むち打ち症の後遺障害12級13号・14級9号の認定基準と認定獲得のポイント

むち打ち症の後遺障害12級13号・14級9号の認定基準と認定獲得のポイント

むち打ち症(むち打ち損傷)による後遺障害は、12級13号もしくは14級9号の該当性が評価されます。12級と14級の認定基準の違いと障害等級の認定を受けるためのポイントを解説します。

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むち打ち症は、他覚的所見に乏しいため、後遺障害等級の認定を受けるのに困難を伴います、後遺障害「非該当」となることもよくあります。

 

ここでは、交通事故による「むち打ち症」で、12級13号ないし14級9号の後遺障害等級の認定を受けるために知っておきたいポイントについて、お伝えします。

 

むち打ち損傷による後遺障害

むち打ち損傷(頸部捻挫・外傷性頚部症候群)による後遺症は、末梢神経障害として取り扱われます。後遺障害等級は、「局部の神経系統の障害」として、12級13号ないし14級9号該当性が問題となります。

 

自賠責保険における後遺障害の等級認定は、原則として労災保険における障害の等級認定の基準に準じて行うとされていますから、労災保険の障害認定基準を参照しながら見ていきます。

 

末梢神経障害の等級認定は、次のように行います。

 

末梢神経障害の等級認定

末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級により認定することとなる。

 

(『労災補償障害認定必携第17版』158ページ)

 

例えば、こうです。

  • 聴神経を損傷して難聴が残存した場合は、聴力障害の等級を適用する。
  • 視神経を損傷して視力障害が残存した場合は、視力障害の等級を適用する。
  • 腕神経叢の損傷にともない上肢の関節機能障害が残存した場合は、上肢の機能障害の等級を適用する。
  • (参考:『詳説 後遺障害 等級認定と逸失利益算定の実務』創耕舎30ページ)

 

末梢神経障害は、損傷した神経の支配する「身体部位の機能障害」が生じている場合には、その器官の機能障害として後遺障害等級を評価しますが、身体部位の機能障害として独立して評価できない場合には、「局部の神経系統の障害」として取り扱われます。むち打ち損傷による後遺症は、たいてい、このケースに該当します。

 

局部の神経系統の障害は、後遺障害等級表(自賠法施行令2条別表第2)において、12級13号ないし14級9号(労災保険の障害等級表では12級の12ないし14級の9)に分類されています。

 

つまり、むち打ち損傷(外傷性頚部症候群)の後遺障害認定は、残存症状が「局部の神経系統の障害」に該当するか、該当する場合、14級となるか12級が認定されるかが焦点です。

後遺障害等級12級13号と14級9号の認定基準の違いとは?

では、「局部の神経系統の障害」の12級と14級の認定基準の違いは何か?

 

後遺障害等級表(自賠法施行令2条別表第2)では、12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号は「局部に神経症状を残すもの」と規定しています。

 

等級 後遺障害
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

 

残存する神経症状が「頑固か、そうでないか」の違いですが、「頑固さの程度」に基準があって、12級か14級かが決まるわけではありません。自賠責保険の後遺障害等級12級13号ないし14級9号に該当するかどうかは、労災保険の障害等級認定基準に準じて判断します。

 

後遺障害12級13号と14級9号の認定基準

労災保険における「神経系統の機能または精神の障害」の認定基準では、12級は「通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの」、14級は「12級よりも軽度のもの」が該当するとされています(『労災補償障害認定必携第17版』141ページ)

 

これを、自賠責保険の後遺障害等級表に当てはめると、こうなります。

 

等級 後遺障害の程度 認定基準
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの 通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの 第12級より軽度なもの

労災保険の障害認定基準は、労働災害を前提としたものですから、補償の対象は労働者であり、労務への支障の有無や程度が認定基準の中心となっています。

 

自賠責保険の後遺障害認定の対象となる被害者は、労働者だけでなく、老若男女すべての属性の人が対象となり得ます。したがって、ここでいう「労務」には、家事や就学といった賃金を得る目的以外のものも当然に含まれます(『後遺障害入門』青林書院170ページ)

 

12級は「労務への支障」が判断の基準とされていますが、抽象的です。14級は「12級より軽度なもの」とあるだけで、何について、どれほど軽度であるか不明です。判断要素が、客観的に明確でありません。

 

それでは、自賠責保険(正確には損害保険料率算出機構)では、むち打ち損傷による後遺症が、後遺障害等級12級13号ないし14級9号に該当するか否かを、どう判断しているのでしょうか?

 

実は、現行の障害認定基準には明記していない大原則があります。それは、12級は「障害の存在が医学的に証明できるもの」、14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」という判断基準です。

 

後遺障害12級と14級の認定基準(改正前後の比較)

労災保険の障害等級認定基準は、平成15年(2003年)に大幅な改正が行われました。平成15年8月8日に厚生労働省労働基準局長通知「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」として公表され、その後、数次の改正を経て現行に至っています。

 

平成15年の改正で「神経系統の機能または精神の障害に関する障害等級認定基準」がどう変わったのか、12級と14級の関係部分をピックアップし、改正前後の認定基準を比べてみます。

 

労災保険の障害等級「12級の12」「14級の9」は、自賠責保険の後遺障害等級「12級13号」「14級9号」に相当します。

 

障害等級認定の基準

「神経系統の機能または精神の障害」の等級認定の基準は、次の通りです。

 

改正前 改正後
第12級 他覚的に神経系統の障害が証明されるもの 通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの
第14級 第12級よりも軽度のもの 第12級よりも軽度のもの

 

改正前の等級認定基準では、「他覚的に証明されるもの」が、第12級に該当するとされていました。

 

末梢神経障害

末梢神経障害の等級認定の仕方については、認定基準の改正前後において基本的に変わっていません。いずれも「損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級」によるとされています。

 

改正前 改正後

根性及び末梢神経障害
 根性及び末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級を準用すること。

末梢神経障害
 末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級により認定すること。

 

中枢神経系(脳)の障害

中枢神経系(脳)の障害については、MRI・CT等の画像診断技術の進歩や最新の医学的知見もふまえ、次のように説明が変わっています。

 

等級 改正前 改正後
12級の12

労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる神経系統の機能又は精神の障害を残すもの

 

 中枢神経系の障害であって、たとえば、感覚障害、錐体路症状及び錐体外路症状を伴わない軽度の麻痺、気脳撮影により証明される軽度の脳萎縮、脳波の軽度の異常所見等を残しているものが、これに該当する。
 なお、自覚症状が軽い場合であっても、これらの異常所見が認められるものは、これに該当する。

通常労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの

 

 4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが該当する。

14級の9

労働には通常差し支えないが、医学的に可能な神経系統又は精神の障害に係る所見があると認められるもの

 

 医学的に証明しうる精神神経学的症状は明らかではないが、頭痛、めまい、疲労感などの自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるものが、これに該当する。

通常労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの

 

 MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるものが該当する。

※4能力とは、①意思疎通能力、②問題解決能力、③作業負荷に対する持続力・持久力、④社会行動能力の4つです。

 

改正後の12級の12の認定基準では、MRIやCT等による他覚的所見についての記述はありませんが、実は、脳の器質性障害の認定について説明している前段部分に、「高次脳機能障害は、脳の器質的病変に基づくものであることから、MRI、CT等によりその存在が認められることが必要となる」とあります(『労災補償障害認定必携』142ページ)

 

つまり、高次脳機能障害について後遺障害等級の認定をする場合、MRI・CT等によりその存在が認められることが前提であって、例外的にMRI・CT等による他覚的所見が認められない場合でも、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測できるときは、14級該当性の評価対象となるということです。

 

「医学的(他覚的)に証明できるもの」が12級に該当し、「医学的に説明可能なもの」「医学的に証明はできないが、自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの」「他覚的所見は認められないが、損傷のあることが医学的にみて合理的に推測できるもの」が14級に該当します。

 

ちなみに、認定基準の見直しを行った専門検討会の報告書には、高次脳機能障害の評価について、次のような記載があります。

 

本検討会としては、後遺障害として労働能力のそう失を伴うと認められる高次脳機能障害についても上記の各障害等級に区分して評価することが妥当であり、また、上記の各障害等級に相当する障害の程度は、以下のとおりとするのが適当であると考える。

 

……(第1級~第9級)……

 

第12級 MRI、CT等により他覚的に証明される軽度の脳挫傷、脳出血等又は脳波の軽度の異常所見が認められるものであって、4能力のいずれか1つ以上の能力が「困難はあるが概ね自力でできる」に該当すると認められるものが該当する。

 

第14級 MRI、CT、脳波等によっては、脳の器質的病変は明らかではないが、頭部打撲等の存在が確認され、脳損傷が合理的に推測されるものであって、4能力のいずれか1つ以上の能力が「困難はあるが概ね自力でできる」又は「多少の困難はあるが概ね自力でできる」ような状態に該当するものが該当する。

 

この内容によれば、12級は「MRI、CT等により他覚的に証明される異常所見がみとめられるもの」であり、14級は「MRI、CT等により他覚的に確認はできないが、頭部打撲等の存在が確認され、脳損傷が合理的に推測されるもの」です。この判断基準は、他の神経症状の認定基準としても妥当すると考えられています(『後遺障害の認定と意義申立ーむち打ち損傷事案を中心としてー』保険毎日新聞社29ページ)

 

頭痛

頭痛については、改正後の認定基準において、「頭痛については、頭痛の型の如何にかかわらず、疼痛による労働または日常生活上の支障の程度を疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見により把握し、障害等級を認定すること」という文言が、新たに加えられています。

 

等級 改正前 改正後
12級の12 労働には通常差し支えないが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの 通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの
14級の9 労働には差し支えないが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの 通常の労務に服することはできるが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの

 

失調、めまい及び平衡機能障害

失調、めまい及び平衡機能障害については、改正後の認定基準において、「失調、めまい及び平衡機能障害については、その原因となる障害部位によって分けることが困難であるので、総合的に認定基準に従って障害等級を認定すること」という文言が加えられました。

 

等級 改正前 改正後
12級の12 労働には通常差し支えないが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの
14級の9 めまいの自覚症状はあるが、他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの

 

「検査の結果に異常所見が認められるもの」が12級に該当し、「他覚的には異常所見が認められないが、自覚症状が単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの」「検査の結果に異常所見が認められないが、症状の存在が医学的にみて合理的に推測できるもの」が14級に該当します。

 

疼痛等感覚障害

受傷部位の疼痛については次により認定し、疼痛以外の異常感覚(蟻走感、感覚脱失等)が発現した場合は、その範囲が広いものに限り、14級の9に認定するとしています。

 

等級 改正前 改正後
12級の12 労働には通常差し支えないが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの 通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの
14級の9 労働には差し支えないが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの 通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの

 

12級と14級の認定要件

このように「局部の神経系統の後遺障害」の認定においては、現行の認定基準と従前の認定基準に文言上の相違がありますが、文言が変わったからといって、12級と14級の認定要件が変更されたというわけではなく、実務上は従来と同様に取り扱われています(『後遺障害の認定と意義申立ーむち打ち損傷事案を中心としてー』保険毎日新聞社29ページ)

 

すなわち、自賠責保険実務において、現在も、12級は「障害の存在が医学的に証明できるもの」、14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」という考え方が採用されているのです(『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規289ページ)

12級13号・14級9号を獲得するためのポイント

「医学的に証明できる」と「医学的に説明可能」はどう違うのか、さらに、12級13号ないし14級9号の認定を獲得するためのポイントについて、見ていきましょう。

 

12級13号の認定基準と認定獲得における注意点

後遺障害12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」が該当し、等級認定には、神経系統の障害を医学的(他覚的)に証明できることが必要です。他覚的に証明できなければなりませんから、当然、他覚的所見が不可欠です。

 

「医学的(他覚的)に証明できる」とは?

痛みや痺れなどの症状は、あくまで神経系統の障害による結果であって、神経系統の障害そのものではありません。神経系統の障害が証明されるということは、症状の原因となる神経組織・機能の異常の存在が証明されることです。例えば、「症状は、頸椎の神経根症によるもの」ということが、神経系統の障害の存在の証明に当たります(『新・現代損害賠償法講座5交通事故』日本評論社158ページ)

 

つまり、「医学的(他覚的)に証明できる」とは、残存している症状の原因が何か、他覚的所見にもとづいて判断できるということです。ここで重要なのは、他覚的所見の捉え方です。

 

「画像所見」=「他覚的所見」ではない

よくある誤解が、画像所見のみを他覚的所見と捉え、画像検査において異常が確認できれば、医学的(他覚的)に証明されたとするものです。

 

もちろん、他覚的所見には画像所見を含みますが、画像所見だけが他覚的所見ではありません。他覚的所見とは、理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査等により認められる異常所見です。他覚的所見について詳しくはこちらをご覧ください。

 

むち打ち症で、後遺障害認定の根拠となるのは、おもに画像所見と神経学的検査所見です。

 

XP、CT、MRI等の画像検査は、患者の意思と無関係に結果が得られるので客観性が高く、神経学的検査は、検査結果が患者の意思に左右されうるため客観性が低いと評価されます。

 

そのため、画像所見のみを他覚的所見と評価し、「医学的(他覚的)に証明できる」ことの意味を「画像で明らかになること」と考えてしまうのです。

 

確かに、画像所見は、症状の存在を裏付ける有力な根拠となり得ますが、異常画像が確認されたからといって、それだけで「医学的(他覚的)に証明された」とはいえません。この点に注意が必要です。

 

他覚的証明に必要なこと

医学的(他覚的)に証明できるかどうかにおいては、「どのような検査が他覚的なのか、そうではないのか」ではなく、自覚症状を裏付けるため、どのような検査所見が、どういう具合にそろっているかが大事といわれます(『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規290ページ)

 

例えば、神経根症状型であれば、画像上、神経圧迫の存在が考えられる所見があり、圧迫されている神経の支配領域に知覚障害などの神経学的異常所見が確認された場合には、神経障害が医学的(他覚的)に証明されたとして、12級13号と認定されやすくなります。

 

しかし、画像所見があっても、画像所見において圧迫されていることが疑われる神経の支配領域と神経学的異常所見が一致しないと、神経障害が他覚的に証明されたとはいえません。

 

もっとも、画像上の異常所見がない場合には、たとえ神経学的検査で異常所見が認められたとしても、神経障害が他覚的に証明されたということは困難です。

 

すなわち、局部の神経系統の障害について「他覚的に証明された」といえるためには、他覚的所見として画像所見は必須ですが、画像所見さえあれば十分というわけではなく、画像所見と整合性のある神経学的検査所見が不可欠です。大事なのは、①自覚症状、②神経学的所見、③画像所見の整合性です。

 

むち打ち症で12級13号を獲得するポイント

残存する「頑固な神経症状」の原因を、画像所見と神経学的所見により整合性をもって裏付けることができれば、局部の神経系統の障害の存在を他覚的に証明できたといえ、12級13号の認定に近づきます。

 

加えて、後遺障害の認定には、残存症状が事故による受傷を原因とすること(事故との因果関係)の立証が不可欠であることはいうまでもありません。

 

14級9号の認定基準と認定獲得における注意点

後遺障害14級9号は「局部に神経症状を残すもの」が該当し、等級認定には、障害の存在を他覚的に証明はできないが医学的に説明可能であること、あるいは、自覚症状が故意の誇張でないと医学的に推定されること、が要件です。

 

「医学的に説明可能」とは?

14級9号の認定には、必ずしも画像所見や神経学的検査所見などの他覚的所見は必要ありません。自覚症状を裏付ける他覚的所見がない場合には、14級9号の認定をねらうことになります。

 

受傷状況・治療経過・臨床所見などから、事故による受傷と残存症状に整合性が認められる(=神経症状の存在を医学的に合理的に説明可能である)場合や、症状の一貫性・治療の継続性などから、神経症状が残存していても不自然でないと推測できる(=自覚症状が故意の誇張でないと医学的に推定される)場合は、14級9号が認定される可能性があります。

 

14級の認定には、必ずしも画像所見や神経学的検査所見などの他覚所見を必要としない取扱いがされていますが、次のような指摘もあり、14級といえども、むち打ち症で後遺障害の認定獲得は簡単ではないのが実情です。

 

自賠責保険を管轄する自動車保険料率算定会(現在の損害保険料率算出機構)の方から伺ったところでは、他覚的所見がなくても、被害者の愁訴が神経の流れに沿って合理的な内容であれば14級に認定する、とのことであった。しかし、一線の損害調査事務所において、そのような認定がなされているかは、はなはだ疑問というのが実感である。

 

(北河隆之「いわゆる鞭打ち症に関する賠償医学的アプロウチに対する批判的検討」『人身賠償・補償研究第2巻』判例タイムズ社152ページ注7)

 

14級9号認定のポイント

14級9号の認定獲得のポイントは、医学的に見て、後遺症が残存していても「おかしくはない」と説明できる要素をそろえることです。

 

症状を医学的に説明できる他覚的所見の存在

画像所見や神経学的検査所見に、自覚症状があっても不自然でないといえる程度の所見がある場合には、14級9号の認定に近づきます。

 

例えば、神経根症状型については、画像所見において明らかな神経圧迫の存在は認められないが、頸椎椎間板の膨隆等による神経圧迫を示唆する程度の画像所見があり、神経学的検査所見において、神経症状を示す異常所見が得られている場合には、14級9号に認定されやすいといえます。

 

症状の一貫性・治療の継続性

自覚症状が一貫して訴えられており、症状に対する適切な治療を症状固定まで継続して受けていたか、がポイントです。事故直後の症状、その後の症状の推移、治療内容、治療期間、治療頻度などにより、症状の一貫性・治療の継続性が認められれば、14級9号認定の要素となります。

 

例えば、症状が受傷数日以内に発症して、症状固定まで一貫して持続し、それに対する治療が継続されていれば、その症状が事故による外傷を原因とするものであることは比較的明らかです。他方、事故後数週間を経過してから症状が現われた場合や、治療中いったん軽快した後に再び症状が増悪したような場合には、症状と事故との因果関係の認定が難しくなります。

 

受傷態様

事故により「後遺障害が残存するほどのダメージを受けた」ということを、実況見分調書や事故状況報告書、物損資料などにもとづき立証することができれば、14級9号認定の要素となります。

 

事故の発生状況は、受傷の妥当性の判断要素となります。受傷自体が疑問視されるような軽微事故の場合には、自覚症状と事故との因果関係が問題となるケースも少なくありません。

まとめ

12級13号の獲得には、後遺障害の存在を医学的(他覚的)に証明できなければなりませんから、他覚的所見が不可欠です。むち打ち症の場合、おもに画像所見と神経学的検査所見が必要となります。大切なのは、自覚症状を裏付ける画像所見と神経学的所見の整合性です。なお、他覚的所見が存在し、医学的に証明できるとしても、事故との因果関係が否定されることも多いので注意が必要です。

 

14級9号の獲得をめざすようなケースの場合には、他覚的所見がなく、自覚症状のみであることがほとんどです。こういう場合は、各要素を駆使して、医学的に説明可能であることを立証しなければなりません。当然、事案ごとに、どんな資料が有効であるか変わってきます。有利な事実・資料を見逃さずに用いることが重要です。

 

むち打ち損傷(頸椎捻挫・外傷性頚部症候群)による後遺障害は、保険会社との間でよく争いになりやすいところです。むち打ち損傷による後遺症が心配な方、むち打ち症の後遺障害で保険会社と揉めている方は、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。

 

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【参考文献】
・『交通事故医療法入門』勁草書房135~140ページ
・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 287~319ページ
・『裁判例と自賠責認定にみる神経症じぃおうの等級評価』新日本法規 1~9ページ
・『交通事故における むち打ち損傷問題 第3版』保険毎日新聞社 190~194ページ
・『後遺障害入門』青林書院 169~174ページ
・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 179~180ページ
・『詳説 後遺障害』創耕舎 29~31ページ
・『賠償科学概説』民事法研究会 116~120ページ、130~137ページ
・『新・現代損害賠償法講座5交通事故』日本評論社 155~164ページ
・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社91~117ページ
・『弁護士のための後遺障害の実務』学陽書房24~32ページ
・『労災補償障害認定必携 第17版』一般財団法人労災サポートセンター 137~163ページ

公開日 2025-03-04 更新日 2025/03/04 15:24:06