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駐車場(私有地)における事故は、交通事故になる場合と、交通事故にならない場合があります。交通事故でない場合には、自賠責保険の被害者請求に必要な交通事故証明書が交付されません。
駐車場における事故は、どんな場合に交通事故となるのか、駐車場事故が交通事故に当たらず交通事故証明書を取得できない場合、どうやって自動車保険に請求すればよいのか、詳しく見ていきましょう。
交通事故については、道路交通法で定義しています。まず、交通事故の定義から見ておきましょう。
道路交通法は、道路上における「車両等の交通による人の死傷・物の損壊」を交通事故と定義しています(道路交通法67条2項)。交通事故の定義について詳しくはこちらをご覧ください。
駐車場(私有地)における自動車事故が交通事故であるかどうかは、その駐車場が、道路交通法の定める「道路」といえるかどうかによります。道路の形態を備えていなくても、道路に該当する場合があります。その駐車場が、道路に該当すれば交通事故ですが、道路に該当しなければ交通事故とはなりません。
道路交通法は、道路について次のように定義しています。
道路法第2条第1項に規定する道路、道路運送法第2条第8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。
すなわち、道路交通法の定める道路は、①道路法に規定する道路、②道路運送法に規定する自動車道、③一般交通の用に供するその他の場所、の3つに大別されます。
道路法に規定する道路 | 高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道 |
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道路運送法に規定する自動車道 | 専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で道路法による道路以外のもの |
一般交通の用に供するその他の場所 | 道路法による道路・道路運送法による自動車道を除き、一般交通の用に供されている場所 |
駐車場が道路に当たるかどうかを考える場合には、「一般交通の用に供するその他の場所」に該当するかどうかが問題となります。道路法に定める「道路」及び道路運送法に定める「自動車道」以外で、一般交通の用に供されている場所という要件に該当すれば、その駐車場は道路に当たります。
「一般交通の用に供するその他の場所」とは、必ずしも道路としての形態を備えている必要はなく、不特定多数の人や車両の通行が許されている場所をいいます。
例えば、契約者だけが利用できる月極駐車場や民家の駐車場などは、通常、道路とは見なされませんが、、商業施設の駐車場など不特定多数の人や車両が通行する場所は、道路と見なされる可能性があります。
公道以外の場所で事故が発生した場合、その場所が道路といえるかどうか、すなわち、交通事故に当たるかどうかは、その場所における人や車両の通行状態により、個別に判断することになります。
駐車場(私有地)での事故が、交通事故だった場合は、公道における交通事故と同じ扱いです。
交通事故の当事者には、道路交通法上の義務(負傷者の救護や警察への事故報告など)が生じ(道路交通法72条1項)、義務を履行しなければ罰則もあります。
交通事故により被った損害は、相手の自賠責保険や任意自動車保険(対人・対物賠償責任保険)に対し、損害賠償を請求できます。自身の加入する人身傷害保険等にも保険金の支払を請求できます。
なお、駐車場(私有地)での事故は、交通事故となるかどうか、簡単には判断できないでしょう。ですから、交通事故かどうかに関係なく、たとえ私有地での事故であっても、警察に事故を通報することが大切です。そうでないと、自賠責保険や任意自動車保険に請求できなくなってしまいます。
事故のあった駐車場(私有地)が道路交通法の道路に当たらず、その事故が交通事故でない場合は、道路交通法上の義務は生じません。仮に、事故の発生を警察に届出をしなくても、違反とはなりません。
ただし、民事上の責任(損害賠償責任)は負います。特に、事故で人を死傷させた場合は、刑事責任も負います。損害賠償責任の有無は、交通事故であるか否かに関係ありません。
駐車場(私有地)において自動車事故が発生した場合、交通事故かどうかに関わらず、事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求できます。
自賠法(自動車損害賠償保障法)3条は、自動車の運行によって他人の生命・身体を害したときは損害賠償の責任を負うと定めています。自賠法の「自動車の運行」は、道路以外の場所も含みます。
事故が発生したのが道路上かどうかは関係なく、自動車の運行によって他人を死傷させたら損害賠償責任を負う、ということです。
民事上の不法行為責任を追及する場合、公道における事故か私有地における事故かは、そもそも関係ありません。
民法709条にもとづき損害賠償を請求するには、①被害者の権利または法律上保護される利益を侵害したこと、②加害者に故意または過失があったこと、③損害が発生したこと、④加害行為と損害との間に因果関係があること、を立証する必要はありますが、不法行為のあった場所は関係ありません。
自賠責保険は、契約車両の保有者が、自賠法3条の損害賠償責任を負うときに保険金が支払われます(自賠法11条)。自賠法3条にもとづく損害賠償責任は、公道か私有地かは関係ありませんから、駐車場における人身事故は、交通事故に当たらなくても、自賠責保険が支払われます。
ただし、自賠責保険に被害者請求をするには、交通事故発生の事実を公的に証明する交通事故証明書が必要ですが、交通事故でない場合には、交通事故証明書が交付されません。
交通事故証明書を取得できない場合は、「人身事故証明書入手不能理由書」を提出すれば、自賠責保険に被害者請求することが可能です。
※見本は、協会けんぽの「人身事故証明書入手不能理由書」の一部です。
「人身事故扱いの交通事故証明書が入手できなかった理由」が列記されています。その中の「公道以外の場所(駐車場、私有地など)で発生した事故のため」を選択し、あとは必要事項を記入し提出すればよいのです。
ただし、人身事故証明書入手不能理由書は、公的に人身事故の発生を証明するものではありません。また、人身事故扱いの交通事故証明書を入手できない事故の場合、「たいした事故ではなかった」と判断される傾向があります。
任意自動車保険(対人・対物賠償責任保険)は、私有地における事故に保険金が支払われるかどうかは、契約内容によります。契約内容や事故の状況によっては、保険金が支払われない場合があります。
対人・対物賠償責任保険から損害賠償の支払いを受けられない場合は、自身の加入する人身傷害保険等への請求も検討してみましょう。
駐車場(私有地)での事故は、その場所が道路交通法の定める道路に当たれば、交通事故として、公道における事故と同じ扱いとなりますが、道路に当たらなければ、交通事故とはなりません。
ただし、交通事故でなくても、自動車の走行により事故を起こせば、損害賠償責任が発生します。
人身事故については、自賠責保険に被害者請求をすることができます。自賠責保険への請求には交通事故証明書が必要ですが、交通事故でない場合は交通事故証明書が交付されません。その場合、人身事故証明書入手不能理由書を提出すれば請求可能です。
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※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
【参考文献】
・『16-2訂版 執務資料 道路交通法解説』東京法令出版 1~14ページ、798~822ページ
・『自賠責保険のすべて13訂版』保険毎日新聞社 123~124ページ