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労働能力喪失期間は、原則として症状固定日から就労可能年限の67歳までです。
ただし、むち打ち症を典型とする後遺障害等級14級や12級の局部の神経症状など一部の後遺障害では、労働能力喪失期間を5年ないし10年に限定される場合があります。
ここでは、労働能力喪失期間がどのように決まるのか説明します。
後遺障害は、回復せず障害が残ること(永久残存性)が前提ですから、労働能力喪失期間は、原則として就労可能年限まで認められます。
労働能力喪失期間の始期・終期について、具体的に見ていきましょう。
労働能力喪失期間の始期は、原則として症状固定日です。
未就労者の場合には、就労開始は18歳(高校卒業時)とするのが一般的です。大学等に在学している場合は、その卒業時となります。
未就労者の逸失利益の算定は、就労可能期間の始期を18歳としたうえで、基礎収入は賃金センサスの学歴計・全年齢平均賃金を使用するのが原則です。
大卒の平均賃金を基礎収入として主張する場合は、就労の始期は22歳以上となり、大学院卒や医学部卒の基礎収入を主張する場合は、就労の始期は24歳以上となります。
年少者の逸失利益の算定方式については「三庁共同提言」をご覧ください。
「大学入学前の年少者が、大学卒業を前提に逸失利益を算定することができるか?」については、これを肯定した裁判例もありますが、それほど一般的ではないようです。
ポイントは、大学進学・卒業の蓋然性をいかに証明するかです。
大学卒業で逸失利益を計算した方が賠償額が増えそうに思えますが、そうとも限りません。就労開始が22歳となり、就労可能年数(=労働能力喪失期間)が少なくなるからです。就労の始期を18歳にする場合と22歳にする場合とで、いずれの逸失利益が高くなるかにも留意が必要です。
労働能力喪失期間の終期は、原則として67歳です。就労可能年限(就労可能期間の終期)を67歳とするのが一般的だからです。
症状固定時の年齢が67歳を超える場合は、原則として、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。
症状固定時から67歳までの年数が、平均余命年数の2分の1(小数点以下切上げ)より短くなる場合、労働能力喪失期間は、原則として平均余命の2分の1とします。
自賠責保険の支払基準(令和2年(2020年)4月改定)の別表Ⅱー1「就労可能年数とライプニッツ係数表」では、52歳が境です。52歳未満は、年齢と67歳との差に相当する年数、52歳以上は、平均余命年数の2分の1の年数が使用されるようになっています。
就労可能期間の終期が67歳とされているのは、昭和40年代に交通事故の損害基準が策定され、当時の第12回生命表(昭和40年・1965年)の0歳男子の平均余命67.74年を採用したものだからです。その理論的根拠は明確ではありません。

(e-Stat「第1~17回生命表」より)
現在は平均寿命(0歳の平均余命)が延び、第23回生命表(2020年・令和2年)の0歳男子の平均余命は81.56年です。

(厚生労働省「第23回生命表」より)
また、令和3年4月1日施行の改正高年齢者等の雇用の安定等に関する法律は、事業主に対し、70歳までの定年引上げ等を講じる努力義務を新設しました(同法10条の2)。
高齢者の就業率は年々上昇しており、65~69歳で5割を超えています。2025年の労働力調査では、65~69歳の就業率は男女計で54.5%(男63.4%、女46.1%)となっています。
これらをふまえると、労働能力喪失期間の終期を67歳から70歳に引き上げることは十分に考えられます。
実際、就労可能年数の終期を70歳以上とした裁判例もあります。
自賠責保険では、後遺障害は一生涯「回復しない」(永久残存性)という性質を前提としているので、労働能力喪失期間は、原則として就労可能年限まで認められます。
したがって、自賠責保険では、後遺障害と認められた以上、最も程度の軽い14級の後遺障害であっても、「回復が困難」と見込まれることから、就労可能年限までの逸失利益の発生が認められるのです。
ただし、例外があります。それは、非器質性精神障害の場合です。
非器質性精神障害については、その特質上、症状の改善が見込まれることを「後遺障害認定基準」自体が前提としているので、労働能力喪失期間が限定される場合があるのです。
非器質性精神障害について、後遺障害の認定基準に次のような注意書があります。
(『労災障害認定必携第17版』153~154ページ)
なお、本来、後遺障害は永久残存性を要件としていますが、認定基準において症状の改善が見込まれることを前提としていることは、非器質性精神障害については、永久残存性が認められなくても、後遺障害として認定され得るということです。
民事損害賠償においても、原則として就労可能年限までの労働能力の喪失が認められます。
ただし、比較的軽度の機能障害や神経障害については、訓練や慣れにより症状が緩和され、労働能力への影響が逓減する可能性があることから、このよな可能性が具体的に認められる場合には、労働能力喪失期間を限定して認定することがあります。
具体的には、次のような場合です。
むち打ち症の場合には、症状の軽減・馴化による労働能力の回復が見込まれるとして、12級13号(局部の神経症状が他覚的に証明されるもの)で10年程度、14級9号(局部の神経症状が医学的に説明可能なもの)で5年程度に制限されることが多くあります。
むち打ち症以外の後遺障害12級または14級の局部神経症状の場合には、労働能力喪失期間を限定するかどうかについて、裁判例は分かれています。
14級9号が認定された局部の疼痛について、労働能力喪失期間を短縮する例がみられるものの、5年に短縮される傾向があるとはいえず、12級13号が認定された骨折部の疼痛につき、年齢、障害内容、就労への影響等を考慮して、労働能力喪失期間を短縮せず、67歳まで認めるものも少なくないようです。
最近の傾向としては、「むち打ち損傷のような特殊な場合を除き、労働能力喪失状態が継続するとして扱う例が多数」とされています(『要約交通事故判例140』学陽書房200ページ)。
うつ病やPTSDなどの非器質性精神障害については、完治や症状の軽減が見込まれるとして、労働能力喪失期間が5年ないし10年程度の制限されることがよくあります。
もっとも、症状が消退するかは不明であるのが通常であり、期間制限をしない例も少なくありません。
外貌醜状は、「年齢とともに就労への影響は変化していく」(東京地裁平成27年1月20日判決)等として、労働能力喪失期間が制限されたり、一定期間経過後に労働能力喪失期間が逓減されたりする例が見られます。
他方、「将来回復する見込みは乏しい」(名古屋地裁平成31年1月23日判決)等として、期間制限をしない例もあります。
変形障害に伴う神経症状に着目して労働能力の喪失が認められる場合、特に若年者について「疼痛は馴化してゆく」として期間制限や逓減を認める例が見られます。
しかし、「器質的な原因があるから、馴化等により労働能力の回復が認められるものではない」(京都地裁平成27年3月19日判決)として、期間制限や逓減を認めない例の方が多数です。
後遺障害は、本来、一生残る(回復が見込めない)ものであるので、労働能力喪失期間の終期は、原則として就労可能期間の終期となります。
ただし、軽度の後遺障害で、具体的に回復の可能性が認められる場合には、労働能力喪失期間を制限されることがあります。
なお、就労可能期間の終期は、通常67歳とされますが、被害者の年齢・職種などによっては、70歳以上が認められる場合があります。
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【参考文献】
・『詳説後遺障害』創耕舎62~63ページ
・『後遺障害入門』青林書院4~5ページ、21~22ページ
・『改訂版交通事故事件の実務』新日本法規117~119ページ
・『被害者側弁護士のための交通賠償法実務』日本評論社410~412ページ
・『新版注解交通損害賠償算定基準』ぎょうせい183~190ページ
・『交通関係訴訟の実務』商事法務193~196ページ、200~201ページ
・『簡易裁判所における交通事故訴訟と和解の実務』新日本法規194~196ページ
・『交通賠償のチェックポイント第3版』弘文堂155~158ページ
・『概説交通事故賠償法第3版』日本評論社246~250ページ
・『要約交通事故判例140』学陽書房197~202ページ
・『労災補償障害認定必携第17版』一般財団法人労災サポートセンター153~154ページ