交通事故被害の損害賠償請求を弁護士に相談するとき用意するもの

弁護士に相談するとき、事前に用意しておくとよいもの

交通事故の被害・損害の賠償請求を弁護士所に相談するとき、事前に用意しておくとよいもの、弁護士事務所から聞かれることについて、まとめています。

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相談時に用意するもの

 

弁護士事務所に相談を申し込むとなると、だれだって躊躇してしまうものです。そんな不安を少しでも取り除けるよう、ここでは、

 

  • 弁護士事務所に相談の予約をするとき、何を伝えればよいのか
  • その際、弁護士事務所からは何を聞かれるのか
  • 弁護士との相談・面談のときに用意するものは何か

 

などについて、まとめています。

 

相談を予約するとき、弁護士事務所に伝えること

相談の申込・予約のときには、あなたのお名前や連絡先に加え、事故の概要を弁護士事務所に伝えます。

 

必要なことは、向こうから聞いてくれますから、答えられる範囲(わかる範囲)で答えれば大丈夫です。

 

相談の申込み時に、弁護士事務所から何を聞かれる?

相談の申込・予約のときに、弁護士事務所からは、次のようなことを聞かれます。

 

  • 事故の相手方の氏名・住所・連絡先
  • 事故発生の日時・場所・状況
  • 怪我の状況(傷病名、治療の状況など)
  • 被害・損害の状況(仕事を休んでいるか、物損もあるかなど)
  • 紛争の段階(保険会社から賠償金額の提示があった、示談交渉中など)
  • 任意自動車保険に加入しているか(相手の保険、自分の保険)
  • 何を相談したいか

 

これは一例です。こちらが相談したいことや、弁護士事務所から聞いてくることは、事故の状況や被害の程度によっても違うし、事故後すぐか、示談交渉の段階か、によっても異なります。

 

また、弁護士事務所によっては、ごく簡単に状況を聞くだけの場合もあれば、詳しく聞いてくる場合もあります。

 

いずれにしても、相談を予約するときには、そんなに構えなくても大丈夫です。事故後すぐなら、まだ損害も確定していないでしょうし、証拠書類等も揃っていないでしょうが、問題ありません。

 

相談の申込み時には、詳しい証拠資料はなくても大丈夫

大事なのは、証拠資料を揃えてから弁護士に相談を申し込むのでなく、まず弁護士事務所に相談を申し込むこと。必要なものは弁護士事務所から説明がありますから、それを揃えればよいのです。

 

もし、自分で揃えるのが難しくても、たいていのものは弁護士事務所で取得できますから、ご安心ください。

 

事故の概要を聞く事務所と聞かない事務所の違いとは?

相談の予約をするとき、弁護士事務所が事故の概要を聞くのは、相談・面談のときまでに、弁護士が事前準備をし、ある程度の解決方針を検討するためです。

 

逆にいえば、相談の日時を設定するだけで、事故の状況や被害の程度を聞かない事務所は、弁護士との相談・面談のときに具体的な解決方針が示されない可能性があります。一概にはいえませんが、そういう弁護士事務所は、避けるのが賢明でしょう。

 

事故の相手方の氏名・連絡先を聞かれるのは?

相談者の氏名・連絡先はもちろんですが、事故の相手方のことも聞かれます。

 

相談者については、今後連絡を取ることがあるからですが、事前に相手方の氏名・連絡先を聞くのは、利益相反に当たらないかを判断するためです。利益相反に当たる場合には、事件を受任することはもちろん、相談に応じることもできないからです。

弁護士に相談するとき、事前に用意しておくとよいもの

交通事故について弁護士に相談するときには、次のようなものを、できる範囲で用意しておくとよいでしょう。

 

弁護士との相談・面談のときまでに用意するものは、相談の申込み時に弁護士事務所から説明がありますから、事前に気を揉むことはありません。ご安心ください。

 

自分で作成したメモ 証拠資料
事故態様
  • 事故発生の日時・場所
  • 事故の状況・概略図
  • 交通事故証明書
  • 事故現場の写真
  • 関係車両の写真
  • 実況見分調書
  • ドライブレコーダーの画像
治療
  • 入院・通院の経過を記したメモ
  • 診断書
  • 後遺障害診断書
  • 後遺障害等級認定通知
  • 診療報酬明細書
  • 施術証明書
  • 施術費明細書
  • 雑費・交通費等の領収書
損害
  • 休業の状況・日数
  • 休業証明書
  • 源泉徴収票
  • 確定申告書
  • 修理見積書
交渉
  • 交渉経過を記したメモ
  • 保険会社の提示額がわかる書面
  • 保険会社からの通知
  • 保険会社とやり取りした書面・資料
  • 調停・裁判の書面

 

ここに挙げたものは、一例です。事故の状況や損害の内容、弁護士に何を依頼するか等により、必要なものは違ってきます。

 

弁護士事務所で取得できるものもありますから、弁護士に任せられるものは任せ、あなたでなければ用意できないものを、あなたが用意すればいいのです。あなたが用意するものについては、相談する弁護士事務所の指示に従ってください。

弁護士との相談のときに聞かれること

弁護士との相談・面談のときには、弁護士から次のようなことを聞かれます。

 

用意したメモや証拠資料を使って、できるだけ要領よく話ができるよう、整理しておくとよいでしょう。

 

事故の状況

  • 車両対車両の事故か、車両対人の事故か
  • 車種は何か、衝突部位はどこか、
  • 一般道路か高速道路か、それとも駐車場など私有地内か
  • 一般道路であれば、交差点での事故か、それ以外か
  • 信号機はあるか、信号機の色はどうだったのか
  • 事故発生の時間帯、道路の混雑状況
  • 天候はどうか、路面は乾いていたか濡れていたか
  • ドライブレコーダーはあるか
  • 通勤中・仕事中の事故か
  • 警察に人身事故として届けているか

 

現場の図面や写真などがあれば、用意しておきましょう。

 

自分に都合の悪いことを話さない人もいますが、弁護士が正確に事故態様を把握していないと、あとで不利な結果となる恐れがあります。弁護士には、事実を正直に説明することが大切です。

 

当事者の個人情報

  • 事故当時者(被害者・加害者)の氏名、連絡先、勤務先、役職
  • 事故車両に関する情報(車両番号、保有者、運転者)

 

当事者の勤務先・役職の把握が必要なのは、適正な損害賠償請求を行うためです。

 

例えば、被害者が家族経営の会社の代表者であるような場合、会社に生じた損害の賠償を請求できる場合があります。加害者が社用車で事故を起こした場合には、勤務先の会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

 

治療の状況

  • 傷病名、救急搬送・入院の有無、初診日、通院頻度、通院先
  • 現在の症状
  • 治療が終了している場合は、症状固定日または治癒日(最終通院日)
  • すでに後遺障害等級の認定を受けている場合は、その等級
  • 被害者が死亡している場合は、相続人は誰か

 

診断書等があれば、被害者がどのような身体的損傷を負い、どこの病院でどんな治療を受けているか、主治医は誰か、などを確認できます。

 

現在の症状や治療経過を聞くことにより、適正な損害賠償を受けるために、これから必要な検査や、どのような後遺障害が残存するかを判断できます。

 

被害者が死亡している場合は、死亡診断書があれば、死亡の日時、場所、死因を確認できます。

 

被害・損害の状況

  • 積極損害(治療費、通院交通費など)
  • 消極損害(休業損害、後遺障害があるときは逸失利益)
  • 物損の有無、物損について示談の有無

 

治療費を誰が支払っているか(相手方保険会社か、被害者の人身傷害保険か、被害者本人か、労災保険か、など)を聞かれます。

 

一般的には、相手方保険会社が一括払いで治療費を支払いますが、加害者が任意保険に加入していなかったり、無責を主張したり、被害者の過失が大きい場合などは、相手方保険会社が一括払いをしないため、被害者が健康保険等を使って治療しているケースもあります。

 

勤務中や通勤中の事故なら労災保険を使えるので、そういった点も確認します。

 

被害者の職業、事故による休業の有無を確認します。休業していれば、休業損害を賠償請求できます。後遺症が残ったときは、後遺障害等級の認定を受けると、将来の逸失利益を請求できます。

 

休業損害や逸失利益を算定するのに、事故前の収入額を明らかにするものが必要となります。

 

物損も発生している場合は、事故発生から3年で時効となり、人損の時効の5年より短いので要注意です。物損の示談交渉を先行させる場合もあります。

 

争点

  • 加害者は、責任を認めているのか、争っているのか
  • 過失相殺を主張しているのか

 

争いとなっている点を確認し、どう解決していくか、方針を検討します。

 

任意自動車保険への加入

  • 加害者が、任意自動車保険(対人・対物賠償責任保険)に加入しているか、
  • 被害者が、人身傷害保険、車両保険、弁護士保険に加入しているか

 

被害者の過失割合が大きい場合は、被害者自身の人身傷害保険を活用する方がよい場合があります。

 

被害者が、弁護士費用特約を任意保険に付帯していれば、弁護士費用が保険から支払われます。

事件の見通し、解決方針を相談者に説明

弁護士は、相談者から聞いたことにもとづき、損害賠償請求の可否、予想される争点、事件解決の見通し、解決方法などについて、相談者に説明することになります。このことは、弁護士職務基本規定において定められています。

 

弁護士職務基本規程

(受任の際の説明等)
第29条 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。
2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない

 

解決方法としては、示談交渉、ADR、調停、訴訟等、複数の選択肢があり、どの方法を選択するのがよいか、解決方針については、弁護士が示してくれます。

 

示談交渉、ADR、調停、訴訟、それぞれの特徴・メリット・デメリットについてはこちらをご覧ください。

まとめ

弁護士との相談を予約するときには、特段、証拠資料等を用意しなくても大丈夫です。必要なことは向こうから聞いてきますから、聞かれたことに、答えられる範囲で答えればよいのです。

 

大事なのは、証拠資料を揃えてから相談を予約するのでなく、まずは弁護士事務所に相談を予約することです。そうすれば、解決へ向け一歩を踏み出せます。

 

相談のときまでに用意するものは、弁護士事務所から指示がありますから、それを用意すればいいのです。

 

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【参考文献】
・『補訂版 交通事故事件処理マニュアル』新日本法規 4~18ページ
・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 322~325ページ
・「東京地裁書記官に訊く─ 交通部 編 ─」LIBRA Vol.13 No.8 2013/8

公開日 2022-03-01 更新日 2024/10/13 19:31:24