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事故の相手から過失相殺が主張され、双方の言い分が対立する場合は、自分の主張を裏付ける証拠が必要になります。どんなものが有力な証拠となりうるか、どうすれば入手できるか、見ていきましょう。
過失相殺が問題になる場合には、事故態様や事故現場の状況を的確に把握するために、交通事故が起きたときの現場を再現できる証拠が必要です。
次のようなものが、有力な証拠となり得ます。
それぞれ、どんなもので、どうやって入手すればいいのか、ご紹介します。
刑事事件記録(刑事記録)は、人身事故の場合に、刑事手続として作成するものです。警察官が作成する実況見分調書や供述調書が含まれます。
実況見分調書は、事故の状況が詳細に記載された客観的証拠として、民事事件(損害賠償請求)においても有力な証拠となります。
刑事裁判の終結後、刑事記録(確定記録)は、事件を担当した検察庁に所定の期間保管され、原則として、事件終結後3年間は、誰でも閲覧可能です(刑事訴訟法53条、刑事確定訴訟記録法4条)。
刑事確定記録を取得するには、保管している検察庁に閲覧謄写を申請します。
交通事故の被害者が民事事件で刑事確定記録を使用する場合は、閲覧だけでなくコピーも可能です。また、仮に事件終結から3年を経過していても、確定記録の保管期間内であれば認められます。
交通事故事件には、刑事事件と民事事件があり、2つが並行して進行することもあります。刑事事件が終結していなくても、交通事故被害者は、実況見分調書などの刑事記録を取得することができます。
刑事事件が係属する裁判所に、第1回公判期日後当該事件の終結までの間、被害者から申出を行うことで、法廷に提出されている訴訟記録の閲覧謄写が可能です(犯罪被害者保護法3条)。
刑事裁判に被害者参加(刑事訴訟法316条の33)する場合は、第1回公判期日前であっても、担当検察官に要望すれば、検察官請求証拠(検察官が証拠調べ請求をすることとしている証拠)等が開示されます。
なお、被害者参加しなくても、検察庁では、公判請求後から第1回公判期日までの間、交通事故被害者から要望があれば、公判や関係者のプライバシーなどに特段の支障がない限り、公判提出予定の書面を交付する運用になっています。
被疑者(加害者)が不起訴処分となった場合は、原則として刑事記録は非開示です。
ただし、交通事故被害者から請求があった場合は、実況見分調書や写真報告書など客観的証拠に限り、閲覧謄写が認められます。
供述調書については、厳格に運用がなされ、極めて例外的に条件を満たす場合に、民事裁判所を通じた請求で認められることがあります。
人身事故でない場合、すなわち物件事故(物損事故)の場合は、民事の話になりますから、実況見分調書など刑事記録は存在しません。警察は、簡易な物件事故報告書を作成するだけです。
もし、怪我をしているのに物件事故として警察に届けているのであれば、人身事故に切り替える必要があります。病院で診断書を発行してもらって、警察に人身事故への変更を届け出れば、実況見分を行い、実況見分調書が作成されます。
ドライブレコーダーの映像があれば、写真や図面では判断できないことが、立証可能となる場合があります。例えば、次のようなことです。
ただし、ドライブレコーダーの映像は、カメラの取り付け位置と運転席から見える視界が異なるため、位置関係によっては、カメラに写っていても運転者が気づかない場合があり得ます。広角レンズが用いられている場合は、歪みが大きく、直線であるところが曲がって見えるなど、実際の道路状況と異なって見える場合があるので、注意が必要です。
ドライブレコーダーのみで判断できないときは、実況見分調書や車両の損傷状況などの事実関係を含めて、総合的に判断することになります。
ドライブレコーダーの映像をどうやって入手するか?
自分の車にドライブレコーダーを搭載しているのであれば、事故時の録画データを保存しておきます。
自分の車にドライブレコーダーを搭載していない場合は、相手方車両がドライブレコーダーを搭載しているなら、相手方任意保険会社に提出を促す方法があります。ただし、相手方保険会社が、任意で提供してくれるとは限りません。裁判所を通じて、相手方任意保険会社に対する文書提出命令を申し立てることも検討する必要があります。
事故当時者ではない第三者の車両のドライブレコーダーに、事故の映像が残っている場合があります。このような場合は、任意に提供してもらえるよう交渉するほか、文書送付嘱託の申立てなどの方法で、入手できる場合があります。
警察が、事故捜査で防犯カメラやドライブレコーダーの録画データを押収している場合は、刑事記録の閲覧謄写を請求することにより、取得できる場合があります。
EDR(イベント・データ・レコーダー)とは、車載式の事故情報記録装置のことです。Event(事故などの出来事) Data(情報) Recorder(記録装置)の頭文字をとって、EDRと略されます。
エアバックが作動するような強い衝撃を受ける事故が発生した場合に、数秒間さかのぼって、車両の速度やエンジンの回転数、ブレーキやアクセルの作動状況などが記録されます。
車両の速度やブレーキ操作などが争点になっている場合、EDRを搭載していれば、EDRデータを解析することにより、事故当時の車両の状況が分かり、事故状況の解明に役立ちます。
ドライブレコーダーは、車内外の映像や音声は記録されますが、運転操作の状況までは分かりません。車両の状況や運転操作の検証には、EDRデータが有効です。EDRには、次のようなものが記録されます。
2022年7月以降の新車には、EDR搭載がメーカーに義務付けられています。
事故現場付近の街頭やコンビニエンスストアなどの防犯カメラに、事故状況が録画されている場合があります。例えば、店舗の駐車場で発生した事故なら、その店舗に防犯カメラが設置されており、駐車場の状況が撮影されている場合があります。
事故の映像が残っていれば、事故状況を知るうえで重要な証拠となります。
ただし、防犯カメラの映像は保存期間が短いことが多いので、防犯カメラの設置を把握したときは、任意に提供してもらえないか、速やかに、防犯カメラの設置者に交渉する必要があります。
実況見分調書や供述調書で、目撃者の証言が記載されている場合があります。目撃者の証言は、その目撃者が中立の方であれば、重要な証言となりますが、目撃者の供述調書が開示されないこともあります。
当事者の言い分が真っ向から食い違っていて、複数の実況見分調書が出来上がっている場合や、死亡事故など被害者側の供述が不能の場合で加害者のみの立会いの実況見分調書が出来上がっている場合には、現地で聞き込みを行うなど、目撃者を探す必要もあります。
刑事記録や物件事故報告書、ドライブレコーダー、EDR(イベント・データ・レコーダー)などは、有力な客観的証拠となり得ます。
ただし、内容によっては相手に有利になる場合があることにも注意してください。
検察庁への刑事記録の閲覧謄写の請求や、相手方保険会社へのドライブレコーダーの映像やEDRデータの請求は、弁護士に依頼することになるでしょうから、弁護士とよく相談することが大切です。
弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。
交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!
0120-690-048 ( 24時間受付中!)
※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
【参考文献】
・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 117~120ページ
・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 322~326ページ
・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 150~166ページ
・『改訂版 交通事故事件の実務ー裁判官の視点ー』新日本法規 260~264ページ
・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集ー交通事故編ー』第一法規 35~36ページ、42~48ページ、56ページ
・最高検企第436号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」
・最高検企第437号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」の発出について(通知)