MRIは万能の検査ではない?! レントゲン・CTとの違いとは?

MRIは万能の検査ではない?! レントゲン・CTとの違いとは?

交通事故診療で行われる画像検査には、レントゲン写真の撮影のほか、CT、MRIの撮影という方法があります。それぞれの特徴と違いを解説します。

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MRI検査

 

レントゲンとCTの違いは、たいていの人が分かるでしょう。では、CTとMRIの違いは? 

 

検査は、治療のためにするものですが、交通事故では損害賠償が絡んでくるので、症状の原因や存在を証明するためでもあります。

 

ここでは、レントゲン、CT、MRI検査について、それぞれの特徴と違いについて解説します。被害者としても、治療を受けるにあたって知っておきたい点ですから、ぜひチェックしておいてください。

 

XP、CT、MRIの特徴と違い

XP(レントゲン写真)、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)について、それぞれの特徴は次の通りです。

 

XP(レントゲン写真)

XP(X-ray Photograph)は、X線を照射し、透過したX線を写真乾板、写真フィルム等に検出・可視化する画像検査方法です。レントゲン撮影、単純X線撮影ともいわれます。

 

骨状態(骨折の有無など)や脊髄の状態を見るのに必須の検査方法です。

 

レントゲン写真の原理

照射されたX線は、体内に入ると、透過して体外に出てくるものと、吸収されるものとに分かれます。その透過・吸収の差を、白から黒の濃淡の変化で表したものがX線写真です。

 

X線が透過した部分は黒、吸収された部分は白く表されます。高密度な組織ほどX線を吸収します。

 

骨は密度が高く、X線を吸収するため白く表されます。空気を多く含む肺の部分は密度が低く、X線を吸収する組織が少ないため黒く表されます。

 

CT(コンピューター断層撮影)

CT(Computed Tomography)は、X線を360度回転しながら人体に照射して、人体の断層像をコンピューターによって再構成する装置です。

 

人体を輪切りにしたような断面画像や立体的な画像を得ることができ、1枚のレントゲン写真より情報量が多く、詳細な診断ができます。

 

X線は、密度が低い組織は通り抜け、密度が高い組織ほど通り抜けにくい性質があります。CTは、体に多方向からX線を照射し、透過したX線の量を測定することで、 体の組織の密度を計算し、 画像化する仕組みです。

 

骨など硬部の組織を見るのに適しています。

 

CT撮影には、次のような特徴があります。

  • 骨や肺の内部構造が明確に描出される(⇒骨病変の描出に優れている)。
  • 軟部組織の変化が分かりにくい。
  • 骨に囲まれた部位のアーチファクト(虚像)が出やすい。

 

MRI(磁気共鳴画像)

MRI(Magnetic Resonance Imaging)は、磁力と電波によって、体の細胞に含まれる水素原子に影響を与え、水素原子が出す信号の強弱に応じて濃淡の差をつけて、体内の状態を断面像として描写する装置です。

 

成人の体重の 60~70%は水分といわれ、 水素原子は体のどこにでもあり、 データが取りやすいことを利用しています。水分の多い軟部組織を見るのに適しています。

 

MRIの画像には、「T1強調」と「T2強調」があります。

 

T1強調 磁場の繰り返し時間を短くすることで、水分が黒く描写され、解剖学的状態に近い画像となる。
T2強調 磁場の繰り返し時間を長くすることで、水分が白く描写され、輪郭がはっきりした画像となる。

 

MRI撮影には、次のような特徴があります。

  • 軟部組織構造の描出に優れている。
  • 骨によるアーチファクトが少ない。
  • 空気が存在する領域(肺など)はCTより劣る。
  • 骨の解像度はレントゲン写真やCTより劣る。

MRIといえども万能の検査ではない

MRIは、頭部(脳動脈・脳実質)の検査や、脊椎、四肢などの関節軟部組織の描出を得意とする検査方法です。骨に囲まれた部分のアーチファクト(虚像)が出にくいので、内部の質的評価を行う場合に優位性を発揮します。

 

その一方で、骨折の治癒過程の判断には適しておらず、骨の解像度は、レントゲン写真やCTより劣ります。骨や関節面の形態変化を評価する場合には、レントゲン写真やCTに優位性があり、関節内骨折の評価は、CTさえ不要で、レントゲン写真の両側撮影だけで事足りるケースが多いといわれます。
(参考:濱口裕之・メディカルコンサルティング合同会社代表医師『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル26ページ)

 

なお、不顕性骨折(初診時にレントゲン写真で確認できない骨折)には、MRI検査が有効です。単純X線像やCT像では骨折線が認められない場合でも、MRI像において、わずかな骨髄内の浮腫や出血が確認されることで、骨折を判断できるからです。

後遺症が残るときは特に注意

後遺症が残るときは、後遺障害等級が認定されるか否かによって、賠償額が大きく違います。後遺障害等級の認定を受けるには、後遺症の存在を証明しなければなりませんから、適切な検査を行っておく必要があるのです。

 

検査は、もちろん治療のために行うものです。しかし、交通事故の場合は損害賠償が絡むため、症状の原因や存在を証明するためにも必要なのです。

 

交通事故後遺症でよく問題となる頸椎捻挫(むち打ち)の場合、レントゲン写真(単純X線像)だけでは、後遺障害が認定されたとしても、最も低い14級9号どまりです。それより高い後遺障害等級の認定を受けるには、頸椎MRIが必須とされています。

 

ただし、MRI検査をすれば、すべての症状の原因や存在を証明できるわけではありません。先に説明したように、MRI検査も万能ではありません。症状や部位によっては、レントゲン写真やCTの撮影の方が望ましい場合も多いので、ご注意ください。大切なのは、その症状の原因や存在を証明できる検査です。

まとめ

MRI撮影をすれば、どんな後遺症でも存在を立証でき、後遺障害が認定されるわけではありません。

 

レントゲン、CT、MRIにはそれぞれ長所・短所がありますから、症状の原因と存在を明らかにするために最適な検査を行うことが必要です。そのことが、適切な後遺障害等級の認定に結びつき、損害賠償額アップにつながります。

 

症状に見合った最適な後遺障害等級の認定を受けるために、どんな検査が必要かは、医師よりも弁護士の専門分野となるので、早い段階で交通事故に詳しい弁護士に相談し、弁護士のサポートを受けながら治療を進めるとよいでしょう。

 

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【参考文献】
・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集―交通事故編―』第一法規 95ページ
・『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 24~27ページ
・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 64ページ
・北海道大学病院Webサイト https://www2.huhp.hokudai.ac.jp/~houbu-w/x-ray.html
・東京大学医学部附属病院予防医学センターWebサイト https://www.todai-yobouigaku-dock.jp/contents/useful/column/2022/07/post-26.html

公開日 2024-10-16 更新日 2024/11/01 12:01:49