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自賠責保険は、「傷害による損害」「後遺障害による損害」「死亡による損害」に対し、保険金の支払基準・支払限度額が定められています。自賠責保険は、人身損害が対象で、物損は対象となりません。
自賠責保険の支払基準・支払限度額について、見ていきましょう。
自賠責共済も、支払基準・支払限度額は、ここで示した自賠責保険の支払基準・支払限度額と同じです。自賠責保険と自賠責共済の違いはこちらをご覧ください。
民法一部改正による法定利率の変更にともない、逸失利益の算定に用いるライプニッツ係数が変更になります。また、平均余命、物価水準、賃金水準の変動を踏まえ、2020年4月1日より、自賠責保険の支払基準が一部改正されました。
傷害による損害は、積極損害(治療関係費・文書料など)、休業損害、慰謝料です。
傷害による損害に対する自賠責保険からの支払限度額は、積極損害・休業損害・慰謝料を合わせて、被害者1人につき 120万円です(自賠法施行令第2条第1項)。
損害 | 内容・支払基準 |
---|---|
治療費 |
診察料、入院料、投薬料、手術料、処置料など |
通院費等 |
通院、転院、入院、退院に要した交通費 |
看護料 |
入院中の看護料 自宅看護料まはた通院看護料 |
諸雑費 |
入院中に要した諸雑費 |
柔道整復等の費用 |
柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用 |
義肢等の費用 |
義肢、義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖などの費用 |
診断書等の費用 |
診断書、診療報酬明細書などの発行手数料 |
文書料 |
交通事故証明書、印鑑証明書、住民票などの発行手数料 |
休業損害 |
事故のため仕事や家事を休業し、その間の収入を得られなかった損害を補償 |
慰謝料 |
交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
後遺障害による損害は、逸失利益と慰謝料です。後遺障害等級に応じて、支払限度額が定められています(自賠法施行令2条1項2号3号、別表第一、別表第二)。
適正な損害賠償を受けるには、適正な後遺障害等級の認定を受けることがカギです。
後遺障害に至るまでの傷害による損害については、120万円の支払限度額の範囲で保険金が支払われ、それにプラスして、後遺障害による損害に対する保険金が支払われます(自賠法施行令2条1項2号3号)。
後遺傷害による逸失利益と慰謝料とは、次のようなものです。
損害 | 内容・支払基準 |
---|---|
逸失利益 |
後遺障害がなければ得られたはずの利益 |
慰謝料 |
交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 |
後遺障害等級ごとの支払限度額は、次の通りです。
障害等級 | 支払限度額 | うち慰謝料 | |
---|---|---|---|
従来 | 2020年4月1日以降 | ||
第1級 |
4,000万円 |
1,600万円 |
1,650万円 |
第2級 |
3,000万円 |
1,163万円 |
1,203万円 |
※神経系統の機能や精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し、介護を要する場合が該当します。第1級は常時介護を要する場合、第2級は随時介護を要する場合です。
※被扶養者がいるとき、慰謝料が、第1級は1,800万円(→1,850万円)、第2級は1,333万円(→1,373万円)となります。赤数値は、2020年4月1日以降の金額です。
障害等級 | 支払限度額 | うち慰謝料 | |
---|---|---|---|
従来 | 2020年4月1日以降 | ||
第1級 |
3,000万円 |
1,100万円 |
1,150万円 |
第2級 |
2,590万円 |
958万円 |
998万円 |
第3級 |
2,219万円 |
829万円 |
861万円 |
第4級 |
1,889万円 |
712万円 |
737万円 |
第5級 |
1,574万円 |
599万円 |
618万円 |
第6級 |
1,296万円 |
498万円 |
512万円 |
第7級 |
1,051万円 |
409万円 |
419万円 |
第8級 |
819万円 |
324万円 |
331万円 |
第9級 |
616万円 |
245万円 |
249万円 |
第10級 |
461万円 |
187万円 |
190万円 |
第11級 |
331万円 |
135万円 |
136万円 |
第12級 |
224万円 |
93万円 |
94万円 |
第13級 |
139万円 |
57万円 |
変更なし |
第14級 |
75万円 |
32万円 |
変更なし |
※被扶養者がいるとき、慰謝料が、第1級は1,300万円(→1,350万円)、第2級は1,128万円(→1,168万円)、第3級は973万円(→1,005万円)となります。赤数値は、2020年4月1日以降の金額です。
後遺症が複数の部位で残る場合、複数の部位で後遺障害等級が認定されると、後遺障害等級が繰り上がる仕組みです。
死亡による損害に対する支払限度額は、被害者1人につき 3,000万円です(自賠法施行令2条1項1号)。葬儀費用、逸失利益、死亡本人の慰謝料と遺族の慰謝料が支払われます。遺族慰謝料の請求権者は、被害者の父母・配偶者・子です。
葬儀費用と慰謝料は、支払金額が定められていますが、逸失利益は、死亡本人の収入額や就労可能年数などによって決まります。例えば、収入のない高齢者が事故で死亡した場合には、逸失利益はほとんどなく、おおむね葬儀費用と慰謝料ということになります。
なお、死亡に至るまでの治療費など傷害による損害に対しは、別途120万円を上限に保険金が支払われます(自賠法施行令2条1項1号)。
損害 | 内容・支払基準 |
---|---|
葬儀費 |
通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用(墓地、香典返しなどは除く) |
逸失利益 |
生きていれば得られたはずの利益 |
慰謝料 |
死亡本人⇒ 350万円(2020年4月1日以降は 400万円) 遺族請求権者1名⇒ 550万円遺族請求権者2名⇒ 650万円 |
※例えば、一家の大黒柱の夫が、妻と子2人を残して死亡したときの慰謝料は、400万円+750万円+200万円=1,350万円となります。赤数値は、2020年4月1日以降の金額です。
自賠責保険の保険金の支払限度額は、被害者1人あたりの金額です(自賠法施行令第2条第1項)。1事故あたりの限度額ではありません。
被害者が複数の場合や加害者車両が複数の場合、自賠責保険金の支払限度額は、次のようになります。
複数の被害者を出した場合は、被害者ごとに限度額まで保険金が支払われます。
例えば、車の衝突事故で、被害車両に3人が乗車していて受傷した場合、被害者3人に、それぞれ120万円を限度として、加害車両の自賠責保険から保険金が支払われます。
加害車両が複数ある場合は、加害車両それぞれの自賠責保険に保険金を請求できるので、支払限度額は、加害車両の数に応じて増えます。自賠責保険は、車両ごとに付保されるものだからです。
つまり、被害者の損害額を限度に、[自賠責保険の支払限度額]×[加害車両数]が、自賠責保険の支払限度額となります。
例えば、2台の車の衝突事故で双方に過失がある場合、いずれかの車に同乗していて負傷した被害者には、両方の車の自賠責保険から保険金が支払われます。この場合、自賠責保険の支払限度額は、被害者1人につき、120万円×2台=240万円になります。
ただし、これは支払限度額が加害車両数に応じて増えるのであって、支払基準は変わりません。
つまり、加害車両2台による傷害事故の場合、支払限度額は240万円(120万円×2)になりますが、例えば、傷害慰謝料が支払基準の2倍の1日8,600円(4,300円×2)になるわけでなく、1日4,300円で変わりません。
自賠責保険は、事故を起こして保険金が支払われた後、また別の事故を起こした場合でも、保険期間内であれば、同じ限度額で保険金が支払われます。
自賠責保険には、「自動復元制度」が採用されているからです。したがって、自賠責保険は、保険期間中であれば、何度事故を起こしても契約が失効することはなく、何度でも支払限度額内で支払いを受けることができます。
とはいえ、事故を起こさないのが一番です。
自賠責保険・自賠責共済は、傷害による損害、後遺障害による損害、死亡による損害について、保険金・共済金の支払基準・支払限度額が決められています。
自賠責保険・自賠責共済の支払限度額を超える損害が発生した場合は、その超過する損害については任意保険から支払われます。
自賠責保険は、自賠法(自動車損害賠償保障法)にもとづき設けられた保険です。自賠責保険を取扱う損害保険会社が、勝手に契約内容を決めることはできません。約款に規定のない場合は、自賠法が適用されます。
支払基準についてもっと詳しく知りたい方は、次のページをご覧ください。
※損害保険料算出機構のWebサイトにリンクしています。
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