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  • 過失相殺
    交通事故の過失相殺とは当事者間で損害を公平に分担する制度
    過失相殺とは、被害者にも何らかの過失があるときは、被害者の過失相当分を損害賠償額から減額することです。過失相殺があると、損害賠償額が大幅に減額となることがあるので、正しい過失割合・過失相殺率とすることが大事です。ここでは、過失相殺について被害者が知っておきたい3つのことをお伝えします。加害者(相手方保険会社)が過失相殺を主張してきたとき、これを知らないと被害者の側が損することがありますから、注意してください。過失相殺とは?過失相殺は、法律上どのように規定されているのか、まず見ておきましょう。過失相殺とは、当事者間で損害の公平な分担を図る制度交通事故など不法行為による損害賠償の過失相殺について、民法722条2項は、次のように規定しています。民法722条2項被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。もともと、この規定は、「自分の不注意による損害の責任を加害者に転嫁しようとする被害者への非難」に基礎をおくものですが、いまは「損害の公平な分担を実現するための調整機能」としての意義が強調されています。過失相殺について、最高裁は次のように判示し、過失相殺の本質が公平の理念にあることを明らかにしてしています。「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかに斟酌するかの問題に過ぎない」(最高裁判決・昭和39年6月24日)このように、過失相殺は、当事者間で損害の公平な分担を図る制度です。なお、民法722条2項は、民法において損害賠償義務者に認められた減額請求権です。被害者に過失があることの立証責任は、加害者側にあります。過失相殺について被害者が知っておきたい3つのこと加害者の側(相手方保険会社)から過失相殺が主張されるときは、次の3つの点に注意して対応することが大切です。被害者が必ず知っておきたい3つのこと加害者の過失と被害者の過失は違う。過失相殺により加害者の賠償責任が免除されることはない。被害者に過失があっても過失相殺されないことがある。過失割合や過失相殺率を判断するときは、一般に『過失相殺率の認定基準』を参考にしますが、これがすべてのケースを網羅できているわけではありません。前提となる基本の考え方を知らないと、「基準」に形式的に当てはめて、結果的に損してしまうことがあるのです。それでは、3つの点について、それぞれ詳しく見ていきましょう。過失相殺の対象となる被害者の過失とは?当事者の間で損害を公平に分担するといっても、加害者の過失と被害者の過失は、質的に異なります。「加害者の過失」と「被害者の過失」の違い加害者の過失は、注意義務違反です。不法行為の責任原因ですから、損害賠償義務が生じます(民法709条)。それに対し、過失相殺の対象となる被害者の過失は、「不注意」とか「落ち度」といった程度のものです。この違いは、過失割合や過失相殺率を判断するときに重要です。あとで説明しますが、裁判所の裁量により、被害者の過失の内容・程度によっては、被害者の過失を斟酌せず、過失相殺しないこともあるのです。その一方で、加害者は過失があるかぎり、損害賠償義務を免れることはできません。被害者の過失は2種類ある過失相殺の対象となる過失は、大きく2つに分類されます。事故の原因となった過失と損害の発生・拡大に寄与した過失の2つです。それぞれ、例えば、次のようなものです。事故の原因となった過失赤信号で道路を横断したウィンカーを出さずに車線を変更した運転中にスマホや携帯電話を使用していた損害の発生・拡大に寄与した過失ヘルメットを着用せずバイクを運転して事故に遭い、頭部に傷害を負ったシートベルト不着用で事故に遭い、車外に放り出され受傷した「損害の発生・拡大に寄与した過失」は、さらに、「運行に関する過失」と「運行に関しない過失」に分けて考える場合もあります。運行に関する過失とは、スピード違反やブレーキ遅れなど。運行に関しない過失とは、シートベルトやヘルメットの不着用、事故後の治療やリハビリの懈怠などです。過失相殺により加害者の損害賠償責任が免除されることはない被害者にも過失があったとき、過失相殺するかどうか、過失相殺率をどれくらいにするかは、裁判所の裁量に委ねられています(民法722条2項)。ここでのポイントは、被害者の過失について裁判所が斟酌できるのは「損害賠償の額」だけで、加害者の損害賠償責任の有無については斟酌できない、ということです。つまり、被害者の過失がいかに大きいものであっても、加害者に過失がある限り、加害者が賠償すべき損害賠償額の全部を免除されることはありません。このことを、債務不履行の場合の過失相殺と比べて、詳しく見てみましょう。「不法行為の過失相殺」と「債務不履行の過失相殺」の違い民法には、不法行為の過失相殺(民法722条2項)のほかに、債務不履行の過失相殺(民法418条)が規定されています。同じ過失相殺でも、不法行為の場合と債務不履行の場合では、法律上の規定が異なります。両者を比較してみましょう。不法行為の過失相殺(民法722条2項)被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。債務不履行の過失相殺(民法418条)債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。債務不履行に関し債権者の過失があったときの過失相殺民法418条は、債務不履行による損害について、債権者に過失があったときは、裁判所は、債権者の過失を考慮して「損害賠償の責任及びその額を定める」としています。債権者の過失の内容・程度によっては、債務者は損害賠償の責任を免れることもあり得る、ということです。不法行為に関し被害者の過失があったときの過失相殺一方、不法行為の場合は、被害者に過失があったときは、裁判所は、被害者の過失を考慮して「損害賠償の額を定めることができる」としています。「できる」規定です。損害賠償額を定めるにあたって、被害者の過失を考慮するかどうか、過失相殺するかどうかは、裁判所の裁量に委ねられています。裁判所の判断で、被害者の過失を斟酌せず、過失相殺をしないこともあり得るということです。また、裁判所が定めるのは、債務不履行の場合のように「損害賠償の責任及びその額」でなく「損害賠償の額」です。つまり、不法行為の場合は、被害者の過失がいかに大きくても、過失相殺によって、加害者が損害賠償責任を全面的に免責されることはありません。被害者に過失があっても、過失相殺されないこともある被害者に何らかの過失があれば、必ず過失相殺するわけではありません。被害者に過失があっても、過失相殺されない場合があります。被害者の過失と損害の発生・拡大との間に因果関係が認められない場合や、加害者の過失が極めて重大な場合は、過失相殺されません。損害の発生・拡大との因果関係がないときは過失相殺されない被害者に過失があったとして過失相殺するためには、被害者の過失と損害の発生・拡大との間に相当因果関係が必要です。因果関係が認められない場合は、被害者に過失があったとしても、過失相殺は否定されます。過失相殺するかどうかは、事故態様や受傷部位、負傷の程度などから、事故の発生、損害の発生・拡大との因果関係の有無を個別具体的に判断することが大切です。例えば、ヘルメット不着用やシートベルト不装着は、それが損害の拡大に寄与していると考えられれば過失相殺されますが、相当因果関係が認められないときは過失相殺が否定されます。こんなケースを考えてみてください。相手の車がセンターラインオーバーで正面衝突。こちら(被害者)は単車で、ヘルメット不着用だったケースです。相手車両のセンターラインオーバーによる正面衝突事故の場合は、通常、被害者に「事故の発生に関する過失」はありません。このとき、被害者が頭部を怪我したという場合は、ヘルメット不着用との因果関係が認められ、被害者に「損害の発生・拡大に関する過失」があることになります。しかし、脚を骨折したというような場合は、ヘルメット不着用は関係しないので、被害者に「損害の発生・拡大に関する過失」があったとはいえません。ヘルメット不着用やシートベルト不装着の過失相殺について詳しくはこちら加害者の過失が極めて重大なときは過失相殺されない加害者の過失が極めて重大なときは、被害者に多少の過失があっても過失相殺しないこともあります。例えば、歩行者(被害者)が横断歩道を横断中に事故に遭ったような場合です。横断歩道を横断する歩行者には、絶対的な優先権があります(道路交通法38条1項)。ですから、横断歩道を横断中の事故の場合は、歩行者に「左右の安全確認を怠った」という過失があったとしても、自動車の過失が極めて大きいと判断され、原則として過失相殺しません。横断歩道でないところを渡っていて事故に遭ったときは、被害者は横断歩道のように絶対的優先権を主張することができず、過失相殺されます。道路交通法38条1項車両等は、…横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。まとめ被害者にも過失があったときは、過失相殺により損害賠償額が減額されます。ただし、被害者に過失があれば、必ず過失相殺されるわけでもありません。加害者の過失と被害者の過失は質的に異なります。過失相殺率は、5%や10%単位で決まり、損害賠償額に対する影響は非常に大きいので、適正な過失相殺率となるよう示談交渉することが大事です。保険会社などが主張する過失割合・過失相殺率に疑問を感じたときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 254~256ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 311~316ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 281~284ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 205~209ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 222~228ページ
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  • 過失相殺率と過失割合の違い
    過失割合と過失相殺率の違いとは?わかりやすく詳しい解説
    交通事故の過失相殺において、過失割合と過失相殺率は、同じような意味で使われることがありますが、過失割合と過失相殺率は異なります。過失割合と過失相殺率の違いについて、分かりやすく説明します。過失相殺率と過失割合の違い過失相殺率と過失割合には、次のような違いがあります。過失相殺率とは過失相殺率は、過失相殺する割合です。被害者の過失相当分として損害賠償額から減額する割合が、過失相殺率です。例えば、過失相殺率が30%であれば、被害者の過失30%分を減額した額が、損害賠償額となります。この場合、被害者の過失が30%といっても、必ずしも過失割合が「加害者7:被害者3」というわけではありません。「加害者の過失」と「過失相殺の対象となる被害者の過失」は質的に異なるので、同じレベルの過失として対比できないからです。「被害者の過失」と「加害者の過失」の違いとは?過失相殺の対象となる被害者の過失は、単なる不注意というレベルです。自分の不注意により自身に損害が生じたというもので、相手に損害を与えて賠償責任が発生するようなものではありません。加害者の過失は、注意義務違反です。道路交通法などで自動車の運転者に課せられた注意義務を怠り、相手に損害を与え、賠償責任が生じます。被害者の過失と加害者の過失は、このような違いがあるので、同一線上で対比できないのです。過失割合とは過失割合は、発生した損害に対する当事者(加害者と被害者)の過失の割合です。加害者と被害者の過失を対比し、双方に過失を割り付けたものが過失割合です。例えば、「加害者7:被害者3」というように、被害者と加害者に損害の過失責任を割り付けます。この場合、被害者の過失が「10分の3」ですから、過失相殺率は30%となります。過失割合が妥当なのは、対等者間の事故の場合のみ過失割合の考え方ができるのは、当事者の過失が質的に同じものとして対比できる場合、すなわち、四輪車同士の事故のような対等者間の事故の場合のみです。歩行者と自動車との事故のように、交通弱者と交通強者との事故の場合には、過失の質が異なるので、過失割合という考え方は馴染みません。過失相殺における「相対説と絶対説」「交通弱者保護の原則」過失相殺率と過失割合の違いを、さらに深掘りします。ポイントは次の2つです。過失相殺には「相対説」と「絶対説」がある。過失相殺においては「交通弱者保護の原則」が考慮される。過失相殺における「相対説」と「絶対説」過失相殺の基本的な考え方には、「相対説」と「絶対説」があります。相対説:当事者双方の過失を対比して過失相殺を考える。絶対説:被害者の過失の大きさだけによって過失相殺を考える。相対説か絶対説かで過失相殺率が異なる相対説か絶対説か、どちらの立場によるかで、過失相殺率が異なります。例えば、被害者の過失も加害者の過失も、同程度の軽微な過失であった場合を考えてみましょう。相対説の立場で考えると、被害者の過失が小さくても、加害者の過失が同じように小さい場合は、過失相殺率は相対的に高くなります。絶対説の立場で考えると、被害者の過失が軽微なら、過失相殺率は小さくなります。相対説によるのが判例・保険実務の大勢ですが…通常、過失相殺における過失の評価は、加害者の過失と被害者の過失を対比し、双方の事情の総合的考慮により過失相殺の割合を定める方法(相対説)が採られます。ただし、対等者間の事故でない場合は、「相対説においても過失割合という思考をとらない」とされています(『別冊判例タイムズ38』44ページ)。過失相殺における「交通弱者保護の原則」過失相殺にあたっては「交通弱者保護の原則」が考慮されます。四輪車より単車、単車より自転車、自転車より歩行者、成人より幼児・児童といったように、交通弱者が保護される原則です。対等者間の事故の過失相殺には、過失割合と過失相殺率が同一のものとして機能しますが、対等者間でない事故の過失相殺には、過失割合を用いるのは妥当でなく、過失相殺率を用います。歩行者と自動車とでは過失の質が異なり、単車と四輪車でも単車の運転者の方が被害を受けやすく、保護する必要があるからです。歩行者と自動車の事故例えば、一般道路を歩行者が横断していて自動車にひかれ、歩行者の過失相殺率が20%だったとします。このとき、加害者(自動車の運転者)と被害者(歩行者)の過失割合が8;2かというと、そうはなりません。歩行者が、相手車両の物損に、20%責任を負うわけではないのです。自動車は、運転者の不注意(過失)によって他人に危害を加える危険があるため、運転者は、道路交通法で様々な注意義務が課されています。一方、歩行者は、不注意(過失)があったとしても、他人に危害を及ぼすことは基本的にありません。その不注意は、自分の身を守るために注意しなかった不注意にすぎません。過失相殺の過失は、注意義務違反でなく、不注意で足りるといわれる所以です。歩行者は、自分が損害を受けたことについて、自分の過失分について過失相殺されますが、それは加害者として責任を負う過失ではないのです。したがって、歩行者と自動車との事故では、双方の過失を対比する過失割合という考え方は馴染まないのです。単車と四輪車の事故四輪車と単車は、道路交通法で同じように規制を受けますが、四輪車同士の事故と単車対四輪車の事故では、過失相殺率が異なります。例えば、交差点における直進車と右折車との事故で考えてみましょう。道路交通法で直進車優先の基本原則がありますから、四輪車同士あるいは単車同士の事故の場合は、右折車の過失割合が80%、直進車の過失割合が20%で、これがそれぞれの過失相殺率となります。(過失相殺率認定基準【107】)単車が直進車、四輪車が右折車の場合、直進単車の過失相殺率は15%です。対等者間の事故なら直進車の過失相殺率は20%ですから、それより5%減ります。(過失相殺率認定基準【175】)逆に、単車が右折車、四輪車が直進車の場合、右折単車の過失相殺率は70%です。対等者間の事故なら右折車の過失割合は80%ですから、10%減ります。(過失相殺率認定基準【176】)基本的には道路交通法で同一の規制を受ける四輪車と単車であるにもかかわらず、過失相殺率が異なります。これは、単車が四輪車と衝突した場合、単車の運転者が被害を受けるのが通常であり、こうした被害については、公平の観点から救済する必要があるからです。損害賠償における損害の公平な分担という理念から、過失相殺率は、本来の過失割合に修正を加えているので、このように違った基準ができているのです。これを単車修正といいます。「過失相殺基準」の見方過失相殺率を判断するときには、『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ38)を参考にするのが一般的です。この『過失相殺率認定基準』では、交通弱者の側が被害者になったとき(人身損害が生じたとき)の過失相殺率を示しています。つまり、「歩行者と四輪車・単車・自転車との事故」「単車と四輪車との事故」「自転車と四輪車・単車との事故」で示されている基準は、それぞれ、歩行者、単車、自転車が被害者となった場合の過失相殺率を示しています。「四輪車同士の事故」の場合も、被害者の側の過失相殺率を示すものですが、対等者間の事故であるため、過失相殺率と過失割合は一致すると考えて差し支えありません。具体的に見てみましょう。「歩行者と四輪車・単車との事故」の過失相殺率「四輪車同士の事故」の過失相殺率「単車と四輪車との事故」の過失相殺率「歩行者と四輪車・単車との事故」の過失相殺率歩行者と四輪車・単車との事故については、『過失相殺率認定基準』では、歩行者が被害者となったときの過失相殺率を示しています。例えば、歩行者と四輪車・単車との事故で、歩行者が黄信号で横断を開始し、車両が赤信号で進入した場合の過失相殺率の基準は次のようになっています。歩行者と直進車との事故歩行者が、黄信号で横断を開始車両が、赤信号で進入基本10修正要素児童・高齢者-5幼児・身体障害者等-5集団横断-5車両の著しい過失-5車両の重過失-10※『別冊判例タイムズ№38』67ページ、基準【2】。修正要素は一部のみ抜粋。このような事故の場合、被害者(歩行者)の基本の過失相殺率は10%で、修正要素を考慮して過失相殺率を決めます。例えば、被害者が「児童・高齢者」の場合には「マイナス5」で、過失相殺率は5%となります。歩行者は、黄信号の場合に道路の横断を始めてはならないので(道路交通法施行令2条1項)、方向者が黄信号で横断を開始したこと自体に過失が認められます。また、この場合は、歩行者に左右の安全確認義務があるのが普通で、左右の安全確認も怠っていることの過失も問題となります。しかし、赤信号に違反した車両の過失の方がはるかに大きいので、過失相殺基準では「原則として10%以上の過失相殺をしない」とされています。歩行者が加害者となる場合歩行者が加害者となる場合について、過失相殺基準はありません。上の例では、歩行者が被害者となったときの過失相殺率が10%ということであり、過失割合が「加害者9:被害者1」というわけではありません。仮に、歩行者が怪我をせず、歩行者を避けようとした車両の運転者が怪我をして、歩行者が加害者、車両の運転者が被害者となった場合、車両の運転者から歩行者に損害賠償請求するとして、過失相殺率が90%になるわけではありません。歩行者が不法行為責任を負うか、負うとしてその過失責任がどの程度か、については、個別に判断する必要があり、『過失相殺率認定基準』では示していないのです。『過失相殺率認定基準』には、次のような解説があります。歩行者が被害者となる場合のみを取り上げることとし、被害者保護、危険責任の原則、優者危険負担の原則、自賠責保険の実務等を考慮して、歩行者に生じた損害のうちどの程度を減額するのが社会通念や公平の理念に合致するのかという観点から過失相殺率を基準化した。歩行者が加害者となる場合、例えば、歩行者が路上に急に飛び出したため、急停止をした四輪車・単車の運転者・同乗者が負傷したり、歩行者との衝突を避けようとしてハンドルを切り、対向車と衝突した四輪車・単車の運転者・同乗者が負傷した場合等に、歩行者が不法行為責任を負うか、負うとしてその負担割合がどの程度かなどは、本章の基準の対象外である。(『別冊判例タイムズ№38』60ページ)「四輪車同士の事故」の過失相殺率四輪車同士の事故の場合、『過失相殺率認定基準』は、被害車両の過失相殺率を表示しています。例えば、信号機のない同幅員の交差点において、A車・B車とも同程度の速度で進入し、出会い頭に衝突したケースです。A車が左方車、B車が右方車とすると、左方優先ですから、A車の過失相殺率の基準は次のようになります。信号機のない交差点での四輪車同士の事故A車:左方車B車:右方車基本A 40:B 60修正要素A車の著しい過失+10A車の重過失+20B車の著しい過失-10B車の重過失-20※『別冊判例タイムズ№38』215ページ、基準【101】。修正要素は一部のみ抜粋。ここで示しているのは、A車の基本の過失相殺率が40%ということですが、四輪車同士の事故の場合は、「対等者間の事故」なので、過失相殺率は過失割合と同一と解することができます。つまり、A車とB車の過失割合は「40:60」と考えて差し支えないということです。「単車と四輪車との事故」の過失相殺率『過失相殺率認定基準』では、単車と四輪車との事故で、単車側に人身損害が生じた場合の過失相殺率を示しています。例えば、信号機のない同幅員の交差点において、単車(A車)と四輪車(B車)がともに同程度の速度で進入し、出会い頭に衝突したケースです。単車(A車)が左方車、四輪車(B車)が右方車とすると、左方優先ですから、単車(A車)の過失相殺率の基準は次のようになります。信号機のない交差点での単車と四輪車の事故A車:単車(左方車)B車:四輪車(右方車)基本A 30:B 70修正要素A車の著しい過失+10A車の重過失+20B車の著しい過失-10B車の重過失-20※『別冊判例タイムズ№38』318ページ、基準【165】。修正要素は一部のみ抜粋。四輪車同士の事故の場合のように割合の形で表示していますが、対等者間の事故ではないので、過失割合と一致するわけではありません。単車の運転者は怪我をせず、四輪車の運転者が怪我して被害者になり、相手に損害賠償請求する場合、基準に示されている四輪車の過失70%を過失相殺率とすることはできません。別個に判断することが必要です。『過失相殺率認定基準』には、次のような注意書があります。一方が単車・自転車の事故の類型の基準においては、四輪車側の過失割合も示しているが、単車・自転車の過失割合は、そのまま過失相殺率として用いることを予定しているのに対し、>四輪車側の過失割合は、あくまで注意的な記載であり、単車・自転車が加害者であるとして請求された場合における過失相殺率を直ちに示すものではない。(『別冊判例タイムズ№38』44ページ)まとめ過失割合と過失相殺率は異なります。過失相殺にあたっては、過失相殺率を用います。対等者間の事故の場合は、過失割合と過失相殺率は一致するので、過失割合を考えて過失相殺しても差し支えありませんが、対等者間でない事故の場合は、過失割合の考え方は妥当ではありません。過失相殺率の判断には、『過失相殺率認定基準』を用いるのが一般的です。ただし、すべての事故態様を網羅しているわけではないので、過失相殺基準を参考に個別に判断することが必要です。相手方の保険会社が示す過失割合・過失相殺率について疑問に感じたり納得できないときは、交通事故の損害賠償請求や過失割合の争いに強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・別冊凡例タイムズ38『過失相殺率の認定基準 全訂5版』・『民事交通事故訴訟の実務』ぎょうせい 169~172ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 295~296ページ
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  • 過失割合の争い
    交通事故の過失割合で争いがあるときはどこに相談すればよいか?
    過失割合・過失相殺率に争いがあり、当事者間で示談できないときは、弁護士に示談交渉を任せるか、民事訴訟を提起して裁判で争うことになります。いずれにしても、弁護士に相談しないと解決できません。交通事故の損害賠償をめぐる紛争解決の方法としては、ADR機関(裁判外紛争解決機関)に示談の斡旋を申し込む方法や、裁判所に民事調停・交通調停を申立てる方法がありますが、ADRや調停は、過失割合の紛争解決には馴染みません。ADRでは過失割合を解決できない交通事故の紛争解決で広く利用されるADR機関として、「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」があります。これらのADR機関は、基本的に交通事故の民事紛争に強い弁護士が担当するうえ、比較的短期間で解決に至ります。何より、審査を申し立てれば、審査結果は損保や共済を拘束するので(片面的拘束力)、被害者が審査結果に同意すれば、損保や共済に有無を言わさず示談が成立します。しかも、無料で利用できますから、交通事故の被害者にとって有利です。ADRは対象となる紛争が制限されるしかし、ADRは扱える紛争に制限があります。事実関係に争いがなく、あとは「示談金額をいくらにするか」という段階の争いでないと、ADRに持ち込んでも解決は望めないのです。これは、ADRが、数回程度の示談斡旋で解決に導くのを原則としていること、間に入って示談斡旋する弁護士は中立の立場であることが、おもな理由です。担当する弁護士は、被害者の代理人として保険会社や共済組合と交渉するのでなく、第三者の中立の立場から、妥当な示談金額を提示し、示談を斡旋します。ですから、相手の損害賠償責任や過失割合、後遺障害等級などに争いがあり、最終的な示談金額の提示に至っていない場合は、ADRでは解決できないのです。ADR機関(裁判外紛争解決機関)のメリット・デメリットについて詳しくはこちら調停では過失割合を解決できない交通調停・民事調停は、裁判のように時間も費用もかからず、弁護士を頼まなくても、被害者本人や家族でも申し立てることができます。調停が成立すれば、確定判決と同じ効果を持ち、調停内容が履行されないときは、強制執行も可能です。調停は裁判のような厳格な事実調査をしないしかし、調停では、裁判のような厳格な証拠調べをしません。当事者が持参した資料を調べたり、参考人から意見を聴取する方法が採られます。また、調停委員は、必ずしも交通事故の損害賠償問題に精通した委員が選任されるわけではありません。むしろ、交通事故の問題にあまり詳しくない弁護士が選任されるのが実情です。損保会社OBが調停委員に選任されることも少なくありません。そのため、過失割合で揉めている場合のように、双方の主張に大きな開きがある場合は、調停は馴染みません。交通調停・民事調停のメリット・デメリットについて詳しくはこちらまとめ過失割合で揉めている場合は、ADR機関(裁判外紛争解決機関)や交通調停・民事調停に持ち込んでも、納得のいく解決は期待できません。過失割合をめぐり当事者間の示談交渉が難航する場合は、弁護士に示談交渉を依頼するか、民事訴訟を提起して裁判で争うしか解決の方法はありません。いずれにしても、弁護士に相談するのがベストです。保険会社の主張する過失割合に納得がいかない場合は、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に今すぐ相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 過失相殺率認定基準
    過失相殺基準(過失相殺率認定基準)と利用上の注意点
    『過失相殺率認定基準』は、過去の判例をもとに事故の態様ごとに過失相殺率・過失割合を基準化したものですが、あらゆる事故に当てはまるものではありません。ここでは、『過失相殺率認定基準』がどんなものか、『過失相殺率認定基準』を使って過失相殺率・過失割合を決める際の注意点についてまとめています。過失割合の算定に使う過失相殺基準とは?過失相殺は、法律上(民法722条2項)は「裁判所の自由裁量」に委ねられていますから、裁判所が、個々の事件ごとに様々な要素を考慮して過失相殺の割合を決めるのが本来の在り方です。しかし、交通事故の損害賠償請求事件は数が多く、事故態様の似たものが多いため、同じような事故にもかかわらず過失相殺割合が裁判官によって大きく異なると、当事者間に不公平が生じます。それゆえ、民事交通訴訟を迅速・公平に処理するため、過失相殺基準が作成され、それを参考に過失相殺率・過失割合を決めるようにしています。過失相殺基準は、訴訟外の示談交渉においても用いられます。「過失相殺率の認定基準・全訂5版」(別冊判例タイムズ38)現在、過失相殺基準として広く使われているのは、東京地裁民事訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版』(別冊判例タイムズ38)です。以下、「過失相殺率認定基準」と略します。「過失相殺率認定基準」は、東京地裁民事第27部(民事交通部)の裁判官が、民事交通訴訟における過失相殺率の認定・判断基準を示したもので、この基準によって、実務が動いていると考えてよいでしょう。裁判で過失相殺が問題となるケースでは、裁判所からも「判タ(判例タイムズ)の何番だと思うのですけれど」と具体的に話が出てきます。示談代行を行う保険会社の担当者も、この「過失相殺率認定基準」を使って交渉するのが一般的です。このほか、『赤い本』や『青本』も用いられます。「過失相殺率認定基準」とはどんなもの?「過失相殺率認定基準」は、事故を大きく次の7つに分類し、それぞれの事故について、基本の過失相殺率(過失割合)と修正要素を示しています。歩行者と四輪車・単車との事故歩行者と自転車との事故四輪車同士の事故単車と四輪車との事故自転車と四輪車・単車との事故高速道路上の事故駐車場内の事故過失相殺率・過失割合を決める上で基本となる一般原則は、「弱者保護」と「道路交通法の優先関係」です。弱者保護弱者保護の原則から、四輪車より単車、単車より自転車、自転車より歩行者、成人より幼児・児童・高齢者・身体障害者等の交通弱者が、過失相殺率・過失割合は小さくなります。道路交通法の優先関係例えば、信号機のない交差点での車両同士の出会い頭の衝突事故の場合、道路交通法に定められた優先関係は次のようになります。左方優先他に優劣を定められないとき左方車が優先する(道交法36条1項)。[基本の過失割合 ⇒ 左方車40:右方車60]優先車優先一方が優先道路の場合、優先道路走行車が優先する(道交法36条2項)。[基本の過失割合 ⇒ 優先車10:劣後車90]広路車優先広い道を走行してきた車の方が狭い道を走行してきた車に優先する(道交法36条2項)。[基本の過失割合 ⇒ 広路車30:狭路車70]非停止規制車優先一方に一時停止の規制がある場合、一時停止の規制のない道路走行車が優先する(道交法43条)。[基本の過失割合 ⇒非停止規制車20: 停止規制車80]「過失相殺率認定基準」の利用の仕方と注意点「過失相殺率認定基準」の利用の仕方と、利用する際の注意点について見ていきましょう。「過失相殺率認定基準」の利用の仕方実際の事故で「過失相殺率認定基準」を利用するとき、次のような流れになります。事故を分析し、「過失相殺率認定基準」のどの類型に該当するのか、どの類型に類似するのかを検討します。その事故の諸事情が、修正要素に該当するかを検討します。基本の過失割合に修正要素を加味して、過失相殺の割合を計算します。修正要素には、幹線道路か否か、夜間などの見通し状況、速度違反の有無、子どもや高齢者か、著しい過失や重過失はないか、など様々な要素があります。事故態様に応じて、適正に修正要素を考慮することが大切です。著しい過失・重過失とは「過失相殺率認定基準」には、事故の類型ごとに主な修正要素を記載していますが、あらゆる要素を網羅できるわけではありません。そのため、「その他の著しい過失・重過失」という修正要素が盛り込まれています。著しい過失とは著しい過失とは、通常想定されている程度を超えるような過失をいいます。「過失相殺率認定基準」には、基本の過失相殺率を定めるにあたり、事故態様ごとに通常想定される過失を考慮に入れていますから、それを超えるような過失という意味です。車両一般の著しい過失としては、例えば、脇見運転などの著しい前方不注意、携帯電話などを通話のために使用したり画像を注視しながら運転すること、おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反(高速道路を除く)、酒気帯び運転などが該当します。重過失とは重過失とは、著しい過失よりもさらに重い、故意に比肩する重大な過失をいいます。車両一般の重過失としては、例えば、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、おおむね時速30㎞以上の速度違反(高速道路を除く)、過労・病気・薬物の影響などにより正常な運転ができない恐れがある場合などが該当します。過失相殺率認定基準に該当しない事故の場合「過失相殺率認定基準」により、あらゆる事故態様がカバーされているわけではありません。「過失相殺率認定基準」に該当しない事故の場合は、基準を参考に、個別具体的に判断する必要があります。過失相殺の割合は、おもに、道路交通法に定められた規制や優先権、事故発生の時間・場所・環境、事故発生の予見可能性・回避可能性、といった3つの要素によって判断されます。これらの要素を基礎に、類似する過失相殺基準を参考に、過失相殺率・過失割合を算定することになります。「過失相殺率認定基準」を利用するときに注意すること過失割合を算出するとき、まず、事故を分析し、「過失相殺率認定基準」のどの類型に該当するか、どの類型に類似しているかを検討しますが、重要なのは、現実の事故を基準・類型に無理やり当てはめるようなやり方をしてはいけない、ということです。交通事故の事故態様は千差万別で、「過失相殺率認定基準」にそのまま当てはまらない事故態様も多数あります。「過失相殺率認定基準」は、あくまで目安として参考にし、個別事情を考慮し適正に修正して使うことが大切です。例えば、歩行者(被害者)が横断歩道上で事故に遭った場合は過失相殺されませんが、横断歩道でない場所で事故に遭った場合は過失相殺されます。過失相殺基準を形式的に当てはめると、事故が発生したのが「横断歩道上か」「横断歩道外か」という一事で、過失相殺率が大きく変わります。ですが、こういう場合もあります。横断歩道を横断中に車が接近してきたので、歩行者が車を避けようとして横断歩道外に逃げて衝突した場合です。この場合、実況見分調書に衝突場所として記載されるのは、横断歩道外となります。衝突場所が横断歩道外だから過失相殺するというのでは、あまりにも機械的です。こういう場合は、横断歩道上の事故と同様に考えることが必要です。「過失相殺率認定基準」を使いこなすには専門知識と経験が必要「過失相殺率認定基準」を使って、実際の交通事故の過失割合を判断するには、どの類型を適用するか、どのような考慮の下に修正要素・修正率が規定されているのか、などの深い知識が必要になります。「過失相殺率認定基準」(別冊判例タイムズ38)は、だれでも比較的容易に入手することはできますが、それを使いこなすには、専門知識と経験が必要なのです。相手の保険会社の担当者は、「過失相殺率認定基準のコレに該当するので、過失割合は何%」というように過失相殺を主張してきます。それに疑問を感じ、ご自身でいろいろと調べる方もいるでしょう。もちろん被害者側が過失相殺の基本的な知識を身に着けておくことは大切ですが、生半可な知識で保険会社の担当者と示談交渉に臨んでも、勝ち目はありません。相手は、様々な事故について示談交渉しているプロです。過失割合に納得がいかないときは、無理をせず、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。まとめ交通事故の過失相殺の割合を算定するとき、参考にする過失相殺基準として、一般的に『民事訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ38)が用いられます。「過失相殺率認定基準」は、交通事故の損害賠償を迅速・公平に処理する上で有用ですが、あらゆる事故態様を網羅しているわけではありません。現実の事故は、「過失相殺率認定基準」をそのまま適用できない場合が多くあります。「過失相殺率認定基準」に機械的に当てはめたのでは、正しい過失相殺率・過失割合は算定できません。大事なのは、「過失相殺率認定基準」に示された基準や修正要素を、どう判断し、どのように修正して適用するかです。それには、専門知識と経験が必要です。過失割合や過失相殺率に納得がいかない場合は、交通事故の過失割合の争いに強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 過失相殺の方法
    交通事故の過失相殺の対象となる損害と過失相殺の方法
    過失相殺は、総損害額に対して行うのが一般的です。ただし、特定の損害費目についてのみ過失相殺することも認められ、損害費目ごとに過失相殺率が異なることもあります。過失相殺の対象となる損害とは?過失相殺の対象となる損害は、原則として、財産的損害と精神的損害の全損害です。財産的損害とは、治療費などの積極損害と逸失利益などの消極損害です。精神的損害とは慰謝料のことです。つまり、原則として、交通事故の被害者が損害賠償請求できる損害は、すべて過失相殺の対象となります。これは、過失相殺が「被害者の被った損害を当事者間で公平に分担する制度」だからです。交通事故の被害者が損害賠償請求できる損害には、次のようなものがあります。積極損害治療関係費、通院交通費、死亡した場合の葬儀費用など消極損害休業損害、逸失利益慰謝料傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料※被害者が損害賠償請求できる「損害費目」について詳しくはこちらをご覧ください。特定の損害費目についてのみ過失相殺もある通常は全損害が過失相殺の対象になりますが、全損害に対して過失相殺することが「被害者保護の観点から不適切」な場合は、特定の損害費目についてのみ過失相殺されることもあります。過失相殺の方法過失相殺は、通常、総損害額に対して行います。各損害費目を合計して総損害額を算出し、総損害額から過失相殺して損害額を算定するので、損害費目ごとに過失相殺率が異なることは原則としてありません。ただし、過失相殺は裁判所の裁量に委ねられているので、特定の損害費目に対してだけ過失相殺することも許され、損害費目ごとに過失相殺率が異なってもよいとされています。過失相殺による損害賠償額の計算方法被害者にも過失がある場合、被害者の過失を過失相殺率(または過失割合)で表し、その部分は加害者に損害賠償請求できません。したがって、加害者に対して損害賠償請求できる額は、次のような計算式になります。総損害額 ×(1-過失相殺率)= 損害賠償額特定の損害費目についてのみ過失相殺するケースとは?総損害額に対して過失相殺を行うと、例えば、被害者の過失が大きい場合、被害者の手元に治療費が残らなくなったり、加害者が治療費を支払っている場合は返還しなければならなくなる事態が生じることがあります。このような場合には、被害者に満足な治療を受けさせようとする配慮から、損害の費目別の過失相殺を行うことができます。ただし、そういった特別の事情について、被害者が主張・立証しなければいけません。物損の過失割合と人損の過失割合が異なるケースもある物損の示談を先行させた場合、そこで合意した過失相殺率が人損に及ぶわけではありません。人損も物損もあわせて裁判になっていれば、同一の過失相殺率で判断されますが、物損の示談で過失相殺率が合意されていても、裁判所はそれに拘束されず、異なる過失相殺率を認定することができます。交通事故に不可抗力的要素があるときの過失相殺交通事故に不可抗力的要素(悪天候・濃霧など)がある場合は、その部分を加害者と被害者の過失割合に応じ両者に按分して割り振ります。例えば、加害者の過失が4割、被害者の過失が1割、不可抗力的要素が5割だった場合を考えてみましょう。不可抗力的要素の5割については、加害者に4割、被害者に1割の割合で按分し、加害者の過失割合が8割、被害者の過失割合が2割というように考え、被害者に2割の過失相殺を行います。まとめ過失相殺は、原則として全損害が対象となり、総損害額から被害者の過失割合分を差し引いた額が、加害者の賠償すべき額となります。ただし、総損害額から過失相殺をすると、被害者の治療費が確保されないなど、被害者保護の観点から過失相殺がふさわしくない場合は、特定の損害費目についてのみ、過失相殺することが認められます。もし、過失相殺により、治療費が確保できないとか、治療費の返還が求められているようなときは、「過失割合の見直し」や「特定の損害費目のみ過失相殺する」などの対応が必要です。過失相殺の争いに強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 過失割合の立証
    交通事故の過失割合・事故態様を立証する証拠の収集方法
    事故の相手から過失相殺が主張され、双方の言い分が対立する場合は、自分の主張を裏付ける証拠が必要になります。どんなものが有力な証拠となりうるか、どうすれば入手できるか、見ていきましょう。有力な証拠として活用できるものとは?過失相殺が問題になる場合には、事故態様や事故現場の状況を的確に把握するために、交通事故が起きたときの現場を再現できる証拠が必要です。次のようなものが、有力な証拠となり得ます。刑事事件記録・物件事故報告書ドライブレコーダーEDR(イベント・データ・レコーダー)目撃者の証言それぞれ、どんなもので、どうやって入手すればいいのか、ご紹介します。刑事事件記録・物件事故報告書刑事事件記録(刑事記録)は、人身事故の場合に、刑事手続として作成するものです。警察官が作成する実況見分調書や供述調書が含まれます。実況見分調書は、事故の状況が詳細に記載された客観的証拠として、民事事件(損害賠償請求)においても有力な証拠となります。刑事確定記録の取得方法刑事裁判の終結後、刑事記録(確定記録)は、事件を担当した検察庁に所定の期間保管され、原則として、事件終結後3年間は、誰でも閲覧可能です(刑事訴訟法53条、刑事確定訴訟記録法4条)。刑事確定記録を取得するには、保管している検察庁に閲覧謄写を申請します。交通事故の被害者が民事事件で刑事確定記録を使用する場合は、閲覧だけでなくコピーも可能です。また、仮に事件終結から3年を経過していても、確定記録の保管期間内であれば認められます。刑事裁判の係争中に刑事訴訟記録を入手するには?交通事故事件には、刑事事件と民事事件があり、2つが並行して進行することもあります。刑事事件が終結していなくても、交通事故被害者は、実況見分調書などの刑事記録を取得することができます。刑事事件が係属する裁判所に、第1回公判期日後当該事件の終結までの間、被害者から申出を行うことで、法廷に提出されている訴訟記録の閲覧謄写が可能です(犯罪被害者保護法3条)。刑事裁判に被害者参加(刑事訴訟法316条の33)する場合は、第1回公判期日前であっても、担当検察官に要望すれば、検察官請求証拠(検察官が証拠調べ請求をすることとしている証拠)等が開示されます。なお、被害者参加しなくても、検察庁では、公判請求後から第1回公判期日までの間、交通事故被害者から要望があれば、公判や関係者のプライバシーなどに特段の支障がない限り、公判提出予定の書面を交付する運用になっています。不起訴記録の取得方法被疑者(加害者)が不起訴処分となった場合は、原則として刑事記録は非開示です。ただし、交通事故被害者から請求があった場合は、実況見分調書や写真報告書など客観的証拠に限り、閲覧謄写が認められます。供述調書については、厳格に運用がなされ、極めて例外的に条件を満たす場合に、民事裁判所を通じた請求で認められることがあります。物件事故報告書人身事故でない場合、すなわち物件事故(物損事故)の場合は、民事の話になりますから、実況見分調書など刑事記録は存在しません。警察は、簡易な物件事故報告書を作成するだけです。もし、怪我をしているのに物件事故として警察に届けているのであれば、人身事故に切り替える必要があります。病院で診断書を発行してもらって、警察に人身事故への変更を届け出れば、実況見分を行い、実況見分調書が作成されます。刑事記録の入手方法について詳しくはこちら物件事故から人身事故へ切り替える方法はこちらドライブレコーダードライブレコーダーの映像があれば、写真や図面では判断できないことが、立証可能となる場合があります。例えば、次のようなことです。信号機の色方向指示器の合図やタイミング急ブレーキ、急ハンドルの有無一時停止場所での一時停止の有無速度、減速の程度やタイミング停車や追い越しの場所、そのタイミング走行位置接触の有無事故当時の道路周辺の状況ただし、ドライブレコーダーの映像は、カメラの取り付け位置と運転席から見える視界が異なるため、位置関係によっては、カメラに写っていても運転者が気づかない場合があり得ます。広角レンズが用いられている場合は、歪みが大きく、直線であるところが曲がって見えるなど、実際の道路状況と異なって見える場合があるので、注意が必要です。ドライブレコーダーのみで判断できないときは、実況見分調書や車両の損傷状況などの事実関係を含めて、総合的に判断することになります。ドライブレコーダーの映像をどうやって入手するか?自分の車にドライブレコーダーを搭載しているのであれば、事故時の録画データを保存しておきます。自分の車にドライブレコーダーを搭載していない場合は、相手方車両がドライブレコーダーを搭載しているなら、相手方任意保険会社に提出を促す方法があります。ただし、相手方保険会社が、任意で提供してくれるとは限りません。裁判所を通じて、相手方任意保険会社に対する文書提出命令を申し立てることも検討する必要があります。事故当時者ではない第三者の車両のドライブレコーダーに、事故の映像が残っている場合があります。このような場合は、任意に提供してもらえるよう交渉するほか、文書送付嘱託の申立てなどの方法で、入手できる場合があります。警察が、事故捜査で防犯カメラやドライブレコーダーの録画データを押収している場合は、刑事記録の閲覧謄写を請求することにより、取得できる場合があります。EDR(イベント・データ・レコーダー)EDR(イベント・データ・レコーダー)とは、車載式の事故情報記録装置のことです。Event(事故などの出来事) Data(情報) Recorder(記録装置)の頭文字をとって、EDRと略されます。エアバックが作動するような強い衝撃を受ける事故が発生した場合に、数秒間さかのぼって、車両の速度やエンジンの回転数、ブレーキやアクセルの作動状況などが記録されます。車両の速度やブレーキ操作などが争点になっている場合、EDRを搭載していれば、EDRデータを解析することにより、事故当時の車両の状況が分かり、事故状況の解明に役立ちます。ドライブレコーダーは、車内外の映像や音声は記録されますが、運転操作の状況までは分かりません。車両の状況や運転操作の検証には、EDRデータが有効です。EDRには、次のようなものが記録されます。速度エンジン回転数アクセルペダルの操作状況ブレーキペダルの操作状況オートマギアのシフトポジション自動車の旋回方向運転席のシート位置助手席の乗員の有無運転席・助手席のシートベルト着用エアバック作動に関する情報2022年7月以降の新車には、EDR搭載がメーカーに義務付けられています。防犯カメラの映像事故現場付近の街頭やコンビニエンスストアなどの防犯カメラに、事故状況が録画されている場合があります。例えば、店舗の駐車場で発生した事故なら、その店舗に防犯カメラが設置されており、駐車場の状況が撮影されている場合があります。事故の映像が残っていれば、事故状況を知るうえで重要な証拠となります。ただし、防犯カメラの映像は保存期間が短いことが多いので、防犯カメラの設置を把握したときは、任意に提供してもらえないか、速やかに、防犯カメラの設置者に交渉する必要があります。目撃者の証言実況見分調書や供述調書で、目撃者の証言が記載されている場合があります。目撃者の証言は、その目撃者が中立の方であれば、重要な証言となりますが、目撃者の供述調書が開示されないこともあります。当事者の言い分が真っ向から食い違っていて、複数の実況見分調書が出来上がっている場合や、死亡事故など被害者側の供述が不能の場合で加害者のみの立会いの実況見分調書が出来上がっている場合には、現地で聞き込みを行うなど、目撃者を探す必要もあります。交通事故の初期対応で被害者がやっておくべき3つのことまとめ刑事記録や物件事故報告書、ドライブレコーダー、EDR(イベント・データ・レコーダー)などは、有力な客観的証拠となり得ます。ただし、内容によっては相手に有利になる場合があることにも注意してください。検察庁への刑事記録の閲覧謄写の請求や、相手方保険会社へのドライブレコーダーの映像やEDRデータの請求は、弁護士に依頼することになるでしょうから、弁護士とよく相談することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 117~120ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 322~326ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 150~166ページ・『改訂版 交通事故事件の実務ー裁判官の視点ー』新日本法規 260~264ページ・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集ー交通事故編ー』第一法規 35~36ページ、42~48ページ、56ページ・最高検企第436号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」・最高検企第437号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」の発出について(通知)
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  • 被害者側の過失
    交通事故の過失相殺における被害者側の過失と被害者側の範囲
    被害者本人に過失が認められなくても、被害者と一定の関係にある者を「被害者側」として捉え、被害者側に過失があったと認められるときは、過失相殺することができます。「被害者側の過失」とは何か、「被害者側」に含まれるか否かの判断基準と運用例について、見ていきましょう。被害者側の過失とは?「被害者側の過失」が問題になるのは、おもに、被害者本人に過失が認められなくても、被害者と一定の関係にある者の過失が関係している場合です。被害者本人の過失と被害者側の過失の両方を認定し、あわせて過失相殺することもあります。過失相殺は、被害者と加害者の間で損害の公平な分担を図る制度ですから、被害者自身に過失がなくても、被害者と一定の関係にある者の過失を斟酌することが公平であるとして、過失相殺が認められます。被害者が幼児の場合の親の過失親が目を離した隙に、幼児が道路に出て事故に遭うというケースは少なくありません。こういう場合、幼児には道路が危険という認識が十分備わっていませんから、被害者本人の過失は否定されますが、親には監督上の過失があり「被害者側の過失」として過失相殺されます。例えば、3歳の幼児とその母親が、赤信号を無視して道路を横断中に自動車事故に遭い、幼児が負傷した場合を考えてみましょう。被害者である幼児にのみ着目すると、3歳の幼児に事理弁識能力はありませんから、過失相殺されません。しかし、この場合、親が一緒にいて、しかも信号を無視して横断中に起きた事故です。加害者が全額損害賠償する義務を負うとなると、過失相殺の公平の理念に反します。ちなみに、歩行者が赤信号で横断を開始し、車両側の信号が青だった場合、過失相殺率認定基準(判タ38号)によると、歩行者の基本の過失相殺率は70%です。また、被害者である幼児に対しては、母親も共同不法行為者の立場になります。運転者が幼児に損害の全額を賠償し、あとで、過失のある母親に対して過失割合に応じた求償をするのが、本来的な筋道です。しかし、母親と幼児は、同居して生計を一にしているでしょうから、加害者がいったん賠償金を全額幼児に支払い、あとで母親に求償するというのは、回りくどい方法で、現実的ではありません。そこで、経済的に一体の関係にある者の過失については、被害者本人の過失と同視して過失相殺するというのが、「被害者側の過失」の考え方です。被害者側の過失を斟酌して過失相殺すれば、求償の循環が省け、紛争を1回で解決でき合理的です。結果として、加害者と母親との連帯責任を分割したことになります。被害者が幼児以外の場合の被害者側の過失「被害者側の過失」の考え方は、被害者が幼児の場合など、被害者本人に事理弁識能力がなく過失相殺が認められない場合の不公平を是正するために出てきたものですが、いまは広く類推適用されるようになっています。例えば、妻が夫の運転する車に同乗していて他の自動車と衝突し負傷した場合、運転していた夫にも過失があれば、「被害者側の過失」として過失相殺されます。「被害者の過失」には、広く「被害者側の過失」も含む民法は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」(民法722条2項)と定めています。「被害者の過失」には、広く「被害者側の過失」も含むと解されています。民法722条にいわゆる過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解するを相当とする。⇒最高裁判決(昭和34年11月26日)「被害者側」の範囲と判断基準それでは、「被害者側の過失」の「被害者側」には、どの範囲まで含むのでしょうか?「被害者側」の範囲について、最高裁は「身分上・生活関係上一体をなす者」という基準を示しています。被害者側の過失とは、被害者本人である幼児と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失をいうものと解するのが相当である。⇒最高裁判決(昭和42年6月27日)「身分上・生活関係上の一体性」が判断のポイント「被害者側の過失」を考慮する場合に「被害者側」に含まれるか否かは、「身分上・生活関係上の一体性」で判断します。ただし、これは抽象的な基準なので、個別に判断することが重要になります。「身分上一体をなす者」とは、被害者と相続・親族関係にある者が該当します。「生活関係上一体をなす者」かどうかは、被害者と同居しているか、生計を一にしているか、などを考慮して判断します。さらに、実際に求償の循環が行われるか、といった観点から「一体性」が判断されます。「被害者側の過失」の適用範囲の拡大昭和42年の判例は、被害者が幼児の場合の「被害者側の過失」に関するものですが、その後、「身分上・生活関係上一体をなす者」という基準を援用し、配偶者に過失がある場合にも「被害者側の過失」として過失相殺することを認める判断を示しました。夫の運転する自動車に同乗する妻が右自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被つた場合において、右衝突につき夫にも過失があるときは、特段の事情のない限り、右第三者の負担すべき損害賠償額を定めるにつき、夫の過失を民法722条2項にいう被害者の過失として掛酌することができる。⇒最高裁判決(昭和51年3月25日)昭和51年の判決では、「被害者側の過失」を「被害者の過失」と同視して過失相殺する合理性についても言及しています。このように解するときは、加害者が、いったん被害者である妻に対して全損害を賠償した後、夫にその過失に応じた負担部分を求償するという求償関係をも一挙に解決し、紛争を1回で処理することができるという合理性もある。「被害者側」に含まれるか否かの具体的な判断の運用例「被害者側」に含まれるか否かの判断基準、すなわち「身分上・生活関係上一体をなす者」の判断について、具体的な運用例を紹介しておきます。あくまでも運用例で、個別事情により判断が異なる場合があります。親族関係にある者の過失夫婦、未成年の子と親、同居して経済的にも一体関係にある兄弟などは、「被害者側」の範囲に含まれます。監督義務者である父母の過失監督義務者である父母の過失は、「被害者側の過失」として過失相殺されます。「他人の不法行為によって死亡した幼児の父母が、これによって自ら受けた精神上の苦痛に対する慰藉料を請求する場合に、父母の一方に事故の発生についての監督上の過失があるときには、その双方の請求について右過失を斟酌することができる」(最高裁判決・昭和44年2月28日)夫婦の過失夫婦は、婚姻により、身分上・生活関係上一体となりますから、被害者側の過失として斟酌されます。例えば、夫が妻を乗せて運転中に事故に遭い、妻が負傷して、その損害を賠償請求する場合、夫に過失があれば「被害者側の過失」として、過失相殺されます。ただし、法律上の夫婦であっても、婚姻関係が既に破綻しているような場合には、「被害者側」と認められないこともあります。夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、右第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため、傷害を被つた妻が右第三者に対し損害賠償を請求する場合の損害額を算定するについては、右夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情のない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解するのを相当とする。(最高裁判決・昭和51年3月25日)内縁関係にある者の過失身分上・生活上の一体性が認められれば、内縁関係にある者も「被害者側」に含まれます。内縁の夫婦は、婚姻の届出はしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり、身分上、生活関係上一体を成す関係にあるとみることができる。そうすると、内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し、それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると解するのが相当である。(最高裁判決・平成19年4月24日)婚約して将来結婚する予定であった者の過失婚約していた者や、近く婚約して将来結婚する予定であった者の過失は、身分上・生活関係上の一体性があるとはいえないので、「被害者側の過失」とは認められません。被害自動車の運転者とこれに同乗中の被害者が恋愛関係にあったものの、婚姻していたわけでも、同居していたわけでもない場合には、過失相殺において右運転者の過失が被害者側の過失と認められるために必要な身分上、生活関係上の一体性があるとはいえない。(最高裁判決・平成9年9月9日)その他の親族の過失同居しているか、生計を一体にしているか、実際に求償の循環が行われるかなど、身分上・生活関係上の一体性があるかを具体的・総合的に判断します。実兄の運転する自動車に同乗中、実兄の過失も原因となって事故が発生し受傷した被害者(妹)について、同女が既に結婚して別世帯を構え、生計を別にしている場合には、実兄の過失は被害者側の過失として過失相殺をすることはできないとした事例があります。(名古屋地裁判決・昭和47年6月14日(判タ№283))祖父母が孫の面倒を見ていて、孫が事故に遭ったときなどは、判断が分かれることがあります。最高裁の基準に照らせば、祖父母が同居していて生計を一にしていれば「被害者側」の範囲に含まれますが、同居しておらず家計も別なら「被害者側」には含まれません。ただし、祖父母が一時的に父母の監護についての履行補助者となったと認められると、「被害者側」に含まれる可能性があります。3歳6ヵ月の女児の事故について、祖父が父母の補助者として同女の監督に当たっていたものと認められるから、祖父の付添中の不注意は父母の責に帰すべきものであるとして、祖父に監督義務者としての過失を認めた事例があります。(高松地裁・昭和44年8月27日(判タ№239))親族以外の者の過失被害者本人と「身分上・生活関係上一体をなす」と見られるような場合に限り、「被害者側の過失」とみるのが最高裁判例の立場です。したがって、家事使用人の過失を「被害者側の過失」と認めた判例(最高裁判決・昭和42年6月27日)はありますが、これ以外では制限的です。例えば、保育園の保育士や子守を頼まれた近所の主婦などの過失は、監督義務はありますが、「身分上・生活関係上の一体性」はないので、「被害者側の過失」とはなりません。なお、「被害者側」とは認められない監督義務者に民法709条の過失がある場合は、その監督義務者は加害者と共同不法行為の関係に立ちます。保育園の保母が当該保育園の被用者として被害者たる幼児を監護していたにすぎないときは、右保育園と被害者たる幼児の保護者との間に、幼児の監護について保育園側においてその責任を負う旨の取極めがされていたとしても、右保母の監護上の過失は、民法第722条第2項にいう被害者の過失にあたらない。(最高裁判決・昭和42年6月27日)例えば、単に職場の同僚や友人の車に同乗したというだけでは、同僚・友人の過失が「被害者側の過失」とはなりません。被害自動車の運転者とこれに同乗中の被害者が同じ職場に勤務する同僚である場合には、他に特段の事情のない限り、過失相殺において被害者側と認められるために必要な身分上、生活関係上の一体性があるとはいえない。(最高裁判決・昭和56年2月17日)雇用されている者(被用者)の過失雇用されている者(被用者)の過失は、原則として「被害者側の過失」として斟酌されます。企業が被用者の活動で成り立っているのですから、当然といえるでしょう。例えば、被用者である運転者の過失によって使用者が負傷した場合、「被害者側の過失」として過失相殺されます。被用者の過失を「被害者側の過失」として斟酌できるかについては、大審院のころから、被害者の被用者の過失を斟酌して、損害賠償額を減額していました。これは、使用者責任(民法715条)との均衡を考えれば明らかでしょう。被用者が、業務中に第三者に損害を与えた場合には、使用者が被用者に代わって第三者に対して損害賠償責任を負います。これが使用者責任です。逆に、使用者が第三者から損害の賠償を受けるときにも、被用者の過失による賠償責任分は、第三者ではなく使用者の側で負担するのが、損害の公平な分担という過失相殺の理念にかなうというわけです。まとめ「被害者側の過失」という考え方は、損害の公平な分担を図る過失相殺制度の趣旨からすれば合理的なことには違いありません。しかし、「被害者側」の範囲をむやみに拡大解釈することは、被害者救済の理念に反します。「被害者側」の範囲を限定することが大切です。被害者本人以外の第三者の過失が過失相殺の対象となるのは、被害者本人とその第三者が「身分上・生活関係上」一体をなし、第三者の過失を被害者本人の過失と同視しなければ不公平であると認められる場合に限ります。保険会社から「被害者側の過失」として過失相殺を迫られ、納得できない場合は、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 一部請求
    交通事故民事訴訟における損害賠償の一部請求と過失相殺の方法
    交通事故の損害賠償請求訴訟では、損害賠償の一部請求をすることができます。過失相殺が想定される事案では、一部請求訴訟を提起する例が多く見られます。なお、あとから残余の損害について賠償請求する場合には、一部請求であることを明示しておく必要があります。そうでないと、あとから残りの部分の損害賠償請求ができなくなってしまいます。ここでは、どんなときに一部請求が有効か、一部請求の注意点、一部請求の場合の過失相殺の方法について、最高裁判例をもとに説明します。損害賠償の一部請求が有効なケースとは?交通事故における「損害賠償の一部請求」は、損害が確定した部分や勝訴が確実と考えられる部分から損害賠償請求し、残余の損害については、あとから改めて請求するか、放棄するものです。損害賠償の一部請求をするのは、次のような場合です。相当因果関係の立証が難しい部分があり、立証が容易な部分に限って訴訟を提起する場合治療継続中で全損害額を確定できないものの、確定している損害部分だけでも早期に賠償請求したい場合一部は保険などを利用するので、それ以外の部分について訴訟を提起すれば十分な場合なお、一部請求は、全部請求に比べて請求額が少なくなりますから、訴訟費用(貼用印紙代)の節約にもつながります。過失相殺が予想される事案では、訴訟費用の節約のため、最初から一部請求することはよくあります。過失相殺が予想されるとき、なぜ一部請求が有効かは、あとから「一部請求における過失相殺の取り扱い」のところで説明します。一部請求するときの2つの注意点最高裁判例は、原則として「損害賠償の一部請求」を認めており、残りの部分についても再度の請求をすることができます。ただし、一部請求するときには注意すべき点が2つあります。1つは、訴訟を提起するときに、一部請求であることを明示する必要があること。もう1つは、損害賠償請求権の時効中断の効力が、請求した損害部分にのみ及ぶということです。一部請求であることを明示することが必要再度、損害賠償請求する考えがある場合は、一部請求であることを明示しておくことが必要です。あとから「前の請求は損害賠償の一部請求だった」と主張しても認められません。このことについて判示した最高裁判例を紹介しておきます。ある金額の支払を訴訟物の全部として訴求し勝訴の確定判決を得た後、別訴において、右請求をその訴訟物の一部である旨主張しその残額を訴求することは許されない。最高裁判決(昭和32年6月7日)1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合に、右一部請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばない。最高裁判決(昭和37年8月10日)昭和37年の最高裁判決については、あとで「一部請求の明示が必要な場合」と「明示しなくてもよい場合」のところで解説します。一部請求の時効中断効は残部に及ばない損害賠償請求訴訟を提起すると、損害賠償請求権の消滅時効が中断します。一部請求の訴えの提起による時効中断効(消滅時効中断の効力)は、明示されている一部請求についてのみ生じ、それ以外の部分には及びません。1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨明示して訴の提起があつた場合、訴提起による消滅時効中断の効力は、その一部の範囲においてのみ生じ残部に及ばない。最高裁判決(昭和34年2月20日)あとから残りの部分の損害について賠償請求しようと考えているときは、損害賠償請求権の消滅時効に注意する必要があります。「一部請求の明示が必要な場合」と「明示しなくてもよい場合」交通事故における損害賠償の一部請求をするとき、一部請求であることを明示していなければ後から再度の損害賠償請求が認められない場合と、一部請求であることの明示をしていなくても再度の請求が認められる場合があります。それは、訴訟物が同一であるか、異なるか、によります。訴訟物とは、裁判における審判の対象です。損害賠償請求権と考えてよいでしょう。訴訟物が1個の場合は、一部請求をして判決が確定したときに確定判決の既判力が残部に及ぶのに対し、別訴提起する訴訟物が異なる場合は、判決の既判力が残部に及ばないからです。このことについて、上記昭和37年の最高裁判決で「1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合」とあるのは、1個の訴訟物(損害賠償請求権)について一部請求した場合ということです。この場合は、一部請求であることを明示していれば再度請求できますが、一部請求の明示がない場合は再度請求が認められません。、訴訟物と確定判決の既判力の関係確定判決の既判力の及ぶ範囲は、1個の訴訟物です。ですから、異なる訴訟物の1個につき請求して判決が確定したとしても、その既判力は他の訴訟物に及びません。あとから別の訴訟物について提訴することができます。例えば、人的損害と物的損害に対する賠償請求権は異なる訴訟物となりますから、物損部分を先に賠償請求し、あとから人損部分につき賠償請求することができます。それに対して、1個の訴訟物の一部につき請求して判決が確定したとき、その既判力は残部にも及ぶため、再度請求することができなくなります。ただし、訴え提起のときに一部請求であることを明示していれば、明示された一部のみが訴訟物となり、確定判決の既判力は残部に及びません。人的損害は1個の訴訟物となりますから、先に治療費部分を請求し、あとから後遺障害部分を請求しようとするような場合は、一部請求であることを明示しないと、後遺障害部分の請求ができなくなってしまうことがあるので注意が必要です。損害と訴訟物の関係交通事故における損害には人的損害と物的損害がありますが、その賠償請求権が訴訟物としてどのように扱われるのか、判例や実務から見ておきましょう。人的損害は1個の訴訟物人的損害には、大別すると財産的損害・精神的損害があります。いくつかの損害項目(例えば治療費・休業補償・後遺障害逸失利益・慰謝料など)について賠償請求するとしても、人的損害は1個の訴訟物というのが判例の立場です。同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、1個である。最高裁判決(昭和48年4月5日)人的損害と物的損害は訴訟物が異なる人的損害と物的損害は、異なる訴訟物というのが判例の立場です。上記昭和48年の最高裁判決は、人的損害に関するもので、物的損害との関係については明確になっていませんでしたが、次の昭和61年の最高裁判決により、人的損害と物的損害それぞれの損害賠償請求権は、訴訟物が異なるということが確認されました。当該著作物に対する同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であっても、著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであって、両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは、訴訟物を異にする2個の請求が併合されているものであるから、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである。最高裁判決(昭和61年5月30日)物的損害は損壊した物件ごとに訴訟物が異なる物的損害は、損壊した物件ごとに訴訟物が異なるというのが実務の立場です。例えば、被害車両の修理費のみを請求し、代車費用を請求していないという場合は、一部請求であることを明示していないと、判決確定後に代車費用を請求しようとしても、既判力によって請求が遮断されます。それに対して、車両に関する損害のみ賠償請求し、積載物の損害については請求していない場合、積載物の損害があることを明示していたかどうかに関わらず、積載物の損害賠償請求は、車両損害に関する確定判決の既判力によって遮断されることはありません。一部請求における過失相殺の取り扱い交通事故における損害賠償の一部請求には、大きく2つのケースがあります。人的損害と物的損害が発生し、そのいずれか(人的損害か物的損害か)一方について、その全部を請求する場合人的損害の一部のみ、あるいは物的損害の一部のみを請求する場合①は、一部請求といっても、異なる訴訟物があって、そのうちの1個の訴訟物について全部請求するケースです。このような場合の過失相殺は、全損害額から過失割合分を差し引けばよいだけです。注意が必要なのは②の場合です。一部請求の場合の過失相殺の3つの方法②のように、1個の訴訟物につき一部請求する場合の過失相殺の方法には、「按分説」「内側説」「外側説」の3つの考え方があります。最高裁が「外側説」を採用した判決を出したことから、現在の実務では「外側説」で処理されるようになっています。「按分説」「内側説」「外側説」は、それぞれ次のようなものです。按分説請求額を単純に過失割合に応じて減額する方法内側説請求額から「全損害額を過失割合に応じて減額すべき額」を控除する方法外側説全損害額を過失割合に応じて減額し、残額を請求額の範囲内で認容する方法「外側説」と「按分説・内側説」との大きな違いは、「外側説」が、全損害額から過失割合分を減額するのに対して、「按分説・内側説」は、請求額から過失割合分を減額することです。「外側説」「按分説」「内側説」の違いを具体的な事例で考えてみましょう。事例全損害額が1,000万円。そのうち600万円を一部請求します。被害者の過失割合は3割とします。「外側説」にもとづく過失相殺全損害額1,000万円について3割の過失相殺を行い、仮に全部請求していると700万円までは認容されるので、請求額600万円については全額認容されることになります。ちなみに、請求額が800万円だった場合は、認容額が700万円となります。「按分説」にもとづく過失相殺請求額600万円について3割の過失相殺を行い、認容額は420万円となります。請求していない400万円(1,000万円-600万円)の損害については審判外で、過失割合が請求部分と未請求部分とで等しくなることが公平という考え方です。「内側説」にもとづく過失相殺全損害額1,000万円の3割にあたる300万円を、請求額600万円から控除した300万円が認容額となります。被害者に不利な結論となり、現在では、これを支持する判例はないようです(新版『交通事故の法律相談』学陽書房)。一部請求における過失相殺の方法についての最高裁の判例一部請求の場合の過失相殺について、「外側説」を採用した最高裁の判断は次の通りです。不法行為に基づく1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。最高裁判決(昭和48年4月5日)最高裁判決は「外側説」を採用する根拠として、「このように解することが一部請求をする当事者の通常の意思にもそうもの」と述べています。過失相殺が行われ得る事案の場合、一部請求する当事者としては、過失相殺により一定程度減額されることは予想されます。ですから、あらかじめ過失相殺により減額されるであろう額を考慮し、認容される見込みのある部分に限り、少なくともこの額だけ請求しようと考える場合があります。請求額を少なくすることで、訴訟費用(貼用印紙額)を節約することもできます。したがって、「外側説」にもとづく過失相殺の方法こそが、一部請求する当事者の合理的な意思に合致するというのが、最高裁の判断です。まとめ損害賠償の一部請求は、過失相殺が予想される事案で利用されることがよくあります。請求額が少なくなる分、訴訟費用の節約にもつながります。そのほか、後遺障害の損害確定が長引き治療費の請求を先にしたいときや、人損の請求を後回しにして物損の請求を先行させたいときなど、一部請求を利用することができます。ただし、一部請求する際には、一部請求であることを明示していないと、あとから残部の損害賠償請求をできなくなることがあるので注意が必要です。弁護士とよく相談することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 好意同乗・無償同乗
    好意同乗・無償同乗の損害賠償額の減額と同乗者の過失相殺
    好意同乗・無償同乗とは、運転者の好意により無償で同乗させてもらうことです。ここでは、好意同乗・無償同乗していた自動車が事故を起こし、同乗者が受傷したとき、同乗車両の運転者に対する損害賠償請求や過失相殺がどうなるのか、見ていきましょう。好意・無償同乗者は同乗車両の運転者に損害賠償請求できる知人等の自動車に好意・無償で同乗させてもらっていて交通事故に遭い受傷したとき、同乗車両の運転者に対して損害賠償を請求することができます。多くは、自賠法(自動車損害賠償保障法)3条にもとづき賠償請求しますが、自賠法3条で請求できない場合でも、民法709条にもとづき請求できます。自賠法3条と民法709条の損害賠償請求権の違いはこちらをご覧ください。自賠法3条は「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と、定めています。運行供用者は、自動車の運行によって「他人」を死傷させたときは、損害賠償責任を負います。ここで、同乗者が「他人」にあたるかどうかが問題となります同乗者は、運行供用者の「他人」運行供用者とは、マイカーの場合なら車両の所有者や運転者が該当し、たいてい同乗者は、運行供用者の「他人」にあたります。最高裁は、「自賠法3条にいう他人とは、自己のために自動車を運行の用に供する者および当該自動車の運転者を除くそれ以外の者をいうと解するのが相当である」と同乗者の他人性を認めています(最高裁判決・昭和42年9月29日)。つまり、好意・無償同乗者は、自賠法3条にもとづいて、同乗車両の運行供用者に対して、損害賠償請求することができるのです。「他人性」が否定される場合例外的に、好意・無償同乗者が共同運行供用者にあたる場合(同乗者が車両の所有者で自分の自動車を運転させていた場合など)は「他人性」が否定され、自賠法3条にもとづく損害賠償請求ができません。この場合は、民法709条にもとづく損害賠償請求をすることになります。好意同乗・無償同乗を理由に賠償額を減額されることはないかつては、好意同乗・無償同乗という事実のみで損害賠償額が減額されていましたが、今はそんなことはありません。従来、運転者の好意により無償で同乗させてもらいながら、一般の被害者と同じように損害の全部を賠償請求するのは、「信義に反する」「公平を欠く」と考えられ、好意同乗・無償同乗という理由だけで、損害賠償額を減額していました。例えば、あなたが、たまたま同じ方向へ行く知人の車に便乗させてもらい、途中で交通事故に遭って負傷したとします。好意で乗せてもらいながら、知人である運転者に損害の全額を賠償請求することは躊躇するでしょう。実際、こういう場合は、好意同乗・無償同乗を理由に、損害賠償額が減額されていました。好意・無償同乗にあたらないケースタクシーに乗車中に交通事故に遭ったような場合は、好意・無償同乗減額はありません。タクシーの運転手は、運送契約にもとづいて、乗客を安全に目的地まで送り届ける義務があります。もし、途中で交通事故を起こし乗客が怪我をしたのであれば、運送契約に基づいて乗客の損害を賠償する責任が発生します。好意・無償同乗者の損害賠償額が減額される場合とは?現在は、単に好意同乗・無償同乗であることを理由に、損害賠償額を減額されることはありません。飲酒運転を知りながら同乗した場合など、同乗者に「過失相殺が適用されるような帰責事由」がある場合に限り、賠償額を減額する裁判例が支配的になっています。好意同乗・無償同乗を理由に損害賠償額が減額されなくなった理由好意同乗・無償同乗を理由に損害賠償額が減額されなくなった背景の1つに、自動車保険が整備され、賠償金が保険で手当てされるようになったことがあります。車両の所有者は、事故を起こしたときの法的責任(損害賠償責任)に備えて自動車保険に加入しています。自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、加入が義務づけられています。自動車保険は、加害者が被害者に損害賠償金を支払い、それによって加害者である被保険者に生じた損害を保険会社が填補する仕組みです。事実上、保険会社が被害者に損害賠償金を支払うのと同じです。実際、任意自動車保険に加入していれば、保険会社が加害者(被保険者)の代わりに損害賠償額を計算し、被害者と示談交渉を行い、示談が成立すれば、保険会社が被害者に損害賠償金額を支払います。自動車保険制度は、交通事故による被害者の救済が目的です。その趣旨からして、好意同乗・無償同乗を理由として、保険金(損害賠償額)の支払いを減額する保険会社の主張を認めることは不合理です。被害者とすれば、好意で乗せてくれた人に「損害の全額を賠償してほしい」とは言いにくいかもしれませんが、適正な損害賠償を請求しないことは、保険会社の支払責任を軽減してしまうことになるのです。好意・無償同乗の4つの類型好意同乗・無償同乗は、次のような4つの類型に分類されます。単なる便乗・同乗型同乗者に事故発生の帰責事由がない場合危険承知型事故発生の危険性が高い客観的事情が存在することを知りながら同乗した場合(運転者の無免許・薬物乱用・飲酒・過労など)危険関与・増幅型同乗者が事故発生の危険性が増大するような状況を現出させた場合(スピード違反を煽った場合など)共同運行供用者型運転者に自賠法3条の運行供用者責任が否定され民法709条の損害賠償責任が成立する場合①のように、同乗者に帰責性がない「単なる便乗・同乗」である場合は、単なる同乗者であることのみをもって、賠償責任者を保護するために賠償額を減額する必要性・合理性はないので、損害賠償額の減額は行われません。②③のように、同乗者に事故の帰責性がある場合は、同乗減額が認められます。④のように、同乗者が共同運行供用者となる場合には減額があり得ますが、②③のような事情が存在しないのに、単に運行供用者に当たり得るということのみをもって、賠償金額を減額した裁判例は見当たらないとの指摘もあります(『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 398ページ)。好意・無償同乗減額と同乗者の過失割合の算定方法好意・無償同乗減額が行われる「危険承知型」「危険関与・増幅型」「共同運行供用者型」について、同乗者の過失がどのように認定されるのか見ていきましょう。具体事例を考えるにあたって、Aが同乗者、Bが同乗車両の運転者、Cが相手方運転者とします。危険承知型「危険承知型」は、同乗者が、運転者の無免許・薬物乱用・飲酒・過労など事故発生の危険性が高い客観的事実を知りながら、あえて同乗したケースです。運転者に事故を起こす危険性が高い事実があることを分かった上で同乗したのですから、「みずから積極的に危険に接近して損害を被った」ことを理由に、損害の公平な分担の見地から、賠償額が減額されます。同乗者の過失割合は、同乗車両の運転者の過失のうち、交通事故発生の危険性が高い客観的事実に係る過失割合の範囲内の一部です。事故発生の危険性が高い客観的事実を認容していた程度に応じて決まります。例えば、Aが、Bの無免許運転を知っていながら同乗し、交差点内でCの運転する自動車と衝突した場合を考えてみましょう。BとCの間の過失割合が[B40:C60]のとき、Aは、Bの過失割合40%の一部を自己の過失として問われます。Bの過失割合40%のうち無免許を理由とする部分が20%であるなら、Aの過失割合は20%を上限に、AがBの無免許を認容した程度などから算定します。Aの過失割合を10%とすると、A10:B30:C60の絶対的過失割合が認定されます。危険関与・増幅型「危険関与・増幅型」は、同乗者が、運転者のスピード違反や蛇行運転を煽ったり、運転者のブレーキ操作やハンドル操作を妨げるなどして、交通事故発生の危険性が増大するような状況を現出させたケースです。こうした行為が、同乗者の過失(不法行為)として問われます。同乗者の過失の影響を受けるのは、同乗車両の運行です。同乗者の過失割合は、同乗車両の過失割合を上限とし、みずからの行為が事故発生の危険性を高めた程度に応じて、その一部が自己の過失となります。例えば、AがBの運転する車両に同乗してスピード違反を煽り、Aによるブレーキ操作の妨害行為もあり、交差点内でCの運転する自動車と衝突した場合を考えてみましょう。BとCの過失割合は[B70:C30]とします。Aのスピード違反運転の煽り行為やブレーキ操作の妨害行為という過失は、Bの過失割合70%に反映されています。Bのスピード違反を理由とする過失割合が20%で、そのうちAの煽り行為の部分が5%であったとします。さらにAのブレーキ操作の妨害行為による部分が15%であったとき、Aの過失割合は合わせて20%となります。A20:B50:C30の絶対的過失割合が認定されます。共同運行供用者型「共同運行供用者型」とは、同乗者が車両の保有者であり、運転を交代でしていたようなケースです。同乗者の運行支配の程度が運転者と同等程度以上で、自賠法3条の「他人性」が否定されるような場合は、同乗車両の運転者に対して自賠法にもとづく賠償請求はできず、民法709条にもとづき賠償請求することになります。ただし、同乗者も、共同運行供用者として、交通事故の発生を抑制すべき立場にあり、損害の公平な分担の見地から、その程度に応じて過失相殺の規定の類推適用がなされます。同乗者には共同運行供用者として交通事故の発生を抑制すべき立場にあったのですから、同乗者の過失割合は、同乗車両の運転者の過失割合を上限とし、その運行支配の程度に応じ、同乗車両の運転者の過失割合の一部を自己の過失とすることになります。例えば、BとCの過失割合が[B20:C80]、AとBの運行支配の程度が1/2ずつの場合、同乗者の過失はBの過失20%の1/2なので10%となります。A10:B10:C80の絶対的過失割合が認定されます。同乗者の過失割合の算定方法は、東京地裁民事第27部判事 桃崎剛『好意同乗及び同乗者のヘルメット・シートベルト装着義務違反における共同不法行為と過失相殺』判例タイムズ№1213)を参考にしました。ヘルメット不着用・シートベルト不装着による減額同乗者には、ヘルメットの着用やシートベルトの装着が義務づけられていますから、好意・無償同乗減額される場合には、ヘルメット不着用・シートベルト不装着もあわせて減額割合が決められるのが一般的です。なお、ヘルメット不着用やシートベルト不装着による過失相殺は、そのことが損害の拡大に影響していると認められる場合に適用されます。好意・無償同乗減額が交通事故の発生に対する責任・過失であるのに対して、ヘルメット不着用やシートベルト不装着による減額は、損害の拡大に対する責任・過失である点が異なります。ヘルメット不着用やシートベルト不装着を理由とする過失割合は、損害を拡大させた程度により決まります。ヘルメット不着用・シートベルト不装着の過失割合は控えめに算定損害を拡大させた程度を厳密に認定することは困難で、交通事故発生の原因の場合と異なり損害を拡大させた割合が直ちに同乗者の過失割合になるわけではないので、その割合は控えめに算定すべきであるとされています。実際、これまでの裁判例では、ヘルメット不着用の場合で多くは5~10%、最大でも30%程度、シートベルト不装着の場合で5%から最大でも20%程度に止まっているようです。(参考:上記判例タイムズ№1213)例えば、Aが、Bの運転するバイクに同乗し、Cが運転する自動車と衝突。Aの損害が1,000万円。BとCの過失割合が[B30:C70]、Aのヘルメット着用義務違反による過失割合が10%とします。Aは、BとCに対し、1,000万円から自己の過失割合10%を控除した900万円を賠償請求することができます。BとCの負担割合は、過失割合B30:C70に応じて、Bが270万円、Cが630万円となります。好意・無償同乗減額の裁判例最後に、好意・無償同乗減額についての裁判例を紹介しておきます。好意・無償同乗者の減額を否定した裁判例好意同乗者・無償同乗者に帰責事由が認められないとして損害賠償額の減額が否定された裁判例には、次のようなものがあります。東京地裁判決・平成15年9月3日レンタカーで旅行中、時速50㎞制限のところを時速100㎞から120㎞に加速して先行車を追い越し、進路変更しようとして急ハンドルを切ったため制御不能となり縁石に衝突して横転し、同乗者が死亡した事案について、同乗者に無謀な運転を誘発するような行為は認められず、運転に危険性が高いことを承知ないし予測できたような事情もないとして、同乗減額を認めなかった。東京地裁判決・平成16年7月12日一緒に買い物に行くためバイクに同乗し事故にあった事案について、好意同乗減額が認められるには、運転者が事故を惹起しかねないような具体的事情を認識しながら任意の意思で同乗したことが必要であるが、本件ではそのような事情は認められないとして、同乗減額を認めなかった。大阪地裁判決・平成18年4月25日路面凍結によりスリップしてトンネル壁に衝突し、助手席で仮眠中の同乗者が負傷した事案について、同乗者は、事故発生の危険が増大するような状況を自ら積極的に現出させたり、事故発生の危険が高い事情が存在することを知りながらこれを容認して同乗した等の事情はないとして、同乗減額を認めなかった。好意・無償同乗者の減額を肯定した裁判例好意同乗・無償同乗という理由で減額されるわけではありません。同乗者にどのような具体的な帰責事由があれば好意・無償同乗減額がされるのか、裁判例を紹介します。大阪地裁判決・平成18年1月25日ドライブの誘いを受けて同乗中、酒酔い運転で高速道路を制限速度を倍の速度で暴走し、分岐点のクッションドラムに衝突して死亡したケースについて、飲酒の可能性は多少認識していたにとどまるが、暴走行為の認容はあったことから、シートベルト不装着も考慮して35%減額した。東京地裁判決・平成19年3月30日加害者を呼び出して一緒に飲食店で飲酒した被害者が助手席に同乗中の事故について、自ら事故発生の危険性が高い状況を招来し、そのような状況を認識したうえで同乗したとして同乗減額を認め、シートベルト不装着とあわせて25%減額した。神戸地裁判決・平成20年1月29日加害車両に同乗して飲酒目的で居酒屋へ向かい、飲酒後、助手席に同乗中ハンドルを取られてトンネル内で側壁に衝突横転して被害者が受傷した事案について、加害者が飲酒運転をすることを認容し、飲酒していることを承知で同乗したとして同乗減額を認め、シートベルト不装着も考慮して20%減額した。まとめ現在は、好意同乗・無償同乗という理由で賠償額が減額されることはありませんが、同乗者に過失があるときはその程度に応じて過失相殺されます。例えば、運転者が飲酒しており事故発生の危険性が高いことを承知で同乗した場合や、スピード違反を煽り事故の発生に関与した場合など、同乗者に過失がある場合には、その程度に応じて賠償額が減額されます。ヘルメット不着用やシートベルト不装着が損害の拡大に影響している場合は、あわせて減額されます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・東京地裁民事第27部判事 桃崎剛『好意同乗及び同乗者のヘルメット・シートベルト装着義務違反における共同不法行為と過失相殺』判例タイムズ№1213・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 397~402ページ関連同乗者が交通事故で負傷した場合も自動車保険から補償はある?好意無償同乗者は運転者の自動車保険から治療費や慰謝料が出るか?
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  • シートベルト不着用
    ヘルメットやシートベルト不着用の過失相殺と過失割合
    ヘルメット不着用やシートベルト不装着が原因で、損害が拡大したと考えられるようなときは、過失相殺が適用されます。ただし、受傷の部位や程度によっては、ヘルメット不着用やシートベルト不装着が損害の拡大に影響しているとはいえない場合もあります。ヘルメット不着用やシートベルト不装着を理由とする過失相殺にあたっては、損害拡大との因果関係を正しく評価することが必要です。ヘルメット不着用の過失相殺と過失割合バイクを運転するときは、ヘルメットをかぶることが法律で義務付けられています。道路交通法第71条の4大型自動二輪車または普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車もしくは普通自動二輪車を運転し、または乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車もしくは普通自動二輪車を運転してはならない。原動機付自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで原動機付自転車を運転してはならない。ヘルメット不着用の過失相殺率このことから「過失相殺率認定基準」では、ヘルメット不着用が被害の拡大に寄与しているようなときには、著しい過失に準じて加算修正するのが相当としています。特に、高速道路でのヘルメット不着用は、重過失として評価すべきとしています。頭部外傷の傷害を受けた場合等、ヘルメット着用義務違反が損害拡大に寄与しているようなときには、著しい過失に準じて、単車側の過失相殺率を加算修正するのが相当であろう。ただし、高速道路におけるヘルメット不着用は重過失と判断すべきである。(『過失相殺率の認定基準』全訂5版(別冊判例タイムズ38号)より)著しい過失とは、事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失、重過失とは、著しい過失よりさらに重い、故意に比肩する重大な過失をいいます。著しい過失の修正率は10%、重過失の修正率は20%ですから、ヘルメット不着用の場合は、大きく減額されることになります。ヘルメット不着用と損害拡大との因果関係を判断することが大切頭部の受傷は、ヘルメット不着用との因果関係があるといえます。しかし、事故態様や受傷の部位・程度によっては、ヘルメット不着用と因果関係があるとはいえない場合があります。例えば、頭部以外の受傷は、ヘルメット不着用とは無関係です。また、大型車両による頭部轢過など重篤な傷害の場合は、ヘルメットをかぶっていても傷害は避けられず、ヘルメット着用の有無は関係ないといえます。ヘルメットをかぶらず運転していたら、ヘルメット着用義務違反です。しかし、ヘルメット不着用を理由に過失相殺する場合は、ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与しているか、因果関係を判断することが必要です。ヘルメット不着用の過失相殺についての裁判例バイク事故では、被害者に、ヘルメット不着用だけでなく、速度違反や前方不注視などの過失があわせて認められるケースが多く、過失相殺率が高くなることがあります。ヘルメットをかぶっていなかったことにより、被害者の損害が拡大したと認められる場合には、おおむね10~30%程度の割合の過失相殺がされています。ただし、被害者がヘルメットをかぶっていなかったとしても、ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与しておらず、ヘルメット不着用と損害拡大との間に相当因果関係が認められない場合は、過失相殺が否定されています。ヘルメット不着用を理由に過失相殺した裁判例ヘルメットをかぶっていなかったことを理由に過失相殺した裁判例には、次のようなものがあります。過失相殺率は、ヘルメット不着用の過失と交通事故を発生させた過失をあわせた割合です。直進中の自動二輪車がUターン中の自動車に衝突し、自動二輪車の運転者が頭部等を負傷した事故について、速度超過、ヘルメット不着用の自動二輪車の運転者に40%の過失相殺をした事例。(東京地裁・昭和47年3月8日)交差点で直進の自動二輪車と右折禁止違反の対向右折車とが衝突し、自動二輪車の運転者が死亡した事故について、ヘルメット不着用の自動二輪車の運転者に30%の過失相殺をした事例。(東京地裁・昭和47年8月25日)自動二輪車の運転者が自動車に衝突されて頭蓋骨骨折等で死亡した事故について、ヘルメット不着用の自動二輪車の運転者に10%の過失相殺をした事例。(東京地裁・昭和52年11月29日)自動二輪車の運転者が飲酒のうえ大幅な速度超過で赤信号無視で交差点で衝突し、同乗者が死亡した事故について、ヘルメット不着用の同乗者に10%の過失相殺をした事例。(名古屋地裁・平成9年1月22日)交差点を直進中の原動機付自転車の左側面に自動車が衝突し、同乗者が跳ね飛ばされて頭蓋骨骨折等により死亡した事故について、ヘルメット不着用の同乗者に5%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成9年12月24日)ヘルメット不着用による過失相殺を否定した裁判例ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与したとはいえないとして、過失相殺しなかった裁判例には、次のようなものがあります。自動二輪車の後部座席に横向きに同乗中に受傷した事故について、事故の態様、傷害の部位(肘・膝の関節部など)からして、ヘルメットをかぶっていても傷害は避けられなかったと判断され、横向きに乗っていたため傷害が誘発されたり、その程度が増長したとは認められないとして過失相殺を否定した事例。(東京地裁・昭和46年8月31日)貨物自動車と衝突した自動二輪車の同乗者が内臓破裂で死亡した事故について、ヘルメット不着用は損害の発生や拡大に寄与したものとはいえないとして過失相殺を否定した事例。(東京高裁・平成8年6月25日)シートベルト不装着の過失相殺と過失割合自動車の運転者、同乗者は、原則としてシートベルトの装着が義務づけられています(道路交通法71条の3)。しかし、「過失相殺率認定基準」では、自動二輪車のヘルメット不着用と異なり、過失相殺率の修正について明確にされていません。とはいえ、ヘルメット不着用の場合と同様に、シートベルト不装着が損害の拡大に寄与したと考えられるときには、過失相殺されます。シートベルト不装着との因果関係を判断することが大切ヘルメット不着用の場合と同じく、シートベルト不装着と損害の拡大との因果関係を、傷害の部位・程度から判断することが大切です。例えば、車が衝突して被害者が車外に放り出されたとか、フロントガラスに衝突して負傷したというのであれば、シートベルト不着用を理由として過失相殺されます。しかし、車とガードレールに足を挟まれて片足を切断したような場合は、シートベルト不着用と損害の拡大との因果関係はないといえるでしょう。シートベルト不着用に相当の理由がある場合シートベルト装着義務には、例外規定があります。例えば、疾病・負傷・障害・妊娠・著しく座高が高い低い・著しく肥満などにより、シートベルトをしないことに相当の理由があるときは、シートベルト装着義務の適用除外となります。シートベルトをしなくてもよい者疾病のため座席ベルトを装着させることが療養上適当でない者(道交法71条の3第1項・2項ただし書)負傷若しくは障害のため又は妊娠中であることにより座席ベルトを装着することが療養上又は健康保持上適当でない者(道交法施行令26条の3の2第1項1号、同条2項2号)著しく座高が高いか又は低いこと、著しく肥満していることその他の身体の状態により適切に座席ベルトを装着することができない者(道交法施行令26条の3の2第1項2号、同条2項3号)こういう場合は、シートベルト不装着を理由とする過失相殺はできません。シートベルト不装着の過失相殺についての裁判例シートベルト不装着により、被害者の損害が拡大したと認められるような場合には、おおむね10~30%程度の割合の過失相殺がされています。ただし、被害者がシートベルトを装着していなかったとしても、シートベルト不装着が損害の拡大に寄与しておらず、シートベルト不装着と損害拡大との間に相当因果関係が認められない場合は、過失相殺が否定されています。シートベルト不装着を理由に過失相殺した裁判例シートベルト不装着を理由に過失相殺した裁判例には、次のようなものがあります。過失相殺率は、シートベルト不装着の過失と交通事故を発生させた過失をあわせた割合です。交差点で自動車同士が出合い頭に衝突し、被害者が車の外に投げ出されて死亡した事故について、シートベルト不装着の被害者の一時停止義務違反、速度違反、シートベルト不装着の落ち度を認め、被害者に80%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成1年4月7日)高速道路を走行中の自動車の助手席同乗者が、右手を伸ばしてハンドルを掴んで運転者の運転を妨害したため自動車がガードレールに衝突して横転し、車外に放り出されて車の下敷きとなり死亡した事故について、運転妨害、高速道路上でシートベルト不装着の被害者に40%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成2年8月31日)自動車の助手席に同乗中の被害者が、事故の衝撃で車外に放り出され路上に衝突して死亡した事故について、シートベルト不装着が死亡に少なからざる影響を与えたとして、シートベルト不装着の同乗者に5%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成7年7月26日)先行車両と追突し、助手席に同乗していた被害者がフロントガラスに衝突して頭部に傷害を被った事故について、シートベルト不装着の同乗者に5%の過失相殺をした事例。(東京地裁・平成9年1月22日)酒気帯びの上、シートベルト不装着の被害者が後遺障害等級7級になった事故について、酒気帯びとあわせて20%の過失相殺をした事例。(奈良地裁葛城支部・平成13年12月25日)自動車同士の事故でシートベルト不装着の同乗者が死亡した事故について、シートベルトを装着していても、ほとんどその効果はなかったと認められるものの、その受傷部位、程度からしてシートベルトを装着していれば、もっと軽い怪我で済んだ可能性が高いとして10%の過失相殺をした事例。(奈良地裁葛城支部・平成12年7月4日)シートベルト不装着による過失相殺を否定した裁判例シートベルト不装着が損害の拡大に寄与したとはいえないとして、過失相殺しなかった裁判例には、次のようなものがあります。追突事故により頚椎捻挫を受傷した被害者が、腹囲が117㎝と著しく肥満しており、道交法71条の3の第2項ただし書、同法施行令26条の3の2、第2項2号の趣旨により、シートベルトの不着用には相当の理由があるとして、シートベルト不装着の被害者の過失相殺を否定した事例。(東京地裁・平成7年3月28日)交差点で一時停止規制に違反して進行した加害車に、制限速度を超過して進入した被害車が出会い頭に衝突し、シートベルト不装着の被害者が死亡した事故について、シートベルト不装着であったことと死亡との因果関係が明確でないことを理由として過失相殺を否定した事例。(東京地裁・平成8年12月24日)シートベルト不装着の結果として被害者の症状がより悪化し、損害が拡大したとは認められないとして、シートベルト不着用の被害者の過失相殺を否定した事例。(大阪地裁・平成13年10月17日)まとめヘルメットやシートベルトは、被害の拡大を防止するものです。そのため、ヘルメット不着用やシートベルト不装着が損害の発生・拡大に寄与していると考えられれば、被害者の過失が認められ過失相殺されます。その際には、ヘルメット不着用・シートベルト不装着と損害の発生・拡大との相当因果関係が必要です。事故態様や受傷の部位・程度によっては因果関係が認められず、過失相殺が否定されることがあります。保険会社から、ヘルメット不着用やシートベルト不装着を理由に過失相殺を迫られているときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。ここで紹介した裁判例は、『ヘルメット不着用、シートベルト不装着の場合の過失相殺に関する裁判例』判例タイムズ1033号、『新版・交通事故の法律相談』学陽書房に掲載の裁判例を参考にしました。
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    子供の飛び出し交通事故の過失割合と親の責任・過失相殺
    子どもが道路に飛び出して交通事故の被害に遭ったときの損害賠償については、「飛び出し」を被害者の過失として過失相殺される場合がある一方で、小さな子ども(幼児)であれば過失相殺が否定される場合もあります。被害者が子どもの場合、過失相殺するかしないかの判断は、被害者である子どもに「事理弁識能力(過失相殺能力)」があると認められるかどうかによります。なお、被害者である子どもに事理弁識能力がないと判断して過失相殺が否定された場合でも、親に監督上の過失があったとして過失相殺されることがあります。過失相殺の法理被害者が小さな子どもの場合の過失割合・過失相殺について見る前に、過失相殺について、簡単に振り返っておきましょう。不法行為によって相手に損害を与えたとき、加害者は、被害者に生じた損害を賠償する責任を負います。ただし、被害者にも過失(落ち度)があった場合は、被害者の過失割合分については賠償を受けられず、被害者の負担となります。これが過失相殺です。つまり、過失相殺とは、被害者に発生した損害について、加害者と被害者との間で公平に分担するための制度です。加害者の過失と、過失相殺における被害者の過失は、概念が異なります。「加害者の過失」と「被害者の過失」の違いについてはこちらをご覧ください。被害者に事理弁識能力があれば過失相殺される被害者が小さな子どもの場合、危険性についての判断能力が十分ではありません。それにもかかわらず、大人と同じように過失相殺をしてよいのか、という問題があります。他方で、突然の飛び出しなどは、通常の注意義務をもって運転していたとしても避けようがなく、そういう場合にも、加害者に全額損害賠償させるのは、損害の公平な分担という過失相殺の理念に照らして公平性を欠くのではないか、という問題もあります。これについて最高裁は、次のような判断を示しています。被害者が子どもの場合の過失相殺に関する最高裁判例最高裁は、被害者である未成年者の過失を斟酌する場合、不法行為責任を負わせるまでの責任能力は不要で、事理弁識能力が備わっていれば足りると判示しました(昭和39年6月24日)。不法行為責任とは、民法709条で定めている「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」というものです。責任能力とは、過失など自分の不法行為の結果、法的責任が発生する(損害賠償責任が生じる)ことを認識できる能力をいいます。不法行為責任能力とも呼ばれます。事理弁識能力とは、物事の良し悪しを判断できる能力のことです。例えば、飛び出しは危険ということを理解できる能力をいいます。法的責任の認識までは必要はありません。過失相殺を可能とする能力なので、過失相殺能力とも呼ばれます。被害者である子どもに、事理弁識能力が備わっていると判断される場合には、過失相殺が肯定され、事理弁識能力が備わっていないと判断される場合には、過失相殺が否定されます。最高裁判例について詳しくはこちら事理弁識能力が備わるのは何歳くらい?最高裁は具体的に年齢の基準を示していませんが、その後の下級審の裁判例によると、事理弁識能力が備わる年齢は、だいたい5~6歳と判断するものが多いようです。小学校に入学した児童については、事理弁識能力があるとして過失相殺されています。4歳児・5歳児の幼児については、肯定例・否定例の双方があり、6歳以上は肯定され、3歳児は否定されているようです。通常、年齢によって判断され、個別具体的な事情で能力の高低が判断されるわけではありません。子どもの過失相殺率は、大人と同じでなく、減算修正される「被害者である子どもに事理弁識能力が備わっていれば過失相殺される」といっても、大人と同じ過失相殺率(過失割合)が適用されるわけではありません。過失相殺率認定基準では、「判断能力や行動能力が低い者については、特に保護する要請が高い」(「別冊判例タイムズ38」61ページ)ことから、過失相殺率を減算修正しています。実際の事故態様によって修正率は変わりますが、基本の過失相殺率から、児童5%、幼児10%を減算修正するケースや、児童10%、幼児20%を減算修正するケースなどがあります。そうすると、過失相殺率認定基準で基本の過失相殺率が10%の事故の場合、修正率がマイナス10%であれば、過失相殺率がゼロとなり、事実上、過失相殺されないということになります。過失相殺率認定基準が全ての事故を網羅しているわけではありませんから、基準を参考に個別事情を考慮して判断することが大切です。子どもの過失が否定されても、親の過失として過失相殺もある被害者が事理弁識能力のない幼児の場合、被害者本人は過失相殺されないとしても、親の監督責任が問われ、親の過失として過失相殺されることがあります。これは「被害者側の過失」という考え方です。被害者と一定の関係にある者の過失を考慮して過失相殺するものです。なお、監督義務違反の過失は、子どもの監督という漠然としたものであり、広範囲の責任を課せられていることもあって、過失相殺率は最高でも30%程度といわれています。(参考:『交通事故の法律知識・第4版』自由国民社116ページ)母親が2歳の幼児を連れて買い物をした後、荷物を車に積み込む間、幼児から目を離したため、幼児が駐車場の走行スペースに移動し、自動車にひかれて死亡した事故について、母親にも幼児の動静に注意しておく義務があったのに、これを怠った過失があるとして、1割の過失相殺を認定。(福岡地裁判決・平成27年5月19日)子どもの過失が肯定され、親の過失も認定される場合もある被害者である幼児に事理弁識能力があるとして過失が認められる場合、幼児と一定の関係にある者の過失も被害者側の過失として、あわせて認定されることがあります。道路の右側にあるパーキングエリアから道路を渡り始めた幼児(5歳7カ月)をはねた交通事故において、幼児は事理弁識能力を有していたと判断され、幼児自身に過失を認定するとともに、一緒にいた母親が、先に道路を横断して道路左側の路側帯に移動しており、幼児はその母親に向かって道路を横断したことから、母親の過失も被害者側の過失として認定。(東京地裁判決・平成24年・7月18日)幼児の監護に要求される監護責任・注意義務の程度とは?事理弁識能力を有しない被害者の逸脱行為(車道への飛び出しなど)に対する監護者の過失(注意義務違反)は、社会通念(世間の常識)にしたがって判断されます。一瞬たりとも目を離すことなく、監視していなければならない、などと解されているわけではありません。ですから、被害者側の過失の要件を満たし、相手から被害者側の過失として過失相殺を主張されるようなケースでも、諦めることはありません。事理弁識能力を有しない幼児の飛び出し等による交通事故については、監護者に過失と評価すべき注意義務違反(社会通念に照らして不適切な監護)が存在する場合でない限り、過失相殺されません。監護者に要求される注意義務の程度について論じた、次のような裁判例があります。監護者である両親が、交通頻繁な国道付近で4歳の子どもを1人で遊ばせていた事案です。結論として、監護者の過失を否定し、過失相殺を認めませんでした。この時期の幼児を危険から遠ざけるためには、単に言語をもってする説得の方法だけでは十分な効果を上げるのは甚だ困難であり、監護者として完全な実行を期するには、幼児に対し、有害な精神的衝撃を与えるまでの極度の恫喝を加えるか、または自主性の発達を阻害することをいとわず常時つきまとって過度の干渉を行うほかになく、かような監護方法を措るよう要求するのは社会的に不当であり、かつ不能を強いるものである。幼児の道路における一人遊びの際の交通事故遭難につき、たやすく常に監護者の監護上の過失を認めるべきではない。(山形地裁酒田支部判決・昭和49年2月14日)「事理弁識能力も不要」とする判例もある子どもが被害者の場合の過失相殺については、最高裁判例(昭和39年6月24日)に則り、「過失相殺を適用するには、被害者に事理弁識能力が必要で、それがないときには、被害者側の過失が認められるか否かを考慮する」という考え方が主流です。ただし、被害者に「事理弁識能力すら不要」とする下級審の判決も出ています。東京地裁(昭和44年10月22日)事理弁識能力のない者の行為であっても、右行為が事故の発生に有因的に作用している場合には、被害者の賠償額を算定するにあたって、それを斟酌しうるものと解釈すべきである。(判例タイムズ№242より)大阪地裁(昭和47年1月27日)過失相殺は加害者の違法性ないし非難可能性を斟酌する制度で公平な観念に基く賠償額の決定を目的とするものであるから、被害者の責任能力や弁識能力に関係なく、その外観上の行動を損害の公平な負担に反映させることが必要であり、かつこれをもって足り、原告に事理弁識能力があったか否かについて検討するまでもなく過失相殺することができる。(判例タイムズ№275より)これは、「過失相殺は、損害の公平な分担という見地から妥当な損害額を定めるための調節的機能を有する制度」(東京地裁判決・昭和44年10月22日)という面を強調し、事理弁識能力の有無にかかわらず、例えば「飛び出し」という被害者の行為自体を問題として、過失相殺するのが公平か否かを考えるべきとするものです。損害の公平な分担ということからすれば、「事理弁識能力も不要」という考え方もあり得るでしょう。しかし、道路交通法で「幼児の保護」(道路交通法第14条3項)を定めているように、幼児の要保護性を考えると、事理弁識能力すら不要とするのは、行き過ぎに思われます。「事理弁識能力すらない幼児の事情と、十分な判断能力を備えた成人の事情とを、損害賠償減額の理由として全く同一に扱うことは、一般人の公平感に反するであろう。事理弁識能力程度は被害者に要求すべき」という意見もあります。(東京弁護士会法友全期会交通事故実務研究会編集『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 207ページ)幼児についての道路交通法の規定参考までに、幼児に関する道路交通法の規定を紹介しておきます。これをふまえると、幼児が被害者になった場合の過失相殺の考え方が理解しやすいでしょう。道路交通法における幼児の定義道路交通法においては、幼児は「6歳未満の者」、児童は「6歳以上13歳未満の者」と定めています(道路交通法14条3項)。ちなみに、児童福祉法では、幼児は「満1歳から小学校就学の始期に達するまでの者」と定めています(児童福祉法4条1項2号)。保護責任者の責任幼児・児童を保護する責任のある者は、交通の頻繁な道路や踏切、その付近の道路で幼児・児童を遊ばせたり、自ら若しくはこれに代わる監護者が付き添わないで幼児を歩行させてはならない、と定めています(道路交通法14条3項)。運転者の責任車両等の運転者は、監護者が付き添わない幼児・児童が歩行しているときは、一時停止し、または徐行して、その通行や歩行を妨げないようにしなければならない、と定めています(道路交通法71条2号)。まとめ小さな子ども(幼児)が被害者の場合、過失相殺にあたっては、被害者である子どもの事理弁識能力の有無が問題となります。幼児に事理弁識能力があると判断されると過失相殺されますが、事理弁識能力がないと判断されると過失相殺が否定されます。幼児に事理弁識能力がない場合は、親の監督上の過失が「被害者側の過失」として過失相殺されることがあります。監護者の過失は、社会通念にしたがって判断され、一瞬たりとも目を離すことなく監視していなければならない、などと解されているわけではありません。小さな子どもの交通事故に関する親の責任について、「たやすく常に監護者の監護上の過失を認めるべきではない」とする裁判例もあります。過失相殺は、損害賠償額を決める上で、大きく影響します。過失相殺・過失割合に納得できないときは、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 391~396ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 113~116ページ・『交通事故の法律知識 第4版』自由国民社 11ページ、115~116ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 239~243ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 205~211ページ・別冊凡例タイムズ『過失相殺率の認定基準 全訂5版』あわせてこちらもご覧になると、幼児の損害賠償がさらに分かります幼児の逸失利益も損害賠償請求できる幼児の逸失利益の算定方法と計算例年少女子の逸失利益の算定で男女間格差を解消する方法
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  • 駐車場事故の過失割合
    駐車場内での交通事故の過失割合の判断の仕方と過失相殺率の基準
    駐車場内での事故の過失割合・過失相殺率の基準は、一般道路の場合と異なります。駐車場は、車両の駐車を目的とする施設ですから、車両の後退や方向転換が頻繁にあり、歩行者の往来も多い、特殊な場所です。そのため、車両の運転者は、周囲の車両や人の動きを予測し、十分注意して運転することが求められます。駐車場内での事故の過失割合・過失相殺率は、そういった駐車場の特殊な事情を考慮して判断されます。ここでは、駐車場での事故の過失割合・過失相殺率の判断の仕方について、過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に見ていきます。駐車場での四輪車両同士の衝突事故の過失割合の考え方『過失相殺率認定基準』では、駐車場内での四輪車同士の衝突事故を次の3つの類型に分け、過失相殺率の基準を示しています。駐車場内の通路の交差部分での車両同士の衝突事故「駐車区画から出ようとする車両」と「通路を進行する車両」との衝突事故「駐車区画に入ろうとする車両」と「通路を進行する車両」との事故それぞれの事故類型について、過失割合の判断の仕方について見てみましょう。通路の交差部分での車両同士の衝突事故の過失割合※ 通路の交差部では、原則として双方が対等駐車場内の通路の交差部分で、車両同士が出合い頭に衝突した場合です。駐車場内の通路を進行する車両は、空いている駐車スペースを探しながら、方向転換や後退など様々な動きをすることが想定されます。それゆえ、通路の交差部分を通行する車両の運転者は、他の車両の動きを予見し、安全を確認して、衝突を回避できるような速度と方法で通行する義務を負います。過失割合を考える上でのポイントは、通路の交差部分に進入する車両の運転者は、双方が等しく注意義務を負うことです。一般道路の交差点であれば「左方優先」など道路交通法に定められた優先関係がありますが、駐車場の通路には適用されません。過失割合の基準したがって、駐車場内の通路の交差部分に進入した車両の出会い頭の衝突事故は、原則として、双方が同等の過失責任を負うことになります。基本の過失割合50:50修正要素通路の幅員の違いや運転速度などの事情は、修正要素として考慮します。例えば、一時停止・進行方向の標示に違反した車両や、明らかに広狭の差のある狭路側の車両には、10~20%を加算することとしています。大型商業施設に設けられた収容台数の多い駐車場などでは、駐車場内の通路が、道路交通法の適用される道路と認められる場合がありますが、過失相殺率認定基準では、そういう場合でも「原則として本基準によるのが相当」としています。出庫車と通路進行車との衝突事故の過失割合※ 通路を進行する車が優先駐車区画から出ようとする車両(出庫車)と、通路を進行する車両(通路進行車)とが、出合い頭に衝突した場合です。通路進行車は、駐車区画に駐車している車両が出てくることを予見し、衝突を回避できるよう注意を払って運転する義務があります。一方、出庫車は、駐車スペースを探して通路を進行してくる車両があることを予見し、通路を進行する車両の通行を妨げないよう注意して発進する義務があります。出庫車には、通路進行車より重い注意義務が課されています。過失割合の基準したがって、出庫車と通路進行車が衝突事故を起こしたときは、出庫車が、相対的に重い過失責任を負うことになります。基本の過失割合出庫車70:通路進行車30※車両が前進していたか後退していたかにかかわらず同じ。過失割合の修正要素通路を進行する車両が、標識や路面標示で指示される通行方向に反して進行していた場合や、通常の速度を上回る速度で進行していた場合などは、著しい過失あるいは重過失として、10~20%が加算されます。個別に過失割合を検討する必要があるケース通路を進行する車両の過失の有無が問題となる場合や、駐車区画から出庫を完了し通路進行車同士の衝突とみなされる場合は、基本の過失割合によらず、具体的な事実関係にもとづき、過失割合を検討することとされています。例えば、次のようなケースです。通路を進行する車が急ブレーキを掛けても停止できない距離に近づいた段階で、駐車区画から車が出て来た場合通路を進行する車が、駐車区画から車が出てくることを認識して十分な距離をとって停止したにもかかわらず、駐車区画から出て来た車が衝突した場合駐車区画から出て来た車が出庫を完了して通路を進行しようとしたところへ、通路を進行する車が衝突した場合入庫車と通路進行車との事故の過失割合※ 駐車区画へ入ろうとする車が優先駐車区画へ入ろうとする車両(入庫車)と、通路を進行する車両(通路進行車)とが衝突した場合です。なお、駐車区画へ入ろうとしていることが、ハザードランプ・方向指示器・後退灯・車両の向きなどから客観的に、ある程度手前の位置で認識できる状態にあったことを前提とします。駐車区画へ入ろうとする車両がある場合、通路進行車は、入庫車が駐車区画に収まるまで停止して待機するか、安全にすれ違うことができる距離を確保し、安全な速度と方法で進行する義務を負います。一方、入庫車は、他の車両の通行を妨げることになるので、周囲の状況を注視して、駐車区画に進入する義務を負います。駐車場は車両の駐車を目的とする施設ですから、原則として駐車区画への進入が、通路の進行より優先で、通路進行車の側に、入庫車より重い注意義務が課されます。過失割合の基準したがって、入庫車と通路進行車との間で事故が発生した場合は、原則として、通路進行車が、相対的に重い過失責任を負うことになります。基本の過失割合入庫車20:通路進行車80※車両が前進していたか後退していたかにかかわらず同じ。駐車区画にいったん収まった車が、駐車位置を修正するため再発進して通路に出たときに衝突した場合は、出庫車と直進車との過失割合が基準となります。修正要素通路を進行する車が、標識や路面標示で指示される通行方向に反して進行していた場合や、通常の速度を上回る速度で進行していた場合などは、著しい過失あるいは重過失として、10~20%が加算されます。駐車区画へ進入する車が、切り返しや方向転換などで進路を変えることは予見できることですから、通路進行車が、駐車区画に入ろうとしている車両の側方を通過する場合は、いつでも停止できるよう進行しなければなりません。それを怠った場合は、10%が加算修正されます。個別に過失割合を検討する必要があるケース通路を進行する車両の過失の有無が問題となる場合などは、基本の過失割合によらず、具体的な事実関係にもとづき、個別的に過失割合を検討することとされています。駐車場での歩行者と四輪車の事故の過失相殺率の考え方『過失相殺率認定基準』では、駐車場内での歩行者と四輪車の事故について、次の2つの類型に分け、過失相殺率の基準を示しています。駐車区画内での歩行者と四輪車との事故通路上での歩行者と四輪車との事故それぞれのケースについて、過失相殺率の判断の仕方を見てみましょう。駐車区画内での歩行者と四輪車との事故の過失割合駐車場の駐車区画内で、歩行者と四輪車が衝突した場合です。駐車スペースは、車両を駐車する場所であるとともに、駐車場の利用者が乗車・降車する場所でもあります。駐車区画を出入りする車両の運転者は、歩行者がいないか安全を確認し、進路に歩行者がいる場合は、停止する義務を負います。一方、歩行者も、駐車区画に車両が進入してくることを予見し、車の動きに注意する義務を負います。過失相殺率の基準歩行者にも相応の注意義務が課され、歩行者の基本の過失相殺率は 10%です。歩行者10:車両90修正要素隣接する駐車区画で乗降している人がいる場合、駐車場に進入する運転者には特に慎重に安全確認が求められるので、歩行者の過失相殺率が10%減算修正されます。歩行者が幼児・児童・高齢者・身体傷害者の場合は、歩行者の過失相殺率が5~10%減算修正されます。通路上での歩行者と四輪車との事故の過失割合駐車場内の通路で、歩行者と四輪車が衝突した場合です。駐車場の通路を進行する車両は、人の往来があることを予見し、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行する注意義務を負います。一方、駐車場内の通路は主として車両の移動のための設備ですから、歩行者も、通路を歩く場合は、車両が通行することを予見し、安全を確認する義務を負います。過失相殺率の基準原則として、車両の側が重い責任を負いますが、歩行者の側も一定の責任は免れず、歩行者の基本の過失相殺率は 10%です。歩行者10:車両90修正要素歩行者が、白線などで標示された歩行者用の通路を通行していた場合は、歩行者の通行が保護されるので、歩行者の過失相殺率は20%減算修正されます。歩行者が幼児・児童・高齢者・身体傷害者の場合は、歩行者の過失相殺率が5~10%減算修正されます。車両が、通常の進行速度を明らかに上回る速度で進行していたり、見通しが悪い場所で徐行していなかった場合などは、車両の側に著しい過失が認められ、歩行者の過失相殺率は10%減算修正されます。通路への急な飛び出しは加算修正歩行者が、車両の直前・直後を急に横断したり、予想外に大きくふらつくなど、車両の進路に急に飛び出したときは、過失相殺率が10%加算修正され、歩行者20:車両80となります。まとめ駐車場は、車両の駐車を目的とした施設で、車両の方向転換や後退などが頻繁にある場所です。歩行者の往来も多くあります。したがって、車両の運転者も歩行者も、周囲に十分注意する義務があります。駐車場内の通路での車両同士の事故は、基本的に双方の過失割合は同等です。駐車スペースに入ろうとした車両に通路を進行する車両が衝突した場合は、通路進行車に重い過失責任があり、駐車スペースから出ようとした車が通路を通行する車に衝突した場合は、駐車スペースから出ようとした車に重い過失責任があります。駐車場における歩行者と車両との事故は、歩行者にも周囲の安全を確認する義務がありますから、基本的に10%過失相殺されます。ただし、あくまで基本の過失割合・過失相殺率です。修正要素を加味し、個別事情を考慮して過失割合や過失相殺率を判断する必要があります。駐車場内の事故で過失割合に不満がある場合は、交通事故の損害賠償問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・別冊判例タイムズ38『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』
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  • 絶対的過失相殺・相対的k室相殺
    共同不法行為における絶対的過失相殺と相対的過失相殺の違い
    共同不法行為が成立するときの過失相殺には、「絶対的過失相殺」と「相対的過失相殺」という2つの方法があります。絶対的過失相殺の方法を採用するか、相対的過失相殺の方法を採用するかは、共同不法行為の内容によります。ここでは、共同不法行為がどんなものかを簡単に見たうえで、絶対的過失相殺と相対的過失相殺の特徴と違い、それぞれどんな事故に適用されるのか説明します。共同不法行為と過失相殺交通事故における共同不法行為とは、交通事故により被害者に生じた損害に、複数の不法行為と不法行為者(加害者)が関与していることです。共同不法行為者は、連帯して、被害者に対し損害を賠償する責任を負います(民法719条1項)。民法719条1項(共同不法行為者の責任)数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。交通事故の共同不法行為の例交通事故の共同不法行為には、大きく分けて、同時事故と異時事故があります。同時事故の例としては、自動車同士が衝突して、一方の自動車の同乗者が受傷したとき、その被害者に対して両方の自動車の運転者が共同不法行為者となり、損害賠償責任が生じます。異時事故の例としては、交通事故の被害者が、救急搬送された病院で診断を誤り死亡した場合も、交通事故の加害者と医師の過失行為が共同不法行為となることがあります。共同不法行為における過失相殺の例共同不法行為が成立するときも、被害者に過失がある場合には、各不法行為者から過失相殺が主張されます。上の例でいうと、同乗者がシートベルト不装着の場合や、病院から帰宅後に被害者が重篤な状態に至ったのに適切に対応しなかったような場合は、「被害者の過失」や「被害者側の過失」として、過失相殺されることがあります。「絶対的過失相殺」と「相対的過失相殺」の特徴と違い共同不法行為における過失相殺の方法には、「絶対的過失相殺」と「相対的過失相殺」の2つの方法があります。それぞれの特徴と違いについて詳しく見てみましょう。絶対的過失相殺絶対的過失相殺とは、各加害者の不法行為を一体と捉え、加害者の過失割合を合計し、これと被害者の過失割合を対比して過失相殺する方法です。加害者側の過失割合を加算することから「加算的過失相殺」ともいいます。絶対的過失相殺の計算例被害者Aが、加害者BとCの共同不法行為により被った損害額が300万円。過失割合は、A:B:C=1:5:4絶対的過失相殺の方法によると、加害者BとCが連帯して被害者Aに対して支払う損害賠償額は、次のようになります。300万円×9/10=270万円加害者BとCは、損害賠償額270万円をB5:C4の割合で按分し、負担することになります。相対的過失相殺相対的過失相殺とは、被害者と各加害者との過失割合をそれぞれ対比して過失相殺する方法です。相対的過失相殺の計算例被害者Aが、加害者BとCの共同不法行為により被った損害額が300万円。過失割合は、A:B:C=1:5:4絶対的過失相殺との違いを分かりやすくするため、各当事者の過失の割合(絶対的過失割合)を割り付けていますが、実際には「絶対的過失割合を認定できないとき」に、相対的過失相殺の方法が採られます。相対的過失相殺の方法によると、加害者BとCは、それぞれの過失割合に相当する負担を負うことになります。加害者Bが被害者Aに対して支払う損害賠償額は、300万円×5/6=250万円加害者Cが被害者Aに対して支払う損害賠償額は、300万円×4/5=240万円被害者Aが受け取ることができる賠償額の上限は、270万円(300万円×9/10)で、絶対的過失相殺の方法で計算した額と同額です。加害者BとCが連帯責任を負う範囲については、重畳する部分の240万円とする考え方、BとCの賠償額の合計490万円から上限額の270万円を引いた220万円とする考え方があります。絶対的過失相殺と相対的過失相殺の効果の違い計算例を見れば分かるように、絶対的過失相殺と相対的過失相殺の効果の違いは、絶対的過失相殺の方が、相対的過失相殺より「加害者が連帯して責任を負う範囲が広い」ことです。民法719条の規定は、被害者救済の見地から、共同不法行為が成立する場合、共同不法行為者に連帯責任を課すものです。絶対的過失相殺の方が、相対的過失相殺よりも、被害者救済に有効な方法といえます。「絶対的過失相殺」と「相対的過失相殺」の適用の振り分け絶対的過失相殺の方法によるか、相対的過失相殺の方法によるかは、共同不法行為の内容によって異なります。「どちらの過失相殺の方法を採用すべきか」を考える上で、最高裁の2つの判例があります。「相対的過失相殺の方法を採用する」とした判例「相対的過失相殺の方法によるべき」とした判例には、次の最高裁判例があります。交通事故と医療事故とが順次競合し、運転行為と医療行為とが共同不法行為にあたる場合の各不法行為者と被害者との間の過失相殺の方法について、最高裁は次のように判示しました。最高裁判決(平成13年3月13日)交通事故と医療事故とが順次競合し、そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって、運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において、過失相殺は、各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合を斟酌してすることは許されない。「絶対的過失相殺の方法を採用する」とした判例「絶対的過失相殺の方法によるべき」とした判例には、次の最高裁判例があります。複数の加害者の過失と被害者の過失が競合する1つの交通事故において、絶対的過失割合を認定することができる場合における過失相殺の方法について、最高裁は次のように判示しました。最高裁判決(平成15年7月11日)複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。「絶対的過失相殺」と「相対的過失相殺」のどちらを適用するかの判断最高裁判例によれば、各当事者の「絶対的過失割合」を認定することができるときは、絶対的過失相殺の方法により過失相殺を行うということは明確です。ただし、「絶対的過失割合が認定することができるとき」が、どういう場合かについては示していません。一方、交通事故と医療事故が順次競合した共同不法行為については、「相対的過失相殺の方法による」としています。一連の判例から、おおむね、「同時事故」の場合には絶対的過失相殺の方法を採用し、「異時事故」の場合には相対的過失相殺の方法を採用すると考えられます。なお、異時事故の場合であっても、ほぼ同時に同一場所で各不法行為があったときは、「同時類似事故」として、絶対的過失相殺の方法が採られます。「近時の下級審裁判例を概観しても、同時事故はもとより異時事故についても時間的・場所的近接性が認められる事故については、絶対的過失相殺の方法による裁判例が圧倒的に多い。」引用:『交通賠償実務の最前線』公益財団法人 日弁連交通事故相談センター編同時事故同時事故とは、各不法行為が、同一場所において同時に行われた事故の類型です。自動車同士が衝突して、同乗者や第三者が受傷したようなケースです。各不法行為の間に「強度の関連共同性」があり、各不法行為を一体として、つまり1つの事故として捉えることができるので、同時事故の場合には、絶対的過失相殺の方法が採られると考えてよいでしょう。異時事故異時事故とは、第1事故と第2事故の間に時間的経過が存在する事故の類型です。異時事故には、2つのケースがあります。玉突き事故や、車にはねられ転倒して後続車や対向車に轢かれた事故のように、第1事故と第2事故が同一場所で引き続いて(時間的に近接して)起きるケース。交通事故と搬送先の病院での医療事故(医療過誤)の競合のように、第1事故と第2事故が異なる場所で起きるケース。異時事故でも、「ほぼ同時・同一場所」であったときは、時間的・場所的近接性の観点から同時事故と同視することができ、絶対的過失相殺の方法が採られます。時間的・場所的近接性に照らして、各不法行為の関連共同性が強くなく、これらを一体的に捉えることが容易でないときは、相対的過失相殺の方法が採られる考えてよいでしょう。まとめ共同不法行為における過失相殺は、現実の共同不法行為の内容をふまえて、絶対的過失相殺の方法を採用するか、相対的過失相殺の方法を採用するか、を判断する必要があります。共同不法行為に関しては、判例も学説も錯綜している部分がありますから、交通事故の損害賠償問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 交通事故と医療過誤の共同不法行為
    交通事故と医療過誤の共同不法行為が成立するときの過失相殺の判例
    交通事故と医療過誤が競合する事案は、従来、分割責任の考え方を採用する傾向がありましたが、平成13年3月13日に最高裁は、共同不法行為の成立を肯定し、連帯責任となる判決を出しました。同時に、交通事故と医療過誤の共同不法行為が成立するときの過失相殺については、相対的過失相殺の方法を採用することも判示しました。最高裁判例(平成13年3月13日)のポイント交通事故と医療事故とが順次競合し、そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって、運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり、結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し、責任を負うべき損害額を限定することはできない。過失相殺は、各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合を斟酌してすることは許されない。平成13年の最高裁判例は、どんな事案か平成13年の最高裁判例が、どんな事案か、見ておきましょう。交通事故被害者A(6歳)は、午後3時40分ころ、自転車に乗って一時停止せず、交通整理の行われていない交差点に進入。同交差点内に減速することなく進入しようとしたタクシーと接触し転倒しました。医療事故被害者Aは、救急車で医療法人Yが経営する病院に搬送されました。病院長のB医師は、被害者Aを診察し、頭部と顔面に軽度の挫傷と出血を認めたものの、意識が清明で外観上異常が認められず、被害者Aが「軽く衝突した」と説明したため、軽微な事故と考えました。B医師は、頭部レントゲン撮影で頭蓋骨骨折は発見されなかったため、頭部CT検査や病院内での経過観察は必要ないと判断し、被害者Aと母親に「明日も診察を受けに来るように」「何か変わったことがあれば来るように」と一般的な指示のみで帰宅させました。午後5時30分ころ帰宅し、帰宅直後に嘔吐。眠気を訴えたため、母親は疲労のためと考え、そのまま寝かせました。午後7時ころには、いびきをかいたり、よだれを流したりするようになり、かなり汗をかくようになっていました。両親は多少の異常は感じたものの、この容態を重大なこととは考えず、7時30分ころ、氷枕を使用させ、そのままにしておきました。午後11時ころには、体温が39度まで上昇して、けいれん様の症状を示し、午後11時50分ころにはいびきをかかなくなったため、初めて重篤な状況にあるものと疑い、救急車を要請。しかし、すでに脈は触れず呼吸も停止。救急車で搬送された別の病院で死亡しました(翌日の午前0時45分)。死因は、頭蓋外面線上骨折による硬膜動脈損傷を原因とする硬膜外血腫でした。医師の過失被害者が病院から帰宅した後の一連の症状について、裁判所は、次のように判断しました。被害者Aが病院から帰宅したころには、脳出血による脳圧の亢進により嘔吐の症状が発現。午後6時ころには傾眠状態を示し、いびき、よだれを伴う睡眠、脳の機能障害が発生。午後11時ころには、治療が困難な程度であるけいれん様の症状を示す除脳硬直が始まり、午後11時50分には自発呼吸が不可能な容態になった。判決では、医師の過失について次のように認定しています。硬膜外血腫は、骨折を伴わずに発生することもあり、また、当初相当期間の意識清明期が存することが特徴であって、その後、頭痛、おう吐、傾眠、意識障害等の経過をたどり、脳障害である除脳硬直が開始した後はその救命率が著しく減少し、仮に救命に成功したとしても重い後遺障害をもたらすおそれが高いものであるが、早期に血腫の除去を行えば予後は良く、高い確率での救命可能性があるものである。したがって、交通事故により頭部に強い衝撃を受けている可能性のあるAの診療に当たったB医師は、外見上の傷害の程度にかかわらず、当該患者ないしその看護者に対し、病院内にとどめて経過観察をするか、仮にやむを得ず帰宅させるにしても、事故後に意識が清明であってもその後硬膜外血腫の発生に至る脳出血の進行が発生することがあること及びその典型的な前記症状を具体的に説明し、事故後少なくとも6時間以上は慎重な経過観察と、前記症状の疑いが発見されたときには直ちに医師の診察を受ける必要があること等を教示、指導すべき義務が存したのであって、B医師にはこれを懈怠した過失がある。被害者の過失割合医療事故における被害者側の過失は、「除脳硬直が発生して呼吸停止の容態に陥るまで重篤な状態に至っていることに気付くことなく、何らの措置をも講じなかった点において、経過観察や保護義務を懈怠した過失がある」として、過失割合は1割が相当としました。交通事故における被害者の過失については、事故が、タクシーが交差点に進入する際に、自動車運転手として遵守すべき注意義務を懈怠した過失によるものであるが、被害者Aにも,交差点に進入するに際しての一時停止義務、左右の安全確認義務を怠った過失があるとして、過失割合は3割が相当としました。共同不法行為の成立と相対的過失相殺原審(東京高裁・平成10年4月28日)は、上の事実認定にもとづき、次のように判断しました。被害者Aの死亡事故は、交通事故と医療事故が競合して発生したもので、原因競合の寄与度を特定して主張立証することに困難を伴うので、被害者保護の見地から、交通事故における運転者の過失行為と医療事故における医師の過失行為とを共同不法行為として、被害者は、各不法行為にもとづく損害賠償請求を分別することなく、全額の損害の賠償を請求することもできる。しかし、個々の不法行為が当該事故の全体の一部を時間的前後関係において構成し、その行為類型が異なり、行為の本質や過失構造が異なる場合には、各不法行為者は、各不法行為の損害発生に対する寄与度の分別を主張することができる。すなわち、被害者の被った損害の全額を算定し、各加害行為の寄与度に応じてこれを案分して割り付け、その上で個々の不法行為についての過失相殺をして、各不法行為者が責任を負うべき損害賠償額を分別して認定するのが相当である。本件においては、交通事故と医療事故の各寄与度は、それぞれ5割と推認するのが相当である。こうして、東京高裁は、全損害額4,000万円の5割に相当する2,000万円から、医療事故における被害者側の過失1割を過失相殺した額を医療機関に請求できる損害額としました。※引用にあたり、損害額は100万円未満は切り捨て、弁護士費用・遅延損害金は除いています。交通事故と医療過誤の競合で共同不法行為が成立最高裁は、原審の「2」「3」は是認できないとして破棄しました。最高裁の判断は、次の通りです。本件交通事故により、Aは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの、事故後搬入された被上告人病院において、Aに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもってAを救命できたということができるから、本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、Aの死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。けだし,共同不法行為によって被害者の被った損害は、各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして、各不法行為者はその全額を負担すべきものであり、各不法行為者が賠償すべき損害額を案分、限定することは連帯関係を免除することとなり、共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し、これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり、損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。※引用:最高裁判決(平成13年3月13日)なお、平成13年の最高裁判決は、交通事故と医療事故のいずれもが、被害者の死亡による全損害について相当因果関係を有する関係にある、とする事実関係を前提とするものです。つまり、交通事故により受傷し、放置すれば死亡に至るような傷害を受けた被害者が、適切な治療を受けていれば死亡を免れたのに、治療中に医療機関の過誤により死亡した場合に、関連共同性や因果関係が肯定され、加害者と医療機関の共同不法行為が成立するというものです。したがって、交通事故と医療過誤が競合する全ての事故類型について、当てはまるものではないと解されています。例えば、被害者が一命をとりとめ快復途上にあったのに、その後の治療過程で誤った薬を投与され死亡した場合や、死には至らない傷害を負った被害者が、搬送された病院で血液型不適合の輸血をされて死亡した場合などです。共同不法行為が成立するときの過失相殺の方法最高裁は、交通事故と医療事故の共同不法行為が成立するときの過失相殺について、次のような判断を示しました。本件は、本件交通事故と本件医療事故という加害者及び侵害行為を異にする2つの不法行為が順次競合した共同不法行為であり、各不法行為については加害者及び被害者の過失の内容も別異の性質を有するものである。ところで、過失相殺は不法行為により生じた損害について加害者と被害者との間においてそれぞれの過失の割合を基準にして相対的な負担の公平を図る制度であるから、本件のような共同不法行為においても、過失相殺は各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合を斟酌して過失相殺をすることは許されない。※引用:最高裁判決(平成13年3月13日)相対的過失相殺の方法によると、加害者ごとに異なる過失相殺率を認めることになり、連帯債務といっても加害者ごとに賠償額が異なり、一部連帯の形になります。加害者の過失の態様・性質が異なる場合に、ひとまとめに評価するのは困難なので、過失相殺の方法としては妥当と考えられますが、共同不法行為と認定しながら、連帯責任の範囲は小さくなることに注意が必要です。まとめ最高裁は、交通事故と医療事故が順次関与して被害者に重大な結果が生じ、いずれもが結果との間に相当因果関係が認められる場合に、共同不法行為の成立を肯定し、連帯責任となることを明らかにしました。これは、交通事故と医療過誤が競合する場合全般について、共同不法行為の成立を認めたものではありませんが、共同不法行為が成立する場合は、各不法行為者が損害の全額に連帯責任を負います。交通事故と医療過誤が競合する事案で共同不法行為が成立するとき、過失相殺にあたっては、相対的過失相殺の方法を採用します。これは、加害者の過失の態様・性質が異なり、ひとまとめに評価するのが難しいからです。共同不法行為の絶対的過失割合を認定できるときは、絶対的過失相殺の方法を採用します。共同不法行為が成立するか否か、過失相殺をどうするかは、個別に判断する必要があります。交通事故の損害賠償問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 過失相殺と損益相殺の順序
    損益相殺・過失相殺どっちが先か?順序で交通事故の損害賠償額が違う
    損益相殺による控除と過失相殺による減額の両方が適用されるときは、どちらを先に行うかによって、取得できる損害賠償金額が変わります。損益相殺が先か、過失相殺が先かは、損益相殺の対象となる給付金の性質によって決まります。損益相殺と過失相殺の順序について、基本的な考え方、各給付ごとの実務上の取扱いについて見ていきましょう。損益相殺と過失相殺のどちらを先にするのが被害者に有利か?「損益相殺と過失相殺の順序がどう決まるか」の前に、被害者にとっては、どちらを先に行うのが有利か、見ておきましょう。結論から言えば、被害者にとっては、先に損益相殺(給付額を控除)した後で、過失相殺する方が、受領できる損害賠償額が多くなるので有利です。逆に、加害者にとっては、過失相殺後に控除する方が、賠償額が少なくなるので有利です。被害者にとっては、過失相殺前控除(損益相殺を先行)が有利。加害者にとっては、過失相殺後控除(過失相殺を先行)が有利。損益相殺と過失相殺の順序が違うだけで、損害賠償額に差が出ます。損害額の算定にあたって、損益相殺と過失相殺のどちらを先に行うか、被害者と加害者とで利害が真っ向から対立するのです。具体的な事例で計算してみると…例えば、次のようなケースを考えてみください。【事例】総損害額1,000万円、被害者の過失割合が30%。加害者からの損害賠償と別に、200万円の金銭給付を受けた。過失相殺の前に控除すると…先に給付額を控除(損益相殺)し、後から過失相殺すると、損益相殺後の損害額1,000万円 - 200万円 = 800万円過失相殺後の損害額800万円 ×(1-30%)= 560万円被害者が損害賠償請求できる額は560万円です。すでに受領している200万円を合わせると、1,000万円の損害のうち760万円の損害が填補されることになります。過失相殺の後で控除すると…先に過失相殺し、後から給付額を控除(損益相殺)すると、過失相殺後の損害額1,000万円 ×(1-30%)= 700万円損益相殺後の損害額700万円 - 200万円 = 500万円被害者が損害賠償請求できる額は500万円です。すでに受領している200万円を合わせると、1,000万円の損害のうち、ちょうど被害者の過失30%分を除いた700万円の損害が填補されることになります。被害者の過失割合が大きいほど差が大きくなる被害者の過失割合が大きいほど、損益相殺と過失相殺の順序の違いによる損害賠償額の差が大きくなります。被害者の過失割合が70%(過失相殺率70%)の場合で考えてみましょう。過失相殺前控除だと、(1,000万円-200万円)×(1-70%)= 240万円過失相殺後控除だと、1,000万円 ×(1-70%)- 200万円 = 100万円過失相殺率が30%の場合は60万円の差ですが、過失相殺率が70%だと140万円の差となります。「過失相殺後控除」と「過失相殺前控除」の違い過失相殺後に控除すると、被害者が受領できる額(給付額と賠償金手取額の合計)は、結果的に、加害者が賠償すべき損害額(過失相殺後の額)と一致します。当然の結果なのですが、計算式で確認しておきましょう。(過失相殺後の額)-(給付額)=(賠償金手取額)給付額を移行すると、(過失相殺後の額)=(給付額)+(賠償金手取額)相手方自賠責保険からの支払いが、このタイプです。一方、過失相殺前に控除すると、被害者は、本来の損害賠償額(過失相殺後の賠償金額)を上回る額を取得することができます。つまり、損害賠償だけ受けるより、別途給付を受けた方が、受領した給付額を差し引いたとしても、最終的に取得できる損害賠償額が多くなるのです。これは、給付者が、被害者の過失割合部分の損害を一部填補していることを意味します。健康保険からの給付が、このタイプです。被害者の過失割合が大きい場合には健康保険を利用した方が有利といわれるのは、こういった事情があるからなのです。損益相殺と過失相殺の順序が確定していない給付の場合社会保険給付によっては、過失相殺後に控除するか、過失相殺の前に控除するか、裁判例でも見解が分かれているものがあります。例えば、公的年金給付です。そういう給付については、被害者に有利な「過失相殺前控除」を主張することが大切です。交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。ここに挙げているのは、損害額の算定にあたって控除(損益相殺)する給付です。金銭給付を受けても、損害賠償請求額から控除しない給付もあります。損益相殺する給付・損益相殺しない給付の区別はこちらをご覧ください。損益相殺と過失相殺の順序についての基本的な考え方損益相殺による控除が先か、過失相殺による減額が先か、損益相殺と過失相殺の順序は、給付の目的や給付金の性質により判断します。一般的には、加害者からの弁済や自賠責保険からの損害賠償額の支払いなど、損害の填補として行われる給付は過失相殺後控除とされます。社会保険給付については、その給付の性質(損害填補か社会保障か)を考慮して判断し、社会保障的性格の強い給付は過失相殺前控除とされます。ですが、次のように考えると判断しやすくなります。損害の填補を目的とする制度には、①損害の補償(損害自体の填補)を主目的とする制度と、②損害の賠償を主目的とする制度の2種類があることに着目し、この2つを区別して考えるのです。損害の補償を目的とする制度被害者側の過失の有無を基本的に問題とせず、被害者に損害が発生したことを要件として損害を補償する制度です。損害の補償を目的とした制度なので、給付により損害自体が填補されたと解され、「過失相殺する前の損害」が控除の対象となります。過失相殺前控除(控除が先行)です。社会保障制度や損害保険が該当します。損害の賠償を目的とする制度賠償者の責任を前提とし、被害者側に過失があれば過失相殺した上で賠償する制度です。損害の賠償を目的とした制度なので、本来賠償されるべき「過失相殺後の損害」が控除の対象となります。過失相殺後控除(過失相殺が先行)です。責任保険やそれに関連する制度が該当します。損害の填補の2つに分類する考え方については、大阪地方裁判所判事補・水野有子「損害賠償における第三者からの給付を原因とする控除-特に損益相殺と代位との関係-」判例タイムズ№865(1995・3・1)14ページを参考にしました。以下、主な金銭給付について、個別に見ていきましょう。トラブルになりやすく、注意が必要なのは、社会保険給付の取扱いです。加害者側からの弁済は、過失相殺後に控除加害者からの弁済や、自賠責保険からの損害賠償額の支払い(自賠法16条にもとづく被害者請求)は、損害の填補(損害の賠償)です。したがって、まず過失相殺をして、加害者が賠償すべき損害額を確定した後で、受領した額を控除します。労災保険からの給付は、過失相殺後に控除労災保険給付は、最高裁判決(平成元年4月11日)により、過失相殺後控除の取扱いが確定しています。つまり、労災保険給付は、まず過失相殺をして加害者が賠償すべき損害額を確定し、過失相殺後の額から労災保険給付額を控除します。最高裁判決(平成元年4月11日)労働者がいわゆる第三者行為災害により被害を受け、第三者がその損害につき賠償責任を負う場合において、賠償額の算定に当たり労働者の過失を斟酌すべきときは、右損害の額から過失割合による減額をし、その残額から労働者災害補償保険法に基づく保険給付の価額を控除するのが相当である。過失相殺後に控除する理由について、最高裁判決では次のように述べています。労災保険法12条の4は、第1項で、政府が先に保険給付したときは、損害賠償請求権が給付の価額の限度で国に移転し、第2項で、第三者が先に損害賠償したときは、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができると定め、被害者に対する「第三者の損害賠償義務」と「政府の保険給付義務」とが相互補完の関係にあり、同一の事由による損害の二重填補を認めない趣旨を明らかにしている。政府が保険給付をしたとき、被害者の損害賠償請求権は、給付の価額の限度において国に移転し減縮する。損害賠償額を定めるにあたり被害者の過失を斟酌すべき場合には、被害者は過失相殺した額の損害賠償請求権を有するに過ぎない。労災保険法12条の4第1項により国に移転する損害賠償請求権も、過失相殺後の額を意味すると解するのが文理上自然である。そもそも被害者が損害賠償請求できるのは過失相殺後の残額の部分ですから、政府が代位する損害賠償請求権も、過失相殺後の残額部分しかありえないという論理です。したがって、被害者には、過失相殺後の損害賠償請求権額から、代位額(給付額)を控除した損害賠償請求権額のみが残るというわけです。労災保険法12条の41.政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。2.前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。同様の趣旨から、国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法にもとづく給付についても、過失相殺が先行するとされています。最高裁判決には、過失相殺前控除の立場からの反対意見も付されています。その根拠として、労災保険給付が使用者の故意・過失を要件とせず、事故が労働者の過失によるときであっても保険給付が行われ、労働者の損害を補償する社会保障的性格をも有していることを挙げています。健康保険・国民健康保険からの給付は、控除後に過失相殺健康保険や国民健康保険からの給付と過失相殺がある場合、健康保険給付額を控除した後で過失相殺をするのが実務上の取扱いです。過失相殺前に控除するということは、健康保険から支払われた診療費(保険給付額)は、被害者の損害として考慮しないというのと同じです。保険者(健康保険組合や市町村など)による求償実務においても、過失相殺後の金額を求償する取扱いです。これは、「過失相殺前控除という実務上の取扱いを行政側が是認したもの」と解されています。厚生省(当時)と社会保険庁の通知で、「代位取得した損害賠償請求額を被害者の過失割合に応じて減額し算定して差し支えない」としています。昭和49年1月28日 厚生省保険発10号・社会保険庁保険発1号昭和54年4月2日 厚生省保険発24号・社会保険庁保険発6号※厚生労働省のWebサイトにリンクしています。ちなみに、労災保険は、加害者へ求償する際、被害者の過失相殺を考慮しません。「代位取得するのは、過失相殺後の請求額しかあり得ない」という論理からです。具体的に考えると…具体的に考えてみましょう。計算を簡単にするため、被害者の損害を治療費のみとし、逸失利益や慰謝料は考慮しません。【事例】健康保険を使って治療費は総額100万円。本人負担は3割の30万円で、あとの70万円は健康保険からの給付です。被害者の過失割合が50%だったとします。健康保険給付は「過失相殺前控除」が実務上の取扱いです。まず、健康保険給付の70万円を損害から控除します。残り30万円について50%の過失相殺をすると、加害者に賠償請求する損害額は、15万円となります。「保険給付額を控除した後で過失相殺する」ということは、最初から保険給付額を損害として考慮しないのと同じことです。ちなみに「過失相殺後控除」で計算すると、100万円の損害に対して50%過失相殺し、残額50万円から保険給付額70万円を控除するので、マイナス20万円です。つまり、加害者に賠償請求できる損害はない、ということになります。被害者に発生した総損害額100万円は、次のように填補されます。保険者(健康保険組合)が、7割の70万円を給付します。保険者は、給付額を限度に加害者に対する求償権を代位取得しますが、被害者(被保険者)に50%の過失相殺があるため、保険者が加害者に求償できる額は35万円です。求償できない35万円は、保険者の負担となります。加害者の支払う額は、被害者への15万円と保険者への35万円を合わせて50万円です。これは、そもそも加害者が被害者に対して賠償責任を負う過失相殺後の損害額の50万円と一致します。被害者は、実質的な損害30万円については、50%過失相殺をした15万円が加害者からの賠償により填補され、健康保険給付により70万円が填補されます。すなわち、100万円の損害のうち、85万円が填補されることになります。これを最終的な負担で見ると、加害者が50万円(被害者に15万円、保険者に35万円)を損害賠償によって填補し、保険者が35万円を填補したことになります。なぜ、健康保険と労災保険とで順序が違うのか?労災保険給付について「過失相殺後控除」とした最高裁判決では、その根拠に労災保険法の代位規定(労災保険法12条の4)を挙げています。健康保険法や国民健康保険法にも同様の代位規定(健康保険法57条、国民健康保険法64条)があり、最高裁判決の論理に従えば、健康保険や国民健康保険からの給付も、労災保険給付と同じように、過失相殺後控除の取扱いとなります。ところが、この最高裁判決後も、健康保険や国民健康保険からの療養給付については、従前と変わらず過失相殺前控除(控除が先)で運用されています。療養給付だけでなく、高額療養費や傷病手当金なども、たいてい、過失相殺前控除で実務上は処理されています。その理由は、健康保険や国民健康保険など公的医療保険は、社会保障的な性格が強く、制度自体が補償を目的とし、被害者みずから保険料を負担しているから、とされています。健康保険給付は過失相殺前控除が相当とする理由について、名古屋地裁判決では、次のように説明しています。名古屋地裁判決(平成15年3月24日)健康保険法による健康保険給付は、被害者の過失を重視することなく、社会保障の一環として支払われるべきものであることに鑑みれば、過失相殺の負担は保険者等に帰せしめるのが妥当であるから、健康保険法による傷病手当金及び高額療養費の各給付は、過失相殺前にこれを損害から控除すべきである。国民健康保険からの葬祭費と政府保障事業の填補金との調整国民健康保険からの給付額について、過失相殺後控除が相当とした最高裁判例があります。国民健康保険法(第58条1項)にもとづく葬祭費の給付額について、政府保障事業による填補金の算定にあたり、「葬祭費の支給額を控除すべきときは、損害の額から過失割合による減額をし、その残額からこれを控除する」としました。(⇒最高裁判決・平成17年6月2日)ただし、この最高裁判例は、政府保障事業による損害の填補と他法令にもとづく給付との調整に限ったもので、その判断の射程は、損害賠償請求一般には及ばないと考えられています。そもそも政府保障事業は、自賠責保険からの損害賠償すら受けられない被害者に対し、他法令にもとづく給付を受けてもなお損害を回復できないときに、国が損害を填補する制度で、「給付の最終性・最小性」を特徴としています。自賠法(自動車損害賠償保障法)では、被害者が、他法令にもとづいて損害の填補に相当する給付を受けるべき場合には、その給付に相当する金額の限度において、損害の填補をしない(第73条1項)と規定しており、判決では、この条項を根拠に挙げて、過失相殺後控除が相当としているのです。【参考】・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 107ページ・『実務精選100 交通事故判例解説』第一法規 144~145ページ国民年金・厚生年金・共済年金は、統一されていない過失相殺後に控除するという見解と、過失相殺前に控除するという見解に分かれていて、裁判例も統一されていません。遺族年金との損益相殺的調整について判示した最高裁判決(平成5年3月24日)が、特段の理由を付さず、遺族年金について過失相殺後控除とした原審の判断を維持したこともあり、障害年金・遺族年金について過失相殺後に控除する裁判例が多く見られます。他方で、公的年金は、障害を負ったとか死亡したという事実があれば、受給資格がある限り、その原因を問わず給付を受けられます。自らの過失が原因であったとしても、減額されることなく支払われ、損害が補償されます。しかも、被保険者が保険料を拠出したことにもとづく給付としての性格を有していることから、その性質は健康保険に近いものと考えられ、過失相殺前に控除するのが相当とする裁判例も少なくありません。「赤い本」(日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準』)では、過失相殺前控除としています。被害者側としては、受領できる金額が大きくなる過失相殺前控除を主張すべきです。人身傷害補償保険金は、まず被害者の過失割合部分に充当被害者が人身傷害補償保険金を受領した後で、過失相殺のある損害賠償請求をする場合、人身傷害補償保険金を控除する計算方法は、最高裁判例(平成24年2月20日)により確定しています。控除の方法は、他の金銭給付の損益相殺や損益相殺的調整と異なりますから、注意が必要です。人身傷害補償保険金は、損害額のうち、①まず被害者の過失割合に相当する部分に充当し、②残額を加害者の過失割合に相当する部分に充当します。つまり、過失相殺後の額から②の額を控除した額が、加害者に対して賠償請求できる損害額です。このとき、人身傷害補償保険金を支払った保険会社は、②の額を被害者に代わって加害者に求償できる額として代位します(⇒裁判基準差額説)。人身傷害補償保険は、被害者の過失割合に関係なく損害を全額補償する保険ですが、損害算定基準(人傷基準)が裁判所基準より低いため、受領できる保険金は、民事上認められる損害額よりも低くなります。具体例で考えてみましょう。損害額が1,000万円。被害者の過失割合が30%、800万円の人身傷害補償保険金を受領したとします。損害額1,000万円のうち、被害者の過失割合に相当する部分が300万円、過失相殺後の損害額が700万円です。人身傷害補償保険金800万円のうち、300万円を被害者の過失部分に充当し、残り500万円を過失相殺後の損害額700万円に充当すると、加害者に賠償請求できる損害額は200万円です。このとき、保険会社は500万円の求償権を代位取得するため、過失相殺後の損害額700万円から、保険会社が代位する500万円を控除して、加害者に200万円の損害賠償請求ができるということです。過失相殺があるとき、人傷保険金と損害賠償金のどちらを先に請求すると有利か?まとめ損害賠償額を決定するにあたって、損益相殺と過失相殺がされる場合、どちらを先に行うかによって、受け取れる賠償金額が違ってきます。加害者からの弁済や自賠責保険からの損害賠償額の支払いについては、過失相殺後の金額から弁済額を控除することで問題ありません。しかし、社会保険給付に関しては、過失相殺後控除か過失相殺前控除か、見解が分かれる場合があります。被害者にとっては、過失相殺前に控除する方が賠償額が多くなるので有利です。労災保険給付については過失相殺後控除とする最高裁判例がありますが、その他の健康保険給付や公的年金給付などについては、過失相殺後控除か過失相殺前控除か、最高裁は判断を示していません。ここで紹介したのは、あくまでも基本的な考え方と一般的な傾向です。具体的な事案には、個別の判断と対応が必要ですから、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・裁判実務シリーズ9『交通関係訴訟の実務』商事法務 356~357ページ・リーガル・プログレッシブ・シリーズ5『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 105~108ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 262~266ページ・弁護士研修講座『民事交通事故訴訟の実務』ぎょうせい 234~236ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 287~288ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 203~204ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 82~83ページ・『実務精選100 交通事故判例解説』第一法規 142~145ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 233~238ページ・別冊Jurist№233『交通事故判例百選 第5版』有意閣 166~167ページ・別冊ジュリスト№152『交通事故判例百選 第4版』有意閣 158~159ページ・大阪地方裁判所判事補・水野有子「損害賠償における第三者からの給付を原因とする控除」判例タイムズ№865・東京地方裁判所判事・高取真理子「公的年金による損益相殺」判例タイムズ№1183・「交通事故における社会保障制度をめぐる諸問題」神奈川県弁護士会・専門実務研究12号・新版『逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 221~231ページ・『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第2版』弘文堂 230~234ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 77~80ページ
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