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  • 交通事故は健康保険を使えない?病院が健康保険診療を嫌う本当の理由
    「交通事故に健康保険は使えません!」と、病院の窓口で健康保険の使用を断られることがあります。ですが、それは間違いです。交通事故の治療は自由診療が基本ですが、患者(被害者)が希望すれば、交通事故による怪我の治療にも健康保険を使えます。ただし、交通事故に健康保険を使うことにはデメリットもあるので、それを知ったうえで健康保険を使って治療するかどうか判断することが大切です。交通事故は、なぜ「自由診療が原則」なのか?「交通事故は、自由診療が原則」とされる理由は、2つあります。1つは、交通事故の被害者の治療費は、加害者が支払うものだからです。交通事故は、民法の不法行為(民法709条など)に該当します。なので、加害者の側が、被害者の治療費を損害賠償する責任を負います。もう1つは、交通事故の被害者を救済する国の制度があるからです。被害者への損害賠償を補償するため、法律にもとづき自賠責保険制度が整備され、自動車の保有者は、自賠責保険への加入が義務付けられています。つまり、交通事故被害者の治療費は、健康保険等から支払うのでなく、自動車保険から支払う仕組みです。そのため、交通事故は、健康保険診療でなく、自由診療が原則とされているのです。一方、健康保険法や国民健康保険法では、「疾病、負傷、死亡、出産に関して保険給付を行う」と規定しています。受傷の原因は問いません。なので、交通事故が原因の傷病であっても、自身の加入する健康保険や国保を使って治療することができます。この場合は、健康保険組合等の保険者が給付した金額は、あとで加害者側(自動車保険)に求償することになります。労災保険が適用される業務災害は、労災保険でカバーしますから、健康保険から除外されます。それは、交通事故でも同じです。業務中や通勤途中の交通事故は、健康保険を使えません。労災保険を使います。交通事故にも健康保険が使える根拠交通事故の治療にも、健康保険が使えます。そのことを病院の窓口で自信をもって主張できるよう、その根拠を押さえておきましょう。次の2つです。健康保険の保険給付の対象について、法律上「交通事故の場合を除く」とする規定はありません。国(厚生省・厚生労働省)の通知で、交通事故の場合も健康保険の給付対象となることが、明確に示されています。健康保険法や国民健康保険法では交通事故を除外していない健康保険法では、労働者またはその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷、死亡、出産に関して保険給付を行う(健康保険法第1条)と定めています。業務災害は労災保険でカバーします。自営業者などが加入する国民健康保険も、被保険者の疾病、負傷、出産、死亡に関して必要な保険給付を行う(国民健康保険法第2条)と定めています。被保険者に傷病や負傷など保険事故が発生したときに、保険者は保険給付を行う義務を負います。その場合、保険事故の発生原因は問わないのが原則です。法律上、交通事故を除外するという規定はなく、交通事故による傷病も、公的医療保険給付の対象となります。保険給付の制限自己の故意の犯罪行為、泥酔や著しい不行跡を理由とする傷病については、保険給付が制限されます(健康保険法116条・117条、国民健康保険法60条・61条)。これを交通事故で考えると、酒酔運転、無免許運転、暴走運転などを原因とする自損事故の場合に限り適用され、過失にもとづく交通事故による傷病には適用されないと解されています(大阪地裁判決・昭和60年6月28日)。「自動車事故も保険給付の対象」と明確にした国の通知交通事故の治療に健康保険や国民健康保険を使えることは、国が繰り返し通知で明らかにしています。昭和43年の厚生省通知「自動車事故も保険給付の対象」交通事故の治療にも健康保険が使えることを明確にしたのが、昭和43年(1968年)の厚生省通知です。この通知によって、交通事故に健康保険が「使える・使えない」の議論に決着がついたと言ってよいでしょう。昭和43年の厚生省通知は、自動車事故も健康保険の保険給付の対象となることを明記し、その周知徹底を図るよう都道府県に求めました。「自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変わりなく、保険給付の対象となる」「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」(昭和43年10月12日保険発第106号)平成23年の厚生労働省通知「自動車事故は保険給付の対象」平成23年(2011年)にも、厚生労働省が、自動車事故による疾病も医療保険の給付対象となることを改めて示す通知を出しています。犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた疾病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています。「犯罪被害や自動車事故等による疾病の保険給付の取り扱いについて」(厚生労働省 平成23年8月9日)なぜ病院は交通事故の治療に健康保険の使用を嫌うのか?なぜ病院は「交通事故に健康保険は使えない」と言ったり、交通事故の治療に健康保険を使うことを嫌うのでしょうか?理由は、いくつか考えられます。単に誤解しているだけのこともあります。手続上、交通事故の場合は第三者行為届が必要なので(あとで加害者側に求償するため)、それが提出されていないから健康保険を使えない、という意味の場合もあるでしょう。ですが、たいていは、交通事故診療は業務が煩雑になるのに、健康保険診療だと診療報酬が減り、割に合わないからです。「割に合わない」というと語弊があるかもしれませんが、医療機関に負担と矛盾が集中するのです。これが、病院が交通事故による怪我の治療に健康保険の使用を嫌う本当の理由です。交通事故に健康保険を使うと医療機関に負担と矛盾が集中する医療機関の懸念は、もっともなのです。交通事故の診療に健康保険を使うと、医療機関に負担や矛盾が集中します。具体的に医療機関の業務がどうなるか、考えてみましょう。自由診療で治療するのであれば、自賠責様式の診療報酬明細書等を作成して自動車保険会社に診療費を請求すればよく、しかも診療報酬単価が高いので、業務上、特に問題になることはありません。しかし、健康保険を使うと、健康保険診療の業務と自由診療の業務の両方を求められ、業務が非常に煩雑になるのです。しかも、診療報酬単価は保険診療なので低くなります。健康保険を使うと、診療費の請求先は健康保険組合になりますから、保険診療用のレセプトを作成して診療費を請求します。患者には、診療費の自己負担分を支払ってもらいます。ここまでは、通常の保険診療です。交通事故の場合は、これと別に、自賠責様式の診断書や診療報酬明細書、後遺症が残る場合は後遺障害診断書の作成などを求められます。これらは、本来なら自由診療の場合の業務です。そのほか、加害者や保険会社、警察の対応も求められます。健康保険診療とするなら、本来これらに対応しなければならない義務は医療機関にはないのですが、当たり前のように要求されるのです。しかも、診療報酬単価は、保険診療ですから自由診療に比べ低くなります。このように、交通事故の診療に健康保険を使うと、医療機関に負担や矛盾が集中してしまうのです。健康保険診療の診療報酬は、自由診療の半分以下保険診療は、診療行為ごとの点数が定められ、健康保険を使う場合、1点あたりの単価を10円として診療報酬を算定します。ちなみに、労災保険診療は1点あたり12円です。それに対し、自由診療は、医師が患者と合意すれば診療報酬を自由に決められます。一般的には、自賠責診療費算定基準にもとづき、おおむね1点単価を20円程度とすることが多いようです。自由診療健康保険診療単価20円10円つまり、健康保険診療だと、自由診療の半分、場合によってはそれ以下の診療報酬となってしまいます。業務量は増えて煩雑になるのに、診療報酬は大幅に下がるのです。相手方保険会社が健康保険の使用を被害者に勧める理由とは?病院が交通事故に健康保険を使うことを嫌うのに対し、相手方の保険会社が「健康保険での診療をお願いします」と言ってくることがあります。保険会社は、なぜ健康保険の使用を勧めるのでしょうか?健康保険を使うと被害者の自己負担が3割だから、保険会社は3割の賠償でよいから? ではありません。残りの7割は、健康保険組合など保険者から求償されますから、保険者に支払います。つまり、健康保険を使っても使わなくても、治療費の全体が賠償対象です。それでも保険会社が健康保険の使用を被害者に求めるのは、自由診療より健康保険診療の方が、治療費全体が安くなるからです。自由診療の診療単価は1点20円程度ですが、健康保険診療は1点10円です。つまり、被害者が健康保険を使うと、保険会社は治療費の支払いを半分に抑えられるのです。そのため、入院治療が必要な場合など治療費が高額になりそうなときは、保険会社は被害者に健康保険の使用を強要する場合があるのです。なお、比較的短期間の通院で完治するような怪我にまで、健康保険の使用を保険会社が強要することはありません。治療費が自賠責保険の範囲内で収まる額なら、保険会社は自分の懐が痛まないからです。治療費が自賠責保険の支払限度額を超えるような場合は、その超過した治療費を自社で負担することになるので、健康保険診療にして治療費をできるだけ抑えたいというわけです。交通事故で健康保険を使うときの注意点交通事故で健康保険を使う場合は、次の点に注意してください。健康保険を使うことによるデメリットをふまえ、判断することが大切です。患者(被害者)または家族が窓口で健康保険を使用する意思を表明し、医療機関が承諾した日から健康保険診療となります。健康保険証を窓口に提出しただけでは適用となりません。遡っての適用はできません。健康保険組合など保険者に「第三者行為による傷病届」の提出が必要です。通常の診療と同じように、受診の都度、窓口で一部負担金(自己負担金)を支払わなければなりません。任意保険会社による一括払いは、できなくなります。保険診療にすると、医療機関には、自賠責様式の診断書や診療報酬明細書、後遺障害診断書などを発行する義務がなくなるので、発行してもらえない場合があります。健康保険の使用はやむを得ない場合に限る交通事故の治療は、あくまでも自由診療が基本です。もちろん、患者が希望すれば健康保険を使えますが、「交通事故でも健康保険は使えるでしょ!」と喧嘩腰で病院に詰め寄るのは問題です。損害賠償請求では、医師や病院の協力が欠かせないからです。医師や病院とは、良好な関係を築くことが大切です。ですから、健康保険を使うのは、使わないと損をする場合に限るのがよいでしょう。次のページも参考にしてみてください。交通事故で健康保険を使う2つのメリット・5つのデメリット健康保険を使う方がよいケース・自由診療でよいケース被害者の過失が大きいときは健康保険を使わないと損!保険会社が健康保険の使用を勧めてきたら?保険会社は、自社の支払う保険金を少なくしようと、健康保険診療を勧めてくることがあります。そのとき、「どうして自分の健康保険を使わないといけないの!」と喧嘩腰で突っぱねるのは損です。もちろん、保険会社の言うとおりにする必要はありませんが、保険会社が健康保険の使用を勧めてくるのは、治療費が高額になるケースが多いので、被害者であるあなたにも過失があるような場合は、健康保険の使用を検討してみて損はありません。治療費を抑えておけば、示談交渉においても有利です。まとめ交通事故による怪我の治療は、自由診療が基本です。「交通事故に健康保険は使えない」と言われることがありますが、患者(被害者)が希望すれば、交通事故による怪我の治療にも健康保険を使えます。ただし、交通事故に健康保険を使うのは、使う必要がある場合に限るべきでしょう。どんな場合でも健康保険を使った方がよい、というわけではありません。もし、交通事故の治療に健康保険を使うことでトラブルになっていたり、困ったこと、疑問に感じることがあれば、交通事故の損害賠償問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・大阪地裁判決・昭和60年6月28日「判例タイムズ№575」170~178ページ・中込一洋『交通事故事件 社会保険の実務』学陽書房 78~79ページ
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  • 交通事故で健康保険や国民健康保険を使うメリット・デメリット
    交通事故の治療は、自由診療が原則ですが、患者本人(交通事故の被害者)が希望すれば、健康保険や国民健康保険を使えます。ただし、健康保険や国民健康保険を使うメリットのあるケースは限られ、多くの場合、デメリットしかありません。どんな場合でも健康保険や国民健康保険を使う方が良い、というわけではありませんから、健康保険や国民健康保険を使うメリット・デメリットを検討した上で、使用を判断することが大切です。それでは、交通事故に健康保険や国民健康保険を使うメリット・デメリットについて、具体的に見ていきましょう。なお、ここでは健康保険について説明していますが、国民健康保険等も同じです。交通事故の治療に健康保険を使うメリット交通事故で健康保険を使うメリットは、次の3つです。医療点数単価が低く、治療費の総額を低く抑えられる。治療費の自己負担が少なくなる。健康保険給付額は、過失相殺の対象とならない。このため、健康保険を使うと、最終的に受け取れる損害賠償額が多くなる場合があるのです。ただし、このメリットが現実のものとなるのは、特定の場合に限られます。健康保険は医療点数単価と自己負担が低い健康保険を使うと、治療費の総額と自己負担額が、自由診療に比べて少なくなります。自由診療は、診療単価が高いため治療費が高額となるうえ、全額自己負担です。それに対し、健康保険診療は、診療単価が低いため治療費が低く抑えられ、しかも、その3割の自己負担で済みます。診療単価と自己負担を比べると、こうです。自由診療健康保険診療診療単価20円10円自己負担全額3割健康保険診療の診療単価は10円です。自由診療の場合、診療単価は、医師と患者との間で自由に決めることができ、1点25円とか30円という場合もありますが、1点20円程度が一般的です。交通事故の診療費については、自賠責診療費算定基準があります。もっとも、治療費は、加害者(相手方保険会社)に損害賠償請求できますから、加害者から治療費が支払われる場合には、基本的に、健康保険を使用する経済的メリットは生じません。例外として、加害者から治療費が支払われる場合でも、被害者の過失割合が大きいときは、健康保険を使用する経済的メリットはあります。では、健康保険を使う経済的メリットが生じるのは、どんな場合なのでしょうか?健康保険を使う経済的メリットが生じるケースとは?健康保険を使う経済的メリットが生じるのは、ひき逃げや未保険などで加害者から治療費が支払われない場合と、被害者の過失割合が大きい場合です。具体的に見ていきましょう。ひき逃げの場合ひき逃げの場合は、加害者が不明のため、損害賠償請求も、自賠責保険への直接請求もできません。このような場合は、政府保障事業に損害の填補を請求できますが、これには、健康保険等を使って治療することが前提になっています。つまり、ひき逃げ事故に遭った場合は、健康保険を使って治療することで、治療費の負担を抑えるとともに、国に損害の填補金を請求できるのです。加害者が任意保険に未加入の場合加害者が任意保険に加入していない場合は、たいてい、自賠責保険の範囲でしか損害賠償を受けることができません。自賠責保険金は、治療費・休業補償・入通院慰謝料を合わせて120万円が上限です(⇒自賠責保険の支払い基準はこちら)。自由診療だと、治療費の全額が自己負担ですから、治療費だけで120万円を超えることもあり得ます。そうなると、休業補償や慰謝料は、全く受け取れなくなってしまいます。こういう場合、健康保険を使うと、治療費の負担額が低くなり、その分、休業補償や慰謝料を確保できるのです。もちろん、自賠責保険から支払われる上限額は、健康保険を使った場合でも、120万円で変わりません。治療費に充当する額が少なくなれば、それだけ休業補償や慰謝料などに充てられる賠償金額が増える、というわけです。被害者の過失が大きい場合被害者の過失が大きい場合は、過失相殺により損害賠償額が大きく減額されます。過失相殺の対象となるのは、自由診療だと治療費の全額ですが、健康保険診療の場合には、治療費のうち3割の自己負担分だけです。健康保険からの給付額は過失相殺の対象となりません。その結果、健康保険を使う方が、受け取れる賠償額が多くなるのです。詳しくはこちらをご覧ください。治療費を抑えることで、保険会社との示談交渉で有利にこれは、健康保険を使う直接的な経済的メリットではありませんが、こんな効果も期待できます。健康保険を使って治療すると、自由診療の場合よりも、治療費の総額が少なくなりますから、相手方保険会社としても、支払う保険金(賠償金)の額を低く抑えられるメリットがあります。そのため、健康保険を使うと「治療費の減額に協力した」ということで、慰謝料の増額交渉で有利に作用する可能性があるのです。ただし、あくまでも可能性の話です。また、交渉材料として使えるとしても、このことをもって、そんなに慰謝料がアップするわけではありません。交通事故の治療に健康保険を使うのは、デメリットの方がはるかに大きいので、そのデメリットを超えるメリットがあるか、慎重に判断することが必要です。交通事故の治療に健康保険を使う5つのデメリット健康保険を使うと、健康保険法等の規制が適用され、医療機関も患者(被害者)も健康保険診療のルールに従わなければなりません。他方で、医療機関と保険会社との間で、治療費の請求・支払いの関係はなくなります。このことから、被害者に様々なデメリットが生じるのです。主なデメリットとしては、次のようなものがあります。交通事故の治療に健康保険を使うデメリット自分の加入している健康保険組合に「第三者行為の届出」をし、健康保険を使う了承を得る必要がある。医療機関には自賠責様式の書類作成の義務がなくなり、診断書は医療機関所定のものを交付され、診療報酬明細書は自分で健康保険組合に開示請求することになる。保険適用の治療に制限され、十分な治療を受けられない場合がある。治療の都度、医療費の一部負担金を病院の窓口で支払わないといけない。健康保険診療には症状固定や後遺障害の概念がなく、後遺障害診断書を作成できないので、後遺障害等級の認定請求が困難になることがある。簡単にいえば、交通事故で健康保険を使うデメリットとは、健康保険の使用と治療費の請求に手間がかかる、治療費の立替払いが必要、後遺障害等級の認定で不利になるリスクがある、ということです。詳しく見ていきましょう。①「第三者行為による傷病届」の提出が必要1つ目のデメリットは、健康保険を使用するにあたっての手続き上の問題です。健康保険を使って治療するには、健康保険組合に「第三者行為による傷病届」を提出し、健康保険を使用することについて了承を得る必要があります。これは、後で健康保険組合から加害者(または加害者加入の保険会社)に治療費(保険給付額)を請求するためです。②自賠責様式の診断書・診療報酬明細書を発行してもらえない2つ目のデメリットは、健康保険を使うと、医療機関から自賠責様式の診断書や診療報酬明細書を発行してもらえないことです。患者が健康保険を使うと、医療機関は、健康保険法の規定に従い、健康保険診療報酬明細(健保レセプト)を作成し、健康保険の保険者に診療費を請求します。したがって、健康保険診療報酬明細書と自賠責診療報酬明細を二重に発行することはできない、というのが理由です。自賠責診断書についても、作成義務はありません。そうはいっても、治療費のうち3割の自己負担部分は、あとで被害者が、加害者(相手方保険会社)に請求します。その際には、診断書や診療明細書が必要です。どうすればよいのでしょうか?医療機関所定の診断書や領収書・診療明細書で代用病院の窓口で治療費の一部負担金を支払うと、病院から領収書と診療明細書が交付されます。自賠責診療報酬明細書を発行してもらえないときは、この領収書と診療明細書を代用できます。紛失したときは、病院に領収書の再発行をお願いし(領収書の再発行をしてくれない場合は、領収額証明書等の治療費の額が分かるものを発行してもらいます)、診療明細書は、保険者(健康保険は健康保険組合等、国民健康保険は市区町村)に個人情報開示請求して開示してもらいます。診断書は、医療機関所定の診断書を発行してもらい、代用します。損害保険料率算出機構は、「各医療機関所定の診断書でも必要事項の記載があれば、自賠責保険の支払手続(後遺障害等級の認定も含む)を行う」としています。(『Q&Aハンドブック交通事故診療・全訂新版』創耕舎 89ページ)医療機関所定の診断書でも代用できますが、「必要事項の記載があれば」としていることに注意してください。適正な損害賠償を受けるためには、必要事項がもれなく記載されていることが大切です。自賠責様式の診断書を書いてくれる医療機関もある健康保険を使って治療を受けた場合でも、自賠責様式の診断書等を作成してくれる医療機関もあります。日本医師会が全国の医療機関に対して行ったアンケート調査によると、「健保を使用しているにもかかわらず、損保会社所定の書類作成を求められるケースがあるか」という問に対し、「ある」と回答した医療機関が70.4%、そのうち、「患者の請求・支払い等を考え、損保会社所定の様式で作成し、患者に交付している」と回答した医療機関が63.6%となっています。※参考:日本医師会「労災・自賠責委員会答申」(2012年2月)治療を開始する前に、健康保険を使っても自賠責様式の診断書や診療報酬明細書を発行してもらえるかどうかを確認し、発行してくれる病院で治療を受けるという方法もあります。③治療に制約があり、十分な治療を受けられない可能性がある3つ目のデメリットは、治療内容に制限があることです。健康保険診療だと、保険適用外の診療を受けられず、使用できる薬の種類や量、リハビリの回数などにも制限があります。診療内容が制限され、十分な治療を受けられないことがあります。この点について、日本医師会は次のように指摘しています。交通事故診療を担う医療の現場では、医療機関に搬送直後から患者の全身状態を素早く確認するとともに、あらゆる可能性を考慮しながら、早期に集中的な治療を行う必要がある。こうした患者の治療に対し、法律、療担規則などの縛りの多い、いわゆる制限診療につながる現行の健康保険を適用するということは、結果的に十分な治療を提供できず、被害者の不利益につながる可能性がある。(日本医師会 労災・自賠責委員会 答申(平成24年2月2日)より抜粋)ただし、診療内容が問題となるのは、特に救急搬送された重症患者の場合でしょう。ですが、交通事故の治療は、比較的軽度の傷害(傷害度1)が84%と大半です(損害保険料算出機構『自動車保険の概況』2020年5月発行)。裁判例でも、次のような指摘があります。保険診療においては診療内容につき法及び規則に基づく制約が存在するために、保険診療によっては交通事故による傷害に対して十分な診療を施すことができないとは速断しえない。現在では健康保険で施すことができない治療方法はなく、…医師が自由診療を選択しているのは、医学的な理由によるのではなく、経営上の判断に基づくものと考えていることが認められ、…公的医療機関に比較して私的医療機関において自由診療の割合が高いことは、右の見解を裏付けるものである。(東京地裁判決(平成元年3月14日)より抜粋)つまり、診療内容の制約が現実に問題となるケースは、ごく一部に限られます。とはいえ、保険診療では必要な治療を受けることができない場合は、自由診療を選択する必要があります。④治療の都度、医療費の窓口負担の支払いが必要4つ目のデメリットは、治療の都度、病院の窓口で治療費の自己負担分を支払わなければならず、経済的負担が生じることです。自由診療であれば、治療費は、相手方の任意保険会社が病院に直接支払う「一括対応」ができますが、健康保険診療の場合は、それができなくなってしまいます。健康保険を使うと、健康保険法上の規制がかかるからです。健康保険法は、医療費の自己負担金(一部負担金)は患者が医療機関の窓口で支払うよう義務付けています。この原則は、交通事故による怪我の治療に健康保険を使う場合にも適用されます。したがって、普段、病院にかかるときと同じように、通院のたびに、窓口で自己負担分を支払わなければなりません。損保会社から「窓口負担分は、あとでウチが一括して支払うので、治療のたびに支払う必要はありません」などと説明されることがありますが、これは、健康保険を使うよう誘導するのが目的です。この手法を保険会社は「健保一括払い」と呼んでいますが、患者自身が、治療のたびに窓口で支払わないと、本来は違法です。健康保険法第74条(一部負担金)…保険医療機関または保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際…、一部負担金として、当該保険医療機関または保険薬局に支払わなければならない。⑤後遺障害等級の認定が不利になるリスクがある5つ目のデメリットは、健康保険を使うと、医師に後遺障害診断書を作成してもらえず、後遺障害に対する損害賠償を受ける上で不利になるリスクがあることです。交通事故の治療費の損害賠償は、治療の効果が見えなくなった時点で症状固定と判断し、完治していなくても治療費の支払いは終了します。後遺症が残った場合は、後遺障害等級を認定し、後遺障害等級に応じて逸失利益や慰謝料を支払います。ところが、健康保険診療には、症状固定や後遺障害といった概念がありません。治療の必要があれば、治療を継続するからです。したがって、健康保険診療の場合は、症状固定の診断ができず、後遺障害診断書の作成ができません。そうすると、後遺障害等級の認定を受けられず、後遺障害に対する損害賠償請求ができなくなるリスクがあるのです。詳しくは、「交通事故で健康保険を使うと医師が後遺障害診断書を書いてくれない?」をご覧ください。まとめ健康保険や国民健康保険を使って治療を受けることのメリットがあるのは、加害者の側から治療費が支払われない場合、または、被害者の過失割合が大きい場合です。相手方任意保険から十分な損害賠償を受けられる場合は、健康保険や国民健康保険を使うメリットはなく、デメリットしかありません。健康保険や国民健康保険を使うことによるメリットとデメリットの両面を考慮して、判断することが大切です。健康保険を使うべきケースはこちらにまとめていますから、参考にしてみてください。交通事故での健康保険や国民健康保険の使用について、お困りのことがあれば、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『別冊判例タイムズ38』4ページ・日本医師会 労災・自賠責委員会 答申(平成24年2月2日)・損害保険料算出機構『自動車保険の概況』2020年5月発行・『Q&Aハンドブック交通事故診療全訂新版』創耕舎 88~93ページ
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