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交通事故の損害賠償請求には、交通事故の発生を公的に証明する「交通事故証明書」が必要です。
任意保険会社による一括払いを利用する場合は、保険会社が交通事故証明書を取得しますから、被害者が取得する必要はないのですが、自賠責保険に被害者請求(直接請求)をする場合には、被害者の側で交通事故証明書を取得する必要があります。
ここでは、交通事故証明書交付の根拠法令、交通事故証明書の取得方法、また、自賠責保険に被害者請求する場合に、人身事故扱いの交通事故証明書を取れないときはどうすればいいのか、について説明します。
交通事故証明書は、交通事故の当事者が適正な補償を受けられるよう、交通事故の事実を公的に証明する書面です。
自動車安全運転センター法の定めにより、各都道府県の自動車安全運転センターが、警察から提供された証明資料にもとづき発行します。
交通事故証明書の交付については、自動車安全運転センター法において、同センターの業務の1つとして、次のように定めています。
第5号 交通事故に関し、その発生した日時、場所その他内閣府令で定める事項を記載した書面を、当該事故における加害者、被害者その他当該書面の交付を受けることについて正当な利益を有すると認められる者の求めに応じて交付すること。
交通事故の当事者(加害者・被害者)や、交通事故証明書の交付を受けることについて正当な利益のある人(損害賠償請求権のある親族、保険金の受取人等)が申請すれば交付されます。
ただし、「交通事故でない場合」や「警察に事故を届けていない場合」は交付されないので、ご注意ください。。
条文には「交通事故に関し」とあります。この「交通事故」とは、道路交通法67条2項に規定する交通事故を指します(自動車安全運転センター法2条2号)。
すなわち、道路交通法の定める交通事故に関して交通事故証明書を交付するのであって、道路交通法上の交通事故に当たらない事故については、交通事故証明書が交付されません。例えば、駐車場(私有地)での自動車事故は、その駐車場の状態によっては交通事故に当たらない場合があります。
交通事故証明書は、警察から提供された証明資料に基づき、交通事故の事実を確認したことを証明する書面です。したがって、交通事故の発生を警察に報告していなければ、交通事故証明書は交付されません。
警察へ報告されている交通事故であれば、自転車事故の場合や、駐車場(私有地)内の事故であってもその駐車場が道路交通法の規定する道路に当たる限り、交通事故証明書は作成されます。
条文中の「その他内閣府令で定める事項」とは、「交通事故の当事者の住所及び氏名、事故類型その他当該交通事故に関する事実を証するため必要と認められる事項」(自動車安全運転センター法施行規則10条)です。
すなわち、交通事故証明書に記載される内容は、自動車安全運転センター法29条1項5号及び同法施行規則10条により、「交通事故に関し、その発生した日時、場所、交通事故の当事者の住所及び氏名、事故類型その他当該交通事故に関する事実を証するため必要と認められる事項」です。
具体的には、交通事故証明書には、交通事故が発生した日時、場所、当事者の住所・氏名、事故類型のほか、事故照会番号、当事者の生年月日、当事者車両の車種・車両番号、自賠責保険関係(有無や契約先・証明書番号)、事故時の状態(運転・同乗・歩行・その他)、事故の種別(物件事故か人身事故か)などが記載されます。
書面の様式は、同施行規則「別記様式第五」で定めています。
※ 自動車安全運転センター法施行規則 別記様式第五(第10条関係)
交通事故証明書によって、交通事故が発生した事実や当事者を確認することができますが、注意書きにあるように、損害の種別・程度、事故の原因や過失割合等を明らかにするものではありません。
自動車安全運転センターのWebサイトに公開されている「交通事故証明書の見本」を掲載しておきます。
(自動車安全運転センターのWebサイトより)
当事者欄の記載については、加害者・被害者を区別するものではありませんが、通常、甲欄には責任の大きい者、乙欄には責任の小さい者を記載するとされています。事故態様を考える上で参考になるでしょう。ただし、あくまでも、そのときの警察の判断であり、責任の大きさは、後の捜査や裁判により明らかになるものです。
一番下に「照合記録簿の種別」欄があり、見本では「人身事故」となっています。これは、その交通事故が人身事故扱いとなっているということです。物損事故として処理された場合は、ここが「物件事故」となります。もし、人身事故だったのに物件事故となっている場合は、人身事故に切り替える必要があります。
交通事故証明書は、人身事故の場合に、自賠法(自動車損害賠償保障法)3条にもとづく損害賠償請求において、特に重要な立証資料となります。
一般的な民法709条(不法行為責任)にもとづく損害賠償請求は、損害賠償を請求する被害者の側が、相手に損害賠償責任があることを立証しなければなりませんが、自賠法では立証責任が転換され、加害者の側が、自分に責任がないことを立証しない限り、損害賠償責任を免れることができない仕組みです。
そのため、自賠法にもとづき損害賠償請求する場合、被害者は、相手の自動車の運行によって損害が発生したという事実を主張・立証すればよいのです。
交通事故証明書は、事故発生の日時・場所、事故当事者の住所・氏名、自賠責保険番号、事故類型等が記載され、しかも、それを公的に証明するものです。したがって、被害者は、交通事故証明書のみで、事故発生の立証とすることができるのです。
なお、加害者側の任意保険会社が一括対応する場合は、たいてい保険会社が交通事故証明書を取得します。加害者側の保険会社としても、交通事故証明書があれば、事故の発生そのものを争うことはありません。
次に、交通事故証明書の入手方法についてです。
申請できる人 |
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申請方法 |
自動車安全運転センターに交付申請します。申請用紙は、センター事務所、警察署・交番・駐在所で受け取れます。申請方法は次の3つ。
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手数料 | 1通 800円(消費税非課税) |
交付までの期間 |
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※手数料は、2024年2月現在の情報です。
窓口申請用紙(センター事務所に備え付け)に必要事項を記入し、手数料を添えて、事務所窓口で申し込みます。
申請用紙には、交通事故を特定する事項として、事故の種類、発生日時、発生場所、取扱警察署(隊)と届出日時、当事者の氏名を記載します。
交付申請は全国どこのセンター事務所でもできますが、交付は交通事故が起きた都道府県に所在するセンター事務所に限られます。
交通事故資料が警察署等から届いていれば、原則として、交通事故証明書は、即日交付されます。交通事故資料が届いていない場合は、後日、申請者の住所または郵送希望先へ郵送されます。
交通事故証明書申込用紙、払込取扱票及び振替払込請求書兼受領証に必要事項を記入し、ゆうちょ銀行・郵便局に手数料を添えて申し込みます。
用紙は、センター事務所、警察署・交番・駐在所に備え付けられています。交通事故証明書申込用紙は、都道府県によって異なります。
交付手数料のほかに、ゆうちょ銀行・郵便局の払込料金が必要です。
自動車安全運転センターのWebサイト(https://www.jsdc.or.jp/)から、申込みできます。
交通事故の当事者本人でなければ申請することができません。交通事故発生時に警察へ届け出た住所に、現在もお住まいの方に限ります。申請者ご本人の確認のため、交通事故証明書に記載のご住所以外への郵送はできません。
交通事故証明書は、人身事故については事故発生から5年、物件事故については事故発生から3年と、交付期限が決められています。期限を経過すると交付されませんから、ご注意ください。
※詳しくは、自動車安全運転センターのWebサイト「交通事故に関する証明書」のページをご覧ください。
自賠責保険に被害者請求をする際、人身事故扱いの交通事故証明書が必要です。
しかし、物損事故として処理された事故は、交通事故証明書の記載は物件事故となります。また、交通事故が発生したときに警察に届出をしていない場合や、交通事故に当たらない事故の場合は、そもそも交通事故証明書を発行してもらえません。
怪我が軽微だったなどの理由から、人身事故扱いでなく物件事故扱いとなっている場合には、まず、人身事故扱いに切り替えることを検討します。人身事故扱いへの切り替えは、事故により傷病が生じたことを示す診断書を入手し、取扱い警察へ申し出ることにより行います。
ただし、事故発生から日数が経過している場合など、取扱い警察が切り替えの申出に応じてくれないときがあります。そうなると、人身事故扱いの交通事故証明書を入手することができません。
人身事故扱いの交通事故証明書を取得できない場合は、「人身事故証明書入手不能理由書」を提出することにより、自賠責保険に被害者請求することができます。
※見本は、協会けんぽの「人身事故証明書入手不能理由書」の一部です。
「人身事故扱いの交通事故証明書が入手できなかった理由」を記載する欄に、理由が列記されていますから、該当する理由を選択します。
人身事故証明書入手不能理由書には、加害者側当事者(または目撃者等)の記名押印が必要です。
なお、人身事故証明書入手不能理由書は、公的に人身事故の発生を証明するものではありません。また、人身事故扱いの交通事故証明書を入手できない事故は、どうしても「たいした事故ではなかった」と判断されがちです。そのため、十分な損害賠償を受けられない場合があります。
交通事故証明書は、自動車安全運転センター法の定めにもとづき、各都道府県の自動車安全運転センターが、警察から提供された証明資料にもとづき、交通事故の事実を確認したことを証明する書面として交付するものです。
事故が発生したときは、後日、交通事故証明書の交付を受けられるよう、必ず警察に届出をすることが大切です。
弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。
交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!
0120-690-048 ( 24時間受付中!)
※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
【参考文献】
・自動車安全運転センター「交通事故に関する証明書」
・『交通事故実務入門』司法協会 8~9ページ
・『自賠責保険のすべて 13訂版』保険毎日新聞社 123~124ページ
・『補訂版 交通事故事件処理マニュアル』新日本法規 36ページ
・『実例と経験談から学ぶ資料・証拠の調査と収集ー交通事故編ー』第一法規 12~23ページ