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    交通事故で賠償請求できる損害は積極損害・消極損害・慰謝料
    交通事故による被害で賠償請求できる損害には、大きく「財産的損害」と「精神的損害」があります。財産的損害には「積極損害」と「消極損害」があり、精神的損害は「慰謝料」です。賠償請求する損害額は、これらをすべて積算した額です。詳しく見ていきましょう。交通事故による被害で、賠償請求できる損害とは?交通事故で賠償請求できる損害は、大きく「積極損害」「消極損害」「慰謝料」の3種類に分類されます。財産的損害積極損害事故に遭ったことで余儀なくされた支出(財産がマイナスになった損害)積極損害事故に遭ったことで得られなくなった収入(財産がプラスにならなかった損害)精神的損害慰謝料事故に遭ったことで受けた精神的な苦痛積極損害、消極損害、慰謝料について、それぞれ詳しく見ていきましょう。積極損害とは?積極損害は、交通事故の被害に遭ったことにより支払いを余儀なくされた費用です。事故に遭わなければ支払う必要のなかった費用であり、事故と相当因果関係のある損害ですから、加害者には賠償する責任が生じます。人身事故の積極損害人身事故の積極損害の費目には、治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費、義肢等の装具費用、後遺障害が残った場合の家屋や自動車の改造費、死亡した場合の葬儀費用などがあります。これらは、あらかじめ一定の基準が設けられています。主な積極損害について簡単に説明しておきます。損害内容治療費その事故による傷害の治療に必要かつ相当な範囲で実費全額が損害として認められます。付添看護費原則として医師の指示がある場合、または受傷の程度、被害者の年齢等により必要性がある場合に認められます。職業付添人は実費全額、近親者付添人は入院付添1日につき5,500円から7,000円程度です。入院雑費入院にともなう日用雑貨費(寝具・衣類・洗面具等の購入費)、電話代、新聞・雑誌代、テレビ・ラジオ賃借料などの費用は、多品目にわたるため定額化しています(入院日額1,500円程度)。通院交通費原則として、バス・電車等公共交通機関の利用料金が基準となります。自家用車による通院は、ガソリン代等の実費相当額です。葬儀関係費定額化が図られ、原則として150万円。これを下回る場合は、実際に支出した額が認められます。さらに詳しくは、次の記事をご覧ください。傷害事故の積極損害(治療費など)の計算方法死亡事故の積極損害(葬儀費用など)の計算方法物損事故の積極損害物損事故の積極損害は、車両の損害と車両以外の損害があります。損害内容車両損害車両の積極損害の主な費目には、修理費用、評価損(格落ち損)、代車使用料などがあります。車両に損害を受けた場合は、買換えでなく、修理費用の賠償が原則です。車両以外の物損車両以外の積極損害の費目には、建物の修理費、物品の修理・交換、後片付け費用などがあり、そのほか積荷や農作物などの損害賠償も認められます。車両損害について詳しくはこちら車両以外の物損について詳しくはこちら消極損害とは?消極損害は、事故に遭わなければ得られたであろう経済的利益を、事故によって得られなくなったことによる損害です。「得べかりし利益」とも呼ばれます。財産的損害には、積極損害と消極損害があります。積極損害との関係で消極損害を規定すれば、積極損害が、相手の不法行為により「財産がマイナスになった損害」をいうのに対し、消極損害は、相手の不法行為により「財産がプラスにならなかった損害」といえます。人身事故の消極損害人身事故の消極損害には、休業損害と逸失利益があります。逸失利益とは、加害行為がなければ、被害者が将来得られるであろう経済的利益を逸失したことによる損害です。休業損害も広い意味では逸失利益に含まれますが、通常、休業損害と逸失利益は分けて考えます。事故発生から症状固定まで(あるいは死亡まで)が休業損害、症状固定(あるいは死亡)以降が逸失利益です。治療により怪我が治癒した場合は、休業損害のみで、逸失利益は請求できません。休業損害休業損害は、治療・療養のために、休業または不十分な就業を余儀なくされたことにより生じた収入減(経済的利益の喪失)のことです。休業のほか労働能力の低下による減収も、休業損害として認められます。事故前の収入を基礎とする現実の収入減を補償するものです。給与所得者や個人事業主の収入減のほか、主婦・主夫が家事労働に従事できなかった場合や、学生のアルバイト収入減も休業損害として認められます。休業損害の計算方法逸失利益逸失利益には、後遺症(後遺障害)による逸失利益と、死亡による逸失利益があります。後遺障害逸失利益は、後遺障害が残り労働能力が喪失・低下することにより逸失する経済的利益のことです。事故前と同じように働けなくなることによる収入減のことです。死亡逸失利益は、被害者が死亡したことにより逸失する経済的利益のことです。死亡した被害者が、生きていたら働いて得られたであろう収入のことです。後遺障害が残った場合は、症状固定日までが休業損害、その後は逸失利益として計算します。被害者が治療の甲斐なく死亡した場合は、死亡するまでが休業損害、死亡後は逸失利益として計算します。後遺障害逸失利益の計算方法死亡逸失利益の計算方法物損事故の消極損害物損事故の消極損害として認められるのは、休業損害です。休車損害と営業損害があります。損害内容休車損害タクシーや運送会社のトラックのような営業車両が事故で破損し、修理や買換え期間中に見込まれる収入の損失です。営業損害店舗などに車が突っ込んで破損し、営業できなかった期間中の損害です。休車損害について詳しくはこちら営業損害について詳しくはこちら慰謝料とは?慰謝料は、交通事故による精神的損害(精神的な苦痛)に対する賠償です。精神的苦痛には個人差があり、被害者の心理的状態を第三者が客観的に判断することは難しいため、慰謝料は一定の基準を設け、定額化されています。入院・通院したことに対する傷害慰謝料(入通院慰謝料)、後遺障害が生じたことに対する後遺傷害慰謝料、被害者が死亡したことに対する死亡慰謝料があります。慰謝料を請求できるのは、原則的に人身損害が発生した場合のみです。物損については、「財産上の損害は、その損害が賠償されることによって精神的な苦痛も回復される」とみなされ、慰謝料は原則認められません。ただし、特別の事情がある場合は、物損でも慰謝料が認められることがあります。加害者に故意もしくは重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、信号無視の繰り返し、薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転した場合など)または著しく不誠実な態度がある場合には、慰謝料の増額事由となります。傷害慰謝料(入通院慰謝料)傷害慰謝料は、入院・通院の期間や怪我の状態により、一定の基準が決まっています。傷害慰謝料(入通院慰謝料)の計算方法後遺障害慰謝料後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて、ある程度定額化されています。後遺障害慰謝料の計算方法重度の後遺障害の場合は家族にも慰謝料が認められる死亡慰謝料死亡慰謝料は、死亡した本人と遺族に対して支払われます。請求権があるのは、父母・配偶者・子です。死亡した本人の年齢や家庭内の地位(一家の支柱・支柱に準じる)などにより、定額化されています。死亡慰謝料の計算方法事故の種類別に賠償請求できる損害費目を分類交通事故の損害賠償は、どんな事故かによって、すなわち、人身事故か物損事故か、人身事故の中でも傷害事故・後遺障害事故・死亡事故によって、賠償請求できる損害の項目・費目が異なります。事故の種類ごとに、賠償請求できる積極損害・消極損害・慰謝料の費目をまとめておきます。傷害事故積極損害治療費、付添看護費、通院交通費、入院雑費、義肢等の装具費用、診断書の発行費用など消極損害休業損害慰謝料入通院慰謝料傷害事故の損害賠償額の算定方法後遺傷害事故積極損害将来の治療費、付添看護費、介護費、家屋等改造費、義肢等の装具費用消極損害後遺障害による逸失利益慰謝料後遺障害慰謝料※後遺障害認定までの治療期間中の損害については、傷害事故の場合の各損害費目を賠償請求できます。後遺障害事故の損害賠償額の算定方法死亡事故積極損害葬儀費消極損害死亡による逸失利益慰謝料死亡慰謝料※死亡に至るまでの治療期間中の損害については、傷害事故の場合の各損害費目を賠償請求できます。死亡事故の損害賠償額の算定方法物損事故積極損害修理費、評価損、代車使用料、買換え諸経費、建物の修理費など消極損害休業損害(休車損害・営業損害)車両損害の賠償額の算定方法まとめ交通事故の被害者が賠償請求できる損害項目には、積極損害、消極損害、慰謝料があります。治療費や慰謝料は、ほぼ定型化・定額化されていますが、休業損害や逸失利益は、被害者の収入に応じて決まります。被害者の収入の証明は、被害者側でしなければなりません。特に逸失利益は将来の収入に対する賠償なので、被害者が若年者の場合ほど高額になります。被害者の職種別・年齢別の収入額の計算と証明の方法について詳しくはこちらで紹介しています。また、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が、交通事故による逸失利益の算定方式について「共同提言」を発表しています。参考にしてみてください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。こちらも読まれています「示談後に失敗を後悔する人」と「満足できる損害賠償額を得る人」の違いとは?交渉力だけではない! 弁護士の介入で賠償額が増える本当の理由とは?交通事故の被害者が本来取得できる適正な損害賠償金額の調べ方弁護士に相談するタイミングはいつ?【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 169~175ページ・『補訂版 交通事故事件処理マニュアル』新日本法規 96~105ページ
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  • 幼児の交通事故
    幼児や小さな子供の交通事故による逸失利益も損害賠償請求できる
    逸失利益は、被害者が事故に遭う前の収入をもとに計算するのが基本ですが、就労前の子どもであっても逸失利益を請求することができます。ここでは、子どもの逸失利益の計算方法について説明します。小さな子どもの逸失利益も認められる幼児や小学生・中学生が交通事故に遭い、後遺症(後遺障害)が残ったときは、後遺障害慰謝料を損害賠償請求できます。加えて「後遺障害逸失利益」も賠償請求できます。交通事故が原因で後遺症が残ってハンディを負い、本来得られたはずの収入を得られなくなることがあります。その減収分が逸失利益です。将来の収入減ですから、被害者が未就労の子どもであっても、損害を賠償請求できるのです。死亡事故の場合も同様に、死亡慰謝料のほか、死亡逸失利益を請求できます。逸失利益と同じ消極損害に、休業損害がありますが、こちらは事故による怪我の治療中、休業による収入減を補填するものですから、現在働いていない子どもの場合は認められません。子どもの逸失利益はどのように計算するのか逸失利益は、事故前の年収をベースに、どの程度の労働能力が失われるか、何年働けるか(あるいは後遺障害の影響が残るのは何年か)によって計算します。そもそも逸失利益は、大人であっても具体的に減収額を計算できるわけではありません。将来の収入の推計なのです。それでは、未就労の子どもの逸失利益をどう計算するのでしょうか?働いていない子どもの収入をどう決めるのかまず、収入(基礎収入)をどう決めるかです。子どもの場合は働いていないので、収入はありません。そこで、統計上の平均賃金を用います。具体的には、厚生労働省が毎年公表している賃金センサス(賃金構造基本統計調査)の産業計・企業規模計・学歴計・全年齢平均賃金を使います。産業計・企業規模計・学歴計というのは、産業・企業規模・学歴を問わない平均ということです。小さな子どもの場合は、将来どういった職業に就くのか全くの未定ですから、すべての平均値を使うわけです。なお、賃金センサスには、男女別あるいは男女計の平均賃金があります。男子の場合は、男性の全年齢平均賃金を用いますが、女子の場合、女性の平均賃金を使うと女性労働者の低賃金の実態を反映し、男子に比べ逸失利益が低く算定されてしまう男女間格差の問題があります。残念ながら、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部の「三庁共同提言」でも、男女別平均賃金を用いることを原則としています。なお、年少女子の死亡逸失利益の算定では、将来の職業選択の多様性があることを考慮し、男女計の全年齢平均賃金を使うことが定着してきています。働ける年数・後遺障害の残る年数をどう決めるか働ける年数(就労可能年数)については、原則的に、18歳から67歳までの49年とします。後遺障害が残る期間(労働能力喪失期間)については、そもそも後遺障害は治らないことが前提ですから、通常は一生涯と考えられ49年ですが、比較的軽度で一定期間経過すれば機能回復が見込まれる場合は、労働能力喪失期間を制限されるケースがあります。逸失利益の算定このほか、後遺障害逸失利益の算定には「労働能力喪失率」、死亡逸失利益の算定には「生活費控除率」という要素が関わります。また、どちらの逸失利益も、将来の損害額を賠償するものなので、現在の価額に換算するため中間利息を控除します。子どもの後遺障害逸失利益・死亡逸失利益の具体的な算定方法については、次のページで解説しています。幼児・小中学生・18歳未満の逸失利益の算定方法と計算例かつて幼児の逸失利益は認められなかったかつては、幼児の逸失利益を「算定不可能」として否定し、もっぱら慰謝料で解決しようとした時期がありました。小さな子どもの場合は、事故に遭わなければ将来どんな暮らしをしていたか、どれくらいの収入を得ていたか、予測するのは困難だからです。しかし、慰謝料というのは、精神的損害に対する賠償です。一方、逸失利益は、財産的損害に対する賠償です。そもそも、精神的損害の賠償の中に、財産的損害の賠償を含めること自体に無理があります。また、慰謝料額の算定が裁判所の自由裁量に委ねられ、被害者の救済に不十分であったり、逆に加害者に過度の責任を負わせることになりかねません。さらに、財産的損害を慰謝料で解決しようとすると、慰謝料の算定基準をどうするかという壁にぶつかります。最高裁が「幼児の逸失利益の算定は可能」と判断こうした問題に決着を付けたのが、最高裁の1964年の判決です。最高裁は、「幼児の逸失利益を算定可能」と判断し、この判決以降は、幼児や小中学生の逸失利益が認められるようになりました。最高裁は、8歳の男児が死亡した事故で、幼児の逸失利益(得べかりし利益)の算定は可能とする判断を示しました。子どもの逸失利益が認められるのは、被害者遺族による、司法の場でのたたかいの成果なのです。幼児の逸失利益を算定可能とした最高裁判決事故により死亡した幼児の得べかりし利益を算定するに際しては、裁判所は、諸種の統計表その他の証拠資料に基づき、経験則と良識を活用して、できるかぎり客観性のある額を算定すべきであり、一概に算定不可能として得べかりし利益の喪失による損害賠償請求を否定することは許されない。最高裁判決(昭和39年6月24日)では、どうやって逸失利益を算定するか?最高裁は、同判決で、年少者の逸失利益の算定にあたって「被害者側にとって控え目な算定方法」を採用すべきとして、3つの基準を例示しました。最高裁が示した年少者の逸失利益の算定方法収入額につき疑があるときはその額を少な目に計算する支出額につき疑があるときはその額を多めに計算する遠い将来の収支の額に懸念があるときは算出の基礎となる期間を短縮するこのように「被害者側にとって控え目な算定方法」を採用することにすれば、被害者の救済ができるとともに、加害者に過当な責任を負わせることにもならない、との考えを最高裁は示しました。そして「事案毎に、その具体的事情に即応して解決されるべき」としました。この最高裁判決以降は、幼児の逸失利益が認められるようになりましたが、算定方法については最高裁が抽象的な例示にとどまったため、逸失利益の算定基礎となる「収入の算出法」や「生活費の控除の仕方」について、様々な方法がとられてきました。その後、1999年(平成11年)11月22日に発表された、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部の「交通事故における逸失利益の算定方式についての共同提言」を経て、現在では、年少者の基礎収入の認定方法や中間利息の控除方法について、ほぼ定型化され、全国で同じような運用がされています。まとめ交通事故による逸失利益は、将来の収入減による損害を賠償するものですから、被害者が幼児や小さな子どもの場合も、逸失利益を賠償請求することができます。幼児や生徒の逸失利益の算定方法は、現在では定型化されています。子どもの逸失利益は、統計上の平均賃金をベースに、原則18歳から67歳までを就労可能年数として算定します。もし、保険会社の賠償金提示額が低すぎるのではないかと疑問に感じたら、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連幼児・小中学生が交通事故に遭ったときの逸失利益の算定方法年少女子の死亡逸失利益の算定で男女間格差を解消する方法交通事故で重度の後遺障害が残ると家族にも慰謝料が認められる
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  • 三庁共同提言
    交通事故の逸失利益算定方式についての「三庁共同提言」
    東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が、「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(1999年(平成11年)11月22日)を発表しました。これを「三庁共同提言」と呼びます。三庁共同提言が発表されて以降、全国の地方裁判所における逸失利益の算定は、おおむね共同提言の内容に沿って行われています。三庁共同提言が発表された背景、共同提言の内容について、見ていきましょう。基礎収入の認定と中間利息の控除の方法を統一三庁共同提言は、交通事故による逸失利益の算定において最も重要な「基礎収入の認定」と「中間利息の控除」の方法について、同一の方式を採用することを、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が合意したものです。三庁共同提言が発表されたことにより、それまで、特に幼児・生徒・学生など若年者の逸失利益の算定額に地域間格差(裁判所により算定額に大きな差異)を生じていた問題が解消されました。東京地裁民事第27部・大阪地裁第15民事部・名古屋地裁民事第3部は、全国の地方裁判所の中で交通事故による損害賠償請求訴訟を専門的に取り扱う部です。交通事故の裁判や実務において「指導的立場」にあるとされ、三庁共同提言には大きな意味があります。ただし、三庁共同提言は、各裁判官の個々の事件における判断内容を拘束するものではなく、いわば「運用指針」です。「三庁共同提言」が発表された背景全国の裁判所で大量の交通事故損害賠償請求事件を適正・迅速に解決しなければならないことから、人身損害賠償額の算定基準の定額化・定型化が進んでいます。そんな中で、特に問題となっていたのが「幼児・生徒・学生など年少者・若年者の逸失利益の算定方式」です。逸失利益の算定方式が裁判所によって異なっていた最高裁が1964年に「幼児の逸失利益は算定可能」と判断し、その算定にあたって「裁判所は、諸種の統計表その他の証拠資料に基づき、経験則と良識を活用して、できるかぎり客観性のある額を算定すべき」と指摘しました。その後、下級裁判所では、年少者の逸失利益について様々な算定方式がとられ、主な方式として次の2つがありました。賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎として、ライプニッツ係数で中間利息を控除する方式(東京方式)賃金センサスの18歳ないし19歳の平均賃金(初任給固定賃金)を基礎として、ホフマン係数で中間利息を控除する方式(大阪方式)それぞれ、主に東京地裁で採用されていたので「東京方式」、主に大阪地裁や名古屋地裁で採用されていたので「大阪方式」と呼ばれていました。しかし、「東京方式」と「大阪方式」のいずれの算定方式を採用するかによって、特に年少者の逸失利益の算定額に1千万円以上もの差異が生じることがあり、社会問題化していました。訴え出た裁判所によって、損害額の算定方式による違いから、認められる金額に大きな差が生じるようでは、裁判所の信頼感が損なわれます。「共同提言」は、次のように述べています。大量の交通事故による損害賠償請求事件の適正かつ迅速な解決の要請、被害者相互間の公平及び損害額の予測可能性による紛争の予防などの観点に照らせば、前記の算定方式の差異から生じる地域間格差の問題を早急に解決することが求められているものといわざるを得ない。こうした背景から、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部による「共同提言」の発表に至ったのです。中間利息控除とライプニッツ方式・ホフマン方式について詳しくはこちら東京方式と大阪方式で逸失利益が具体的にどれだけ違うか「東京方式」と「大阪方式」とで逸失利益の算定額にどれだけ差が生じるか、具体的な事例で見てみましょう。14歳男子の死亡事故被害者14歳・男子事故日平成28年3月(死亡事故)死亡逸失利益の計算方法はこちら基礎収入(年収)基礎収入は、平成28年の賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計の男性平均賃金を使用します。東京方式(男子の全年齢平均賃金)549万4,300円大阪方式(18歳~19歳の男子の平均賃金)251万4,500円※[年収]=[決まって支給する現金給与額]× 12 +[年間賞与その他特別支給額]生活費控除率生活費控除率は 50%です。ライプニッツ係数ライプニッツ係数表(年金現価表)より、就労終期(67歳)までの年数53年(67歳-14歳)に対応する係数が 18.49340就労始期(18歳)までの年数4年(18歳-14歳)に対応する係数が 3.54595適用するライプニッツ係数は、18.49340-3.54595=14.94745ホフマン係数ホフマン係数表(年金現価表)より、就労終期(67歳)までの年数53年(67歳-14歳)に対応する係数が 25.53538就労始期(18歳)までの年数4年(18歳-14歳)に対応する係数が 3.56437適用するホフマン係数は、25.53538-3.56437=21.97101 死亡逸失利益の計算と比較以上を死亡逸失利益の計算式にあてはめると、東京方式549万4,300円 ×(1-0.5)× 14.94745= 4,106万2,894円大阪方式251万4,500円 ×(1-0.5)× 21.97101= 2,762万3,055円※ 死亡逸失利益 = 基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応する中間利息控除係数「東京方式」の方が、1,343万9,839円も逸失利益が大きく算定されます。「三庁共同提言」の内容「三庁共同提言」の骨子は、次の2つです。幼児・生徒・学生、専業主婦、若年者の場合は、基礎収入を全年齢平均賃金または学歴別平均賃金によることとし、それ以外の者は、事故前の実収入額によることとする。中間利息の控除方法は、特段の事情のない限り、年5分の割合によるライプニッツ方式を採用する。ほぼ「東京方式」を踏襲したものとなっています。詳しく見てみましょう。参考:「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(判例タイムズ №1014)基礎収入の認定方法基礎収入の認定方法については、「幼児・生徒・学生の場合、専業主婦の場合、若年者の場合」と「それ以外の者の場合」と大きく2つに分かれます。賃金センサスの平均賃金を使うか、実収入額を使うか、の違いがあります。被害者基礎収入幼児・生徒・学生全年齢平均賃金専業主婦全年齢平均賃金若年者全年齢平均賃金※おおむね30歳未満で、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合。それ以外の者事故前の実収入額補足賃金センサスの平均賃金を採用するときは、原則として、死亡の場合は「死亡した年」の平均賃金、後遺障害の場合は「症状固定の年」の平均賃金によります。若年者の場合で平均賃金を採用するのは、事故前の実収入額が全年齢平均賃金よりも低額である場合です。実収入額の方が高ければ、実収入額によります。おおむね30歳未満の若年者については、「生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性」が認められる場合には、全年齢平均賃金を採用し、認められない場合には、年齢別平均賃金や学歴別平均賃金の採用等も考慮します。基礎収入の算定方法被害者基礎収入給与所得者原則として事故前の実収入によります。ただし、事故前の実収入額が年齢別平均賃金より低額の場合、おおむね30歳未満の者については、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然怪が認められる場合には、全年齢平均賃金を採用し、認められない場合には、年齢別平均賃金や学歴別平均賃金の採用等も考慮します。事業所得者原則として申告所得額によります。ただし、事故前の申告所得額が年齢別平均賃金よ低額の場合、おおむね30歳未満の者については、上記の給与所得者の場合と同様です。専業主婦原則として全年齢平均賃金によります。ただし、年齢・家族構成・身体状況・家事労働の内容などに照らし、生涯を通じて全年齢平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には、年齢別平均賃金を参照して適宜減額します。有職主婦実収入額が、全年齢平均賃金を上回っているときは、実収入額を採用し、下回っている場合は、専業主婦の場合と同様です。幼児・生徒・学生原則として全年齢平均賃金によります。ただし、生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には、年齢別平均賃金または学歴別平均賃金の採用等も考慮します。また、大学生やこれに準ずる場合には、学歴別平均賃金の採用も考慮します。その他の無職者就労の蓋然性があれば、原則として年齢別平均賃金によります。失業者再就職の蓋然性のある場合、再就職によって得ることができると認められる収入額を基礎とします。失業前の実収入額や全年齢平均賃金または年齢別平均賃金などを参考とします。ただし、再就職によって得られる予定の収入額または失業前の実収入額が、年齢別平均賃金より低額の場合、おおむね30歳未満の者については、給与所得者の場合と同様です。中間利息の控除方法交通事故による逸失利益の算定における中間利息の控除方法については、特段の事情がない限り、年5分の割合によるライプニッツ方式を採用します。「中間利息の控除とは何か?」についてはこちらライプニッツ方式を採用した理由ライプニッツ方式を採用することにした理由は、次の2点です。1.ライプニッツ方式とホフマン方式との間で係数に顕著な差異が生じるのは、中間利息の控除期間が長期間にわたる場合であり、その典型例というべき幼児・生徒・学生等の若年者の場合には、基礎収入の認定につき、初任給固定賃金ではなく、比較的高額の全年齢平均賃金を広く用いることとしている。2.ホフマン方式の場合には、就労可能年数が36年以上になるときは、賠償金元本から生じる年5分の利息額が年間の逸失利益額を超えてしまうという不合理な結果となるのに対し、ライプニッツ方式の場合には、そのような結果が生じない。そもそも、ホフマン方式は単利計算、ライプニッツ方式は複利計算ですから、ホフマン方式の方が控除される利息が少なく算定される(ホフマン係数の方がライプニッツ係数より大きい)ので、逸失利益が大きく算定されます。つまり、ホフマン方式の方が被害者には有利なのですが、基礎収入の認定に、18歳から19歳の初任給平均賃金でなく、昇給分を考慮できる全年齢平均賃金を用いるので、ライプニッツ方式が妥当というのが[1]の理由です。「2」の「ホフマン方式は36年以上になると不合理な結果になる」という点については、詳しい説明がいると思います。興味のある方は次をご覧ください。「ホフマン方式は36年以上になると不合理な結果になる」とは?中間利息の利率を年5分とした理由中間利息の利率については、「最近の金利状況に照らせば、定期預金等による資金運用によっても年5分の割合による複利の利回りでの運用利益を上げることが困難な社会情勢にあることは否めない」としながら、「年5分の割合」としました。その理由については、次の事情をあげています。損害賠償金元本に附帯する遅延損害金については、民事法定利率が年5分とされている。(民法404条)過去の経験に基づいて長期的に見れば、年5分の利率は、必ずしも不相当とはいえない。個々の事案ごとに利率の認定作業をすることは、非常に困難であるのみならず、大量の交通事故による損害賠償請求事件の適正かつ迅速な処理の要請による「損害の定額化・定型化」の方針に反する。なお、最高裁も、2005年(平成17年)6月14日に「損害賠償額の算定に当たり、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならない」とする判決を出しています。男女間格差の問題は先送り逸失利益の算定にあたっては、被害者の収入が重要な要素となることから、男女間格差の問題も存在します。しかし、男女間格差の問題について「三庁共同提言」では、「是正の必要性及びその可否について多くの検討すべき要素があり、直ちに解決することは困難」として先送りしました。原則として、男女別の全年齢平均賃金を使用することとされています。女子の場合は、女性の低賃金の実態を反映した女性労働者の平均賃金を使うので、どうしても逸失利益が低く算定されてしまいます。「賃金センサスに示されている男女間の平均賃金の格差は、現実の労働市場における実態を反映していると解される」(最高裁判決・昭和62年1月19日)といったように、現実の労働市場において男女間格差があるのだから、損害賠償額の算定にあたって男女間格差が生じるのはやむを得ないとする考えがあります。しかし、特に年少者の男女間格差は問題があり、「三庁共同提言」発表以降、男女間格差を解消すべく、判例に変化が見えはじめています。年少女子の逸失利益の算定で男女間格差を解消する方法まとめ東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部による「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(三庁共同提言)は、特に年少者の逸失利益の算定方式についての指針となるものです。現在は、ほぼ「三庁共同提言」の内容に沿って逸失利益の算定を行っていますが、損害賠償額の算定は、個別具体的な事情を考慮して行われるべきものです。保険会社が提示している賠償額に疑問を感じているなら、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。示談交渉を弁護士に依頼するかどうかの判断は後からでもできます。まずは、専門家に相談してみることが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 中間利息控除と逸失利益の計算|ライプニッツ方式・ホフマン方式
    逸失利益を計算では、中間利息を控除します。中間利息とは何か。なぜ、逸失利益の計算において中間利息を控除するのか、見ていきましょう。さらに、中間利息控除の方法として、ライプニッツ方式とホフマン方式を紹介します。逸失利益を計算するとき、なぜ中間利息を控除するのか?中間利息控除の説明の前に、そもそも逸失利益とは何か、簡単に見ておきましょう。逸失利益とは将来の損害額逸失利益とは、交通事故に遭わなければ得られたはずの収入のことです。将来取得できるはずの利益を逸し失うので、逸失利益といいます。消極損害の1つです。逸失利益には、「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」があります。後遺障害逸失利益は、後遺障害が残って事故前と同じように働くことができなくなり収入が減ることによる損害のこと、死亡逸失利益は、死亡して収入が無くなってしまうことによる損害です。中間利息とは何か? なぜ中間利息を控除するのか?このように、逸失利益は、将来にわたって(場合によっては何十年にもわたり)発生する損害です。そのことをふまえ、中間利息とは何か、なぜ逸失利益の計算で中間利息を控除するのか、見ていきましょう。話を分かりやすくするため、具体例で考えます。細かい計算は省きますから、イメージでつかんでください。交通事故で被害者が死亡。被害者の事故当時の年収は500万円で、事故に遭わなければ、今後20年間働けたとします。単純計算すると、20年間で1億円の収入を失います。これは、20年後の損害が累計1億円ということです。ごく大まかに言えば、これが逸失利益です。厳密には、生活費控除などの計算もありますが、ここでは省略します。さて、損害賠償金は、原則として一括で支払います。1億円を一時金で受け取り、銀行に預けるなど運用すると、利息が付き、20年後には[1億円+利息]になります。つまり、算定した逸失利益を全額支払うと、被害者側は現実の損害を上回る賠償額を取得することになります。これでは「公平でない」ため、利息相当額(これを中間利息といいます)を控除して支払うのです。これが、逸失利益の計算において、中間利息を控除する理由です。別の言い方をすれば、中間利息控除とは「将来価額を現在価額に換算すること」とも言えます。控除する中間利息の起点は、死亡事故の場合は事故発生時、後遺障害事故の場合は症状固定時です。中間利息の利率は法定利率を適用中間利息の利率は、法定利率を適用します。これは最高裁判例もあり、従来より、中間利息の利率には法定利率の年5%が適用されてきました。改正民法の施行(2020年4月1日)により、法定利率は年3%に引き下げられ、2020年4月1日以降に発生した事故については、中間利息の利率が年3%となります。2020年3月31日までの事故は、従来の年5%です。中間利息の利率についての最高裁判例損害賠償額の算定にあたり、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならない。(最高裁判決・平成17年6月14日)この判決の中で最高裁は、「実質金利の動向からすれば、…中間利息の割合は民事法定利率である年5%より引き下げるべきであるとの主張も理解できないではない」としながら、「現行法は、将来の請求権を現在価額に換算するに際し、法的安定及び統一的処理が必要とされる場合には、法定利率により中間利息を控除する考え方を採用している」と指摘しました。改正民法は、法定利率を年3%に引き下げるとともに、3年ごとに見直す変動性を導入しました(民法第404条)。また、中間利息を控除するときは「損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率」を適用する旨を明記しました(民法第417条の2第1項)。民法一部改正による法定利率の引き下げについて詳しくはこちら「ライプニッツ方式」と「ホフマン方式」中間利息控除の代表的な計算方法としては、「ライプニッツ方式」と「ホフマン方式」があります。ライプニッツ方式とホフマン方式の違い2つの違いは、ライプニッツ方式が複利計算、ホフマン方式が単利計算であることです。つまり、ライプニッツ方式は複利で運用することを前提に、ホフマン方式は単利で運用することを前提に、逸失利益を現在の価額(現価)に換算する方式です。ライプニッツ方式複利で運用することを前提に中間利息を控除し、現価に換算する方法ホフマン方式単利で運用することを前提に中間利息を控除し、現価に換算する方法被害者にとって有利なのはどっち?被害者にとって有利なのは、ホフマン方式です。ホフマン方式は、単利計算のため、控除する中間利息が小さく算定されるからです。単利計算は、元本にのみ利息が付く計算方式です。複利計算は、元本から生じた利息を次期の元本に組み入れて利息計算する方式です。複利計算は、利息に利息が付く計算方式ですから、中間利息が「雪だるま式」に増えていきます。つまり、ライプニッツ方式の方が、控除する中間利息が大きくなるので、受け取れる逸失利益が少なく算定されるのです。ですから、中間利息控除のみを考えると、被害者にとっては、ホフマン方式が有利といえます。現在はライプニッツ方式が主流現在は、ライプニッツ方式が一般的です。となると、「被害者が損しているのでは?」と疑問を持つかもしれませんが、そうとも限りません。単純に、ライプニッツ方式とホフマン方式だけで比べると、ホフマン方式の方が被害者には有利ですが、これは中間利息控除の話です。大事なのは、そもそもの「失われる収入額」の認定です。これを基礎収入額といいますが、基礎収入額に何を採用するかによって、逸失利益は大きく異なるのです。かつては「東京方式」と「大阪方式」があった裁判では、損害賠償額の公平性の観点から、基礎収入額の認定方法と中間利息の控除方法が検討され、かつては、「東京方式」と「大阪方式」がありました。東京方式は、東京地裁が採用していた方法です。若年者の逸失利益の算定において、基礎収入に賃金センサスの全年齢平均賃金を採用し、ライプニッツ方式で中間利息を控除する方法です。大阪方式は、大阪地裁や名古屋地裁が採用していた方法です。若年者の逸失利益の算定において、基礎収入に賃金センサスの18歳から19歳の平均賃金(初任給固定賃金)を採用し、ホフマン方式で中間利息を控除する方法です。東京方式はライプニッツ方式を採用するものの、大阪方式より基礎収入に高い数値を使うため、逸失利益は、東京方式の方が高く算定される傾向がありました。ライプニッツ方式を採用する共同提言こうした逸失利益の地域間格差の問題を解決するため、1999年に、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が、中間利息の控除方法にライプニッツ方式を採用するという「共同提言」を発表しました。なお、「共同提言」は、基本的に東京方式を踏襲したもので、原則として基礎収入に全年齢平均賃金を採用します。「共同提言」は、個々の事件における各裁判官の判断内容を拘束するものではなく、最高裁も「ホフマン方式を不合理とは言えない」と判断しているので、ホフマン方式による算定が否定されているわけではありません。しかし、交通事故の損害賠償の定型化・定額化が進んでいますから、一般的にはライプニッツ方式を用います。「ホフマン方式」でなく「ライプニッツ方式」を採用した理由東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が、ホフマン方式でなくライプニッツ方式に統一した理由の1つとして、中間利息の控除期間が長期間にわたると、ホフマン方式は不合理な結果が生じることが挙げられています。ホフマン方式の問題点について詳しくはこちらをご覧ください。中間利息控除係数(ライプニッツ係数・ホフマン係数)中間利息を控除して逸失利益を算定するには、控除する期間に対応する中間利息控除係数を年間の逸失利益に乗じることで計算できます。代表的な中間利息控除係数が、ライプニッツ係数とホフマン係数です。ライプニッツ係数を用いて中間利息を控除するのがライプニッツ方式、ホフマン係数を用いて中間利息を控除するのがホフマン方式です。ライプニッツ係数表・ホフマン係数表には、現価表と年金現価表があり、使用するシーンが異なりますから注意してください。ライプニッツ係数・ホフマン係数の現価表・年金現価表の違いと使い方中間利息控除と逸失利益の計算例逸失利益を計算し、中間利息控除がどのように行われるか見ておきましょう。ライプニッツ係数を使って中間利息を控除し、後遺障害逸失利益を計算してみます。後遺障害逸失利益の計算式は次の通りです。年収 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数例えば、被害者の事故前の年収が500万円、後遺障害14級が認定され労働能力喪失率が5%、労働能力喪失期間が5年だった場合です。5年に対応するライプニッツ係数は 4.329476 ですから、後遺障害逸失利益は、500万円×0.05×4.329476=108万2,369円となります。解説労働能力喪失率が5%とは、年収が5%減ることです。被害者の年収が500万円ですから、その5%の減収分、すなわち年間25万円、5年間で125万円の損害(逸失利益)となります。それを一時金として受け取るので、現在価額に換算すると、逸失利益は108万2,369円となります。関連ページそのほか、具体的な逸失利益の計算例は、次のページでも紹介しています。後遺障害逸失利益の計算むち打ち症(12級13号・14級9号)の場合の損害賠償請求額の計算死亡逸失利益の計算子どもの逸失利益の計算高校生・大学生の逸失利益の計算まとめ逸失利益は、被害者が退職するまでに得られたはずの収入額を損害として一括で前払いします。名目上の損害額を全額受け取ると、退職時まで保有し運用することで利息が生じ、結果的に利息分だけ過大な利益を得ることになります。この利息が中間利息で、公平の観点から、逸失利益の算定では中間利息分をあらかじめ控除して損害額を算定します。代表的な中間利息控除の方法にはライプニッツ方式とホフマン方式がありますが、現在はライプニッツ方式が主流です。逸失利益は、損害賠償金の中でも金額が大きく、保険会社とよく揉めます。過去の判例なども吟味して示談交渉する必要がありますから、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 労働能力喪失
    労働能力喪失率とは?自賠責保険の労働能力喪失率表と問題点
    自賠責保険の支払基準において、後遺障害等級に対応する労働能力喪失率が決められています。通常は、この労働能力喪失率表を用いて逸失利益を算定しますが、自賠責の労働能力喪失率は、被害者の個別事情を考慮するものでないため、被害者の実情に合わないことが少なくありません。ここでは、労働能力喪失率とは何か、自賠責保険では労働能力喪失率をどのように定めているのか、自賠責保険における労働能力喪失率と問題点について見ていきましょう。労働能力喪失率とは?交通事故の後遺症により、労働能力が低下した割合を「労働能力喪失率」といいます。自賠責保険の支払基準では、後遺障害の等級に対応して労働能力喪失率が定められています。通常、後遺障害逸失利益の計算では、この自賠責保険の労働能力喪失率が用いられます。自賠責の「労働能力喪失率表」の問題点自賠責保険では、後遺障害等級の1級から14級に対応して14段階(※)で労働能力喪失率を定めています。※正確には、3級以上は喪失率100%なので12段階。日々発生する交通事故の損害賠償を迅速・公平に処理するため、定型化・基準化することは必要でしょう。しかし、そもそも身体的損害が将来の労働に影響する割合を、14段階で一律に数値化することには無理があります。同じ後遺障害でも、被害者の年齢、性別、職業、後遺障害の部位・程度などによって影響は異なります。そのため、被害者の実情と著しくかけ離れた結果となることも少なくありません。裁判では被害者の具体的事情を考慮裁判でも基本的に自賠責の労働能力喪失率が尊重されますが、その労働能力喪失率が適当でない場合は、個別事情を考慮して、修正した労働能力喪失率が認定されます。最高裁は、「労働能力喪失表にもとづく労働能力喪失率以上に収入の減少を生じる場合には、その収入減少率に照応する損害の賠償を請求できる」としています。下級審でも、例えば、後遺障害14級の労働能力喪失率は5%ですが、裁判所が個別事情を総合的に判断して10%を認めた事例もあります(東京地裁・平成13年8月29日判決)。最高裁判決(昭和48年11月16日)得べかりし利益の喪失による損害を算定するにあたつて、…労働能力喪失率表が有力な資料となることは否定できない。しかし、損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、被害者の職業と傷害の具体的状況により、同表に基づく労働能力喪失率以上に収入の減少を生じる場合には、その収入減少率に照応する損害の賠償を請求できることはいうまでもない。後遺障害等級別・自賠責保険金額・労働能力喪失率後遺障害等級別の自賠責保険金額(慰謝料含む)と労働能力喪失率をまとめて、一覧表にしておきます。自賠責保険金額は自動車損害賠償保障法施行令「別表第一」「別表第二」より、労働能力喪失率は「労働能力喪失率表」より、抜粋しています。介護を要する後遺障害等級表等級保険金額労働能力喪失率第1級4,000万円100/100第2級3,000万円100/100後遺障害等級表等級保険金額労働能力喪失率第1級3,000万円100/100第2級2,590万円100/100第3級2,219万円100/100第4級1,889万円92/100第5級1,574万円79/100第6級1,296万円67/100第7級1,051万円56/100第8級819万円45/100第9級616万円35/100第10級461万円27/100第11級331万円20/100第12級224万円14/100第13級139万円9/100第14級75万円5/100労働能力喪失率表(自賠責保険の支払基準・別表1) ※国土交通省のWebサイトにリンクしています。自賠責保険の支払い基準の全体はこちら ※損害保険料率算出機構のWebサイトにリンクしています。まとめ自賠責の労働能力喪失率が、あまりにも実情とかけ離れている場合は、機械的に適用することは避けるべきです。とても難しい作業になりますが、具体的事情を考慮して、労働能力喪失率を修正すべきでしょう。もちろん、交通事故の後遺障害に詳しい弁護士に相談する必要があります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 法定利率引下げ
    民法改正で法定利率3%へ引下げ!逸失利益への影響は?
    民法の一部を改正する法律の施行(2020年4月1日)により、法定利率が年5%から年3%となりました。加えて、法定利率を3年ごとに1%刻みで見直す変動制が導入されました。法定利率の引き下げにより、交通事故の損害賠償額が従来より増えるケースがあります。損害賠償額の計算がどう変わるのか、見ていきましょう。なお、新しい法定利率が適用されるのは、2020年4月1日以降に発生した事故からです。2020年3月31日までの事故は、従来の年5%の法定利率が適用されます。法定利率の引き下げが損害賠償額にどう影響するのか?交通事故で賠償請求できる損害のうち、法定利率の引き下げが影響するのは、逸失利益と遅延損害金です。法定利率の引き下げにより、逸失利益は増え、遅延損害金は減ります。詳しく見ていきましょう。法定利率の引き下げにより、逸失利益が増えるまず、逸失利益についてです。逸失利益とは、将来得られるはずだった利益のことです。交通事故の被害に遭って以前のように働けなくなると、収入が減ったり途絶えたりしてしまいます。その損害が、逸失利益です。交通事故の損害賠償では、治療費や慰謝料のほか、将来的に発生する損害である逸失利益を含め、全損害を現時点で一括して支払います。そのため、逸失利益は、現在の価額に換算して支払われます。具体的には、本来取得できる時期までの利息相当額が控除されます。これを中間利息控除といいます。受け取った賠償金を銀行に預けるなど運用すれば利息が増えるため、利息分を差し引いて支払わなければ、被害者が実際の損害額より多くの賠償金を受け取ることになり公平でない、というのが、中間利息を控除する理由です。具体例で考えると…具体例で考えてみましょう。交通事故で死亡した被害者の年収が500万円で、今後20年間働けたとすれば、将来にわたって得られる収入額は1億円です。損害額は1年目が500万円、2年で1,000万円というように年々加算され、20年後に損害額が1億円に達します。簡単にいえば、この1億円が逸失利益です。ただし、損害賠償では、逸失利益として1億円が支払われるわけでなく、中間利息を控除した金額が支払われるのです。中間利息の利率が高すぎた中間利息の利率には、法定利率が適用されます。中間利息控除に一定の合理性はあるものの、法定利率が市中金利を大きく上回る状態が続き、中間利息控除で不当に賠償額が抑えられ、かえって公平を害してきたのです。そのことが、法定利率の見直しの背景にありました。法定利率の引き下げにより、中間利息の利率も下がり、控除する中間利息の額が少なくなります。その結果、被害者に支払われる逸失利益の額が増えることになるのです。中間利息の利率についての最高裁判例損害賠償額の算定に当たり、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならない。最高裁判決(平成17年6月14日)中間利息控除と逸失利益の計算方法はこちら法定利率の引き下げにより、遅延損害金が減る遅延損害金とは、賠償金の支払いが遅れたことによる利息です。遅延損害金は、損害賠償請求訴訟を提起した場合に関係します。示談交渉で解決する場合は、もともと遅延損害金が付かないので関係ありません。これまでは、裁判で判決が出れば、裁判所が正当だと認定した賠償金額に対し、事故発生日を起算点として年5%の遅延損害金が加算されました。この利率も法定利率です。今後は、遅延損害金が年3%で計算されることになりますから、その限りにおいては遅延損害金が減ります。しかし、逸失利益が増えるため、損害賠償額そのものは増えます。具体的にどれくらいの違いが生じるか中間利息の利率が年5%と年3%とで、逸失利益にどれくらいの金額の違いが生じるか、後遺障害事故と死亡事故の場合について、それぞれ見てみましょう。なお、逸失利益の詳しい計算方法については、次のページをご覧ください。後遺障害逸失利益の計算方法はこちら死亡逸失利益の計算方法はこちら後遺障害逸失利益の計算例被害者は、40歳の男性会社員で年収500万円。後遺障害5級、労働能力喪失期間は就労終期の67歳まで認められたとします。後遺障害逸失利益は、次の計算式で求めます。年収 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて決まり、79/100です。労働能力喪失期間は、事故時の40歳から就労可能年齢の67歳までの27年です。年利5%の場合の後遺障害逸失利益年利5%、27年(67歳-40歳)に対応するライプニッツ係数は14.6430ですから、500万円×79/100×14.6430=5,783万9,850円年利3%の場合の後遺障害逸失利益年利3%、27年(67歳-40歳)に対応するライプニッツ係数は18.3270ですから、500万円×79/100×18.3270=7,239万1,650円法定利率が5%から3%に下がると、逸失利益は1,455万円増えます。死亡逸失利益の計算例死亡した被害者は、40歳の男性会社員で年収500万円、扶養家族2人(妻と子)だったとします。死亡逸失利益は、次の計算式で求めます。年収 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数生活費控除率は、男性で扶養家族2人ですから30%、就労可能年数は、就労終期の67歳までの27年です。年利5%の場合の死亡逸失利益年利5%、27年に対応するライプニッツ係数は14.6430ですから、500万円×(1-0.3)×14.6430=5,125万500円年利3%の場合の死亡逸失利益年利3%、27年に対応するライプニッツ係数は18.3270ですから、500万円×(1-0.3)×18.3270=6,414万4,500円法定利率が5%から3%に下がると、逸失利益は1,289万円増えます。法定利率が固定性から変動制に法定利率は、固定制から変動制へ変更になりました。緩やかな変動制の導入法定利率を市中金利の変動に合わせて緩やかに上下させる変動制が導入されます。法定利率の見直しは3年ごとです。貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動時と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率が変動します。例えば、参照値が0.5%上がっても法定利率は変動せず、1.5%上がると1%、2.5%上がると2%上がる仕組みです。そのため、実際には法定利率の変動は起こりにくく、国は「緩やかな変動制」と呼んでいます。法定利率は事故発生時の利率を適用1つの債権には、1つの法定利率が適用されます。つまり、事故時(損害賠償請求権が生じた時点)の法定利率が適用され、後で変動することはありません。この点については、改正民法で明文化されました。「第417条の2(中間利息の控除)」が新設されています。改正民法 第417条の2第1項将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。法定利率の見直しについて、もっと詳しく知りたい方は、法務省の説明資料をご覧ください。法務省の「法定利率に関する見直し」についての資料はこちら※法務省のWebサイトにリンクしています。まとめ民法改正により、法定利率が年5%から3%に引き下げられたことで、逸失利益を含む損害賠償額が増えます。新しい法定利率の適用は、2020年4月1日以降に発生した交通事故からです。それ以前に発生した事故については、従来の年5%の法定利率が適用となります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 後遺障害逸失利益の計算
    交通事故で後遺症が残ったときの後遺障害逸失利益の計算方法
    後遺障害逸失利益とは、被害者に後遺障害が残り、労働能力が失われたり低下したりするために、将来発生するであろう収入の減少のことです。同じ消極損害でも、休業損害は「現実に生じた収入の喪失」ですが、逸失利益は「将来発生するであろう収入の喪失」です。後遺障害逸失利益の計算の仕方後遺障害逸失利益は、次のように計算します。基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数被害者の基礎収入(年収)に労働能力喪失率を乗じると、1年間の減収額が分かります。この1年間の減収額に就労可能期間を乗じると、将来の収入の喪失額が計算できます。ただし、損害賠償は将来にわたって得られる利益を先にまとめて支払うため、中間利息を控除します。これが、計算式の意味です。それでは、各要素について、詳しく見ていきましょう。基礎収入基礎収入は、一般的には事故前年の収入額(年収)を用います。子ども、学生、専業主婦など事故前の収入がない場合は、賃金センサスの平均賃金を用います。逸失利益に対する賠償は「将来の収入減」を補償するものですから、学生や年少者など未就労者も対象となります。逸失利益の基礎収入の算定について、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が「三庁共同提言」を発表しています。職種ごとに、後遺障害逸失利益の基礎収入の算出方法をご紹介します。給与所得者原則として、事故前年の実収入額を基礎に計算します。年収の証明は、事故前の源泉徴収票や確定申告書などで行います。交通事故の後遺症が理由で退職した場合、「実際にもらった退職金」と「定年まで働いたら、もらえたはずの退職金」との差額も逸失利益となります。給与所得者の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら若年労働者若年労働者(おおむね30歳未満)の場合は、実収入でなく、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入として計算するのが通例です。若年労働者は、収入が低い一方、仕事を長く続けていけば収入が上がっていくことが一般的です。前年の実収入を基礎収入とすると、将来の給与の上昇を反映できず、逸失利益が不当に低く算出さてしまいます。また、学生の逸失利益には、賃金センサスの全年齢平均賃金を用いて計算するため、仕事をしていない学生より低い逸失利益になってしまい不合理だからです。会社役員会社役員の場合は、利益配当部分を除き、労務対価部分のみを基礎収入とします。会社役員の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら事業所得者原則として、事故前年の確定申告所得額を基礎収入とします。税金対策のため過少申告している場合は、実際の収入額が申告所得額より高いことを証明すれば、その収入額が基礎収入額として認められることがあります。確定申告をしていないときでも、相当の収入があったと認められるときは、賃金センサスの平均賃金を基礎することが認められています。個人事業主の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら家事従事者専業主婦の場合、賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とします。パート収入などがある有職主婦の場合は、実際の収入と賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金のいずれか高い方を基礎収入とします。男性の家事従事者(専業主夫)の場合も同じです。主婦・主夫の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら学生・生徒・幼児被害者が症状固定時に、学生・生徒・幼児等の場合、原則として、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入とします。大学在学中の学生は、「大学・大学院卒」の平均賃金を用います。18歳未満の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら高校生・大学生の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら失業者失業者であっても、労働能力と労働意欲があり、就労の可能性がある場合は、原則として失業前の収入を参考に収入額を計算します。失業前の収入が賃金センサスの全年齢平均賃金を下回っている場合は、将来、全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性(可能性が高いこと)が認められれば、全年齢平均賃金を収入額とできます。労働能力喪失率後遺障害のため労働能力の低下した割合を「労働能力喪失率」といいます。自賠責保険の支払基準において、後遺障害等級に対応した労働能力喪失率が決められています。つまり、後遺障害等級が決まれば、労働能力喪失率が決まるという関係です。通常は、この自賠責の労働能力喪失率を用いて、後遺障害逸失利益を算定します。裁判では、被害者の実情に照らして、自賠責の労働能力喪失率を適用するのが適当でないと判断された場合は、修正した労働能力喪失率が認定されることがあります。自賠責保険の労働能力喪失率表とその問題点労働能力喪失期間労働能力喪失期間とは、労働能力喪失による収入の減少が続く期間のことです。原則は症状固定日から67歳まで後遺障害は「症状固定により、それ以上よくならない」ということですから、労働能力喪失期間は、症状固定日から就労可能年限とされる67歳までが原則です。始期終期後遺傷害事故の場合症状固定時67歳死亡事故の場合死亡時67歳この始期から終期までの期間が、労働能力喪失期間となります。ただし、後遺障害の部位や機能回復の見込み、被害者の年齢や仕事内容などによっては、就労可能年限よりも短く労働能力喪失期間を限定する場合があります。労働能力喪失期間を限定する場合腕や足を切断したような器質障害や重篤な後遺障害の場合は、通常、67歳までを労働能力喪失期間とします。しかし、神経症状のように、後遺障害といっても相当期間後には回復が予想される場合や、軽度の障害で本人の慣れなどにより労働能力に対する影響が次第に薄れていくと考えられる場合は、労働能力喪失期間を制限されることがあります。特に、むち打ち症は、短期間に制限される傾向があります。未就労者の場合は学校卒業年齢から67歳まで被害者が未就労者の場合は、労働能力喪失期間の開始時期が症状固定日でなく、学校を卒業する年齢になります。一般に、就労開始年齢は18歳です。4年制大学に在学している学生なら22歳です。高校生などで大学進学が確実視される場合は、大学卒業年齢の22歳からとなります。高齢者は平均余命の2分の1高齢者の場合、症状固定日から67歳までを労働能力喪失期間とすると、労働能力喪失期間が全く認められない場合や、認められても極めて短期間となってしまう場合があります。そのため、症状固定日から67歳までの年数が、平均余命の2分の1を下回る場合は、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。これは、67歳を超えて就労する蓋然性が認められる者は、平均余命の2分の1くらいは働くだろうと考えられるからです。平均余命は、厚生労働省の簡易生命表を用います。労働能力喪失期間として「症状固定日から67歳までの年数」を用いるか「平均余命の2分の1」を用いるか、境界となる年齢は何歳でしょうか?2015年(平成27年)の簡易生命表によると、男性が52歳、女性が47歳で、就労可能年数が平均余命の2分の1を下回るようになります。ですから、男性は52歳以上、女性は47歳以上が、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とする目安となります。男性年齢平均余命平均余命の1/267歳までの年数51歳31.4815.741652歳30.5715.28515※厚生労働省・2015年簡易生命表(男)より一部抜粋して作成。女性年齢平均余命平均余命の1/267歳までの年数46歳41.9420.972147歳40.9820.4920※厚生労働省・2015年簡易生命表(女)より一部抜粋して作成。就労可能年限が67歳というのは、第12回生命表(昭和44年)の男子0歳の平均余命を採用したものであり、大して根拠のあるものではないようです。(北河隆之著『交通事故損害賠償法・第2版』弘文堂 224ページ)中間利息控除係数後遺障害逸失利益は、将来得られたであろう利益を一時金で支払いますから、中間利息を控除します。中間利息控除とは、得られたお金を預金したり運用したりすれば利息が付くはずだから、利息分を差し引くということです。これを簡単に計算するための係数が、中間利息控除係数です。中間利息控除係数には、複利計算のライプニッツ係数と単利計算のホフマン係数があり、現在は、ライプニッツ係数を用いる方式(ライプニッツ方式)が主流です。自賠責保険の支払基準でも、「ライプニッツ係数を乗じて算出した額とする」とされています。中間利息控除とライプニッツ方式・ホフマン方式について詳しくはこちら中間利息控除係数(ライプニッツ係数・ホフマン係数)について詳しくはこちらまとめ後遺障害逸失利益は、被害者の基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間によって決まります。基礎収入を証明する書類は被害者自身が用意する必要がありますが、後遺障害逸失利益の計算を被害者自身で行い、保険会社と交渉するのは無理です。自分で何とかしようなどとせず、まずは、詳しい専門の弁護士に相談することをおすすめします。その方が賠償金額が増えますから、結果的にお得です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • むち打ち症の慰謝料計算
    むち打ち症12級13号・14級9号の逸失利益と慰謝料の計算例
    後遺障害による損害額の具体的な計算方法について、むち打ち症(頸椎捻挫)を中心にご紹介します。事例と計算方法次のような事例で、後遺障害等級が異なる3つのケースを考えます。被害者は、35歳の男性会社員で、年収400万円。加害者と被害者の過失割合は 9対1(すなわち、過失相殺率 10%)ここでは、後遺障害に関する損害(後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料)の計算例をご紹介します。後遺障害逸失利益の計算後遺障害逸失利益は、次の計算式で求めます。基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数計算式の説明はこちらをご覧ください。基礎収入は400万円です。労働能力喪失率は労働能力喪失率表より、ライプニッツ係数はライプニッツ係数表より、それぞれ求めます。ライプニッツ係数は、現行の年3%のライプニッツ係数を用いています。2020年3月31日以前に発生した事故については、年5%のライプニッツ係数が適用されます。後遺障害慰謝料の計算後遺障害慰謝料は、裁判所基準の後遺障害慰謝料表より求めます。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて慰謝料の基準額があります。むち打ち症で「14級9号」が認定されたケース後遺障害14級の労働能力喪失率は5%です。労働能力喪失期間が5年認められたとすると、ライプニッツ係数は4.5797です。後遺障害逸失利益は、400万円 × 5/100 × 4.5797 = 91万5,940円逸失利益91万5,940円慰謝料110万円合計201万5,940円被害者の過失を10%としていますから、過失相殺後の額は、201万5,940円 × 0.9 = 181万4,346円自賠責保険の後遺障害14級の支払限度額は75万円ですから、差額は任意保険会社が支払います。むち打ち症で「12級13号」に認定されたケース後遺障害12級の労働能力喪失率は14%です。労働能力喪失期間が10年認められたとすると、ライプニッツ係数は8.5302です。後遺障害逸失利益は、400万円 × 14/100 × 8.5302 = 477万6,912円逸失利益477万6,912円慰謝料290万円合計767万6,912円被害者の過失を10%としていますから、過失相殺後の額は、767万6,912円 × 0.9 = 690万9,221円自賠責保険の後遺障害12級の支払限度額は224万円ですから、差額は任意保険会社が支払います。神経系統の機能障害で「9級10号」に認定されたケース後遺障害9級の労働能力喪失率は35%です。労働能力喪失期間が67歳まで認められたとすると、就労可能年数32年に対応するライプニッツ係数は20.3888です。後遺障害逸失利益は、400万円 × 35/100 × 20.3888 = 2,854万4,320円逸失利益2,854万4,320円慰謝料690万円合計3,544万4,320円被害者の過失を10%(過失相殺率10%)としていますから、過失相殺後の額は、3,544万4,320円 × 0.9 = 3,189万9,888円自賠責保険の後遺障害9級の支払限度額は616万円ですから、差額は任意保険会社が支払います。まとめ交通事故で後遺障害が残った場合、正当な損害賠償を受けられるかどうかは、適正な後遺障害等級が認定されるかどうかがポイントです。特に、むち打ち症のような神経障害は、後遺障害等級の認定がされず、非該当となることがよくあります。そんなときは、弁護士に相談すると解決できる場合があります。まずは、無料相談をおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 死亡逸失利益
    死亡事故の消極損害(死亡逸失利益)の裁判所基準での計算方法
    死亡逸失利益とは、「被害者が存命であったなら、得られたはずの収入」の喪失のことです。死亡逸失利益の計算の仕方死亡逸失利益は、次のように計算します。基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応する中間利息控除係数死亡逸失利益は、将来にわたって得られたはずの収入額ということでは、「労働能力喪失率100%の場合の後遺障害逸失利益」と同じなのですが、死亡した被害者本人の生活費を控除する点が異なります。被害者が死亡すると、将来得られたであろう収入を喪失する反面、本人の生活費の支出がなくなります。そのため、死亡した被害者本人の生活費を控除して、損害額を計算するのです。計算式の各要素について見ていきましょう。死亡逸失利益は、被害者の収入が稼働収入か年金収入かによって、稼働逸失利益と年金逸失利益に大別されます。ここでは、稼働逸失利益について説明します。年金逸失利益はこちらをご覧ください。基礎収入基礎収入(年収)の計算は、後遺障害逸失利益の場合と同じです。職種によって異なり、それぞれ原則として次のものを算定基礎とします。給与所得者事故前の現実の収入額。事業所得者事故前の申告所得額。家事従事者賃金センサスの女性労働者の平均賃金。年少者・学生賃金センサスの平均賃金。項目名ここに説明文を入力)★ -->職種別の基礎収入の算定方法について、詳しくは次のページをご覧ください。給与所得者の基礎収入の算定方法会社役員の基礎収入の算定方法個人事業主の基礎収入の算定方法主婦・主夫の基礎収入の算定方法幼児・小中学生の基礎収入の算定方法高校生・大学生の基礎収入の算定方法生活費控除率生きていれば生活費がかかりますが、死亡すればそれが不要になるので、生活費相当分を損害額から控除します。生活費の控除にあたっては、被害者の生活費を具体的に証明する必要はありません。そもそも、将来の生活費を正確に算出することなどできません。生活費の控除は、被害者の家族構成、性別、年齢などにより、一定割合を控除する方式を採用しています。この割合が「生活費控除率」です。生活費控除率は、一家の支柱の場合30~40%、女性30%、男性単身者50%とされるのが一般的です。一家の支柱の場合とは、被害者の世帯が主として被害者の収入によって生計を維持している場合です。裁判所基準の生活費控除率一家の支柱の場合40%(被扶養者1人の場合)30%(被扶養者2人以上の場合)女性30%(主婦・独身・幼児を含む)※年少女子で労働者平均賃金を基礎収入とする場合は45%。男性50%(独身・幼児を含む)項目名ここに説明文を入力)★ -->※『赤い本 2016年版』より生活費控除率が、性別、年齢、家族構成などにより異なるのは?生活費控除率が、性別、年齢、家族構成などにより異なるのは、調整機能的な役割があるからです。一家の支柱の生活費控除率を低くしているのは、残された遺族の生活保障の観点を重視しているからです。女性の生活費控除率を低くしているのは、基礎収入額が男性より低いことを考慮しているからです。年少女子で、基礎収入に全労働者平均賃金を採用するときは、生活費控除率を45%程度とします。詳しくはこちら。年金生活者については、生活費控除率を通常より高く、50~60%とします。年金収入に占める生活費の割合が高いと考えられるからです。詳しくはこちら。就労可能年数に対応する中間利息控除係数就労可能年数は、原則として死亡時から67歳までの期間とされています。労働能力喪失率100%で、就労可能年限までを喪失期間とするのと同じです。中間利息控除係数は、ライプニッツ係数を用いるのが一般的です。後遺障害逸失利益の計算と同じです。18歳以上であれば、67歳から死亡時の年齢を差し引いた年数が就労可能年数となります。この場合、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用います。18歳未満や大学生など未就労者の場合18歳未満の未就労者の場合は、原則として18歳から67歳までの49年が就労可能年数となります。大学生や大学進学が決まっている場合は、大学卒業後の年齢から67歳までの期間が就労可能年数となります。ただし、この場合、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を用いるわけではありません。事故時(死亡時)を起点に、就労可能年限の67歳までの年数に対応するライプニッツ係数から、就労開始年齢までの年数に対応するライプニッツ係数を差し引いたものが、適用するライプニッツ係数となります。⇒ 被害者が18歳未満や大学生の場合のライプニッツ係数の求め方はこちら高齢者の場合高齢者の場合、死亡時の年齢から67歳までを就労可能期間とすると、就労可能年数が全く認められない場合や、認められても極めて短期間となってしまう場合があります。そのため、死亡時の年齢から67歳までの年数が、平均余命の2分の1を下回る場合は、平均余命の2分の1を就労可能年数とします。これは、67歳を超えて就労する蓋然性が認められる者は、平均余命の2分の1くらいは働くだろうと考えられるからです。平均余命は、厚生労働省の簡易生命表を用います。給与所得者の場合は、60歳前後で定年退職するのが一般的です。この場合でも、定年後67歳までは就労可能と認められます。ただし、定年後の収入は減少すると見込まれるので、定年前に受け取っていた収入額の60~70%程度に減額する例が多いようです。⇒ 高齢者が後遺障害になったときの労働能力喪失期間についてはこちら「就労可能年数とライプニッツ係数表」(自賠責の支払基準[別表Ⅱ-1])を用いれば、18歳未満の場合や高齢者の場合も含めて、事故時(死亡時)の年齢に対応するライプニッツ係数を簡単に求められます。就労可能年数とライプニッツ係数表 ※国土交通省のWebサイトにリンクしています。死亡逸失利益の計算例給与所得者の場合で、死亡逸失利益の計算を見てみましょう。事例男性会社員Aさん。死亡時の年齢48歳。事故前の年収700万円で、扶養家族は妻と子供2人。Aさんの死亡逸失利益は、次のように計算します。扶養家族3人なので、生活費控除率は30%48歳の就労可能年数は19年ですから、ライプニッツ係数は14.3238。よって、死亡逸失利益は700万円 ×(1-0.3)× 14.3238 = 7,018万6,620円まとめ死亡逸失利益は、被害者本人の生活費控除を行う以外は、労働能力喪失率100%の場合の後遺障害逸失利益と同じです。死亡事故の損害賠償額は、高額となります。逸失利益の計算は、簡単ではありません。保険会社の提示額に納得できないときは、示談する前に、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 年金逸失利益
    年金受給者・年金生活者が交通事故で死亡した場合の逸失利益の計算
    年金受給者・年金生活者が交通事故により死亡した場合、将来受けられるはずだった年金を逸失利益として認められるかどうかは、年金の種類によって異なります。逸失利益性が認められる年金、認められない年金年金には、国民年金を基礎年金とし、上乗せ部分として厚生年金があります。上乗せ年金は、民間企業の被用者は厚生年金、公務員等は共済年金と分かれていましたが、2015年(平成27年)10月から、公務員等も厚生年金に加入することとされ、厚生年金に統一されました。年金の逸失利益性は、こう判断する年金の逸失利益性は、①年金給付の目的、②保険料と年金給付との対価性(牽連関係)、③年金給付の存続の確実性、により判断されています。年金の受給者が保険料を負担し、家族の生活保障的な性質を有する年金については、逸失利益性が認められています。年金受給者が自身の給与から保険料を拠出している場合、年金給付が給料の後払いの性質を有するからです。保険料の負担がなく、受給者自身の生計維持を目的とする社会保障的な性質の強い年金については、逸失利益性が否定されます。年金の逸失利益性が認められるか否かについては、裁判例により、ほぼ次のように確定しています。国民年金厚生年金共済年金老齢年金老齢基礎年金〇老齢厚生年金〇退職共済年金〇障害年金障害基礎年金〇(加給分は×)障害厚生年金〇(加給分は×)障害共済年金〇(加給分は×)遺族年金遺族基礎年金×遺族厚生年金×遺族共済年金×〇:逸失利益が認められる ×:逸失利益が認められない老齢年金老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職共済年金)は、年金の保険料を納付してきた本人が老齢になり、または退職した場合に支給される給付です。老齢年金については、逸失利益性が認められます。老齢年金の受給者が交通事故により死亡した場合、相続人は、加害者に対し、老齢年金の受給者(被害者)が生存していればその平均余命期間に受給することができた年金の現在額を被害者の損害として賠償請求できます。障害年金障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金)は、本人が負傷し所定の後遺障害等級に該当する場合に支給される給付です。障害年金については逸失利益性は認められますが、加給分については、逸失利益が認められません。加給分とは、障害年金受給者によって生計を維持していた配偶者や子がある場合に障害年金に加算される分です。障害年金は、保険料が拠出されたことにもとづく給付としての性格を有しているため、障害年金を受給していた者が不法行為により死亡した場合、その相続人は、加害者に対し、障害年金の受給者が生存していれば受給することができたと認められる障害年金の現在額を損害賠償請求できます。ただし、子・配偶者の加給分については、最高裁は次のような理由から、逸失利益性を否定しています。子や配偶者の加給分の逸失利益性が否定される理由とは?子や配偶者の加給分は、受給権者によって生計を維持している者がある場合にその生活保障のために基本となる障害年金に加算されるものであって、受給権者と一定の関係がある者の存否により支給の有無が決まるという意味において、拠出された保険料との牽連関係があるものとはいえず、社会保障的性格の強い給付である。加給分については、子の婚姻、養子縁組、配偶者の離婚など、本人の意思により決定し得る事由により加算の終了することが予定されていて、基本となる障害年金自体と同じ程度にその存続が確実なものということができない。(最高裁判決・平成11年10月22日より)遺族年金遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金、遺族共済年金)は、本人が死亡した場合に遺族に支給される給付です。遺族年金については、逸失利益性が認められません。最高裁は、次のような理由から、遺族年金の逸失利益性を否定しています。遺族年金の逸失利益性が否定される理由とは?遺族年金は、もっぱら受給権者自身の生計の維持を目的とした給付という性格を有している。受給権者自身が保険料を拠出しておらず、給付と保険料との牽連性が間接的であり、社会保障的性格の強い給付である。受給権者の婚姻、養子縁組など本人の意思により決定し得る事由により受給権が消滅するとされていて、その存続が必ずしも確実なものといえない。(最高裁判決・平成12年11月14日より)年金逸失利益の算定期間年金の逸失利益の算定にあたっては、実際に年金の支給が受けられるであろうと認められる期間につき積算を行うことになります。受給者が生存している限り受給し得たであろうと認められるときは、平均余命の年数をもって積算することとなります。年金逸失利益は、平均余命の2分の1ではないので注意!年金逸失利益の算定の際、誤って平均余命の2分の1で計算し、過少請求してしまう例が少なくありません。高齢者の稼働逸失利益を算定する場合に平均余命の2分の1を就労可能期間とみなすので、それと混同しているからですが、年金逸失利益は、平均余命で算定し、稼働期間は関係ありません。【関連】死亡事故の稼働逸失利益の計算はこちら後遺傷害逸失利益の計算はこちら生活費控除率年金は生活保障的な意味合いが強く、収入に占める生活費の割合が高いため、年金逸失利益の生活費控除率は、通常よりも高くなる傾向があります。特に、年金額が少額で他に収入がない場合の方が、年金額が高かったり、他に多額の収入がある場合よりも、生活費控除率は高くなります。年金逸失利益の生活費控除率の目安どれくらい控除率が高くなるかというと、稼働逸失利益の生活費控除率が30~40%、高くても50%であるのに対して、年金逸失利益の生活費控除率は、50~60%程度の例から、70~80%という高率な例まであります。逆に、稼働逸失利益と同程度とされる場合もあり、特別な事情から生活費控除をしない場合もあります。例えば、不動産収入等で年間500万円以上の収入があり、生活費はそれで賄えるとして、国民年金分については生活費控除をしなかった例があります。個別に具体的な事情を考慮して、控除率が判断されます。年金以外に稼働収入があった場合の生活費控除被害者が年金以外にも稼働収入を得ていた場合の生活費控除の方法については、複数の考え方があります。例えば、次のような方法です。稼働収入と年金収入を区別し、稼働収入は通常の控除率、年金収入は高めの控除率とする方法。稼働収入と年金収入を合算し、やや高めの共通の控除率とする方法。稼働収入のある期間は、年金逸失利益も含め稼働逸失利益の控除率とし、年金収入のみとなる期間は高めの控除率とする方法。生活費控除率の認定にあたっては、年金収入や稼働収入の額、同居家族の数や扶養関係、生活費の負担状況などが考慮されますから、適切な生活費控除率を主張・立証することが大切です。年金未受給者の年金逸失利益被害者が死亡時に年金を受給していない場合、年金の逸失利益性については、被害者が年金受給資格を取得しているか否かにより異なります。なお、年金未受給者の年金逸失利益性が問題となるのは、老齢年金についてです。未受給の障害年金の逸失利益性が問題になることは想定しがたく、遺族年金の逸失利益性は否定されています。被害者が年金受給資格を取得している場合被害者が、すでに年金受給資格を取得している場合は、年金受給の蓋然性が高いので、支給予定の年金の逸失利益性は認められます。予定年金額については、①加入実績に応じた年金額とするか、②今後60歳まで年金制度に加入していたと仮定した場合の年金額とするか、2つの算定方法があります。②の方が有利に思えるかもしれませんが、こちらを選択するケースは、それほど多くはありません。60歳まで加入していたと主張する場合、その間に納付する保険料を損害から控除する必要があり、中間利息控除を考慮すると、控除される保険料の額が多額になり、ほとんどメリットが生じないことが多いのです。予定年金額を、加入実績に応じて計算するか、60歳まで加入していたと仮定して計算するか、どちらの方法で算出するかは、年金受給開始年齢までの期間を考慮し、有利な方を採用することになります。被害者が年金受給資格を取得していない場合被害者が、死亡時に年金受給資格を取得していない場合は、年金受給資格を取得するまでの年数を含めて、年金受給の蓋然性を判断することになります。年金受給の蓋然性が高いと判断できる場合には、年金逸失利益が認められます。ただ、受給資格未取得の場合、年金逸失利益が認められたとしても、将来受給するであろう年金額を中間利息を控除して現在価額に換算するこに加え、年金受給開始まで納付する保険料を損益相殺の見地から控除するため、大きな金額にはなりません。特に、年金支給開始年齢までかなり年数がある場合には、年金逸失利益は少額となり、請求するメリットはほとんどありません。年金逸失利益の計算年金逸失利益の計算方法は次のようになります。被害者が年金を受給していた場合被害者が年金を受給していた場合、年金逸失利益の計算は、こうです。年金額を確認生活費控除率を決定死亡時の平均余命を確認年金額から被害者本人の生活費として一定割合を控除し、これに平均余命年数に対応する中間利息控除係数を乗じる計算式(年金額)×(1-生活費控除率)×(平均余命年数に対応するライプニッツ係数)被害者が年金受給資格を得ている未受給者の場合被害者が年金受給資格は得ているものの、支給開始年齢に達する前に死亡した場合は、受給予定年金額を基礎として、逸失利益を計算します。中間利息控除は、平均余命年数に対応する係数から、年金受給開始までの年数に対応する係数を差し引いた係数を用います。計算式(予定年金額)×(1-生活費控除率)×(平均余命年数に対応するライプニッツ係数-年金支給開始までの年数に対応するライプニッツ係数)被害者が年金受給資格未取得の場合被害者が年金受給資格未取得だった場合は、死亡時から年金受給開始まで納付すべき将来の保険料を控除する必要があります。計算式(予想される年金額)×(1-生活費控除率)×(平均余命年数に対応するライプニッツ係数-年金支給開始までの年数に対応するライプニッツ係数)-(予想される納付保険料の年額×保険料支払いを要する年数に対応するライプニッツ係数)まとめ年金を受給していた者や受給資格を得ていた者がが交通事故で死亡した場合、将来受給できるはずだった年金を逸失利益として、相続人が損害賠償することができます。ただし、遺族年金や加給分については、社会保障的要素が強いため、逸失利益性が認められません。年金逸失利益は、生活費控除率が高くなる傾向があるため、年金以外の稼働収入の有無、同居家族、扶養関係、生活状況などの事情から、適切な生活費控除率を主張・立証することが大切です。年金の受給開始前に交通事故で死亡した場合は、受給資格の有無、受給の蓋然性について明らかにする必要があります。保険会社が提示する年金の逸失利益に納得がいかない場合や、年金の逸失利益について詳しい専門家に相談したいときは、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 82~84ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 219~221ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 88~92ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 220~224ページ・『交通事故損害賠償保障法 第2版』弘文堂 213~217ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 46~48ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 127~137ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 154~158ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 211~212ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 177~178ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 202~207ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 133~134ページ
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  • 源泉徴収
    会社員・公務員の逸失利益・休業損害の基礎収入の算定方法
    会社員や公務員など、給与所得者の休業損害・逸失利益を計算するときの基礎収入額には、原則として「事故前の実際の収入額」を用います。ただし、逸失利益については、将来の長期間にわたる収入の問題ですから、事故時の収入額によるのが相当でない場合は、平均賃金を用いることもあります。ここでは、給与所得者の基礎収入の算定方法について説明しています。基礎収入を用いた休業損害や逸失利益の計算方法については、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法基本的な取り扱い休業損害は、怪我の治療や療養のため休業したことにより「現実に喪失した収入額」です。事故前の現実の給与額を基礎収入として計算します。逸失利益も、基本的には休業損害と同様、実収入額によるのが原則ですが、逸失利益は、将来の長期間にわたる収入の問題です。そのため、被害者が若年労働者の場合のように、事故当時の実収入額によるのが相当でない場合は、平均賃金を用いる場合もあります。収入は、手取額でなく、支払金額(税金等控除前の金額)です。収入の証明には、源泉徴収票か納税証明書・課税証明書が必要です。給与以外に家賃等の不動産収入や利子、配当などの「不労所得」があっても、労働の対価といえないので基礎収入には含まれません。若年労働者の収入算定若年労働者は、現実の収入が低い場合が多いので、それを基礎として逸失利益を算定すると、過少に計算されてしまいます。また、仕事を長く続けていけば、収入が上がっていくと考えられます。事故前の実収入を用いると、将来の給与の上昇を逸失利益に反映することができません。そのため、若年被害者(おおむね30歳未満)については、現実の収入額が賃金センサスの平均賃金額を下回るとしても、将来、平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合は、全年齢平均賃金または学歴別平均賃金を基礎収入とします。この点については、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の交通部が、共同で提言を公表しています。東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の「三庁共同提言」非正規労働者の収入算定契約社員・嘱託社員・派遣社員・パート・アルバイトなどの非正規労働者は、一般に正社員より給与が低く、雇用が不安定ですから、事故当時の収入を基準として逸失利益を算定することは困難です。しかし、事故当時に非正規であったとしても、これから先もずっと非正規のままとは限りません。経済状況が好転したり、一定の条件を満たすときは、正社員になる場合もあります。そういったことから、判例では、賃金センサスの平均賃金またはその一定割合を基礎収入として、逸失利益を算定する事例があります。収入に含まれるもの収入には、本給のほか、諸手当、賞与など労働の対価として受け取るものが該当します。これら以外にも、昇給や退職金も含めることができます。諸手当諸手当については、扶養家族手当などは基礎収入に含めることができますが、通勤手当(交通費やガソリン代の支給)のような実費手当は、所得の対象とならないので、損害には含まれません。また、残業手当については、企業の業績や担当する業務内容に左右され、将来も継続するとは限りません。そのため、事故前の残業手当が多かったとしても、そのまま認められるとは限りません。ボーナス(賞与・期末手当)ボーナスは、給与規定などによって支給基準が決められ、安定・継続して支給されている場合は、それが損害として認められます。しかし、ボーナスの支給基準を定めた給与規定がなく、業績によって年ごとに開きがある場合は、事故前にボーナスの支給を受けていたとしても、そのまま認められるとは限りません。大企業の社員や公務員は、支給基準にもとづいて算出した賞与額が認められやすいのですが、中小企業の場合は、立証が難しいところです。昇給定期昇給については、勤務先に昇給規定などがあり、それに従って昇給する可能性がある場合は、昇給を考慮して基礎収入を算定できます。昇給規定がなくても、将来の昇給が「証拠にもとづいて相当の確かさをもって推定できる場合」は、昇給を考慮して基礎収入を算出することができると最高裁が判断を示しています。最高裁判決(昭和43年8月27日)死亡当時安定した収入を得ていた被害者において、生存していたならば将来昇給等による収入の増加を得たであろうことが、証拠に基づいて相当の確かさをもつて推定できる場合には、右昇給等の回数、金額等を予測し得る範囲で控え目に見積つて、これを基礎として将来の得べかりし収入額を算出することも許されるものと解すべきである。ベースアップ物価上昇にともなうベースアップ分については、一般的に認められません。和解成立時または口頭弁論終結時までに行われたベースアップ分については考慮されますが、将来のベースアップ分については、不確定で予測しがたいことなどから、認められない傾向にあります。退職金退職金については、勤務先に退職金規定があり、交通事故に遭わなければ退職金をもらえたと考えられる場合は、退職金を損害に算入できます。死亡時あるいは事故の後遺症が理由で退職したときに勤務先から支給された退職金と、定年まで勤務すれば得られたであろう退職金(中間利息控除後の額)との差額が逸失利益となります。退職金差額が損害として認められるための要件としては、次の3つが指摘されています(『交通事故損害賠償法・第2版』弘文堂145ページ)。交通事故による受傷(死亡または後遺障害)と退職との間に因果関係があること被害者が定年退職時まで勤務を継続する蓋然性があること定年退職時に退職金が支給される蓋然性があること例えば、60歳まで勤務すれば1,000万円の退職金がもらえたのに、55歳で交通事故に遭って死亡し、600万円の死亡退職金の支給を受けたとします。中間利息を控除した現価は、ライプニッツ係数を乗じて計算します。5年(60歳-55歳)のライプニッツ係数は0.8626(ライプニッツ式係数表・現価表より)ですから、1,000万円×0.8626-600万円=262万6,000円となります。この差額を逸失利益として損害賠償請求できます。ここから生活費を控除するかどうかについては、判例が分かれています。定年退職後の収入就労可能年数は67歳まで認められますが、給与所得者の場合、60歳前後で定年退職するのが一般的です。ただし、最近は、定年後に再就職し、何らかの収益を上げて生活するのが普通になっています。定年退職後の収入については、賃金センサスの年齢別平均賃金を基礎とする場合と、退職時の収入の一定割合を基礎とする場合があります。まとめ給与所得者の休業損害・逸失利益を算定するときの基礎収入には、事故前の実際の収入額を用いるのが基本です。若年労働者のように、事故前の実収入を基礎とするのが相当でない場合は、平均賃金を用います。ボーナス、昇給分、退職金を含めることはできますが、難しい問題もあります。交通事故問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法
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  • 会社役員
    会社役員報酬の逸失利益・休業損害の基礎収入の算定方法
    会社役員の休業損害や逸失利益の算定にあたっては、名目的な役員報酬額をそのまま損害算定の基礎収入とせず、役員報酬のうち労務対価部分のみを基礎収入とします。役員報酬のうち労務対価部分がどれだけか、その範囲の立証がポイントです。逸失利益が認められるのは労務対価部分会社役員の役員報酬には、「労務対価部分」と「利益配当部分」があり、逸失利益が認められるのは、労務対価部分です。利益配当部分は、不労所得であり、その地位にある限り事故による収入減はないと考えられ、原則として逸失利益は認められません。もっとも、事故の後遺症が原因で役員を解雇されたり、死亡して利益配当部分が遺族に承継されない場合は、利益配当部分も逸失利益となります。役員報酬労務対価部分 ⇒ 逸失利益となる利益配当部分 ⇒ 原則、逸失利益とならない※広い意味での逸失利益には、休業損害も含まれます。こうした点について、東京地裁が、判決の中で次のように指摘しています。東京地裁判決(昭和61年5月27日)「会社役員の報酬中には、役員として実際に稼働する対価としての実質をもつ部分と、そうでない利益配当等の実質をもつ部分とがあるとみるべきところ、そのうち後者については、傷害の結果役員を解任される等の事情がなく、その地位に留まるかぎり、原則として逸失利益の問題は発生しないものと解される」したがって、会社役員の休業損害や逸失利益の請求では、役員報酬のうち労務対価部分がいくらか(どの程度占めているか)の立証が、ポイントとなるのです。それでは、役員報酬のうち労務対価部分をどのように判断するのでしょうか?役員報酬中の労務対価部分の割合はどう判断する?役員報酬のうち労務対価部分がどれくらいかは、次のような要素を総合的に考慮し、個別具体的に判断されます。役員報酬のうち労務対価部分の判断要素会社の規模・利益状況当該役員の地位・職務内容当該役員の報酬額他の役員や従業員の職務内容・報酬額・給料額事故後の役員報酬額の推移など。(参考:『赤い本2005年版』)大切なのは、いずれか1つの要素だけで判断するのでなく、すべてを考慮して、総合的に判断することです。それぞれの判断要素について、具体的に見ていきましょう。会社の規模・利益状況まず、会社の規模(同族会社か否か)、会社の利益状況から、どう判断するかです。会社の規模一部上場企業のような大企業のいわゆるサラリーマン重役の場合は、役員報酬の全額が労務対価部分と評価できる場合が多いとされています。中小の同族企業の親族役員の場合は、役員報酬に利益配当部分も含まれているのが一般的です。ただし、他の要素を考慮すれば、報酬全額を労務対価相当と評価できる場合もありますから、総合的に判断することが大切です。上場企業の取締役(男性・58歳)につき、63歳までの5年間、報酬全額を基礎収入として逸失利益を算定。(大阪地裁判決・平成10年6月24日)建物解体工事を行う会社の代表につき、個人会社で、その職務内容も肉体労働が多いこと等から、役員報酬全額を労務の対価と認定。(千葉地裁判決・平成6年2月22日)父親が経営する印刷会社の監査役(30歳)につき、会社の中心的な働き手として稼働していることから、事故前年の年収全額を基礎収入として認定。(東京地裁判決・平成13年2月16日)会社の利益状況会社の利益状況を判断要素とする場合、被害者である当該役員の稼働状況との関係で、事故前後の収益の推移が重要です。事故後、当該役員が稼働できなくなった期間に会社の収益が悪化した場合は、当該役員の稼働が会社の収益に貢献しているといえるので、報酬のうち相当部分を労務対価と認められます。収益に変化がない場合は、当該役員の稼働が会社の収益に貢献しているといえず、報酬が労務対価であるとは認められません。報酬の相当部分を利益配当とみなされます。ITコンサルタントとして労務の提供をしていた会社の代表につき、受傷後、会社の売上が相当減少しているとして、事故前の年収の80%を労務対価と認定。(横浜地裁判決・平成20年8月28日)当該役員の地位・職務内容当該役員が、従業員と同様の労働に従事しているような場合には、報酬のうち相当部分を労務対価として認められます。名目役員に過ぎない場合には、報酬を労務対価とは認められません。レーザー機器の開発会社の代表者につき、中心的研究者であったことや会社の規模(従業員41名)等を考慮し、事故前年の役員報酬全額を労務対価と認定。(東京地裁判決・平成23年3月24日)同族会社の監査役(女性・78歳)につき、名目役員の疑いを否定できないとして、監査役報酬を労務対価とは認めず、家事労働と年金収入により逸失利益を算定。(東京地裁判決・平成12年5月24日)当該役員の報酬額当該役員の報酬が、年齢や経験年数、会社の業績等に照らし、一般の基準より高額である場合は、報酬中に利益配当部分が含まれていると判断されます。例えば、代表取締役の子である取締役が、若年で経験が浅いにもかかわらず、高額の役員報酬を得ているような場合には、その役員報酬中には相当の利益配当部分が含まれ、労務対価部分の割合は低いと判断されます。ただし、一般の基準より報酬が高額であっても、当該役員の稼働状況や会社の収益への貢献度を考慮し、特段高額とはいえない場合は、報酬中の相当部分が労務対価部分と判断されます。年齢や経歴からみて役員報酬額が高額であるかどうかを見極める方法として、賃金センサスを参照する裁判例も多いようです。専務取締役である被害者(代表取締役の娘婿)につき、休業期間中は給料が支払われず、復職後は力仕事ができないことから給料が半減、賃金センサスと比較しても事故前の収入は高額とはいえないことから、全額を労務の対価と認定。(神戸地裁判決・平成12年2月17日)他の役員や従業員の職務内容・報酬額・給料額当該役員と他の役員・従業員との職務内容にほとんど差異がないにもかかわらず、当該役員の報酬額が、他の役員・従業員の報酬や給与より相当高額である場合は、その差額のうちの相当部分は労務対価性がないと判断されます。貴金属卸会社の代表取締役につき、同人の報酬が他の役員の報酬や従業員の給与と比べ突出していることから、賃金センサスも考慮して、報酬の60%の限度で労務対価性を認定。(東京地裁判決・平成12年8月31日)事故後の役員報酬額の推移事故後、当該役員が稼働できなかった期間に応じて、役員報酬が支払われなかったり減額された場合、支払われなかった全額ないし相当部分につき、労務対価性があると判断できます。事故後、当該役員が稼働できない期間中も、減額はあるものの相当額の報酬が支給されていたり、復帰後、業務量が減少したにもかかわらず事故前と同額の報酬が支給されている場合には、報酬のうち一定部分が利益配当部分と判断されます。月額30万円の報酬を受けていた代表取締役が、事故後3ヵ月間は報酬支払いを受けていなかった場合について、全額労務対価性を有すると認定。(名古屋地裁判決・平成15年1月17日)労務対価部分の判断の目安役員報酬のうち労務対価部分がどの程度かについては、上で挙げた5つの要素を総合的に判断しますが、ひとくちに役員といっても、個人企業の社長から、中小企業のオーナー社長や役員、大企業の雇われ役員まで様々で、報酬の実態も異なります。そこで、労務対価部分の判断にあたっての大まかな目安や考え方について、役員別にご紹介しておきましょう。個人企業の社長等の場合個人企業の社長の場合、実態は個人営業主と変わりません。社長等の役員報酬のうち労務対価部分を基礎収入として逸失利益を算定します。中小企業の経営者の場合中小企業の経営者の報酬には、労務対価部分のほか利益配当部分が含まれます。ですから、逸失利益算定の基礎となる収入は、労務対価部分に限られます。ただし、事故による休業の結果、役員を解任された場合や、事故で死亡し、親族間の争いなどによって相続人が経営権を引き継げなかった場合は、本人や相続人が利益配当部分を失うことになるので、役員報酬全額を基礎収入として、逸失利益を算定できます。労務対価部分がどの程度かについては、当該役員の職務内容、法人の収益、従業員給料の支給状況、類似法人の役員報酬の支給状況などを検討し、役員報酬の何割に当たるかを判断します。職務内容などから、報酬全額が労務対価部分と認められる場合は100%とできます。他の従業員と同じように働き、報酬額も従業員給与と大差のないような場合は、少なくとも他の従業員の給与相当部分については、労務対価性を有すると判断されるでしょう。中小企業の親族で現実に業務に従事している場合経営者の親族の役員報酬額は、従業員から役員になった者より高額であることが多く、報酬に利益配当部分が含まれていると考えられるので、基礎収入額の算定方法は、経営者の場合と同じとされます。名目的役員の場合中小企業で現実に業務に従事していない名目的役員の場合は、働かずに報酬を得ているので労務対価部分はゼロ。逸失利益算定の基礎収入とはできません。ただし、妻が、夫の会社の名目的役員となっているような場合には、主婦としての逸失利益は認められます。従業員から役員になった場合中小企業に長年勤務してきた従業員が役員になった場合は、経営者やその親族の役員報酬と比べて低額であることが多く、役員報酬に利益配当部分が含まれていることはありません。この場合、役員報酬の全額が、労務対価部分と認められます。大企業のサラリーマン重役の場合一部上場企業など大企業のサラリーマン重役の場合は、役員報酬は相当高額ですが、報酬全額が労務対価部分と認められます。取締役、常務取締役、専務取締役、代表取締役など、役職ごとに定年制が敷かれている場合、役員報酬の全額が得られる就労可能年数は、定年までの年数とします。まとめ役員報酬のうち逸失利益として認められるのは、原則として労務対価部分です。利益配当部分は除外されます。ただし、事故が原因で役員を解任されたり、相続人が会社の経営権を承継できなかった場合は、利益配当部分も含む役員報酬全額を逸失利益算定の基礎収入とすることができます。役員報酬中の労務対価部分の認定は、相当に裁量的なものとなります。傾向としては、いわゆるサラリーマン重役については、全額が労務対価部分と認定されるのが通常ですが、企業のオーナーや親族役員については、報酬中に一定の利益配当部分が含まれていると評価されることが多いようです。役員報酬の労務対価部分をどう判断するかは難しい問題がありますから、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法【参考文献】・大工強「役員の休業損害及び逸失利益の算定」(判例タイムズ№842)・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 148~152ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 190~191ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 99~104ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 127ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 186~189ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 94~96ページ
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  • 事業所得
    個人事業主の逸失利益・休業損害の基礎収入の算定方法
    事業所得者(個人事業主、自営業者、自由業者など)の休業損害・逸失利益を算定するときの基礎収入は、原則として事故前年の申告所得額によります。基礎収入の基本受傷による現実の収入減が損害として認められます。原則として、事故前年の申告所得額を基礎とします。青色申告事業者の場合は、青色申告特別控除前の金額となります。青色申告特別控除は、所得税等の計算の基礎となる事業所得額を算出する際に控除されるものです。課税対象金額を算出するうえで控除されているにすぎないので、休業損害や逸失利益の算定の際には考慮しません。給与所得者の休業損害は、事故前3ヵ月の平均収入を基礎としますが、事業所得者の場合は、各月の所得額が必ずしも明らかでないことなどから、休業損害も逸失利益も、事故前年(1年間)の所得を基礎とするのが一般的です。年度や時季による変動が大きい場合は、事故前年数年間の平均値や前年同期の数値によることもあります。個人事業者の場合、家族等が事業を手伝っていることも多いため、損害額の算定にあたっては、事業所得に占める本人の寄与部分(寄与率)が問題となります。なお、従業員給与や地代家賃などの固定経費は、休業損害として認められます。被害者の代わりに他の者を雇用するなどして収入を維持した場合には、それに要した費用が損害として認められます。寄与率事業所得は、一般的に、①本人の労働によって生み出される部分(本人の寄与部分)のほか、②家族や従業員の労働によって生み出される部分、③土地・建物・設備などの資本から生み出される部分(資本利得)の総体として形成されます。事業所得本人の労働によって生み出される部分。(本人の寄与部分)家族や従業員の労働によって生み出される部分。(家族・従業員の寄与部分)土地・建物・設備などの資本から生み出される部分。不動産賃料など。(物的設備の寄与部分)このうち、事業所得者の休業損害・逸失利益の算定にあたって基礎収入として認められるのは、本人の寄与部分だけです。事業収益中に占める本人の寄与部分は、その割合(寄与率)によって金額を決めます。これについては、次のような最高裁判例があります。最高裁判所第二小法廷判決(昭和43年8月2日)企業主が生命もしくは身体を侵害されたため、その企業に従事することができなくなったことによって生ずる財産上の損害額は、原則として、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によって算定すべきであり、企業主の死亡により廃業のやむなきに至った場合等特段の事情の存しないかぎり、企業主生存中の従前の収益の全部が企業主の右労務等によってのみ取得されていたと見ることはできない。寄与率は、事故前後の収支状況、事業の業種・業態、本人の特殊な技能・能力や職務の内容、家族・従業員の関与の程度や給与額などが考慮されます。判例では、本人寄与分として60~70%と認定したものが多いようです(『赤い本2006年版』より)。同じ事業所得者でも、自由業者(弁護士・開業医・作家など)の収入は、ほとんどが本人の労働によるものです。多少家族の助力があっても、本人の寄与率100%、すなわち収入全体が本人の寄与部分と考えられます。固定経費の加算事業を継続するうえで休業中も支出を余儀なくされる固定経費も、休業損害として認められます。経費のうち、どれが固定経費に該当するかは、休業中も発生するものか、休業中発生するとして、事業維持のためにやむを得ないものか、という点から判断します。固定経費として一般に認められているのは、従業員給与、損害保険料、地代家賃、リース料、減価償却費、租税公課、利子割引料などです。水道光熱費・通信費については、裁判例は分かれています。ただし、休業が長期間にわたることが明らかな場合は、固定経費の支出には相当性がないとして、基礎収入への加算が認められないことがあります。休業期間が長期にわたることが見込まれる場合には、機械・設備の一部売却、賃貸借契約の一部解約、従業員の休職等の措置を取る必要が出てきます。このことは、逸失利益の算定の場合も同じです。逸失利益については、固定経費も控除した後の所得額を基礎とします。逸失利益は、休業損害と違って、将来の事業継続のために従前どおり固定費の支払いを続けなければならないという事情がないからです。ただし、少数ですが、労働能力喪失率が低く、労働能力喪失期間も短い場合、固定経費を控除しない額が基礎とされる例もあります(東京地裁・平成29年4月10日)。申告外所得・無申告所得過少申告により実際の所得額が申告所得額と異なる場合や、確定申告していない場合でも、立証できれば、実所得額が基礎収入と認められることがあります。過少申告している場合過少申告している場合、すなわち実所得額が申告所得額よりも多い場合でも、申告額を上回る収入があったことを確実に証明できれば、申告額以上の額を基礎収入とすることが認められます。確定申告していない場合確定申告をしていない場合でも、立証により相当の収入があったと認められるときは、賃金センサスの平均賃金にもとづき基礎収入が認められることがあります。申告外所得の認定は厳しい申告外所得の認定については、かなり厳格に行われることを覚悟しなければなりません。自分の都合によって、「所得はこれだけでした」と少なく申告しておきながら、その一方で「本当はもっと多く所得があったんだ」と主張するわけですから、証拠としての信用性は低く評価されてしまうのです。確定申告の額と主張する実収入額との乖離が大きいほど、立証には困難をともないます。修正申告が必要となる場合もあります。ただし、修正申告書の控えだけでは立証としては不十分で、実際の所得を裏付ける預金通帳、請負等の契約書、納品書、請求書、伝票、領収書などの原資料を提出し、その信用性について立証しなければなりません。確定申告を正しくしていなかったことは、税務申告の問題です。損害賠償請求では、確定申告額は有力な証拠ですが、申告額よりも収入があったことを高度の蓋然性をもって立証できれば、訴訟ではその額を認定することになります。具体的な立証方法や裁判での認定事例はこちらをご覧ください。まとめ事業所得者の逸失利益や休業損害の算定に用いる基礎収入は、原則として、事故前年の確定申告所得額によります。過少申告していた、確定申告していなかった、などの理由で申告外所得がある場合でも、実際の所得を立証できれば、それを基礎収入とすることができます。ただし、申告外所得の認定は厳格に行われ、立証には相当な困難をともないます。交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法
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  • 無職・失業者
    無職者・失業者でも交通事故による休業損害・逸失利益が認められる?
    無職者・失業者は、就労していないので、休業損害や逸失利益は認められない、と思われがちですが、実は、事故発生時に無職であっても、休業損害や逸失利益が認められる場合があります。無職でも、休業損害や逸失利益が認められるのは、どんな場合なのでしょうか?ポイントは「就労の能力・意欲」と「就労の蓋然性」の有無事故時に無職・失業中であったとしても、就労能力・就労意欲があり、就労の蓋然性が認められれば、休業損害や逸失利益は認められます。ただし、休業損害と逸失利益には次のような違いがあるため、認められやすさに違いが生じます。休業損害逸失利益治療期間中に得られたはずの収入。過去の比較的短期間の損害。将来の稼働によって得られるであろう収入。将来の長期間にわたる損害。つまり、休業損害は、治療期間という比較的短期間の問題ですが、逸失利益は、将来の長期間にわたる仮定の問題です。したがって、休業損害については、事故に遭って治療を受けていなければ、本来なら就労を開始していたという「高い蓋然性」が要求されます。そのため、事故時に無職だった場合、休業損害は認められにくいのです。一方、逸失利益については、「将来もずっと無職のまま」とは考えにくいため、就労の蓋然性が比較的認められやすく、事故時に無職であっても逸失利益は認められやすいのです。詳しく見ていきましょう。無職でも休業損害が認められるのは、どんな場合か?休業損害は、事故時に無職の場合には就業していないことを理由に、原則として否定されます。休業損害とは、治療のために仕事を休んだことによる収入の喪失です。無職者・失業者は、収入の喪失という事態が発生しません。しかし、次のような場合には、無職者でも、休業損害が認められる可能性があります。事故時に無職でも休業損害が認められるケース事故時に就職先が決まっていた場合は、事故による怪我の治療で就労できなかった期間について、休業損害が認められます。また、具体的な雇用契約の締結や内定がない場合でも、就労の能力・意欲があり、治療期間中に就労していた蓋然性が高いと認められる場合は、休業損害が認められる可能性があります。例えば、事故発生当時、就職活動中だったような場合です。応募先企業とのメールのやり取りや、面接に行っていた頻度などから判断されます。単にハローワークに登録していたとか、求人情報を集めていた、という程度では認められません。そのほか、治療期間が長期に及び、休業せざるを得ない状況が相当程度継続するような場合は、治療期間中に就職できた蓋然性が認められやすくなり、休業損害が認められる可能性が高くなります。無職者の「基礎収入」と「休業損害の期間」休業損害を算定するとき、基礎収入と対象期間は、こう考えます。基礎収入は、就職先が決まっている場合は、就職したときに得られる見込みであった給与額を基準とします。それ以外の場合は、失職前の収入を参考に、年齢、技能・資格などを考慮し、賃金センサスの平均賃金か、これを下回る額とします。休業損害の期間は、就労開始の蓋然性があったとみられる時点からとなります。事故時に就職先が未定だった場合は、求職期間その他の具体的事情を考慮して、職を得られるまでに要する相当期間を控除することがあります。とはいえ、収入金額や就職時期を明確にすることは、多くの場合に困難です。そのため裁判では、就職時期を考慮せずに事故時から治療終了までの全期間を算定対象とする一方、収入金額を低めに認定することによって妥当な金額に調整するなど、個別具体的に判断されています。裁判例事故時に無職だった被害者の休業損害が認められた裁判例として、次のようなものがあります。アルバイトを退職して求職中の被害者(女性・26歳)につき、退職した翌日に事故に遭ったことなどの事情から、退職前のアルバイト収入(月額16万円)を基礎として休業損害を算定。(大阪地裁判決・平成10年1月23日)被害者(女性・24歳)は、事故前に就職を申し込んでいた会社から事故後に採用の通知を受け、治療期間中に就労を開始。受傷部の痛みのために10日で休職し、そのまま退職。会社から支給される予定だった月額21万円を基礎に症状固定までの7ヵ月分の休業損害を認定。(名古屋地裁判決・平成21年2月27日)元大工(男性・62歳)につき、稼働先を探していたことなどから、大工として稼働する意思と能力があり、専門技術性に照らし、後進の指導も含めて稼働先が見つかる可能性も十分あったとして、男性学歴計60歳から64歳平均の8割を基礎として症状固定までの休業損害を認定。(札幌地裁判決・平成13年11月29日)逸失利益は、無職でも原則認められる逸失利益は、無職者・失業者であっても、年齢、職歴、就労能力・就労意欲などから、将来において就労の蓋然性が認められる場合は、原則として認められています。事故時に無職の場合、原則として、休業損害は認められませんが、逸失利益は認められます。この違いは、休業損害が、比較的短期間における就労の蓋然性が問題となるのに対し、逸失利益は、将来の長期間における就労の蓋然性が問題となるからです。事故時に無職だからといって、生涯を通じて無職で無収入のままとするのは不合理で、就労の能力・意欲があれば、将来において就労の蓋然性があると判断するのが妥当でしょう。就労の蓋然性が否定されるのは、どんな場合か?逸失利益は、無職者・失業者であっても、就労の蓋然性が否定されない限り、原則として認められます。就労の蓋然性が否定されやすいのは、例えば、病気等により職を得ることが将来的にも困難な場合、相当額の不労所得を得ている場合、すでに高齢で年金収入のみで生活している場合など、就労の能力・意欲を欠く場合です。逸失利益の基礎収入具体的に就職予定先が決まっている場合は、就職予定先の会社の見込み給与額を基礎収入とします。それ以外の場合は、失業前の現実の収入金額、失業の経緯、経歴、技能・資格、年齢、性別、学歴などを考慮し、賃金センサスの平均賃金を参考に、実際に得られる蓋然性の高い金額を個別に推定することになります。裁判例事故時に無職だった被害者の逸失利益が認められた裁判例として、次のようなものがあります。28歳・無職男性の後遺障害による逸失利益について、賃金センサス男性学歴計全年齢平均賃金を基礎に算定。(福岡地裁判決・平成18年9月28日)62歳・無職男性の死亡による逸失利益について、賃金センサス学歴計60~64歳の平均賃金を基礎に算定。(京都地裁判決・平成26年6月27日)まとめ無職者・失業者の休業損害については、事故当時就業していないことを理由に、原則として否定されます。ただし、就職が内定している場合や、治療期間中に就労する蓋然性が高い場合は認められます。逸失利益は、事故時に無職であっても、就労の能力・意欲を欠く場合でなければ、原則として認められます。無職の方、失業中の方であっても、就職先が決まっていなくても、休業損害・逸失利益を請求できる場合があります。求職中に事故に遭ってしまい、生活に困るので休業損害や逸失利益を請求したい、といった方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 209~210ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 110~111ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 67ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 100、118ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 119~123ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 149~153ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 191ページ・『交通損害関係訴訟 捕訂版』青林書院 80~81ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 174~175ページ
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  • 専業主婦・主夫の基礎収入
    専業主婦・主夫の逸失利益・休業損害の基礎収入の算定方法
    家事従事者(専業主婦・専業主夫)も、交通事故で家事労働ができなくなった場合は、休業損害や逸失利益を請求できます。その場合の基礎収入は、賃金センサスの女性労働者平均賃金が用いられます。主婦も主夫も、つまり「女性の家事従事者」も「男性の家事従事者」も同じです。有職者で家事労働に従事している場合(兼業の主婦・主夫)は、現実の収入額と平均賃金の多い方を基礎収入とします。専業主婦・専業主夫も休業損害や逸失利益が認められる専業主婦・専業主夫は、現実に収入を得ているわけではありませんが、家事労働という労務を提供しています。家事労働は、他で労務提供すれば、金銭的に評価され、相当の収入を得ることができるものです。つまり、報酬相当の利益を家族のために確保しているといえます。そのため、主婦や主夫が交通事故で従前のように家事労働ができなくなった場合は、休業損害や逸失利益が認められます。専業主婦の逸失利益を認めた最高裁判決(昭和49年7月19日)結婚して家事に専念する妻は、その従事する家事労働によって現実に金銭収入を得ることはないが、家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げているのである。ただ、具体的事案において金銭的に評価することが困難な場合が少くないことは予想されうるところであるが、かかる場合には、現在の社会情勢等にかんがみ、家事労働に専念する妻は、平均的労働不能年令に達するまで、女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である。専業主婦(女性の家事従事者)の基礎収入の算定方法専業主婦の基礎収入は、原則として、賃金センサスの「女性労働者の全年齢平均賃金」を用います。ただし、被害者の年齢、家族構成、身体状況、家事労働の内容に照らし、女性労働者の全年齢平均賃金に相当する労働を行いうる蓋然性が認められない場合は、女性年齢別の平均賃金を用いたり、一定程度減額して用いることがあります。例えば、高齢の場合(おおむね65歳から70歳程度以上)、家事労働の内容が壮年期とは異なっているとして、年齢別平均賃金を基礎とするなど減額する裁判例があります。その一方で、家事労働における基礎収入は学歴や年齢によって差異が生じるものではないとして減額をみとめない裁判例もあります。家族構成や実際に従事していた家事の具体的状況についての立証が大切です。東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の各交通部による「三庁共同提言」では、原則として全年齢平均賃金を用いることとしています。専業主夫(男性の家事従事者)の基礎収入の算定方法男性の家事従事者(専業主夫)の場合も、主婦の場合と同様に、賃金センサスの「女性労働者の全年齢平均賃金」を基礎収入とするのが通例です。「男性」労働者の平均賃金でなく、「女性」労働者の平均賃金である点に注意してください。交通事故の損害賠償額算定において、家事従事者とは「性別・年齢を問わず、現に家族のために家事労働に従事する者をいう」と定義されています(青本26訂版)。男性の家事労働に限って、その金銭的評価を男性平均賃金に引き上げるべきとする根拠に乏しいことから、男性の家事従事者についても、女性平均賃金を用いるのが通例とされています。男性の家事従事者の基礎収入の算定に、女性の平均賃金を用いることには、違和感を感じますよね。そうかといって、男性の家事従事者に男性の平均賃金を用いると、同じ家事労働で男女の格差が生じ、おかしな話になります。そもそも、男女間に賃金格差があり、家事労働が女性の仕事とされてきたのが問題です。家事従事者の基礎収入の算定に、女性の平均賃金を用いるのは、上で紹介した昭和49年(1974年) の最高裁判決の重みが大きいようです。最高裁判決をもう一度ご覧になってみてください。こう指摘しています。「現在の社会情勢等にかんがみ、家事労働に専念する妻は、…女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である」この判決から半世紀が経ち、「現在の社会情勢等」はずいぶん変わっています。現在の社会情勢にあった算定方法が求められています。なお、女性の場合には、配偶者等が存在すれば家事労働者性が問題とされることは通常ありませんが、男性の場合には、家事従事者への該当性やその程度が問題とされ、従事していた家事労働の具体的内容について立証が必要となるのが通常です。兼業主婦・兼業主夫の基礎収入の算定方法兼業の家事従事者の基礎収入は、原則として、現実収入額と女性労働者全年齢平均賃金のいずれか高い方によります。現実収入分と家事労働分を加算するわけではありません。ですから、現実収入が平均賃金より高い場合は、家事労働分は「ゼロ査定」ということになります。代替労働力を利用した場合家事労働に従事できない期間に、家事代行サービス等を利用した場合は、支出した家事代行サービスの費用が損害(積極損害)となります。この場合、家事代行サービスの費用支出は、家事従事者が行う家事に代わるものですから、これと重ねて休業損害は発生しません。まとめ専業主婦や専業主夫など家事労働従事者の場合、実際に収入がなくても、家事労働を提供していることに対して休業損害や逸失利益が認められます。基礎収入の算定には、一般に賃金センサスの「女性労働者の全年齢平均賃金」が用いられます。パートなどで働きに出ている場合は、現実の収入額と平均賃金の高い方を基礎に収入を算定します。お困りのことがあったら、今すぐ交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法
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  • 子どもの逸失利益
    幼児・小中学生・18歳未満の交通事故逸失利益の算定方法と計算例
    幼児・小学生・中学生・高校生など年少者・未就労者の逸失利益を算定する際の基礎収入は、原則として、賃金センサスの学歴計・男女別の全年齢平均賃金を用います。被害者が大学進学を確実視される場合は、学歴別平均賃金(大卒の平均賃金)を用いることもできます。年少者・未就労者の逸失利益の算定幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方法については、1999年11月に東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部の「三庁共同提言」により「指針」が示され、全国でほぼ同じ運用がされています。すなわち、原則として「基礎収入額を賃金センサスの全産業計・企業規模計・学歴計・男女別全年齢平均賃金とし、ライプニッツ方式で中間利息を控除する」方式です。交通事故による逸失利益には、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益があり、それぞれ次の計算式で求めます。後遺障害逸失利益基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数死亡逸失利益基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対するライプニッツ係数逸失利益の算定にあたって、いくつかの注意点をまとめておきます。基礎収入基礎収入は、原則として、賃金センサスの学歴計・男女別の全年齢平均賃金を採用します。原則として、死亡の場合には死亡した年の平均賃金、後遺障害の場合には症状が固定した年の平均賃金を用います。大学進学が確実視される場合被害者が大学進学を確実視される場合は、学歴計でなく学歴別、すなわち「大卒の平均賃金」を用いることもできます。おもに問題となるのは高校生の場合ですが、小学4年生の女子について、4年制大学卒の平均賃金を認めた判例もあります。年少女子の場合年少女子の逸失利益の算定には、原則として女性労働者の平均賃金を使うため、女性の賃金水準の低さを反映し、男子に比べて逸失利益が低く算定されます。そこで、男女間格差の解消のため、年少女子(おおむね義務教育終了まで)の死亡逸失利益の算定においては、基礎収入を男女計の全労働者平均賃金とし、生活費控除率で調整する方式が定着しています。後遺障害逸失利益については、男女間格差の問題が残されたままです。生活費控除率死亡逸失利益の算定に用いる生活費控除率は、基準化されています。男子が50%、女子が30%。なお、年少女子で基礎収入に全労働者平均賃金を使う場合は45%です。労働能力喪失率労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて基準化されています。裁判でも、その基準が尊重されますが、実態に照らして適当でない場合は、個別事情を考慮して労働能力喪失率が認定されます。18歳未満のライプニッツ係数の求め方18歳未満の場合、就労可能年数は18歳から67歳までの49年ですが、適用するライプニッツ係数は、49年に対応するライプニッツ係数 18.169 ではありません。ここでは、年5%のライプニッツ係数(年金現価表)を用いています。2020年4月1日以降の事故については、年3%のライプニッツ係数が適用されます。「就労終期(67歳)までの年数に対応する係数」から「就労始期(18歳)までの年数に対応する係数」を差し引いた数値となります。起点は、死亡事故の場合は死亡日、傷害事故の場合は症状固定日です。例えば、5歳の子どもが死亡事故に遭ったとしましょう。この場合、年収から生活費を控除した額に乗じるライプニッツ係数は、67歳までの年数62年(67歳-5歳)に対応するライプニッツ係数が 19.02918歳までの年数13年(18歳-5歳)に対応するライプニッツ係数が 9.394よって、適用するライプニッツ係数は19.029-9.394=9.635となります。就労可能年数が同じ49年間であっても、遠い将来分の分であればあるほど、中間利息の控除額が大きくなり、その結果、適用するライプニッツ係数は小さくなります。被害者が18歳未満の場合のライプニッツ係数の求め方自賠責保険の支払い基準の別表「就労可能年数とライプニッツ係数表」の「18歳未満の者に適用する表」を利用すると、面倒な計算は不要です。「就労可能年数とライプニッツ係数表」はこちら ※国土交通省のWebサイトにリンクしています。こちらは年3%のライプニッツ係数です。年少者の逸失利益の計算例幼児・小学生・中学生の逸失利益の具体的な計算例をご紹介しておきます。高校生・大学生の逸失利益の計算例はこちらのページをご覧ください。ここでは、2020年3月31日以前の事故例なので、年5%のライプニッツ係数(年金現価表)を用いています。8歳男児が死亡した場合の逸失利益の計算例事故日平成28年3月(死亡事故)被害者8歳の男子労働能力喪失率100%(死亡)基礎収入を平成28年の男性の全年齢平均賃金549万4,300円とし、生活費控除率50%、8歳のライプニッツ係数11.154を乗じて算定します。ライプニッツ係数の計算8歳から67歳まで59年に対応するライプニッツ係数は18.87578歳から18歳まで10年のライプニッツ係数は7.7217よって、18.8757-7.7217=11.1540計算式549万4,300円 ×(1-0.5)× 11.154 = 3,064万1,711円8歳女児が死亡した場合の逸失利益の計算例事故日平成28年3月(死亡事故)被害者8歳の女子労働能力喪失率100%(死亡)基礎収入を平成28年の全年齢平均賃金489万8,600円とし、生活費控除率45%、8歳のライプニッツ係数11.154を乗じて算定します。計算式489万8,600円 ×(1-0.45)× 11.154 = 3,005万1,441円10歳男児に後遺障害が残った場合の逸失利益の計算例事故日平成28年3月(傷害事故・症状固定)被害者10歳の男子労働能力喪失率35%労働能力喪失期間生涯(18歳~67歳まで49年)基礎収入を平成28年の男性の全年齢平均賃金549万4,300円とし、労働能力喪失率35%、10歳のライプニッツ係数12.297を乗じて算定します。ライプニッツ係数の計算10歳から67歳まで57年に対応するライプニッツ係数は18.760510歳から18歳まで8年のライプニッツ係数は6.4632よって、18.7605-6.4632=12.2973計算式549万4,300円 × 0.35 × 12.297 = 2,364万7,192円10歳女児に後遺障害が残った場合の逸失利益の計算例事故日平成28年3月(傷害事故・症状固定)被害者10歳の女子労働能力喪失率35%労働能力喪失期間生涯(18歳~67歳まで49年)基礎収入を平成28年の女性の全年齢平均賃金376万2,300円とし、労働能力喪失率35%、10歳のライプニッツ係数12.297を乗じて算定します。計算式376万2,300円 × 0.35 × 12.297 = 1,619万2,751円まとめ幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方式は、「三庁共同提言」以降、ほぼ定型化され、全国で同じような運用がされています。とはいえ、個別事情を考慮し、算定しなければなりません。逸失利益は高額となりますから、賠償額の算定にあたっては、相手方保険会社と揉めやすいところです。きちんと損害額の立証ができるよう、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法死亡逸失利益の計算方法
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  • 高校生
    高校生・大学生の交通事故による逸失利益の算定方法と計算例
    若年者の逸失利益の算定は、原則として、賃金センサスの全産業計・学歴計・男女別全年齢平均賃金を使用しますが、大学生の場合や大学進学が確実視される場合は、学歴別・職種別の平均賃金を使用することもできます。大卒の平均賃金を使用する場合は、就業開始年齢が18歳でなく大学卒業時の年齢となり、就労可能年数が若干短くなります。高校生・大学生の逸失利益の算定方法高校生や大学生など就学期間中の若年者の逸失利益は、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が1999年に発表した「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」にもとづいて算定されるのが一般的です。「三庁共同提言」は、幼児・生徒・学生の逸失利益の算定は、原則として、賃金センサスの学歴計・男女別全年齢平均賃金を採用するとしていますが、「大学生及びこれに準ずるような場合には、学歴別平均賃金の採用も考慮する」とされています。つまり、大学生や大学進学が確実視される場合は、学歴計でなく、学歴別の全年齢平均賃金(大卒の全年齢平均賃金)を基礎収入とすることができます。また、大学の学部によっては、職種別の全年齢平均賃金を基礎収入とすることができます。どの平均賃金を採用するかによって、基礎収入にどれだけの差があるか見てみましょう。下記はその一例です。全年齢平均賃金(年収)学歴計産業計・企業規模計・男女計489万8,600円産業計・企業規模計・男549万4,300円産業計・企業規模計・女376万2,300円大卒産業計・企業規模計・男女計610万8,700円産業計・企業規模計・男662万6,100円産業計・企業規模計・女457万2,300円職種別企業規模計・男・医師1,300万7,400円企業規模計・女・医師1,081万5,400円企業規模計・男・システムエンジニア560万2,100円企業規模計・女・システムエンジニア482万4,400円※平成28年賃金構造基本統計調査(賃金センサス)より。※[年収]=[きまって支給する現金給与額]× 12 +[年間賞与その他特別給与額]高校生の逸失利益の算定高校生の逸失利益の算定では、原則として、賃金センサスの全産業計・企業規模計・学歴計・男女別平均賃金を基礎収入とします。高卒の平均賃金を採用することもできます。事故時に就職先が決まっていた場合は、その「就職先から受けるはずだった給与」を基礎収入として計算できます。ただし、昇給規定等のない中小企業などの場合は、賃金センサスの平均賃金を採用する方が、昇給分を加味して算出できるので有利になります。工業高校などで専門職の教育を受けている高校生の場合には、技術系の平均賃金を基礎収入として採用することもできます。大学進学が確実視される場合は、大卒の平均賃金を採用するのが一般的です。この場合、就労始期が22歳となり、就労可能年数は就労終期の67歳までの45年となります。例えば、音楽大学附属高校でバイオリンを専攻していた高校生(15歳・女子)について、音楽大学に進学して音楽関係の仕事に就いた蓋然性が高いこと、バイオリン演奏に関わる職種は男女間格差が認められないこと等から、「男性大卒・全年齢平均賃金の9割」を基礎収入とした事例(名古屋地裁・平成15年4月28日)などがあります。大学生の逸失利益の算定大学生の場合は、高校生までと比べ、職業選択の可能性が、より明確になっています。例えば、医学部の学生なら、医者になる可能性が高いと考えられます。工学部の学生なら、建築・機械・電気など各専門知識を活用できる職業に就く蓋然性が高いと考えられます。ですから、賃金センサスの平均賃金を用いる場合でも、大卒の平均賃金一般でなく、職種別の平均賃金を採用して基礎収入を計算することもできます。例えば、医学生(男22歳)について、職業別・医師(男)企業規模計・全年齢平均賃金を基礎収入とした事例(仙台地裁・平成10年3月26日)などがあります。大企業等に就職が内定していた場合には、賃金センサスの平均賃金を用いるより、就職予定先の給与を基準とした方が有利な場合があり、そういった計算方法も可能です。なお、大学生の場合、就労始期は大学卒業時の年齢で、就労可能年数は一般に22歳から67歳までの45年となります。卒業時の年齢が上になると、就労可能年数はさらに短くなります。高校生・大学生の逸失利益の計算例高校生・大学生の逸失利益の具体的な計算例をご紹介しておきます。交通事故による逸失利益には、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益があり、それぞれ次の計算式で求めます。後遺障害逸失利益基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数死亡逸失利益基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対するライプニッツ係数ライプニッツ係数の求め方ライプニッツ係数は、「就労終期(67歳)までの年数に対応する係数」から「就労始期までの年数に対応する係数」を差し引いた数値となります。就労始期は、高卒なら18歳、大卒なら22歳以降の卒業時年齢となります。起点は、どちらも、死亡事故の場合は死亡日、傷害事故の場合は症状固定日です。考え方は、被害者が18歳未満の場合のライプニッツ係数の求め方と同じです。ここでは、2020年3月31日以前の事故例なので、年5%のライプニッツ係数(年金現価表)を用いています。 18歳の女子高校生が死亡した場合の逸失利益の計算例事故日平成28年3月(死亡事故)被害者高校3年に在学中で大学進学を希望、客観的にもその蓋然性が認められる18歳の女子労働能力喪失率100%(死亡)基礎収入を平成28年の大卒女子の全年齢平均賃金457万2,300円とし、生活費控除率30%、ライプニッツ係数14.6228を乗じて算定します。ライプニッツ係数の計算18歳から67歳まで49年に対応するライプニッツ係数は18.168718歳から22歳まで4年のライプニッツ係数は3.5459よって、18.1687-3.5459=14.6228計算式457万2,300円 ×(1-0.3)× 14.6228 = 4,680万1,879円24歳の男子学生が死亡した場合の逸失利益の計算例事故日平成28年3月(死亡事故)被害者大学4年に在学中の24歳の男子労働能力喪失率100%(死亡)基礎収入を平成28年の大卒男子の全年齢平均賃金662万6,100円とし、生活費控除率50%、24歳から67歳までの43年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数17.5459を乗じて算定します。計算式662万6,100円 ×(1-0.5)× 17.5459 = 5,813万443円まとめ高校生・大学生の逸失利益の算定方式は、ほぼ定型化されています。ポイントは、基礎収入の算定です。基礎収入には、原則として、賃金センサスの平均賃金を用いますが、就職先が内定し、統計上の平均賃金より高い賃金を得られる見込みだった場合は、就職予定先の会社の給与を基礎収入とすることもできます。また、卒業後の職業・職種がある程度絞り込まれ、その職種の平均賃金が、全産業平均賃金より高い場合は、職種別の平均賃金を採用することもできます。基礎収入に「何を用いるか」「どの平均賃金を採用するか」によって逸失利益に差が出ます。いずれにしても逸失利益は高額となりますから、賠償請求額の算定にあたっては、相手方保険会社と揉めやすいところです。きちんと損害額の立証ができるよう、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法死亡逸失利益の計算方法
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  • 年少女子の逸失利益
    年少女子の逸失利益算定に用いる基礎収入の計算方法
    女性の逸失利益は、現実の賃金水準を反映し、低く算定されてしまいます。そこで、年少女子の逸失利益の算定では、女性の平均賃金でなく、男女を合わせた平均賃金を基礎収入とする方法が採られています。年少女子の逸失利益の算定に全労働者平均賃金を採用年少女子の逸失利益を算定する際の基礎収入は、従来、女性労働者の平均賃金を用いてきました。しかし、女性が様々な職業領域に進出できる社会情勢となっていること、未就労年少者は多様な就労可能性を有することから、現在は、年少女子の基礎収入に、男女を合わせた全労働者の平均賃金を用いるのが一般的です。東京・大阪・名古屋の各地裁では、男女を合わせた全労働者の平均賃金を用いることで見解が一致しています。赤い本は、「女性労働者の全年齢平均賃金ではなく、男女を含む全労働者の全年齢平均賃金で算定するのが一般的である」としています。青本は、最近の裁判例は「全労働者(男女計)平均賃金を基礎とする方法を採用していると言ってよいだろう」としています。死亡逸失利益の生活費控除率は45%死亡逸失利益は、基礎収入から生活費を控除して計算します。死亡逸失利益の計算方法はこちらをご覧ください。生活費控除率は、基準化されています。女性30%(主婦・独身・幼児を含む)※年少女性で労働者平均賃金を基礎収入とする場合は45%程度。男性50%(独身・幼児を含む)※『赤い本 2016年版』より女性の死亡逸失利益は、基礎収入に女性の平均賃金を用い、生活費控除率を30%として計算します。女性の生活費控除率が男性より低いのは、女性の賃金が低いことを反映して逸失利益が低めに算定されてしまうため、男女間格差を是正するためです。基礎収入に全労働者(男女計)の平均賃金を用いる場合は、生活費控除率を45%程度とします。なぜ生活費控除率を45%とするのか?なぜ45%なのかというと、生活費控除率が40%あるいはそれ以下だと、男子の逸失利益よりも高くなってしまうからです。全労働者の平均賃金を用いて生活費控除率を40%とすると、男性労働者の平均賃金を用いて生活費控除率を50%とした場合を上回ることになります。例えば、11歳の男児と女児の場合で見てみましょう。平成28年に交通事故で死亡したとします。基礎収入は、平成28年の賃金センサスによれば、男性の平均賃金は549万4,300円、女性の平均賃金は376万2,300円、全労働者の平均賃金は489万8,600円です。11歳のライプニッツ係数は12.912です。中間利息控除を年5%としています。これをふまえて、生活費控除率を変えて死亡逸失利益を計算してみます。基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対するライプニッツ係数男児11歳の死亡逸失利益基礎年収は549万4,300円、生活費控除率は50%ですから、549万4,300円 ×(1-0.5)× 12.912 = 3,547万1,200円女児11歳の死亡逸失利益女性の平均賃金を用いる場合(生活費控除率30%)376万2,300円 ×(1-0.3)× 12.912 = 3,400万5,173円男児11歳より、146万6,027円少なくなります。全労働者の平均賃金を用いる場合(生活費控除率40%)489万8,600円 ×(1-0.4)× 12.912 = 3,795万433円男児11歳より、247万9,233円多くなります。全労働者の平均賃金を用いる場合(生活費控除率45%)489万8,600円 ×(1-0.45)× 12.912 = 3,478万7,897円男児11歳より、68万3,303円少なくなります。男女計の平均賃金を基礎とする年少女子の範囲全労働者(男女計)の平均賃金を基礎とする年少女子の範囲については、義務教育修了まで(中卒で就労している同世代の者との均衡から)高校、専門学校、大学、大学院等を卒業するまで若年者評価がされる期間(事故時おおむね30歳未満)一律に決めるべきでなく事案に応じて判断すれば足りるなどの考え方があり、裁判例も様々です。だいたい「義務教育終了まで」は、この方式を採用することが定着しています。近年は、少なくとも高校卒業までは全労働者の平均賃金が基礎とされることが多いようです。まとめ年少女子の逸失利益を算定するときは、女性の平均賃金でなく男女を合わせた全労働者の平均賃金を用います。この方式が適用される年少女子の範囲については、近年は高校卒業まで認められることが多くなっています。適用範囲については、生活費控除率を何%にするかもあわせて、個別具体的に検討・立証することになります。お困りのことがあったら、今すぐ交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法死亡逸失利益の計算方法参考文献・『交通事故事件の実務―裁判官の視点―』新日本法規 72~73ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 137~138ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 116ページ
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  • 外貌醜状
    外貌醜状の後遺障害等級、労働能力喪失率、逸失利益、慰謝料
    外貌醜状とは、顔面や頸部など日常露出する部位に醜状痕が残った後遺障害です。外貌醜状障害による逸失利益は、被害者の性別、年齢、職業などを考慮し、労働能力に直接または間接的に影響を及ぼすおそれがあるか否かで判断されます。逸失利益が認定されなくても、慰謝料の増額事由として斟酌される場合があります。ここでは、外貌醜状の後遺障害等級とその認定基準、外貌醜状による後遺障害逸失利益と慰謝料の認定について近年の動向を見ていきます。醜状障害の後遺障害等級と認定基準交通事故により外貌の醜状障害が残った場合の後遺障害等級については、2010年までは女性と男性で異なる取り扱いがされていました。女性の方が、後遺障害等級の位置づけが高かったのです。現在は、男女の区別なく、同じ後遺障害等級となっています。2010年6月10日以降の事故については、新しい後遺障害等級と認定基準が適用されます。それでは、さっそく「新基準」を見ていきましょう。顔面などの醜状痕(醜状障害)の後遺障害等級まず、醜状痕の後遺障害等級についてです。醜状痕の後遺障害等級は、「外貌の醜状障害」と「上肢・下肢の露出面の醜状障害」について定めています。外貌とは、頭部、顔面部、頸部のように、上肢・下肢以外の日常露出する部分をいう、と障害等級認定基準において定められています。上肢の露出面とは、ひじ関節以下(手部を含む)、下肢の露出面とは、ひざ関節以下(足背部を含む)をいいいます。後遺障害等級は、次の通りです。醜状障害の後遺障害等級等級後遺障害外貌7級12号外貌に著しい醜状を残すもの9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの12級14号外貌に醜状を残すもの上肢14級4号上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの下肢14級5号下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの※後遺障害等級表(自動車損害賠償保障法施行令[別表第二])より抜粋。各等級の労働能力喪失率は、次のようになります。労働能力喪失率後遺障害等級労働能力喪失率第7級56%第9級35%第12級14%第14級5%※労働能力喪失率表(自賠責の保険金支払基準[別表1]より抜粋。醜状障害については、後遺障害等級が認定されても、それに対応した労働能力喪失率が認められない、したがって逸失利益が認められない、という問題があります。それについては、あとで詳しく見ることにして、後遺障害の各等級の認定基準、すなわち、「著しい醜状」、「相当程度の醜状」、単なる「醜状」とは、どういうものをいうのか、見ておきましょう。外貌醜状障害に関する後遺障害等級の認定基準「著しい醜状」、「相当程度の醜状」、単なる「醜状」については、「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」で、次のようになっています。ここに示したのは、労災保険における障害等級認定基準ですが、自賠責保険の後遺障害等級認定基準も、これと同じです。自賠責制度は、労災制度に準じて運用されています。したがって、自賠責の後遺障害等級表は、労災の障害等級表と基本的に同じです。自賠責制度における後遺障害等級の判断は、原則として労災制度の障害等級認定基準に準拠して行われます。著しい醜状外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のもの。頭部手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損顔面部鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没頸部手のひら大以上の瘢痕※「手のひら大」は、指の部分は含まない。相当程度の醜状外貌における「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5㎝以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの。醜状外貌における単なる「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のもの。頭部鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損顔面部10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3㎝以上の線状痕頸部鶏卵大面以上の瘢痕障害補償の対象となる外貌の醜状は、人目につく程度以上のものでなければならないから、眉毛、頭髪等にかくれる部分については、醜状として取り扱わないとされています。例えば、眉毛の走行に一致して3.5㎝の縫合創痕があり、そのうち1.5㎝が眉毛にかくれている場合は、顔面に残った線状痕は2㎝となるので、外貌の醜状には該当しないことになります。外貌醜状に関する障害等級の認定基準まとめると、こうなります。頭部顔面部頸部瘢痕頭蓋骨の欠損瘢痕線状痕組織陥没瘢痕第7級12号(著しい醜状)手のひら大以上手のひら大以上鶏卵大面以上―10円銅貨大以上手のひら大以上第9級16号(相当程度の醜状)―――長さ5㎝以上――第12級14号(醜状)鶏卵大面以上鶏卵大面以上10円銅貨大以上長さ3㎝以上―鶏卵大面以上【参考】「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」平成23年2月1日 厚生労働省労働基準局長通知(厚生労働省のWebサイトにリンクしています)外貌醜状障害に関する後遺障害等級の改正外貌醜状障害に関する後遺障害等級が改正された経緯を簡単に見ておきましょう。外貌の醜状障害は、従来、女性は7級と12級、男性は12級と14級に分類され、男性は女性より障害等級が低く取り扱われていました。ちなみに、旧基準では、このように分類されていました。第7級12号 女性のの外貌に著しい醜状を残すもの第12級13号 男性の外貌に著しい醜状を残すもの14号 女性の外貌に醜状を残すもの第14級10号 男性の外貌に醜状を残すもの京都地裁が、2010年(平成22年)5月27日、「外貌の著しい醜状に関し、男女の障害等級に5等級の差を設けている現行の障害等級表は、憲法14条1項に違反する」と判決。国は控訴しなかったため、同平成22年6月10日に判決が確定しました。これを受けて、厚生労働省は、労災保険の「障害等級表」と「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」を改正しました(平成23年2月1日)。自賠責保険の後遺障害等級認定は労災保険に準拠していることから、自賠責保険においても同様に、自賠法施行令の後遺障害等級表を改正しました(平成23年5月2日)。新基準の適用は、平成22年6月10日以降に発生した事故からです。醜状障害は労働能力喪失が否定され逸失利益が認められない?外貌の醜状障害は、それによって身体的機能が損なわれるわけではないため、労働能力の喪失が否定され、逸失利益が認められないことがほとんどでした。しかし、今は、状況が変わってきています。外貌の醜状障害に関する裁判実務での取り扱い従来、外貌の醜状障害による労働能力の喪失について、裁判所では、次のように取扱われてきました。被害者の性別、年齢、職業等を考慮した上で、<直接的に影響する場合>醜状痕の存在のために配置転換させられたり、職業選択の幅が狭められたりするなどの形で、労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合には、一定割合の労働能力の喪失を肯定して逸失利益を認める。<直接的な影響はないが、間接的に影響する場合>労働能力への直接的な影響は認めがたいが、対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で、間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれが認められる場合には、後遺障害慰謝料の加算事由として考慮し、100万~200万円の幅で後遺障害慰謝料を増額する。<直接的にも間接的にも影響しない場合>直接的にも間接的にも労働能力に影響を与えないと考えられる場合には、逸失利益は認められず、慰謝料も基準通りとして増額しない。(参考:東京三弁護士会交通事故処理委員会編『新しい交通賠償論の胎動』ぎょうせい 9ページ)つまり、醜状障害の内容・程度と被害者の職業との相関関係により、直接的に労働能力に影響が生じるおそれがある場合には、制限的に逸失利益を認め、間接的な影響にとどまる場合は、慰謝料の増額で調整してきたのです。実際、醜状障害の逸失利益が認められるのは、被害者がモデルなど容姿が仕事の有無・内容に直結する職業に就いていた場合ぐらいでした。それ以外の職業では、現実に転職・配転・減収があったり、就職・転職において支障が生じた場合などに、仮に労働能力の喪失が認められても、労働能力喪失表の喪失率の半分以下の喪失率が認定されるにすぎず、その代わりに慰謝料の増額調整が行われてきたのです。ですが、今は、醜状障害が、直接的に労働能力に影響を与える場合だけでなく、間接的に影響を及ぼす場合にも、労働能力の喪失を認める方向に変わっています。つまり、外貌の醜状障害による逸失利益が認められるようになってきているのです。上で紹介したように、労災保険の障害等級表を違憲とした京都地裁の判決が確定したのを受けて、厚生労働省は、「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会」を開催。外貌障害による障害等級の見直しを行いました。専門検討会が取りまとめた報告書(2010年12月1日)の中の「障害を評価する観点」には、こうあります。外ぼうの障害自体は、稼得能力(労働能力)の直接の喪失をもたらすものではない。しかしながら、外ぼうの障害が、現状はもちろん将来にわたる就業制限、職種制限、失業、職業上の適格性の喪失等の不利益をもたらし、結果として労働者の稼得能力を低下させることは明らかであり、労災保険法の趣旨が業務上又は通勤による稼得能力(労働能力)の永続的な低下、すなわち労働能力の喪失のてん補であることからみると、当該不利益の特殊性にも着目して障害の評価を行うことが妥当である。(「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書」4ページ)時を同じくして、『赤い本』2011年版に、「外貌の醜状障害による逸失利益に関する近時の裁判実務上の取扱について」という、鈴木尚久裁判官の講演録が掲載されます。そこでは、外貌がその者の印象を大きく左右する要素であることを指摘し、こう述べられています。醜状障害が、円満な対人関係を構築し円滑な意思疎通を実現する上での阻害要因となるのは容易に理解されるところであり、この点こそ醜状障害によって喪失する労働能力の実質と考えられます。すなわち、醜状障害では、労働能力を伝統的な肉体的・機械的な観点のみから把握するのではなく、このような対人関係円滑化の観点からも把握する必要があると考えられます。労働能力を対人関係円滑化の観点からも把握するとすれば、被害者が実際に従事する労務を遂行する上で醜状障害が全く影響しない職業というのはおよそ考えられません。どちらも、外貌の醜状障害が労働能力へ及ぼす直接的な影響だけでなく、間接的な影響も重視する方向性が示されています。まだ裁判実務に明確な変化が生じたと一概にいうことはできないものの、今後は、労働能力に対する間接的な影響による逸失利益を認める傾向が強まり、慰謝料で斟酌する方式は例外的なものになっていくだろう、と考えられています。裁判例従来の裁判実務の取扱いによれば、労働能力に対する間接的影響として慰謝料で斟酌するにとどめていたと思われる事例で、逸失利益を認める例が出てきています。東京高裁判決(平成23年10月26日)被害者は女性・21歳・大学生外貌醜状7級を含む併合5級の事案につき、原告の年齢等からすれば、こうした外貌醜状によって職業・稼働に対する一層の制約が生じ、収入が減少することは十分考えられるから、労働能力の喪失がないとはいえず、労働能力喪失は5級に相当する79%とみるのが相当とした一審判決を支持しました。名古屋地裁判決(平成24年11月27日)被害者は女子・10歳・小学生外貌醜状12級の事案につき、今後の進路ないし職業の選択、就業等において、不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず、また原告が醜状痕を気にして消極的になる可能性をも考慮すると、障害にわたりその労働能力を5%喪失したものと認めるのが相当としました。さいたま地裁判決(平成27年4月16日)被害者は男性・39歳(症状固定時41歳)・自動車運転手外貌醜状9級を含む併合9級の事案につき、職業のいかんを問わず、外貌醜状があるときは、原則として当該後遺障害等級に相応する労働能力の喪失があるというのが相当であり、当該後遺障害等級の定める労働能力の喪失を否定するような特段の事情があるとまでいえないから、併合9級相当の35%の労働能力喪失があるものというのが相当とし、症状固定の41歳から67歳までの27年間について、逸失利益を認定しました。上肢・下肢の露出面の醜状障害外貌の醜状障害のほか、上肢・下肢の露出面の醜状障害が、後遺障害等級14級に位置づけられています。上肢・下肢の醜状障害による労働能力の喪失の判断についても、基本的に、外貌の醜状障害の場合と同じですが、その部位などから、労働能力の喪失が否定されるケースがほとんどです。労働能力喪失期間外貌醜状障害は、器質的障害で、経年による回復、改善があまり期待できません。そのため、労働能力喪失期間については、就労可能期間の終期とされる67歳までとすることが多いようです。ただし、将来の配置転換や転職の可能性があって、それにより労働能力に与える影響が緩和する可能性がある場合や、年齢によって業務の内容が変わり、その影響が変わる場合などは、それに応じた労働能力喪失期間の限定や、労働能力喪失率の逓減が加えられる場合もあります。旧別表7級12号に該当する顔面醜状が残存したホステス(20歳)につき、ホステスを継続することが困難となり、転職して収入が半分以下になったことを考慮し、症状固定時(22歳)から35歳までの13年間は、事故時の収入を基礎に56%の労働能力の喪失を認め、その後の67歳までの32年間は、女子平均賃金を基礎に25%の労働能力の喪失を認めました。(名古屋地裁判決・平成21年8月28日)醜状障害による労働能力喪失の認定で大事なこととは?醜状障害による労働能力への影響を認定する重要な要素は、醜状障害の内容・程度と、被害者の職業特性・業務内容、性別、年齢です。醜状障害の内容・程度醜状障害の内容・程度については、後遺障害等級該当性の簡単な主張にとどまらず、醜状痕の位置、頭髪などで隠れる度合い、他者に与える印象も含めて、具体的に主張・立証することが必要です。被害者の就業状況と業務への影響被害者の就業状況と、外貌醜状による業務への影響について、具体的に主張・立証する必要があります。業務に与える具体的な影響については、モデルなど容姿が直接影響する職業であるか、接客業務の割合、被害者の精神面による間接的な影響などを主張します。特に、醜状痕の残存のために、現実に転職・配転・減収があったとか、就職・転職に支障があったなど、すでに具体的に生じている影響があれば、労働能力の喪失が認定される可能性が高くなります。経緯などを主張・立証することが重要です。他の障害との併合による労働能力の喪失他の神経症状などの障害と併せて労働能力喪失を認定されることもあるので、それらの障害と外貌醜状が関連する状況について主張することも大事です。外貌の醜状障害は比較的高額な慰謝料が認められる外貌の醜状障害は、比較的高い後遺障害等級に位置づけられていますが、逸失利益の認定に消極的な傾向があるため、慰謝料の増額で調整されてきました。特に女性の場合は、財産上の損害以外の社会生活上の不利益も大きいことから、比較的高額な慰謝料を認める事例があります。未婚か既婚か、若年者か成人か高齢者か、などによっても慰謝料額に差がみられるのが普通です。一般的には、既婚より未婚、高齢者より若年者の方が、外貌醜状によって受ける精神的苦痛の程度が大きく、苦痛の期間も長くなるため、慰謝料額は高くなる傾向にあります。ただし、今後は逸失利益を認めるケースが増え、従来のように、逸失利益を否定する代わりに慰謝料を増額して調整する方式は少なくなることが考えられます。とはいえ、逸失利益の算定が困難な事案や、慰謝料の算定で諸般の事情を斟酌する方式が適切な事案では、引き続き慰謝料による補完性が重要な意味を持つことに変わりありません。まとめ外貌醜状障害は、それ自体が労働能力の直接的な喪失をもたらすものではないため、特定の職業を除き、逸失利益は否定され、その代わりに慰謝料の増額で調整する方法が採られてきました。しかし、今後は、労働能力への直接的な影響だけでなく、間接的な影響も考慮して労働能力の喪失を判断する方向性が示されています。逸失利益が認められるケースが増えてくることが考えられます。外貌醜状障害については、労働能力への直接的な影響だけでなく、対人関係が円滑でなくなったことによる間接的な影響という観点からも、労働能力の喪失を具体的に主張・立証することが大切です。まさに今、裁判例が変化しているときですから、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 127~128ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 185~186ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 176~180ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 164~165ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 191~196ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 147ページ・『l交通損害関係訴訟 増訂版』青林書院 165~166ページ・『交通事故判例140』学陽書房 209~210ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 80ページ・『交通事故事件の落とし穴』新日本法規 102~107ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 201~206ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 147~155ページ、194~199ページ
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