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  • 車を貸す
    自動車の借主が起こした交通事故で貸主の運行供用者責任を問える?
    交通事故の相手は、知人から借りた自動車を運転中でした。相手の運転者が話にならないので、車の所有者に対して損害賠償請求を考えています。車の貸主の責任を問い、貸主に損害賠償請求できますか?家族や友人から借りた自動車を運転中に交通事故を起こした場合、車の貸主(持主)は、原則として「運行供用者責任」を負います。したがって、直接の加害者である運転者のほか、車の貸主に対しても損害賠償請求できます。ただし、使用貸借の具体的な事実関係によっては、貸主の運行供用者責任が否定される場合があります。判断が難しいケースがあるので、弁護士に相談することをおすすめします。貸主の損害賠償責任 2つのポイント家族や知人に車の使用を許諾した場合は、原則として、貸主は運行供用者責任を負います。使用貸借の具体的な事実関係によっては、貸主の運行供用者責任が否定される場合があります。詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。家族や友人に自動車を無償で一時的に貸した貸主の損害賠償責任加害車両の貸主(所有者)が、自賠法(自動車損害賠償保障法)第3条に定める運行供用者に該当すれば、貸主に対し損害賠償請求できます。運行供用者というためには、事故時の加害車両の運行について、運行を支配し、かつ、運行の利益が帰属していなければなりませんが、貸主が運行支配・運行利益を有していたことを、損害賠償請求する被害者の側が立証する必要はありません。貸主の側が「運行支配・運行利益を有していなかった」ことを立証しなければならず、被害者は、貸主が加害車両の所有権または使用権を有していたことを主張・立証すれば足りるとされています。原則として、貸主は「運行供用者責任」を負う家族や友人に一時的に車の使用を許諾したような場合は、貸主(所有者)に、運行支配も運行利益も残っていると考えられ、原則として、貸主は運行供用者としての責任を負うことになります。家族や友人に車を貸すときは、無料で短期間だけ貸すのが普通です。貸主と借主との間には緊密な人間関係があり、一定期間経過後に返還が予定され、貸主はいつでも返還を求めることができる状況にあります。そのため、貸主の運行支配は、貸出中も継続していると考えられ、さらに、貸主に経済的利益はないものの、運行利益があるとされます。つまり、借りた車を運転中に交通事故を起こした場合は、運転者はもちろん、車の貸主(所有者)も運行供用者であり、事故の賠償責任を負う運行供用者が、複数存在することになります。貸主は、貸した車が事故を起こしたとき、運行支配・運行利益を失っていたことを主張・立証しない限り、運行供用者責任を免れません。貸主の「運行供用者責任」を問えないケース借主が、予定の返還期限を著しく徒過して使用を継続したり、貸主に無断で第三者に転貸したような場合は、貸主の運行支配・運行利益が失われ、運行供用者責任が否定されることがあります。貸主の運行供用者責任を否定した事例を紹介します。貸主の運行供用者責任を否定した最高裁判例車の所有者A(貸主)は、友人B(借主)に、2時間後に返還するとの約束で自動車を無償で貸しました。ところが、借主Bは、約束に反して自動車を返還せず使用を継続し、約1ヵ月後に自動車を運転中に事故を起こしました。認定された事実関係は、こうです。借主Bは、もともと自動車を長期間乗り回す意図の下に、2時間後に確実に返還するかのように装い、貸主Aを欺いて自動車を借り受けた。借主Bは、返還期限を経過した後、たびたび貸主Aに電話をして、返還の意思もないのにその場しのぎの約束をして返還を引き延ばしていた。貸主Aは、借主Bから電話連絡を受けた都度、自動車を直ちに返還するよう求め、Bに使用の継続を許諾したものではなかった。こうした事実関係の下では、事故当時の自動車の運行は、専ら借主Bが支配しており、貸主Aは何らその運行を指示、制御し得る立場になく、その運行利益も貸主Aに帰属していたとはいえないことが明らかであるから、貸主Aは、自賠法3条にいう運行供用者に当たらないと解するのが相当である、と判示しました。最高裁判決(平成9年11月27日)この裁判の原原審は、貸主が「被害届を出す」などと言って強く返還を求めていれば、借主は車を返還していた可能性があったとして、貸主の運行供用者責任を認めました。それに対し、原審は、貸主は車を「だまし取られた」も同然で、借主から電話連絡がされている状況で盗難届を提出するのは困難であったとして、貸主の運行供用者責任を否定しました。最高裁も、原審の判断を是認しました。原審と最高裁は、事実関係から本件は泥棒運転に近いと判断したのです。この最高裁判例は、事実関係から貸主の運行供用者責任を否定しましたが、貸主が「借主の使用を黙認していた」とみられるような場合は、貸主の運行供用者責任が肯定されると考えられます。貸主が運行供用者責任を負うかどうかは、使用貸借の具体的な事実関係によって決まり、個別に判断することが必要です。貸主の運行供用者責任を否定した最高裁の結論に対し、所有者の回収努力が「早く返せ」というだけでは不十分であり、使用の継続を黙認していた一面も否定しがたいと、疑問を呈する指摘もあります。(別冊ジュリスト №152『交通事故判例百選・第四版』7ページ)貸主の運行供用者責任を否定する要素とは?一般的に、自動車を貸与した時点では、貸主の運行供用者責任が認められます。しかし、上記の最高裁判例のように、一定期間が経過した後、何らかの事情により貸主の運行支配・運行利益が失われる場合があります。どのような事実があれば、貸主の「運行を指示・制御しうる立場」が失われ、貸主の運行供用者責任が否定されることになるのでしょうか?この点について、山崎秀尚判事が「返還約束徒過後の貸主の運行供用者責任について」(判例タイムズ№1024)で検討しています。そのポイントをご紹介します。山崎秀尚判事は、返還期限徒過後に借主が交通事故を起こし、貸主の運行供用者責任が問題になった裁判例を分析し、「貸主の責任否定要素」として次の8つを挙げ、各要素の重要度を詳細に検討しています。①貸主と借主の人的関係の希薄性の程度4人的要素②借主と運転者の不一致③使用内容に関する欺罔行為の有無3態様的要素貸与時④貸主の意思と現実の使用との不一致の有無、程度1運行時⑤返還期限徒過後の経過時間の程度⑥借主側の運行費用の負担の有無、程度5⑦運行態様に対する貸主の指示とその違反の程度⑧返還に対する貸主の努力の有無、程度2返還期限徒過後の事情8つの「貸主の責任否定要素」のうち、重要な順序を赤数字で示しています。貸主の責任否定要素の重要度の順序貸主の責任否定要素として重要と考えられる順に見ていきましょう。最も重要な要素は、「④貸主の意思と現実の使用との不一致の有無、程度」です。借主と実際の使用者が異なる場合や、使用目的や使用期間が約束と違う場合などは、貸主が指示・制御できなくなることがあるからです。2番目に重要な要素は、「⑧返還に対する貸主の努力の有無、程度」です。返還期間を徒過したり、目的と異なった使用がなされたからといって、それだけで貸主が運行を指示・制御できなくなるわけではありません。返還手段を取りえない状況に至って初めて、指示・制御しうる立場にないといえます。3番目に重要な要素は、「③使用内容に関する欺罔行為の有無」です。これは、④を当初から当然に生じさせる点で重要な要素です。返還時期や使用者といった使用内容に関する欺罔は、貸主の指示・制御しうる立場に大きく影響し、貸主の運行支配・運行利益を否定する方向に働きます。とはいえ、貸主が返還に対する十分な努力を尽くしたうえで、考慮される要素となります。4番目は、「①貸主と借主の人的関係の希薄性の程度」です。①は、そもそも貸借関係において、制御可能性がないほど人的関係が希薄ということは考えにくいので、責任否定要素としてはそれほど大きくはありませんが、制御可能性に関わる要素です。5番目は、「⑥借主側の運行費用の負担の有無、程度」です。⑥は、別の観点からの判断要素で、その余の考慮材料となります。なお、②、⑤、⑦は、④の程度を検討する要素として、この順に重要とされます。どの要素が特に重要か?貸主の責任否定要素として重要な順にまとめると、④、⑧、③、①、⑥の順に重要であり、④の程度を検討する要素として、②、⑤、⑦の順に重要と考えられます。特に、④、⑧、③が認められれば、運行支配・運行利益を失ったとされる可能性が高いといえます。④、⑧のみで運行支配・運行利益を失ったと判断されることもあり得ます。②が認められると④の評価が大きくなり、加えて⑤が相当程度大きくなれば、④と⑧のみで運行支配・運行利益を失ったと評価されることはあり得ると考えられます。返還に対する貸主の努力の有無・程度返還に対する貸主の努力が十分でない場合は、返還期限徒過後の運行を黙認・追認していたとみなされる余地があります。すなわち、貸主は、運行供用者責任を免れることはできません。この点は、被害者の側からすれば重要です。どこまで努力すればよいかは、他の要素との関係で異なります。しかし、基本的には、人的関係を通じての追跡が困難となっただけでは足りず、警察に届けるか、少なくとも届出をしようと相談した程度の行動が必要と考えられます。自動車を貸与する場合、見ず知らずの人に貸すことは考えにくいので、警察に届け出ることまで要求するのは酷ではないか、という意見もありますが、貸主が運行供用者責任を負うか否かは、被害者にとっては自賠責保険金が支払われるか否かの問題です。自賠責保険制度は、そもそも被害者保護を目的としています。その政策的観点からすると、貸主の積極的な努力が要求されるのは当然でしょう。まとめ自動車の貸主は、原則として運行支配・運行利益を失いません。つまり、貸主には、原則として運行供用者責任があります。約束していたのと使用目的が違い、返還期限を著しく超えたからといって、ただちに貸主の責任が否定されることはなく、貸主が借主の運転を排除するための措置をとって初めて、その責任を免れると考えられます。貸主の運行供用者責任が否定されるケースは多くありませんが、使用貸借の具体的事情によっては、貸主の運行支配・運行利益が失われていたと判断され、運行供用者責任が否定されることもあります。貸主の運行供用者責任を問えるかどうかどうかは、具体的な事実関係をふまえて個別に判断する必要があります。判断が難しい場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連運行供用者とは?運行供用者の判断基準(運行支配・運行利益)【参考文献】・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 39~41ページ・『交通事故の法律知識 第4版』自由国民社 18ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 72~73ページ・『判定タイムズ№1024』 30~39ページ・別冊ジュリスト№152『交通事故判例百選 第4版』 6~7ページ・別冊ジュリスト№233『交通事故判例百選 第5版』 4~5ページ
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  • 運行供用者・保有者・運転者・被保険者
    自賠法が規定する運行供用者・保有者・運転者・被保険者の違い
    自賠法(自動車損害賠償保障法)において、損害賠償の責任主体は運行供用者で、自賠責保険の被保険者は自動車の保有者と運転者です。ここでは、自賠法における運行供用者・保有者・運転者・被保険者の関係と違いを見ていきましょう。自賠法では、運行供用者に損害賠償責任がある自賠法は、人身事故の損害賠償責任について、次のように定めています。自賠法3条自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。「自己のために自動車を運行の用に供する者」を運行供用者といいます。自賠法では、運行供用者が、損害賠償の責任主体です。事故を起こした運転者でなく、運行供用者に損害賠償責任があります。もっとも、運転者が運行供用者という場合もあり、マイカーの事故は、たいてい運転者と運行供用者が同一です。この場合、運転者が運行供用者として、自賠法3条の損害賠償責任を負います。「自己のために」とは、自動車の使用についての支配権と、その使用により享受する利益とが、自己に帰属することを意味します。運行供用者の判断基準についてはこちらをご覧ください。自賠法の定める運転者は、通常の運転者の概念と異なる運転者については、自賠法で次のように定義しています。自賠法2条4項この法律で「運転者」とは、他人のために自動車の運転または運転の補助に従事する者をいう。自賠法の運転者は、他人のために運転や運転補助する人一般的には、自動車のハンドルを操作する者を運転者と呼びますが、自賠法では「他人のために自動車の運転または運転の補助に従事する者」を運転者と定義しています。自賠法の定める運転者は、他人のために運転する者ですから、自己のために自動車を運行の用に供する運行供用者には当たりません。したがって、自賠法3条の運行供用者責任を負いません。ただし、事故を起こした当事者として過失があれば、民法709条の不法行為による損害賠償責任を負います。なお、自己のために運転する一般的な意味での運転者は、自賠法では運行供用者に分類されます。自分の車を自分で運転する場合はもちろん、人の車を借りて運転する場合も、無断運転や泥棒運転であっても、自己のために運転する運転者は、運行供用者です。つまり、自賠法における運転者とは、通常の運転者の概念から、運行供用者を除外し、運転補助者を加えたものといえます。運転者・運転補助者とは自賠法でいう運転者・運転補助者とは、次のような人です。運転者自動車の所有者との雇用関係にもとづき運転している者、委任関係にもとづき運転している者など。運転補助者クレーン車の玉掛作業者、車掌、工事車両の誘導者など。例えば、運送会社の従業員が、配送業務のため会社所有のトラックを運転中に事故を起こした場合、運送会社は運行供用者として自賠法3条の運行供用者責任を負い、従業員は運転者として民法709条の不法行為責任を負います。保有者は、正当な使用権限を有する運行供用者保有者については、自賠法で次のように定義しています。自賠法2条3項この法律で「保有者」とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいう。保有者としての要件は、①自動車を使用する権利を有する者、②自己のために自動車を運行の用に供するものです。この2つの要件を両方とも満たすのが保有者です。自動車を使用する権利を有する者使用する権利とは、法律上の正当な権限に基づく使用権を意味します。所有権に基づくもの、使用貸借契約や賃貸借契約に基づくもの、委任契約に基づくものなどがあります。したがって、所有者や所有者の許諾を得て使用する者など、正当な権限に基づき使用する者が保有者に該当し、所有者の許諾なく不正に使用する者(無断運転者・泥棒運転者)は保有者に該当しません。自己のために自動車を運行の用に供するもの「自己のために」とは、自動車の使用についての支配権と、その使用により享受する利益とが、自己に帰属することを意味します。これは自賠法3条の運行供用者と同義ですから、運行供用者であることが、保有者のもう1つの要件ということになります。自賠法の定める運転者は「他人のために」運転しますから、保有者に該当しません。つまり、保有者とは、運行供用者のうち、自動車を使用する正当な権限を有する者といえます。保有者に運行供用者責任が生じると、自賠責保険金が支払われる保有者は、自賠責保険の被保険者の範囲を定めるものとして重要です。自賠法11条1項責任保険の契約は、第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。(※自賠責共済については、第2項で同様に規定されています。)自賠責保険から保険金が支払われるのは、保有者に運行供用者責任(自賠法3条による損害賠償責任)が生じた場合です。自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者自賠法の定める自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者です。保有者は、運行供用者責任を負うことが一般的であるため、被保険者として法定されています。運転者は、運行供用者ではないため、自賠法3条の運行供用者責任を負うことはありませんが、直接の加害者として不法行為責任(民法709条)を負うことが想定されるため、被保険者として法定されています。なお、運転者は、保有者が運行供用者責任を負う場合に被保険者となるのであって、運転者が単独で被保険者となることはありません。自賠責保険金が支払われないケース保有者でない運行供用者、すなわち、自動車を不正に使用した者に損害賠償責任が生じても、自賠責保険から保険金は支払われません。この場合、被害者は政府保障事業に損害の填補を請求することになります。運行供用者・保有者・運転者・被保険者の関係自賠法における運行供用者・保有者・運転者・被保険者の関係をまとめると、次のようになります。運転者他人のために自動車の運転・運転補助をする者。自賠責保険の被保険者運行供用者自己のために自動車を運行の用に供する者。保有者自動車を正当に使用する権利を有する者。所有者、所有者の承諾を得て使用する者など。自動車を不正に使用した者無断運転者、泥棒運転者など。自己のために自動車を運行の用に供する運行供用者と、他人のために自動車を運転または運転補助する運転者に、大きく分かれます。運行供用者は、自動車を正当に使用する権利を有する者(=保有者)と、不正に使用した者に分かれます。保有者に運行供用者責任(運行供用者としての損害賠償責任)が発生したときに、自賠責保険金が支払われます。自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者です。人身事故を起こした相手が自動車を不正に使用していた場合、相手は「運行供用者」ではありますが「保有者」ではないため、自賠責保険から保険金(損害賠償額)は支払われません。こういう場合は、被害者は政府保障事業に損害の填補を請求することができます。まとめ自賠法では、運行供用者が損害賠償責任を負い、自動車の保有者に損害賠償責任が発生したときに、自賠責保険から保険金が支払われます。自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者です。自賠法に定める運転者は、通常の運転者の概念と異なり、他人のために運転または運転補助に従事する者のことで、運行供用者には当たりません。保有者でない運行供用者に賠償責任が発生しても、自賠責保険から保険金は支払われません。この場合、被害者が、政府保障事業に損害の填補を請求することになります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 10~13ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 63~66ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 41~44ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 29ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 3~12ページ・『新版 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 57~59ページ、71ページ・『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第2版』弘文堂 16~19ページ、126~128ページ・『交通事故事件対応のための保険の基本と実務』学陽書房 83~87ページ
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  • 運行供用者
    運行供用者とは?運行供用者の判断基準(運行支配・運行利益)
    自動車の運行による人身事故で怪我をした被害者は、加害車両の運行供用者に対して、自賠法(自動車損害賠償保障法)3条に基づき、損害賠償を請求できます。このとき問題になるのは、運行供用者はだれか、ということです。運行供用者とは?どんな人が運行供用者にあたるのか?運行供用者に該当するかの判断基準は?裁判例の動向もふまえて、詳しく見ていきましょう。運行供用者とは?自賠法は、自動車で人身事故を起こしたときの損害賠償責任について、次のように定めています。自動車損害賠償保障法 3条自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。この条文中の「自己のために自動車を運行の用に供する者」が、いわゆる「運行供用者」です。ただし、自賠法には、自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)の定義規定がなく、運行供用者がどのような者であるか、一義的には明らかでありません。そのため、損害賠償請求する相手方である運行供用者について、判例に基づいて判断することになります。では、運行供用者とは、どんな人が該当するのか?運行供用者の判断基準自賠法の立案担当者の考え方や最高裁判例をもとに、運行供用者の判断基準について、見ていきましょう。自賠法立案担当者の考え方運行供用者について、自賠法の立案担当者は、こう説明しています。「自己のために」というのは、自動車の運行についての支配権とそれによる利益が自己に帰属するということを意味する。従って、この者は、通常自動車の保有者であり、例えば、会社の業務のために自動車を運行している場合には、運行供用者は、運転していた者ではなく、会社になる。(国土交通省物流・自動車局 保障制度参事官室監修『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 35ページ)通常自動車の所有者または使用者等のように、自動車の使用について支配権を有し、かつ、その使用によって利益を受ける者を指している。(運輸省自動車局編『自動車損害賠償保障法の解説』大蔵省印刷局1955年 29ページ)最高裁判例による判断基準最高裁は、次のような判断基準を示しています。最高裁判決(昭和43年(1968年)9月24日)自賠法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する。この判決は、最高裁が「自己のために自動車を運行の用に供する者」について、「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者」と明示して判断の枠組みを提示した点で、実務上重要な意義があります。運行供用者が損害の賠償責任を負う根拠は、「危険責任」と「報償責任」にあると理解されています。運行支配は「危険責任」から、運行利益は「報償責任」から導かれる要素であり、このことから、運行支配と運行利益を有する者が、運行供用者とされているのです。危険責任危険物の管理者は、危険物から発生した損害に責任を負うべきという考え方です。自動車の運行という危険性を有するものを支配している者が、損害賠償責任を負うということです。報償責任利益を上げる過程で従業員等が他人に与えた損害は、利益を得る者が負担すべきという考え方です。自動車を運行することによって利益を受ける者が、損害賠償責任を負うということです。このように、運行支配と運行利益の2つの要素から運行供用者性を判断する考え方は「二元説」と呼ばれ、その後の裁判例でも踏襲されており、自賠法の立案担当者の考えていたところにも沿うもので、現在の判例・通説となっています。ただし、運行支配と運行利益の2つの要素を運行供用者性の判断基準とするとしても、具体的にどのように判断すべきか、運行支配と運行利益の内容が問題となります。さらに最高裁判例を見ていきましょう。運行供用者は被害者保護の観点から広く認められるように運行支配と運行利益は、現実的な支配や利益である必要はなく、その内容は抽象化され、広く認められるようになってきています。運行支配の判断運行支配の内容については、当初は「直接的・現実的支配」を要するとしていましたが、被害者保護の観点から、次第に拡大して解されるように変化しています。上記の最高裁判決(昭和43年9月24日)は、子が所有する自動車を父親が借り受け、父親が自己の営業に常時使用していて事故を起こした事案について、運行支配と運行利益を判断基準として明示し、子は「自動車の運行自体について直接の支配力を及ぼしえない関係にあった」として、加害車両の所有者である子の運行供用者性を否定しました。しかし、このように支配の直接性を要求すると、被害者を救済できないことになり、被害者保護のために損害賠償責任を「加害運転者」でなく「加害車両の運行供用者」に負わせることとした意味が失われてしまいます。その後の判例では、自動車の運行を直接的・現実的に支配していなくても、間接支配・支配の可能性で足り、客観的・外形的支配、事実上の支配、自動車の運行について指示・制御をなしうべき地位にあればよい、というふうに運行支配の内容が修正されていきます。さらに、自動車の運行を事実上支配・管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視し、監督すべき立場にある場合や、第三者による運転を容認していた場合にも、客観的外形的に運行支配に当たると解して、運行供用者に該当すると判断しています。おもな最高裁判例を挙げておきましょう。最高裁第二小法廷判決(昭和43年10月18日)貸金の担保として自動車を預かった者(A)の従業員(B)が無断でその車を運転し、事故を起こした事案です。(A)は「事実上本件自動車の運行を支配管理し得る地位にあった」といえ、従業員(B)が無断で私用運転して事故を起こした場合でも、「客観的には(A)による運行支配可能な範囲に属し、(A)は右運行により起こった事故につき保有者としての賠償責任を免れない」としました。最高裁第二小法廷判決( 昭和44年9月12日)自動車修理業者が修理のため預かっていた自動車を、その従業員が私用のため無断で運転して事故を起こした事案です。「自動車修理業者が修理のため自動車を預かつた場合には、少なくとも修理や試運転に必要な範囲での運転行為を委ねられ、営業上自己の支配下に置いているものと解すべきであり」、その被用者による運行は「客観的には使用者たる修理業者の支配関係に基づき、その者のためにされたものと認めるのが相当であるから」、修理業者は「本件事故につき、自動車損害賠償保障法3条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者としての損害賠償責任を免れない」としました。最高裁第一小法廷判決(昭和45年7月16日)父と子(兄・妹)が同居し、家族で雑貨店とガソリンスタンドを営業。妹が、近所の怪我人を病院へ運ぶため、兄所有・家業にも使用している自動車を独断で運転し、事故を起こした事案です。自動車の所有者である兄はもとより、一家の責任者として家業を総括していた父も、「自動車の運行について指示・制御をなしうべき地位にあり、かつ、その運行による利益を享受していたものということができる」として、父および兄の両名が運行供用者に当たるとしました。最高裁第三小法廷判決(昭和46年11月9日)レンタカーを借りた者が事故を起こした事案です。レンタカー業者が、利用申込者につき、運転免許その他一定の利用資格の有無を審査し、契約において、使用時間や方法の定め、料金額の定め、走行区域や制限走行距離の遵守などの義務づけがあるときは、レンタカー業者は「本件自動車に対する運行支配および運行利益を有していたということができ、自賠法3条所定の運行供用者としての責任を免れない」としました。最高裁第三小法廷判決(昭和50年11月28日)「自動車の所有者から依頼されて自動車の所有者登録名義人となつた者が、登録名義人となつた経緯、所有者との身分関係、自動車の保管場所その他諸般の事情に照らし、自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にある場合には、右登録名義人は、自動車損害賠償補償法3条所定の自己のために自動車を運行の用に供する者にあたると解すべきである」と、判断の枠組みを示しました。そのうえで、父と同居して家業である農業に従事する20歳の子が所有し、父の居宅の庭に保管されている自動車につき、子が父の了解を得ることなく父を所有者登録名義人とし、その後了承を得ていたところ、子が事故を起こしたという事案につき、父は「本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあったのであって、右自動車の運行供用者に当たると解するのを相当とする」としました。最高裁第二小法廷判決(平成20年9月12日)Aが、父親B所有の自動車に友人Cを乗せて深夜バーに赴き、Cと共に飲酒。Aが泥酔して寝込んでしまったので、Cがバーのカウンター上に置かれていたキーを使用してAを同自動車に乗せて運転し、事故を起こした事案です。Aによる「運行はBの容認するところであったと解することができ」、飲酒したAが「友人等に本件自動車の運転を委ねることも、その容認の範囲内であったと見られてもやむを得ないというべきである」として、所有者Bは「客観的外形的に見て、本件運行について、運行供用者に当たると解するのが相当である」としました。最高裁第一小法廷判決(平成30年12月17日)Aは、生活保護を受けていたため、自動車を購入する際、自己の名義で所有すると生活保護を受けられなくなるおそれがあると考え、弟Bに名義貸与を依頼。Bの承諾のもと、Aは自動車を購入し、所有者および使用者の名義をBとしました。その自動車をBが運転中に、事故を起こした事案です。AとBは、住居・生計を別にし、疎遠で、Bは、本件自動車を使用したことはなく、その保管場所も知らず、本件自動車の売買代金、維持費等を負担したこともありませんでした。このような事実関係のもと、BのAに対する「名義貸与は、事実上困難であったAによる本件自動車の所有及び使用を可能にし,自動車の運転に伴う危険の発生に寄与するものといえる。また、BがAの依頼を拒むことができなかったなどの事情もうかがわれない。そうすると、…… BとAとが住居及び生計を別にしていたなどの事情があったとしても、Bは、Aによる本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあったというべきである。したがって、Bは、本件自動車の運行について、運行供用者に当たると解するのが相当である」としました。運行利益の判断運行利益の内容についても、現実的・具体的に運行による利益を享受するかどうかでなく、客観化・抽象化されています。また、運行供用者に該当するかについては、運行支配と運行利益の2つの要素を判断基準としつつも、実際には、運行支配を中心に運行供用者性を判断しているといえます。重要な判例として、昭和46年7月1日の最高裁判決がよく挙げられます。無断私用運転中の事故でも、所有者に運行利益があるとした事例です。運行利益について、運行を全体として客観的に観察して、所有者のためにされていれば足りるとし、二元説でも、運行支配が重要であることを明らかにしたのです。最高裁第一小法廷判決(昭和46年7月1日) 小規模の信用協同組合の常務理事Aが、長期出張に際し、同組合営業部長Bに、A所有の自動車を修理に出すよう委託し、修理工場への往復にはBの指示により組合従業員が運転にあたることを予想しつつ、不在中の自動車の管理をBに一任。Bから指示を受けた組合従業員Cが、組合の見習で自動車運転の業務にも従事していたDと相談のうえ、自動車を無断使用したのち組合事務所に届けておくこととし、Dが、修理の終わった自動車を修理工場から受け取り、Cを同乗させ運転して私用に赴いたのち、翌朝組合事務所への帰途に事故を起こしたという事案です。「運行を全体として客観的に観察するとき、本件自動車の運行がAのためになされていたものと認めることができる」とし、無断私用運転中の事故でも、所有者Aに運行利益があるとされました。「原判決が運行利益の帰属の有無について判断をしていないことを違法」とする主張に対し、最高裁は、「原判決も、このような趣旨において、前示事実関係を判示することにより、とくにAへの運行利益の帰属につき説示することがないとしても、おのずから、これを肯定したものと解することができる」としました。運行支配と運行利益の関係については、次のような指摘があります。自動車事故による損害に対する責任として重視されるべきは、自動車という危険物の利用に係る危険責任であり、自動車の運行を支配し、または支配し得べき立場にある者は、通常、その自動車の運行により何らかの利益を得ているはずであるから、運行支配に重点を置き、運行利益は補完的なもとの捉えることができる。(佐久間邦夫=八木一洋編『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院45ページ、森冨義明=村主隆行編著『交通関係訴訟の実務』商事法務88ページ)運行供用者に当たるか否かが問題となる主なケース運行供用者に該当するかが問題となる主なケースについて、判例がどのような判断を示しているか、まとめておきます。レンタカー業者レンタカー業者は、一般的に運行供用者に当たります(最高裁昭和46年11月9日判決、最高裁昭和50年5月29日判決)。この場合、レンタカー利用者も運行供用者に当たるので、運行供用者は複数いることになります。ただし、利用者が返却期限を大幅に超えて自動車を返却せず、レンタカー業者の支配管理可能性が失われたと認められる場合には、レンタカー業者の運行供用者性が否定されることもあります。リース会社リース会社は、基本的に運行供用者に当たりません。自動車の所有権はリース会社にありますが、単に割賦金の支払いを担保するためであり、ユーザーが自動車の管理支配権を全面的に有していると考えられるからです。ただし、契約にリース会社が自動車の運行を管理し得るような条項が含まれていたり、リース会社とユーザーとが一体のものと評価し得るような事情が存在するような場合は、リース会社も運行供用者に当たり得ます。自動車修理業者自動車が修理のために自動車修理業者に預けられている間は、修理業者がその運行を支配すると解され、修理を終えた自動車が修理業者から注文者に返還されたときには、特段の事情のないかぎり、その引渡の時以後の運行は注文者の支配下にあるものと解されます。したがって、自動車修理業者が修理のため預かった自動車を、その従業員が運転して事故を起こした場合には、それが従業員による無断私用運転であったとしても、修理業者が運行供用者責任を負います(最高裁昭和44年9月12日判決)。割賦販売における留保所有権者所有権留保特約付割賦販売契約によって売買された自動車が事故を起こした場合、所有権留保権者である自動車販売会社や信販会社の運行供用者性は、原則として否定されます(最高裁昭和46年1月26日判決)。所有権を留保した割賦販売業者(留保所有権者)は、代金債権の確保のために所有権を留保しているに過ぎず、自動車を引き渡して以降は、自動車に対する運行支配をしていないし、運行により利益を得ているわけでもないからです。使用貸借における貸主車の所有者から無償で車を借り受けたものが事故を起こした場合、原則として貸主(所有者)は運行供用者となります。貸与期間が比較的短期間で、その間に事故を起こした場合には、貸主(所有者)の運行供用者性が肯定されています(最高裁昭和46年1月26日判決)。他方、予定された貸与期間を著しく経過し、所有者が返還を求めて具体的な行動を起こしていたような場合には、貸主の運行支配は失われ、運行供用者ではなくなると考えられます(最高裁平成9年11月27日判決)。自動車を無償で貸与し、借主が事故を起こした場合の貸主の運行供用者責任については、貸主と借主との関係、貸与の目的、貸与期間の長短、返還期限の到来の有無、到来後の経過期間等の諸事情を総合考慮し、貸主の運行支配がどの程度及んでいるか、という観点から判断されます。借主のさらに友人が運転して事故を起こした場合にも、その運行が貸主(所有者)の容認の範囲内にあったと認められる場合には、貸主(所有者)の運行供用者性が肯定されています(最高裁平成20年9月12日判決)。なお、借主は運行供用者となるので、貸主も運行供用者となる場合には、運行供用者は複数いることになります。さらに詳しくは、次をご覧ください。自動車の借主が起こした事故で貸主の運行供用者責任を問えるか?無断運転された所有者無断運転者が、自動車の所有者と雇用関係や親族関係にある場合、客観的・外形的に所有者の権限に基づく支配内での運行といえ、所有者のための運転といえることから、特段の事情がない限り、運行供用者責任を免れないとする傾向にあります。無断私用運転というだけでは、特段の事情に当たらないとされています(最高裁昭和44年9月12日判決)。また、所有者に客観的容認があったと評価されてもやむを得ないような事情があれば、運行供用者性が肯定されます(最高裁平成20年9月12日判決)。容認の内容については、所有者が自動車を他人に使用させる意思を有していた場合(=主観的容認)だけではなく、客観的・外形的に容認していたと評価されてもやむを得ない事情がある場合(=客観的容認)も含まれると解されており、容認は、客観化・抽象化されています。なお、無断運転者も、運行供用者となります。さらに詳しくは、次をご覧ください。会社の車を従業員が無断運転して交通事故を起こしたときの会社の責任泥棒運転された所有者第三者による泥棒運転の場合、盗難被害にあった車両の所有者は、盗難被害車の運行を指示制御すべき立場になく、運行利益も帰属していないため、原則として、運行供用者責任を負わないとされていました(最高裁昭和48年12月20日判決)。現在は、盗難場所(第三者が容易に立ち入れる場所であるかなど)、車両管理状態(ドアロックやエンジンキーの状況など)、事故の状況(盗難から事故発生までの時間的・場所的関係など)、盗難発覚後の被害者の行動(警察への被害届の提出など)により判断し、所有者の運行供用者性が肯定されることがあります(最高裁昭和57年4月2日判決)。駐車場所、車両の管理状況、泥棒運転の経緯・態様などを総合的に考慮し、客観的に見て、所有者において第三者が車両を運転するのを「容認」したのと同視し得るような状況がある場合には、所有者の運行供用者性が肯定されます。なお、車を盗んで運転した泥棒運転者は、運行供用者に当たります。さらに詳しくは、次をご覧ください。盗難車・泥棒運転で交通事故を起こした場合の自動車所有者の責任名義貸与者名義貸与の依頼を承諾して、自動車の名義上の所有者兼使用者となった者(名義貸与者)は、「自動車の運行を事実上支配管理することができ、社会通念上自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視監督すべき立場」にある場合には、運行供用者責任が肯定されます(最高裁昭和50年11月28日判決、最高裁平成30年12月17日判決)。従来、購入資金等の関係で名義を貸しているだけの者は、運行供用者責任を負わないとする裁判例がありましたが、現在は、名義貸与者が運行供用者責任を免れるのは難しくなっています。なお、すでに自動車を売却して引き渡しも終えている、単なる名義残り(名義書換未了)の場合は、名義人の運行支配・運行利益は認められず、運行供用者責任は否定されます。運転代行業者運転代行業者は、自動車の使用権を有する者の依頼を受けて、その者を同乗させ、自動車を同人の自宅まで運転する業務を有償で引き受け、代行運転者を派遣して業務を行わせるものですから、運行供用者として認められます(最高裁平成9年10月31日判決)。従業員がマイカーで事故を起こしたときの雇用主従業員のマイカーの使用は、基本的には雇用主が関与しないところですから、従業員がマイカーで仕事中や通勤途中に事故を起こした場合、雇用主の運行供用者責任は、原則として否定されます。ただし、その車両が日常的に会社の業務に利用され、雇用主もこれを容認していたような事情がある場合には、雇用主の運行供用者責任が肯定される傾向にあります(最高裁昭和52年12月22日判決、最高裁平成元年6月6日判決)。まとめ運行供用者とは、自動車の運行について運行支配と運行利益が帰属する者とされています。自動車の運行を支配し、運行によって利益を享受する者が、運行供用者です。ポイントとなるのは運行支配・運行利益の内容ですが、現実的な支配や利益である必要はなく、かなり抽象化されています。運行支配については、直接的・現実的な支配が認められなくても、客観的・外形的に見て、事故車両を事実上支配ないし管理制御できる地位、あるいは規範的に見て間接的な支配ないしその可能性があれば足り、運行利益についても、何らかの社会的な利益があれば足りるとし、被害者の保護を厚くする方向で判断されています。運行供用者であるか否かが争点となることは、現在では多くはありません。自動車の所有者を相手に賠償請求すれば、運行供用者責任が否定されることは、まずないからです。運行供用者に該当するか否かが問題となる場合は、裁判例に基づき検討する必要がありますから、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『実務精選100 交通事故判例解説』第一法規 2~25ページ・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 254~261ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 66~69ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 44~51ページ・『交通事故判例140』学陽書房 8~13ページ・『交通事故損害賠償法 第3版』弘文堂 28~69ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 10~13ページ、39~68ページ・『判例タイムズ№228』115ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 87~98ページ・『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 35~36ページ、83~95ページ・『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第3版』光文堂 20~40ページ・『交通事故実務入門』司法協会 36~38ページ・『改訂版 交通事故事件の実務―裁判官の視点―』新日本法規 11~26ページ・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集―交通事故編―』第一法規 63~65ページ・『交通事故紛争解決法理の到達点』第一法規 206~252ページ
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  • 運行によって
    自動車の「運行によって」とは?運行起因性が認められる要件
    自賠法(自動車損害賠償保障法)における損害賠償責任の発生要件は、自動車の「運行によって」人身事故が発生することです。したがって、自賠法にもとづく損害賠償請求を行う場合は、その事故が「自動車の運行によって」生じたと認められなければなりません。つまり、「自動車の運行によって」をどう解釈するか、が問題となります。「運行によって」(運行起因性)については、「運行」と「によって」に分けて論じられることが多いので、ここでも分けて整理します。「運行によって」の「運行」とは?まず「運行」についてです。自賠法は、「運行」を次のように定義しています。自賠法2条2項この法律で「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。運行に当たるかどうかを判断する際、人や物を運送するかどうかは関係ありません。人や物を運送しない運行もあります。例えば、広報宣伝活動やパトロール活動などのために自動車を走行させる場合です。また、走行中でなくても、運行に当たる場合があります。運行に当たるかどうかが問題となるのは、多くは駐停車中の事故です。運行に当たるかどうかの判断は、「自動車を当該装置の用い方に従い用いること」の解釈によります。実は、これには様々な解釈があります。「当該装置」とは?ここでいう「当該装置」とは、自動車のエンジンその他の走行装置に限らず、クレーン車のクレーンのような固有装置も含むとされています。当該装置の「用い方に従い用いる」とは、当該装置を本来の目的に従って使用することです。これを「固有装置説」といい、現在の通説・判例とされています。「当該装置」の解釈には、固有装置説のほかに、原動機説、走行装置説、車自体説などがあります。各学説については、あとで詳しく説明します。自賠法の「運行」は、道路以外の場所も含む自賠法における「運行」の定義は、道路運送車両法における「運行」の定義と比べると、適用範囲が広くなっています。道路運送車両法では「運行」を次のように定義しています。道路運送車両法2条5項この法律で「運行」とは、人又は物品を運送するとしないとにかかわらず、道路運送車両を当該装置の用い方に従い用いること(道路以外の場所のみにおいて用いることを除く。)をいう。道路運送車両法では「道路以外の場所のみにおいて用いることを除く」のに対し、自賠法では場所的限定はありません。自賠法では、自動車を道路以外の場所で用いることも運行に当たります。例えば、工場の敷地等のみで自動車を用いる場合は、道路運送車両法の運行には当たりませんが、自賠法では運行に当たります。したがって、道路以外の場所での自動車の運行による人身事故も、自賠法3条による損害賠償責任が発生します。「自賠法の運行」は「道路運送車両法の運行」より範囲が広い(自賠法)2条2項にいう運行とは、道路運送車両法2条5項にいう運行よりも範囲が広く、工場敷地内や公園等道路以外の場所のみで自動車を当該装置の用法に従い用いる場合をも含むものと解すべきである…(最高裁第二小法廷判決・昭和48年7月6日)「運行によって」の「によって」とは?次に、「運行によって」の「によって」についてです。運行「によって」の解釈「によって」の解釈をめぐっては、大別して次の3つの見解があります。相当因果関係説運行と事故との間に相当因果関係が必要とする見解事実的因果関係説運行と事故との間に事実的な因果関係(その運行がなければ、その事故は発生しなかったであろうという関係)があれば足りるとする見解運行に際して説「運行によって」を「運行に際して」と解し、運行に際して事故が発生したものであればよいとする見解通説・判例は、相当因果関係説をとっています。民法709条(不法行為責任)の「故意または過失によって」と同じく相当因果関係を意味していると解されています。最高裁第三小法廷判決・昭和43年10月8日自動車損害賠償保障法3条は、自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる旨を定めているところ、右にいう「運行によって」とは運行と被害との間に因果関係があることを要するものと解すべきである。最高裁第三小法廷判決・昭和54年7月24日バスの右折と本件衝突事故との間に相当因果関係があるとした原審の判断は、正当として是認することができる。運行起因性が認められるケース・認められないケース自動車の運行と事故の間に相当因果関係が認められるということは、「運行起因性」が認められるということです。走行中の積荷の落下、油漏れによる後継者のスリップ事故、石をはじき歩行者を受傷させた場合などは、運行との因果関係が認められます。走行中に運転者または乗客が車外に物を投棄したことによる事故は、自賠責保険実務では、運行による事故とは認めていません。(参考:損害保険料率算出機構編『自賠責保険のすべて13訂版』保険毎日新聞社 92ページ)運行・運行起因性の解釈の変遷先にも紹介したように、自賠法2条2項は、運行とは「自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう」と定義しています。「当該装置」の解釈には、①原動機説、②走行装置説、③固有装置説、④車自体説があります。判例・通説は、原動機説、走行装置説を経て、現在は固有装置説に立っているとされます。近時は、「当該装置」の解釈にとらわれず、自賠法の趣旨・目的から運行起因性が認められるか否かを判断しようとする⑤危険性説、⑥固有危険性具体化説が有力です。今では「過去の見解」となっているものもありますが、現在の考え方を知るうえで重要ですので、各見解を簡単に紹介しておきます。原動機説自賠法2条1項、道路運送車両法2条2項において、「自動車とは、原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具」と定義していることから、「当該装置」は原動機装置(エンジンなど)を意味すると捉え、運行は、自動車を原動機の作用により移動させること、とする見解が「原動機説」です。原動機説によると、原動機によらない走行や、駐停車している状態は、運行に当たりません。原動機説は、運行供用者責任の成立範囲が狭く、被害者救済の観点から問題があるとされ、現在では、過去の見解とされています。走行装置説「当該装置」には原動機装置のほか、操向装置(ハンドル)や制動装置(ブレーキ)など走行と不可分の装置も含まれると捉え、運行は、走行装置を操作しながら走行すること、とする見解が「走行装置説」です。走行装置説によると、エンジンが故障して他の車にロープで牽引されている状態(原動機の作用によらない走行)であっても、ハンドルやブレーキ等を操作して走行していれば運行に当たります。しかし、走行装置説では、車両を駐停車した状態で、クレーン車のクレーンを操作したり、積荷の積み降ろしをすることなどは、運行に当たりません。走行装置説は、原動機説を一歩進めたものといえますが、原動機説と同様、運行供用者責任の成立範囲が狭くなるため、現在では、過去の見解とされています。「当該装置」には原動機だけでなく他の走行装置も含むとした裁判例運行の定義として定められた「当該装置」とは、エンジン装置、即ち原動機装置に重点をおくものではあるが、必ずしも右装置にのみ限定する趣旨ではなく、ハンドル装置、ブレーキ装置などの走行装置もこれに含まれる。(最高裁第三小法廷判決・昭和43年10月8日)固有装置説「当該装置」は、当該自動車に固有の装置を意味し、原動機装置や走行装置、ドア等の自動車の構造上設備されている各装置や、クレーン車のクレーン等も含まれると捉え、運行は、これらの装置の全部または一部をその目的に従って使用すること、とする見解が「固有装置説」です。固有装置説によると、走行中に限らず駐停車中であっても、ドアの開閉、クレーン車のクレーン操作、積荷の積み降ろし等も、固有装置の使用と捉えることができれば、運行に当たります。しかし、固有装置を使用していない単なる駐停車の状態の場合には、運行と解することは困難です。走行停止の状態で、クレーン車のクレーン操作が運行に当たるとされた事例自動車損害賠償保障法2条2項にいう「自動車を当該装置の用い方に従い用いること」には、自動車をエンジンその他の走行装置により位置の移動を伴う走行状態におく場合だけでなく、特殊自動車であるクレーン車を走行停止の状態におき、操縦者において、固有の装置であるクレーンをその目的に従って操作する場合をも含む。(最高裁第一小法廷判決・昭和52年11月24日)荷降ろし作業が運行に当たるとされた事例右事実関係のもとにおいては、右枕木が装置されている荷台は、本件車両(普通貨物自動車)の固有の装置というに妨げなく、また、本件荷降ろし作業は、直接的にはフォークリフトを用いてされたものであるにせよ、併せて右荷台をその目的に従って使用することによって行われたものというべきであるから、本件事故は、本件車両を「当該装置の用い方に従い用いること」によって生じたものということができる。(最高裁第一小法廷判決・昭和63年6月16日)昭和52年判決は、クレーン車を走行停止の状態におき、固有の装置であるクレーンを「その目的に従って操作する場合」も運行に含むと判示しました。この判決は、最高裁が固有装置説を採ったリーディングケースとして、重要な位置を占めています。昭和63年判決では、枕木が設置された荷台が当該車両の固有の装置に当たるとしたうえで、荷台を「その目的に従って使用すること」によって生じた事故につき、運行起因性を肯定しました。つまり、当該自動車の固有装置の操作・操縦でなくても、固有装置が本来的用法に従って使用されていれば、運行起因性を肯定し得ると、解釈が拡張されました。車自体説・車庫出入説「車自体説」「車庫出入説(車庫から車庫説)」は、「当該装置」を自動車それ自体と捉え、自動車が車庫を出て車庫に戻るまでの間が運行に当たるとする見解です。車庫を出て車庫に戻るまでは、途中で駐停車により路上にとどまる状態にある場合でも、自動車の使用は継続しているとして、運行に当たります。車自体説は、運行の概念を固有装置説より広く捉える見解です。もっとも、固有装置説は、固有の装置の意義・範囲が明確でないため、固有の装置を広く捉えれば、車自体説と異ならない結論にもなり得ます。上記の昭和63年判決は、「枕木が装置されている荷台」と限定的に貨物自動車の荷台を固有の装置と認めていますが、荷台を固有装置と認めるうえで、枕木の設置がどの程度重要なファクターであるのかは疑わしいとして、判例は「実質的には車自体説に近づいたものとなっているように思われる」との指摘もあります。(参考:北河隆之『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 69ページ)危険性説「危険性説」とは、「当該装置」の解釈にとらわれることなく、自動車そのものに内在する危険性を現実化すること(他人の生命・身体に害を加える危険性を持つ状態に自動車を置く行為)を運行と考える見解です。そもそも自賠法の趣旨・目的は、自動車に内在する「人の生命・身体を害する危険性」が現実化した場合に、被害者を保護することです(自賠法1条)。自賠法の趣旨・目的に立ち返って、運行起因性を実質的に考えよう、とするものです。現在の有力な考え方とは?判例・通説は「固有装置説」とされていますが、近時は「固有危険性具体化説」が有力です。固有装置説と危険性説を合わせたようなものです。固有危険性具体化説固有危険性具体化説とは、自動車に設備された装置を本来的用法に従って使用し、自動車固有の危険性(自動車に内在する人の生命・身体を害する危険性)を具体化させる行為を運行と考える見解です。事故当時の状況や事故の性質・内容等の諸般の事情(すなわち相当因果関係の有無)を考慮し、自動車に備えられた装置を本来的用法に従って使用した行為が、自動車固有の危険性を具体化させるものと言えるか否かを実質的に判断します。固有危険性具体化説による最高裁判例固有危険性具体化説によった最高裁判例として、次のものがあります。最高裁第二小法廷判決(平成28年3月4日)老人デイサービスセンターの利用者が当該センターの送迎車から降車し着地する際に負傷したという事故につき、送迎車の運転を担当したセンターの職員が降車場所として危険な場所に送迎車を停車しておらず、上記利用者が送迎車から降車した際に上記職員による介助を受けるという当該送迎車の危険が現実化しないような一般的な措置がされていたなどの事情の下においては、当該送迎車の運行が本来的に有する危険が顕在化したものであるということはできず、本件事故が当該送迎車の運行に起因するものとはいえない。本件は、任意自動車保険の搭乗者傷害特約の支払要件に関する事案です。同特約では、「被保険自動車の運行に起因する事故」を保険金の支払要件としています。この「被保険自動車の運行に起因する」は、自賠法の「自動車の運行によって」と同義と解されています。したがって、本判決は、自賠法における「自動車の運行によって」の解釈に関する最高裁の判断でもあるのです。この判決は、運行起因性の判断について、「車両の運行が本来的に有する危険が顕在化した事故であると評価されるか否か」ということが判断基準となることを最高裁が明らかにしたものと解され、固有危険性具体化説によったものと考えられています。東京地裁民事27部(交通部)は、現在この立場に立って運行起因性を解釈しているとされています。(参考:『実務精選100交通事故判例解説』第一法規 29ページ)運行起因性が認められる場合の例運行起因性が認められる可能性のある例を挙げておきます。あくまで一般論ですから、個別事案の判断は、弁護士にご相談ください。走行中車両同士の衝突、車両と歩行者・自転車などとの衝突は、自動車という危険物による事故なので、運行による事故と認められます。無接触であっても、自動車の走行が危険を与えた場合は、運行による事故と解されます。エンジンの故障によりロープ等で牽引され、自らのハンドル操作等により操縦の自由を有する場合、被牽引車両が起こした事故については、被牽引車両自体の運行行為となります。特殊自動車等の固有装置クレーン車のクレーン、ダンプカーのダンプ、ショベルカーのショベル、ミキサー車のミキサー等、これらの装置の操作に起因した事故については、運行による事故と解されます。駐停車中道路上に駐停車することによって、他の車両の円滑な走行を阻害し、他の車両、通行人に危険を生じさせるような場合には、駐停車中であっても運行に当たると解されます。停車中のドアの開閉による事故は、運行による事故と解されます。エンジンを作動させて停車中に一酸化炭素中毒により死亡した場合、運行による事故となり得る場合があります。荷物の積み降ろし貨物自動車の荷台を使用し、荷物の積み降ろし中に生じた事故は、運行起因性が認められる場合があります。運行起因性が認められない場合の例運行起因性が認められない場合の例を挙げておきます。あくまで一般論ですから、個別事案の判断は、弁護士にご相談ください。人の行為・第三の要因の介在車内でマッチをつけ火災になった場合、車内にパイプを用い排気ガスを引き込んで自殺した場合、積荷が化学反応を起こしたことによる火災や爆発などは、運行による事故には当たらないと解されます。故障修理・点検中修理工場内で修理作業や車検整備などを行っている自動車による事故については、運行に当たらないと解されます。ただし、道路上で、故障・点検修理などのため、駐停車禁止区域で駐停車中に追突事故が生じたような場合には、円滑な交通を妨げたとして運行に当たる場合があり得ます。自然現象地震、洪水、鉄砲水、落石、太陽熱、竜巻などによって生じた事故については、自動車は、当該自然現象の現れた場所に存在したにすぎず、通常運行によって発生した事故とは解されません。ただし、集中豪雨等による危険からの事故の発生が予見できるにもかかわらず、あえて運行している場合は、運行による事故と解される場合があり得ます。まとめ自賠法に基づく損害賠償責任が生じるのは、自動車の運行によって他人の生命・身体を害したときです。「運行によって」に該当するかどうかの判断は、固有装置説を採るのが判例・通説とされています。「運行」とは、「自動車を当該装置の用い方に従い用いること」です。「当該装置」とは、走行装置に限定せず、クレーン車のクレーンのように特殊自動車の固有の装置も含まれます。すなわち、当該自動車の固有の装置を本来の目的に従って使用することが運行です。運行「によって」とは、当該装置を本来の目的に従って使用したことと事故との間に相当因果関係があることです。この場合、運行起因性が認められます。近時は、「運行によって」を一体で解釈し、「自動車の危険性が顕在化した」場合に運行起因性を肯定するという考え方が有力です。裁判例は「運行」の概念を広く捉えるようになってきており、駐停車中であっても運行に当たると解し、自賠法を適用できるケースが広がってきています。なお、運行起因性が否定され、自賠法3条の運行供用者責任の成立が認められない場合でも、個別具体的事情によっては、民法709条の規定に基づく不法行為責任が成立する場合があります。これらのことをふまえて、加害者や保険会社に損害賠償を請求することが大切です。お困りのことがありましたら、交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでの無料相談のお申込みは、公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※加害者の方や物損のみの相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『自賠責保険のすべて13訂版』保険毎日新聞社 88~92ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 104~112ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 19~24ページ・『交通事故損害賠償法第2版』弘文堂 64~82ページ・『Q&A新自動車保険相談』ぎょうせい 26~34ページ・『新版逐条解説自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 50~67ページ・『逐条解説自動車損害賠償保障法第2版』弘文堂 6~16ページ、40~51ページ・『損害保険の法律相談Ⅰ<自動車保険>』青林書院 20~21ページ、26~33ページ・『交通事故の損害賠償とADR』弘文堂 4~8ページ・『交通事故事件の実務-裁判官の視点-』新日本法規 24~31ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 69~70ページ・『実務家が陥りやすい交通事故事件の落とし穴』新日本法規 21~29ページ・『要約交通事故判例140』学陽書房 16~19ページ・『改訂版交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 247~254ページ・『新版交通事故の法律相談』青林書院 24~25ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 51~57ページ・別冊ジュリスト№152『交通事故判例百選第4版』有斐閣 30~41ページ・別冊Jurist №233『交通事故判例百選第5版』有斐閣 24~37ページ・『実務精選100交通事故判例解説』第一法規 26~35ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 332~338ページ、372~377ページ
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  • 違法駐車車両への衝突事故
    違法駐車車両への衝突事故で車両所有者の責任を問えるか?
    夜間にバイクで走行中、道路上に違法駐車していた自動車に追突して怪我をしました。相手の運転手は「止まっている車にぶつかってきたのだから、そっちに全責任がある」といいますが、駐停車車両の責任は問えないのでしょうか?「止まっている自動車に責任はない」といわれることがありますが、それは誤りです。駐停車の態様が事故を引き起こす一因となっている場合は、責任を負います。相手の車が動いていなかったとしても、その車両の運行起因性(事故が駐停車車両の運行によって生じたこと)が認められれば、自賠法上の責任を問えます。違法駐車の場合には、運行起因性が認められやすい傾向があります。運行起因性が認められない場合でも、駐停車車両の存在と事故発生との間に相当因果関係があれば、駐車車両の運転者は、民法上の損害賠償責任を負います。なお、駐停車車両の側の責任が認められた場合でも、たいてい駐停車車両に衝突した側にも前方不注視などの過失が認められ、過失相殺により損害賠償額が減額されます。駐停車車両の責任駐停車車両の「運行によって」生じた事故であることが認められれば、駐停車車両の運行供用者は、自賠法3条に基づく損害賠償責任を負います。駐停車車両の存在と事故発生との間に相当因果関係が認められれば、駐停車車両の運転者は、民法709条に基づく損害賠償責任を負います。※ここに記載しているのは一般論ですので、具体的な事案については、弁護士にご相談ください。\ 相談無料・24時間365日受付・全国対応 /交通事故被害者におすすめの弁護士事務所はこちら詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。なお、ここでは、駐停車が、自賠法の「自動車の運行によって」の規定に該当するか否か、すなわち、駐停車車両の側が自賠法上の運行供用者責任を負うか、を中心に見ていきます。仮に、自賠法上の責任は負わなくても、駐停車車両を管理する責任のある者は、何らかの過失が認められ、駐停車車両の存在が事故の一因となった場合には、民法上の不法行為責任を免れることはできません。「自賠法の運行供用者責任」と「民法の不法行為責任」の違いはこちら駐停車車両の運行起因性の判断基準自賠法(自動車損害賠償保障法)は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命・身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と定めています(自賠法3条)。自賠法上の損害賠償責任(運行供用者責任といいます)を負うのは、自動車の「運行によって」人を死傷させたときです。したがって、駐停車車両の側に自賠法上の責任を問うには、駐停車が自賠法の規定する「運行」に当たるか、さらに、駐停車(=運行)と事故との間に相当因果関係があるか(運行起因性が認められるか)がポイントです。駐停車が「運行」に当たるか駐停車が「運行」に当たるか否かは、走行との時間的・場所的な関連性、駐停車の目的等から、当該駐停車が前後の走行と一体といえるか、によって判断されます。近時は、走行と一体性・連続性のある駐停車は、運行自体に含まれると解する裁判例が一般的となっています(『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第2版』弘文堂15ページ)。すなわち、短時間の駐車あるいは場所的に長時間駐車することが認められていない場合は、運行に当たります。長時間駐車しており、場所的にも長時間の駐車が是認できる場合は、運行に当たりません。したがって、駐停車が禁止されている道路上に駐停車していた場合は、「運行」に当たるといえます。駐停車禁止場所への駐停車は、違法状態の解消が法的に義務付けられるので、違法駐停車車両をその場所から移動させなければなりません。つまり、駐停車禁止場所への駐停車は一時的なものであって、速やかに走行することが予定されていると解されます。走行と一体性・連続性のある駐停車となりますから、違法駐停車は「運行」に当たるといえるのです。よくある例として、翌朝走行するつもりで深夜に違法駐車していた場合は、運行と解されています。他方で、長期に渡り放置され、もはや不法投棄としかいえないような駐車車両(駐車といるのかすら問題となる状態)の場合は、運行と解することはできないでしょう。駐停車と事故との間に相当因果関係があるか駐停車が「運行」に該当するとしても、駐停車と事故発生の間に相当因果関係がなければ、駐停車車両の「運行によって」生じた事故とはいえず、自賠法上の運行供用者責任を問うことはできません。例えば、バイクで走行中に転倒して道路を滑走し、駐車していた車両に2次衝突したような場合は、たとえ駐車車両が違法駐車で「運行」に該当するとしても、駐車と事故発生との相当因果関係は否定されることがあります。このような場合は、「運行によって」生じた事故といえず、駐停車車両の運行供用者責任を問うことはできません。駐停車が「運行」に当たるというだけでなく、あくまで駐停車と事故との相当因果関係が必要です。「運行によって」の解釈運行の概念について、現在の通説・判例は「固有装置説」ですが、駐停車車両の存在による事故は、何らかの装置を使用中に生じたものではないので、固有装置説による説明には馴染みにくい事故類型です。そのため、走行との時間的・場所的関連性、近接性、駐車目的などから、前後の走行行為と一体として「運行」に該当するかどうかが判断されています。近時は「固有危険性具体化説」が有力です。事故当時の状況、事故の性質・内容等を考慮し、駐停車によって事故発生の危険性を高め、現に事故が発生したのであれば、駐停車中の事故も自動車固有の危険性が具体化した事故として、すなわち「運行によって」生じた事故として、説明することができます。「運行によって」の学説・判例について詳しくはこちら駐停車車両の運行起因性が問題となるケース駐停車車両の存在による事故の主な態様としては、次の4つがあります。駐停車車両への追突事故駐停車車両を避けようとして生じた事故(転倒事故、他の車両・歩行者との衝突事故)駐停車車両が障害となり、見通しが悪くなったために生じた事故(他の車両・歩行者との衝突事)他の車両等との事故(第1事故)の被害者(車両)が駐停車車両と衝突した事故(第2事故)①の駐停車車両への追突事故の場合は、駐停車車両の運行起因性が認められることが多いのですが、その他の②~④の場合は、駐停車と事故との相当因果関係が問題となることが多くあります。駐停車車両への追突事故の場合「自動車が道路上に駐車している場合も運行状態にあたると解すべき」(東京高裁判決・昭和51年6月28日)であるとして、道路上への違法駐停車の場合、駐停車していた自動車の運転者等に運行供用者責任を認める裁判例は多くあります。違法駐停車の運行起因性を認めた例東京地裁判決(平成8年9月19日)夜間、大井コンテナ埠頭付近の道路上に、牽引車両を切り離して駐車されていたトレーラー(コンテナ積載用台車)の後部に、普通乗用自動車が衝突した事故です。本件道路が終日駐車禁止である上、駐車の方法はできる限り道路の左側に沿い、他の交通の妨害とならないようにし、夜間の駐車については、車幅灯、尾灯、その他の灯火を付けなければならないのにもかかわらず、本件トレーラーの運転者はこれらの義務を怠り、夜間、灯火を付けることなく、片側5車線の道路のセンターラインから2車線目にできていたトレーラーの駐車列の最後尾に本件トレーラーを駐車し、交通の危険を増大させたとして、トレーラー運転者の過失を認め、その使用者に対し民法715条に基づく使用者責任を認めました。また、翌日には再び牽引車両を接続し運行される予定であったことから、この駐車はなお運行中の一態様と解すべきとし、トレーラーの所有者に対しては、自賠法3条にいう運行に当たると解し、同条に基づく責任(運行供用者責任)を認めました。なお、被害車両の運転者には、制限速度の時速50㎞を20㎞超える時速70㎞で走行した過失と前方不注視の過失があったとし、過失相殺3割としました(被害車両運転者の過失3割)。(参考:判例タイムズ№925号269ページ)大阪高裁判決(平成19年2月27日)駐車禁止の片側3車線の道路で自動二輪車が急ブレーキをかけ、転倒した運転者が道路を滑走し、この道路上の第1車線(左側車線)に駐車していた普通乗用自動車に衝突して死亡した事故です。この駐車車両は結果的に7時間にわたって事故現場に駐車されており、駐車禁止場所であること等を考慮すれば、車両を長時間放置するという趣旨ではなく、一時的な駐車にとどまり、運転を再開することが予定されていたものと認められ、なお運行状態にあったものと認められるとして、車両の駐車は運行に当たるとしました。過失相殺8割。違法駐停車と事故との相当因果関係を否定した例違法駐車車両に対する衝突であっても、2次衝突であった場合に、駐停車と事故との相当因果関係を否定した事例があります。駐停車と事故との相当因果関係が必要です。大阪地裁判決(平成13年5月29日)片側2車線道路の交差点付近で自転車と大型自動二輪車が衝突し、自動二輪車の運転者が違法駐車車両に2次衝突した事故です。本件事故について具体的な危険を作出していない違法駐車車両に、たまたま事故車両に2次衝突されたからといって責任を負わせることは結果責任を認めるに等しく、不法行為責任発生の前提としての行為と結果との間に相当因果関係を要求する不法行為の原則に反するとし、相当因果関係を否定しました。大阪地裁判決(平成9年12月18日)パトカーの追尾を免れるため高速走行した自動二輪車がカーブを曲がり切れずに転倒して滑走し、駐車中の普通乗用車に衝突した事故です。本件事故は自動二輪車の運転手の一方的な過失によって発生したものというべきとし、駐車と本件事故の発生との間には相当因果関係を認めることができないとしました。駐停車車両との非接触事故の場合駐停車車両の存在が関与する事故には、駐停車車両とは衝突・接触しなかったとしても、駐停車車両を回避しようとして対向車と衝突したり(回避型)、駐停車車両の存在が障害となり見通しが悪く事故を起こしたり(遮蔽型)する場合もあります。こうした非接触事故(駐停車車両との関係で非接触)では、駐停車と事故との相当因果関係の有無が問題となります。このような場合は、駐停車車両が惹起せた危険が、事故の発生に相当な関与をしているかどうかで判断します。すなわち、道路交通法に違反する駐停車方法であり、駐停車の場所、時間帯、駐停車の継続時間などの要素を総合的に判断することになります。大阪地裁判決(平成2年9月17日)道路脇に違法駐車していた貨物車両を避けるために道路中央付近を走行してきた普通乗用自動車と対向してきた自動二輪車が衝突し、自動二輪車の同乗者が負傷した事故です。道路上に駐停車中の自動車は他の車両等の円滑な交通の妨げとなってその交通上の危険を多少とも増大せしめるものであるが、道路の状況、夜間における駐車灯点灯の有無等の駐車の態様によっては、走行中の自動車に劣らない違憲性を有することがある点を考え合わせると、被告車の本件駐車は運行に当たるというべきである、としました。千葉地裁判決(平成6年1月18日)交通整理の行われていない交差点において、自動車と自転車の出会い頭の衝突事故の際、別の貨物車両が交差点直前の駐車禁止場所に道路中央近くまで塞ぐように違法駐車していた事案です。交差点の直前での駐車禁止場所における違法駐車は、走行中の自動車に劣らない危険性を有することがあることを勘案すると、本件貨物車両の駐車は運行に当たると解するのが相当である、としました。まとめ駐停車車両の責任を問うには、自賠法の運行供用者責任と民法の不法行為責任がります。自賠法上の運行供用者責任は、事故が、その自動車の「運行によって」起きたと認められる場合に発生します。したがって、駐停車車両の運行供用者責任を問うには、事故が、その駐停車車両の運行によって生じたといえなければなりません。運行起因性が否定され、運行供用者責任が認められず、自賠法上の責任を負わなくても、そのような場所に駐停車させると事故を誘発することが予見でき、現実に駐停車車両の存在と事故発生との間に相当因果関係が認められるのであれば、民法上の不法行為責任を免れることはできません。なお、駐停車車両の関与する事故で、駐停車車両の自賠法上の責任や民法上の責任が認められる場合であっても、被害車両にも前方不注視等の過失が認められることが多く、その場合には過失相殺により、損害賠償額が減額されます。交通事故の被害に遭い、お困りのときは、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 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