交通事故トラブル解決ガイド|損害賠償請求・示談交渉の悩みを解決!

検索結果

「 休業損害 」の検索結果
  • 休業損害
    傷害事故の消極損害(休業損害)の裁判所基準での計算方法
    休業損害とは、交通事故により受けた怪我が治癒または症状が固定するまでの間に、休業や不十分な就業を余儀なくされたことから生じる収入の喪失のことです。症状固定以降は、後遺障害逸失利益となります。休業損害は、事故当時の収入と休業日数から計算しますが、給与所得者、事業所得者、主婦・家事従事者など、職業により計算方法が異なります。休業損害の具体的な計算方法基礎収入は、給与所得者、事業所得者、家事従事者など、職業により計算方法が異なります。収入の証明は、被害者自身がしなければなりません。給与所得者給与所得者の休業損害は、次のように計算します。[基礎日額]×[休業日数]基礎日額は、事故前3ヵ月の支給金額を平均して、1日あたりの平均賃金を出します。支給金額は、手取り額でなく額面給与です。[基礎日額]=[事故前3ヵ月の収入]÷ 90日事故前3ヵ月の支給金額には、本給だけでなく付加給も含みます。収入は、休業損害証明書と源泉徴収票により証明します。休業損害証明書とは、被害者の勤務先が、被害者の事故直近の給与額、事故後の被害者の休業日等を記載する書類です。休業損害証明書のほかに、なぜ源泉徴収票が必要なのかというと、自賠責の実務において、被害者が本当に就労しているかの確認のために使うからです。休業損害証明書だけでは、信用できないということですね。有給休暇を利用した場合も休業損害を請求できる有給休暇を使った場合も、その期間を休業期間とできます。有給休暇を使うと収入の減少はありませんが、判例では休業損害を認めています。保険会社も同様の扱いをしています。有給休暇は労働者の権利として財産的価値を有するので、他人の不法行為の結果、有給休暇を使わざるを得なくなった場合は、それを財産的損害として賠償請求できるという考え方です。休業による降格や休業期間中に昇給昇格があった場合事故による欠勤がなければ昇給するはずだった場合や、事故による欠勤のため降格・配置転換になった場合は、本来得られるはずだった賃金と実際の支給額との差額が、休業損害として認められます。日雇労働者や非常雇用日給者の休業損害日雇労働者や非常雇用日給者の場合、収入や雇用期間が一定しないため、原則として、事故前3ヵ月間の収入総額を90日で除して収入日額を算出し、事故時の契約期間、季節的要因を考慮して算定します。会社役員の休業損害会社役員の報酬については、労務対価部分のみが休業損害として認められ、利益配当部分は認められません。入院・通院しても収入減がなければ請求できない治療のために入院・通院しても、実際に収入の減少がなかった場合は、休業損害を請求できません。仮に、会社員が入院や通院で会社を休んでも、その間の給料が全額支給されていれば、休業損害は請求できません。会社から給料の支給がなくても、労災から給料の6割の給付を受けていれば、差額の4割分を休業損害として請求することになります。事業所得者被害者が、個人事業主、自営業者(商業・工業・農業・サービス業等)、自由業者(弁護士・司法書士・税理士・開業医・著述家・プロスポーツ選手等)など、事業所得者の場合です。休業損害の算定方法は2つあります。①事故前後の所得の比較により休業損害を算出する方法、②事故前の所得をもとに休業損害を算出する方法、です。事故前後の所得の比較により休業損害を算出する方法事故前年の所得と事故当年の所得との差額を直接把握し、それを休業損害ととらえる方法です。単純な方法ですが、休業期間と確定申告の対象期間がずれたり、減少額と事故との因果関係が不明確など、いろいろ難点があります。事故前の所得をもとに休業損害を算出する方法収入の減少額を直接把握するのでなく、事故前年の収入を基礎として、間接的に収入の減少額を把握する方法です。[前年度の実収入÷365日]× 休業日数前年度の実収入は、(事故前年の所得金額+固定経費)× 寄与率休業日数は、入通院実日数や入通院期間の日数とすることが多いようです。休業期間中の固定経費(従業員の給与、家賃、利子、減価償却費など)も休業損害として認められます。寄与率は、事故前後の営業状況、事業者本人の職務内容、業種、家族の関与の程度などにより判断されます。事業者が怪我により就労できなくなった場合に、事業を休止せざるを得ないような零細事業であれば、事業者本人の寄与率は100%に近くなります。業績に相当な変動がある場合は、事故前数年分(3年分)の実績を平均して計算することもできます。確定申告していなかった場合でも、賃金センサスの平均賃金を基準に休業損害を算定することもできます。確定申告は、書面で申告する方法と、インターネットで申請する方法(電子申告)の2通りの方法があります。書面申告の場合は、税務署の収受印が押された確定申告書等控えを証拠として使用し、電子申告の場合は、税務署の受付日時、受付番号が印字された確定申告書等のデータをプリントアウトしたものを証拠として使用します。確定申告額を上回る収入があるときの休業損害の算定方法家事従事者主婦などの家事従事者には収入はありませんが、家事労働も財産的評価が可能なので、家事に従事することができなかった期間について、休業損害を請求できます。専業主婦の場合の基礎収入は、賃金センサスの女性労働者の平均賃金(全年齢平均賃金)により計算します。パートなどに出ている兼業主婦の場合は、「実際の収入額」と「賃金センサスの女性労働者平均賃金」のいずれか高い方を基礎収入として計算します。男性が専業主夫として家事に従事している場合も、賃金センサスの女性労働者全年齢平均賃金を基礎収入として算定します。家事従事者の休業損害の計算例はこちら無職者事故に遭った時点で仕事をしていない失業者や学生でも、休業損害が認められることがあります。失業者が休業損害を認められる場合失業者は、原則、休業損害は認められませんが、就職が内定している場合や治療期間中に就職の可能性があれば、休業損害が認められます。この場合の基礎収入は、就職が内定している場合は、就職したときに得られる見込みであった給与額を使用します。それ以外の場合は、失業前の収入や賃金センサスにより算出します。学生が休業損害を認められる場合学生は、アルバイトをしていた場合は、失った収入が休業損害となります。治療が長期に及び、卒業後就職が内定していたにもかかわらず、卒業や就職が遅れた場合は、就職すれば得られたはずの給与額と賃金センサスの高い方を基礎収入として計算します。労務の対価としての収入を得ていない無職者は休業損害を認められない労働の対価としての収入を得ていない無職者(地主・家主、年金生活者、生活保護受給者など)は、休業損害を請求できません。アパート経営(アパート賃貸)が本業で、休んでも収入に影響しない場合などは、休業による損害を受けないので、休業損害は認められません。休業期間の決め方休業期間は、医師の診断書により決められます。入院期間中は全体が休業期間となりますが、通院期間中は全体が認められる場合と一部しか認められない場合があります。具体的な症状により判断することになります。通院期間中であっても、医師の診断書により「休業を要する」という場合は、通院期間中の全体が休業期間とされます。後遺症が残るような場合は、後遺障害等級が認定されるまでは、休業期間とできます。むち打ち症の休業期間の決め方よく問題になるのが、むち打ち症(頸椎捻挫)で長期間にわたって治療を続けなければならない場合です。この場合、例えば、最初の4ヵ月は全休、あとの4ヵ月は半休にするとか、最初の4ヵ月は全休、次の4ヵ月は7割休、あとの4ヵ月は3割休といったように、段階を付ける方法があります。自賠責保険の休業損害自賠責保険基準では、原則1日6,100円です。ただし、立証資料などにより損害額が6,100円を超えることが明らかな場合は、19,000円を上限に実費が支払われます。また、休業損害の対象となる日数は、実休業日数を基準とし、傷害の態様、被害者の職種などを勘案して治療期間の範囲内とされます。例えば、全治2週間の診断でも、この間に5日しか通院していなかった場合には、5日分の休業損害しか認められません。通院した5日以外の日でも、医師の勧めにより自宅で静養していたことが明らかな場合は、自宅静養のため休業した分は認められます。被害者自身の判断で休んだ場合は認められません。自賠責保険の支払基準・支払限度額についてはこちらまとめ休業損害の計算で大事なのは、収入の証明です。これは、被害者自身が証明できる書類を用意しなければいけません。保険会社が提示する休業損害の額に納得できないときは、弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
    Read More
  • 家事従事者の休業損害
    専業主婦・主夫(家事従事者)の休業損害の計算方法
    家事従事者が、交通事故による怪我のために家事労働ができなくなった期間・日数については、休業損害が認められます。家事従事者とは、性別・年齢を問わず「現に家族のために家事労働に従事する者」をいいます。専業主婦・専業主夫のほか、兼業主婦・兼業主夫も該当します。家事従事者であることを立証する資料として、住民票や家族構成表の提出を求められる場合があります。女性の家事従事者(主婦)の休業損害の計算方法専業主婦の休業損害は、賃金センサスの「女性・学歴計・全年齢平均賃金」を基礎収入として計算します。兼業主婦の場合は、「実際の給与額」と「女性労働者全年齢平均賃金」のいずれか高い方を基礎収入とします。「実際の給与額」が「平均賃金」よりも高ければ「実際の給与額」、逆に「実際の給与額」が「平均賃金」よりも低ければ「平均賃金」を用います。外で働き、家事労働もしているからと、給与分と家事労働分の両方を請求できるわけではありません。基礎収入・基礎日額の計算例さて、具体的な計算例です。女性・学歴系・全年齢平均賃金は、平成30年の賃金センサスによると、「決まって支給する現金給与額」が、26万5,600円「年間賞与その他特別給与額」が、63万9,100円基礎収入は、26万5,600円×12+63万9,100円=382万6,300円基礎日額は382万6,300円÷365日=1万483円通院期間が、180日だったとします。家事労働に対する支障の程度を平均で考える方法と、逓減方式で考える方法の、2つの計算方法があります。家事労働への影響を平均で計算1つは、家事労働に対する支障が、例えば平均で40%だったとして、計算する方法です。休業損害は、こうなります。382万6,300円÷365日×180日×40%=75万4,777円家事労働への影響を逓減方式で計算もう1つは、回復状況などに応じて、家事労働への支障の程度を逓減方式で計算する方法です。例えば、受傷した最初の1ヵ月間は100%、次の2~3ヵ月間は50%、その後3ヵ月間は30%とすると、1ヵ月目1万483円×30日×100%=31万4,490円2~3ヵ月目1万483円×60日×50%=31万4,490円4~6ヵ月目1万483円×90日×30%=28万3,041円合計31万4,490円+31万4,490円+28万3,041円=91万2,021円男性の家事従事者(主夫)の休業損害の計算方法主夫(男性の家事従事者)の休業損害の計算方法も、女性の家事従事者の場合と全く同じです。専業主夫の休業損害は、賃金センサスの「女性・学歴計・全年齢平均賃金」をもとに算出します。女性の平均賃金を用いることに注意してください。男性の平均賃金ではありません。兼業主夫の場合は、実際の給与額と女性労働者全年齢平均賃金のいずれか高い方をもとに算出します。男性家事従事者(主夫)の基礎収入に、女性の平均賃金を用いる理由まとめ家事従事者が交通事故の被害に遭い、家事労働に支障があった場合は、休業損害を請求できます。家事従事者の基礎収入額は、男女の別を問わず、女性の平均賃金をベースに算定します。交通事故の被害に遭い、お困りの時は、弁護士に相談すると解決できます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害の計算の仕方専業主婦・主夫の基礎収入の算定方法
    Read More
  • 過少申告の休業損害
    過少申告・無申告・赤字申告でも実収入で休業損害認められる?
    被害者が確定申告で、過少申告や赤字申告をしていたり、無申告だった場合でも、実際の収入額を立証できれば、実所得にもとづいて休業損害が認められます。事故前に「どれくらい収入があったか」を立証できれば良い事業所得者の休業損害の算定にあたっては、確定申告書など税務関係書類で収入額を立証するのが原則です。それは、税務関係書類が有力な証拠となるからであって、必ず確定申告書類により証明しなければならない、ということではありません。要は、休業損害の算定根拠とした基礎収入額を証明できればよいのです。税務関係書類を使わずに立証できるのであれば、それでも構わないのです。ただし、他の方法で収入を立証するのは、容易ではありません。過少申告・無申告の場合申告外所得がある場合でも、客観的・信用性の高い証拠により実際の収入額を立証できれば、その収入額が認められる可能性があります。とはいえ、申告所得以上の収入があるという主張は、自己矛盾の主張ですから、その認定は厳しいのが現実です。損害賠償における申告外所得の考え方申告外所得の主張については、「自ら過少申告して税金の支払いを一部免れているのだから、公序良俗や信義則の観点から一切認められない」とする見解や、「税務署に修正申告しない限り認めない」とする見解もあります。しかし、過少申告は、税務署との関係で問題となるものです。一方、損害賠償は、加害者との問題です。「損害の衡平な分担と適正な損害填補」が損害賠償の目的ですから、「申告外所得は一切認めない」「修正申告をしない限り認めない」というのは、バランスを欠きます。損害賠償請求において、確定申告額は有力な証拠にはなりますが、収入を立証する1つの方法にすぎません。実際の収入が確定申告額を上回る場合、それを立証できれば、訴訟では、その額が認定されます。どうやって申告外所得を立証するか?では、どうやって実際の収入額を立証すればよいのでしょうか?税務署に提出した確定申告額より実際の収入が多かったことを立証しなければなりませんから、ハードルは相当高いものとなります。具体的には、所得を裏付ける預貯金通帳、会計帳簿、伝票類、事業収入を裏付ける取引関係書類、レジの控え、収支を記載したメモやノートなどにより、実所得額を立証する必要があります。実所得額が立証できない場合でも、生活実態などからみて相当の収入があると認められるのであれば、平均賃金を参考に、基礎収入を認定することもあります。認定事例個人タクシー運転手につき、妻が作成した売上金記録が、組合の作成したチケット換金明細書等と照合して正確であるとして、確定申告書の売上金を上回る金額を算定基礎とすることを認めた例。(横浜地裁・平成20年9月4日)赤字申告の場合赤字となっている所得額に、青色申告特別控除額、専従者給与、固定経費を加算しても、なお赤字となる場合は、休業損害は認められにくい傾向があります。事業所得者の休業損害の計算方法は2つあります。2つの方法についてはこちらをご覧ください。事故前の所得をもとに休業損害を算出する方法では、事故前が赤字であるため、休業損害を算出できません。事故前後の所得を比較して休業損害を算出する方法であれば、赤字の増加分をもって休業損害と捉えることもできます、ただ、赤字事業の場合、休業することで、その赤字が減少することがあり、そうすると休業損害を算出できません。その他、平均賃金をもって基礎収入とするなどの方法もありますが、いずれも認定は厳格に行われます。認定事例喫茶店経営者が、売上から諸種の経費を控除すると損失となる旨の税務申告を事故前にしていたが、妻や長男に専従者給与として相当額を支払っていたことなどから、賃金センサス男子平均賃金の少なくとも3分の2の収入はあったとした例。(名古屋地裁・平成4年7月29日)まとめ申告外所得や無申告所得がある場合、その実際の収入にもとづき休業損害を請求するには、税務関係書類以外の証拠で、収入を立証する必要があります。それができない場合は、実際の収入分の損害賠償を受けることは難しいでしょう。なお、たとえ実際の収入を証明できたとしても、訴訟になれば収入の過少申告が明るみに出るので、修正申告を求められます。お困りのことがありましたら、弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害の計算方法事業所得者の基礎収入の算定方法【参考】・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 102~103ページ・『交通事故事件の落とし穴』新日本法規 80~83ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 96~97ページ
    Read More
  • 源泉徴収
    会社員・公務員の逸失利益・休業損害の基礎収入の算定方法
    会社員や公務員など、給与所得者の休業損害・逸失利益を計算するときの基礎収入額には、原則として「事故前の実際の収入額」を用います。ただし、逸失利益については、将来の長期間にわたる収入の問題ですから、事故時の収入額によるのが相当でない場合は、平均賃金を用いることもあります。ここでは、給与所得者の基礎収入の算定方法について説明しています。基礎収入を用いた休業損害や逸失利益の計算方法については、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法基本的な取り扱い休業損害は、怪我の治療や療養のため休業したことにより「現実に喪失した収入額」です。事故前の現実の給与額を基礎収入として計算します。逸失利益も、基本的には休業損害と同様、実収入額によるのが原則ですが、逸失利益は、将来の長期間にわたる収入の問題です。そのため、被害者が若年労働者の場合のように、事故当時の実収入額によるのが相当でない場合は、平均賃金を用いる場合もあります。収入は、手取額でなく、支払金額(税金等控除前の金額)です。収入の証明には、源泉徴収票か納税証明書・課税証明書が必要です。給与以外に家賃等の不動産収入や利子、配当などの「不労所得」があっても、労働の対価といえないので基礎収入には含まれません。若年労働者の収入算定若年労働者は、現実の収入が低い場合が多いので、それを基礎として逸失利益を算定すると、過少に計算されてしまいます。また、仕事を長く続けていけば、収入が上がっていくと考えられます。事故前の実収入を用いると、将来の給与の上昇を逸失利益に反映することができません。そのため、若年被害者(おおむね30歳未満)については、現実の収入額が賃金センサスの平均賃金額を下回るとしても、将来、平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合は、全年齢平均賃金または学歴別平均賃金を基礎収入とします。この点については、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の交通部が、共同で提言を公表しています。東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の「三庁共同提言」非正規労働者の収入算定契約社員・嘱託社員・派遣社員・パート・アルバイトなどの非正規労働者は、一般に正社員より給与が低く、雇用が不安定ですから、事故当時の収入を基準として逸失利益を算定することは困難です。しかし、事故当時に非正規であったとしても、これから先もずっと非正規のままとは限りません。経済状況が好転したり、一定の条件を満たすときは、正社員になる場合もあります。そういったことから、判例では、賃金センサスの平均賃金またはその一定割合を基礎収入として、逸失利益を算定する事例があります。収入に含まれるもの収入には、本給のほか、諸手当、賞与など労働の対価として受け取るものが該当します。これら以外にも、昇給や退職金も含めることができます。諸手当諸手当については、扶養家族手当などは基礎収入に含めることができますが、通勤手当(交通費やガソリン代の支給)のような実費手当は、所得の対象とならないので、損害には含まれません。また、残業手当については、企業の業績や担当する業務内容に左右され、将来も継続するとは限りません。そのため、事故前の残業手当が多かったとしても、そのまま認められるとは限りません。ボーナス(賞与・期末手当)ボーナスは、給与規定などによって支給基準が決められ、安定・継続して支給されている場合は、それが損害として認められます。しかし、ボーナスの支給基準を定めた給与規定がなく、業績によって年ごとに開きがある場合は、事故前にボーナスの支給を受けていたとしても、そのまま認められるとは限りません。大企業の社員や公務員は、支給基準にもとづいて算出した賞与額が認められやすいのですが、中小企業の場合は、立証が難しいところです。昇給定期昇給については、勤務先に昇給規定などがあり、それに従って昇給する可能性がある場合は、昇給を考慮して基礎収入を算定できます。昇給規定がなくても、将来の昇給が「証拠にもとづいて相当の確かさをもって推定できる場合」は、昇給を考慮して基礎収入を算出することができると最高裁が判断を示しています。最高裁判決(昭和43年8月27日)死亡当時安定した収入を得ていた被害者において、生存していたならば将来昇給等による収入の増加を得たであろうことが、証拠に基づいて相当の確かさをもつて推定できる場合には、右昇給等の回数、金額等を予測し得る範囲で控え目に見積つて、これを基礎として将来の得べかりし収入額を算出することも許されるものと解すべきである。ベースアップ物価上昇にともなうベースアップ分については、一般的に認められません。和解成立時または口頭弁論終結時までに行われたベースアップ分については考慮されますが、将来のベースアップ分については、不確定で予測しがたいことなどから、認められない傾向にあります。退職金退職金については、勤務先に退職金規定があり、交通事故に遭わなければ退職金をもらえたと考えられる場合は、退職金を損害に算入できます。死亡時あるいは事故の後遺症が理由で退職したときに勤務先から支給された退職金と、定年まで勤務すれば得られたであろう退職金(中間利息控除後の額)との差額が逸失利益となります。退職金差額が損害として認められるための要件としては、次の3つが指摘されています(『交通事故損害賠償法・第2版』弘文堂145ページ)。交通事故による受傷(死亡または後遺障害)と退職との間に因果関係があること被害者が定年退職時まで勤務を継続する蓋然性があること定年退職時に退職金が支給される蓋然性があること例えば、60歳まで勤務すれば1,000万円の退職金がもらえたのに、55歳で交通事故に遭って死亡し、600万円の死亡退職金の支給を受けたとします。中間利息を控除した現価は、ライプニッツ係数を乗じて計算します。5年(60歳-55歳)のライプニッツ係数は0.8626(ライプニッツ式係数表・現価表より)ですから、1,000万円×0.8626-600万円=262万6,000円となります。この差額を逸失利益として損害賠償請求できます。ここから生活費を控除するかどうかについては、判例が分かれています。定年退職後の収入就労可能年数は67歳まで認められますが、給与所得者の場合、60歳前後で定年退職するのが一般的です。ただし、最近は、定年後に再就職し、何らかの収益を上げて生活するのが普通になっています。定年退職後の収入については、賃金センサスの年齢別平均賃金を基礎とする場合と、退職時の収入の一定割合を基礎とする場合があります。まとめ給与所得者の休業損害・逸失利益を算定するときの基礎収入には、事故前の実際の収入額を用いるのが基本です。若年労働者のように、事故前の実収入を基礎とするのが相当でない場合は、平均賃金を用います。ボーナス、昇給分、退職金を含めることはできますが、難しい問題もあります。交通事故問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法
    Read More
  • 給与明細
    休業損害の基礎日額は手取り額でなく額面給与を基礎に算出する理由
    休業損害の基礎日額の算定は、手取り額でなく、社会保険料・住民税・所得税などを控除する前の支給金額(額面給与)を基礎とします。しかし、そうすると、「被害者は、事故に遭わなかったときよりも多くのお金を受け取ることになるのでは?」と、疑問がわきますよね。具体的に考えてみましょう。額面給与をもとに休業損害を計算すると、賠償額が多すぎ?給与所得者は、通常、社会保険料等を控除した金額を、勤務先から受け取ります。これが手取り額です。しかし、休業損害の算定には、社会保険料等を控除する前の額面給与を基礎として、日額を算出します。そうすると、休業損害が、手取り額よりも多くなります。なぜ、手取り額でなく、額面給与を基礎に、休業損害を算定するのでしょうか?社会保険料、住民税、所得税に分けて、見ていきましょう。社会保険料社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)は、事業主と従業員が折半して負担し、事業主が保険者にまとめて納付します。社会保険料の金額は、あらかじめ決まっています。従業員は、欠勤し、給与を受け取っていなかったとしても、社会保険料の負担を免れることはできません。もしも被害者が、手取り額を基礎に算定した休業損害しか受けられないとしたら、社会保険料分を控除した額から、社会保険料を支払わなければならず、損害が填補されていないことになります。なので、社会保険料を控除する前の給与額を基礎とするのです。住民税住民税は、前年の所得を基礎に算出されます。欠勤によって給与が減っても、支払わなければいけない住民税額は、変わりません。なので、住民税も、社会保険料と同様に、控除前の給与額を基礎とします。所得税所得税は、社会保険料や住民税と事情が異なります。給与所得者の所得税は、毎月の給与額に応じて源泉徴収されます。所得税は、被害者である従業員が、休業して給与を受け取っていなければ、その分の所得税を支払う必要はありません。その一方で、被害者が休業損害を受け取っても、それに対して所得税が課税されるわけでもありません。所得税法9条1項17号は、「保険業法…に規定する損害保険会社又は…外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの」を帆課税所得としています。そのため、所得税分については、被害者が多く受け取る(不当に利得する)ことになるので、税金は控除すべきとする考え方がありました。最高裁判例は、「損害額を算定するにあたって、…所得税その他の租税額を控除すべきではない」としました(最高裁判所第二小法廷・昭和45年7月24日)。実務では、所得税控除前の給与額を基礎とすることになっています。控除しないとする理由の1つに、「賠償金を課税対象とするかどうかは国の立法政策により決められることであって、国が課税しないとしたことにより被害者がその分の利益を享受することになったとしても、それは加害者にとっては無関係なことである」とする考え方があります。(参考:『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 82ページ)まとめ休業損害の基礎日額の算定には、社会保険料、住民税、所得税などを控除する前の支給金額(額面給与)を用います。交通事故の被害に遭い、損害賠償をめぐってお困りのことがあるときは、弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法
    Read More
  • 会社役員
    会社役員報酬の逸失利益・休業損害の基礎収入の算定方法
    会社役員の休業損害や逸失利益の算定にあたっては、名目的な役員報酬額をそのまま損害算定の基礎収入とせず、役員報酬のうち労務対価部分のみを基礎収入とします。役員報酬のうち労務対価部分がどれだけか、その範囲の立証がポイントです。逸失利益が認められるのは労務対価部分会社役員の役員報酬には、「労務対価部分」と「利益配当部分」があり、逸失利益が認められるのは、労務対価部分です。利益配当部分は、不労所得であり、その地位にある限り事故による収入減はないと考えられ、原則として逸失利益は認められません。もっとも、事故の後遺症が原因で役員を解雇されたり、死亡して利益配当部分が遺族に承継されない場合は、利益配当部分も逸失利益となります。役員報酬労務対価部分 ⇒ 逸失利益となる利益配当部分 ⇒ 原則、逸失利益とならない※広い意味での逸失利益には、休業損害も含まれます。こうした点について、東京地裁が、判決の中で次のように指摘しています。東京地裁判決(昭和61年5月27日)「会社役員の報酬中には、役員として実際に稼働する対価としての実質をもつ部分と、そうでない利益配当等の実質をもつ部分とがあるとみるべきところ、そのうち後者については、傷害の結果役員を解任される等の事情がなく、その地位に留まるかぎり、原則として逸失利益の問題は発生しないものと解される」したがって、会社役員の休業損害や逸失利益の請求では、役員報酬のうち労務対価部分がいくらか(どの程度占めているか)の立証が、ポイントとなるのです。それでは、役員報酬のうち労務対価部分をどのように判断するのでしょうか?役員報酬中の労務対価部分の割合はどう判断する?役員報酬のうち労務対価部分がどれくらいかは、次のような要素を総合的に考慮し、個別具体的に判断されます。役員報酬のうち労務対価部分の判断要素会社の規模・利益状況当該役員の地位・職務内容当該役員の報酬額他の役員や従業員の職務内容・報酬額・給料額事故後の役員報酬額の推移など。(参考:『赤い本2005年版』)大切なのは、いずれか1つの要素だけで判断するのでなく、すべてを考慮して、総合的に判断することです。それぞれの判断要素について、具体的に見ていきましょう。会社の規模・利益状況まず、会社の規模(同族会社か否か)、会社の利益状況から、どう判断するかです。会社の規模一部上場企業のような大企業のいわゆるサラリーマン重役の場合は、役員報酬の全額が労務対価部分と評価できる場合が多いとされています。中小の同族企業の親族役員の場合は、役員報酬に利益配当部分も含まれているのが一般的です。ただし、他の要素を考慮すれば、報酬全額を労務対価相当と評価できる場合もありますから、総合的に判断することが大切です。上場企業の取締役(男性・58歳)につき、63歳までの5年間、報酬全額を基礎収入として逸失利益を算定。(大阪地裁判決・平成10年6月24日)建物解体工事を行う会社の代表につき、個人会社で、その職務内容も肉体労働が多いこと等から、役員報酬全額を労務の対価と認定。(千葉地裁判決・平成6年2月22日)父親が経営する印刷会社の監査役(30歳)につき、会社の中心的な働き手として稼働していることから、事故前年の年収全額を基礎収入として認定。(東京地裁判決・平成13年2月16日)会社の利益状況会社の利益状況を判断要素とする場合、被害者である当該役員の稼働状況との関係で、事故前後の収益の推移が重要です。事故後、当該役員が稼働できなくなった期間に会社の収益が悪化した場合は、当該役員の稼働が会社の収益に貢献しているといえるので、報酬のうち相当部分を労務対価と認められます。収益に変化がない場合は、当該役員の稼働が会社の収益に貢献しているといえず、報酬が労務対価であるとは認められません。報酬の相当部分を利益配当とみなされます。ITコンサルタントとして労務の提供をしていた会社の代表につき、受傷後、会社の売上が相当減少しているとして、事故前の年収の80%を労務対価と認定。(横浜地裁判決・平成20年8月28日)当該役員の地位・職務内容当該役員が、従業員と同様の労働に従事しているような場合には、報酬のうち相当部分を労務対価として認められます。名目役員に過ぎない場合には、報酬を労務対価とは認められません。レーザー機器の開発会社の代表者につき、中心的研究者であったことや会社の規模(従業員41名)等を考慮し、事故前年の役員報酬全額を労務対価と認定。(東京地裁判決・平成23年3月24日)同族会社の監査役(女性・78歳)につき、名目役員の疑いを否定できないとして、監査役報酬を労務対価とは認めず、家事労働と年金収入により逸失利益を算定。(東京地裁判決・平成12年5月24日)当該役員の報酬額当該役員の報酬が、年齢や経験年数、会社の業績等に照らし、一般の基準より高額である場合は、報酬中に利益配当部分が含まれていると判断されます。例えば、代表取締役の子である取締役が、若年で経験が浅いにもかかわらず、高額の役員報酬を得ているような場合には、その役員報酬中には相当の利益配当部分が含まれ、労務対価部分の割合は低いと判断されます。ただし、一般の基準より報酬が高額であっても、当該役員の稼働状況や会社の収益への貢献度を考慮し、特段高額とはいえない場合は、報酬中の相当部分が労務対価部分と判断されます。年齢や経歴からみて役員報酬額が高額であるかどうかを見極める方法として、賃金センサスを参照する裁判例も多いようです。専務取締役である被害者(代表取締役の娘婿)につき、休業期間中は給料が支払われず、復職後は力仕事ができないことから給料が半減、賃金センサスと比較しても事故前の収入は高額とはいえないことから、全額を労務の対価と認定。(神戸地裁判決・平成12年2月17日)他の役員や従業員の職務内容・報酬額・給料額当該役員と他の役員・従業員との職務内容にほとんど差異がないにもかかわらず、当該役員の報酬額が、他の役員・従業員の報酬や給与より相当高額である場合は、その差額のうちの相当部分は労務対価性がないと判断されます。貴金属卸会社の代表取締役につき、同人の報酬が他の役員の報酬や従業員の給与と比べ突出していることから、賃金センサスも考慮して、報酬の60%の限度で労務対価性を認定。(東京地裁判決・平成12年8月31日)事故後の役員報酬額の推移事故後、当該役員が稼働できなかった期間に応じて、役員報酬が支払われなかったり減額された場合、支払われなかった全額ないし相当部分につき、労務対価性があると判断できます。事故後、当該役員が稼働できない期間中も、減額はあるものの相当額の報酬が支給されていたり、復帰後、業務量が減少したにもかかわらず事故前と同額の報酬が支給されている場合には、報酬のうち一定部分が利益配当部分と判断されます。月額30万円の報酬を受けていた代表取締役が、事故後3ヵ月間は報酬支払いを受けていなかった場合について、全額労務対価性を有すると認定。(名古屋地裁判決・平成15年1月17日)労務対価部分の判断の目安役員報酬のうち労務対価部分がどの程度かについては、上で挙げた5つの要素を総合的に判断しますが、ひとくちに役員といっても、個人企業の社長から、中小企業のオーナー社長や役員、大企業の雇われ役員まで様々で、報酬の実態も異なります。そこで、労務対価部分の判断にあたっての大まかな目安や考え方について、役員別にご紹介しておきましょう。個人企業の社長等の場合個人企業の社長の場合、実態は個人営業主と変わりません。社長等の役員報酬のうち労務対価部分を基礎収入として逸失利益を算定します。中小企業の経営者の場合中小企業の経営者の報酬には、労務対価部分のほか利益配当部分が含まれます。ですから、逸失利益算定の基礎となる収入は、労務対価部分に限られます。ただし、事故による休業の結果、役員を解任された場合や、事故で死亡し、親族間の争いなどによって相続人が経営権を引き継げなかった場合は、本人や相続人が利益配当部分を失うことになるので、役員報酬全額を基礎収入として、逸失利益を算定できます。労務対価部分がどの程度かについては、当該役員の職務内容、法人の収益、従業員給料の支給状況、類似法人の役員報酬の支給状況などを検討し、役員報酬の何割に当たるかを判断します。職務内容などから、報酬全額が労務対価部分と認められる場合は100%とできます。他の従業員と同じように働き、報酬額も従業員給与と大差のないような場合は、少なくとも他の従業員の給与相当部分については、労務対価性を有すると判断されるでしょう。中小企業の親族で現実に業務に従事している場合経営者の親族の役員報酬額は、従業員から役員になった者より高額であることが多く、報酬に利益配当部分が含まれていると考えられるので、基礎収入額の算定方法は、経営者の場合と同じとされます。名目的役員の場合中小企業で現実に業務に従事していない名目的役員の場合は、働かずに報酬を得ているので労務対価部分はゼロ。逸失利益算定の基礎収入とはできません。ただし、妻が、夫の会社の名目的役員となっているような場合には、主婦としての逸失利益は認められます。従業員から役員になった場合中小企業に長年勤務してきた従業員が役員になった場合は、経営者やその親族の役員報酬と比べて低額であることが多く、役員報酬に利益配当部分が含まれていることはありません。この場合、役員報酬の全額が、労務対価部分と認められます。大企業のサラリーマン重役の場合一部上場企業など大企業のサラリーマン重役の場合は、役員報酬は相当高額ですが、報酬全額が労務対価部分と認められます。取締役、常務取締役、専務取締役、代表取締役など、役職ごとに定年制が敷かれている場合、役員報酬の全額が得られる就労可能年数は、定年までの年数とします。まとめ役員報酬のうち逸失利益として認められるのは、原則として労務対価部分です。利益配当部分は除外されます。ただし、事故が原因で役員を解任されたり、相続人が会社の経営権を承継できなかった場合は、利益配当部分も含む役員報酬全額を逸失利益算定の基礎収入とすることができます。役員報酬中の労務対価部分の認定は、相当に裁量的なものとなります。傾向としては、いわゆるサラリーマン重役については、全額が労務対価部分と認定されるのが通常ですが、企業のオーナーや親族役員については、報酬中に一定の利益配当部分が含まれていると評価されることが多いようです。役員報酬の労務対価部分をどう判断するかは難しい問題がありますから、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法【参考文献】・大工強「役員の休業損害及び逸失利益の算定」(判例タイムズ№842)・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 148~152ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 190~191ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 99~104ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 127ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 186~189ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 94~96ページ
    Read More
  • 事業所得
    個人事業主の逸失利益・休業損害の基礎収入の算定方法
    事業所得者(個人事業主、自営業者、自由業者など)の休業損害・逸失利益を算定するときの基礎収入は、原則として事故前年の申告所得額によります。基礎収入の基本受傷による現実の収入減が損害として認められます。原則として、事故前年の申告所得額を基礎とします。青色申告事業者の場合は、青色申告特別控除前の金額となります。青色申告特別控除は、所得税等の計算の基礎となる事業所得額を算出する際に控除されるものです。課税対象金額を算出するうえで控除されているにすぎないので、休業損害や逸失利益の算定の際には考慮しません。給与所得者の休業損害は、事故前3ヵ月の平均収入を基礎としますが、事業所得者の場合は、各月の所得額が必ずしも明らかでないことなどから、休業損害も逸失利益も、事故前年(1年間)の所得を基礎とするのが一般的です。年度や時季による変動が大きい場合は、事故前年数年間の平均値や前年同期の数値によることもあります。個人事業者の場合、家族等が事業を手伝っていることも多いため、損害額の算定にあたっては、事業所得に占める本人の寄与部分(寄与率)が問題となります。なお、従業員給与や地代家賃などの固定経費は、休業損害として認められます。被害者の代わりに他の者を雇用するなどして収入を維持した場合には、それに要した費用が損害として認められます。寄与率事業所得は、一般的に、①本人の労働によって生み出される部分(本人の寄与部分)のほか、②家族や従業員の労働によって生み出される部分、③土地・建物・設備などの資本から生み出される部分(資本利得)の総体として形成されます。事業所得本人の労働によって生み出される部分。(本人の寄与部分)家族や従業員の労働によって生み出される部分。(家族・従業員の寄与部分)土地・建物・設備などの資本から生み出される部分。不動産賃料など。(物的設備の寄与部分)このうち、事業所得者の休業損害・逸失利益の算定にあたって基礎収入として認められるのは、本人の寄与部分だけです。事業収益中に占める本人の寄与部分は、その割合(寄与率)によって金額を決めます。これについては、次のような最高裁判例があります。最高裁判所第二小法廷判決(昭和43年8月2日)企業主が生命もしくは身体を侵害されたため、その企業に従事することができなくなったことによって生ずる財産上の損害額は、原則として、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によって算定すべきであり、企業主の死亡により廃業のやむなきに至った場合等特段の事情の存しないかぎり、企業主生存中の従前の収益の全部が企業主の右労務等によってのみ取得されていたと見ることはできない。寄与率は、事故前後の収支状況、事業の業種・業態、本人の特殊な技能・能力や職務の内容、家族・従業員の関与の程度や給与額などが考慮されます。判例では、本人寄与分として60~70%と認定したものが多いようです(『赤い本2006年版』より)。同じ事業所得者でも、自由業者(弁護士・開業医・作家など)の収入は、ほとんどが本人の労働によるものです。多少家族の助力があっても、本人の寄与率100%、すなわち収入全体が本人の寄与部分と考えられます。固定経費の加算事業を継続するうえで休業中も支出を余儀なくされる固定経費も、休業損害として認められます。経費のうち、どれが固定経費に該当するかは、休業中も発生するものか、休業中発生するとして、事業維持のためにやむを得ないものか、という点から判断します。固定経費として一般に認められているのは、従業員給与、損害保険料、地代家賃、リース料、減価償却費、租税公課、利子割引料などです。水道光熱費・通信費については、裁判例は分かれています。ただし、休業が長期間にわたることが明らかな場合は、固定経費の支出には相当性がないとして、基礎収入への加算が認められないことがあります。休業期間が長期にわたることが見込まれる場合には、機械・設備の一部売却、賃貸借契約の一部解約、従業員の休職等の措置を取る必要が出てきます。このことは、逸失利益の算定の場合も同じです。逸失利益については、固定経費も控除した後の所得額を基礎とします。逸失利益は、休業損害と違って、将来の事業継続のために従前どおり固定費の支払いを続けなければならないという事情がないからです。ただし、少数ですが、労働能力喪失率が低く、労働能力喪失期間も短い場合、固定経費を控除しない額が基礎とされる例もあります(東京地裁・平成29年4月10日)。申告外所得・無申告所得過少申告により実際の所得額が申告所得額と異なる場合や、確定申告していない場合でも、立証できれば、実所得額が基礎収入と認められることがあります。過少申告している場合過少申告している場合、すなわち実所得額が申告所得額よりも多い場合でも、申告額を上回る収入があったことを確実に証明できれば、申告額以上の額を基礎収入とすることが認められます。確定申告していない場合確定申告をしていない場合でも、立証により相当の収入があったと認められるときは、賃金センサスの平均賃金にもとづき基礎収入が認められることがあります。申告外所得の認定は厳しい申告外所得の認定については、かなり厳格に行われることを覚悟しなければなりません。自分の都合によって、「所得はこれだけでした」と少なく申告しておきながら、その一方で「本当はもっと多く所得があったんだ」と主張するわけですから、証拠としての信用性は低く評価されてしまうのです。確定申告の額と主張する実収入額との乖離が大きいほど、立証には困難をともないます。修正申告が必要となる場合もあります。ただし、修正申告書の控えだけでは立証としては不十分で、実際の所得を裏付ける預金通帳、請負等の契約書、納品書、請求書、伝票、領収書などの原資料を提出し、その信用性について立証しなければなりません。確定申告を正しくしていなかったことは、税務申告の問題です。損害賠償請求では、確定申告額は有力な証拠ですが、申告額よりも収入があったことを高度の蓋然性をもって立証できれば、訴訟ではその額を認定することになります。具体的な立証方法や裁判での認定事例はこちらをご覧ください。まとめ事業所得者の逸失利益や休業損害の算定に用いる基礎収入は、原則として、事故前年の確定申告所得額によります。過少申告していた、確定申告していなかった、などの理由で申告外所得がある場合でも、実際の所得を立証できれば、それを基礎収入とすることができます。ただし、申告外所得の認定は厳格に行われ、立証には相当な困難をともないます。交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法
    Read More
  • 無職・失業者
    無職者・失業者でも交通事故による休業損害・逸失利益が認められる?
    無職者・失業者は、就労していないので、休業損害や逸失利益は認められない、と思われがちですが、実は、事故発生時に無職であっても、休業損害や逸失利益が認められる場合があります。無職でも、休業損害や逸失利益が認められるのは、どんな場合なのでしょうか?ポイントは「就労の能力・意欲」と「就労の蓋然性」の有無事故時に無職・失業中であったとしても、就労能力・就労意欲があり、就労の蓋然性が認められれば、休業損害や逸失利益は認められます。ただし、休業損害と逸失利益には次のような違いがあるため、認められやすさに違いが生じます。休業損害逸失利益治療期間中に得られたはずの収入。過去の比較的短期間の損害。将来の稼働によって得られるであろう収入。将来の長期間にわたる損害。つまり、休業損害は、治療期間という比較的短期間の問題ですが、逸失利益は、将来の長期間にわたる仮定の問題です。したがって、休業損害については、事故に遭って治療を受けていなければ、本来なら就労を開始していたという「高い蓋然性」が要求されます。そのため、事故時に無職だった場合、休業損害は認められにくいのです。一方、逸失利益については、「将来もずっと無職のまま」とは考えにくいため、就労の蓋然性が比較的認められやすく、事故時に無職であっても逸失利益は認められやすいのです。詳しく見ていきましょう。無職でも休業損害が認められるのは、どんな場合か?休業損害は、事故時に無職の場合には就業していないことを理由に、原則として否定されます。休業損害とは、治療のために仕事を休んだことによる収入の喪失です。無職者・失業者は、収入の喪失という事態が発生しません。しかし、次のような場合には、無職者でも、休業損害が認められる可能性があります。事故時に無職でも休業損害が認められるケース事故時に就職先が決まっていた場合は、事故による怪我の治療で就労できなかった期間について、休業損害が認められます。また、具体的な雇用契約の締結や内定がない場合でも、就労の能力・意欲があり、治療期間中に就労していた蓋然性が高いと認められる場合は、休業損害が認められる可能性があります。例えば、事故発生当時、就職活動中だったような場合です。応募先企業とのメールのやり取りや、面接に行っていた頻度などから判断されます。単にハローワークに登録していたとか、求人情報を集めていた、という程度では認められません。そのほか、治療期間が長期に及び、休業せざるを得ない状況が相当程度継続するような場合は、治療期間中に就職できた蓋然性が認められやすくなり、休業損害が認められる可能性が高くなります。無職者の「基礎収入」と「休業損害の期間」休業損害を算定するとき、基礎収入と対象期間は、こう考えます。基礎収入は、就職先が決まっている場合は、就職したときに得られる見込みであった給与額を基準とします。それ以外の場合は、失職前の収入を参考に、年齢、技能・資格などを考慮し、賃金センサスの平均賃金か、これを下回る額とします。休業損害の期間は、就労開始の蓋然性があったとみられる時点からとなります。事故時に就職先が未定だった場合は、求職期間その他の具体的事情を考慮して、職を得られるまでに要する相当期間を控除することがあります。とはいえ、収入金額や就職時期を明確にすることは、多くの場合に困難です。そのため裁判では、就職時期を考慮せずに事故時から治療終了までの全期間を算定対象とする一方、収入金額を低めに認定することによって妥当な金額に調整するなど、個別具体的に判断されています。裁判例事故時に無職だった被害者の休業損害が認められた裁判例として、次のようなものがあります。アルバイトを退職して求職中の被害者(女性・26歳)につき、退職した翌日に事故に遭ったことなどの事情から、退職前のアルバイト収入(月額16万円)を基礎として休業損害を算定。(大阪地裁判決・平成10年1月23日)被害者(女性・24歳)は、事故前に就職を申し込んでいた会社から事故後に採用の通知を受け、治療期間中に就労を開始。受傷部の痛みのために10日で休職し、そのまま退職。会社から支給される予定だった月額21万円を基礎に症状固定までの7ヵ月分の休業損害を認定。(名古屋地裁判決・平成21年2月27日)元大工(男性・62歳)につき、稼働先を探していたことなどから、大工として稼働する意思と能力があり、専門技術性に照らし、後進の指導も含めて稼働先が見つかる可能性も十分あったとして、男性学歴計60歳から64歳平均の8割を基礎として症状固定までの休業損害を認定。(札幌地裁判決・平成13年11月29日)逸失利益は、無職でも原則認められる逸失利益は、無職者・失業者であっても、年齢、職歴、就労能力・就労意欲などから、将来において就労の蓋然性が認められる場合は、原則として認められています。事故時に無職の場合、原則として、休業損害は認められませんが、逸失利益は認められます。この違いは、休業損害が、比較的短期間における就労の蓋然性が問題となるのに対し、逸失利益は、将来の長期間における就労の蓋然性が問題となるからです。事故時に無職だからといって、生涯を通じて無職で無収入のままとするのは不合理で、就労の能力・意欲があれば、将来において就労の蓋然性があると判断するのが妥当でしょう。就労の蓋然性が否定されるのは、どんな場合か?逸失利益は、無職者・失業者であっても、就労の蓋然性が否定されない限り、原則として認められます。就労の蓋然性が否定されやすいのは、例えば、病気等により職を得ることが将来的にも困難な場合、相当額の不労所得を得ている場合、すでに高齢で年金収入のみで生活している場合など、就労の能力・意欲を欠く場合です。逸失利益の基礎収入具体的に就職予定先が決まっている場合は、就職予定先の会社の見込み給与額を基礎収入とします。それ以外の場合は、失業前の現実の収入金額、失業の経緯、経歴、技能・資格、年齢、性別、学歴などを考慮し、賃金センサスの平均賃金を参考に、実際に得られる蓋然性の高い金額を個別に推定することになります。裁判例事故時に無職だった被害者の逸失利益が認められた裁判例として、次のようなものがあります。28歳・無職男性の後遺障害による逸失利益について、賃金センサス男性学歴計全年齢平均賃金を基礎に算定。(福岡地裁判決・平成18年9月28日)62歳・無職男性の死亡による逸失利益について、賃金センサス学歴計60~64歳の平均賃金を基礎に算定。(京都地裁判決・平成26年6月27日)まとめ無職者・失業者の休業損害については、事故当時就業していないことを理由に、原則として否定されます。ただし、就職が内定している場合や、治療期間中に就労する蓋然性が高い場合は認められます。逸失利益は、事故時に無職であっても、就労の能力・意欲を欠く場合でなければ、原則として認められます。無職の方、失業中の方であっても、就職先が決まっていなくても、休業損害・逸失利益を請求できる場合があります。求職中に事故に遭ってしまい、生活に困るので休業損害や逸失利益を請求したい、といった方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 209~210ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 110~111ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 67ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 100、118ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 119~123ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 149~153ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 191ページ・『交通損害関係訴訟 捕訂版』青林書院 80~81ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 174~175ページ
    Read More
  • 専業主婦・主夫の基礎収入
    専業主婦・主夫の逸失利益・休業損害の基礎収入の算定方法
    家事従事者(専業主婦・専業主夫)も、交通事故で家事労働ができなくなった場合は、休業損害や逸失利益を請求できます。その場合の基礎収入は、賃金センサスの女性労働者平均賃金が用いられます。主婦も主夫も、つまり「女性の家事従事者」も「男性の家事従事者」も同じです。有職者で家事労働に従事している場合(兼業の主婦・主夫)は、現実の収入額と平均賃金の多い方を基礎収入とします。専業主婦・専業主夫も休業損害や逸失利益が認められる専業主婦・専業主夫は、現実に収入を得ているわけではありませんが、家事労働という労務を提供しています。家事労働は、他で労務提供すれば、金銭的に評価され、相当の収入を得ることができるものです。つまり、報酬相当の利益を家族のために確保しているといえます。そのため、主婦や主夫が交通事故で従前のように家事労働ができなくなった場合は、休業損害や逸失利益が認められます。専業主婦の逸失利益を認めた最高裁判決(昭和49年7月19日)結婚して家事に専念する妻は、その従事する家事労働によって現実に金銭収入を得ることはないが、家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げているのである。ただ、具体的事案において金銭的に評価することが困難な場合が少くないことは予想されうるところであるが、かかる場合には、現在の社会情勢等にかんがみ、家事労働に専念する妻は、平均的労働不能年令に達するまで、女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である。専業主婦(女性の家事従事者)の基礎収入の算定方法専業主婦の基礎収入は、原則として、賃金センサスの「女性労働者の全年齢平均賃金」を用います。ただし、被害者の年齢、家族構成、身体状況、家事労働の内容に照らし、女性労働者の全年齢平均賃金に相当する労働を行いうる蓋然性が認められない場合は、女性年齢別の平均賃金を用いたり、一定程度減額して用いることがあります。例えば、高齢の場合(おおむね65歳から70歳程度以上)、家事労働の内容が壮年期とは異なっているとして、年齢別平均賃金を基礎とするなど減額する裁判例があります。その一方で、家事労働における基礎収入は学歴や年齢によって差異が生じるものではないとして減額をみとめない裁判例もあります。家族構成や実際に従事していた家事の具体的状況についての立証が大切です。東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の各交通部による「三庁共同提言」では、原則として全年齢平均賃金を用いることとしています。専業主夫(男性の家事従事者)の基礎収入の算定方法男性の家事従事者(専業主夫)の場合も、主婦の場合と同様に、賃金センサスの「女性労働者の全年齢平均賃金」を基礎収入とするのが通例です。「男性」労働者の平均賃金でなく、「女性」労働者の平均賃金である点に注意してください。交通事故の損害賠償額算定において、家事従事者とは「性別・年齢を問わず、現に家族のために家事労働に従事する者をいう」と定義されています(青本26訂版)。男性の家事労働に限って、その金銭的評価を男性平均賃金に引き上げるべきとする根拠に乏しいことから、男性の家事従事者についても、女性平均賃金を用いるのが通例とされています。男性の家事従事者の基礎収入の算定に、女性の平均賃金を用いることには、違和感を感じますよね。そうかといって、男性の家事従事者に男性の平均賃金を用いると、同じ家事労働で男女の格差が生じ、おかしな話になります。そもそも、男女間に賃金格差があり、家事労働が女性の仕事とされてきたのが問題です。家事従事者の基礎収入の算定に、女性の平均賃金を用いるのは、上で紹介した昭和49年(1974年) の最高裁判決の重みが大きいようです。最高裁判決をもう一度ご覧になってみてください。こう指摘しています。「現在の社会情勢等にかんがみ、家事労働に専念する妻は、…女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である」この判決から半世紀が経ち、「現在の社会情勢等」はずいぶん変わっています。現在の社会情勢にあった算定方法が求められています。なお、女性の場合には、配偶者等が存在すれば家事労働者性が問題とされることは通常ありませんが、男性の場合には、家事従事者への該当性やその程度が問題とされ、従事していた家事労働の具体的内容について立証が必要となるのが通常です。兼業主婦・兼業主夫の基礎収入の算定方法兼業の家事従事者の基礎収入は、原則として、現実収入額と女性労働者全年齢平均賃金のいずれか高い方によります。現実収入分と家事労働分を加算するわけではありません。ですから、現実収入が平均賃金より高い場合は、家事労働分は「ゼロ査定」ということになります。代替労働力を利用した場合家事労働に従事できない期間に、家事代行サービス等を利用した場合は、支出した家事代行サービスの費用が損害(積極損害)となります。この場合、家事代行サービスの費用支出は、家事従事者が行う家事に代わるものですから、これと重ねて休業損害は発生しません。まとめ専業主婦や専業主夫など家事労働従事者の場合、実際に収入がなくても、家事労働を提供していることに対して休業損害や逸失利益が認められます。基礎収入の算定には、一般に賃金センサスの「女性労働者の全年齢平均賃金」が用いられます。パートなどで働きに出ている場合は、現実の収入額と平均賃金の高い方を基礎に収入を算定します。お困りのことがあったら、今すぐ交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。休業損害の計算方法後遺障害逸失利益の計算方法
    Read More