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  • 交通事故で被害者の過失割合が大きいときは健康保険を使わないと損!
    被害者の過失割合が大きい場合は、康保険を使って治療すると、経済的メリットが生じます。健康保険を使って治療すると、治療費の自己負担が軽減できるとともに、健康保険を使わない場合に比べて、受け取れる損害賠償額が多くなります。健康保険を使うと、治療費の自己負担を軽減できる被害者の過失割合が大きい場合、過失相殺により損害賠償額が大幅に減額されるほか、そもそも相手方保険会社が一括払いをしないことがあるため、治療費の自己負担が大きくなります。加害者が任意保険に加入していれば、通常、治療費は、相手方任意保険会社が病院に直接支払ってくれますが、被害者の過失が大きく、自賠責保険の支払額内で足りる場合は、任意保険会社が一括払をしないことがあります。こういう場合は、健康保険を使って治療すると、治療費そのものを低くでき、その3割の負担でよいため、治療費の自己負担を軽減することができます。健康保険を使うと、治療費の自己負担をどれくらい軽減できるか?例えば、こんなケースを考えてみてください。自由診療で治療費が 200万円。被害者の過失割合が 8割。この場合、200万円の8割が過失相殺され、加害者からの賠償額は40万円です。あとの160万円は、被害者の負担となります。このケースで、健康保険を使うと、どうなるでしょうか?仮に、診療単価が同じとしても、被害者が病院の窓口で支払うのは治療費の3割のみですから、治療費200万円のうち3割の60万円が被害者の損害となります。この60万円の損害に対し、8割が過失相殺され、損害賠償額は12万円。被害者の負担は48万円です。診療単価の差が大きいほど、メリットが大きくなる実際は、自由診療と健康保険診療とでは、診療単価が異なりますから、被害者の負担額は、もっと軽減されます。健康保険の診療単価は10円です。自由診療の場合は、医師と患者との間で自由に決めることができ、診療単価20円程度が多いようです(⇒自賠責診療費算定基準)。そうすると、あくまで単純計算ですが、健康保険を使ったときの治療費は、自由診療の場合の半分程度となります。自由診療で治療費が200万円なら、健康保険診療だと治療費は100万円。被害者が病院の窓口で支払うのは、その3割ですから、30万円が被害者の損害となります。この30万円に対し、8割が過失相殺され、支払われる賠償額は6万円。被害者の負担は24万円となります。つまり、自由診療であれば、被害者が160万円の治療費を負担しなければなりませんが、健康保険を使うと、被害者の負担は24万円で済むのです。健康保険を使うと、より多く損害を回復できる被害者の過失割合が大きい場合は、健康保険を使って治療すると、より多く損害を回復することができます。健康保険からの給付額(治療費の7割分)が過失相殺の対象とならないからです。健康保険を使って治療したときの過失相殺の仕組み健康保険を使って治療すると、治療費の7割が健康保険から給付され、これにより、被害者に発生した損害の一部が填補されたことになります。損害賠償にあたっては、被害者の損害が二重に填補されないよう調整するため、健康保険からの給付額は、既払金として損害賠償額から控除されます。このとき、被害者に過失があり過失相殺する場合は、過失相殺後に既払金を控除するのが一般的ですが、健康保険の給付額については、先に健康保険給付額を控除し、後から過失相殺する取扱です。つまり、健康保険給付額は、過失相殺されることなく、損害の填補に充当されることになります。過失相殺されるのは、自己負担部分だけです。どれくらい損害の回復ができるのか?もう一度、上の例で考えてみましょう。健康保険を使って治療し、治療費が100万円、被害者の過失割合が8割です。健康保険から治療費の7割の70万円が給付され、被害者が病院の窓口で支払った一部負担金は3割の30万円です。被害者が支払った30万円については、過失相殺のうえ、2割の6万円が加害者(相手方保険会社)から賠償されます。あとの24万円が、被害者の最終的な負担となります。つまり、被害者に8割の過失がある場合、健康保険を使うと、治療費は76%(健康保険から70%、加害者から6%)が補填され、24%の負担で済む計算です。これに対して、自由診療の場合には、治療費全体が過失相殺の対象となりますから、治療費200万円に対し、加害者から賠償されるのは2割(40万円)。損害額のわずか20%が填補されるだけで、80%(160万円)が被害者の負担となるのです。まとめると、こうです。自由診療の場合には、治療費の全体に対し過失相殺するため、被害者の過失割合が大きいと、損害賠償額は少額となります。被害者の過失が8割なら損害の2割、被害者の過失が9割なら損害の1割しか回復できません。健康保険診療の場合は、治療費の7割が健康保険から給付され、残りの3割については、過失相殺して加害者から賠償されます。すなわち、損害の少なくとも7割以上が回復できるのです。被害者の過失が8割でも9割でも、損害の7割以上を回復できます。なお、被害者に過失がない場合は、健康保険を使っても使わなくても、損害は100%填補されますから、相手が任意保険に加入し、賠償資力に問題がなければ、健康保険を使う経済的メリットは生じません。健康保険を使わないと、これだけ損する!過失相殺があるとき、被害者の過失割合が大きいか小さいかによって、自由診療と健康保険診療で、どれくらい賠償金の受取額に差が生じるのか、具体的に見てみましょう。次のような事例を考えます。設例自由診療の診療単価は20円とします。健康保険診療の診療単価は10円です。治療費は、自由診療で200万円、健康保険診療で100万円とし、その他の損害(休業損害や慰謝料など)を300万円とします。ここでの計算は、過失相殺率の大小により、自由診療と健康保険診療とで、どれくらい損害賠償金の受領額に差が生じるかをイメージしやすくするため、細かな計算は省いています。また、健康保険からの給付額は、被害者の損害から除外し、実際に被害者が負担する3割分のみを被害者に発生する損害としています。実際の損害算定においても、健康保険給付額は過失相殺前に控除する扱いが定着しているため、3割の一部負担分のみを治療費として計上しています。被害者の過失割合が80%の場合被害者の過失割合が80%の場合を考えてみます。自由診療健康保険診療治療費(自己負担)200万円(200万円)100万円(30万円)慰謝料等300万円300万円損害の合計額500万円330万円過失相殺後の額(賠償金額)100万円66万円既払金200万円賠償金の受取額-100万円66万円損害額と賠償金額の計算自由診療の場合、治療費の200万円は全額が被害者の負担ですから、全損害額は500万円です。80%の過失相殺をして、賠償金額は100万円となります。健康保険診療の場合、治療費は100万円ですが、被害者の負担は3割の30万円ですから、被害者の負った損害は、治療費の自己負担30万円と慰謝料等の300万円と合わせ330万円です。これに80%の過失相殺をして、賠償金額は66万円となります。治療費100万円を被害者の損害として計上し、慰謝料等と合わせて400万円を損害としたとしても、健康保険給付額70万円を先に400万円から控除し、330万円に対して過失相殺しますから、同じことです。損害賠償金の受取額の計算過失相殺後の賠償金額は、自由診療の場合が100万円、健康保険診療の場合は66万円ですから、一見すると、自由診療の方が賠償額を多く受け取れるように思えます。自由診療の場合は、任意一括払いにより保険会社が治療費を病院に支払い済みですから、治療費の200万円は既払金として、賠償金額から差し引かれます。すると、損害賠償金の受取額は、計算上はマイナスとなり、賠償請求できる損害はなく、賠償金の受取額はゼロです。任意保険会社が一括払いしていない場合は、100万円を受け取れますが、200万円の治療費は被害者が支払っていますから、100万円の賠償金では治療費も回収できません。なお、被害者に50%以上の過失がある場合は、任意保険会社は一括払いを認めない傾向にあるようです。あとで自賠責保険からの回収が困難になる可能性があるからです。(参考:『交通事故が労災だったときに知っておきたい保険の仕組みと対応』日本法令 30ページ)一方、健康保険診療の場合、治療費の一部負担金は病院の窓口で被害者が支払いますから、既払金はなく、賠償金の受取額は66万円です。被害者が支払った治療費は30万円ですから、66万円のうち30万円は治療費に充当し、残り33万円は慰謝料等に充てることができます。被害者の過失割合が10%の場合ちなみに、被害者の過失割合が10%の場合は、次のようになります。自由診療健康保険診療治療費(自己負担)200万円(200万円)100万円(30万円)その他の損害300万円300万円損害の合計額500万円330万円過失相殺後の額450万円297万円既払金200万円賠償金の受取額250万円297万円損害額は先ほどと同じですが、過失相殺率が10%となりますから、賠償金額が違います。過失相殺後の損害賠償額は、自由診療の場合が450万円、健康保険診療の場合が297万円です。自由診療の場合は、治療費200万円が既払金として控除され、賠償金の受領額は250万円です。250万円を慰謝料などに充てることができます。健康保険診療の場合は、既払金はありませんから、受領額は297万円です。治療費の30万円を差し引いた267万円を慰謝料などに充てることができます。まとめ被害者の過失割合が大きいときは、過失相殺により損害賠償金額が大幅に減額されますから、健康保険を使って治療した方が、経済的メリットが生じ、断然有利です。これは、健康保険が、治療費の被害者過失部分の一部または全部を、結果的に負担することになるためです。自分の人身傷害保険を使うと良い場合もあります。人身傷害保険は、過失相殺なしに全損害が補償されます。ただし、対人賠償保険より支払基準が低い「人傷基準」で損害額を算定するのがデメリットではあります。どうすれば一番多く損害賠償を受けられるかは、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談すると良いでしょう。あなたにとって、最善の方法を提案してくれます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 過失相殺率と過失割合の違い
    過失割合と過失相殺率の違いとは?わかりやすく詳しい解説
    交通事故の過失相殺において、過失割合と過失相殺率は、同じような意味で使われることがありますが、過失割合と過失相殺率は異なります。過失割合と過失相殺率の違いについて、分かりやすく説明します。過失相殺率と過失割合の違い過失相殺率と過失割合には、次のような違いがあります。過失相殺率とは過失相殺率は、過失相殺する割合です。被害者の過失相当分として損害賠償額から減額する割合が、過失相殺率です。例えば、過失相殺率が30%であれば、被害者の過失30%分を減額した額が、損害賠償額となります。この場合、被害者の過失が30%といっても、必ずしも過失割合が「加害者7:被害者3」というわけではありません。「加害者の過失」と「過失相殺の対象となる被害者の過失」は質的に異なるので、同じレベルの過失として対比できないからです。「被害者の過失」と「加害者の過失」の違いとは?過失相殺の対象となる被害者の過失は、単なる不注意というレベルです。自分の不注意により自身に損害が生じたというもので、相手に損害を与えて賠償責任が発生するようなものではありません。加害者の過失は、注意義務違反です。道路交通法などで自動車の運転者に課せられた注意義務を怠り、相手に損害を与え、賠償責任が生じます。被害者の過失と加害者の過失は、このような違いがあるので、同一線上で対比できないのです。過失割合とは過失割合は、発生した損害に対する当事者(加害者と被害者)の過失の割合です。加害者と被害者の過失を対比し、双方に過失を割り付けたものが過失割合です。例えば、「加害者7:被害者3」というように、被害者と加害者に損害の過失責任を割り付けます。この場合、被害者の過失が「10分の3」ですから、過失相殺率は30%となります。過失割合が妥当なのは、対等者間の事故の場合のみ過失割合の考え方ができるのは、当事者の過失が質的に同じものとして対比できる場合、すなわち、四輪車同士の事故のような対等者間の事故の場合のみです。歩行者と自動車との事故のように、交通弱者と交通強者との事故の場合には、過失の質が異なるので、過失割合という考え方は馴染みません。過失相殺における「相対説と絶対説」「交通弱者保護の原則」過失相殺率と過失割合の違いを、さらに深掘りします。ポイントは次の2つです。過失相殺には「相対説」と「絶対説」がある。過失相殺においては「交通弱者保護の原則」が考慮される。過失相殺における「相対説」と「絶対説」過失相殺の基本的な考え方には、「相対説」と「絶対説」があります。相対説:当事者双方の過失を対比して過失相殺を考える。絶対説:被害者の過失の大きさだけによって過失相殺を考える。相対説か絶対説かで過失相殺率が異なる相対説か絶対説か、どちらの立場によるかで、過失相殺率が異なります。例えば、被害者の過失も加害者の過失も、同程度の軽微な過失であった場合を考えてみましょう。相対説の立場で考えると、被害者の過失が小さくても、加害者の過失が同じように小さい場合は、過失相殺率は相対的に高くなります。絶対説の立場で考えると、被害者の過失が軽微なら、過失相殺率は小さくなります。相対説によるのが判例・保険実務の大勢ですが…通常、過失相殺における過失の評価は、加害者の過失と被害者の過失を対比し、双方の事情の総合的考慮により過失相殺の割合を定める方法(相対説)が採られます。ただし、対等者間の事故でない場合は、「相対説においても過失割合という思考をとらない」とされています(『別冊判例タイムズ38』44ページ)。過失相殺における「交通弱者保護の原則」過失相殺にあたっては「交通弱者保護の原則」が考慮されます。四輪車より単車、単車より自転車、自転車より歩行者、成人より幼児・児童といったように、交通弱者が保護される原則です。対等者間の事故の過失相殺には、過失割合と過失相殺率が同一のものとして機能しますが、対等者間でない事故の過失相殺には、過失割合を用いるのは妥当でなく、過失相殺率を用います。歩行者と自動車とでは過失の質が異なり、単車と四輪車でも単車の運転者の方が被害を受けやすく、保護する必要があるからです。歩行者と自動車の事故例えば、一般道路を歩行者が横断していて自動車にひかれ、歩行者の過失相殺率が20%だったとします。このとき、加害者(自動車の運転者)と被害者(歩行者)の過失割合が8;2かというと、そうはなりません。歩行者が、相手車両の物損に、20%責任を負うわけではないのです。自動車は、運転者の不注意(過失)によって他人に危害を加える危険があるため、運転者は、道路交通法で様々な注意義務が課されています。一方、歩行者は、不注意(過失)があったとしても、他人に危害を及ぼすことは基本的にありません。その不注意は、自分の身を守るために注意しなかった不注意にすぎません。過失相殺の過失は、注意義務違反でなく、不注意で足りるといわれる所以です。歩行者は、自分が損害を受けたことについて、自分の過失分について過失相殺されますが、それは加害者として責任を負う過失ではないのです。したがって、歩行者と自動車との事故では、双方の過失を対比する過失割合という考え方は馴染まないのです。単車と四輪車の事故四輪車と単車は、道路交通法で同じように規制を受けますが、四輪車同士の事故と単車対四輪車の事故では、過失相殺率が異なります。例えば、交差点における直進車と右折車との事故で考えてみましょう。道路交通法で直進車優先の基本原則がありますから、四輪車同士あるいは単車同士の事故の場合は、右折車の過失割合が80%、直進車の過失割合が20%で、これがそれぞれの過失相殺率となります。(過失相殺率認定基準【107】)単車が直進車、四輪車が右折車の場合、直進単車の過失相殺率は15%です。対等者間の事故なら直進車の過失相殺率は20%ですから、それより5%減ります。(過失相殺率認定基準【175】)逆に、単車が右折車、四輪車が直進車の場合、右折単車の過失相殺率は70%です。対等者間の事故なら右折車の過失割合は80%ですから、10%減ります。(過失相殺率認定基準【176】)基本的には道路交通法で同一の規制を受ける四輪車と単車であるにもかかわらず、過失相殺率が異なります。これは、単車が四輪車と衝突した場合、単車の運転者が被害を受けるのが通常であり、こうした被害については、公平の観点から救済する必要があるからです。損害賠償における損害の公平な分担という理念から、過失相殺率は、本来の過失割合に修正を加えているので、このように違った基準ができているのです。これを単車修正といいます。「過失相殺基準」の見方過失相殺率を判断するときには、『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ38)を参考にするのが一般的です。この『過失相殺率認定基準』では、交通弱者の側が被害者になったとき(人身損害が生じたとき)の過失相殺率を示しています。つまり、「歩行者と四輪車・単車・自転車との事故」「単車と四輪車との事故」「自転車と四輪車・単車との事故」で示されている基準は、それぞれ、歩行者、単車、自転車が被害者となった場合の過失相殺率を示しています。「四輪車同士の事故」の場合も、被害者の側の過失相殺率を示すものですが、対等者間の事故であるため、過失相殺率と過失割合は一致すると考えて差し支えありません。具体的に見てみましょう。「歩行者と四輪車・単車との事故」の過失相殺率「四輪車同士の事故」の過失相殺率「単車と四輪車との事故」の過失相殺率「歩行者と四輪車・単車との事故」の過失相殺率歩行者と四輪車・単車との事故については、『過失相殺率認定基準』では、歩行者が被害者となったときの過失相殺率を示しています。例えば、歩行者と四輪車・単車との事故で、歩行者が黄信号で横断を開始し、車両が赤信号で進入した場合の過失相殺率の基準は次のようになっています。歩行者と直進車との事故歩行者が、黄信号で横断を開始車両が、赤信号で進入基本10修正要素児童・高齢者-5幼児・身体障害者等-5集団横断-5車両の著しい過失-5車両の重過失-10※『別冊判例タイムズ№38』67ページ、基準【2】。修正要素は一部のみ抜粋。このような事故の場合、被害者(歩行者)の基本の過失相殺率は10%で、修正要素を考慮して過失相殺率を決めます。例えば、被害者が「児童・高齢者」の場合には「マイナス5」で、過失相殺率は5%となります。歩行者は、黄信号の場合に道路の横断を始めてはならないので(道路交通法施行令2条1項)、方向者が黄信号で横断を開始したこと自体に過失が認められます。また、この場合は、歩行者に左右の安全確認義務があるのが普通で、左右の安全確認も怠っていることの過失も問題となります。しかし、赤信号に違反した車両の過失の方がはるかに大きいので、過失相殺基準では「原則として10%以上の過失相殺をしない」とされています。歩行者が加害者となる場合歩行者が加害者となる場合について、過失相殺基準はありません。上の例では、歩行者が被害者となったときの過失相殺率が10%ということであり、過失割合が「加害者9:被害者1」というわけではありません。仮に、歩行者が怪我をせず、歩行者を避けようとした車両の運転者が怪我をして、歩行者が加害者、車両の運転者が被害者となった場合、車両の運転者から歩行者に損害賠償請求するとして、過失相殺率が90%になるわけではありません。歩行者が不法行為責任を負うか、負うとしてその過失責任がどの程度か、については、個別に判断する必要があり、『過失相殺率認定基準』では示していないのです。『過失相殺率認定基準』には、次のような解説があります。歩行者が被害者となる場合のみを取り上げることとし、被害者保護、危険責任の原則、優者危険負担の原則、自賠責保険の実務等を考慮して、歩行者に生じた損害のうちどの程度を減額するのが社会通念や公平の理念に合致するのかという観点から過失相殺率を基準化した。歩行者が加害者となる場合、例えば、歩行者が路上に急に飛び出したため、急停止をした四輪車・単車の運転者・同乗者が負傷したり、歩行者との衝突を避けようとしてハンドルを切り、対向車と衝突した四輪車・単車の運転者・同乗者が負傷した場合等に、歩行者が不法行為責任を負うか、負うとしてその負担割合がどの程度かなどは、本章の基準の対象外である。(『別冊判例タイムズ№38』60ページ)「四輪車同士の事故」の過失相殺率四輪車同士の事故の場合、『過失相殺率認定基準』は、被害車両の過失相殺率を表示しています。例えば、信号機のない同幅員の交差点において、A車・B車とも同程度の速度で進入し、出会い頭に衝突したケースです。A車が左方車、B車が右方車とすると、左方優先ですから、A車の過失相殺率の基準は次のようになります。信号機のない交差点での四輪車同士の事故A車:左方車B車:右方車基本A 40:B 60修正要素A車の著しい過失+10A車の重過失+20B車の著しい過失-10B車の重過失-20※『別冊判例タイムズ№38』215ページ、基準【101】。修正要素は一部のみ抜粋。ここで示しているのは、A車の基本の過失相殺率が40%ということですが、四輪車同士の事故の場合は、「対等者間の事故」なので、過失相殺率は過失割合と同一と解することができます。つまり、A車とB車の過失割合は「40:60」と考えて差し支えないということです。「単車と四輪車との事故」の過失相殺率『過失相殺率認定基準』では、単車と四輪車との事故で、単車側に人身損害が生じた場合の過失相殺率を示しています。例えば、信号機のない同幅員の交差点において、単車(A車)と四輪車(B車)がともに同程度の速度で進入し、出会い頭に衝突したケースです。単車(A車)が左方車、四輪車(B車)が右方車とすると、左方優先ですから、単車(A車)の過失相殺率の基準は次のようになります。信号機のない交差点での単車と四輪車の事故A車:単車(左方車)B車:四輪車(右方車)基本A 30:B 70修正要素A車の著しい過失+10A車の重過失+20B車の著しい過失-10B車の重過失-20※『別冊判例タイムズ№38』318ページ、基準【165】。修正要素は一部のみ抜粋。四輪車同士の事故の場合のように割合の形で表示していますが、対等者間の事故ではないので、過失割合と一致するわけではありません。単車の運転者は怪我をせず、四輪車の運転者が怪我して被害者になり、相手に損害賠償請求する場合、基準に示されている四輪車の過失70%を過失相殺率とすることはできません。別個に判断することが必要です。『過失相殺率認定基準』には、次のような注意書があります。一方が単車・自転車の事故の類型の基準においては、四輪車側の過失割合も示しているが、単車・自転車の過失割合は、そのまま過失相殺率として用いることを予定しているのに対し、>四輪車側の過失割合は、あくまで注意的な記載であり、単車・自転車が加害者であるとして請求された場合における過失相殺率を直ちに示すものではない。(『別冊判例タイムズ№38』44ページ)まとめ過失割合と過失相殺率は異なります。過失相殺にあたっては、過失相殺率を用います。対等者間の事故の場合は、過失割合と過失相殺率は一致するので、過失割合を考えて過失相殺しても差し支えありませんが、対等者間でない事故の場合は、過失割合の考え方は妥当ではありません。過失相殺率の判断には、『過失相殺率認定基準』を用いるのが一般的です。ただし、すべての事故態様を網羅しているわけではないので、過失相殺基準を参考に個別に判断することが必要です。相手方の保険会社が示す過失割合・過失相殺率について疑問に感じたり納得できないときは、交通事故の損害賠償請求や過失割合の争いに強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・別冊凡例タイムズ38『過失相殺率の認定基準 全訂5版』・『民事交通事故訴訟の実務』ぎょうせい 169~172ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 295~296ページ
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  • 過失割合の争い
    交通事故の過失割合で争いがあるときはどこに相談すればよいか?
    過失割合・過失相殺率に争いがあり、当事者間で示談できないときは、弁護士に示談交渉を任せるか、民事訴訟を提起して裁判で争うことになります。いずれにしても、弁護士に相談しないと解決できません。交通事故の損害賠償をめぐる紛争解決の方法としては、ADR機関(裁判外紛争解決機関)に示談の斡旋を申し込む方法や、裁判所に民事調停・交通調停を申立てる方法がありますが、ADRや調停は、過失割合の紛争解決には馴染みません。ADRでは過失割合を解決できない交通事故の紛争解決で広く利用されるADR機関として、「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」があります。これらのADR機関は、基本的に交通事故の民事紛争に強い弁護士が担当するうえ、比較的短期間で解決に至ります。何より、審査を申し立てれば、審査結果は損保や共済を拘束するので(片面的拘束力)、被害者が審査結果に同意すれば、損保や共済に有無を言わさず示談が成立します。しかも、無料で利用できますから、交通事故の被害者にとって有利です。ADRは対象となる紛争が制限されるしかし、ADRは扱える紛争に制限があります。事実関係に争いがなく、あとは「示談金額をいくらにするか」という段階の争いでないと、ADRに持ち込んでも解決は望めないのです。これは、ADRが、数回程度の示談斡旋で解決に導くのを原則としていること、間に入って示談斡旋する弁護士は中立の立場であることが、おもな理由です。担当する弁護士は、被害者の代理人として保険会社や共済組合と交渉するのでなく、第三者の中立の立場から、妥当な示談金額を提示し、示談を斡旋します。ですから、相手の損害賠償責任や過失割合、後遺障害等級などに争いがあり、最終的な示談金額の提示に至っていない場合は、ADRでは解決できないのです。ADR機関(裁判外紛争解決機関)のメリット・デメリットについて詳しくはこちら調停では過失割合を解決できない交通調停・民事調停は、裁判のように時間も費用もかからず、弁護士を頼まなくても、被害者本人や家族でも申し立てることができます。調停が成立すれば、確定判決と同じ効果を持ち、調停内容が履行されないときは、強制執行も可能です。調停は裁判のような厳格な事実調査をしないしかし、調停では、裁判のような厳格な証拠調べをしません。当事者が持参した資料を調べたり、参考人から意見を聴取する方法が採られます。また、調停委員は、必ずしも交通事故の損害賠償問題に精通した委員が選任されるわけではありません。むしろ、交通事故の問題にあまり詳しくない弁護士が選任されるのが実情です。損保会社OBが調停委員に選任されることも少なくありません。そのため、過失割合で揉めている場合のように、双方の主張に大きな開きがある場合は、調停は馴染みません。交通調停・民事調停のメリット・デメリットについて詳しくはこちらまとめ過失割合で揉めている場合は、ADR機関(裁判外紛争解決機関)や交通調停・民事調停に持ち込んでも、納得のいく解決は期待できません。過失割合をめぐり当事者間の示談交渉が難航する場合は、弁護士に示談交渉を依頼するか、民事訴訟を提起して裁判で争うしか解決の方法はありません。いずれにしても、弁護士に相談するのがベストです。保険会社の主張する過失割合に納得がいかない場合は、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に今すぐ相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 過失相殺率認定基準
    過失相殺基準(過失相殺率認定基準)と利用上の注意点
    『過失相殺率認定基準』は、過去の判例をもとに事故の態様ごとに過失相殺率・過失割合を基準化したものですが、あらゆる事故に当てはまるものではありません。ここでは、『過失相殺率認定基準』がどんなものか、『過失相殺率認定基準』を使って過失相殺率・過失割合を決める際の注意点についてまとめています。過失割合の算定に使う過失相殺基準とは?過失相殺は、法律上(民法722条2項)は「裁判所の自由裁量」に委ねられていますから、裁判所が、個々の事件ごとに様々な要素を考慮して過失相殺の割合を決めるのが本来の在り方です。しかし、交通事故の損害賠償請求事件は数が多く、事故態様の似たものが多いため、同じような事故にもかかわらず過失相殺割合が裁判官によって大きく異なると、当事者間に不公平が生じます。それゆえ、民事交通訴訟を迅速・公平に処理するため、過失相殺基準が作成され、それを参考に過失相殺率・過失割合を決めるようにしています。過失相殺基準は、訴訟外の示談交渉においても用いられます。「過失相殺率の認定基準・全訂5版」(別冊判例タイムズ38)現在、過失相殺基準として広く使われているのは、東京地裁民事訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版』(別冊判例タイムズ38)です。以下、「過失相殺率認定基準」と略します。「過失相殺率認定基準」は、東京地裁民事第27部(民事交通部)の裁判官が、民事交通訴訟における過失相殺率の認定・判断基準を示したもので、この基準によって、実務が動いていると考えてよいでしょう。裁判で過失相殺が問題となるケースでは、裁判所からも「判タ(判例タイムズ)の何番だと思うのですけれど」と具体的に話が出てきます。示談代行を行う保険会社の担当者も、この「過失相殺率認定基準」を使って交渉するのが一般的です。このほか、『赤い本』や『青本』も用いられます。「過失相殺率認定基準」とはどんなもの?「過失相殺率認定基準」は、事故を大きく次の7つに分類し、それぞれの事故について、基本の過失相殺率(過失割合)と修正要素を示しています。歩行者と四輪車・単車との事故歩行者と自転車との事故四輪車同士の事故単車と四輪車との事故自転車と四輪車・単車との事故高速道路上の事故駐車場内の事故過失相殺率・過失割合を決める上で基本となる一般原則は、「弱者保護」と「道路交通法の優先関係」です。弱者保護弱者保護の原則から、四輪車より単車、単車より自転車、自転車より歩行者、成人より幼児・児童・高齢者・身体障害者等の交通弱者が、過失相殺率・過失割合は小さくなります。道路交通法の優先関係例えば、信号機のない交差点での車両同士の出会い頭の衝突事故の場合、道路交通法に定められた優先関係は次のようになります。左方優先他に優劣を定められないとき左方車が優先する(道交法36条1項)。[基本の過失割合 ⇒ 左方車40:右方車60]優先車優先一方が優先道路の場合、優先道路走行車が優先する(道交法36条2項)。[基本の過失割合 ⇒ 優先車10:劣後車90]広路車優先広い道を走行してきた車の方が狭い道を走行してきた車に優先する(道交法36条2項)。[基本の過失割合 ⇒ 広路車30:狭路車70]非停止規制車優先一方に一時停止の規制がある場合、一時停止の規制のない道路走行車が優先する(道交法43条)。[基本の過失割合 ⇒非停止規制車20: 停止規制車80]「過失相殺率認定基準」の利用の仕方と注意点「過失相殺率認定基準」の利用の仕方と、利用する際の注意点について見ていきましょう。「過失相殺率認定基準」の利用の仕方実際の事故で「過失相殺率認定基準」を利用するとき、次のような流れになります。事故を分析し、「過失相殺率認定基準」のどの類型に該当するのか、どの類型に類似するのかを検討します。その事故の諸事情が、修正要素に該当するかを検討します。基本の過失割合に修正要素を加味して、過失相殺の割合を計算します。修正要素には、幹線道路か否か、夜間などの見通し状況、速度違反の有無、子どもや高齢者か、著しい過失や重過失はないか、など様々な要素があります。事故態様に応じて、適正に修正要素を考慮することが大切です。著しい過失・重過失とは「過失相殺率認定基準」には、事故の類型ごとに主な修正要素を記載していますが、あらゆる要素を網羅できるわけではありません。そのため、「その他の著しい過失・重過失」という修正要素が盛り込まれています。著しい過失とは著しい過失とは、通常想定されている程度を超えるような過失をいいます。「過失相殺率認定基準」には、基本の過失相殺率を定めるにあたり、事故態様ごとに通常想定される過失を考慮に入れていますから、それを超えるような過失という意味です。車両一般の著しい過失としては、例えば、脇見運転などの著しい前方不注意、携帯電話などを通話のために使用したり画像を注視しながら運転すること、おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反(高速道路を除く)、酒気帯び運転などが該当します。重過失とは重過失とは、著しい過失よりもさらに重い、故意に比肩する重大な過失をいいます。車両一般の重過失としては、例えば、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、おおむね時速30㎞以上の速度違反(高速道路を除く)、過労・病気・薬物の影響などにより正常な運転ができない恐れがある場合などが該当します。過失相殺率認定基準に該当しない事故の場合「過失相殺率認定基準」により、あらゆる事故態様がカバーされているわけではありません。「過失相殺率認定基準」に該当しない事故の場合は、基準を参考に、個別具体的に判断する必要があります。過失相殺の割合は、おもに、道路交通法に定められた規制や優先権、事故発生の時間・場所・環境、事故発生の予見可能性・回避可能性、といった3つの要素によって判断されます。これらの要素を基礎に、類似する過失相殺基準を参考に、過失相殺率・過失割合を算定することになります。「過失相殺率認定基準」を利用するときに注意すること過失割合を算出するとき、まず、事故を分析し、「過失相殺率認定基準」のどの類型に該当するか、どの類型に類似しているかを検討しますが、重要なのは、現実の事故を基準・類型に無理やり当てはめるようなやり方をしてはいけない、ということです。交通事故の事故態様は千差万別で、「過失相殺率認定基準」にそのまま当てはまらない事故態様も多数あります。「過失相殺率認定基準」は、あくまで目安として参考にし、個別事情を考慮し適正に修正して使うことが大切です。例えば、歩行者(被害者)が横断歩道上で事故に遭った場合は過失相殺されませんが、横断歩道でない場所で事故に遭った場合は過失相殺されます。過失相殺基準を形式的に当てはめると、事故が発生したのが「横断歩道上か」「横断歩道外か」という一事で、過失相殺率が大きく変わります。ですが、こういう場合もあります。横断歩道を横断中に車が接近してきたので、歩行者が車を避けようとして横断歩道外に逃げて衝突した場合です。この場合、実況見分調書に衝突場所として記載されるのは、横断歩道外となります。衝突場所が横断歩道外だから過失相殺するというのでは、あまりにも機械的です。こういう場合は、横断歩道上の事故と同様に考えることが必要です。「過失相殺率認定基準」を使いこなすには専門知識と経験が必要「過失相殺率認定基準」を使って、実際の交通事故の過失割合を判断するには、どの類型を適用するか、どのような考慮の下に修正要素・修正率が規定されているのか、などの深い知識が必要になります。「過失相殺率認定基準」(別冊判例タイムズ38)は、だれでも比較的容易に入手することはできますが、それを使いこなすには、専門知識と経験が必要なのです。相手の保険会社の担当者は、「過失相殺率認定基準のコレに該当するので、過失割合は何%」というように過失相殺を主張してきます。それに疑問を感じ、ご自身でいろいろと調べる方もいるでしょう。もちろん被害者側が過失相殺の基本的な知識を身に着けておくことは大切ですが、生半可な知識で保険会社の担当者と示談交渉に臨んでも、勝ち目はありません。相手は、様々な事故について示談交渉しているプロです。過失割合に納得がいかないときは、無理をせず、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。まとめ交通事故の過失相殺の割合を算定するとき、参考にする過失相殺基準として、一般的に『民事訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ38)が用いられます。「過失相殺率認定基準」は、交通事故の損害賠償を迅速・公平に処理する上で有用ですが、あらゆる事故態様を網羅しているわけではありません。現実の事故は、「過失相殺率認定基準」をそのまま適用できない場合が多くあります。「過失相殺率認定基準」に機械的に当てはめたのでは、正しい過失相殺率・過失割合は算定できません。大事なのは、「過失相殺率認定基準」に示された基準や修正要素を、どう判断し、どのように修正して適用するかです。それには、専門知識と経験が必要です。過失割合や過失相殺率に納得がいかない場合は、交通事故の過失割合の争いに強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 過失割合の立証
    交通事故の過失割合・事故態様を立証する証拠の収集方法
    事故の相手から過失相殺が主張され、双方の言い分が対立する場合は、自分の主張を裏付ける証拠が必要になります。どんなものが有力な証拠となりうるか、どうすれば入手できるか、見ていきましょう。有力な証拠として活用できるものとは?過失相殺が問題になる場合には、事故態様や事故現場の状況を的確に把握するために、交通事故が起きたときの現場を再現できる証拠が必要です。次のようなものが、有力な証拠となり得ます。刑事事件記録・物件事故報告書ドライブレコーダーEDR(イベント・データ・レコーダー)目撃者の証言それぞれ、どんなもので、どうやって入手すればいいのか、ご紹介します。刑事事件記録・物件事故報告書刑事事件記録(刑事記録)は、人身事故の場合に、刑事手続として作成するものです。警察官が作成する実況見分調書や供述調書が含まれます。実況見分調書は、事故の状況が詳細に記載された客観的証拠として、民事事件(損害賠償請求)においても有力な証拠となります。刑事確定記録の取得方法刑事裁判の終結後、刑事記録(確定記録)は、事件を担当した検察庁に所定の期間保管され、原則として、事件終結後3年間は、誰でも閲覧可能です(刑事訴訟法53条、刑事確定訴訟記録法4条)。刑事確定記録を取得するには、保管している検察庁に閲覧謄写を申請します。交通事故の被害者が民事事件で刑事確定記録を使用する場合は、閲覧だけでなくコピーも可能です。また、仮に事件終結から3年を経過していても、確定記録の保管期間内であれば認められます。刑事裁判の係争中に刑事訴訟記録を入手するには?交通事故事件には、刑事事件と民事事件があり、2つが並行して進行することもあります。刑事事件が終結していなくても、交通事故被害者は、実況見分調書などの刑事記録を取得することができます。刑事事件が係属する裁判所に、第1回公判期日後当該事件の終結までの間、被害者から申出を行うことで、法廷に提出されている訴訟記録の閲覧謄写が可能です(犯罪被害者保護法3条)。刑事裁判に被害者参加(刑事訴訟法316条の33)する場合は、第1回公判期日前であっても、担当検察官に要望すれば、検察官請求証拠(検察官が証拠調べ請求をすることとしている証拠)等が開示されます。なお、被害者参加しなくても、検察庁では、公判請求後から第1回公判期日までの間、交通事故被害者から要望があれば、公判や関係者のプライバシーなどに特段の支障がない限り、公判提出予定の書面を交付する運用になっています。不起訴記録の取得方法被疑者(加害者)が不起訴処分となった場合は、原則として刑事記録は非開示です。ただし、交通事故被害者から請求があった場合は、実況見分調書や写真報告書など客観的証拠に限り、閲覧謄写が認められます。供述調書については、厳格に運用がなされ、極めて例外的に条件を満たす場合に、民事裁判所を通じた請求で認められることがあります。物件事故報告書人身事故でない場合、すなわち物件事故(物損事故)の場合は、民事の話になりますから、実況見分調書など刑事記録は存在しません。警察は、簡易な物件事故報告書を作成するだけです。もし、怪我をしているのに物件事故として警察に届けているのであれば、人身事故に切り替える必要があります。病院で診断書を発行してもらって、警察に人身事故への変更を届け出れば、実況見分を行い、実況見分調書が作成されます。刑事記録の入手方法について詳しくはこちら物件事故から人身事故へ切り替える方法はこちらドライブレコーダードライブレコーダーの映像があれば、写真や図面では判断できないことが、立証可能となる場合があります。例えば、次のようなことです。信号機の色方向指示器の合図やタイミング急ブレーキ、急ハンドルの有無一時停止場所での一時停止の有無速度、減速の程度やタイミング停車や追い越しの場所、そのタイミング走行位置接触の有無事故当時の道路周辺の状況ただし、ドライブレコーダーの映像は、カメラの取り付け位置と運転席から見える視界が異なるため、位置関係によっては、カメラに写っていても運転者が気づかない場合があり得ます。広角レンズが用いられている場合は、歪みが大きく、直線であるところが曲がって見えるなど、実際の道路状況と異なって見える場合があるので、注意が必要です。ドライブレコーダーのみで判断できないときは、実況見分調書や車両の損傷状況などの事実関係を含めて、総合的に判断することになります。ドライブレコーダーの映像をどうやって入手するか?自分の車にドライブレコーダーを搭載しているのであれば、事故時の録画データを保存しておきます。自分の車にドライブレコーダーを搭載していない場合は、相手方車両がドライブレコーダーを搭載しているなら、相手方任意保険会社に提出を促す方法があります。ただし、相手方保険会社が、任意で提供してくれるとは限りません。裁判所を通じて、相手方任意保険会社に対する文書提出命令を申し立てることも検討する必要があります。事故当時者ではない第三者の車両のドライブレコーダーに、事故の映像が残っている場合があります。このような場合は、任意に提供してもらえるよう交渉するほか、文書送付嘱託の申立てなどの方法で、入手できる場合があります。警察が、事故捜査で防犯カメラやドライブレコーダーの録画データを押収している場合は、刑事記録の閲覧謄写を請求することにより、取得できる場合があります。EDR(イベント・データ・レコーダー)EDR(イベント・データ・レコーダー)とは、車載式の事故情報記録装置のことです。Event(事故などの出来事) Data(情報) Recorder(記録装置)の頭文字をとって、EDRと略されます。エアバックが作動するような強い衝撃を受ける事故が発生した場合に、数秒間さかのぼって、車両の速度やエンジンの回転数、ブレーキやアクセルの作動状況などが記録されます。車両の速度やブレーキ操作などが争点になっている場合、EDRを搭載していれば、EDRデータを解析することにより、事故当時の車両の状況が分かり、事故状況の解明に役立ちます。ドライブレコーダーは、車内外の映像や音声は記録されますが、運転操作の状況までは分かりません。車両の状況や運転操作の検証には、EDRデータが有効です。EDRには、次のようなものが記録されます。速度エンジン回転数アクセルペダルの操作状況ブレーキペダルの操作状況オートマギアのシフトポジション自動車の旋回方向運転席のシート位置助手席の乗員の有無運転席・助手席のシートベルト着用エアバック作動に関する情報2022年7月以降の新車には、EDR搭載がメーカーに義務付けられています。防犯カメラの映像事故現場付近の街頭やコンビニエンスストアなどの防犯カメラに、事故状況が録画されている場合があります。例えば、店舗の駐車場で発生した事故なら、その店舗に防犯カメラが設置されており、駐車場の状況が撮影されている場合があります。事故の映像が残っていれば、事故状況を知るうえで重要な証拠となります。ただし、防犯カメラの映像は保存期間が短いことが多いので、防犯カメラの設置を把握したときは、任意に提供してもらえないか、速やかに、防犯カメラの設置者に交渉する必要があります。目撃者の証言実況見分調書や供述調書で、目撃者の証言が記載されている場合があります。目撃者の証言は、その目撃者が中立の方であれば、重要な証言となりますが、目撃者の供述調書が開示されないこともあります。当事者の言い分が真っ向から食い違っていて、複数の実況見分調書が出来上がっている場合や、死亡事故など被害者側の供述が不能の場合で加害者のみの立会いの実況見分調書が出来上がっている場合には、現地で聞き込みを行うなど、目撃者を探す必要もあります。交通事故の初期対応で被害者がやっておくべき3つのことまとめ刑事記録や物件事故報告書、ドライブレコーダー、EDR(イベント・データ・レコーダー)などは、有力な客観的証拠となり得ます。ただし、内容によっては相手に有利になる場合があることにも注意してください。検察庁への刑事記録の閲覧謄写の請求や、相手方保険会社へのドライブレコーダーの映像やEDRデータの請求は、弁護士に依頼することになるでしょうから、弁護士とよく相談することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 117~120ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 322~326ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 150~166ページ・『改訂版 交通事故事件の実務ー裁判官の視点ー』新日本法規 260~264ページ・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集ー交通事故編ー』第一法規 35~36ページ、42~48ページ、56ページ・最高検企第436号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」・最高検企第437号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」の発出について(通知)
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  • 非接触事故
    車両と接触していない非接触事故の損害賠償請求と過失割合
    非接触事故であっても、「接触していない」というだけで、相手車両の運行と被害者の受傷・損害との相当因果関係が否定されるわけではありません。相当因果関係が認められれば、損害賠償を請求できます。非接触事故の場合、どんなときに相当因果関係が認められるのか、あわせて、非接触事故の過失割合の考え方について見ていきましょう。非接触事故での相当因果関係非接触事故で、相手車両の運行と被害者の受傷・損害との間に相当因果関係が認められるのは、どんな場合でしょうか?非接触事故で相当因果関係を認めた裁判例非接触事故について、次のような最高裁判例があります。事案の概要歩行者Aら数名が幅員3メートルの道路を歩行中、前方から軽二輪車、後方から原付が接近してきたため、前方右側の道路端にある仮橋のたもとに避難したところ、軽二輪車(車両B)が運転を誤り、まさに避けた仮橋に向かって突進して来て停車。その際、歩行者Aが転倒して受傷。歩行者Aが、軽二輪車(車両B)が衝突したことによって傷害を受けたとして損害賠償請求訴訟を起こしました。原審(仙台高裁)は、車両Bが歩行者Aに衝突したものとは認め難いとして、被害者Aの請求を棄却しました。最高裁の判断最高裁は、「車両の運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係があるとされるのは、車両が被害者に直接接触したような場合に限られるものではない」と指摘し、次のように判示しました。最高裁第三小法廷判決(昭和47年5月30日)接触がないときであっても、車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであって、歩行者がこれによって危難を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によって傷害が生じた場合には、その運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当である。その上で最高裁は、被害者の予測に反し、軽二輪車が突進して来たため、被害者は驚きのあまり危難を避けるべき方法を見失い、もし、現場の足場が悪かったとすれば、これも加わつて、その場に転倒したとみる余地もないわけではない。そうだとすれば、被害者の受傷は、軽二輪車の運行によって生じたものというべきである。軽二輪車が直接衝突した事実が認められないとの理由のみから、軽二輪車の運転者に何らの責任もないとした原審の判断は、民法709条の解釈適用を誤り、ひいて審理不尽の違法を犯したものというべきである。と述べ、軽二輪車の運転者の責任について審理を尽くす必要があるとして、請求を棄却した原判決を破棄し、差し戻しを言い渡しました。「車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したもの」「衝突にも比すべき事態」という表現が出てきますが、要するに、非接触の一事をもって車両の運行と被害者の受傷との間の相当因果関係を否定することはできない、という趣旨の判示であると指摘されています。(『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂12ページ)非接触事故で相当因果関係を否定した裁判例下級審の裁判例の中には、非接触事故で「衝突にも比すべき事態が存在しているものとはいえない」として、相当因果関係を否定した事例もあります。例えば、次のような事故における東京地裁の判決(平成3年5月17日)です。事案の概要降雨のため時速80㎞に速度制限中の高速道路において、時速約100㎞で走行していたB車が、前方約150mの地点にスリップで蛇行しているA車を認めたにもかかわらず、減速等せずに、あいている追越車線に進路変更してA車を避けようとしました。ところが、前方約106mの道路中央付近にA車が出て来たため、驚いて進路変更しながら急ブレーキを掛けたことからB車が横転。横転しているB車にC車が追突し、C車の運転者が死亡しました。C車の運転者の相続人らが、A車、B車の運転者らに対して損害賠償請求をした事案です。東京地裁の判決東京地裁は、次のような判断を示しました。B車の運転者は、前方約150mの地点でA車の蛇行を既に認識していたのだから、A車の蛇行が、B車の急ブレーキを誘発助長し、B車の横転をもたらす蓋然性が高いものとすることはできない。B車の横転は、時速約100㎞で進路変更中に不必要に急ブレーキを掛けたというブレーキ操作の不適切等にもとづくものであって、A車の蛇行との結び付きは偶然であり、両車の間に衝突にも比すべき事態が存在しているものとはいえない。したがって、A車の蛇行とB車の横転との間に不法行為成立要件としての因果関係はないものとするのが相当である。(判例タイムズ №767号195~201ページ)非接触事故で因果関係が争われることはよくあります。そのとき、相当因果関係が否定されることは少なく、相当因果関係が存在するとの前提のもとに過失相殺の問題として処理されることの方が多いようです。(参考:『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 301ページ)駐停車している車両を回避して事故に遭ったケース非接触事故は、相手車両が運行している場合とは限りません。駐停車している車両を回避した際に、事故に遭うこともあります。例えば、駐車している車両を避けて、ガードレールに衝突した、対向車と衝突した、あるいは、交差点付近に駐車車両があったため見通しが悪く通行車両と衝突した、といったケースです。駐停車車両の所有者・運転者の責任駐車車両の存在が関係して交通事故が起きた場合、そのような場所に駐停車させると事故を誘発することが予見でき、現実に駐停車車両の存在と事故発生との間に相当因果関係が認められるのであれば、駐車車両の運転者に対して民法709条による損害賠償請求が可能です。また、駐停車中であっても「運行」に該当すれば、自賠法3条に基づく損害賠償責任を問うこともできます。関連自動車の「運行によって」とは? 運行起因背が認められる要件違法駐車車両の関与する事故で、車両所有者の責任を問えるか?共同不法行為となるケース違法駐車していた車両を回避して対向車と衝突し、衝突した対向車両の運転者や同乗者が負傷したときは、違法駐車していた車と、それを回避して対向車線にはみ出した車の共同不法行為として、衝突した相手方から損害賠償請求を受けることになります。関連複数車両が関与した共同不法行為と絶対的過失相殺非接触事故の過失割合・過失相殺の考え方非接触事故の場合に過失割合はどう判断されるのか、接触・衝突事故の場合と比べて過失割合に違いが生じるのか、そのあたりを見てみましょう。接触・非接触は過失割合に関係しない非接触(接触していない)という事実自体は、結果論です。ですから、被害者の負傷や被害車両の損壊に双方の過失がどの程度の割合で寄与しているかという原因論である過失相殺の問題には直接関係しません。したがって、過失相殺率・過失割合の判断にあたっては、非接触事故の場合でも、事故を誘引した車両の運行と被害者の損害との間に相当因果関係が認められるときは、『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ38)を参考に、過失相殺率・過失割合を判断するのが原則です。つまり、接触があった場合の事故態様として基本的な過失相殺率・過失割合を検討し、一方の過失を加重または軽減するような事情が認められるときは、それを考慮して修正することになります。なお、接触・衝突を避けるために取った回避行動が不適切だったとき(通常とりうる回避行動の範囲を逸脱していたとき)は、過失相殺率が不利に修正されます。非接触事故における過失相殺の具体例非接触事故の場合の過失相殺について、具体的な事例で考えてみましょう。四輪車が進行方向右側にある店舗の駐車場に入ろうとして右折したところ、対向車線を走行してきた単車が急ブレーキをかけバランスを崩して転倒。運転者が負傷し、単車が損壊し、単車の運転者は、四輪車の運転者を相手に損害賠償請求訴訟を提起しました。四輪車の運転者は、被害者自身の不適切な運転操作により生じた自損事故であり、四輪車の運行と被害者の受傷・単車の損壊には因果関係はなく、非接触事故なので何ら過失はないと主張して争ったとします。因果関係因果関係については、四輪車の右折がなければ、単車が急ブレーキをかけることはなく、バランスを崩して転倒することもなかったと考えられます。したがって、四輪車と単車との間に接触の事実はなかったとしても、四輪車の右折行動と単車の転倒による運転者の受傷・単車の損壊との間には、特段の事情がない限り、相当因果関係が認められます。過失割合過失割合は、接触・衝突があった事故と同様に考えます。この事故のケースは、『別冊判例タイムズ38』では「単車と四輪車との事故」の「四輪車が道路外へ出るため右折する場合」の事故類型【220】に該当します。直進車(単車)の通行を右折車(四輪車)が妨げたことになるため、四輪車の運転者に主たる過失がありますが、単車の運転者にも軽度の前方不注視があり、単車の基本的な過失相殺率は1割となります。非接触事故の場合も、基本の過失相殺率は、接触・衝突事故の場合と同じです。基本の過失相殺率を出発点として、「四輪車が右折の際に徐行しなかった」「右折の合図を出さなかった」など、四輪車の過失が加重される事情があれば、単車側に有利に修正されます。逆に、単車の側に「速度違反があった」「四輪車が右折を完了していた、完了に近い状態だった」場合などは、単車の過失が加重され、単車側に不利に修正されます。相手から「回避行動が不適切だった」とする主張があったとき相手から「回避行動が適切でなかった」という主張がなされることがあります。自分に過失はなく、被害者の損害の発生は被害者自身の責任だと言うためです。「回避行動が不適切だった」ことについての立証責任は相手方にあります。被害者の側に「回避行動が適切だった」ことについて立証責任があるわけではありません。相手が、「回避行動が不適切であった」ことを具体的に主張・立証しなければなりません。例えば、「単車が急ブレーキをかけた地点と四輪車との間には十分な距離があり、急ブレーキをかけなくても接触・衝突は回避できた」あるいは「単車が速度を調整すれば、右折しようとしていた四輪車の後方を通り抜けることができた」といったようにです。相手からこういった主張があり、裁判所が過失相殺の判断において検討する必要があると考えたときは、単車が急ブレーキをかけた地点と四輪車との距離関係、事故前の双方の速度、事故現場付近の道路の状況などを認定し、その状況下での単車の運転者の心理も考慮して、単車が急ブレーキをかけなければ衝突を回避できない状況だったかどうかを検討します。単車の回避行動が、通常とりうる回避行動の範囲を逸脱している(その回避行動をとらなくても安全に回避できた)と考えられる場合には、その不適切性の程度に応じて、過失割合が被害者に不利に修正されます。単車の回避行動が通常とりうる回避行動の範囲と考えられる場合には、過失割合が修正されることはありません。まとめ相手車両と接触していない事故(非接触事故)の場合でも、相手車両の運行や違法な駐停車と被害者の損害との間に相当因果関係が認められるときは、損害賠償請求が認められます。非接触事故の場合の過失相殺率・過失割合の決め方は、接触・衝突事故の場合と同じです。「過失相殺率認定基準」を参考にします。接触していないからといって、過失割合が変わるわけではありません。回避行動が不適切だったときは、過失割合が不利に修正されることがあります。交通事故の被害に遭い、お困りのときは、交通事故に強い弁護士事務所に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 12ページ、79ページ・『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第2版』弘文堂 15~16ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 300~304ページ・『別冊判例タイムズ38』364ページ
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  • 人と車の事故の過失割合
    歩行者と自動車・単車との交通事故の過失割合・過失相殺率の基準
    歩行者と車(四輪車・単車)との交通事故は、ほとんどのケースで車側の過失責任が重くなります。車の運転者には、歩行者に十分注意して運転することが義務づけられているからです。ただし、歩行者が信号を無視して道路を横断したなど、歩行者に交通ルール違反があった場合は、重大な過失として大きく過失相殺されることがあります。ここでは、歩行者と車との交通事故の過失割合の基本的な考え方について、過失相殺率認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に、道路を横断中(横断歩道または横断歩道以外)の事故道路の端を通行中の事故路上横臥者の事故に分けて見ていきます。なお、ここで紹介するのは、代表的な事故類型における過失相殺率の基準です。『過失相殺率認定基準』の全てを紹介したものではありません。実際の交通事故で過失割合を判断するときには、『過失相殺率認定基準』のどの事故類型を参考にするか検討し、修正要素を加味し、個別事情を考慮して判断する必要があります。専門的な知識や経験がないと難しいので、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。「歩行者(=被害者)の過失」と「車両の運転者(=加害者)の過失」は、質的に注意義務が異なるので、厳密に言えば、同一線上で過失の程度を対比できません。そのため、過失割合でなく、過失相殺率が正しい表現です。ただ、一般的には過失割合という言葉の方が広く使われ、イメージしやすいので、ここでは厳密な表記が必要でない限り、過失割合を使っています。横断歩道を横断中の事故の過失割合※歩行者が横断歩道を横断中の事故横断歩道上では、法律により歩行者は強く保護され、絶対的優先権があります。道路交通法で、車両は、横断歩道を横断しようとする歩行者がある場合、横断歩道の直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない(道路交通法38条1項)と定められています。したがって、横断歩道上の事故は、原則として過失相殺されません。青信号で横断歩道を横断中の事故はもちろん、信号機のない横断歩道を横断中の事故であっても、さらに、相手が直進車であろうと右折車・左折車であろうと、過失相殺しないのが原則です。歩行者0:車100歩行者が横断歩道を外れて横断した場合は?横断歩道による横断かどうかは、交通事情などから具体的に検討すべきですが、おおむね、横断歩道の端から1~2m離れた場所の横断や、横断歩道上に停止した車両の前後の横断は、横断歩道と同視されます。つまり、横断歩道上とは、横断歩道内だけでなく、横断歩道の端から1~2m以内の場所も含まれます。(参考:「別冊判例タイムズ38」64ページ)歩行者が赤信号で横断歩道を渡った場合※信号機のある横断歩道を歩行者が赤信号を無視して横断したとき歩行者が赤信号を無視して横断した場合は、横断歩道上の事故であっても、歩行者の過失が認められ、過失相殺されます。もっとも、歩行者は交通弱者保護の観点から、過失相殺率100%ではなく、最大70%の過失相殺となります。車の側の信号の色によって、過失相殺率が異なります。車の側の信号基本の過失相殺率赤20黄50青70横断歩道以外の場所を横断中の事故の過失割合※横断歩道以外の場所を横断したとき横断歩道以外の場所を横断することは危険で、歩行者の注意義務は重くなります。そのため、横断歩道以外を横断して事故に遭ったときは、20%程度の過失相殺がされます。歩行者20:車80幹線道路の場合は、交通量が多く、車が高速で走行し、危険性が高いことから、10%加算修正されます。基本の過失相殺率20修正要素幹線道路+10横断禁止の規制あり+5~10児童・高齢者-5幼児・身体障害者等-10車両の著しい過失-10車両の重過失-20※修正要素は一部のみ抜粋。付近に横断歩道があるのに横断歩道を横断しなかった場合※横断歩道の付近を横断したとき歩行者が道路を横断しようとする場合、付近に横断歩道があるときは横断歩道を横断しなければなりません(道路交通法12条1項)。したがって、近くに横断歩道があるのに横断歩道を横断せず事故に遭った場合は、歩行者の過失が重く、基本の過失相殺率は30%となります。歩行者30:車70幹線道路の場合は、交通量が多く、車が高速で走行しているため、横断歩道を利用しないと危険性が高いことから、10%加算修正されます。基本の過失相殺率30修正要素幹線道路+10横断禁止の規制あり+10児童・高齢者-10幼児・身体障害者等-20車両の著しい過失-10車両の重過失-20※修正要素は一部のみ抜粋。横断歩道の付近とは、どの程度の距離範囲か?横断歩道の付近とは、道路の幅員・付近の状況・交通量などから判断して、通常なら横断歩道を利用するであろう、と考えられる距離です。おおよその基準としては、おおむね幅員14m(片側2車線)以上の道路で、交通量が多く、車が高速で走行している道路は、横断歩道から40~50m以内、それ以外の道路は、20~30m以内とされています。(参考:「別冊判例タイムズ38」89ページ)付近に横断歩道橋があるのに歩道橋を利用せず道路を横断した場合横断歩道橋は、横断歩道のような法的規制はありません。しかし、歩道橋が設置されている道路は、交通量が多く、車が高速で走行している場所です。ですから、横断歩道橋が付近にあるのに、歩道橋を利用せずに道路を横断した場合は、横断歩道の付近を横断する歩行者と同じように扱われます。横断歩道橋の構造上、乳母車や自転車を押しての利用、高齢者や身体障害者の利用は困難です。こういう歩行者の場合は、横断歩道が近くにない場所での横断の基準を参考に、過失相殺率を判断します。歩道や道路の端を歩行中の事故の過失割合歩行者が、歩道や道路の端を歩いているときの事故の場合です。交通事故の発生場所が、歩車道の区別のある道路か、歩車道の区別のない道路かによって、歩行者の過失相殺率が異なります。歩車道の区別のある道路における事故歩道を歩いていた場合車は、歩車道の区別のある道路では車道を通行し、道路外の施設や場所に出入りするためやむを得ず歩道を横断するときは、歩道に入る直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない(道路交通法17条1項2項)と定められています。したがって、歩道を通行する歩行者には法的保護があり、歩道上での事故は、原則として過失相殺されません。歩道には、路側帯も含みます。歩行者0:車100歩道があるのに車道を歩いていた場合歩行者は、歩道と車道の区別のある道路においては、道路を横断するときや道路工事等のため歩道を通行することができななど「やむを得ない事情」があるときを除き、歩道を通行しなければなりません(道路交通法10条2項)。したがって、歩行者が、歩車道の区別のある道路の車道を通行中に事故に遭った場合は、歩行者に過失が認められ、原則として過失相殺されます。歩行者20:車8020%の過失相殺率は車道の側端(端からおおむね1m以内)を通行した場合です。側端でない場合は、歩行者の過失が大きくなり、基本の過失相殺率が30%となります。やむを得ない事情がある場合は、車道の端を通行することが許されますが、前方・後方から走行してくる車の動きを注視し、安全を確認する注意義務があります。基本の過失相殺率は10%です。「やむを得ない事情」とは、歩道を工事している場合のほか、片側のみの歩道が設けられている道路で交通量が多く横断できない場合や、近距離を移動するため二度も横断することがかえって危険となる場合などです。歩車道の区別のない道路における事故歩行者は、歩道と車道の区別のない道路では、道路の右側端に寄って通行しなければならず、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄って通行することができます(道路交通法10条1項)。したがって、歩行者が、道路の右側端を通行していたか、左側端を通行していたか、それら以外の場所を通行していたか、によって過失相殺率が異なります。右側端を通行している場合※道路の右側端を通行していたとき歩行者が道路の右側端を通行している場合は、歩行者の側方を通行する車に、歩行者との間に安全な間隔を保ち、徐行する注意義務があります(道路交通法18条2項)。事故の発生は車の過失と考えられ、原則として過失相殺はされません。歩行者0:車100左側端の通行が例外的に許される場合も、この基準によります。例えば、道路の右側に崖があったり工事個所があったりして右側端通行が危険な場合や、右側端に駐車車両が並んでいて右側端通行ができない場合などです。左側端を通行している場合※道路の左側端を通行しているとき歩行者が左側端を通行し、右側端を通行していたら事故発生を容易に回避できた場合など、左側端通行と事故との間に因果関係がある場合は、過失相殺されます。歩行者5:車95道路の側端以外を通行している場合道路端からおおむね1m以上中央部分を通行している歩行者が、背面または正面から車に衝突された場合です。幅員8m以上の道路の中央部分(道路端からおおむね3m以上)を歩行者が通行していたときは、20%の過失相殺がされます。それ以外の場合(幅員8m未満の道路、幅員8m以上の道路の端からおおむね1~3m離れた部分)は、10%の過失相殺率となります。路上横臥者の事故の過失割合酒に酔った歩行者が、道路上で寝てしまったような場合の事故です。横臥者だけでなく、座り込んでいる者も同様です。昼間は、車からの路上横臥者の発見が比較的容易であることから、車の過失が大きく、路上横臥者の基本の過失相殺率は30%とされています。夜間は、車からの発見・衝突回避が遅れ、発見しても人とは思わずに轢過することもあります。そのため、夜間の場合は、昼間と比較して路上横臥者の過失が加重され、路上横臥者の基本の過失相殺率は50%とされています。昼間夜間基本の過失相殺率3050修正要素幹線道路+10+10~20住宅街・商店街等-5-10~20車の著しい過失-10-10車の重過失-20-20※修正要素は一部のみ抜粋。まとめ歩行者と車両(四輪車・単車)が衝突する事故の場合、歩行者は交通弱者として法的な保護があります。ですから、道路交通法に違反するような過失がなければ、基本的に過失相殺されることはありません。例えば、道路を横断するときは、横断歩道を渡る、信号を守る、歩道のある道路は歩道を歩く、歩道がない場合は道路の右側を通行する、といったことを守っていれば、歩行者は絶対的な法的保護がありますから、原則として過失相殺率はゼロです。過失割合・過失相殺率は、一応の基準はありますが、修正要素や具体的な事故態様により判断する必要があります。過失割合で揉めているときは、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』(別冊判例タイムズ38)・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房・『道路交通法解説16-2訂版』東京法令出版
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  • 交差点で直進車同士の衝突
    交差点での直進車同士の出会い頭衝突事故の過失割合
    交差点で直進車同士が出会い頭に衝突した事故の過失割合を検討する場合、次の2つに分類して考えます。信号機により交通整理の行われている交差点における事故信号機により交通整理の行われていない交差点における事故「信号機があるか、ないか」ではなはなく、「信号機により交通整理が行われているか、行われていないか」であることに注意してください。点滅信号は、信号機により交通整理が行われている交差点には該当しません。信号機により交通整理が行われている交差点での事故は、基本的に信号の色で過失割合が決まります。信号機により交通整理が行われていない交差点での事故は、同幅員の道路が交差する交差点、広路と狭路が交差する交差点、一時停止の規制がある交差点などにより、基本の過失割合が異なります。主な事故類型について、過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に、過失割合の基本的な考え方を見ていきましょう。信号機により交通整理が行われている交差点における事故信号機により交通整理が行われている交差点では、信号の色によって、基本の過失割合が決まります。信号機により交通整理が行われている交差点での事故青信号車:赤信号車0:100黄信号車:赤信号車20:80赤信号車:赤信号車50:50信号機に従って進行していれば、基本的に過失はないと考えられ、青信号車と赤信号車との過失割合は[0:100]が原則です。ただし、青信号で交差点に進入したとしても、前方注視義務を払っていれば衝突を回避できたような場合には、青信号車にも10%程度の過失が認められることがあります。例えば、信号待ちで停車していた車が、青信号に変わって発進したとき、前方左右の安全を確認していれば、赤信号車を容易に発見でき、回避できた場合などです。点滅信号の交差点の場合信号機が設置されていても、「黄色の点滅信号」や「赤色の点滅信号」が表示されているだけの交差点は、「交通整理の行われていない交差点」となります(最高裁判決・昭和44年5月22日)。黄色の点滅信号は、他の交通に注意して通行できるのに対し、赤色の点滅信号は、停止位置で一時停止しなければなりません(道交法施行令2条1項)。したがって、一方が黄点滅信号、他方が赤点滅信号の交差点は、このあと説明する「信号機により交通整理が行われていない交差点」のうち「一方に一時停止規制のある交差点」と同じ扱いとなります。信号機により交通整理が行われていない交差点における事故信号機により交通整理が行われていない交差点では、優先道路や、幅員の明らかに広い道路(広路)を通行する車の進行が優先です。一方が優先道路や広路でない、ほぼ同幅員の道路が交差する交差点では、左方優先の原則や交差点への進入速度により過失割合が決まります。一時停止規制や一方通行規制がある場合は、一時停止違反や一方通行違反の有無が過失割合に影響します。次の3つのケースを考えます。同幅員の道路が交差する交差点での事故一方に一時停止や一方通行の規制がある交差点での事故広路と狭路とが交差する交差点での事故それぞれ、具体的に過失割合をどう考えるか、見ていきましょう。同幅員の道路が交差する交差点での事故同幅員の交差点における法律上の優先関係は、左方優先(道交法36条1項1号)のみですが、見通しの悪い交差点に進入するときには、双方の車に徐行義務があります(道交法42条1号)。交通整理が行われていない交差点での出会い頭の衝突事故のほとんどは、見通しの悪い交差点で発生します。したがって、同幅員の道路が交差する交差点での事故は、交差点進入時の速度と左方優先の原則によって、基本の過失割合が決まります。同幅員の道路が交差する交差点での事故A車が左方車の場合、A車とB車の過失割合は、交差点への進入速度によって、次のようになります。AとBの速度が同程度A40:B60A減速せず、B減速A60:B40A減速、B減速せずA20:B80交差点への進入速度がほぼ同じくらいなら、左方優先の原則により、過失割合は、左方車が40%、右方車が60%です。交差点進入時に減速していれば、20%減算され、過失割合が有利になります。一方に一時停止や一方通行の規制がある交差点での事故道路標識等により一時停止規制のある交差点では、停止線の直前で一時停止しなければならず、一時停止した車両は、交差道路を通行する車両等の進行を妨げてはならないとされています(道交法43条)。また、一時停止をしても、左右の安全確認が不十分で衝突事故を起こしたときは、一時停止の規制のある側が不利に扱われます。ただし、一時停止規制がない道路を進行する車も、見通しのきかない交差点では徐行義務がありますから(道交法42条1号)、それらを考慮して過失割合が決まります。一方に一時停止規制のある交差点での事故AとBの速度が同程度A20:B80A減速せず、B減速A30:B70A減速、B減速せずA10:B90B一時停止後進入A40:B60一方に一時停止規制がある場合の過失割合は、徐行義務違反車が20%、一時停止義務違反車が80%です。交差点進入時に減速していれば、10%減算され、過失割合が有利になります。点滅信号(一方が黄点滅、他方が赤点滅)の場合の事故は、この基準が適用されます。一方通行違反の場合B車が一方通行に違反して通行し、交差点に進入して衝突した場合、基本の過失割合は、A20:B80です。一方通行の道路を逆走して交差点に侵入するということですから、上の図で、停止線や止まれの標識がない交差点を考えてください。交差点進入時に減速しなかった車両は、著しい過失として10%加算されます。なお、B車が、一方通行の道路から後退で交差点に出て来て衝突した場合は、重過失として、Bに20%加算されます。広路と狭路とが交差する交差点での事故一方が明らかに広い道路(広路)の場合は、広路側の道路の進行が優先します。ただし、見通しのきかない交差点に進入する場合は、広路を進行していたとしても、徐行義務は免れません(最高裁判決・昭和63年4月28日)。徐行義務が免除されるのは、交通整理が行われているときと優先道路を通行しているときだけです(道交法42条1号かっこ書)。したがって、広路を進行していたとしても、減速の有無が過失割合に影響します。広路と狭路が交差する交差点での事故AとBの速度が同程度A30:B70A減速せず、B減速A40:B60A減速、B減速せずA20:B80広路と狭路が交差する交差点において、直進車が出会い頭に衝突した事故の基本の過失割合は、広路車30%、狭路車70%です。減速していれば10%減算され、過失割合が有利になります。一方が優先道路の場合優先道路を通行している車両は、見通しのきかない交差点を通行する場合でも徐行義務はありませんが(道交法42条1号かっこ書)、他の車両や歩行者に対する注意義務(道交法36条4項)はあります。そのため、優先道路を通行する車にも、前方不注視や速度違反など過失が認められることが多くあります。一方が優先道路の交差点で、直進車が出合い頭に衝突した事故の基本の過失割合は、優先車10%、劣後車90%です。まとめ交差点での直進車同士の出会い頭の衝突事故の過失割合は、信号機により交通整理が行われている交差点か否かで考え方が異なります。信号機により交通整理が行われている交差点での事故は、信号機の色により、基本の過失割合が決まります。ただし、信号機があっても点滅信号の場合は、これに該当せず、一時停止規制のある交差点での事故と同じ扱いとなります。信号機のない交差点での事故の過失割合は、優先道路や広路を通行する車が有利になります。同幅員の道路が交差する交差点の場合は、左方優先の原則や交差点進入時に減速したかどうかにより基本の過失割合が決まります。そのほか、一時停止違反や一方通行違反も過失割合に影響します。なお、ここで紹介したのは、交差点で直進車同士が出合い頭に衝突した事故の過失割合の基本的な考え方です。実際の交通事故では、修正要素や個別事情を考慮して過失割合が決まりますから、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』(別冊判例タイムズ38)・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房・『道路交通法解説16-2訂版』東京法令出版
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  • 交差点で右折車と直進車の事故の過失割合
    交差点での右折車と直進車の衝突事故の過失割合
    交差点での直進車と右折車との事故の過失割合は、基本的に「交差点における直進車優先の原則」と「交差点における一般注意義務」から判断されます。信号機により交通整理が行われている交差点では、信号の色によって、過失割合が決まります。交差点における直進車優先の原則(道交法37条)交差点で右折する場合、直進しようとする車があるときは、直進車の進行を妨げてはならない。交差点における注意義務(道交法36条4項)交差点に進入し通行するときは、他の車や歩行者に特に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。交差点での直進車と右折車との衝突事故は、直進車と右折車が「対向方向から交差点へ進入した場合」と「交差方向から交差点へ進入した場合」の2つのケースがあります。過失相殺率認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に、直進車と右折車との過失割合の基本的な考え方を見ていきましょう。対向方向から交差点へ進入した直進車と右折車の衝突事故対向方向から交差点へ進入した直進車と右折車との衝突事故は、信号機により交通整理が行われている交差点か、信号機により交通整理が行われていない交差点か、で過失割合の考え方が異なります。信号機により交通整理が行われている交差点の場合信号機のある交差点に対向方向から進入した直進車と右折車との事故直進車と右折車が、対向方向から交差点に進入した場合、通常、対面信号は同じです。基本的には「直進車優先の原則」がありますが、双方が黄信号や赤信号で交差点に進入した場合は、直進車の側も、直進優先を強く主張することはできません。なお、混雑する交差点では、右折用に時差式信号であったり、右折の青矢印信号が表示される場合があります。こういう交差点では、直進車の側の信号が先に赤に変わりますから、直進車が黄信号や赤信号で交差点に進入し、右折車と衝突したときは、直進車の過失割合が大きくなります。直進車Aと右折車Bの基本の過失割合は、次のようになります。対面信号が同一ともに青信号で進入A20:B80ともに黄信号で進入A40:B60ともに赤信号で進入A50:B50時差式信号Aが黄信号で進入Bが青信号で進入し、黄信号で右折A70:B30Aが赤信号で進入Bが青信号で進入し、赤信号で右折A90:B10Aが赤信号で進入Bが黄信号で進入し、赤信号で右折A70:B30右折の青矢印信号Aが赤信号で進入、Bが青矢印で進入A100:B0右折の青矢印信号が表示されると、直進が禁止され、右折のみが許されますから、基本的には直進車の赤信号無視となり、直進車の過失割合が100%となります。ただし、右折待機車は、比較的容易に対向直進車の動静を確認することができるので、右折車に若干の過失が認められることもあります。信号機により交通整理が行われていない交差点の場合信号機のない交差点に対向方向から進入した直進車と右折車の事故信号機により交通整理が行われていない交差点の場合、対向方向から進入した直進車と右折車との衝突事故の過失割合の基本は、次の通りです。直進車20:右折車80交差点では「直進車が優先」(道交法37条)ですから、直進車の進行を妨害した右折車の過失が重くなります。一方、直進車にも「交差点での注意義務」(道交法36条4項)がありますから、20%程度の過失が認められます。基本的な優先関係よりも個別事情の判断が大事なケースがある信号機のない交差点では、常に[直進車20:右折車80]の過失割合が基本となるとは限りません。例えば、住宅街の幅員の狭い道路の交差点での事故のような場合は、基本的な優先関係よりも、交差点の形態など個別事情が重要となるケースが多くあります。実際の事故態様に応じて、慎重に検討することが大事です。交差方向から交差点へ進入した直進車と右折車の衝突事故交差方向から交差点へ進入した直進車と右折車の衝突事故は、信号機により交通整理が行われている交差点か否か、信号機のない交差点の場合は、直進車と右折車のどちらが左方車となるかによって、過失割合の考え方が異なります。信号機により交通整理が行われている交差点の場合信号機のある交差点に交差方向から進入した直進車と右折車の事故信号機により交通整理が行われている交差点では、相互の優劣関係は信号表示によって決まります。したがって、基本的に、信号機により交通整理が行われている交差点での出会い頭の衝突事故の基準を準用します。青信号車:赤信号車0:100黄信号車:赤信号車20:80赤信号車:赤信号車50:50信号機により交通整理が行われていない交差点の場合信号機により交通整理が行われていない交差点での事故は、直進車と右折車のどちらが左方か(左方優先の原則)と、直進車優先の原則により、基本の過失割合が異なります。左方優先の原則(道交法36条1項1号)交通整理の行われていない交差点においては、その通行している道路と交差する道路を左方から進行してくる車の通行を妨害してはならない。直進優先の原則(道交法37条)交差点で右折する場合、直進しようとする車があるときは、その車の進行を妨害してはならない。直進車が、右折車に対して左方の場合直進車が左方、右折車が右方の場合直進車Aが左方、右折車Bが右方の場合、右折車Bは徐行しながら交差点の中央まで進み、左方から来る直進車Aの進行を妨害しないように右折しなければなりません。この場合の優先関係は、左方優先の原則と直進車優先の原則から、直進車Aの進行が優先します。もっとも、直進車Aにも、交差点における注意義務(道交法36条4項)がありますから、一定の過失は認定されます。したがって、直進車Aと右折車Bの基本の過失割合は、次のようになります。直進車Aが、右折車Bに対して左方A30:B70右折車が、直進車に対して左方の場合右折車が左方、直進車が右方の場合直進車Aが右方で、右折車Bが左方にある場合、右折車Bの交差点中央までの進行形態は、直進車の場合とほとんど同じです。右折車といっても、ハンドルを大きく右に切るのは、交差点中央付近に至ってからですから、事故の形態は、右折車と直進車というより、交差点での出会い頭事故の様相を呈することになります。したがって、直進車Aと右折車Bの基本の過失割合は、次のようになります。直進車Aが、右折車Bに対して右方A40:B60なお、直進車Aが右方で、右折車Bが左方にある場合、「左方優先の原則」と「直進優先の原則」が競合します。道路交通法では、左方優先と直進優先の優劣について規定がないからです。右折車が直進車に対して左方の場合、一般的には、「直進優先の原則」が「左方優先の原則」より優先すると考えられています。『過失相殺率の認定基準』でも、直進優先を左方優先より重視しています。それは、主に2つの理由からです。右折車Bは、右折するために徐行して交差点に進入するので、直進車Aに比べ、危険回避措置をとることが容易だからです。右折車Bは、対向直進車Dや左方直進車Cとの関係で、交差点の中央で待機を余儀なくされることが予測され、交差点の通行をより多く遮断する可能性が大きいため、直進車Aを先に通過させるのが交通の円滑にかなうからです。直進車と左方右折車との優先順位について、左方優先と直進優先のどちらを優先的に適用すべきか、について判示した次のような裁判例があります。直進車と左方右折車との通行順位についての判例交通整理の行なわれていない交差点における直進車と左方道路からの右折車との通行順位につき、法36条1項1号と37条のいずれを優先的に適用すべきであるかが必ずしも明らかでない。しかしながら、右折車は右折のために当然に減速する必要があるのであるから、直進車と右折車を比較すれば、一般的に右折車の方が危険回避措置をとることが容易なのであって、右折車はたとえ自車が左方車であっても右方直進車の進行妨害をしてはならないと解することが相当であり、そのように解することが道路交通の安全と円滑を図る法の目的にかなうところであると考えられる。したがって、右のような場合には、法36条1項1号を排して法37条が適用されなければならない。(札幌高裁判決・昭和50年11月27日)※法36条1項1号は「左方優先の原則」、法37条は「直進優先の原則」です。まとめここで取り上げたのは、交差点における直進車と右折車の事故類型のごく一部です。しかも、基本の過失割合の考え方のみです。実際の事故について過失割合を判断するときには、『過失相殺率認定基準』の、どの事故類型を参考にするか、修正要素をどう加味するか、検討が必要です。個別事情を考慮して判断する必要もあります。かなり専門的な知識と経験が必要ですから、自分で判断しようとせず、交通事故に強い弁護士に相談することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』(別冊判例タイムズ38)・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房・『道路交通法解説16-2訂版』東京法令出版・半谷恭一・大阪地方裁判所判事「道路交通法37条は同法36条1項1号に優先して適用されるか」判例タイムズ№338
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  • センターラインオーバー
    センターラインオーバーの対向車と正面衝突した交通事故の過失割合
    センターラインオーバーによる対向車同士の衝突事故は、反対車線にはみ出した方が、基本的に100%の過失責任を負います。ただし、幅員があまり広くなく、センターラインのない道路では、左側部分を走行していた車の方にも、ある程度の前方不注視が問われることがあります。過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に、対向車同士の事故の過失割合の考え方について見ていきましょう。左側通行は車両のもっとも基本的な原則対向車同士の事故の過失割合を考える前提として、次の点を押さえておいてください。車両には、「左側部分通行の原則」と「キープレフトの原則」があります。これは、信号表示に従うことと並び、車両の運行にあたっての最も基本的なルールです。左側部分通行の原則(道交法17条4項)車両は、道路の左側部分を通行しなければならない。キープレフトの原則(道交法18条1項)車両は、道路の左側に寄って通行しなければならない。センターオーバーは、この最も基本的なルールに違反するため、センターオーバーによる衝突事故は、道路の右側部分にはみ出した車両の一方的過失となるのです。これは、赤信号で交差点に進入した車の過失割合が100%となるのと同じです。ただし、同じ対向車同士の衝突事故でも、幅員が十分に広い道路と、車両がすれ違いできる程度の幅員の道路では、過失割合を同じように考えることはできません。次の3つのケースに分けて、過失割合の考え方を見ていきます。センターラインがある道路や幅員の十分広い道路の場合幅員があまり広くなく、センターラインもない道路の場合右側部分にはみ出して通行することが認められる場合センターラインがある道路や幅員の十分広い道路の場合センターラインオーバーによる対向車同士の事故センターライン(中央線)がある道路で、左側を走行していた車Aと、センターオーバーした車Bとが衝突事故や接触事故を起こしたときは、原則として、センターオーバーした車Bの一方的過失とみなされます。センターラインがなくても、幅員が十分広い道路の場合も同様です。センターオーバーによる対向車同士の事故の基本の過失割合道路の左側を走行していた車Aと、センターオーバーした車Bとの衝突事故の基本の過失割合は、次のようになります。A:B=0:100ただし、左側走行車Aが、通常要求される注意を払っていれば、センターオーバー車Bを容易に回避できたにもかかわらず、前方不注視で対向車の発見が遅れ、回避できなかった場合などは、左側走行車Aも、ある程度の過失が問われることがあります。追越し中の事故は、対向車の速度違反を考慮センターオーバーの原因としては、追越し、居眠り、脇見、カーブでの速度超過などがあります。『過失相殺率認定基準』では、センターオーバー車Bが、先行車両を追越すため反対車線にはみ出した場合に限り、左側走行車Aの速度違反を特別に修正要素として考慮するようにしています。その理由は、追越しの場合、道路の右側部分にはみ出して走行することが認められており、追越しにあたっては、対向車の速度違反が重要な意味を持つからです。例えば、左側走行車Aが、制限速度内で走行していれば、追越し車両Bと衝突することはなかったのに、Aが制限速度を大幅に超過していたことが要因で、追越しを完了できず衝突してしまった、というようなケースを考えれば理解できるでしょう。もっとも、道路の右側部分にはみ出して追越しできるのは、道路の右側部分を見通すことができ、反対方向からの交通を妨げる恐れのないときに限られます。道路の右側部分の走行は、例外として限定的に認められるものですから、基本的には追越しをしようとした車Bの過失が大きいことは変わりません。追越しのために道路の右側部分にはみ出して走行することが認められる要件とは?道路交通法では、左側部分の幅員が 6mに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするとき、道路の中央から右の部分(右側部分)にその全部または一部をはみ出して通行することができる(道交法17条5項4号)とされています。ただし、その場合、3つの要件があります。道路の右側部分を見通すことができこと反対の方向からの交通を妨げる恐れがないこと道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されていないこと追越しで道路の右側部分を走行することは、この3つの要件を満たす場合に、例外的に認められることです。したがって、車両Bが、追越しのため反対車線にはみ出し、車両Aと衝突した場合、車両Aに速度違反があると、Aの過失割合が10~20%加算修正されます。Aが15㎞以上の速度違反A10:B90Aが30㎞以上の速度違反A20:B80幅員があまり広くなく、センターラインもない道路の場合幅員が狭い道路でのセンターオーバーによる対向車同士の事故車両がすれ違うことができるものの、幅員があまり広くなく、センターライン(中央線)の表示もない道路の場合は、センターオーバーの事故の過失割合をそのまま適用することはできません。『過失相殺率の認定基準』では、「左側部分通行の車両といえども、対向車の進路に対する相当の注意が要求されてしかるべき」となっています。したがって、左側通行車にも、ある程度の過失割合を認める場合があります。右側部分にはみ出して通行することが認められる場合次のような場合は、右側部分にはみ出して通行することが認められます(道交法17条5項)。一方通行のとき道路の左側部分の幅員が車の通行のため十分でないとき道路の損壊、工事その他の障害のため、道路の左側部分を通行できないとき左側部分の幅員が6mに満たない道路で、他の車を追い越そうとするとき急勾配の道路の曲がり角付近で、道路標識等により通行の方法が指定されているとき双方の車両の速度や道路状況など具体的事情にもとづき、個別的に過失割合を検討することになり、左側通行車にも、ある程度の過失割合を認める場合があります。まとめ対向車同士の衝突事故は、センターオーバーした車が、基本的に100%の過失責任を負います。ただし、道路の左側を走行していた車が、事故を回避できる状況であったのに発見が遅れたなどで回避できなかった場合は、前方不注視による過失が問われることがあります。また、センターラインがない幅員の狭い道路の場合は、双方の速度や道路状況など具体的事情にもとづき、個別に判断することになります。実際の事故の過失割合の判断は難しいので、過失割合に疑問のある場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』(別冊判例タイムズ38)・『道路交通法解説16-2訂版』東京法令出版
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  • 追越し車と追い越された車(被追越車)との交通事故の過失割合
    あなたの車を追い越そうとした車が、あなたの車両の前方に進路変更してきて、あなたの車と接触した場合や、あなたが追突してしまった場合の過失割合についてです。追越し禁止場所での事故か、それ以外の場所での事故か、で異なります。過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に、追越車(追い越す車)と被追越車(追い越される車)の過失割合の基本的な考え方を見ていきましょう。過失割合の基本的な考え方追越車と被追越車との事故は、追越車の過失割合が圧倒的に大きくなります。ただし、被追越車の過失もゼロではありません。道路交通法では、「追越しの方法」や「追越しする場合の運転者の注意義務」を定めるとともに、「他の車両に追いつかれた車両の義務」についても定めています。とはいえ、追越車と被追越車の注意義務を比較すると、追越車の注意義務が極めて重くなります。追越しの方法についての法律の規定道路交通法では、追越しの方法について、次のように定めています。他の車両を追い越す場合は、右側追越しが原則です(道交法28条1項)。例外として、前の車が右折等のため道路の中央または右側端に寄って通行している場合は、その左側を通行しなければなりません(同条2項)。追越しをする場合の運転者の注意義務については、こう規定しています。道交法28条4項追越しをしようとする車両は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。つまり、追越しをしようとする車両には、次の4つの注意義務があります。追い越し車両の義務反対方向や後方からの交通に十分注意し、前車の前方の交通にも十分注意し、前車の速度・進路、道路の状況に応じ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。この注意義務は、並列的なものであり、いずれか1つを欠いても違反になると解されています(16-2訂版『道路交通法解説』東京法令出版)。追越車が割り込んで起きた事故追越車と被追越車との事故の大半は、追越車が、追越し中に対向車との衝突を回避しようとして、被追越車の前に割り込むときに発生します。たいてい、追越車が反対車線にはみ出して追越しをしますから、追越し開始前に、反対車線を進行してくる車(対向車)はないか、対向車がある場合は、対向車の距離・速度など安全に追越しができるかを見極め、追越しを開始しなければいけません。さらに、被追越車の前方に進入するときには、被追越車の速度や進路に応じて、安全な速度と方法で進行しなければいけません。ですから、追越車が、被追越車の前に割り込んで衝突した場合、無理な追越しが主な原因と判断され、追越車の過失割合が大きくなるのです。追越車が被追越車の前方に割り込んだ直後に、追越車の後部に被追越車が追突した場合も同じです。追越車の方に、「被追越車の速度と進路に応じ、被追越車の前方に進入する注意義務」があるからです。被追越車の側の過失とはとはいえ、多くの場合、被追越車の過失割合は「ゼロ」にはなりません。道路交通法において「他の車両に追いつかれた車両の義務」を定めており、これに違反すると判断されるケースが多いからです。これが、被追越車の過失となります。道路交通法では、「他の車両に追いつかれた車両の義務」について、次のように定めています。他の車両に追いつかれた車両の義務加速してはならない義務(道交法27条1項)追越車が追越しを完了するまで加速してはならない。進路を譲る義務(同条2項)道路中央との間に追越車が進行するのに十分な余地がない場合は、できる限り道路の左側に寄って、進路を譲らなければならない。「法27条2項は、速度の速い車両に追いつかれた車両に対し進路を譲るべき義務を課し、狭い道路での交通の円滑を図ることを目的としている」(大阪高裁判決・昭和43年4月26日)ものです。また、この道路交通法27条の規定に加えて、追越しをしようとする車があり、自車がそのままの速度と方法で進行すれば、事故に至る危険があることを具体的に認識し得た場合には、安全運転義務(道交法70条)の一環として、減速し、安全に追越しを完了させる注意義務があるともされています(「別冊判例タイムズ38」286ページ)。したがって、他の車両に追いつかれ、進路を譲る義務が生じた車両は、道路の端に寄って進路を空け、追いついた車両を先に通行させなければなりません。その際、一時停止または徐行する必要があると解されています(16-2訂版『道路交通法解説』東京法令出版)。追越車と被追越車の過失割合の判断の仕方このように道路交通法で定めた、追越しの方法、追越車の注意義務、他の車両に追いつかれた車両の義務のほか、修正要素を考慮して、過失割合が判断されます。追越しが禁止されている場所と禁止され値ない場所では、基本的な過失割合が異なり、当然、追越し禁止場所では、追越車の過失割合がより重くなります。それでは、追越し禁止場所における事故と、追越し禁止でない場所における事故について、基本の過失割合を具体的に見ていきましょう。追越し禁止場所での事故の過失割合追越し禁止場所での追越車と被追越車との事故追越し禁止場所は、道路交通法(第30条)で次のように定めています。追越し禁止の場所道路標識等により追越しが禁止されている場所道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近、勾配の急な下り坂トンネル(車両通行帯の設けられた道路を除く)交差点(優先道路にある交差点を除く)、踏切、横断歩道、自転車横断帯、これらの手前30m以内の部分基本の過失割合追越し禁止場所で追越しをした場合、追越車と被追越車との事故の基本の過失割合は、次のようになります。被追越車A:追越車B=10:90修正要素と修正率被追越車Aが、左側端に寄って進路を譲るべき注意義務違反があった場合(道交法27条2項に違反)は、Aに10%程度の過失割合が加算され、過失割合は[A20:B80]となります。被追越車Aが、追越車Bの追越し中に加速し、Bが安全にAの前方に進路変更することができなかった場合(道交法27条1項に違反)は、Aに20%程度の過失割合が加算され、過失割合は[A30:B70]となります。被追越車Aが、追越車Bの追越しを故意に妨害し危険な状態を生じさせた場合は、この基準によらず、個別に判断することになります。追越し禁止でない場所での事故の過失割合追越し禁止でない場所での追越車と被追越車との事故基本の過失割合追越し禁止でない場所での追越車Bと被追越車Aとの事故の基本の過失割合は、追越し禁止場所に比べて、被追越車Aの過失割合が大きくなります。追越し禁止でない場所での事故の場合、基本の過失割合は、次の通りです。被追越車A:追越車B=20:80修正要素と修正率修正要素の考え方は、追越し禁止場所での事故の場合と基本的に同じですが、「追越し危険場所」での追越しの場合が、修正要素として加わります。被追越車Aに、左側端に寄って進路を譲るべき注意義務違反があった場合(道交法27条2項に違反)は、Aに10%程度の過失割合が加算され、過失割合は[A30:B70]となります。被追越車Aが、追越車Bの追越し中に加速し、Bが安全にAの前方に進路変更することができなかった場合(道交法27条1項に違反)は、Aに20%程度の過失割合が加算され、過失割合は[A40:B60]となります。「追越し危険場所」での追越しは、追越車Bの過失割合が5%程度重くなります。追越し危険場所は、追越し自体が危険であるとともに、被追越車Aとしても、追越車に進路を譲ったり、衝突回避措置をとったりすることが難しいからです。「追越し危険場所」とは、凹凸の多い道路、降雨などによりスリップしやすい道路、見通しの悪い道路、狭い道路、歩行者の通行の多い道路、対向車の通行が頻繁な道路どです。まとめ追越車と被追越車との事故では、追越車の過失割合が圧倒的に大きくなります。追越車が、あなたの前に割り込んできた直後に追突した場合も、基本的に同じです。基本の過失割合は、追越し禁止場所なら[被追越車10:追越車90]、追越し禁止でない場所なら[被追越車20:追越車80]です。ただし、被追越車の方も、他の車両が追いついてきたときには、安全に追越しをさせる義務がありますから、被追越車の側が、進路を譲らなかったり、加速したりした場合は、被追越車の過失割合が大きくなります。過失割合は、実際の事故の状況に応じて判断する必要がありますから、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』(別冊判例タイムズ38)・『道路交通法解説16-2訂版』東京法令出版
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  • 追突事故の追突車と追突された車(被追突車)との過失割合の基準
    追突事故は、基本的に、追突された車(被追突車)に過失はなく、追突した車(追突車)に100%の過失があります。ただし、被追突車が、危険回避のためなど「やむを得ない理由」がないのに急ブレーキをかけ、急停止したことが、追突事故の要因となった場合は、被追突車にも過失が認められます。追突事故の過失割合の基本的な考え方について、過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に見ていきましょう。交通規制に従って停止した車に追突した場合交通規制に従って停止した車に衝突した事故「赤信号や一時停止の規制に従って停止した車」や「渋滞などで停止した車」に後続車が追突した場合は、原則として追突車に100%の責任があります。したがって、過失割合はこうなります。追突車A:被追突車B=100:0なぜ、追突車の一方的過失となるのかなぜ、追突車の過失割合が100%になるのかというと、他の車の直後を走行する車には、前方注視義務(道交法70条)や車間距離保持義務(道交法26条)があるからです。安全運転の義務(道交法70条)車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。車間距離の保持(道交法26条)車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。追突事故で問われる過失特に、車間距離保持義務(道交法26条)違反は、裁判でも厳しく問われます。法律条文に、前車が急停止したときでも「追突するのを避けることができるため必要な距離」を保たなければならないと、はっきり書いているからです。もっとも、追突事故の原因は、車間距離保持義務違反だけではありません。必要な車間距離を保持していても、脇見をしていて前車が急停止したことの発見が遅れ、追突することもあります。この場合は、安全運転義務(道交法70条)違反が問われます。また、必要な車間距離を保持していても、ブレーキのききが悪くて衝突した場合は、整備不良車の運転禁止(道交法62条)違反が問われます。いずれにせよ、過失割合は、追突車の側に100%認められるのが普通です。急ブレーキをかけた車に追突した場合理由なく急ブレーキをかけた車に衝突した事故道路交通法では、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、急ブレーキをかけてはならない(道交法24条)とされています。急ブレーキの禁止(道交法24条)車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、またはその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。したがって、危険を回避するために、やむを得ず急ブレーキをかけた場合を除き、前車が急ブレーキをかけ、後続車が追突した場合は、前車(被追突車)も一定の過失責任を負うことになります。基本の過失割合基本的に、追突車の前方不注視(道交法70条)や車間距離不保持(道交法26条)が重く、基本の過失割合は、次のようになります。追突車A:被追突車B=70:30修正要素おもな修正要素を挙げておきます。追突車Aに速度違反がある場合追突車Aに、15㎞/h以上の速度違反がある場合は10%程度、30㎞/h以上の速度違反がある場合は20%程度が、追突車Aに加算されます。住宅街や商店街の場合住宅街や商店街などは歩行者が多く、急ブレーキをかけたり、減速したりすることがあります。歩行者が横断するものと見誤り、結果的に理由のない急ブレーキになるケースもあり得ます。後続車も、そのような事態を予測して運転する必要があるので、住宅街や商店街での追突事故は、追突車Aに10%程度が加算されます。幹線道路の場合幹線道路では、車の流れに従って走行するのが通常ですから、幹線道路の走行車線上で理由のない急ブレーキをかけて後続車に追突された場合は、被追突車Bに10%程度が加算されます。制動灯が故障していた場合ブレーキランプ(制動灯)が故障して点灯しない場合のほか、泥などによる汚れのため法定の照度がない場合、夜間にテールランプが点灯していない場合なども、被追突車Bに10~20%程度が加算されます。前車が急停止しても追突を避けられる必要な車間距離の基準「必要な車間距離をとっていたか否か」が争いとなっている場合は、こちらを参考にしてみてください。前車が急停車したときでも追突を避けることができるために必要な車間距離の基準としては、「警視庁管内自動車交通の指示事項」があります。これは、裁判でも参考にする基準です。「警視庁管内自動車交通の指示事項」は、必要な車間距離について、乾燥した平たん舗装路面における基準として次のように定めています。速度(㎞/h)必要な車間距離(m)55205018451740153513321030925820615510483※参考:16-2訂版『道路交通法解説』東京法令出版必要な車間距離の一般的算出方法乾燥した舗装道路では、約16㎞/hごとに普通乗用車の長さの1車長(約6m)を加えた車間距離(雨天の場合はその2倍)をとれば、おおむね前車が急停止しても追突を避けることができるとされています(16-2訂版『道路交通法解説』東京法令出版)。必要な車間距離は実際の諸条件を考慮して判断「警視庁管内自動車交通の指示事項は、特殊の事情のない限り、通常妥当する基準として信頼してしかるべきもの」(仙台高裁判決・昭和46年6月8日)です。ただし、「必要な距離は、車両等の種類、構造、速度、性能、道路の状況、昼夜の別、見透しの状況、積載量、制動操作の運転技術等の諸条件によって異なる」(名古屋高裁判決・昭和30年3月10日)ことはいうまでもありません。したがって、「基準」を参考にしつつも、実際の追突事故における諸条件を考慮し、個別に必要な車間距離を判断することが必要です。まとめ追突事故は、原則として、追突した車が一方的に悪く、過失割合は追突車が100%となります。後続車には、前方注視義務や、前車が急停止したときに追突しないよう必要な車間距離を保持する義務があるからです。ただし、追突された車が、危険を回避するためにやむを得ないといった理由もなく急ブレーキをかけた場合や、ブレーキランプが故障していた場合などは、追突された車の側にも過失が認められることがあります。追突事故で過失割合に納得できない場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』(別冊判例タイムズ38)・『道路交通法解説16-2訂版』東京法令出版
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  • 駐停車車両に対する四輪車・単車の追突・衝突事故の過失割合
    駐停車車両に対する追突事故は、駐停車車両が法律のルールにしたがって駐停車していたら、追突車の100%過失となります。しかし、駐停車車両に全く法律上の義務違反がないということは少なく、たいていは過失割合が問題となります。つまり、道路上に駐停車していた車両への追突・衝突事故では、駐停車車両の法律上の義務違反の有無や、事故発生の個別事情を総合的に検討して、駐停車車両と追突車両の過失割合を判断します。駐停車車両に追突・衝突したときの過失割合の考え方道路上に自動車を駐停車することは、道路交通に危険を発生させる可能性のある行為ですが、道路上に駐停車したことで直ちに、損害賠償責任を負うような過失があったと認定されるわけではありません。基本的には、駐停車車両が、法律で定められたルールに従って駐停車していたなら、駐停車車両に過失はなく、損害賠償責任は発生しません。駐停車禁止の場所に駐停車していたとか、駐停車の方法に問題があったとか、駐停車車両に法律上の義務違反があったときは、違反の程度をふまえ、事故発生の諸事情から過失割合が判断されます。車両を駐停車するときの法律上の義務とは?まず、自動車を駐停車するときの法律上の義務とは何か、具体的に見てみましょう。道路交通法では、次のように、駐停車を禁止する場所や駐停車する場合の方法について定め、夜間は道路上での灯火を義務づけています。なお、ここで引用しているのは、駐停車禁止の原則部分です。例外規定もありますから、個別に判断する必要があります。停車および駐車を禁止する場所(道路交通法 第44条1項)車両は、道路標識等により停車及び駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、…、停車し、又は駐車してはならない。交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾こう配の急な坂又はトンネル交差点の側端又は道路のまがりかどから5m以内の部分横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5m以内の部分安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場を表示する標示柱または標示板が設けられている位置から10m以内の部分踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分駐車を禁止する場所(道路交通法 第45条)第1項 車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、駐車してはならない。人の乗降、貨物の積卸し、駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から3m以内の部分道路工事が行なわれている場合における当該工事区域の側端から5m以内の部分消防用機械器具の置場若しくは消防用防火水槽そうの側端又はこれらの道路に接する出入口から5m以内の部分消火栓、指定消防水利の標識が設けられている位置又は消防用防火水槽そうの吸水口若しくは吸管投入孔から5m以内の部分火災報知機から1m以内の部分条2項 車両は、第47条第2項又は第3項の規定により駐車する場合に当該車両の右側の道路上に3.5m以上の余地がないこととなる場所においては、駐車してはならない。停車または駐車の方法(道路交通法 第47条)第1項 車両は、人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。第2項 車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。第3項 車両は、車道の左側端に接して路側帯が設けられている場所において、停車し、又は駐車するときは、前二項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該路側帯に入り、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。車両等の灯火(道路交通法 第52条1項)車両等は、夜間、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。道路上に違法に駐停車していた車両への追突事故法律上の義務に違反して駐停車していた車両に追突・衝突した場合は、駐停車車両の側にも過失が認定され、過失割合が問題となります。ただし、駐停車禁止場所に停車していた車両への追突事故でも、追突車両側の前方不注視等が大きい場合は、追突車両の100%過失による事故と判断されることがあります。駐停車車両と追突車両の過失割合は、事故発生の個別事情をふまえ、総合的に判断されることに注意してください。事故発生の個別事情とは、次のような点です。事故現場の状況交通量、交通事情、道路の形状・広狭など。後続車からの駐停車車両の視認可能性見通しのよさ、明るさ、時間帯、天候、気象状況、夜間の照明の状況など。駐停車車両側の事情駐停車禁止場所か否か、駐停車した理由、駐停車車両の大き、他の交通に与える支障・危険性の程度、非常点滅灯の点灯の有無など。追突車両側の事情追突車両の種類(四輪車・二輪車)、車種、速度、運転状況(飲酒等)、運転操作ミスの有無、前方不注視の程度、スリップ痕・ブレーキ痕など。基本の過失割合と修正要素過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に、駐停車車両に対する追突事故について、過失割合の基本的な考え方を見ていきます。駐停車車両に対する追突事故車両Bが駐停車しているところへ、車両Aが追突した事故のケースです。基本の過失割合駐停車車両に対する追突事故の基本の過失割合は、次の通りです。追突車両A:駐停車車両B=100:0これは、駐停車車両が、法律に従った方法で駐停車し、非常点滅灯を点灯したり、三角反射板等を設置するなどして、駐停車車両の存在を警告する措置をとっていることを前提としています。修正要素おもな修正要素と修正率を挙げておきます。駐停車車両Bが退避不能だった場合故障などで、やむを得ず駐停車する場合には、道路の左側端に駐停車すべきですが、故障の内容によっては、走行車線から退避することが事実上不可能なこともあります。退避不能だった場合は、退避しなかったことをもって駐停車車両Bを非難することはできないため、追突車Aに10%加算修正します。追突車Aの速度違反追突車Aに速度違反があった場合、15㎞以上の速度違反なら10%、30㎞以上の速度違反なら20%を、追突車Aに加算修正します。著しい過失・重過失がある場合追突車両Aに軽度の前方不注視があることは、基本の過失割合に含めて考慮されていますが、著しい前方不注視、酒酔い運転、運転操作ミスなどがある場合は修正要素となり、著しい過失なら10%、重過失なら20%を加算修正します。駐停車車両Bに、駐停車についての帰責事由が存在する場合や駐停車車両を放置していた等の事情がある場合は、著しい過失または重過失にあたり、それぞれ10%または20%を駐停車車両Bに加算修正します。視認不良の場合降雨、濃霧、夜間で街灯がなく暗い、などの理由で視認不良の場合には、駐停車車両の発見が容易ではないため、追突車Aが四輪車の場合は10%減算修正します。追突車Aが単車の場合は、走行中の単車の視界は狭く、特に夜間は前照灯の照射力が四輪車に比べて弱いことから、20%減算修正します。駐停車禁止場所に駐停車していた場合法の規制(道路交通法44条・45条)に反して駐停車禁止場所に駐停車していた場合は、他の交通を妨害し、事故発生の危険を高めるため、駐停車車両Bに10%加算修正します。非常点滅灯を不灯火の場合車両は、夜間、道路にあるときは、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない(道路交通法52条)と義務づけられています。視認不良の状況の下、駐停車車両Bが非常点滅灯を灯火せず、三角反射板の設置など警告措置を怠っている場合は、追突車Aから駐停車車両Bの発見は容易ではないので、追突車Aに10~20%の範囲で減算修正します。駐停車方法が不適切な場合車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない(道路交通法47条)と定められています。道路幅が狭い所や交通量が多い所に駐停車すると、他の交通を妨害し、事故発生の危険を高めるため、そういう場所に駐停車していた場合は、駐停車車両Bに10~20%の範囲で加算修正します。まとめ駐停車車両への追突事故では、駐停車車両に法律上の義務違反がなければ、追突した車両の100%過失となります。しかし、駐停車車両が、駐停車禁止の場所に駐停車していたり、法律に定められた駐停車の方法を守っていなかった場合は、事故発生の具体的事情を検討して過失割合が判断されます。過失割合に納得できない場合は、交通事故の損害賠償の問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』 299~301ページ、380~382ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 35~38ページ・『16-2訂版 道路交通法解説』東京法令出版 関連条文のページ
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  • シートベルト不着用
    ヘルメットやシートベルト不着用の過失相殺と過失割合
    ヘルメット不着用やシートベルト不装着が原因で、損害が拡大したと考えられるようなときは、過失相殺が適用されます。ただし、受傷の部位や程度によっては、ヘルメット不着用やシートベルト不装着が損害の拡大に影響しているとはいえない場合もあります。ヘルメット不着用やシートベルト不装着を理由とする過失相殺にあたっては、損害拡大との因果関係を正しく評価することが必要です。ヘルメット不着用の過失相殺と過失割合バイクを運転するときは、ヘルメットをかぶることが法律で義務付けられています。道路交通法第71条の4大型自動二輪車または普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車もしくは普通自動二輪車を運転し、または乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車もしくは普通自動二輪車を運転してはならない。原動機付自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで原動機付自転車を運転してはならない。ヘルメット不着用の過失相殺率このことから「過失相殺率認定基準」では、ヘルメット不着用が被害の拡大に寄与しているようなときには、著しい過失に準じて加算修正するのが相当としています。特に、高速道路でのヘルメット不着用は、重過失として評価すべきとしています。頭部外傷の傷害を受けた場合等、ヘルメット着用義務違反が損害拡大に寄与しているようなときには、著しい過失に準じて、単車側の過失相殺率を加算修正するのが相当であろう。ただし、高速道路におけるヘルメット不着用は重過失と判断すべきである。(『過失相殺率の認定基準』全訂5版(別冊判例タイムズ38号)より)著しい過失とは、事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失、重過失とは、著しい過失よりさらに重い、故意に比肩する重大な過失をいいます。著しい過失の修正率は10%、重過失の修正率は20%ですから、ヘルメット不着用の場合は、大きく減額されることになります。ヘルメット不着用と損害拡大との因果関係を判断することが大切頭部の受傷は、ヘルメット不着用との因果関係があるといえます。しかし、事故態様や受傷の部位・程度によっては、ヘルメット不着用と因果関係があるとはいえない場合があります。例えば、頭部以外の受傷は、ヘルメット不着用とは無関係です。また、大型車両による頭部轢過など重篤な傷害の場合は、ヘルメットをかぶっていても傷害は避けられず、ヘルメット着用の有無は関係ないといえます。ヘルメットをかぶらず運転していたら、ヘルメット着用義務違反です。しかし、ヘルメット不着用を理由に過失相殺する場合は、ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与しているか、因果関係を判断することが必要です。ヘルメット不着用の過失相殺についての裁判例バイク事故では、被害者に、ヘルメット不着用だけでなく、速度違反や前方不注視などの過失があわせて認められるケースが多く、過失相殺率が高くなることがあります。ヘルメットをかぶっていなかったことにより、被害者の損害が拡大したと認められる場合には、おおむね10~30%程度の割合の過失相殺がされています。ただし、被害者がヘルメットをかぶっていなかったとしても、ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与しておらず、ヘルメット不着用と損害拡大との間に相当因果関係が認められない場合は、過失相殺が否定されています。ヘルメット不着用を理由に過失相殺した裁判例ヘルメットをかぶっていなかったことを理由に過失相殺した裁判例には、次のようなものがあります。過失相殺率は、ヘルメット不着用の過失と交通事故を発生させた過失をあわせた割合です。直進中の自動二輪車がUターン中の自動車に衝突し、自動二輪車の運転者が頭部等を負傷した事故について、速度超過、ヘルメット不着用の自動二輪車の運転者に40%の過失相殺をした事例。(東京地裁・昭和47年3月8日)交差点で直進の自動二輪車と右折禁止違反の対向右折車とが衝突し、自動二輪車の運転者が死亡した事故について、ヘルメット不着用の自動二輪車の運転者に30%の過失相殺をした事例。(東京地裁・昭和47年8月25日)自動二輪車の運転者が自動車に衝突されて頭蓋骨骨折等で死亡した事故について、ヘルメット不着用の自動二輪車の運転者に10%の過失相殺をした事例。(東京地裁・昭和52年11月29日)自動二輪車の運転者が飲酒のうえ大幅な速度超過で赤信号無視で交差点で衝突し、同乗者が死亡した事故について、ヘルメット不着用の同乗者に10%の過失相殺をした事例。(名古屋地裁・平成9年1月22日)交差点を直進中の原動機付自転車の左側面に自動車が衝突し、同乗者が跳ね飛ばされて頭蓋骨骨折等により死亡した事故について、ヘルメット不着用の同乗者に5%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成9年12月24日)ヘルメット不着用による過失相殺を否定した裁判例ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与したとはいえないとして、過失相殺しなかった裁判例には、次のようなものがあります。自動二輪車の後部座席に横向きに同乗中に受傷した事故について、事故の態様、傷害の部位(肘・膝の関節部など)からして、ヘルメットをかぶっていても傷害は避けられなかったと判断され、横向きに乗っていたため傷害が誘発されたり、その程度が増長したとは認められないとして過失相殺を否定した事例。(東京地裁・昭和46年8月31日)貨物自動車と衝突した自動二輪車の同乗者が内臓破裂で死亡した事故について、ヘルメット不着用は損害の発生や拡大に寄与したものとはいえないとして過失相殺を否定した事例。(東京高裁・平成8年6月25日)シートベルト不装着の過失相殺と過失割合自動車の運転者、同乗者は、原則としてシートベルトの装着が義務づけられています(道路交通法71条の3)。しかし、「過失相殺率認定基準」では、自動二輪車のヘルメット不着用と異なり、過失相殺率の修正について明確にされていません。とはいえ、ヘルメット不着用の場合と同様に、シートベルト不装着が損害の拡大に寄与したと考えられるときには、過失相殺されます。シートベルト不装着との因果関係を判断することが大切ヘルメット不着用の場合と同じく、シートベルト不装着と損害の拡大との因果関係を、傷害の部位・程度から判断することが大切です。例えば、車が衝突して被害者が車外に放り出されたとか、フロントガラスに衝突して負傷したというのであれば、シートベルト不着用を理由として過失相殺されます。しかし、車とガードレールに足を挟まれて片足を切断したような場合は、シートベルト不着用と損害の拡大との因果関係はないといえるでしょう。シートベルト不着用に相当の理由がある場合シートベルト装着義務には、例外規定があります。例えば、疾病・負傷・障害・妊娠・著しく座高が高い低い・著しく肥満などにより、シートベルトをしないことに相当の理由があるときは、シートベルト装着義務の適用除外となります。シートベルトをしなくてもよい者疾病のため座席ベルトを装着させることが療養上適当でない者(道交法71条の3第1項・2項ただし書)負傷若しくは障害のため又は妊娠中であることにより座席ベルトを装着することが療養上又は健康保持上適当でない者(道交法施行令26条の3の2第1項1号、同条2項2号)著しく座高が高いか又は低いこと、著しく肥満していることその他の身体の状態により適切に座席ベルトを装着することができない者(道交法施行令26条の3の2第1項2号、同条2項3号)こういう場合は、シートベルト不装着を理由とする過失相殺はできません。シートベルト不装着の過失相殺についての裁判例シートベルト不装着により、被害者の損害が拡大したと認められるような場合には、おおむね10~30%程度の割合の過失相殺がされています。ただし、被害者がシートベルトを装着していなかったとしても、シートベルト不装着が損害の拡大に寄与しておらず、シートベルト不装着と損害拡大との間に相当因果関係が認められない場合は、過失相殺が否定されています。シートベルト不装着を理由に過失相殺した裁判例シートベルト不装着を理由に過失相殺した裁判例には、次のようなものがあります。過失相殺率は、シートベルト不装着の過失と交通事故を発生させた過失をあわせた割合です。交差点で自動車同士が出合い頭に衝突し、被害者が車の外に投げ出されて死亡した事故について、シートベルト不装着の被害者の一時停止義務違反、速度違反、シートベルト不装着の落ち度を認め、被害者に80%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成1年4月7日)高速道路を走行中の自動車の助手席同乗者が、右手を伸ばしてハンドルを掴んで運転者の運転を妨害したため自動車がガードレールに衝突して横転し、車外に放り出されて車の下敷きとなり死亡した事故について、運転妨害、高速道路上でシートベルト不装着の被害者に40%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成2年8月31日)自動車の助手席に同乗中の被害者が、事故の衝撃で車外に放り出され路上に衝突して死亡した事故について、シートベルト不装着が死亡に少なからざる影響を与えたとして、シートベルト不装着の同乗者に5%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成7年7月26日)先行車両と追突し、助手席に同乗していた被害者がフロントガラスに衝突して頭部に傷害を被った事故について、シートベルト不装着の同乗者に5%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成9年1月22日)酒気帯びの上、シートベルト不装着の被害者が後遺障害等級7級になった事故について、酒気帯びとあわせて20%の過失相殺をした事例。(奈良地裁葛城支部・平成13年12月25日)自動車同士の事故でシートベルト不装着の同乗者が死亡した事故について、シートベルトを装着していても、ほとんどその効果はなかったと認められるものの、その受傷部位、程度からしてシートベルトを装着していれば、もっと軽い怪我で済んだ可能性が高いとして10%の過失相殺をした事例。(奈良地裁葛城支部・平成12年7月4日)シートベルト不装着による過失相殺を否定した裁判例シートベルト不装着が損害の拡大に寄与したとはいえないとして、過失相殺しなかった裁判例には、次のようなものがあります。追突事故により頚椎捻挫を受傷した被害者が、腹囲が117㎝と著しく肥満しており、道交法71条の3の第2項ただし書、同法施行令26条の3の2、第2項2号の趣旨により、シートベルトの不着用には相当の理由があるとして、シートベルト不装着の被害者の過失相殺を否定した事例。(東京地裁・平成7年3月28日)交差点で一時停止規制に違反して進行した加害車に、制限速度を超過して進入した被害車が出会い頭に衝突し、シートベルト不装着の被害者が死亡した事故について、シートベルト不装着であったことと死亡との因果関係が明確でないことを理由として過失相殺を否定した事例。(東京地裁・平成8年12月24日)シートベルト不装着の結果として被害者の症状がより悪化し、損害が拡大したとは認められないとして、シートベルト不着用の被害者の過失相殺を否定した事例。(大阪地裁・平成13年10月17日)まとめヘルメットやシートベルトは、被害の拡大を防止するものです。そのため、ヘルメット不着用やシートベルト不装着が損害の発生・拡大に寄与していると考えられれば、被害者の過失が認められ過失相殺されます。その際には、ヘルメット不着用・シートベルト不装着と損害の発生・拡大との相当因果関係が必要です。事故態様や受傷の部位・程度によっては因果関係が認められず、過失相殺が否定されることがあります。保険会社から、ヘルメット不着用やシートベルト不装着を理由に過失相殺を迫られているときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。ここで紹介した裁判例は、『ヘルメット不着用、シートベルト不装着の場合の過失相殺に関する裁判例』判例タイムズ1033号、『新版・交通事故の法律相談』学陽書房に掲載の裁判例を参考にしました。
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    子供の飛び出し交通事故の過失割合と親の責任・過失相殺
    子どもが道路に飛び出して交通事故の被害に遭ったときの損害賠償については、「飛び出し」を被害者の過失として過失相殺される場合がある一方で、小さな子ども(幼児)であれば過失相殺が否定される場合もあります。被害者が子どもの場合、過失相殺するかしないかの判断は、被害者である子どもに「事理弁識能力(過失相殺能力)」があると認められるかどうかによります。なお、被害者である子どもに事理弁識能力がないと判断して過失相殺が否定された場合でも、親に監督上の過失があったとして過失相殺されることがあります。過失相殺の法理被害者が小さな子どもの場合の過失割合・過失相殺について見る前に、過失相殺について、簡単に振り返っておきましょう。不法行為によって相手に損害を与えたとき、加害者は、被害者に生じた損害を賠償する責任を負います。ただし、被害者にも過失(落ち度)があった場合は、被害者の過失割合分については賠償を受けられず、被害者の負担となります。これが過失相殺です。つまり、過失相殺とは、被害者に発生した損害について、加害者と被害者との間で公平に分担するための制度です。加害者の過失と、過失相殺における被害者の過失は、概念が異なります。「加害者の過失」と「被害者の過失」の違いについてはこちらをご覧ください。被害者に事理弁識能力があれば過失相殺される被害者が小さな子どもの場合、危険性についての判断能力が十分ではありません。それにもかかわらず、大人と同じように過失相殺をしてよいのか、という問題があります。他方で、突然の飛び出しなどは、通常の注意義務をもって運転していたとしても避けようがなく、そういう場合にも、加害者に全額損害賠償させるのは、損害の公平な分担という過失相殺の理念に照らして公平性を欠くのではないか、という問題もあります。これについて最高裁は、次のような判断を示しています。被害者が子どもの場合の過失相殺に関する最高裁判例最高裁は、被害者である未成年者の過失を斟酌する場合、不法行為責任を負わせるまでの責任能力は不要で、事理弁識能力が備わっていれば足りると判示しました(昭和39年6月24日)。不法行為責任とは、民法709条で定めている「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」というものです。責任能力とは、過失など自分の不法行為の結果、法的責任が発生する(損害賠償責任が生じる)ことを認識できる能力をいいます。不法行為責任能力とも呼ばれます。事理弁識能力とは、物事の良し悪しを判断できる能力のことです。例えば、飛び出しは危険ということを理解できる能力をいいます。法的責任の認識までは必要はありません。過失相殺を可能とする能力なので、過失相殺能力とも呼ばれます。被害者である子どもに、事理弁識能力が備わっていると判断される場合には、過失相殺が肯定され、事理弁識能力が備わっていないと判断される場合には、過失相殺が否定されます。最高裁判例について詳しくはこちら事理弁識能力が備わるのは何歳くらい?最高裁は具体的に年齢の基準を示していませんが、その後の下級審の裁判例によると、事理弁識能力が備わる年齢は、だいたい5~6歳と判断するものが多いようです。小学校に入学した児童については、事理弁識能力があるとして過失相殺されています。4歳児・5歳児の幼児については、肯定例・否定例の双方があり、6歳以上は肯定され、3歳児は否定されているようです。通常、年齢によって判断され、個別具体的な事情で能力の高低が判断されるわけではありません。子どもの過失相殺率は、大人と同じでなく、減算修正される「被害者である子どもに事理弁識能力が備わっていれば過失相殺される」といっても、大人と同じ過失相殺率(過失割合)が適用されるわけではありません。過失相殺率認定基準では、「判断能力や行動能力が低い者については、特に保護する要請が高い」(「別冊判例タイムズ38」61ページ)ことから、過失相殺率を減算修正しています。実際の事故態様によって修正率は変わりますが、基本の過失相殺率から、児童5%、幼児10%を減算修正するケースや、児童10%、幼児20%を減算修正するケースなどがあります。そうすると、過失相殺率認定基準で基本の過失相殺率が10%の事故の場合、修正率がマイナス10%であれば、過失相殺率がゼロとなり、事実上、過失相殺されないということになります。過失相殺率認定基準が全ての事故を網羅しているわけではありませんから、基準を参考に個別事情を考慮して判断することが大切です。子どもの過失が否定されても、親の過失として過失相殺もある被害者が事理弁識能力のない幼児の場合、被害者本人は過失相殺されないとしても、親の監督責任が問われ、親の過失として過失相殺されることがあります。これは「被害者側の過失」という考え方です。被害者と一定の関係にある者の過失を考慮して過失相殺するものです。なお、監督義務違反の過失は、子どもの監督という漠然としたものであり、広範囲の責任を課せられていることもあって、過失相殺率は最高でも30%程度といわれています。(参考:『交通事故の法律知識・第4版』自由国民社116ページ)母親が2歳の幼児を連れて買い物をした後、荷物を車に積み込む間、幼児から目を離したため、幼児が駐車場の走行スペースに移動し、自動車にひかれて死亡した事故について、母親にも幼児の動静に注意しておく義務があったのに、これを怠った過失があるとして、1割の過失相殺を認定。(福岡地裁判決・平成27年5月19日)子どもの過失が肯定され、親の過失も認定される場合もある被害者である幼児に事理弁識能力があるとして過失が認められる場合、幼児と一定の関係にある者の過失も被害者側の過失として、あわせて認定されることがあります。道路の右側にあるパーキングエリアから道路を渡り始めた幼児(5歳7カ月)をはねた交通事故において、幼児は事理弁識能力を有していたと判断され、幼児自身に過失を認定するとともに、一緒にいた母親が、先に道路を横断して道路左側の路側帯に移動しており、幼児はその母親に向かって道路を横断したことから、母親の過失も被害者側の過失として認定。(東京地裁判決・平成24年・7月18日)幼児の監護に要求される監護責任・注意義務の程度とは?事理弁識能力を有しない被害者の逸脱行為(車道への飛び出しなど)に対する監護者の過失(注意義務違反)は、社会通念(世間の常識)にしたがって判断されます。一瞬たりとも目を離すことなく、監視していなければならない、などと解されているわけではありません。ですから、被害者側の過失の要件を満たし、相手から被害者側の過失として過失相殺を主張されるようなケースでも、諦めることはありません。事理弁識能力を有しない幼児の飛び出し等による交通事故については、監護者に過失と評価すべき注意義務違反(社会通念に照らして不適切な監護)が存在する場合でない限り、過失相殺されません。監護者に要求される注意義務の程度について論じた、次のような裁判例があります。監護者である両親が、交通頻繁な国道付近で4歳の子どもを1人で遊ばせていた事案です。結論として、監護者の過失を否定し、過失相殺を認めませんでした。この時期の幼児を危険から遠ざけるためには、単に言語をもってする説得の方法だけでは十分な効果を上げるのは甚だ困難であり、監護者として完全な実行を期するには、幼児に対し、有害な精神的衝撃を与えるまでの極度の恫喝を加えるか、または自主性の発達を阻害することをいとわず常時つきまとって過度の干渉を行うほかになく、かような監護方法を措るよう要求するのは社会的に不当であり、かつ不能を強いるものである。幼児の道路における一人遊びの際の交通事故遭難につき、たやすく常に監護者の監護上の過失を認めるべきではない。(山形地裁酒田支部判決・昭和49年2月14日)「事理弁識能力も不要」とする判例もある子どもが被害者の場合の過失相殺については、最高裁判例(昭和39年6月24日)に則り、「過失相殺を適用するには、被害者に事理弁識能力が必要で、それがないときには、被害者側の過失が認められるか否かを考慮する」という考え方が主流です。ただし、被害者に「事理弁識能力すら不要」とする下級審の判決も出ています。東京地裁(昭和44年10月22日)事理弁識能力のない者の行為であっても、右行為が事故の発生に有因的に作用している場合には、被害者の賠償額を算定するにあたって、それを斟酌しうるものと解釈すべきである。(判例タイムズ№242より)大阪地裁(昭和47年1月27日)過失相殺は加害者の違法性ないし非難可能性を斟酌する制度で公平な観念に基く賠償額の決定を目的とするものであるから、被害者の責任能力や弁識能力に関係なく、その外観上の行動を損害の公平な負担に反映させることが必要であり、かつこれをもって足り、原告に事理弁識能力があったか否かについて検討するまでもなく過失相殺することができる。(判例タイムズ№275より)これは、「過失相殺は、損害の公平な分担という見地から妥当な損害額を定めるための調節的機能を有する制度」(東京地裁判決・昭和44年10月22日)という面を強調し、事理弁識能力の有無にかかわらず、例えば「飛び出し」という被害者の行為自体を問題として、過失相殺するのが公平か否かを考えるべきとするものです。損害の公平な分担ということからすれば、「事理弁識能力も不要」という考え方もあり得るでしょう。しかし、道路交通法で「幼児の保護」(道路交通法第14条3項)を定めているように、幼児の要保護性を考えると、事理弁識能力すら不要とするのは、行き過ぎに思われます。「事理弁識能力すらない幼児の事情と、十分な判断能力を備えた成人の事情とを、損害賠償減額の理由として全く同一に扱うことは、一般人の公平感に反するであろう。事理弁識能力程度は被害者に要求すべき」という意見もあります。(東京弁護士会法友全期会交通事故実務研究会編集『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 207ページ)幼児についての道路交通法の規定参考までに、幼児に関する道路交通法の規定を紹介しておきます。これをふまえると、幼児が被害者になった場合の過失相殺の考え方が理解しやすいでしょう。道路交通法における幼児の定義道路交通法においては、幼児は「6歳未満の者」、児童は「6歳以上13歳未満の者」と定めています(道路交通法14条3項)。ちなみに、児童福祉法では、幼児は「満1歳から小学校就学の始期に達するまでの者」と定めています(児童福祉法4条1項2号)。保護責任者の責任幼児・児童を保護する責任のある者は、交通の頻繁な道路や踏切、その付近の道路で幼児・児童を遊ばせたり、自ら若しくはこれに代わる監護者が付き添わないで幼児を歩行させてはならない、と定めています(道路交通法14条3項)。運転者の責任車両等の運転者は、監護者が付き添わない幼児・児童が歩行しているときは、一時停止し、または徐行して、その通行や歩行を妨げないようにしなければならない、と定めています(道路交通法71条2号)。まとめ小さな子ども(幼児)が被害者の場合、過失相殺にあたっては、被害者である子どもの事理弁識能力の有無が問題となります。幼児に事理弁識能力があると判断されると過失相殺されますが、事理弁識能力がないと判断されると過失相殺が否定されます。幼児に事理弁識能力がない場合は、親の監督上の過失が「被害者側の過失」として過失相殺されることがあります。監護者の過失は、社会通念にしたがって判断され、一瞬たりとも目を離すことなく監視していなければならない、などと解されているわけではありません。小さな子どもの交通事故に関する親の責任について、「たやすく常に監護者の監護上の過失を認めるべきではない」とする裁判例もあります。過失相殺は、損害賠償額を決める上で、大きく影響します。過失相殺・過失割合に納得できないときは、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 391~396ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 113~116ページ・『交通事故の法律知識 第4版』自由国民社 11ページ、115~116ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 239~243ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 205~211ページ・別冊凡例タイムズ『過失相殺率の認定基準 全訂5版』あわせてこちらもご覧になると、幼児の損害賠償がさらに分かります幼児の逸失利益も損害賠償請求できる幼児の逸失利益の算定方法と計算例年少女子の逸失利益の算定で男女間格差を解消する方法
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  • 駐車場事故の過失割合
    駐車場内での交通事故の過失割合の判断の仕方と過失相殺率の基準
    駐車場内での事故の過失割合・過失相殺率の基準は、一般道路の場合と異なります。駐車場は、車両の駐車を目的とする施設ですから、車両の後退や方向転換が頻繁にあり、歩行者の往来も多い、特殊な場所です。そのため、車両の運転者は、周囲の車両や人の動きを予測し、十分注意して運転することが求められます。駐車場内での事故の過失割合・過失相殺率は、そういった駐車場の特殊な事情を考慮して判断されます。ここでは、駐車場での事故の過失割合・過失相殺率の判断の仕方について、過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に見ていきます。駐車場での四輪車両同士の衝突事故の過失割合の考え方『過失相殺率認定基準』では、駐車場内での四輪車同士の衝突事故を次の3つの類型に分け、過失相殺率の基準を示しています。駐車場内の通路の交差部分での車両同士の衝突事故「駐車区画から出ようとする車両」と「通路を進行する車両」との衝突事故「駐車区画に入ろうとする車両」と「通路を進行する車両」との事故それぞれの事故類型について、過失割合の判断の仕方について見てみましょう。通路の交差部分での車両同士の衝突事故の過失割合※ 通路の交差部では、原則として双方が対等駐車場内の通路の交差部分で、車両同士が出合い頭に衝突した場合です。駐車場内の通路を進行する車両は、空いている駐車スペースを探しながら、方向転換や後退など様々な動きをすることが想定されます。それゆえ、通路の交差部分を通行する車両の運転者は、他の車両の動きを予見し、安全を確認して、衝突を回避できるような速度と方法で通行する義務を負います。過失割合を考える上でのポイントは、通路の交差部分に進入する車両の運転者は、双方が等しく注意義務を負うことです。一般道路の交差点であれば「左方優先」など道路交通法に定められた優先関係がありますが、駐車場の通路には適用されません。過失割合の基準したがって、駐車場内の通路の交差部分に進入した車両の出会い頭の衝突事故は、原則として、双方が同等の過失責任を負うことになります。基本の過失割合50:50修正要素通路の幅員の違いや運転速度などの事情は、修正要素として考慮します。例えば、一時停止・進行方向の標示に違反した車両や、明らかに広狭の差のある狭路側の車両には、10~20%を加算することとしています。大型商業施設に設けられた収容台数の多い駐車場などでは、駐車場内の通路が、道路交通法の適用される道路と認められる場合がありますが、過失相殺率認定基準では、そういう場合でも「原則として本基準によるのが相当」としています。出庫車と通路進行車との衝突事故の過失割合※ 通路を進行する車が優先駐車区画から出ようとする車両(出庫車)と、通路を進行する車両(通路進行車)とが、出合い頭に衝突した場合です。通路進行車は、駐車区画に駐車している車両が出てくることを予見し、衝突を回避できるよう注意を払って運転する義務があります。一方、出庫車は、駐車スペースを探して通路を進行してくる車両があることを予見し、通路を進行する車両の通行を妨げないよう注意して発進する義務があります。出庫車には、通路進行車より重い注意義務が課されています。過失割合の基準したがって、出庫車と通路進行車が衝突事故を起こしたときは、出庫車が、相対的に重い過失責任を負うことになります。基本の過失割合出庫車70:通路進行車30※車両が前進していたか後退していたかにかかわらず同じ。過失割合の修正要素通路を進行する車両が、標識や路面標示で指示される通行方向に反して進行していた場合や、通常の速度を上回る速度で進行していた場合などは、著しい過失あるいは重過失として、10~20%が加算されます。個別に過失割合を検討する必要があるケース通路を進行する車両の過失の有無が問題となる場合や、駐車区画から出庫を完了し通路進行車同士の衝突とみなされる場合は、基本の過失割合によらず、具体的な事実関係にもとづき、過失割合を検討することとされています。例えば、次のようなケースです。通路を進行する車が急ブレーキを掛けても停止できない距離に近づいた段階で、駐車区画から車が出て来た場合通路を進行する車が、駐車区画から車が出てくることを認識して十分な距離をとって停止したにもかかわらず、駐車区画から出て来た車が衝突した場合駐車区画から出て来た車が出庫を完了して通路を進行しようとしたところへ、通路を進行する車が衝突した場合入庫車と通路進行車との事故の過失割合※ 駐車区画へ入ろうとする車が優先駐車区画へ入ろうとする車両(入庫車)と、通路を進行する車両(通路進行車)とが衝突した場合です。なお、駐車区画へ入ろうとしていることが、ハザードランプ・方向指示器・後退灯・車両の向きなどから客観的に、ある程度手前の位置で認識できる状態にあったことを前提とします。駐車区画へ入ろうとする車両がある場合、通路進行車は、入庫車が駐車区画に収まるまで停止して待機するか、安全にすれ違うことができる距離を確保し、安全な速度と方法で進行する義務を負います。一方、入庫車は、他の車両の通行を妨げることになるので、周囲の状況を注視して、駐車区画に進入する義務を負います。駐車場は車両の駐車を目的とする施設ですから、原則として駐車区画への進入が、通路の進行より優先で、通路進行車の側に、入庫車より重い注意義務が課されます。過失割合の基準したがって、入庫車と通路進行車との間で事故が発生した場合は、原則として、通路進行車が、相対的に重い過失責任を負うことになります。基本の過失割合入庫車20:通路進行車80※車両が前進していたか後退していたかにかかわらず同じ。駐車区画にいったん収まった車が、駐車位置を修正するため再発進して通路に出たときに衝突した場合は、出庫車と直進車との過失割合が基準となります。修正要素通路を進行する車が、標識や路面標示で指示される通行方向に反して進行していた場合や、通常の速度を上回る速度で進行していた場合などは、著しい過失あるいは重過失として、10~20%が加算されます。駐車区画へ進入する車が、切り返しや方向転換などで進路を変えることは予見できることですから、通路進行車が、駐車区画に入ろうとしている車両の側方を通過する場合は、いつでも停止できるよう進行しなければなりません。それを怠った場合は、10%が加算修正されます。個別に過失割合を検討する必要があるケース通路を進行する車両の過失の有無が問題となる場合などは、基本の過失割合によらず、具体的な事実関係にもとづき、個別的に過失割合を検討することとされています。駐車場での歩行者と四輪車の事故の過失相殺率の考え方『過失相殺率認定基準』では、駐車場内での歩行者と四輪車の事故について、次の2つの類型に分け、過失相殺率の基準を示しています。駐車区画内での歩行者と四輪車との事故通路上での歩行者と四輪車との事故それぞれのケースについて、過失相殺率の判断の仕方を見てみましょう。駐車区画内での歩行者と四輪車との事故の過失割合駐車場の駐車区画内で、歩行者と四輪車が衝突した場合です。駐車スペースは、車両を駐車する場所であるとともに、駐車場の利用者が乗車・降車する場所でもあります。駐車区画を出入りする車両の運転者は、歩行者がいないか安全を確認し、進路に歩行者がいる場合は、停止する義務を負います。一方、歩行者も、駐車区画に車両が進入してくることを予見し、車の動きに注意する義務を負います。過失相殺率の基準歩行者にも相応の注意義務が課され、歩行者の基本の過失相殺率は 10%です。歩行者10:車両90修正要素隣接する駐車区画で乗降している人がいる場合、駐車場に進入する運転者には特に慎重に安全確認が求められるので、歩行者の過失相殺率が10%減算修正されます。歩行者が幼児・児童・高齢者・身体傷害者の場合は、歩行者の過失相殺率が5~10%減算修正されます。通路上での歩行者と四輪車との事故の過失割合駐車場内の通路で、歩行者と四輪車が衝突した場合です。駐車場の通路を進行する車両は、人の往来があることを予見し、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行する注意義務を負います。一方、駐車場内の通路は主として車両の移動のための設備ですから、歩行者も、通路を歩く場合は、車両が通行することを予見し、安全を確認する義務を負います。過失相殺率の基準原則として、車両の側が重い責任を負いますが、歩行者の側も一定の責任は免れず、歩行者の基本の過失相殺率は 10%です。歩行者10:車両90修正要素歩行者が、白線などで標示された歩行者用の通路を通行していた場合は、歩行者の通行が保護されるので、歩行者の過失相殺率は20%減算修正されます。歩行者が幼児・児童・高齢者・身体傷害者の場合は、歩行者の過失相殺率が5~10%減算修正されます。車両が、通常の進行速度を明らかに上回る速度で進行していたり、見通しが悪い場所で徐行していなかった場合などは、車両の側に著しい過失が認められ、歩行者の過失相殺率は10%減算修正されます。通路への急な飛び出しは加算修正歩行者が、車両の直前・直後を急に横断したり、予想外に大きくふらつくなど、車両の進路に急に飛び出したときは、過失相殺率が10%加算修正され、歩行者20:車両80となります。まとめ駐車場は、車両の駐車を目的とした施設で、車両の方向転換や後退などが頻繁にある場所です。歩行者の往来も多くあります。したがって、車両の運転者も歩行者も、周囲に十分注意する義務があります。駐車場内の通路での車両同士の事故は、基本的に双方の過失割合は同等です。駐車スペースに入ろうとした車両に通路を進行する車両が衝突した場合は、通路進行車に重い過失責任があり、駐車スペースから出ようとした車が通路を通行する車に衝突した場合は、駐車スペースから出ようとした車に重い過失責任があります。駐車場における歩行者と車両との事故は、歩行者にも周囲の安全を確認する義務がありますから、基本的に10%過失相殺されます。ただし、あくまで基本の過失割合・過失相殺率です。修正要素を加味し、個別事情を考慮して過失割合や過失相殺率を判断する必要があります。駐車場内の事故で過失割合に不満がある場合は、交通事故の損害賠償問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・別冊判例タイムズ38『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』
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