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脊柱の骨折による後遺障害は、変形障害と運動障害に分けられます。脊柱の変形とは、骨折や脱臼によって背骨の形が変わることですが、それだけでなく、脊椎の手術によって形が変わることも、後遺障害として認定されます。
ここでは、脊柱の変形障害・運動障害の後遺障害等級とその認定基準について、詳しく解説します。
脊柱の後遺障害は、変形障害・運動障害につき次のように等級が定められています(自賠法施行令別表第二)。
| 等級 | 後遺障害 | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|
| 第6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの | 67/100 |
| 8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの | 45/100 |
| 第11級7号 | 脊柱に変形を残すもの | 20/100 |
「脊柱に中程度の変形を残すもの」は、後遺障害等級表に規定はありませんが、等級認定実務において、6級「脊柱に著しい変形を残すもの」と11級「脊柱に変形を残すもの」の中間に8級相当として加え、3段階で認定しています。
| 等級 | 後遺障害 | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|
| 第6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの | 67/100 |
| 第8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの | 45/100 |
表中の労働能力喪失率は、労働能力喪失率表の標準喪失率です。脊柱障害は、これより低い喪失率とされるケースが多くあります。
それでは、後遺障害等級の認定基準について見ていきましょう。

後遺障害としての脊柱障害は、頸部および体幹の支持機能と運動機能に着目したものです。
そのため、解剖学上、脊柱は、頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨から形成されますが、頸部や体幹の支持機能等を有していない仙骨および尾骨については、後遺障害の認定にあたって、脊柱に含みません。
また、頸椎と胸腰椎とでは、主たる機能が異なることから(頸椎は主として頭部の支持機能、胸腰椎は主として体幹の支持機能を担っています)、脊柱の後遺障害等級の認定にあたっては、原則として頸椎と胸腰椎は異なる部位として取り扱い、それぞれの部位ごとに等級を認定します。
頸部と胸腰部のそれぞれに脊柱の変形障害または運動障害がある場合には、併合の方法を用いて相当する等級を定め、頸部に複数の脊柱障害がある場合は、いずれか上位の等級で認定します。
なお、脊柱の変形障害・運動障害が後遺障害として等級認定されるには、いずれも画像診断(XP・CT・MRI)で、障害の原因となる脊椎圧迫骨折等を確認できることが前提です。
脊柱の変形障害や運動障害の認定基準の説明において、「脊椎圧迫骨折等」「X線写真等」という表現が出てきます。「脊椎圧迫骨折等」には、脊椎圧迫骨折のほか、脱臼等が含まれます。「X線写真等」には、X線写真、CT画像、MRI画像が含まれます。
脊柱の変形障害は、「脊柱に著しい変形を残すもの(6級)」、「脊柱に中程度の変形を残すもの(8級)」、「脊柱に変形を残すもの(11級)」の3段階で、後遺障害等級が認定されます。
6級「脊柱に著しい変形を残すもの」と8級「脊柱に中程度の変形を残すもの」については、脊柱の後彎または側彎の程度等によって等級を認定し、これらに達しない変形で一定の要件を満たすものは11級「脊柱に変形を残すもの」に認定されます。
| 後彎 | 脊柱が背中側に突出するカーブを呈している状態 |
|---|---|
| 側彎 | 脊柱が体の正面から見て左右方向に彎曲した状態 |
また、これらとは別に、環椎(第1頸椎)または軸椎(第2頸椎)の変形・固定は、個別の要件により8級が認定されます。環軸椎は、第3頸椎以下と異なる形をしているため、同じ測定方法を使えないからです。

脊椎変形障害として後遺障害認定されるには、X線写真等により脊椎圧迫骨折等を確認できることが前提です。
従前は、6級5号(脊柱に著しい奇形を残すもの)と11級7号(脊柱に奇形を残すもの)の2段階で格付けされ、6級は「レントゲン写真上明らかな脊椎圧迫骨折または脱臼等に基づく強度の亀背・側弯等が認められ、衣服を着用していても、その変形が外部から明らかにわかる程度以上のもの」とされ、外見による該当判断が行われていました。
労災認定基準の平成16年の改正にともない、第6級5号「脊柱に著しい変形を残すもの」と第11級7号「脊柱に変形を残すもの」の中間に8級相当「脊柱に中程度の変形を残すもの」を加え、3段階で認定することになるとともに、判定方法の客観化がなされました。
脊柱の後彎・側彎の程度は、次のように測定し判定します。
脊柱の後彎の程度は、脊椎圧迫骨折等により変形した椎体につき、前後の椎体高を比較し、前方椎体高の後方椎体高に対する減少度を測定し判定します。

上図は、3個の椎体が変形した状況のイメージ図です。変形により、3個の椎体の前方椎体高は、それぞれa、b、cとなり、これに対する後方椎体高はA、B、Cです。
変形した椎体の前方椎体高の合計(a+b+c)と、後方椎体高の合計(A+B+C)の差Xが、後方椎体高の1個当たりの高さY((A+B+C)÷ 3 )以上、ないしYの50%以上であることが要件となります。
X=(A+B+C)ー(a+b+c)
Y=(A+B+C)÷3
X≧Y ⇒ 後彎のみで著しい変形
X≧0.5Y ⇒ 側彎も合わせれば著しい変形
つまり、変形がない(あるいは少ない)側の「椎体高の平均」の1個以上ないし50%以上の変形が、変形した側の椎体高全体にあるかどうかで判定されます。
脊柱の側彎は、コブ法による側彎度で判定します。コブ法とは、X線写真により、脊柱のカーブの頭側および尾側において、それぞれ水平面からもっとも傾いている脊椎を特定し、頭側で最も傾いている脊椎の椎体の上縁の延長線と、尾側で最も傾いている脊椎の椎体の下縁の延長線が交わる角度(側彎度)を測定する方法です。

それでは、脊柱の変形障害につき、各等級の認定基準を見ていきましょう。
「脊柱に著しい変形を残すもの」とは、X線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認できる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。
「脊柱に中程度の変形を残すもの」とは、X線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認できる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。
認定基準①の「前方椎体高の減少度」と認定基準②の「側彎度」の要件は、6級「著しい変形」の認定基準②の「前方椎体高の減少度」と「側彎度」についての要件と同じです。すなわち、「後彎の程度」および「側彎の程度」とも基準を満たせば「著しい変形」として6級が認定され、いずれか一方のみ基準を満たす場合には「中程度の変形」として8級が認定されます。
認定基準③は、環軸椎損傷による脊柱変形障害の等級認定基準です。
環椎(第1頸椎)と軸椎(第2頸椎)は、第3頸椎以下と異なる形をしているため、前方椎体高の減少の程度によって評価することも、コブ法による評価も困難です。そのため、異なる評価方法が採られています。
環椎には椎体がなく、前弓と後弓より構成され、文字どおり環状を呈しています。軸椎は、椎体の上端に歯突起があります。この上位頸椎部(第1・第2頸椎)は、大きな可動性を有し、環軸椎間で左右それぞれ40度の回旋可動域があり、全頸椎回旋可動域の50%以上を占めるとされます(『標準整形外科学第14版』医学書院507~508ページ)。

環椎または軸椎については、X線写真等で脊椎圧迫骨折等による変形が確認できる場合、もしくは環椎と軸椎との固定術が行われた場合は、いずれも環軸椎そのものの可動域はほとんど失われるか固定となることから、認められる変位に応じ、以下の要件に該当する場合は8級相当、該当しない場合は11級と判定されます。
なお、軸椎の歯突起は、頭部の支持機能に関係がないことから、その変形は後遺障害として評価しません。
環軸椎は、頸椎全体による可動範囲の相当の割合を担っているため、上記の認定基準③に該当する変形・固定となると、同時に「脊柱に運動障害を残すもの」(第8級2号)にも該当するケースがほとんどとされています(『労災補償障害認定必携第17版』238ページ)。
「脊柱に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
事故による脊椎圧迫骨折等がX線写真等により確認できれば、変形が軽度でも11級の変形障害が認定されます。
脊椎固定術により2椎体以上の脊椎間が骨等の移植によって癒合変形した状態について、脊柱の変形と評価します。ただし、脊椎固定術を行ったものの中には、移植した骨等が治癒時には吸収されるなどして2椎体以上の脊椎間が癒合しないものがありますが、このようなケースは除外します。
脊柱を損傷すると、頸部や胸腰部の関節が動かなくなったり、動かせる範囲が狭くなる運動障害を生じることがあります。
脊柱の運動障害と認定されるには、X線写真等で、
ことが前提です。
X線写真等では、脊椎圧迫骨折等または脊椎固定術が認められず、また、項背腰部軟部組織の器質的な変化も認められず、単に疼痛のために運動障害を残すものは、局部の神経症状(12級または14級)として等級認定されることになります。
脊柱の運動障害は、6級「脊柱に著しい運動障害を残すもの」、8級「脊柱に運動障害を残すもの」の2段階で、後遺障害等級が認定されます。
関節の機能障害は、障害を残す関節の可動域を測定し、原則として健側の可動域角度と比較することにより、関節可動域の制限の程度を評価します。例えば、手や足などの可動域制限については、障害が生じた側と生じていない側(健側)の可動域を比較します。
しかし、脊柱の場合は、比較すべき対象がありませんから、「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」に定める参考可動域角度と比較して、関節可動域の制限の程度を評価することになります。
関節の運動は、主要運動、参考運動、その他の運動に区別されます。主要運動と参考運動は「測定要領」に示されており、この主要運動と参考運動の可動域制限が評価の対象となります。これ以外の運動に可動域制限が生じていても、評価対象となりません。
主要運動とは、関節における日常の動作にとって最も重要なものをいい、関節の機能障害は、原則として主要運動の可動域の制限の程度によって評価します。ただし、一定の場合には、主要運動および参考運動の可動域制限の程度によって評価します。脊柱運動障害8級の認定基準に、このケースがあります。
| 部位 | 主要運動 | 参考運動 |
|---|---|---|
| 頸部 | 屈曲・伸展、回旋 | 側屈 |
| 胸腰部 | 屈曲・伸展 | 回旋、側屈 |
| 屈曲・伸展 | 回旋 | 側屈 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 運動方向 | 屈曲 | 伸展 | 左回旋 | 右回旋 | 左側屈 | 右側屈 |
| 頸部 | 60度 | 50度 | 60度 | 60度 | 50度 | 50度 |
| 胸腰部 | 45度 | 30度 | 40度 | 40度 | 50度 | 50度 |
屈曲と伸展、回旋の左右、側屈の左右の運動は、それぞれ同一面にある運動なので、両者の可動域角度を合計した値をもって、関節可動域の制限の程度を評価します。
「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかにより、頸部および胸腰部が強直したものをいいます。
関節の強直とは、関節の完全強直(関節が全く動かない状態)またはこれに近い状態にあるものをいいます。この場合、「これに近い状態」とは、主要運動のすべてが参考可動域角度の10%程度以下に制限されるか、関節可動域が10度以下に制限されるか、いずれかの状態です。
「10%程度」とは、参考可動域角度の10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度です。例えば、頸部の回旋運動に大きな可動域制限がある場合、回旋運動の参考可動域角度は120度(左回旋60度+右回旋60度)ですから、120度の10%を5度単位で切り上げた15度以下であれば、頸椎の強直となります。
この強直が、頸部と胸腰部の両方に生じているときに、「著しい運動障害を残すもの」として後遺障害等級6級が認定されます。
「脊柱に運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
単なる運動障害は、頸部または胸腰部のいずれかに可動域の制限(参考可動域角度の1/2以下)があれば認定されます。
頸部は、主要運動が「屈曲・伸展」と「回旋」の2種類ありますが、いずれか一方の可動域が、参考可動域角度の1/2以下に制限されているときは、8級に認定されます。
頸椎または胸腰椎の主要運動の可動域制限が、参考可動域角度の1/2をわずかに上回る場合には、頸椎または胸腰椎の参考運動が1/2に制限されているときは、8級に認定されます。
この場合、「わずかに上回る」とは、頸部は10度、胸腰部は5度です。また、参考運動が複数ある場合は、そのうちの1つの参考運動の可動域が、参考可動域角度の1/2以下に制限されていれば足ります。
なお、参考運動が複数ある関節は、1つの参考運動の可動域角度が上記のとおり制限されていることをもって足りるとされています。
(「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」『労災補償障害認定必携第17版』286~287ページ)
脊柱は、体位保持のための支柱としての機能を果たすものです。荷重機能障害とは、体位保持が困難な状態です。荷重機能障害は、脊椎に骨折や脱臼が生じ、その部分の支持性が失われた場合や、脊柱を支える筋肉に麻痺等が生じ、脊柱の支持力が弱くなったり、失われたりした場合に生じます。
荷重機能障害は、後遺障害等級表に該当するものがなく、相当等級として認定されます。
荷重機能障害については、その原因が明らかに認められる場合であって、そのために頸部および腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするものを6級相当、頸部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするものを8級相当の運動障害として取り扱います。
荷重機能障害の原因が明らかに認められる場合とは、脊椎圧迫骨折・脱臼、脊柱を支える筋肉の麻痺または項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化が存し、それらがX線写真等により確認できる場合をいいます。
脊柱の変形障害は、その程度により、6級(著しい変形)、8級相当(中程度の変形)、11級(変形)の3段階で後遺障害等級が認定されます。
脊柱の運動障害は、その程度により、6級(著しい運動障害)、8級(運動障害)の2段階で後遺障害等級が認定されます。
なお、変形障害も運動障害も後遺障害認定においては、X線写真等により脊椎圧迫骨折等を確認できることが必須です。
ただし、画像診断により脊椎圧迫骨折などを確認できても、事故との因果関係が争点となることもあるし、等級認定されても、労働能力喪失率が争点となることがあります。
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【参考文献】
・厚生労働省「整形外科の障害認定に関する専門検討会報告書」平成16年2月
・厚生労働省労働基準局長通達「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」平成16年6月4日基発第0604003号
・『労災補償障害認定必携第17版』一般財団法人労災サポートセンター229~242ページ、283~297ページ
・『詳説後遺障害』創耕舎33~34ページ
・『Q&A交通事故の示談交渉における保険会社への主張・反論例』日本加除出版株式会社102~104ページ
・『交通関係訴訟の実務』商事法務206~208ページ
・『被害者側弁護士のための交通賠償法実務』日本評論社511~513ページ
・『交通事故医療法入門』勁草書房259~265ページ
・『改訂版後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規545~573ページ
・『新版注解交通損害賠償算定基準』ぎょうせい227~229ページ