交通事故での「むち打ち症」の通院治療はココに注意!

交通事故での「むち打ち症」の通院治療はココに注意!

交通事故でのむち打ち症(むち打ち損傷)は、治療費の支払いや後遺障害の認定をめぐって、保険会社と揉めやすいので要注意です。

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むち打ち症の治療の注意点

 

むち打ち症(むち打ち損傷)は、多くの場合、自覚症状のみで、他覚的所見がありません。そのため、保険会社との間で、治療費の支払いや後遺障害の有無などをめぐってトラブルになりがちです。

 

むち打ち症の治療では、注意すべき点がいくつかあります。

 

むち打ち症で治療を受けるときの注意点

むち打ち症(むち打ち損傷)は、ほとんどの場合に自覚症状のみで他覚的所見に乏しいため、痛みなど症状の原因や存在を客観的に明らかにすることが困難です。そのため、保険会社による一括払いがされている場合には、治療費支払いの打ち切りのリスクがあり、後遺症が残る場合には、後遺障害の認定に困難をともないます。

 

なので、むち打ち症で治療を受けるときには、完治を目指しつつも、万が一にも後遺症が残る場合に備え、後遺障害の認定を見据えて、次の点に注意が必要です。

 

  1. 事故後すぐに病院で診療を受ける
  2. 少しの違和感であっても医師に伝える
  3. 通院は週2回~3回の頻度でブランクなく6ヵ月以上
  4. 必要な検査を受ける
  5. 整骨院・接骨院は避ける

 

事故後すぐに病院(整形外科)に通う

交通事故で受傷したときは、事故後すぐに、病院にかかることが大切です。これは、むち打ち損傷にも当てはまります。むち打ち損傷は、事故の翌日あるいはそれ以降に症状が出現することも多いので、違和感を感じたら、速やかに病院で診療を受けることが重要です。

 

事故から通院開始まで1週間以上も空いてしまうと、事故との因果関係が問題となり、保険会社が治療費を支払わないことがあります。後遺障害の認定も難しくなります。

 

少しの違和感であっても医師に伝える

初診のとき、少しでも違和感が感じられるところは、漏らさず、自覚症状を医師に伝えることが大事です。

 

自分の判断で症状が重いと感じている部分のみを医師に伝えるというケースはよくありますが、急性期に症状を伝えていないと、あとから症状を訴えて診療記録に記載されても、事故との因果関係が否定されてしまう恐れがあります。

 

また、通院の都度、症状の部位と程度を医師にしっかりと伝えることも大事です。急性期以降、症状を訴えないと、途中から傷病名の記載がなくなってしまうこともあるので、そこで症状がなくなった、すなわち完治した、と保険会社に判断されてしまう恐れがあります。

 

症状は、例えば「首のここが痛い」というように、端的に訴えることが大切です。

 

通院は週2回~3回の頻度でブランクなく6ヵ月以上

むち打ち損傷による傷病の場合、受傷直後は安静を指示されることもありますが、その後は、リハビリ治療を行うことが一般的です。

 

むち打ち損傷は他覚的所見が乏しく、症状の客観的な評価が難しいため、後遺障害等級の認定を受ける際には、通院期間や通院頻度が重要な判断要素の1つとなります。

 

自賠責保険で後遺障害が認定されるのに必要な通院期間は、最低6ヵ月といわれています(『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 84ページ)。通院期間が5か月だと、後遺障害に認定される可能性は極めて低くなります。

 

さらに、むち打ち損傷の場合、通院頻度も重要です。自賠責保険で後遺障害に認定されるには、毎月10回以上、合計で60日~80日の通院日数が必要ともいわれます(同前 85ページ)。通院頻度が少ないと、症状が軽かったと自賠責保険から評価されてしまうからです。逆に、毎日通院するなど通院日数が多すぎるのも問題です。治療費がかかりすぎることになるので、治療費打ち切りのリスクが高まります。

 

また、通院を中断しないことも大切です。通院に1ヵ月も2ヵ月もブランクがあると、その前後の通院日数が多くても、後遺障害の認定を受けることは難しくなります。

 

もっとも、こうした後遺障害の認定基準が公表されているわけではなく、この通院期間・通院頻度をクリアすれば、後遺障害が必ず認定されるというわけではありません。それでも、重要な目安とされているようです。

 

事故時の衝撃が大きく、後遺症が残りそうなときは、週2~3回(月10日程度)の頻度で、6ヵ月(半年)以上通院することが必要です。

 

必要な検査を受ける

むち打ち損傷は、画像検査では異常所見がみられないことが多いのですが、後遺障害の認定を受けるには、画像検査が不可欠です。たいてい、レントゲン写真は撮影するでしょうが、できればMRI検査も行っておくとよいでしょう。

 

MRIは軟部組織の撮影に優れています。むち打ち損傷は「頸部軟部組織の損傷」とされていますから、軟部組織の異常を見つけるのに、MRI撮像は有効なのです。ただし、むち打ち損傷は、MRI撮像でも異常が見られないことがほとんどです。

 

MRIは、設備のない病院もあり、必ずしも撮影しなければならないものではありませんが、万が一、症状の原因が頸椎捻挫以外にあった場合に、早期発見・早期治療につながります。

 

MRI検査は、後遺障害の認定にも有効です。MRIまで撮影するということは、「MRIによる精密検査をする必要があった」と、保険会社に対して主張することができるからです。

 

むち打ち症による後遺障害等級は、14級9号か12級13号です。後遺障害等級14級9号認定には、MRI画像での異常所見までは必ずしも必要ありませんが、12級13号認定のためには、頸椎MRIはほぼ必須化しています。レントゲン写真(単純X線)だけでは、最も低い14級9号しか認定されません。(『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 25ページ)

 

MRI撮影費用は比較的高額なので、後遺障害の認定に備え、保険会社が治療費を支払っている期間中に、主治医に相談し、MRI撮影をしておくとよいでしょう。

 

整骨院や接骨院への通院は避ける

整骨院や接骨院での施術は、整形外科での治療と異なり、損害賠償において評価が低くなります。

 

整形外科の医師の許可や同意を得て、整骨院や接骨院へ補助的に通院するならまだしも、整骨院や接骨院への通院がメインになってしまうと、かえってマイナスとなることもあります。

 

交通事故で整骨院や接骨院へ通院することには、例えば次のようなリスクがあります。

 

交通事故で整骨院や接骨院に通院するリスク
  • 整骨院や接骨院の施術費は、整形外科での治療費よりも高額となりやすく、保険会社から治療費の支払いを打ち切られるリスクが高まります。
  • 整骨院や接骨院では後遺障害診断書が書けず、整骨院や接骨院への通院がメインとなっていたら、整形外科の医師も後遺障害診断書が書けません。結果、後遺障害の認定を受けることができず、後遺症に対する損害賠償を受けることができなくなります。
  • 整骨院や接骨院での施術は、病院での治療と同等に評価されないため、整骨院や接骨院に通って病院への通院日数が減ると、通院日数の不足で後遺障害が認定されなくなります。通院日数は、休業損害や傷害慰謝料の算定にも影響を及ぼすため、損害賠償額が減ってしまいます。

 

こうしたリスクを避けるため、整骨院や接骨院への通院はおすすめできません。

 

どうしても整骨院や接骨院へ通院したい場合は、整形外科の医師の許可や同意を得たうえで通うことが大切です。その際、整骨院・接骨院での施術部位が、整形外科での治療部位より増えないように気をつけましょう。施術部位が増えと、保険会社は、過剰診療として施術費の支払いを拒否することがあります。

 

まとめ

むち打ち症(むち打ち損傷)は、大半は単純な頸部軟部組織の捻挫で、それほど重篤なものとは捉えられていません。

 

しかし、むち打ち症の発症メカニズムは、いまだ明らかでありません。他覚的所見に乏しく、自覚症状のみのケースがほとんどなので、治療の必要性、症状固定時期や後遺障害の有無をめぐって争いになることが少なくありません。

 

適正な損害賠償を受けるには、治療の段階から早めに、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

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【参考文献】
・『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 63~67ページ、119~121ページ
・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社 26~35ページ、46~62ページ、127~128ページ
・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 176~181ページ
・『賠償科学概説』民事法研究会 108~123ページ

公開日 2025-02-11 更新日 2025/03/04 06:53:29