交通事故後遺症の損害賠償請求は後遺障害等級認定がカギ

交通事故後遺症の損害賠償請求は後遺障害等級認定がカギ

交通事故で後遺症が残ったとき、後遺症に対する慰謝料など損害賠償を受けるには後遺障害等級の認定が必要です。賠償額は後遺障害等級に応じて決まります。

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後遺症が残ったときは、後遺障害等級の認定を受け、後遺障害に対する損害賠償請求を行います。

 

後遺障害の損害賠償額は、後遺障害等級に応じて決まります。ですから、適正な後遺障害等級が認定されることが、正当な損害賠償を受けるためのポイントです。

 

後遺障害等級が認定されないと損害賠償を受けられない

後遺症が残った場合、「後遺症が残った」というだけでは、損害賠償請求できません。後遺障害が認められる必要があります。

 

「後遺症」と「後遺障害」の違い

交通事故の損害賠償において、後遺症と後遺障害には大きな違いがあります。同じ意味で使われることも多いのですが、厳密にいえば次のような違いがあります。

 

「後遺症」は、症状固定時に残存する症状(身体・精神機能の不調)です。

 

「後遺障害」は、労災保険や自賠責保険において補償・賠償の対象とする法律上の概念です。

 

  • 労働基準法(第77条)では、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するとき、使用者は、その障害の程度に応じて…障害補償を行わなければならない」と定めています。
  • 自動車損害賠償保障法(施行令第2条1項2号)では、後遺障害を「傷害が治ったとき身体に存する障害をいう」と定めています。

 

この場合の「治った」とは、症状固定に達したことをいいます。

 

交通事故において、後遺症と後遺障害の関係は、次のようなイメージです。

 

後遺症

後遺障害(損害賠償の対象)

 

後遺障害は、どうやって認定されるのか?

後遺障害の認定は、自賠責の認定手続きを経るのが一般的です。

 

自賠責において、どの後遺障害等級に該当するか、あるいは後遺障害に該当しない(非該当)か、判断されます。

 

自賠責への認定申請は、相手方任意保険会社が行う事前認定と被害者が行う被害者請求の2つの方法があります。

 

自賠責の判断結果は、事前認定の場合は、相手方の任意保険会社から被害者へ、被害者請求の場合は、自賠責から被害者に通知されます。

 

事前認定と被害者請求の違いについて詳しくはこちらをご覧ください。

 

自賠責制度の後遺障害認定機関

「後遺障害に該当するか否か」「どの等級に該当するか」を審査し、決定するのは、損害保険料率算出機構です。これは、自賠責保険制度のもとで、法律により設立された民間の非営利団体です。

 

この損害保険料率算出機構が認定した後遺障害等級に応じて、自賠責保険や任意保険から支払う保険金額が決まります。

 

後遺障害「非該当」でも、裁判では慰謝料が認められることも

自賠責の認定した等級は、裁判所も基本的に尊重します。

 

ただし、自賠責において後遺障害「非該当」となった場合でも、裁判では後遺症に対する慰謝料が認められる場合があります。

適正な等級認定を受けるためのポイント

症状に見合った後遺障害等級の認定を受けることは、実は簡単ではありません。

 

特に、比較的軽度のムチ打ち症などは、後遺障害が認定されにくい傾向があります。痛みやしびれなど自覚症状はあっても、客観的に証明することが難しいからです。

 

後遺障害等級認定は申請書類にかかっている

適正な後遺障害等級の認定を受けるために大切なポイントは、提出する書類を十分に吟味することです。書類をそろえて提出すればいいわけではありません。

 

後遺障害の等級認定審査は、基本的に書面審査です。審査にあたって、被害者本人に状態を聞くこともなければ、診療医から話を聞くこともありません。提出する書類が全てです。

 

申請書類には、医師の後遺障害診断書のほか画像や検査結果など各種添付書類があります。必要な検査が行われていることが不可欠ですし、治療期間さえも重要な要素となります。

 

医師任せでは、適正な等級認定を受けられない

「医師に任せておけば、大丈夫なのでは?」と思うかもしれませんが、そう単純ではないのです。

 

医師は、治療は専門ですが、後遺障害等級の認定については専門ではありません。

 

加えて、治療費が保険会社から支払われますから、保険会社と揉めたくないという思いが先に立ちます。そのため、保険会社に逆らってまで、被害者のために行動してくれる医師は、残念ながら少ないのです。

 

この分野の専門は、医師でなく弁護士

そもそも後遺障害は賠償上の概念ですから、この分野の専門は弁護士なのです。

 

治療の段階から弁護士に相談し、的確なアドバイスを受けることで、適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まります。

 

ただし、交通事故の問題は、弁護士にとっても特殊な法律分野となるため、弁護士なら誰でも対応できるわけではありません。交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することが大切です。

 

関連

後遺障害等級の認定条件

後遺障害の「等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」(「自賠責保険支払基準」2001年金融庁・国土交通省告示)とされています。

 

後遺障害認定の4つの条件

『労災補償障害認定必携』によれば、後遺障害と認定される条件は次の4つです。

 

  1. 事故により被った傷害と後遺障害との間に相当の因果関係があること
  2. 将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的な毀損状態であること
  3. 後遺障害の存在が医学的に認められること
  4. 労働能力の喪失を伴うこと

 

事故と因果関係があること

第1は、後遺障害が「事故で受傷したことが原因で引き起こされている」という事故との因果関係が、はっきりしていることです。

 

例えば、既存の障害のある人が、事故で痛みやしびれがひどくなった場合、それが事故によるものと認められず、争いとなることがよくあります。

 

回復が見込めないこと

第2は、将来においても回復が困難、つまり、治らないということです。

 

例えば、頸椎捻挫(むち打ち症)などは時間を経れば治ると考えられて非該当とされ、争いとなることがよくあります。

 

 

医学的に説明できること

第3は、医学的に説明できるということです。いくら被害者に自覚症状があり、傷みが治らないと主張しても、医学的に説明できなければ、後遺障害とは認められません。

 

医師が診断しただけでは足りず、医学的な所見や根拠が必要です。

 

労働能力の喪失があること

第4は、労働能力の喪失を伴うということです。

 

労働能力の喪失を類型化したものが、自賠責の後遺障害等級表(自賠法施行令「別表第1・別表第2」)です。

 

労災で等級認定されても自賠責で認定されるとは限らない

自賠責保険の後遺障害等級の認定基準は、労災保険の障害等級認定基準と同じです。

 

しかし、労災で障害等級が認定されても、自賠責でも同じように後遺障害等級が認定されるとは限りません。

 

例えば、労災だと12級なのに自賠責では非該当ということはよくあります。

 

労災と自賠責で認定基準は同じでも、認定機関や認定方法が異なるからです。自賠責は労災に比べて、低い等級しか認められない傾向があります。

まとめ

後遺症に対する慰謝料などは、後遺障害等級によって決まります。適正な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。

 

むち打ち症などは、後遺傷害の認定を受けるのが難しいので、治療中の早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

 

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公開日 2021-04-23 更新日 2023/03/16 11:45:59