任意自動車保険(対人賠償責任保険)の被害者直接請求権

任意自動車保険(対人賠償責任保険)の被害者直接請求権

対人賠償責任保険(任意保険)には、通常、被害者直接請求権が導入されており、被害者は、加害者が加入している任意保険会社に対し、損害賠償額の支払いを直接請求することができます。

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どんな場合に直接請求できるか?

被害者直接請求権は、対人事故により、被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合に、保険会社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、行使することができます(普通保険約款・賠償責任条項11条1項)


行使要件

被害者直接請求権の行使要件は、次の2つを充たすことです。


  • 対人事故により、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担すること
  • 保険会社が被保険者に対して支払責任を負うこと


この2つの要件が充たされたときに、被害者は、加害者の加入する任意保険会社に対して、損害賠償額の支払いを直接請求することができます。被保険者が自身の保険会社に請求するのは保険金の支払いですが、被害者が相手方保険会社に請求するのは、損害賠償額の支払いです。


被害者が直接請求権を行使する場合に、被保険者の同意は不要です。被保険者が同意しないときであっても、被害者は直接請求権を行使することができ、保険会社は被害者に損害賠償額を支払うことになります。


約款において、被害者が保険会社に直接請求できるのは、保険会社が「被保険者に対して支払責任を負う限度において」とされています。「支払責任を負う限度において」とは、保険会社が、当該事故について保険金支払義務を負う場合であって、かつ、その支払額が保険金額の範囲内である場合をいいます。


対人賠償責任保険の保険金額は「無制限」としているのが一般的でしょう。保険金額が「無制限」の場合は問題ないのですが、相手が保険金額に上限を設けている場合には、被害者が直接請求したときも、その金額までしか保険会社からは支払われません。


直接請求できない場合とは?

上記の行使要件を充たさない場合は、直接請求できません。具体的には、次のようなケースの場合です。


  • 無責事故の場合
    被保険者が無責である場合(例えば、被保険者が自賠法3条ただし書の3条件を立証することができる場合)には、被保険者は損害賠償責任を負わず、保険会社は被保険者に対して支払責任を負わないので、被害者直接請求はできません。
  • 免責事故の場合
    損害賠償責任を負担するが免責となる場合(例えば、運転者の年齢条件に該当しない者が運転中に対人事故を起こした場合)には、保険会社は被保険者に対して支払責任を負わないので、被害者直接請求はできません。
  • 自賠内事故の場合
    被保険者の負担する損害賠償責任の額が自賠責保険の支払額の範囲内に収まる場合には、保険会社は被保険者に対して支払責任を負わないので、被害者直接請求はできません。
  • 保険金額を超える事故の場合
    被保険者の負担する損害賠償責任の額が保険金額を超える場合、その超える部分については、保険会社は被保険者に対して支払責任を負わないので、被害者直接請求はできません。

どんな場合に支払われるか?

保険会社は、被害者から直接請求を受けた場合、次のいずれかの条件に該当するときは、損害賠償額を支払います。逆にいえば、次のいずれかの条件に該当する場合でなければ、行使要件を充たしていても、保険会社から損害賠償額の支払を受けられません。


ただし、「当会社がこの賠償責任条項および基本条項に従い被保険者に対して支払うべき保険金の額を限度」とされています(普通保険約款・賠償責任条項11条2項)


損害賠償額が確定した場合

判決の確定、裁判上の和解、調停、書面による合意(いわゆる示談)の成立いずれでもよいのですが、被保険者が被害者に損害賠償すべき金額が具体的に確定されることが必要です。


損害賠償請求権不行使を書面で承諾した場合

被害者が保険会社から損害賠償額の支払いを受けた後、その余の損害賠償請求権を行使しない旨を、被保険者宛ての書面で承諾することを支払条件として規定しています。


この規定は、被保険者が保険会社による示談代行に同意せず、被害者との交渉にも応じない場合などに備えたものであり、保険会社への直接請求に際して、被害者に承諾書を提出させることを条件づけるものではありません。


被保険者が保険会社による示談代行に同意せず、被害者との交渉にも応じない場合には、被害者は保険会社を直接の交渉相手とするほかありません。そこで、保険会社は、被害者から被保険者宛の免責証書(債権を放棄し、債務を免除することを記した書面)の提出と引き換えに損害賠償額を支払うというわけです。


これは、被保険者の負担する損害賠償責任の額を事実上確定することにほかなりません。


損害賠償額が保険金額を超えることが明らかになった場合

保険会社が支払う損害賠償額が、被保険者の保険金額(保険証券記載の保険金額)を超えることが明らかな場合には、保険会社は被保険者の最終的な損害賠償額の確定を待つことなく、保険金額に相当する損害賠償額を被害者に支払います。


被保険者の負担する損害賠償責任の額の確定は、加害者と被害者との間で、保険関係とは別個に、示談交渉などによって行われることになります。保険金額を超える部分について保険会社が示談交渉を行うことは、純然たる他人の法律事務にあたり、弁護士法72条に抵触することになるからです。


被保険者の破産等の場合

法律上の損害賠償責任を負担すべき「すべての被保険者」について、被保険者もしくはその法定相続人の破産、生死不明、または法定相続人の不存在を損害賠償額支払いの条件としています。


このような場合には、被保険者と被害者との間で損害賠償責任の額を確定することが著しく困難または不可能となるので、被害者保護のため、特にこの規定が設けられているようです。

損害賠償額の計算式

被害者が直接請求できる損害賠償額は、「損害賠償責任の額」から、「自賠責保険で支払われる金額」と「被保険者が被害者に既に支払った損害賠償金の額」を差し引いた金額です。


〔損害賠償額〕=〔損害賠償責任の額〕ー〔自賠責保険の支払額〕ー〔被保険者の既払額〕


この計算式で算出される損害賠償額は、保険会社が被保険者に対して支払う保険金の額が上限となります。


  • 「自賠責保険の支払額」については、被保険自動車に自賠責保険の契約が締結されていない場合には、自賠責保険によって支払われる金額に相当する金額となります。
  • 「損害賠償責任の額」は、原則として被害者と被保険者(保険会社が示談代行を行う場合には、被保険者の代理人としての保険会社)の間で確定されます。ただし、「損害賠償請求権不行使の書面による承諾」または「被保険者の破産等」の支払条件に該当する場合には、この方法で損害賠償責任の額を確定することができないので、客観的に公正・妥当な額を被害者と保険会社の間で決定することになります。

自賠責保険の直接請求権との違い

被害者直接請求権は、保険契約者でも被保険者でもない第三者が、保険会社に対して損害賠償額の支払いを請求できるというものです。


自賠責保険における直接請求権は、法律(自賠法16条)によって付与され、免責事由が制限されるなど被害者保護に手厚いものになっています。


これに対し、対人賠償責任保険における直接請求権は、契約上付与されたものなので(第三者のためにする契約〔民法537条])、保険契約上の諸条件による制約を受けます。


すなわち、保険会社は、被害者からの直接請求に対して、免責や各種義務違反による被保険者への制裁の反射的効果を主張できます。例えば、被保険者の故意による自動車事故招致は免責事由に該当するので、被保険者の保険金請求権のみならず、被害者の直接請求権の行使も不可能となります。


約款において、被害者直接請求に対して支払う損害賠償額は、「この賠償責任条項および基本状況に従い被保険者に対して支払うべき保険金の額を限度とします」と定めています(普通保険約款・賠償責任条項11条2項)


これは、これらの条項に定める規定(免責、告知義務・通知義務違反、事故発生時の義務違反などの規定)が、被保険者だけでなく、被害者に対しても適用されることを意味しています。

まとめ

対人賠償責任保険も自賠責保険と同じように、被害者が保険会社に損害賠償額の支払いを直接請求することができます。


ただし、自賠責保険には損害賠償額が確定する前でも仮渡金の制度がありますが、対人賠償責任保険は、基本的に損害賠償額が確定してからでなければ、保険会社から損害賠償額の支払を受けられません。


また、対人賠償責任保険の直接請求権は、保険契約者と保険会社との契約で付与されたものなので、被保険者に義務違反等があり保険金の支払いが制限される場合には、被害者の直接請求においても同じように支払いが制限されます。


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【参考文献】
・『概説交通事故賠償法第3版』日本評論社451~453ページ
・『自動車保険の解説2023』49~56ページ

公開日 2026-03-18 更新日 2026/03/23 02:18:42
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