交通事故の過失相殺の対象となる損害と過失相殺の方法

過失相殺の対象となる損害と過失相殺の方法

交通事故の損害賠償額を定めるにあたって過失相殺の対象となる損害は、原則として、積極損害・消極損害・慰謝料を積算した全損害です。ただし、特定の損害費目についてだけ過失相殺することも認められます。

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過失相殺の方法

 

過失相殺は、総損害額に対して行うのが一般的です。ただし、特定の損害費目についてのみ過失相殺することも認められ、損害費目ごとに過失相殺率が異なることもあります。

 

過失相殺の対象となる損害とは?

過失相殺の対象となる損害は、原則として、財産的損害と精神的損害の全損害です。財産的損害とは、治療費などの積極損害と逸失利益などの消極損害です。精神的損害とは慰謝料のことです。

 

つまり、原則として、交通事故の被害者が損害賠償請求できる損害は、すべて過失相殺の対象となります。これは、過失相殺が「被害者の被った損害を当事者間で公平に分担する制度」だからです。

 

交通事故の被害者が損害賠償請求できる損害には、次のようなものがあります。

 

積極損害 治療関係費、通院交通費、死亡した場合の葬儀費用など
消極損害 休業損害、逸失利益
慰謝料 傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料

被害者が損害賠償請求できる「損害費目」について詳しくはこちらをご覧ください。

 

特定の損害費目についてのみ過失相殺もある

通常は全損害が過失相殺の対象になりますが、全損害に対して過失相殺することが「被害者保護の観点から不適切」な場合は、特定の損害費目についてのみ過失相殺されることもあります。

過失相殺の方法

過失相殺は、通常、総損害額に対して行います。各損害費目を合計して総損害額を算出し、総損害額から過失相殺して損害額を算定するので、損害費目ごとに過失相殺率が異なることは原則としてありません。

 

ただし、過失相殺は裁判所の裁量に委ねられているので、特定の損害費目に対してだけ過失相殺することも許され、損害費目ごとに過失相殺率が異なってもよいとされています。

 

過失相殺による損害賠償額の計算方法

被害者にも過失がある場合、被害者の過失を過失相殺率(または過失割合)で表し、その部分は加害者に損害賠償請求できません。

 

したがって、加害者に対して損害賠償請求できる額は、次のような計算式になります。

 

総損害額 ×(1-過失相殺率)= 損害賠償額

 

特定の損害費目についてのみ過失相殺するケースとは?

総損害額に対して過失相殺を行うと、例えば、被害者の過失が大きい場合、被害者の手元に治療費が残らなくなったり、加害者が治療費を支払っている場合は返還しなければならなくなる事態が生じることがあります。

 

このような場合には、被害者に満足な治療を受けさせようとする配慮から、損害の費目別の過失相殺を行うことができます。ただし、そういった特別の事情について、被害者が主張・立証しなければいけません。

 

物損の過失割合と人損の過失割合が異なるケースもある

物損の示談を先行させた場合、そこで合意した過失相殺率が人損に及ぶわけではありません。

 

人損も物損もあわせて裁判になっていれば、同一の過失相殺率で判断されますが、物損の示談で過失相殺率が合意されていても、裁判所はそれに拘束されず、異なる過失相殺率を認定することができます。

交通事故に不可抗力的要素があるときの過失相殺

交通事故に不可抗力的要素(悪天候・濃霧など)がある場合は、その部分を加害者と被害者の過失割合に応じ両者に按分して割り振ります。

 

例えば、加害者の過失が4割、被害者の過失が1割、不可抗力的要素が5割だった場合を考えてみましょう。

 

不可抗力的要素の5割については、加害者に4割、被害者に1割の割合で按分し、加害者の過失割合が8割、被害者の過失割合が2割というように考え、被害者に2割の過失相殺を行います。

まとめ

過失相殺は、原則として全損害が対象となり、総損害額から被害者の過失割合分を差し引いた額が、加害者の賠償すべき額となります。

 

ただし、総損害額から過失相殺をすると、被害者の治療費が確保されないなど、被害者保護の観点から過失相殺がふさわしくない場合は、特定の損害費目についてのみ、過失相殺することが認められます。

 

もし、過失相殺により、治療費が確保できないとか、治療費の返還が求められているようなときは、「過失割合の見直し」や「特定の損害費目のみ過失相殺する」などの対応が必要です。過失相殺の争いに強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

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公開日 2018-04-21 更新日 2023/03/18 13:28:15