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交通事故の損害賠償は、相手方の任意保険会社が自賠責保険分を含めて支払う「一括払い」が一般的ですが、相手方の自賠責保険に直接請求した方がよい場合があります。ここでは、4つのケースをご紹介します。
詳しく見ていきましょう。
自賠責保険には、任意保険のような保険会社による示談代行サービスがありませんから、加害者の側から「治療費の支払い」や「損害賠償額の提示」をしてくることはありません。被害者の側から、加害者側に、治療費等の損害を賠償請求をすることになります。
このとき大切なのが、相手方の自賠責保険に損害賠償額の支払いを直接請求することです。
自賠責保険は、被保険者(加害者)が、被害者に損害を賠償することによって被保険者に生じる損害を填補する保険です。したがって、被保険者が、被害者に損害賠償額を支払ったうえで、保険金を請求するのが原則です。
被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。
相手が任意保険に加入していれば、任意保険会社が自賠責保険分を含めて一括払いし、あとから保険会社が自賠責保険に求償する仕組みがあるのですが、任意保険に未加入の場合には、これができません。加害者が、まず損害賠償してからでないと、自賠責保険に保険金を請求できないのです。
これでは、加害者に賠償資力がなければ、被害者は、自賠責保険分すら損害賠償を受けることができません。こんなとき使えるのが、自賠責保険に対する被害者請求(直接請求)の制度です(自賠法16条)。
ですから、加害者が任意保険に加入していないときは、まず相手の自賠責保険に被害者請求して損害賠償額の支払いを受け、そのうえで、損害の填補に不足する額を加害者に請求することが大切です。
あなたが、任意保険に人身傷害保険を付帯していれば、相手の自賠責保険に被害者請求するなど面倒なことをしなくても、あなたの保険会社が、自賠責保険分を含めて一括払い(人傷一括払い)してくれます。
被害者の過失割合が大きいときは、先に自賠責保険に被害者請求する方が有利になることがあります。
加害者に損害賠償請求する場合(すなわち任意保険会社による一括払いの場合)は、自賠責保険分を含めて過失相殺されますが、自賠責保険に被害者請求(直接請求)すると、被害者に重大な過失があったときのみ、一定割合で減額するからです。
自賠責保険は、被害者に重大な過失がある場合にのみ減額します。その際の減額割合は、次の通りです。
被害者の過失割合 | 保険金の減額割合 | |
---|---|---|
後遺障害・死亡 | 傷害 | |
7割未満 |
減額なし |
減額なし |
7割以上 8割未満 |
2割減額 |
2割減額 |
8割以上 9割未満 |
3割減額 |
2割減額 |
9割以上 10割未満 |
5割減額 |
2割減額 |
例えば、被害者の過失が6割だった場合、通常は過失相殺により損害賠償額が6割減額されますが、自賠責保険は減額がありません。被害者の過失が7割だった場合、通常は7割過失相殺されますが、自賠責保険は2割の減額にとどまります。
なので、被害者の過失が大きいときは、先に自賠責保険に被害者請求すると、受け取れる損害賠償額が増える場合があるのです。
被害者の過失が大きい場合は、自賠責保険に被害者請求する方が、どれくらい有利になるか、具体例で見てみましょう。
被害者の損害額が5,000万円。被害者の過失割合が80%。被害者死亡の場合を考えます。
加害者に損害賠償請求する場合(すなわち任意保険会社による一括払いの場合)には、損害額の80%が過失相殺により減額されるため、損害賠償額は1,000万円となります。
5,000万円×20%=1,000万円
他方、自賠責保険に被害者請求すると、被害者の過失割合が80%のときの減額割合は30%ですから、70%が支払われます。自賠責保険の死亡による損害に対する支払限度額は3,000万円なので、自賠責保険に被害者請求すると、2,100万円が支払われるのです。
3,000万円×70%=2,100万円
このように、被害者の過失割合が大きい場合は、自賠責保険に被害者請求する方が有利なことがあるのです。ただし、被害者の過失割合が10割の場合は、加害者無責となり、自賠責保険から損害賠償額の支払いを受けることはできません。
なお、裁判が確定してから自賠責保険を請求する場合は、裁判の結果通りの支払いとなります。裁判では、厳格に過失相殺されますから、この例でいえば、裁判で1,000万円が確定すると、自賠責保険から受け取れる損害賠償額も1,000万円となります。
後遺症についての損害賠償額は、基本的に、自賠責保険が認定する後遺障害等級に応じて決まります。ですから、後遺症が残ったときは、自賠責保険により、適正な後遺障害等級の認定を受けることが重要です。
自賠責保険により後遺障害等級の認定を受けるには、任意保険会社に任せる方法と、被害者請求する方法があります。
任意保険会社による一括払いとしている場合、自賠責保険への後遺障害等級の認定申請も含め、任意保険会社が全てやってくれます。保険会社に任せる方が被害者としては楽なのですが、そもそも損保会社は、保険金(損害賠償額)の支払いを減らしたいので、被害車の後遺障害等級が適正に認定されるよう、最善を尽くすことはありません。
他方、被害者請求は、被害者が自賠責保険に損害賠償額の支払いを請求する方法です。被害者自身が、必要な書類をそろえて自賠責保険に請求するので、後遺症に見合った障害等級の認定を受けられる可能性が高くなります。
なので、正しい後遺障害等級の認定を受けたいときは、相手の自賠責保険に被害者請求する方がよいのです。
ただし、適正な後遺障害等級の認定を受けるには、専門知識や経験が必要となりますから、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に依頼することが大切です。
加害者が任意自動車保険(対人賠償責任保険)に加入している場合は、任意保険会社が示談代行し、任意保険会社による一括払いとなっているのが一般的です。
被害者にとっては、任意保険会社と自賠責保険会社の両方に請求する手間が省け、任意保険会社とだけ交渉をすればよいので、便利な仕組みです。
その一方で、一括払いにしていると、賠償金請求の窓口が任意保険会社に一本化されるため、任意保険会社との間で示談が成立するまで、自賠責保険から支払われる賠償金も受け取ることができません。
任意保険は、治療費や入院費のような損害額が確定する前に支出を余儀なくされるものについては内払対応がありますが、将来の逸失利益や慰謝料などは損害賠償額が確定してからでないと支払われません。
なので、被害者やその家族が、交通事故の被害で生活費等に困るような場合は、先に自賠責保険部分の支払いを受ける方がよいケースがあります。自賠責保険には、示談が成立していなくても請求できる仮渡金請求の制度もあります。
また、相手方自賠責保険への直接請求権は、損害賠償請求権より消滅時効が短いため、示談交渉が長引きそうなときは、先に自賠責保険分を取得した上で、じっくりと示談交渉し損害賠償額を確定させる方がよい場合があるのです。
被害者請求で自賠責保険から支払われる損害賠償額は、自賠責保険金額(支払限度額)から任意保険会社が一括払いした金額を控除した残額の範囲です。
傷害による損害については、治療費・休業損害・障害慰謝料など全て合わせて120万円が上限ですから、例えば、治療費の一括払いがすでに120万円を超えていれば、被害者請求しても自賠責保険から損害賠償額は支払われません。
交通事故の損害賠償では、自賠責保険に被害者請求(直接請求)した方が、より多くの賠償金を受けることができ、有利な場合があります。
任意保険による一括払いとしていても、一括払いを解除すれば、自賠責保険に直接請求(被害者請求)することができます。
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