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任意自動車保険には、相手への賠償責任に備える保険と自身の損害に備える保険があり、備えたいリスクに応じて、補償内容や保険金額を選んで契約することができます。
任意自動車保険は、自動車事故により生じるリスクのうち、自賠責保険でカバーできないリスクに備えるための保険です。
任意自動車保険には、大きく2つの保険があります。
1つは、事故を起こして損害賠償責任が発生したとき、相手に生じた損害を賠償するための保険です。これを責任保険といいます。
もう1つは、自身に生じた損害を補償するための保険です。相手に賠償資力がない場合や自損事故の場合などに活用できます。
それぞれ、人損と物損について、保険があります。次のように分類されます。
人損 | 物損 | |
---|---|---|
相手への賠償 | ・対人賠償責任保険 | ・対物賠償責任保険 |
自身の補償 |
・人身傷害補償保険 |
・車両保険 |
このほか、保険でカバーされる事故の範囲を広げる特約、逆に保険事故を限定して保険料を安くする限定特約があります。最近は弁護士費用特約も普及しています。
各保険の概要を見ていきましょう。
責任保険は、自動車事故により、人を死傷させたり、物を損壊させたりしたりして、損害賠償責任を負ったときに、相手への賠償によって生じる損害を填補する保険です。
つまり、自動車事故を起こして、加害者になったときの賠償責任に備える保険です。
保険法は、責任保険契約について「損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害を填補するものをいう」と規定しています(保険法17条2項)。
任意自動車保険の責任保険には、「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」があります。
対人賠償責任保険は、自動車事故によって他人を死傷させたことにより、法律上の損害賠償責任を負った場合に、自賠責保険で支払われる限度額を超える損害賠償額に対して、保険金を支払う保険です。
人身損害については、自賠責保険からも保険金が支払われますが、自賠責保険には支払限度額があるため、限度額を超える部分を対人賠償保険がカバーする仕組みです。
契約保険金額は、被害者1名あたりです。現在は、賠償額の高額化にともない、保険金額を無制限とする保険契約が主流になっています。
なお、対人賠償は、1事故あたりの保険金額については設定していません。
対物賠償責任保険は、自動車事故によって他人の財物を損傷させたことにより、法律上の損害賠償責任を負った場合に、保険金を支払う保険です。
他人の財物に損害を与えたときは、修理費用や買替費用などのほか、例えば、店舗に車が突っ込んだ場合の休業損害や営業損失、相手がトラックやタクシーなど業務車両だった場合の休車損害などが発生します。このような相手の直接的・間接的損害を補償する保険です。
契約保険金額は、1事故あたりです。複数の相手に損害を与えたときは、それらの合計額について、契約保険金額を限度に支払われます。
契約保険金額が、対人賠償は被害者1名あたりであるのに対し、対物賠償は1事故あたりです。基準が異なりますから、注意が必要です。
対人・対物賠償責任保険は、「他人」に損害を与え、賠償責任が生じた場合に損害賠償を補償するものです。
ここで注意が必要なのは、自賠責保険と任意保険では、「他人」の定義が異なること。自賠責保険では、運行供用者以外は家族であっても「他人」ですが、任意保険では、家族は「他人」に該当しません。
任意保険では、同居する親族は経済的に同一と見なされ、同一生計の家族に対する損害賠償のための保険金支払いは、適切でないと考えられているからです。
任意保険と自賠責保険では「他人」の範囲が異なり、任意保険は、相手が家族の場合や家族が所有・管理する物の損害は免責になるので注意が必要です。
例えば、事故の相手が配偶者の車だった場合や、自宅で車庫入れの際に家族を轢いてしまった、自宅の車庫にぶつけて壁やガレージが破損したという場合には、対人・対物保険金は支払われません。
現在の対人・対物賠償保険は、示談代行サービス付きが一般的です。被保険者の同意があれば、保険会社が、被保険者の代理人として、被害者との示談交渉、調停、訴訟を行い、損害賠償額を確定させて解決するサービスです。
そのため、被害者は、保険会社の担当者と示談交渉することになります。
なお、示談代行は「保険会社が被保険者に対して支払責任を負う限度」で行うものです。なので、被保険者が法律上の損害賠償責任を負わない事故(無責事故)や免責条項に該当する事故(免責事故)など、保険会社が支払い責任を負わない場合には、保険会社は示談代行できません。
また、被保険者が保険会社による示談代行に同意しない場合、被害者が保険会社と直接交渉することに同意しない場合なども、保険会社が示談代行することはできません。
自身の損害に備える保険には、保険契約している自動車(被保険自動車)の運転者・同乗者が死傷した場合などの損害(人損)を補償する「傷害保険」と、被保険自動車の損害(物損)を補償する「車両保険」があります。
なお、これらの保険は、対人・対物賠償責任保険よりも免責事由を広く定めているので、注意が必要です。
傷害保険には、「人身傷害補償保険」「搭乗者傷害保険」「無保険車傷害保険」「自損事故傷害保険」があります。
人身傷害補償保険は、自動車事故の被害者になった場合に備える保険です。人身傷害保険とも呼ばれます。
自動車事故で被保険者が死傷した場合に、加害者の有無や過失割合に関係なく、保険約款に定める基準で算定した損害額につき、契約した限度額の範囲で保険金が支払われる保険です。
相手方の責任保険から損害賠償を受ける場合には過失相殺による賠償金が減額されますが、人身傷害保険は過失相殺されることなく、損害の全額が保険金として支払われるのが特徴です。相手との示談交渉も不要です。
なお、特に定めがない限り、通常は被保険自動車に搭乗中の事故が保険金支払いの対象です。
搭乗者傷害保険は、被保険自動車に搭乗中の運転者や同乗者が死傷した場合に備える保険です。
被保険自動車に搭乗中の被保険者が事故で死傷した場合、被害の内容に応じ定額の保険金(約款で定められた金額)が支払われます。
相手の自賠責保険・任意保険が支払われる場合でも、重ねて受け取ることができます。損害を填補する保険ではないので、損害賠償額から控除されることもありません。人身傷害保険金、無保険車傷害保険金、自損事故傷害保険金と重ねて受け取れます。
無保険車傷害保険は、賠償資力の乏しい加害車によって被害を被った場合に備える保険です。
対人賠償保険が付いていない等の無保険自動車との事故により、被保険者が死亡または後遺障害を被り、相手方から十分な賠償を受けられない場合に支払われる保険です。
死亡・後遺障害のみが対象で、後遺障害に至らない傷害のときは対象となりません。自賠責保険超過分について、対人賠償保険の基準により支払われ、過失相殺があります。
無保険自動車とは、相手自動車が次のような場合をいいます。
自損事故傷害保険は、単独事故や相手が無過失で賠償責任の生じない場合に備える保険です。
傷害を受けた被保険者に自賠法3条にもとづく損害賠償請求権が発生しない場合に保険金が支払われます。
保険金には、死亡保険金、後遺障害保険金、介護費用保険金、医療保険金があり、保険約款に定められた定額の保険金です。
人身傷害保険が組み込まれている保険商品の場合には、そちらでカバーされます。
車両保険は、被保険自動車が、衝突、接触、墜落、転覆、物の飛来・落下、火災、爆発、盗難、台風、洪水、高潮など偶然な事故によって損害を被った場合に保険金が支払われる保険です。
補償範囲や保険金額は契約内容によって異なります。
任意自動車保険は、自動車事故の加害者になったときの損害賠償責任に備えるだけでなく、自身の損害にも備える保険です。相手方から十分な賠償を受けられないときは、自身の任意保険を確認し、補償を受けられないかチェックしてみましょう。
ここで紹介しているのは一般的な内容です。保険会社や個々の保険によって異なることがありますから、必ず、ご自身の保険契約・保険約款をご確認ください。
任意保険の対人・対物賠償責任保険には、ほとんどの場合、示談代行サービスが付いているので、交通事故の示談交渉は、通常、損害保険会社の担当者が相手となります。交渉相手は自動車保険のプロです。過失割合で揉めそうなときや、示談交渉に不安があるときは、早めに弁護士に相談することが大切です。
弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。
交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!
0120-690-048 ( 24時間受付中!)
※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
【参考文献】
・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 325~328ページ、345~347ページ
・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 372~378ページ
・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 357~366ページ
・『自動車保険の解説2017』保険毎日新聞社