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    交通事故損害賠償請求権の法律根拠は?民法709条と自賠法3条
    交通事故の損害賠償請求権は、民法709条の「不法行為責任」と、自賠法(自動車損害賠償保障法)3条の「運行供用者責任」に規定されています。このほか、監督義務者責任(民法714条)や使用者責任(民法715条)などがあり、それぞれの法律上の規定に基づき、損害賠償を請求することができます。ここでは、民法にもとづく損害賠償請求と、自賠法に基づく損害賠償請求の違いについて、見ていきましょう。民法の「不法行為責任」交通事故は、民事上の不法行為に該当し、加害者には損害賠償の責任が生じます。不法行為による損害賠償について定めているのが、民法709条(不法行為責任)です。民法 709条(不法行為による損害賠償)故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。民法709条の規定に基づき、被害者は、加害車両の運転者に対して、損害賠償を請求することができます。自賠法の「運行供用者責任」自賠法(自動車損害賠償保障法)では、加害自動車の「運行供用者」が損害賠償責任を負うと定めています。運行供用者は、運転者とは限らず、もっと広く解釈されます。自賠法は、「運行供用者責任」について、次のように規定しています。自賠法 3条(自動車損害賠償責任)自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。この「自己のために自動車を運行の用に供する者」を「運行供用者」といいます。自賠法3条の規定に基づき、被害者は、加害車両の「運行供用者」に対して、損害賠償を請求することができます。運行供用者に該当するのは誰?問題は「運行供用者とは誰か?」です。自賠法は「自己のために自動車を運行の用に供する者」が損害賠償責任を負うと規定しているのですが、実は、自賠法には「自己のために自動車を運行の用に供する者」すなわち「運行供用者」の定義規定がありません。運行供用者は、相手自動車の運転者とは限りません。実際に発生した事故において、誰が運行供用者となるか、個別に判断することになります。では、運行供用者をどう判断すればよいのでしょうか?最高裁は、運行供用者について「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者」としています(最高裁判決・昭和43年9月24日)。例えば、自分の自動車を運転中に事故を起こしたときは、運転者(=所有者)が運行供用者です。タクシーが起こした事故なら、タクシーを所有しているタクシー会社が自賠法3条の運行供用者責任を負い、タクシー運転手は民法709条の不法行為責任を負います。運行供用者について、さらに詳しくは、次をご覧ください。運行供用者は誰? 運行供用者の判断基準自賠法が規定する運行供用者・保有者・運転者の違いなぜ、運転者でなく運行供用者に賠償責任を負わせたのか?自賠法が、加害運転者でなく、運行供用者に損害賠償責任を負わせたのは、運行供用者責任とすることで、損害賠償責任を追及できる相手方の範囲が拡張され、被害者救済につながるからです。賠償請求の相手が、直接の加害者(運転者)だけに限定されると、加害者の賠償資力によっては十分な損害賠償を受けられないことがあります。そうならないよう、被害者を救済するために、自賠法では運行供用者責任としたのです。自賠法における「運転者」は、一般的な運転者と意味が異なり、「他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者をいう」(自賠法2条4項)と、限定的に定義されています。例えば、雇用されて会社の車を運転する者、委託されて運転する者などです。マイカーの運転者は、運行供用者です。そもそも自賠法は、自動車の運行による人身事故における被害者の保護を目的につくられた法律です。自賠法の目的について、第1条で、こう規定しています。自賠法第1条(法律の目的)この法律は、自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。条文中の「損害賠償を保障する制度」とは、「自賠責保険制度」と「政府の自動車損害賠償保障事業」です。現実に被害者救済が図られるよう、保険制度を法に基づいて整備し、保険制度では救済されない被害者については、国が保障する制度を設けているのです。もっとも、いずれも最低限の補償ではありますが…。自賠法の対象は、自動車の運行によって他人の「生命または身体を害した」ときですから、物損事故は、自賠法の対象外です。人身事故でも、自動車の運行によらない事故の場合は、対象外となります。立証責任の転換民法709条(不法行為責任)に基づく損害賠償請求と、自賠法3条(運行供用者責任)に基づく損害賠償請求は、賠償請求する相手が異なるというだけではありません。民法による損害賠償請求は、「相手に過失があり、損害賠償責任がある」ことを賠償請求する被害者が立証しなければなりませんが、自賠法による損害賠償請求は、立証責任の転換が図られ、加害者が「自分には過失はなく、損害賠償責任がない」ことを立証しない限り、賠償責任を負う構造になっています。ですから、人身損害については、自賠法3条に基づいて損害賠償請求をする方が、立証責任が転換され被害者保護となっているため有利です。例えば、「歩行者が飛び出して事故が起こった」と、加害者が過失を否定するような場合には、立証責任が転換されていることは重要です。民法709条により損害賠償請求するときは、加害者の過失を被害者が立証する必要がありますが、自賠法3条により損害賠償請求すれば、加害者側が無過失を立証しない限り、損害賠償責任を免れることはできません。特に、被害者が事故で死亡し、目撃証言もないようなときは、立証責任の転換がきわめて重要となります。「民法の立証責任」と「自賠法の立証責任」の違いについて、詳しく見てみましょう。民法の損害賠償請求と不法行為の立証民法709条にもとづく不法行為責任が発生し、不法行為者(加害者)に対し損害賠償請求権が発生する要件は、次の4つです。民法709条に基づいて損害賠償請求をする場合には、これらを全てを賠償請求する被害者の側が主張・立証しなければなりません。不法行為責任の成立要件被害者の権利または法律上保護される利益を侵害したこと。加害者に故意または過失があったこと。損害が発生したこと。加害行為と損害との間に因果関係があること。被害者の権利または法律上保護される利益の侵害交通事故で、人に怪我をさせれば身体権の侵害、死亡させれば生命権の侵害、物損は財産権の侵害です。交通事故は、生命・身体・財産という重要な権利の侵害ですから、権利・法益の侵害の有無が問題となることは、まずありません。加害者の故意または過失過失とは、「うっかり」という精神的緊張の欠如(主観的過失論)ではなく、「結果発生の予見可能性を前提とした結果回避義務違反」と解されています(客観的過失論)。すなわち、一定の注意義務を尽くしていれば事故の発生は予見可能であり、それを回避すべき行為義務(=なすべきであった行為)があったにもかかわらず、その行為を怠ったことが過失です。例えば、自動車の運転者が、前方の信号機が赤信号となったのを見落として、停止位置で停車せず、そのまま進行し、事故を起こしたとします。「赤信号は停止位置で停車すべきであった」のに、それを怠り、「停止位置で停車せず、そのまま進行した」ことが過失です。ちなみに、主観的過失論では、精神的緊張を欠いて、「うっかりと赤信号を見落とした」ことを過失と捉えます。過失とは、道路交通法に定める注意義務に違反すること道路交通法は、運転者に、様々な注意義務を課しています。過失とは、一言でいえば、注意義務違反ということです。したがって、交通事故における加害者の過失についての主張・立証は、道路交通法規の定める注意義務とその違反行為の存在(速度超過、前方不注視、一時停止違反、車間距離不保持など)を主張・立証すれば足りると考えられています。道路とは認められない駐車場における事故についても、道路交通法に定める注意義務が参考にされます。ただし、加害者に過失があったといえるかが問題となるケースが少なからずあり、被害者が、加害者の過失を立証することが困難な場合もあります。加害者に過失があったと立証できなければ、賠償請求は認められません。故意と過失で損害賠償額に差が出る?加害者の故意か過失かによって、慰謝料の額に多少の影響はありますが、それ以外の財産的損害には影響しません。なので、加害者の故意か過失かによって、損害賠償額に格別の差異が生じるものではありません。むしろ、加害者の故意や悪意が認定されると、自賠責保険の悪意免責や任意保険の故意免責により、保険金が支払われなくなります。そのため、交通事故の損害賠償請求において、加害者の故意を主張することは、通常ありません。損害の発生と額交通事故による損害は、人的損害と物的損害に大別され、人的損害は、さらに財産的損害(積極損害・消極損害)と精神的損害(慰謝料)に分類されます。賠償請求できる損害について詳しくはこちらをご覧ください。損害額は、損害項目ごとに損害算定基準にもとづいて計算し、これを積み上げていく「個別損害積上げ方式」により算定します。加害行為と損害との因果関係加害者の行為によって損害が生じたことを、被害者が立証しなければ、不法行為責任を問うことはできません。加害者が損害賠償責任を負うのは、社会通念に照らし妥当と認められる因果関係(相当因果関係)の範囲内の損害に限定されます。あとになって症状が現れた場合など、事故と損害の因果関係の立証が難しい場合があります。加害者の責任能力不法行為時に責任能力が存在しない者は、損害賠償責任を負いません(民法712条・713条)。責任能力とは、「自己の行為の責任を弁識する能力」をいいます。つまり、相手に損害を与えると、それを賠償する法的責任が生じることを理解する能力のことです。加害者の責任能力の有無は、年齢、疾患による心神喪失の有無などから判断します。未成年者については、12歳前後の知能が基準となり、一般的には中学生になれば責任能力が認められます。刑事事件のように責任年齢を一律に14歳以上(刑法41条)と決めているわけでなく、民事では責任能力の有無は個別に判断します。自賠法の損害賠償請求と運行供用者責任の立証民法に基づく損害賠償請求は、被害者において、加害者の故意・過失など加害者側の事情にかかる事実を主張・立証しなければなりません。これは容易なことでありません。そこで、被害者救済の見地から、自賠法では、立証責任を加害者側(運行供用者)に転換しました。これにより、自賠法にもとづき損害賠償請求する場合には、被害者は、相手の自動車の運行によって損害が発生したという事実を主張・立証すればよくなったのです。逆に、運行供用者は、次の3つの要件を全て立証しなければ、損害賠償責任を免れることはできません。運行供用者の無責3条件(自賠法3条ただし書)運行供用者と運転者に過失がなかったこと。被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと。自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと。これを全て立証することは容易ではありません。自賠法の運行供用者責任は、事実上の無過失責任(過失がなくても賠償責任を負う)に近く、ほとんどの場合に損害賠償責任を負うことになります。ただし、運行供用者責任が「無過失責任に近い」とはいえ、完全な無過失責任を認めたものではなく、被害者に100%の過失が認められるときは、加害者無責(加害者に責任なし)となり、自賠責保険も支払われません。こういう場合は、自身の加入する任意自動車保険(人身傷害保険など)に保険金の支払を請求することになります。まとめ交通事故の損害賠償請求は、基本的には民法の不法行為責任によりますが、人身事故の場合は、自賠法にもとづき損害賠償請求することもできます。自賠法を適用できるときは、自賠法による方が立証が容易です。自賠法による損害賠償請求は、民法のように被害者側が加害者の故意・過失を立証する必要はなく、加害者側が「自分に過失がなかった」ことを立証できない限り、損害賠償責任を免れることはできません。被害者側は、事故により損害が発生し、損害額がいくらかを主張・立証すればよいのです。なお、物的損害については自賠法は適用外で、民法による損害賠償請求となります。メガネや補聴器など身体に密着し、身体の一部の機能を代行している物に、自賠法が適用される程度です。また、自転車による人身事故には、自賠法は適用されません。自動車事故で、人損と物損の両方に及ぶ場合は、人損は自賠法、物損は民法と「二本立て」で損害賠償請求することになります。交通事故の被害に遭いお困りのときは、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。あなたに おすすめの記事交渉力の違いだけでない! 弁護士の介入で賠償額が増える本当の理由とは?交通事故被害者が知っておきたい弁護士選び3つのポイント交通事故の示談交渉を弁護士に頼む5つのメリット・1つのデメリット示談後に後悔する人と満足する人のちょっとした違いとは?自力で示談交渉する被害者が陥りがちな2つの間違い【参考文献】・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 45~49ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 6~14ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 19~21ページ、30~36ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 5~11ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 62~71ページ・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集ー交通事故編ー』第一法規 62ページ・『口語民法』自由国民社 関係条文の解説
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  • 損害賠償請求の相手
    交通事故で損害賠償請求できる相手方は誰か?加害者の責任原因
    交通事故で損害賠償義務を負うのは、運転者だけとは限りません。加害車両の保有者、相手が業務中の事故なら会社、未成年者なら両親なども損害賠償の義務を負います。加害車両に任意保険が付いていない場合は、賠償資力の有無が問題になりますから、誰を相手に損害賠償請求するか、特に重要となります。損害賠償を請求できる相手方交通事故による賠償責任については、民法、自動車損害賠償保障法(自賠法)で定められています。不法行為責任(民法709条)、使用者責任(民法715条)、運行供用者責任(自賠法3条)などがあり、これを「責任原因」といいます。誰を相手に損害賠償請求するかは、この「責任原因」によって異なります。損害賠償請求できる相手方(賠償義務者)と、法律上の根拠規定(責任原因)をまとめておきます。賠償義務者責任原因加害者本人(運転者)民法709条(不法行為責任)故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。加害車両を直接運転していた運転者は、「不法行為責任」にもとづく損害賠償義務を負います。運行供用者自賠法3条(運行供用者責任)自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。「自己のために自動車を運行の用に供する者」を運行供用者といいます。自動車の保有者等が該当します。もちろん運行供用者が運転者と同一の場合もあり、その場合は運転者に対し、自賠法3条にもとづき賠償請求します。会社の所有する車両で事故を起こした場合は、会社が運行供用者責任を負い、運転者は不法行為責任を負います。使用者民法715条(使用者責任)ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。加害者(運転者)が業務中に起こした交通事故の場合、加害者の使用者である会社等には「使用者責任」があり、賠償義務を負います。会社の車両で人身事故を起こした場合は、会社は運行供用者責任と使用者責任を負います。人損が自賠法の運行供用者責任で、物損が民法の使用者責任となります。未成年者の親責任能力のある未成年者の監督義務者責任未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者に民法709条に基づく不法行為が成立する。最高裁判決(昭和49年3月22日)責任能力とは「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」(民法712条)です。弁識とは、物事の道理を理解することです。未成年者の責任能力は、小学校卒業前後でそなわると考えられています。民法714条(責任無能力者の監督義務者責任)責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。加害者が責任無能力者(概ね12歳以下)の場合、法定監督義務者である親権者が賠償責任を負います。自転車の運転で加害者となった場合などが該当します。なお、自転車の事故には自賠法は適用されないので、民法による損害賠償請求となります。人身事故は、自賠法3条で「運行供用者」に損害賠償請求する人身事故の場合には、自賠法3条の「運行供用者責任」にもとづき、損害賠償請求するのが基本です。民法の「不法行為責任」を問う場合、被害者側が相手に過失があったことを立証しなければならないのに対して、自賠法では、加害者側が自分に過失がなかったことを立証しない限り、賠償責任を免れられない仕組みになっているからです。関連運行供用者とは? 運行供用者の判断基準(運行支配・運行利益)自賠法が定める運行供用者・保有者・運転者の違い「誰を相手に損害賠償請求するか」が重要になるケースとは?相手が任意保険(対人・対物賠償保険)に加入しているときは、誰を相手に損害賠償請求するかは特に問題となりません。賠償資力を気にしなくてもよいからです。しかし、相手が任意保険に加入していない場合には、賠償資力が問題になり、誰を相手方として賠償請求するかが重要になります。加害者本人に賠償資力がなくても、例えば、加害者が仕事で車を運転していたときに起こした事故なら、勤務先の会社に損害賠償請求できることがあります。一般的には、個人よりも会社の方が資力がありますから、会社に請求することによって、損害賠償を受けられる可能性があるのです。交通事故に遭ったら、加害者の任意保険加入の有無と保険金額、車両保有者との関係、加害者の職業や運行の目的(会社の業務か否かなど)を確認しておくことが大切です。交通事故の被害者が事故現場でやっておくべき 3つのことまとめ誰に損害賠償請求できるかは、責任原因によって異なります。賠償義務者は、加害者本人(運転者)だけとは限りません。直接の加害者以外にも賠償請求できる場合があります。加害車両に自動車保険が付いており、運転していたのが被保険者であれば特に問題ありませんが、そうでない場合、誰に賠償請求するかは、十分な損害賠償金額を得られるかどうかに関わってきます。賠償義務者が複数いる場合は、それぞれの資力を調べた上で、もっとも適当な賠償義務者に請求することが大切です。お困りのことがあったら、今すぐ交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。早く弁護士に相談するほど、メリットが大きいのです!交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。あなたにおすすめのページ示談交渉までに被害者が準備しておくべき大切なこと交通事故被害者は弁護士にいつ相談するのがよいか交通事故の示談交渉を弁護士に頼む5つのメリット・1つのデメリット交渉力の違いだけでない! 弁護士の介入で賠償額が増える本当の理由とは?
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  • 車を貸す
    自動車の借主が起こした交通事故で貸主の運行供用者責任を問える?
    交通事故の相手は、知人から借りた自動車を運転中でした。相手の運転者が話にならないので、車の所有者に対して損害賠償請求を考えています。車の貸主の責任を問い、貸主に損害賠償請求できますか?家族や友人から借りた自動車を運転中に交通事故を起こした場合、車の貸主(持主)は、原則として「運行供用者責任」を負います。したがって、直接の加害者である運転者のほか、車の貸主に対しても損害賠償請求できます。ただし、使用貸借の具体的な事実関係によっては、貸主の運行供用者責任が否定される場合があります。判断が難しいケースがあるので、弁護士に相談することをおすすめします。貸主の損害賠償責任 2つのポイント家族や知人に車の使用を許諾した場合は、原則として、貸主は運行供用者責任を負います。使用貸借の具体的な事実関係によっては、貸主の運行供用者責任が否定される場合があります。詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。家族や友人に自動車を無償で一時的に貸した貸主の損害賠償責任加害車両の貸主(所有者)が、自賠法(自動車損害賠償保障法)第3条に定める運行供用者に該当すれば、貸主に対し損害賠償請求できます。運行供用者というためには、事故時の加害車両の運行について、運行を支配し、かつ、運行の利益が帰属していなければなりませんが、貸主が運行支配・運行利益を有していたことを、損害賠償請求する被害者の側が立証する必要はありません。貸主の側が「運行支配・運行利益を有していなかった」ことを立証しなければならず、被害者は、貸主が加害車両の所有権または使用権を有していたことを主張・立証すれば足りるとされています。原則として、貸主は「運行供用者責任」を負う家族や友人に一時的に車の使用を許諾したような場合は、貸主(所有者)に、運行支配も運行利益も残っていると考えられ、原則として、貸主は運行供用者としての責任を負うことになります。家族や友人に車を貸すときは、無料で短期間だけ貸すのが普通です。貸主と借主との間には緊密な人間関係があり、一定期間経過後に返還が予定され、貸主はいつでも返還を求めることができる状況にあります。そのため、貸主の運行支配は、貸出中も継続していると考えられ、さらに、貸主に経済的利益はないものの、運行利益があるとされます。つまり、借りた車を運転中に交通事故を起こした場合は、運転者はもちろん、車の貸主(所有者)も運行供用者であり、事故の賠償責任を負う運行供用者が、複数存在することになります。貸主は、貸した車が事故を起こしたとき、運行支配・運行利益を失っていたことを主張・立証しない限り、運行供用者責任を免れません。貸主の「運行供用者責任」を問えないケース借主が、予定の返還期限を著しく徒過して使用を継続したり、貸主に無断で第三者に転貸したような場合は、貸主の運行支配・運行利益が失われ、運行供用者責任が否定されることがあります。貸主の運行供用者責任を否定した事例を紹介します。貸主の運行供用者責任を否定した最高裁判例車の所有者A(貸主)は、友人B(借主)に、2時間後に返還するとの約束で自動車を無償で貸しました。ところが、借主Bは、約束に反して自動車を返還せず使用を継続し、約1ヵ月後に自動車を運転中に事故を起こしました。認定された事実関係は、こうです。借主Bは、もともと自動車を長期間乗り回す意図の下に、2時間後に確実に返還するかのように装い、貸主Aを欺いて自動車を借り受けた。借主Bは、返還期限を経過した後、たびたび貸主Aに電話をして、返還の意思もないのにその場しのぎの約束をして返還を引き延ばしていた。貸主Aは、借主Bから電話連絡を受けた都度、自動車を直ちに返還するよう求め、Bに使用の継続を許諾したものではなかった。こうした事実関係の下では、事故当時の自動車の運行は、専ら借主Bが支配しており、貸主Aは何らその運行を指示、制御し得る立場になく、その運行利益も貸主Aに帰属していたとはいえないことが明らかであるから、貸主Aは、自賠法3条にいう運行供用者に当たらないと解するのが相当である、と判示しました。最高裁判決(平成9年11月27日)この裁判の原原審は、貸主が「被害届を出す」などと言って強く返還を求めていれば、借主は車を返還していた可能性があったとして、貸主の運行供用者責任を認めました。それに対し、原審は、貸主は車を「だまし取られた」も同然で、借主から電話連絡がされている状況で盗難届を提出するのは困難であったとして、貸主の運行供用者責任を否定しました。最高裁も、原審の判断を是認しました。原審と最高裁は、事実関係から本件は泥棒運転に近いと判断したのです。この最高裁判例は、事実関係から貸主の運行供用者責任を否定しましたが、貸主が「借主の使用を黙認していた」とみられるような場合は、貸主の運行供用者責任が肯定されると考えられます。貸主が運行供用者責任を負うかどうかは、使用貸借の具体的な事実関係によって決まり、個別に判断することが必要です。貸主の運行供用者責任を否定した最高裁の結論に対し、所有者の回収努力が「早く返せ」というだけでは不十分であり、使用の継続を黙認していた一面も否定しがたいと、疑問を呈する指摘もあります。(別冊ジュリスト №152『交通事故判例百選・第四版』7ページ)貸主の運行供用者責任を否定する要素とは?一般的に、自動車を貸与した時点では、貸主の運行供用者責任が認められます。しかし、上記の最高裁判例のように、一定期間が経過した後、何らかの事情により貸主の運行支配・運行利益が失われる場合があります。どのような事実があれば、貸主の「運行を指示・制御しうる立場」が失われ、貸主の運行供用者責任が否定されることになるのでしょうか?この点について、山崎秀尚判事が「返還約束徒過後の貸主の運行供用者責任について」(判例タイムズ№1024)で検討しています。そのポイントをご紹介します。山崎秀尚判事は、返還期限徒過後に借主が交通事故を起こし、貸主の運行供用者責任が問題になった裁判例を分析し、「貸主の責任否定要素」として次の8つを挙げ、各要素の重要度を詳細に検討しています。①貸主と借主の人的関係の希薄性の程度4人的要素②借主と運転者の不一致③使用内容に関する欺罔行為の有無3態様的要素貸与時④貸主の意思と現実の使用との不一致の有無、程度1運行時⑤返還期限徒過後の経過時間の程度⑥借主側の運行費用の負担の有無、程度5⑦運行態様に対する貸主の指示とその違反の程度⑧返還に対する貸主の努力の有無、程度2返還期限徒過後の事情8つの「貸主の責任否定要素」のうち、重要な順序を赤数字で示しています。貸主の責任否定要素の重要度の順序貸主の責任否定要素として重要と考えられる順に見ていきましょう。最も重要な要素は、「④貸主の意思と現実の使用との不一致の有無、程度」です。借主と実際の使用者が異なる場合や、使用目的や使用期間が約束と違う場合などは、貸主が指示・制御できなくなることがあるからです。2番目に重要な要素は、「⑧返還に対する貸主の努力の有無、程度」です。返還期間を徒過したり、目的と異なった使用がなされたからといって、それだけで貸主が運行を指示・制御できなくなるわけではありません。返還手段を取りえない状況に至って初めて、指示・制御しうる立場にないといえます。3番目に重要な要素は、「③使用内容に関する欺罔行為の有無」です。これは、④を当初から当然に生じさせる点で重要な要素です。返還時期や使用者といった使用内容に関する欺罔は、貸主の指示・制御しうる立場に大きく影響し、貸主の運行支配・運行利益を否定する方向に働きます。とはいえ、貸主が返還に対する十分な努力を尽くしたうえで、考慮される要素となります。4番目は、「①貸主と借主の人的関係の希薄性の程度」です。①は、そもそも貸借関係において、制御可能性がないほど人的関係が希薄ということは考えにくいので、責任否定要素としてはそれほど大きくはありませんが、制御可能性に関わる要素です。5番目は、「⑥借主側の運行費用の負担の有無、程度」です。⑥は、別の観点からの判断要素で、その余の考慮材料となります。なお、②、⑤、⑦は、④の程度を検討する要素として、この順に重要とされます。どの要素が特に重要か?貸主の責任否定要素として重要な順にまとめると、④、⑧、③、①、⑥の順に重要であり、④の程度を検討する要素として、②、⑤、⑦の順に重要と考えられます。特に、④、⑧、③が認められれば、運行支配・運行利益を失ったとされる可能性が高いといえます。④、⑧のみで運行支配・運行利益を失ったと判断されることもあり得ます。②が認められると④の評価が大きくなり、加えて⑤が相当程度大きくなれば、④と⑧のみで運行支配・運行利益を失ったと評価されることはあり得ると考えられます。返還に対する貸主の努力の有無・程度返還に対する貸主の努力が十分でない場合は、返還期限徒過後の運行を黙認・追認していたとみなされる余地があります。すなわち、貸主は、運行供用者責任を免れることはできません。この点は、被害者の側からすれば重要です。どこまで努力すればよいかは、他の要素との関係で異なります。しかし、基本的には、人的関係を通じての追跡が困難となっただけでは足りず、警察に届けるか、少なくとも届出をしようと相談した程度の行動が必要と考えられます。自動車を貸与する場合、見ず知らずの人に貸すことは考えにくいので、警察に届け出ることまで要求するのは酷ではないか、という意見もありますが、貸主が運行供用者責任を負うか否かは、被害者にとっては自賠責保険金が支払われるか否かの問題です。自賠責保険制度は、そもそも被害者保護を目的としています。その政策的観点からすると、貸主の積極的な努力が要求されるのは当然でしょう。まとめ自動車の貸主は、原則として運行支配・運行利益を失いません。つまり、貸主には、原則として運行供用者責任があります。約束していたのと使用目的が違い、返還期限を著しく超えたからといって、ただちに貸主の責任が否定されることはなく、貸主が借主の運転を排除するための措置をとって初めて、その責任を免れると考えられます。貸主の運行供用者責任が否定されるケースは多くありませんが、使用貸借の具体的事情によっては、貸主の運行支配・運行利益が失われていたと判断され、運行供用者責任が否定されることもあります。貸主の運行供用者責任を問えるかどうかどうかは、具体的な事実関係をふまえて個別に判断する必要があります。判断が難しい場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連運行供用者とは?運行供用者の判断基準(運行支配・運行利益)【参考文献】・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 39~41ページ・『交通事故の法律知識 第4版』自由国民社 18ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 72~73ページ・『判定タイムズ№1024』 30~39ページ・別冊ジュリスト№152『交通事故判例百選 第4版』 6~7ページ・別冊ジュリスト№233『交通事故判例百選 第5版』 4~5ページ
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  • 盗難車
    盗難車・泥棒運転で交通事故を起こした場合の自動車所有者の責任
    交通事故の相手は、盗んだ自動車を運転していました。盗難車が起こした事故(泥棒運転者による事故)の場合も、自動車の所有者に対し、損害賠償請求することができますか?泥棒運転の場合は、原則として、車を盗まれた時点で所有者の運行支配が失われ、車両の所有者は運行供用者責任を負いません。ただし、ドアの鍵をせず、エンジンキーをつけたまま道路上に放置していた場合のように、客観的に見て、その車を第三者が運転するのを車両の所有者が容認したのと同視しうる状況がある場合は、所有者に運行支配が残っており、運行供用者責任があるとされます。なお、車両を盗まれた時点では所有者の運行支配が残っていたとしても、事故が起きたのが、盗難から時間が経ち、場所も離れているときは、所有者の責任が否定されることがあります。泥棒運転の場合の所有者の責任泥棒運転の場合は、原則として、車を盗まれた時点で所有者の運行支配が失われ、車両の所有者は運行供用者責任を負いません。ただし、自動車の保管状況や、事故と盗難との時間的近接性、盗難場所と事故現場の距離的近接性などから、所有者の責任が認められることもあります。詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。泥棒運転は無断運転より所有者の責任を追及するのが難しい泥棒運転事故は、無断運転事故よりも、所有者の運行供用者責任を追及することが難しくなります。それは、泥棒運転と無断運転の次のような違いにあります。無断運転というのは、自動車の所有者の同意を得ずに運転することですから、広い意味では泥棒運転も無断運転です。それでは、いわゆる無断運転と泥棒運転の違いは何かというと、①所有者と運転者との間に人的関係があるか否か、②あとで車を返す意思が運転者にあるか否かです。無断運転の場合無断運転の場合は、通常、所有者と無断運転者との間に、雇用関係があったり、家族・知人であるなど、人的関係があります。しかも、「ちょっとだけ拝借して、すぐに返そう」と、返還の意思があるものです。そのため、無断運転は、車の所有者の運行支配が認められやすく、所有者の運行供用者責任が肯定される傾向があります。泥棒運転の場合それに対して、泥棒運転の場合は、所有者と泥棒運転者の間に人的関係がないのが普通です。また、あとで車を返すつもりで盗む泥棒などいません。たいてい乗り捨てます。そのため、泥棒運転は、車を盗まれた時点で所有者の運行支配は失われたと考えられ、所有者の運行供用者責任を問うことは難しくなるのです。所有者と運転者の間に人的関係があったとしても、返還の意思なく、無断で使用したり、だまして借りたような場合は、泥棒運転に近くなります。泥棒運転者が事故を起こしたときの車両保有者の責任泥棒運転事故の場合は、原則として、車を盗まれた時点で保有者(所有者)の運行支配は失われ、保有者は運行供用者責任を負いません。しかし、車両保有者の運行供用者責任が認められないと、自賠責保険から保険金が支払われません。泥棒運転者には、通常、損害賠償資力がありませんから、被害者は損害賠償を受けられず救済されません。ですから、泥棒運転事故の被害者が損害賠償を受けるには、加害車両(盗難車両)の保有者の運行供用者責任が認められるかどうか、が大事なポイントになります。自賠責保険は、車両保有者に運行供用者責任が発生した場合に保険金を支払う仕組です。泥棒運転者本人は、運行供用者責任を負いますが、車両の保有者ではないため、自賠責保険から保険金は支払われません。泥棒運転事故で保有者の運行供用者責任を問えるケースとは?泥棒運転事故で、保有者の運行供用者責任を問えるのは、客観的に見て、第三者が車両を運転するのを保有者が容認したのと同視し得るような状況がある場合です。このように「客観的容認があった」といえる場合は、盗難車両であっても、保有者の運行支配が残っているとみなされ、保有者は運行供用者責任を負います。客観的容認があったかどうかを判断する際の重要な要素は、駐停車していた場所と、エンジンキーやドアロックの状況です。例えば、ドアに鍵をかけず、エンジンキーをつけたまま路上に放置していた場合は、客観的容認が肯定されます。道路に面した空地や囲いのない青空駐車場など、第三者の自由な出入りが可能な場所に、エンジンキーをつけたまま、ドアロックをせず駐停車していた場合も、客観的容認が肯定される傾向にあります。それに対して、周囲を塀等で囲まれ、第三者の自由な出入りが禁止されている場所に駐停車している場合には、エンジンキーをつけたままであったり、ドアロックをしていなかったとしても、客観的容認は否定されます。タクシー会社の構内駐車場に、エンジンキーを差し込んだまま、ドアに鍵をかけず駐車していたタクシー車両を、第三者が盗み出して起こした事故について、所有者であるタクシー会社の運行供用者責任を否定した事例があります。最高裁判決( 昭和48年12月20日)保有者の運行支配は減衰する客観的容認があり、盗まれた時点では保有者の運行支配が残っていたとみなされる場合でも、盗難に遭ってからの時間の経過や走行距離の拡大により、保有者の運行支配は次第に失われていきます。どれくらい経過すれば、保有者の運行支配が喪失するか明確な基準はなく、盗難後の具体的な運行状況や所有者のとった措置などから、総合的に判断します。距離的にはガソリン満タンでの走行範囲、時間的には3~4日が限界という指摘もあります(※)。それを超えると、保有者の運行支配は失われ、保有者の運行供用者責任が否定されます。(※『実務精選100 交通事故判例解説』第一法規 9ページ)警察へ盗難被害届を提出していることも、保有者の運行支配を否定する重要な要素となります。保有者の運行供用者責任が否定された場合保有者の運行供用者責任が認められない場合は、自賠責保険から保険金(損害賠償額)は支払われません。直接の加害者である運転者から損害賠償を受けられない場合は、政府保障事業に損害の填補を請求することができます。政府保障事業は、ひき逃げや無保険車など、自賠責保険で被害者が救済されない場合に、国が代わって損害を填補する制度です。自賠責保険なみの補償を受けられます。また、自身の任意自動車保険に人身傷害保険を付けていれば、人身傷害保険金を請求することができます。弁護士に頼めば、保有者の運行供用者責任を追及できる場合もありますから、どうするのがよいか、一度、弁護士に相談することをおすすめします。まとめ泥棒運転事故(窃盗車両事故)の場合、原則として、車を盗まれた時点で所有者の運行支配が失われると考えられ、所有者の運行供用者責任を問うことは困難です。ただし、車両の盗難に客観的容認があったと判断でき、盗難に遭ってから、あまり時間が経過しておらず、盗難場所からあまり離れていない所で事故が起きた場合は、保有者の運行支配が残っていると考えられ、保有者の運行供用者責任を追及することができます。盗難車両の起こした事故の場合、加害車両の保有者の運行供用者責任が認められなければ、自賠責保険から保険金は支払われません。保有者の運行供用者責任が認められるか否かは、自賠責保険から保険金(損害賠償額)が支払われるか否かに関わる重要なポイントです。お困りのときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連運行供用者とは?運行供用者の判断基準(運行支配・運行利益)【参考文献】・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 46~52ページ・『別冊ジュリスト№152 交通事故判例百選 第4版』有斐閣 18~19ページ・『別冊Jurist№233 交通事故判例百選 第5版』有斐閣 12~13ページ・『実務精選100 交通事故判例解説』第一法規 8~9ページ・『交通事故の法律知識 第4版』自由国民社 21ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 83ページ
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  • 運行供用者
    運行供用者とは?運行供用者の判断基準(運行支配・運行利益)
    自動車の運行による人身事故で怪我をした被害者は、加害車両の運行供用者に対して、自賠法(自動車損害賠償保障法)3条に基づき、損害賠償を請求できます。このとき問題になるのは、運行供用者はだれか、ということです。運行供用者とは?どんな人が運行供用者にあたるのか?運行供用者に該当するかの判断基準は?裁判例の動向もふまえて、詳しく見ていきましょう。運行供用者とは?自賠法は、自動車で人身事故を起こしたときの損害賠償責任について、次のように定めています。自動車損害賠償保障法 3条自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。この条文中の「自己のために自動車を運行の用に供する者」が、いわゆる「運行供用者」です。ただし、自賠法には、自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)の定義規定がなく、運行供用者がどのような者であるか、一義的には明らかでありません。そのため、損害賠償請求する相手方である運行供用者について、判例に基づいて判断することになります。では、運行供用者とは、どんな人が該当するのか?運行供用者の判断基準自賠法の立案担当者の考え方や最高裁判例をもとに、運行供用者の判断基準について、見ていきましょう。自賠法立案担当者の考え方運行供用者について、自賠法の立案担当者は、こう説明しています。「自己のために」というのは、自動車の運行についての支配権とそれによる利益が自己に帰属するということを意味する。従って、この者は、通常自動車の保有者であり、例えば、会社の業務のために自動車を運行している場合には、運行供用者は、運転していた者ではなく、会社になる。(国土交通省物流・自動車局 保障制度参事官室監修『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 35ページ)通常自動車の所有者または使用者等のように、自動車の使用について支配権を有し、かつ、その使用によって利益を受ける者を指している。(運輸省自動車局編『自動車損害賠償保障法の解説』大蔵省印刷局1955年 29ページ)最高裁判例による判断基準最高裁は、次のような判断基準を示しています。最高裁判決(昭和43年(1968年)9月24日)自賠法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する。この判決は、最高裁が「自己のために自動車を運行の用に供する者」について、「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者」と明示して判断の枠組みを提示した点で、実務上重要な意義があります。運行供用者が損害の賠償責任を負う根拠は、「危険責任」と「報償責任」にあると理解されています。運行支配は「危険責任」から、運行利益は「報償責任」から導かれる要素であり、このことから、運行支配と運行利益を有する者が、運行供用者とされているのです。危険責任危険物の管理者は、危険物から発生した損害に責任を負うべきという考え方です。自動車の運行という危険性を有するものを支配している者が、損害賠償責任を負うということです。報償責任利益を上げる過程で従業員等が他人に与えた損害は、利益を得る者が負担すべきという考え方です。自動車を運行することによって利益を受ける者が、損害賠償責任を負うということです。このように、運行支配と運行利益の2つの要素から運行供用者性を判断する考え方は「二元説」と呼ばれ、その後の裁判例でも踏襲されており、自賠法の立案担当者の考えていたところにも沿うもので、現在の判例・通説となっています。ただし、運行支配と運行利益の2つの要素を運行供用者性の判断基準とするとしても、具体的にどのように判断すべきか、運行支配と運行利益の内容が問題となります。さらに最高裁判例を見ていきましょう。運行供用者は被害者保護の観点から広く認められるように運行支配と運行利益は、現実的な支配や利益である必要はなく、その内容は抽象化され、広く認められるようになってきています。運行支配の判断運行支配の内容については、当初は「直接的・現実的支配」を要するとしていましたが、被害者保護の観点から、次第に拡大して解されるように変化しています。上記の最高裁判決(昭和43年9月24日)は、子が所有する自動車を父親が借り受け、父親が自己の営業に常時使用していて事故を起こした事案について、運行支配と運行利益を判断基準として明示し、子は「自動車の運行自体について直接の支配力を及ぼしえない関係にあった」として、加害車両の所有者である子の運行供用者性を否定しました。しかし、このように支配の直接性を要求すると、被害者を救済できないことになり、被害者保護のために損害賠償責任を「加害運転者」でなく「加害車両の運行供用者」に負わせることとした意味が失われてしまいます。その後の判例では、自動車の運行を直接的・現実的に支配していなくても、間接支配・支配の可能性で足り、客観的・外形的支配、事実上の支配、自動車の運行について指示・制御をなしうべき地位にあればよい、というふうに運行支配の内容が修正されていきます。さらに、自動車の運行を事実上支配・管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視し、監督すべき立場にある場合や、第三者による運転を容認していた場合にも、客観的外形的に運行支配に当たると解して、運行供用者に該当すると判断しています。おもな最高裁判例を挙げておきましょう。最高裁第二小法廷判決(昭和43年10月18日)貸金の担保として自動車を預かった者(A)の従業員(B)が無断でその車を運転し、事故を起こした事案です。(A)は「事実上本件自動車の運行を支配管理し得る地位にあった」といえ、従業員(B)が無断で私用運転して事故を起こした場合でも、「客観的には(A)による運行支配可能な範囲に属し、(A)は右運行により起こった事故につき保有者としての賠償責任を免れない」としました。最高裁第二小法廷判決( 昭和44年9月12日)自動車修理業者が修理のため預かっていた自動車を、その従業員が私用のため無断で運転して事故を起こした事案です。「自動車修理業者が修理のため自動車を預かつた場合には、少なくとも修理や試運転に必要な範囲での運転行為を委ねられ、営業上自己の支配下に置いているものと解すべきであり」、その被用者による運行は「客観的には使用者たる修理業者の支配関係に基づき、その者のためにされたものと認めるのが相当であるから」、修理業者は「本件事故につき、自動車損害賠償保障法3条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者としての損害賠償責任を免れない」としました。最高裁第一小法廷判決(昭和45年7月16日)父と子(兄・妹)が同居し、家族で雑貨店とガソリンスタンドを営業。妹が、近所の怪我人を病院へ運ぶため、兄所有・家業にも使用している自動車を独断で運転し、事故を起こした事案です。自動車の所有者である兄はもとより、一家の責任者として家業を総括していた父も、「自動車の運行について指示・制御をなしうべき地位にあり、かつ、その運行による利益を享受していたものということができる」として、父および兄の両名が運行供用者に当たるとしました。最高裁第三小法廷判決(昭和46年11月9日)レンタカーを借りた者が事故を起こした事案です。レンタカー業者が、利用申込者につき、運転免許その他一定の利用資格の有無を審査し、契約において、使用時間や方法の定め、料金額の定め、走行区域や制限走行距離の遵守などの義務づけがあるときは、レンタカー業者は「本件自動車に対する運行支配および運行利益を有していたということができ、自賠法3条所定の運行供用者としての責任を免れない」としました。最高裁第三小法廷判決(昭和50年11月28日)「自動車の所有者から依頼されて自動車の所有者登録名義人となつた者が、登録名義人となつた経緯、所有者との身分関係、自動車の保管場所その他諸般の事情に照らし、自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にある場合には、右登録名義人は、自動車損害賠償補償法3条所定の自己のために自動車を運行の用に供する者にあたると解すべきである」と、判断の枠組みを示しました。そのうえで、父と同居して家業である農業に従事する20歳の子が所有し、父の居宅の庭に保管されている自動車につき、子が父の了解を得ることなく父を所有者登録名義人とし、その後了承を得ていたところ、子が事故を起こしたという事案につき、父は「本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあったのであって、右自動車の運行供用者に当たると解するのを相当とする」としました。最高裁第二小法廷判決(平成20年9月12日)Aが、父親B所有の自動車に友人Cを乗せて深夜バーに赴き、Cと共に飲酒。Aが泥酔して寝込んでしまったので、Cがバーのカウンター上に置かれていたキーを使用してAを同自動車に乗せて運転し、事故を起こした事案です。Aによる「運行はBの容認するところであったと解することができ」、飲酒したAが「友人等に本件自動車の運転を委ねることも、その容認の範囲内であったと見られてもやむを得ないというべきである」として、所有者Bは「客観的外形的に見て、本件運行について、運行供用者に当たると解するのが相当である」としました。最高裁第一小法廷判決(平成30年12月17日)Aは、生活保護を受けていたため、自動車を購入する際、自己の名義で所有すると生活保護を受けられなくなるおそれがあると考え、弟Bに名義貸与を依頼。Bの承諾のもと、Aは自動車を購入し、所有者および使用者の名義をBとしました。その自動車をBが運転中に、事故を起こした事案です。AとBは、住居・生計を別にし、疎遠で、Bは、本件自動車を使用したことはなく、その保管場所も知らず、本件自動車の売買代金、維持費等を負担したこともありませんでした。このような事実関係のもと、BのAに対する「名義貸与は、事実上困難であったAによる本件自動車の所有及び使用を可能にし,自動車の運転に伴う危険の発生に寄与するものといえる。また、BがAの依頼を拒むことができなかったなどの事情もうかがわれない。そうすると、…… BとAとが住居及び生計を別にしていたなどの事情があったとしても、Bは、Aによる本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあったというべきである。したがって、Bは、本件自動車の運行について、運行供用者に当たると解するのが相当である」としました。運行利益の判断運行利益の内容についても、現実的・具体的に運行による利益を享受するかどうかでなく、客観化・抽象化されています。また、運行供用者に該当するかについては、運行支配と運行利益の2つの要素を判断基準としつつも、実際には、運行支配を中心に運行供用者性を判断しているといえます。重要な判例として、昭和46年7月1日の最高裁判決がよく挙げられます。無断私用運転中の事故でも、所有者に運行利益があるとした事例です。運行利益について、運行を全体として客観的に観察して、所有者のためにされていれば足りるとし、二元説でも、運行支配が重要であることを明らかにしたのです。最高裁第一小法廷判決(昭和46年7月1日) 小規模の信用協同組合の常務理事Aが、長期出張に際し、同組合営業部長Bに、A所有の自動車を修理に出すよう委託し、修理工場への往復にはBの指示により組合従業員が運転にあたることを予想しつつ、不在中の自動車の管理をBに一任。Bから指示を受けた組合従業員Cが、組合の見習で自動車運転の業務にも従事していたDと相談のうえ、自動車を無断使用したのち組合事務所に届けておくこととし、Dが、修理の終わった自動車を修理工場から受け取り、Cを同乗させ運転して私用に赴いたのち、翌朝組合事務所への帰途に事故を起こしたという事案です。「運行を全体として客観的に観察するとき、本件自動車の運行がAのためになされていたものと認めることができる」とし、無断私用運転中の事故でも、所有者Aに運行利益があるとされました。「原判決が運行利益の帰属の有無について判断をしていないことを違法」とする主張に対し、最高裁は、「原判決も、このような趣旨において、前示事実関係を判示することにより、とくにAへの運行利益の帰属につき説示することがないとしても、おのずから、これを肯定したものと解することができる」としました。運行支配と運行利益の関係については、次のような指摘があります。自動車事故による損害に対する責任として重視されるべきは、自動車という危険物の利用に係る危険責任であり、自動車の運行を支配し、または支配し得べき立場にある者は、通常、その自動車の運行により何らかの利益を得ているはずであるから、運行支配に重点を置き、運行利益は補完的なもとの捉えることができる。(佐久間邦夫=八木一洋編『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院45ページ、森冨義明=村主隆行編著『交通関係訴訟の実務』商事法務88ページ)運行供用者に当たるか否かが問題となる主なケース運行供用者に該当するかが問題となる主なケースについて、判例がどのような判断を示しているか、まとめておきます。レンタカー業者レンタカー業者は、一般的に運行供用者に当たります(最高裁昭和46年11月9日判決、最高裁昭和50年5月29日判決)。この場合、レンタカー利用者も運行供用者に当たるので、運行供用者は複数いることになります。ただし、利用者が返却期限を大幅に超えて自動車を返却せず、レンタカー業者の支配管理可能性が失われたと認められる場合には、レンタカー業者の運行供用者性が否定されることもあります。リース会社リース会社は、基本的に運行供用者に当たりません。自動車の所有権はリース会社にありますが、単に割賦金の支払いを担保するためであり、ユーザーが自動車の管理支配権を全面的に有していると考えられるからです。ただし、契約にリース会社が自動車の運行を管理し得るような条項が含まれていたり、リース会社とユーザーとが一体のものと評価し得るような事情が存在するような場合は、リース会社も運行供用者に当たり得ます。自動車修理業者自動車が修理のために自動車修理業者に預けられている間は、修理業者がその運行を支配すると解され、修理を終えた自動車が修理業者から注文者に返還されたときには、特段の事情のないかぎり、その引渡の時以後の運行は注文者の支配下にあるものと解されます。したがって、自動車修理業者が修理のため預かった自動車を、その従業員が運転して事故を起こした場合には、それが従業員による無断私用運転であったとしても、修理業者が運行供用者責任を負います(最高裁昭和44年9月12日判決)。割賦販売における留保所有権者所有権留保特約付割賦販売契約によって売買された自動車が事故を起こした場合、所有権留保権者である自動車販売会社や信販会社の運行供用者性は、原則として否定されます(最高裁昭和46年1月26日判決)。所有権を留保した割賦販売業者(留保所有権者)は、代金債権の確保のために所有権を留保しているに過ぎず、自動車を引き渡して以降は、自動車に対する運行支配をしていないし、運行により利益を得ているわけでもないからです。使用貸借における貸主車の所有者から無償で車を借り受けたものが事故を起こした場合、原則として貸主(所有者)は運行供用者となります。貸与期間が比較的短期間で、その間に事故を起こした場合には、貸主(所有者)の運行供用者性が肯定されています(最高裁昭和46年1月26日判決)。他方、予定された貸与期間を著しく経過し、所有者が返還を求めて具体的な行動を起こしていたような場合には、貸主の運行支配は失われ、運行供用者ではなくなると考えられます(最高裁平成9年11月27日判決)。自動車を無償で貸与し、借主が事故を起こした場合の貸主の運行供用者責任については、貸主と借主との関係、貸与の目的、貸与期間の長短、返還期限の到来の有無、到来後の経過期間等の諸事情を総合考慮し、貸主の運行支配がどの程度及んでいるか、という観点から判断されます。借主のさらに友人が運転して事故を起こした場合にも、その運行が貸主(所有者)の容認の範囲内にあったと認められる場合には、貸主(所有者)の運行供用者性が肯定されています(最高裁平成20年9月12日判決)。なお、借主は運行供用者となるので、貸主も運行供用者となる場合には、運行供用者は複数いることになります。さらに詳しくは、次をご覧ください。自動車の借主が起こした事故で貸主の運行供用者責任を問えるか?無断運転された所有者無断運転者が、自動車の所有者と雇用関係や親族関係にある場合、客観的・外形的に所有者の権限に基づく支配内での運行といえ、所有者のための運転といえることから、特段の事情がない限り、運行供用者責任を免れないとする傾向にあります。無断私用運転というだけでは、特段の事情に当たらないとされています(最高裁昭和44年9月12日判決)。また、所有者に客観的容認があったと評価されてもやむを得ないような事情があれば、運行供用者性が肯定されます(最高裁平成20年9月12日判決)。容認の内容については、所有者が自動車を他人に使用させる意思を有していた場合(=主観的容認)だけではなく、客観的・外形的に容認していたと評価されてもやむを得ない事情がある場合(=客観的容認)も含まれると解されており、容認は、客観化・抽象化されています。なお、無断運転者も、運行供用者となります。さらに詳しくは、次をご覧ください。会社の車を従業員が無断運転して交通事故を起こしたときの会社の責任泥棒運転された所有者第三者による泥棒運転の場合、盗難被害にあった車両の所有者は、盗難被害車の運行を指示制御すべき立場になく、運行利益も帰属していないため、原則として、運行供用者責任を負わないとされていました(最高裁昭和48年12月20日判決)。現在は、盗難場所(第三者が容易に立ち入れる場所であるかなど)、車両管理状態(ドアロックやエンジンキーの状況など)、事故の状況(盗難から事故発生までの時間的・場所的関係など)、盗難発覚後の被害者の行動(警察への被害届の提出など)により判断し、所有者の運行供用者性が肯定されることがあります(最高裁昭和57年4月2日判決)。駐車場所、車両の管理状況、泥棒運転の経緯・態様などを総合的に考慮し、客観的に見て、所有者において第三者が車両を運転するのを「容認」したのと同視し得るような状況がある場合には、所有者の運行供用者性が肯定されます。なお、車を盗んで運転した泥棒運転者は、運行供用者に当たります。さらに詳しくは、次をご覧ください。盗難車・泥棒運転で交通事故を起こした場合の自動車所有者の責任名義貸与者名義貸与の依頼を承諾して、自動車の名義上の所有者兼使用者となった者(名義貸与者)は、「自動車の運行を事実上支配管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視監督すべき立場」にある場合には、運行供用者責任が肯定されます(最高裁昭和50年11月28日判決、最高裁平成30年12月17日判決)。従来、購入資金等の関係で名義を貸しているだけの者は、運行供用者責任を負わないとする裁判例がありましたが、現在は、名義貸与者が運行供用者責任を免れるのは難しくなっています。なお、すでに自動車を売却して引き渡しも終えている、単なる名義残り(名義書換未了)の場合は、名義人の運行支配・運行利益は認められず、運行供用者責任は否定されます。運転代行業者運転代行業者は、自動車の使用権を有する者の依頼を受けて、その者を同乗させ、自動車を同人の自宅まで運転する業務を有償で引き受け、代行運転者を派遣して業務を行わせるものですから、運行供用者として認められます(最高裁平成9年10月31日判決)。従業員がマイカーで事故を起こしたときの雇用主従業員のマイカーの使用は、基本的には雇用主が関与しないところですから、従業員がマイカーで仕事中や通勤途中に事故を起こした場合、雇用主の運行供用者責任は、原則として否定されます。ただし、その車両が日常的に会社の業務に利用され、雇用主もこれを容認していたような事情がある場合には、雇用主の運行供用者責任が肯定される傾向にあります(最高裁昭和52年12月22日判決、最高裁平成元年6月6日判決)。まとめ運行供用者とは、自動車の運行について運行支配と運行利益が帰属する者とされています。自動車の運行を支配し、運行によって利益を享受する者が、運行供用者です。ポイントとなるのは運行支配・運行利益の内容ですが、現実的な支配や利益である必要はなく、かなり抽象化されています。運行支配については、直接的・現実的な支配が認められなくても、客観的・外形的に見て、事故車両を事実上支配ないし管理制御できる地位、あるいは規範的に見て間接的な支配ないしその可能性があれば足り、運行利益についても、何らかの社会的な利益があれば足りるとし、被害者の保護を厚くする方向で判断されています。運行供用者であるか否かが争点となることは、現在では多くはありません。自動車の所有者を相手に賠償請求すれば、運行供用者責任が否定されることは、まずないからです。運行供用者に該当するか否かが問題となる場合は、裁判例に基づき検討する必要がありますから、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『実務精選100 交通事故判例解説』第一法規 2~25ページ・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 254~261ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 66~69ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 44~51ページ・『交通事故判例140』学陽書房 8~13ページ・『交通事故損害賠償法 第3版』弘文堂 28~69ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 10~13ページ、39~68ページ・『判例タイムズ№228』115ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 87~98ページ・『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 35~36ページ、83~95ページ・『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第3版』光文堂 20~40ページ・『交通事故実務入門』司法協会 36~38ページ・『改訂版 交通事故事件の実務―裁判官の視点―』新日本法規 11~26ページ・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集―交通事故編―』第一法規 63~65ページ・『交通事故紛争解決法理の到達点』第一法規 206~252ページ
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  • 運行によって
    自動車の「運行によって」とは?運行起因性が認められる要件
    自賠法(自動車損害賠償保障法)における損害賠償責任の発生要件は、自動車の「運行によって」人身事故が発生することです。したがって、自賠法にもとづく損害賠償請求を行う場合は、その事故が「自動車の運行によって」生じたと認められなければなりません。つまり、「自動車の運行によって」をどう解釈するか、が問題となります。「運行によって」(運行起因性)については、「運行」と「によって」に分けて論じられることが多いので、ここでも分けて整理します。「運行によって」の「運行」とは?まず「運行」についてです。自賠法は、「運行」を次のように定義しています。自賠法2条2項この法律で「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。運行に当たるかどうかを判断する際、人や物を運送するかどうかは関係ありません。人や物を運送しない運行もあります。例えば、広報宣伝活動やパトロール活動などのために自動車を走行させる場合です。また、走行中でなくても、運行に当たる場合があります。運行に当たるかどうかが問題となるのは、多くは駐停車中の事故です。運行に当たるかどうかの判断は、「自動車を当該装置の用い方に従い用いること」の解釈によります。実は、これには様々な解釈があります。「当該装置」とは?ここでいう「当該装置」とは、自動車のエンジンその他の走行装置に限らず、クレーン車のクレーンのような固有装置も含むとされています。当該装置の「用い方に従い用いる」とは、当該装置を本来の目的に従って使用することです。これを「固有装置説」といい、現在の通説・判例とされています。「当該装置」の解釈には、固有装置説のほかに、原動機説、走行装置説、車自体説などがあります。各学説については、あとで詳しく説明します。自賠法の「運行」は、道路以外の場所も含む自賠法における「運行」の定義は、道路運送車両法における「運行」の定義と比べると、適用範囲が広くなっています。道路運送車両法では「運行」を次のように定義しています。道路運送車両法2条5項この法律で「運行」とは、人又は物品を運送するとしないとにかかわらず、道路運送車両を当該装置の用い方に従い用いること(道路以外の場所のみにおいて用いることを除く。)をいう。道路運送車両法では「道路以外の場所のみにおいて用いることを除く」のに対し、自賠法では場所的限定はありません。自賠法では、自動車を道路以外の場所で用いることも運行に当たります。例えば、工場の敷地等のみで自動車を用いる場合は、道路運送車両法の運行には当たりませんが、自賠法では運行に当たります。したがって、道路以外の場所での自動車の運行による人身事故も、自賠法3条による損害賠償責任が発生します。「自賠法の運行」は「道路運送車両法の運行」より範囲が広い(自賠法)2条2項にいう運行とは、道路運送車両法2条5項にいう運行よりも範囲が広く、工場敷地内や公園等道路以外の場所のみで自動車を当該装置の用法に従い用いる場合をも含むものと解すべきである…(最高裁第二小法廷判決・昭和48年7月6日)「運行によって」の「によって」とは?次に、「運行によって」の「によって」についてです。運行「によって」の解釈「によって」の解釈をめぐっては、大別して次の3つの見解があります。相当因果関係説運行と事故との間に相当因果関係が必要とする見解事実的因果関係説運行と事故との間に事実的な因果関係(その運行がなければ、その事故は発生しなかったであろうという関係)があれば足りるとする見解運行に際して説「運行によって」を「運行に際して」と解し、運行に際して事故が発生したものであればよいとする見解通説・判例は、相当因果関係説をとっています。民法709条(不法行為責任)の「故意または過失によって」と同じく相当因果関係を意味していると解されています。最高裁第三小法廷判決・昭和43年10月8日自動車損害賠償保障法3条は、自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる旨を定めているところ、右にいう「運行によって」とは運行と被害との間に因果関係があることを要するものと解すべきである。最高裁第三小法廷判決・昭和54年7月24日バスの右折と本件衝突事故との間に相当因果関係があるとした原審の判断は、正当として是認することができる。運行起因性が認められるケース・認められないケース自動車の運行と事故の間に相当因果関係が認められるということは、「運行起因性」が認められるということです。走行中の積荷の落下、油漏れによる後継者のスリップ事故、石をはじき歩行者を受傷させた場合などは、運行との因果関係が認められます。走行中に運転者または乗客が車外に物を投棄したことによる事故は、自賠責保険実務では、運行による事故とは認めていません。(参考:損害保険料率算出機構編『自賠責保険のすべて13訂版』保険毎日新聞社 92ページ)運行・運行起因性の解釈の変遷先にも紹介したように、自賠法2条2項は、運行とは「自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう」と定義しています。「当該装置」の解釈には、①原動機説、②走行装置説、③固有装置説、④車自体説があります。判例・通説は、原動機説、走行装置説を経て、現在は固有装置説に立っているとされます。近時は、「当該装置」の解釈にとらわれず、自賠法の趣旨・目的から運行起因性が認められるか否かを判断しようとする⑤危険性説、⑥固有危険性具体化説が有力です。今では「過去の見解」となっているものもありますが、現在の考え方を知るうえで重要ですので、各見解を簡単に紹介しておきます。原動機説自賠法2条1項、道路運送車両法2条2項において、「自動車とは、原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具」と定義していることから、「当該装置」は原動機装置(エンジンなど)を意味すると捉え、運行は、自動車を原動機の作用により移動させること、とする見解が「原動機説」です。原動機説によると、原動機によらない走行や、駐停車している状態は、運行に当たりません。原動機説は、運行供用者責任の成立範囲が狭く、被害者救済の観点から問題があるとされ、現在では、過去の見解とされています。走行装置説「当該装置」には原動機装置のほか、操向装置(ハンドル)や制動装置(ブレーキ)など走行と不可分の装置も含まれると捉え、運行は、走行装置を操作しながら走行すること、とする見解が「走行装置説」です。走行装置説によると、エンジンが故障して他の車にロープで牽引されている状態(原動機の作用によらない走行)であっても、ハンドルやブレーキ等を操作して走行していれば運行に当たります。しかし、走行装置説では、車両を駐停車した状態で、クレーン車のクレーンを操作したり、積荷の積み降ろしをすることなどは、運行に当たりません。走行装置説は、原動機説を一歩進めたものといえますが、原動機説と同様、運行供用者責任の成立範囲が狭くなるため、現在では、過去の見解とされています。「当該装置」には原動機だけでなく他の走行装置も含むとした裁判例運行の定義として定められた「当該装置」とは、エンジン装置、即ち原動機装置に重点をおくものではあるが、必ずしも右装置にのみ限定する趣旨ではなく、ハンドル装置、ブレーキ装置などの走行装置もこれに含まれる。(最高裁第三小法廷判決・昭和43年10月8日)固有装置説「当該装置」は、当該自動車に固有の装置を意味し、原動機装置や走行装置、ドア等の自動車の構造上設備されている各装置や、クレーン車のクレーン等も含まれると捉え、運行は、これらの装置の全部または一部をその目的に従って使用すること、とする見解が「固有装置説」です。固有装置説によると、走行中に限らず駐停車中であっても、ドアの開閉、クレーン車のクレーン操作、積荷の積み降ろし等も、固有装置の使用と捉えることができれば、運行に当たります。しかし、固有装置を使用していない単なる駐停車の状態の場合には、運行と解することは困難です。走行停止の状態で、クレーン車のクレーン操作が運行に当たるとされた事例自動車損害賠償保障法2条2項にいう「自動車を当該装置の用い方に従い用いること」には、自動車をエンジンその他の走行装置により位置の移動を伴う走行状態におく場合だけでなく、特殊自動車であるクレーン車を走行停止の状態におき、操縦者において、固有の装置であるクレーンをその目的に従って操作する場合をも含む。(最高裁第一小法廷判決・昭和52年11月24日)荷降ろし作業が運行に当たるとされた事例右事実関係のもとにおいては、右枕木が装置されている荷台は、本件車両(普通貨物自動車)の固有の装置というに妨げなく、また、本件荷降ろし作業は、直接的にはフォークリフトを用いてされたものであるにせよ、併せて右荷台をその目的に従って使用することによって行われたものというべきであるから、本件事故は、本件車両を「当該装置の用い方に従い用いること」によって生じたものということができる。(最高裁第一小法廷判決・昭和63年6月16日)昭和52年判決は、クレーン車を走行停止の状態におき、固有の装置であるクレーンを「その目的に従って操作する場合」も運行に含むと判示しました。この判決は、最高裁が固有装置説を採ったリーディングケースとして、重要な位置を占めています。昭和63年判決では、枕木が設置された荷台が当該車両の固有の装置に当たるとしたうえで、荷台を「その目的に従って使用すること」によって生じた事故につき、運行起因性を肯定しました。つまり、当該自動車の固有装置の操作・操縦でなくても、固有装置が本来的用法に従って使用されていれば、運行起因性を肯定し得ると、解釈が拡張されました。車自体説・車庫出入説「車自体説」「車庫出入説(車庫から車庫説)」は、「当該装置」を自動車それ自体と捉え、自動車が車庫を出て車庫に戻るまでの間が運行に当たるとする見解です。車庫を出て車庫に戻るまでは、途中で駐停車により路上にとどまる状態にある場合でも、自動車の使用は継続しているとして、運行に当たります。車自体説は、運行の概念を固有装置説より広く捉える見解です。もっとも、固有装置説は、固有の装置の意義・範囲が明確でないため、固有の装置を広く捉えれば、車自体説と異ならない結論にもなり得ます。上記の昭和63年判決は、「枕木が装置されている荷台」と限定的に貨物自動車の荷台を固有の装置と認めていますが、荷台を固有装置と認めるうえで、枕木の設置がどの程度重要なファクターであるのかは疑わしいとして、判例は「実質的には車自体説に近づいたものとなっているように思われる」との指摘もあります。(参考:北河隆之『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 69ページ)危険性説「危険性説」とは、「当該装置」の解釈にとらわれることなく、自動車そのものに内在する危険性を現実化すること(他人の生命・身体に害を加える危険性を持つ状態に自動車を置く行為)を運行と考える見解です。そもそも自賠法の趣旨・目的は、自動車に内在する「人の生命・身体を害する危険性」が現実化した場合に、被害者を保護することです(自賠法1条)。自賠法の趣旨・目的に立ち返って、運行起因性を実質的に考えよう、とするものです。現在の有力な考え方とは?判例・通説は「固有装置説」とされていますが、近時は「固有危険性具体化説」が有力です。固有装置説と危険性説を合わせたようなものです。固有危険性具体化説固有危険性具体化説とは、自動車に設備された装置を本来的用法に従って使用し、自動車固有の危険性(自動車に内在する人の生命・身体を害する危険性)を具体化させる行為を運行と考える見解です。事故当時の状況や事故の性質・内容等の諸般の事情(すなわち相当因果関係の有無)を考慮し、自動車に備えられた装置を本来的用法に従って使用した行為が、自動車固有の危険性を具体化させるものと言えるか否かを実質的に判断します。固有危険性具体化説による最高裁判例固有危険性具体化説によった最高裁判例として、次のものがあります。最高裁第二小法廷判決(平成28年3月4日)老人デイサービスセンターの利用者が当該センターの送迎車から降車し着地する際に負傷したという事故につき、送迎車の運転を担当したセンターの職員が降車場所として危険な場所に送迎車を停車しておらず、上記利用者が送迎車から降車した際に上記職員による介助を受けるという当該送迎車の危険が現実化しないような一般的な措置がされていたなどの事情の下においては、当該送迎車の運行が本来的に有する危険が顕在化したものであるということはできず、本件事故が当該送迎車の運行に起因するものとはいえない。本件は、任意自動車保険の搭乗者傷害特約の支払要件に関する事案です。同特約では、「被保険自動車の運行に起因する事故」を保険金の支払要件としています。この「被保険自動車の運行に起因する」は、自賠法の「自動車の運行によって」と同義と解されています。したがって、本判決は、自賠法における「自動車の運行によって」の解釈に関する最高裁の判断でもあるのです。この判決は、運行起因性の判断について、「車両の運行が本来的に有する危険が顕在化した事故であると評価されるか否か」ということが判断基準となることを最高裁が明らかにしたものと解され、固有危険性具体化説によったものと考えられています。東京地裁民事27部(交通部)は、現在この立場に立って運行起因性を解釈しているとされています。(参考:『実務精選100交通事故判例解説』第一法規 29ページ)運行起因性が認められる場合の例運行起因性が認められる可能性のある例を挙げておきます。あくまで一般論ですから、個別事案の判断は、弁護士にご相談ください。走行中車両同士の衝突、車両と歩行者・自転車などとの衝突は、自動車という危険物による事故なので、運行による事故と認められます。無接触であっても、自動車の走行が危険を与えた場合は、運行による事故と解されます。エンジンの故障によりロープ等で牽引され、自らのハンドル操作等により操縦の自由を有する場合、被牽引車両が起こした事故については、被牽引車両自体の運行行為となります。特殊自動車等の固有装置クレーン車のクレーン、ダンプカーのダンプ、ショベルカーのショベル、ミキサー車のミキサー等、これらの装置の操作に起因した事故については、運行による事故と解されます。駐停車中道路上に駐停車することによって、他の車両の円滑な走行を阻害し、他の車両、通行人に危険を生じさせるような場合には、駐停車中であっても運行に当たると解されます。停車中のドアの開閉による事故は、運行による事故と解されます。エンジンを作動させて停車中に一酸化炭素中毒により死亡した場合、運行による事故となり得る場合があります。荷物の積み降ろし貨物自動車の荷台を使用し、荷物の積み降ろし中に生じた事故は、運行起因性が認められる場合があります。運行起因性が認められない場合の例運行起因性が認められない場合の例を挙げておきます。あくまで一般論ですから、個別事案の判断は、弁護士にご相談ください。人の行為・第三の要因の介在車内でマッチをつけ火災になった場合、車内にパイプを用い排気ガスを引き込んで自殺した場合、積荷が化学反応を起こしたことによる火災や爆発などは、運行による事故には当たらないと解されます。故障修理・点検中修理工場内で修理作業や車検整備などを行っている自動車による事故については、運行に当たらないと解されます。ただし、道路上で、故障・点検修理などのため、駐停車禁止区域で駐停車中に追突事故が生じたような場合には、円滑な交通を妨げたとして運行に当たる場合があり得ます。自然現象地震、洪水、鉄砲水、落石、太陽熱、竜巻などによって生じた事故については、自動車は、当該自然現象の現れた場所に存在したにすぎず、通常運行によって発生した事故とは解されません。ただし、集中豪雨等による危険からの事故の発生が予見できるにもかかわらず、あえて運行している場合は、運行による事故と解される場合があり得ます。まとめ自賠法に基づく損害賠償責任が生じるのは、自動車の運行によって他人の生命・身体を害したときです。「運行によって」に該当するかどうかの判断は、固有装置説を採るのが判例・通説とされています。「運行」とは、「自動車を当該装置の用い方に従い用いること」です。「当該装置」とは、走行装置に限定せず、クレーン車のクレーンのように特殊自動車の固有の装置も含まれます。すなわち、当該自動車の固有の装置を本来の目的に従って使用することが運行です。運行「によって」とは、当該装置を本来の目的に従って使用したことと事故との間に相当因果関係があることです。この場合、運行起因性が認められます。近時は、「運行によって」を一体で解釈し、「自動車の危険性が顕在化した」場合に運行起因性を肯定するという考え方が有力です。裁判例は「運行」の概念を広く捉えるようになってきており、駐停車中であっても運行に当たると解し、自賠法を適用できるケースが広がってきています。なお、運行起因性が否定され、自賠法3条の運行供用者責任の成立が認められない場合でも、個別具体的事情によっては、民法709条の規定に基づく不法行為責任が成立する場合があります。これらのことをふまえて、加害者や保険会社に損害賠償を請求することが大切です。お困りのことがありましたら、交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『自賠責保険のすべて13訂版』保険毎日新聞社 88~92ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 104~112ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 19~24ページ・『交通事故損害賠償法第2版』弘文堂 64~82ページ・『Q&A新自動車保険相談』ぎょうせい 26~34ページ・『新版逐条解説自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 50~67ページ・『逐条解説自動車損害賠償保障法第2版』弘文堂 6~16ページ、40~51ページ・『損害保険の法律相談Ⅰ<自動車保険>』青林書院 20~21ページ、26~33ページ・『交通事故の損害賠償とADR』弘文堂 4~8ページ・『交通事故事件の実務-裁判官の視点-』新日本法規 24~31ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 69~70ページ・『実務家が陥りやすい交通事故事件の落とし穴』新日本法規 21~29ページ・『要約交通事故判例140』学陽書房 16~19ページ・『改訂版交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 247~254ページ・『新版交通事故の法律相談』青林書院 24~25ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 51~57ページ・別冊ジュリスト№152『交通事故判例百選第4版』有斐閣 30~41ページ・別冊Jurist №233『交通事故判例百選第5版』有斐閣 24~37ページ・『実務精選100交通事故判例解説』第一法規 26~35ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 332~338ページ、372~377ページ
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