的に充当されます。既払金が自己負担額以下のときは、保険金額(支払限度額)がそのまま保険金として支払われ、既払金が自己負担額を超過するときは、その超過額を差し引いて保険金が支払われます。具体的に、次のような事例で考えてみましょう。【事例】裁判基準損害額:1億円(民事上認められる損害額=裁判所基準で算定した損害額)人傷基準損害額:8,000万円(人身傷害保険の損害算定基準(人傷基準)で算定した損害額)人傷保険金:5,000万円(人身傷害保険から支払われる保険金額=保険契約した限度額)被害者の過失割合:30%(過失相殺後の損害賠償請求額 7,000万円)加害者(相手方保険会社)から損害賠償金7,000万円を受領した上で、人傷保険金を請求するとします。自己負担額は、人傷基準損害額8,000万円と人傷保険金5,000万円との差ですから、3,000万円です。既払金7,000万円が自己負担額3,000万円を超えるので、人傷保険金5,000万円から超過額4,000万円を控除し、支払われる人傷保険金は1,000万円です。損害賠償金7,000万円と人傷保険金1,000万円を合わせて、8,000万円を受領することになります。つまり、加害者への損害賠償請求と人身傷害保険金の請求を両方行うと、人傷基準損害額分が填補されることになります。ちなみに、自己負担額を考慮しない場合は、人傷保険金額5,000万円から既払金7,000万円を控除すると、マイナス2,000万円となり、人傷保険金は支払われないことになります。被害者が受領する金額は、損害賠償金の7,000万円のみです。損害額算定の特則(読替規定)今の人身傷害保険は、損害額算定の特則(読替規定)を定めているのが一般的です。例えば、東京海上日動社の人身傷害保険の約款には、次のような特則(読替規定)があります。賠償義務者があり、かつ、判決または裁判上の和解において、賠償義務者が負担すべき損害賠償額がこの人身傷害条項の別紙の規定と異なる基準により算定された場合であって、その基準が社会通念上妥当であると認められるときは、自己負担額の算定にあたっては、その基準により算定された額を損害額とみなします。※参考:東京海上日動社の約款(2017年4月)。2022年1月~の約款も同じです。各損保会社とも、おおむね同様の内容です。ポイントは次の点です。加害者(賠償義務者)がいる。加害者に対して訴訟を提起し、判決または裁判上の和解において、裁判所が人傷基準と異なる基準で損害額を算定した。裁判所が用いた基準が社会通念上妥当。この場合には、裁判所が用いた基準(裁判所基準)で算定された額を損害額とみなす。つまり、人身傷害保険金は、原則として人傷基準損害額をもとに算出しますが、訴訟が提起され、判決または裁判上の和解により損害額が確定したときは、裁判所が認定した損害額をもとに、人身傷害保険金を算出するということです。この場合でも、人身傷害保険から支払われる保険金の額は、人傷基準損害額が限度となります。社会通念上妥当であることを要件としているのは、被害者が裁判所基準を超える基準で提訴し、かつ相手方が欠席して、そのまま欠席判決がなされた場合などを除外する趣旨です。保険会社により表現は異なりますが、こうした読替規定が約款に定められたことにより、人傷保険金と損害賠償金のどちらを先に請求するかによって被害者の受領額に差が生じていた問題は、おおむね解決されています。約款の読み替えは「判決または裁判上の和解」の場合のみ約款の読み替えは、「判決または裁判上の和解」において損害額が確定した場合に限られます。訴訟を提起することなく示談・和解した場合は含みません。したがって、ADR機関による示談の斡旋や裁定は、判決または裁判上の和解ではないので、人傷基準による支払いとなります。具体例で考えると…それでは、人傷保険金と損害賠償金のどちらの請求を先行させるのがよいか、具体的に見ていきましょう。上と同じ事例を考えます。【事例】裁判基準損害額:1億円(民事上認められる損害額=裁判所基準で算定した損害額)人傷基準損害額:8,000万円(人身傷害保険の損害算定基準(人傷基準)で算定した損害額)人傷保険金:5,000万円(人身傷害保険から支払われる保険金額=保険契約した限度額)被害者の過失割合:30%(過失相殺後の損害賠償請求額 7,000万円)【ケース①】示談後に人傷保険金を請求裁判によらず示談で解決した場合です。示談ではありますが、損害額・賠償額は同じとします。損害賠償額7,000万円を受領後に、人身傷害保険金を請求するケースです。自己負担額は、8,000万円-5,000万円=3,000万円超過額は、7,000万円-3,000万円=4,000万円支払われる人傷保険金は、5,000万円-4,000万円=1,000万円受領する金額は、7,000万円+1,000万円=8,000万円人傷基準損害額分は受領できます。ちなみに、約款に自己負担額を定めていない場合は、従来の方式で、人傷保険金の支払額を計算することになります。請求できる人傷保険金が5,000万円ですから、受領した損害賠償額が7,000万円を控除すると、マイナス2,000万円です。この場合は、人傷保険金が支払われません。【ケース②】判決後に人傷保険金を請求損害賠償請求訴訟を提起し判決をもらって解決した場合です。裁判所が損害額を1億円と認定。30%の過失相殺により損害賠償額7,000万円を受領。その後、人傷保険金を請求するケースです。もともと自己負担額は、人傷基準損害額と人傷保険金との差額とされていますが、読替規定により、裁判基準損害額1億円と人傷保険金5,000万円との差額が、自己負担額となります。つまり、自己負担額は5,000万円です。既払金の合計額が自己負担額を超えるときは、その超過額を控除して人傷保険金を支払いますから、既払金の合計額は、受領した損害賠償額7,000万円、自己負担額が5,000万円ですから、超過額は2,000万円。支払われる人傷保険金は、5,000万円-2,000万円=3,000万円受領する金額は、損害賠償金と人傷保険金を合わせて、7,000万円+3,000万円=1億円裁判基準損害額分を受領できることになります。ちなみに、約款に読替規定や自己負担額の定めがない場合は、従来の方式で人傷保険金の支払額を計算しますから、ケース①と同じ結果となります。【ケース③】人傷保険金を受領後に訴訟提起人傷保険金5,000万円を受領後に、損害賠償請求訴訟を提起するケースです。この場合は、人傷保険会社による損害賠償請求権の代位の問題があります。人傷保険金を先に受領すると、人傷保険金を支払った保険会社が、被害者の損害賠償請求権を代位取得します。代位の範囲については、被害者に最も有利な「裁判基準差額説」を最高裁が採用しました(最高裁第一小法廷平成24年2月20日判決)。すなわち、人傷保険金は、被保険者の過失分に優先的に充当し、それを超える部分のみ人傷保険会社が代位します。この事例の場合、支払われた人傷保険金5,000万円は、被害者の過失分3,000万円に優先的に充当され、残り2,000万円分につき、人傷保険会社が損害賠償請求権を代位取得します。被害者の有する損害賠償請求権7,000万円分のうち2,000万円分が保険会社に移転し、被害者の請求権は5,000万円です。被害者が損害賠償請求訴訟を提起し、裁判所が、1億円の損害額、5,000万円の賠償を認定したとすると、被害者の受領する金額は、人傷保険金5,000万円と損害賠償金5,000万円の合わせて1億円です。こうして、裁判基準損害額分を受領できることになります。【ケース④】人傷保険金を受領後に示談交渉人傷保険金5,000万円を受領後に、相手方と示談交渉するケースです。相手方に賠償請求できる金額はケース③で見たように5,000万円です。基本的にはケース③と同じなのですが、被害者、相手方、人傷保険会社の3者の利害が対立している上に、訴訟外ということもあり、ケース③と同様の金額で示談を成立させることは困難です。示談で解決する場合は、ある程度譲歩することが必要です。結局、訴訟での解決となることが多く、このケース④は、ケース③の一過程ということになります。まとめ従前は、人身傷害保険金を受領した後で損害賠償請求するか、損害賠償金を受領した後で人身傷害保険金を請求するかによって、被害者の取得総額に差が生じていました。最高裁が裁判基準差額説を採用し(平成24年2月20日判決)、その後、約款に読替規定が設けられたことから、訴訟を提起して判決・裁判上の和解により裁判所が損害額を確定すれば、人傷先行でも賠償先行でも、人傷保険金と損害賠償金の両方を請求すrことにより、過失相殺前の損害額(裁判基準損害額)を確保できることができようになりました。ただし、人身傷害保険には標準約款が存在せず、保険会社や保険商品の発売時期によって約款内容が異なるので、約款を十分に確認することが必要です。最も有利な損害回復方法を検討するには、個別事情を考慮して判断する必要がありますから、詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故実務入門』司法協会 147~154ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 242~255ページ・『交通事故事件21のメソッド』第一法規 93~103ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 165~169ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 410~425ページ・『新版交通事故の法律相談』青林書院 385~391ページ
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  • 搭乗者傷害保険
    搭乗者傷害保険は定額で支払われ損害賠償額から控除されない
    搭乗者傷害保険は、運転者や同乗者が事故で死傷したとき、死亡・後遺障害・傷害ごとに、契約金額に応じた定額で保険金が支払われます。賠償金、社会保険給付、他の保険金と重ねて受け取ることができます。搭乗者が死傷したとき保険金を定額払い搭乗者傷害保険は、被保険自動車の運転者・同乗者が死傷した場合に、過失割合や他の社会保険からの給付、事故の相手方からの賠償金などにかかわらず、契約金額に応じた定額で保険金が支払われます。搭乗者全員を対象に定額保険金給付保険金の支払い対象は、被保険自動車に「搭乗中の者」全員です。ただし、トラックの荷台に乗っている人や、ハコ乗り(窓から身を乗り出した状態)など「極めて異常かつ危険な方法」で搭乗中の者は除きます。支払われる保険金の種類と支払基準搭乗者傷害保険で支払われる保険金には、搭乗者が死亡した場合の「死亡保険金」、後遺障害が生じた場合の「後遺障害保険金」、医師の治療を受けた場合の「医療保険金」があります。このほか、特別保険金として、「座席ベルト装着者特別保険金」「重度後遺障害特別保険金」があります。保険金ごとに支払限度額の割合(支払率)が定められ、契約金額に応じて、支払われる保険金額が決まります。死亡保険金搭乗者が事故発生から180日以内に、事故での傷害を直接の要因として死亡したとき、1名につき保険金全額(100%)が被保険者の法定相続人に支払われます。後遺障害保険金事故による負傷が原因で、事故から180日以内に後遺障害が認められたとき、障害等級に応じて保険金が支払われます。(等級1級100%~14級4%)医療保険金搭乗者が怪我の治療のために入院・通院した場合に保険金が支払われます。「日数払い」と「部位症状別払い」があり、保険会社により異なります。日数払い…入院・通院にかかった日数分の金額が支払われます。事故発生日から180日が限度です。部位症状別払い…負傷した体の部位・症状ごとに、あらかじめ決められた金額が支払われます。部位症状別払いは、即座に定額の保険金を受け取れますが、入院・通院が長引いても、それ以上の保険金は支払われません。座席ベルト装着者特別保険金座席ベルトを装着していた搭乗者が死亡した場合に、保険金の30%が、死亡保険金と別に支払われます。チャイルドシートを含みます。重度後遺障害特別保険金重度の後遺障害で介護が必要であると認められる場合に、保険金の10%(限度額100万円)が、後遺障害保険金に上乗せして支払われます。後遺障害の症状を訴えている場合(むち打ちなど)でも、それを裏付ける医学的他覚所見(理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査等により認められる異常所見)がないと保険金が支払われません。保険金の支払率と支払われる保険金額(例)契約金額が1,000万円の場合の支払われる保険金額は次のようになります。保険金契約金額に対する支払限度額の割合支払われる保険金(契約金額1,000万円)死亡保険金100%1,000万円後遺障害保険金4~100%40~1,000万円座席ベルト装着車特別保険金30%300万円重度後遺障害特別保険金10%100万円医療保険金契約金額に対する支払限度額の割合支払われる保険金(契約金額1,000万円)日数払い(入院)0.15%15,000円/日日数払い(通院)0.1%10,000円/日部位症状別払い0.05~10%5~100万円※部位症状別払いの場合、ほかにも、治療給付金(1万円)、手術加算金(5万円)、救命救急医療加算金(20万円)などが支払われます。保険金が支払われない主なケース(免責事由)保険金が支払われない主な免責事由には、次のようなものがあります。故意または重大な過失、無免許・酒気帯び・麻薬等運転により、被保険自動車の運転者自身が死傷した場合被保険自動車の使用について正当な権利を有する者の承諾を得ないで、被保険自動車に搭乗中の被保険者が死傷した場合(泥棒運転で搭乗者が死傷した場合)闘争行為、自殺、犯罪行為により、被保険自動車の運転者自身が死傷した場合核燃料物質による事故地震、噴火、またはこれらによる津波戦争、暴動など被保険自動車を競技、曲技、試験のために使用すること被保険自動車に危険物を業務として積載すること【関連】⇒ 任意保険の免責事由搭乗者傷害保険金は損害賠償額から控除されない搭乗者傷害保険で支払われる保険金は、社会保険の給付や生命保険金などを受けていても関係なく、定額で支払われます。搭乗者傷害保険金を受け取っているからといって、損害賠償金から控除されることもありません。また、人身傷害補償保険金、無保険車傷害保険金、自損事故保険金と重ねて支払われます。これは、搭乗者傷害保険金が、実際に生じた損害の填補を目的とした保険金ではなく、該当事由があれば定額で支払われる保険金だからです。最高裁の判断損害賠償額から搭乗者傷害保険金が控除されるかどうかについては、1995年(平成7年)に最高裁が「控除することはできない」と判断を示しました(最高裁判決・平成7年1月30日)。ごく大まかにいうと、次のような理由です。搭乗者傷害条項は、定額の保険金を給付することによって搭乗者やその相続人を保護するもの。搭乗者傷害条項にもとづく保険金は、被保険者が被った損害を填補する性質のものではない。したがって、搭乗者傷害条項にもとづく保険金を損害額から控除することはできない。まとめ搭乗者傷害保険は、自動車事故で、被保険自動車の搭乗者が死傷した場合に保険金が支払われます。運転手・同乗者ずべての搭乗者が対象です。この保険金は、損害を填補するものではなく、契約している保険金額に応じて定額で支払われるものなので、損害賠償額から控除されることはありません。いまでは、医療保険の「日数払い」は保険会社が赤字となるため廃止され、「部位症状別払い」に一本化されたり、中には「部位症状別払い」も廃止し、「一時金払い方式」にしている保険会社もあります。ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違い
    人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違い
    人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険は、被保険自動車に乗っていて事故に遭い、運転者や同乗者が死傷したときに保険金が支払われる保険で、よく似ています。2つの保険は、どう違うのでしょうか?「補償の範囲」も「保険の性格」も異なる人身傷害保険も搭乗者保険も、被保険自動車の搭乗者全員を補償対象とする点は同じですが、補償範囲、保険の性格が異なります。人身傷害保険は、例えば被保険者が歩行中に事故に遭ったときなども補償対象とされ、補償範囲が広くなっています。また、人身傷害保険は被保険者の損害を填補する「損害填補型保険」ですが、搭乗者傷害保険は契約金額に応じて一定の保険金が給付される「給付型保険」で、そもそも保険の性格が異なります。補償範囲の違い人身傷害保険も搭乗者傷害保険も、被保険自動車に乗っていて事故に遭ったとき、その搭乗者(運転者・同乗者)の全員が補償対象となる点は同じです。人身傷害保険は、それ以外の事故も補償されます。人身傷害保険は、被保険自動車に搭乗中の事故のほか、記名被保険者(保険証券記載の被保険者)やその配偶者、同居の家族、別居の未婚の子などが、他の自動車に搭乗中の事故や、歩行中に車やバイクにはねられたなど車外での自動車事故により死傷した場合も、補償の対象となります。つまり、人身傷害保険の方が、搭乗者傷害保険よりも補償の範囲が広いのです。搭乗者傷害保険の被保険者は、被保険自動車の搭乗者ですが、人身傷害保険の被保険者は、記名被保険者とその配偶者、同居の家族、別居の未婚の子、被保険自動車の搭乗者です。保険の性格の違い人身傷害保険と搭乗者傷害保険は、搭乗者に対する補償ということで同じように見えても、実は、そもそも保険の性格が異なります。人身傷害保険は、保険契約の範囲内で、被害者(被保険者)が実際に被った損害を填補する保険です(損害填補型・実損填補型)。一方、搭乗者傷害保険は、被保険者の損害を填補する保険ではなく、被保険者が該当する事故に遭ったときに、保険契約の範囲内で一定額の保険金を給付する保険です(給付型)。そのため、人身傷害保険は、相手側から既に支払いがあった場合などには、支払いのあった額(相手自動車の自賠責保険などからの支払額、加害者からの賠償金など)を損害額から控除した額が、保険金として支払われます。それに対して、搭乗者傷害保険は、加害者からの賠償額や相手自動車の自賠責保険からの支払額などに関係なく、保険契約金額に応じて一定額が支払われます。他の保険と重ねて支払いを受けることができます。また、人身傷害保険は「損害を填補する保険」ですから、治療費などのほか、休業損害や慰謝料も補償の対象になります。一方、搭乗者傷害保険は「損害を填補する保険ではない」ので、休業損害や慰謝料は支払われません。このように、人身傷害保険と搭乗者傷害保険は、そもそも保険の性格が異なるのです。まとめ人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違いをまとめておきます。人身傷害補償保険搭乗者傷害保険補償の範囲被保険自動車の搭乗者全員そのほか、被保険者が歩行中の事故や被保険自動車に搭乗中の事故なども補償被保険自動車の搭乗者全員保険の性格【実損填補型】被保険者の損害を填補する保険で、すでに損害が填補されている部分は、その額を控除される【給付型】契約にもとづき一定額の保険金を給付する保険で、賠償金や他の保険から支払いを受けていても重ねて受け取れる人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険について、詳しくは次のページをご覧ください。人身傷害保険は、過失相殺なしで被害者の損害を全額補償搭乗者傷害保険は、定額で支払われ損害賠償額から控除されないここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 任意保険の免責事由
    任意保険の免責事由|任意自動車保険に共通する免責事由
    任意自動車保険の免責事由は、各保険ごとに多様に定められています。自賠責保険の免責事由は、重複契約を除き「悪意免責」のみですが、任意保険は免責事由が多いので、注意が必要です。ここでは任意保険全体に共通する免責事由について、次の4つに分類してまとめています。事故の発生原因を理由とするもの(故意免責、異常危険免責など)保険料領収前を理由とするもの(領収前免責)保険契約上の義務違反を理由とするもの(告知義務違反にもとづく免責など)保険契約当事者の合意によるもの(限定特約による免責)詳しく見ていきましょう。事故の発生原因を理由とする免責事故の発生原因を理由とする免責には、「故意」「異常危険」「競技・曲技・試験のための使用」があります。① 故意免責故意免責とは、保険契約者や被保険者の「故意」によって生じた損害を免責とするものです。一般的な損害保険契約の場合には「故意または重大な過失」が免責事由とされますが、任意自動車保険において「重大な過失」は、共通の免責事由とはなりません。故意免責と重過失免責保険契約では、保険契約者や被保険者の「故意または重大な過失」によって生じた損害について、保険会社は免責となります(保険法第17条1項)。ただし、責任保険契約は例外で、「故意」だけが免責となり、「重過失」は免責となりません(保険法第17条2項)。これは、被害者救済のためです。責任保険契約とは、損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生じる損害を填補する保険契約です。ですから、任意保険の中でも、賠償責任保険(対人・対物賠償保険)は、保険契約者や被保険者の「故意」によって生じた損害が免責ですが、傷害保険(人身傷害補償保険など)や車両保険では、「故意または重大な過失」によって生じた損害が免責となります。故意免責が適用される被保険者の範囲故意免責が適用される被保険者の範囲は、保険により異なります。例えば、対人・対物賠償保険は「保険契約者・記名被保険者、記名被保険者以外の被保険者」ですが、人身傷害補償保険は「被保険者、保険金の受取人」です。また、記名被保険者以外の被保険者については、被害者との関係などによって、免責の適用が個別に判断されます。「未必の故意」は故意免責に該当するかいわゆる「未必の故意」については、自賠責保険では免責になりません(確定的故意だけが免責です)が、任意保険では「未必の故意」が故意免責に該当する場合があります。「未必の故意」が故意免責に該当するかどうかは、未必の故意(認識)と実際の結果(損害)によります。2つの例で考えてみましょう。相手を負傷させるかもしれないが、負傷させても構わないという気持ちで自動車を急発進させたら、相手が転倒して負傷した。相手を負傷させるかもしれないが、負傷させても構わないという気持ちで自動車を急発進させたら、相手が転倒して打ち所が悪く死亡してしまった。①は、相手の負傷に対する未必の故意があったので、保険会社は故意免責を主張できます。他方、②は、死亡という結果に対する未必の故意はなかった(死亡させることは予期していなかった)ので、死亡による損害に関する故意免責は適用されないことになります。相手を路上に転倒させ負傷させることのあることを認識しながら、車を急加速させたら、相手が転倒し、結果として死亡してしまったという事件で、故意免責条項が適用されないとした最高裁判決があります。最高裁判決 平成5年3月30日より抜粋傷害の故意しかなかったのに予期しなかった死の結果を生じた場合についてまで保険契約者、記名被保険者等が自ら招致した保険事故として免責の効果が及ぶことはない、とするのが一般保険契約当事者の通常の意思に沿うものというべきである。本件免責条項は、傷害の故意に基づく行為により被害者を死亡させたことによる損害賠償責任を被保険者が負担した場合については適用されないものと解するのが相当である。② 異常危険免責異常危険免責は、次のことにより生じた損害を免責とするものです。戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱、その他これに類似の事変または暴動地震、噴火、これらによる津波核燃料物質やそれによって汚染された物の放射性、爆発性その他有害な特性の作用またはこれらの特性に起因する事故上記以外の放射線照射まはた放射能汚染これらの事由に随伴して生じた事故、これらにともなう秩序の混乱にもとづいて生じた事故これらが免責とされるのは、予測し得ない異常危険による損害であり、合理的な保険料の算定も困難だからです。なお、自然災害を事由とする免責(天災免責)については、任意保険に共通するのは「地震、噴火、これらによる津波」ですが、対人・対物賠償保険の場合は、これに加えて、「台風・洪水・高潮」による損害も免責となります。③ 競技・曲技・試験のための使用競技・曲技・試験のための使用、これらを行うことを目的とする場所での使用は、免責とされます。競技・曲技の練習のために使用することも免責対象となります。競技とは「ロードレース」や「サーキットレース」など、曲技とは「サーカス」や「スタントカー」などです。こられに使用することは免責事由に該当します。保険料領収前を理由とする免責保険期間の開始後でも、保険料を領収する前に発生した事故に対しては、保険会社は保険金を支払いません。これを「領収前免責」といいます。領収前免責が設けられているのは、保険料が支払われていない場合でも保険会社に保険金の支払い義務があるとすると、保険事故が発生するまで保険料を支払わない契約者が現れる可能性があるからです。保険会社の保険責任は、保険証券に記載された保健期間の初日の午後4時に始まり、末日の午後4時に終わります。保険契約上の義務違反を理由とする免責保険契約上の義務には次のようなものがあり、これらの義務に違反した場合は、保険金が支払われません。契約締結時の告知義務(保険会社が告知を求めた事項についての告知義務)保険契約締結後の通知義務(被保険自動車の用途・車種・登録番号の変更、保険証券の記載事項に重要な変更を生じさせる事実の発生時における通知義務)事故発生時の義務(損害防止軽減義務、事故発生通知義務、求償権保全行使義務、訴訟通知義務、書類提出義務など)告知義務違反や通知義務違反は、保険契約の解除事由となります。保険契約の解除が、保険事故(保険金支払いの対象となる事故)発生後になされた場合でも免責となり、すでに保険会社が支払った保険金があれば、契約の始期に遡って返還請求されます。事故発生時の義務違反については、保険会社が被った損害額が差し引かれます。事故が発生したとき、被保険者は損害の拡大防止に努める義務を負いますが、これに違反した場合は、防止・軽減できたと認められる損害額を保険金から差し引いて支払われます。事故発生を通知しなかった場合も、それによって保険会社が被った損害の額が差し引かれます。保険契約当事者の合意による免責保険契約当事者の合意とは、限定特約を付けている場合のことです。限定特約は、保険が適用される事故の範囲を限定する特約です。例えば、運転者を家族だけに限定するというものです。限定特約を付けることによって保険料を安くすることができますが、家族以外の者が運転していて事故を起こしたときは、保険金が支払われません。まとめ任意自動車保険全般に共通する免責事由は、故意免責、異常危険免責、義務違反にもとづく免責、合意にもとづく免責などがあります。各保険ごとにも、特有の免責事由が定められています。自賠責保険(自賠責共済)の免責事由が「悪意免責」と「重複契約の場合の免責」だけであるのに対し、任意保険の免責事由は多様に定められているので注意が必要です。それぞれの保険に特有の免責事由については、次のページをご覧ください。相手に対する損害賠償に備える保険に特有の免責事由自分の被害に備える保険に特有の免責事由ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 対人賠償保険の免責事由
    任意保険の免責事由|対人・対物賠償責任保険に特有の免責事由
    賠償責任保険は、被保険者に損害賠償責任が発生したときのための保険です。対人賠償保険、対物賠償保険があります。対人・対物賠償保険には、任意保険に共通の免責事由のほか、対人・対物賠償保険に特有の免責事由があります。被保険者と被害者との間に一定の関係がある場合には免責となり、保険金が支払われません。ここでは、対人賠償保険と対物賠償保険に特有の免責事由をまとめています。対人賠償保険に特有の免責事由対人賠償保険は、次のいずれかの者が被害者となった場合(生命または身体が害された場合)は、免責となり保険金が支払われません。記名被保険者被保険自動車を運転中の者またはその父母、配偶者もしくは子被保険者の父母、配偶者または子被保険者の業務に従事中の使用人被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人①は、対人賠償保険という保険の趣旨から免責とされているものです。②と③は、家族が被害者となった場合、通常は被害者から賠償請求がされないこと、保険があるために賠償請求が促進される結果となることを防止することから設けられています。④と⑤は、被保険者が被保険自動車をその使用者の業務に使用している場合に限ります。業務により生じた損害は労災保険などによる救済に委ねるという趣旨からの規定です。①と②は、全ての被保険者について免責(絶対的免責)となりますが、③~⑤については、被保険者ごとに免責となるか個別に判断(相対的免責)されます。飲酒運転による事故は免責とならない飲酒運転は重い罰則が科されますが、被害者の保護・救済の観点から、賠償責任保険では飲酒運転を理由として免責とはならず、保険金が支払われます。対物賠償保険に特有の免責事由対物賠償保険でも、上記①~③に該当する者の所有、使用または管理する財物が滅失、破損または汚損された場合には、保険金は支払わないとされています。③については、対人賠償の場合と同様に、被保険者ごとに免責となるか個別に判断(相対的免責)されます。まとめ対人賠償保険は、自賠責保険だけでは賠償しきれない場合に備える保険です。対物賠償保険は、自賠責保険が補償しない相手の物損に対する賠償に備える保険です。被害者を救済し、相手の損害を補償する保険ですが、自賠責保険が賠償責任者以外の被害者すべてを補償対象とするのと違い、任意保険の場合は被害者が家族の場合など一定の関係にある場合は保険金が支払われません。そんなとき、自分の掛けている人身傷害保険や車両保険を利用できる場合がありますから、確認してみましょう。ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 免責事由
    任意保険の免責事由|傷害保険・車両保険に特有の免責事由
    被保険者が「被害者になった場合に備える保険」が、傷害保険と車両保険です。これらの保険の免責事由には、任意保険に共通する免責事由のほか、傷害保険・車両保険に特有の免責事由があります。ここでは、傷害保険と車両保険に共通する免責事由傷害保険に特有の免責事由車両保険に特有の免責事由について、まとめています。傷害保険と車両保険に共通の免責事由傷害保険と車両保険に共通する免責事由として、任意保険全体に共通の「故意免責」に加え「重過失免責」、無免許運転や酒気帯び運転など「状態免責」があります。故意免責+重過失免責被保険者・保険金受取人の「故意または重大な過失」によって生じた損害が免責となります。賠償責任保険が「故意免責」だけなのに対して、傷害保険や車両保険では「重過失免責」も追加されます。「重大な過失」とは、「ほとんど故意に近い」と解する見解が一般的のようです。(『新版 交通事故の法律相談』青林書院より)状態免責被保険者が、次のいずれかの状態で被保険自動車を運転している場合に生じた損害については、免責となります。無免許運転酒気帯び運転麻薬、大麻、あへん、覚せい剤、シンナー等の影響により正常な運転ができない恐れがある状態これらを理由とする免責を「状態免責」といい、事故発生と因果関係がなくても免責とされます。「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」以前は「酒酔い運転」が免責とされていましたが、最近の約款では「酒気帯び運転」を免責とするものが多くなっています。酒気帯び運転は、道路交通法第65条第1項違反またはこれに相当する状態とされています。道路交通法第65条1項は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」という酒気帯び運転の禁止規定です。「酒気を帯びて」とは、社会通念上「酒気帯び」といわれる状態のことです。外観上(顔色や呼気など)認知できる状態にあることをいい、酒に酔った状態であることも運転への影響が外観上認知できることも必要ないとされています(『16-2訂版 道路交通法解説』より)。酒酔い運転飲酒により正常な運転ができない恐れがある状態で運転すること。5年以下の懲役または100万円以下の罰金。(道路交通法第117条の2第1号)酒気帯び運転呼気中のアルコール濃度が0.15㎎/ℓ以上の状態で運転すること。3年以下の懲役または50万円以下の罰金。(道路交通法第117条の2の2第3号)これらは、賠償責任保険では「被害者の保護・救済」の観点から、免責事由とされていません。しかし、自身の被害を補償する保険では、不正行為によって損害を被ったとしても、保険により補償する必要はない、というわけです。傷害保険に特有の免責事由傷害保険(人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険、自損事故傷害保険)に特有の免責事由には、次のようなものがあります。被保険者の闘争・自殺・犯罪行為によって生じた損害被保険者が、被保険自動車の使用について、正当な権利を有する者の承諾を得ないで搭乗中に生じた損害平常の生活または平常の業務に支障のない程度の微傷に起因する創傷感染症(丹毒、リンパ腺炎、敗血症、破傷風など)による損害被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失によって生じた損害②は、泥棒運転で事故を起こし死傷した場合です。③は、微傷自体は保険金支払いの対象とならず、そもそも微傷が自動車の運行に起因して生じたものか因果関係も不明確だからです。④は、例えば、運転者(被保険者)が、持病の心臓疾患により意識を失って起こした事故による損害です。無保険車傷害保険には対人賠償保険と同様の規定もある無保険車傷害保険は、無保険車による事故で被保険者が被った損害を填補する保険で、対人賠償保険と同様の機能があります。そのため、対人賠償保険に被保険者と被害者との間に一定の関係がある場合は免責とする規定を設けているのと同じように、無保険車傷害保険でも、賠償義務者と被保険者との間に一定の関係がある場合は免責とされています。車両保険に特有の免責事由傷害保険の場合、故意免責・重過失免責は、「被保険者・保険金受取人による行為」が対象で、無免許・酒気帯び・薬物使用運転にもとづく免責は、「被保険者による行為」が対象です。それに対して車両保険では、どちらも免責となる行為の対象者の範囲が広いのが特徴です。次の者の「故意・重過失」「無免許・酒気帯び・薬物使用運転」が免責となります。保険契約者・被保険者・保険金受取人所有権留保付売買契約にもとづく契約の車の買主、1年以上を期間とする貸借契約にもとづく契約の車の借主被保険者等の法定代理人被保険者等の業務に従事する使用人被保険者等の父母、配偶者または子車両保険に特有の免責事由として、次のようなものがあります。差押え、収用、没収、破壊など国または公共団体等の公権力による損害詐欺または横領による損害欠陥、摩滅、腐食、さびその他自然の消耗による損害故障損害(偶然な外来の事故に直接起因しない自動車の電気的・機械的損害)取り外された部品や付属品の損害タイヤまたはタイヤのチューブに生じた損害法令により禁止されている改造を行った部分品・付属品に生じた損害まとめ傷害保険や車両保険は、自分や家族が交通事故の被害に遭ったとき、事故の相手から十分な賠償を受けられない場合のために自ら備える保険ですが、免責事由が多いのが特徴です。せっかく保険を掛けているのに保険金を受け取れないということがないように、注意することが必用です。ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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