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    むち打ち症(むち打ち損傷)とは?発生メカニズム・症状・分類
    ここでは、むち打ち損傷(むち打ち症)とはどういうものか、むち打ち損傷の発生メカニズムや症状について、詳しく解説します。むち打ち損傷(むち打ち症)とは?まず押さえておきたいのは、むち打ち損傷(むち打ち症)とは、診断名・傷病名でなく、受傷の仕方(受傷機転)を示す用語である、ということです。もともと「むち打ち損傷」とは、頭部への慣性外力による頸部の連続的な過伸展(後屈)と過屈曲(前屈)を伴う「むち打ち運動」のために生じる特殊な損傷を意味しています(『賠償科学概説』民事法研究会 109ページ)。その損傷とは、「骨折や脱臼のない、頸部脊柱の軟部支持組織(靭帯、椎間板、関節包および頸部筋群の筋、筋膜)の損傷」(同前)との説明が一般的ですが、軟部組織が損傷したかどうかさえも明らかでありません。臨床的には、事故で「頸部が振られたことによって生じた頭頸部の衝撃によって、X線写真上、外傷性の異常を伴わない頭頸部症状を引き起こしているもの」(『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 6ページ)、つまり、「骨折や脱臼なく、頭頸部症状を訴えているもの」は、広く「むち打ち損傷」と捉えられています(『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1303ページ)。診断名・傷病名としては、頸椎捻挫、頸部捻挫、頸部挫傷、外傷性頸部症候群、外傷性頭頸部症候群、むち打ち関連障害、むち打ち症候群など様々ですが、いずれも、ほぼ同じ病態を指しています。近時は「外傷性頚部症候群」を用いることが多くなっているようです。外傷性頚部症候群とは、自動車事故などの様々な外力によって発生した多様な頸部愁訴を包含する症候群です(『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1304ページ)。むち打ち症(外傷性頚部症候群)は、自覚症状としては、頸部痛、頭痛、上肢や手指のしびれ、めまい、など多様ですが、他覚所見に乏しいため、保険金・賠償金めあての「詐病」を疑われやすい傷病でもあります。頸部の構造むち打ち損傷の発生メカニズムや症状の説明の前に、頸部の構造を簡単に見ておきましょう。人間の頭頸部は、「重たい頭」が「細い頸(くび)」にのっている状態で、非常に不安定な構造です。頸部に位置する頸椎は7個の椎骨からなり、その周りを筋肉や靭帯などの軟部組織が取り巻いて、「重たい頭」を支え、安定を保っています。むち打ち損傷は、椎骨の骨折を伴う骨傷ではなく、大半は単純な頸部軟部組織の捻挫であり、それほど重篤なものとは把握されていません。頸椎骨は、上から順に、第1頸椎(C1)から第7頸椎(C7)と呼ばれます。椎骨と椎骨は、軟骨組織である椎間板によって連結されており、椎間板は、骨同士の円滑な動きを確保するとともに、衝撃や圧迫を吸収する緩衝材として機能しています。頸椎骨が重なることで椎孔は管状の脊柱管を構成し、その脊柱管の中に脊髄が通っています。頸椎部分では、脊髄から左右8本の神経根が分岐しており、、神経根内には運動神経と知覚神経が併走しています。神経根が圧迫や刺激を受けると、その神経根の支配領域の身体部位に痛みやしびれ等の神経症状が現れます。(参考:『後遺障害入門』青林書院165~166ページ、『標準整形外科学第14版』医学書院505~509ページ)むち打ち損傷の発生メカニズム急激な加速度・減速度が加わると、頸部は「重い頭」をのせたまま前後に揺れ動きます。それは、あたかも鞭を振り上げて強く打ち付けたような動き(むち打ち運動)です。その結果、頸部が受傷します。これが、むち打ち損傷です。『最新医学大辞典 第3版』(医歯薬出版株式会社)では、むち打ち損傷を「過屈曲過伸展損傷」として説明しています。過屈曲過伸展損傷(むち打ち損傷)典型は、自動車事故での後方からの追突にみることができる。この場合、座席に固定されている体幹は、追突により自動車と同じように急速に前へ押し出されるが、細い頸部につながれた頭部は、慣性で後へ取り残され激しく後屈し、ついで反動で前方へ屈曲する。この一連の動きは、鞭の先の動きに似ているので、むち打ち損傷の名で呼ばれることが多かった。受傷外力を正確に説明する意味では、本名称のほうが正確である。(『最新医学大辞典第3版』医歯薬出版株式会社 267ページ)過伸展・過屈曲とは?頸椎の運動には、屈曲(曲げる運動)、伸展(うしろに反らす運動)、側屈(左右に曲げる運動)、回旋(左右を向く運動)の4種類があります。正常な頸椎の運動の範囲は、屈曲:顎が胸の前面に触れるくらいまで伸展:横から見て下顎の源が水平線から30~40度くらい上向きになる程度まで側屈:耳がかろうじて肩に触れるまで回旋:真横を向けるくらいまでといわれます(『むち打ち症教室』(同文書院55ページ)。『標準整形外科学』では、頸部の関節可動域について、次のように記しています。運動方向参考可動域角度屈曲(前屈)60度伸展(後屈)50度回旋左回旋60度右回旋60度側屈左側屈50度右側屈50度(『標準整形外科学第14版』医学書院942ページ)。車両の衝突などの外力により、屈曲・伸展の正常な可動範囲(生理的可動範囲)を超える運動が頸椎に生じると、過屈曲・過伸展となり、損傷が生じるのです。特に問題となるのが、過伸展です。なぜ過伸展の方が問題なのか?頸椎の屈曲(前屈)は、顎が胸に当たるところで一応は止まります。側屈も、頭が肩に当たるところで一応は止まります。頸椎の動きが、この範囲に止まるくらいの外力であれば、正常な頸椎の可動範囲に近いので、あまり重大な傷害は起こりません。もちろん、屈曲・側屈を強制する外力が強い場合は別です。これに対して、過伸展(後屈)を強制された場合は、頸の後方に、頭の動きを止めるものが何もありません。つまり、後頭部が背中にぶつかるまでは、過伸展を強制する力は止まりません。そのため、外力の程度によっては、骨折、さらには脊髄の損傷をともなう重大な結果を招きやすいのです。(参考:河端正也『むち打ち症教室』同文書院 61~62ページ)むち打ち損傷の発生機序それでは、むち打ち損傷の発生機序(発生メカニズム)について見ていきましょう。従来の説明従来、むち打ち損傷については、こう説明されていました。追突を受けると、その衝撃によって、躯幹(からだ)は座席によって前方へ急激に押し出されますが、重い頭は慣性の法則で後方に取り残され、のけぞるように頸部が過伸展状態(後屈)になり、次の瞬間には、その反動で前方に屈曲(前屈)します。続いてまた伸展というように、前後方向の振動が起こります。ちょうど、鞭を強く振った状態です。これが、むち打ち運動です。このときに、頸部の組織が、正常の限界を超えて引き伸ばされたり、部分的な断裂を起こします。また、このような鞭打ち現象が起こっているときに、頸椎は上下に強く圧縮され、椎骨と椎骨が互いに押しつけられるような状態となります。このため、椎骨と椎骨の間にある椎間関節やその他の部分が損傷されたり、ある場合には損傷された靭帯の間を椎間板が突出してヘルニアを起こすことがあります。(参考:『交通事故における むち打ち損傷問題第3版』保険毎日新聞社340ページ、『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 68~69ページ)むち打ち運動が起きなくても「むち打ち症」は生じる?現在は、頸椎の過伸展を抑制するために開発されたヘッドレストレイントがあり、適正な高さのヘッドレストレイントが装着されていれば、単なる追突事故では「むち打ち運動」は生じにくくなっています。ところが、追突事故などで、いわゆる「むち打ち症」の症状を訴える被害者は減っていません。その発症原因としては、頸部の過伸展・過屈曲(むち打ち運動)というよりも、頭部の急激な後屈を止めるために、後頚部の筋群が反射的に過緊張・収縮したり、後頭部や頸部をヘッドレストレイントで打撲したときなどに軽微な筋断裂や小出血が発生することの方が多いと考えられています(『賠償科学概説』民事法研究会109ページ)。また、ボランティアによる実験から、「低速度車両衝突が、頸椎の過伸展・過屈曲を惹起しないことが明らかになり、頸部のむち打ち状態にならなくとも、むち打ち損傷の症状が出現することがある」ということも分かっています(『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版152ページ)。つまり、事故で頭頸部に「むち打ち運動」が起きていなくても、いわゆる「むち打ち症」の症状が発症することがあり得ます。むち打ち損傷の発生メカニズムは、医学的・工学的に明らかとなっているわけではないのです。むち打ち損傷といわれるようになった理由「むち打ち損傷(むち打ち症)」という言葉は、1928年に米国の整形外科医Crowe(クロウ)博士が、交通事故に起因する新たな頚部傷害例の報告として「whiplash injury(むち打ち損傷)」という言葉を使ったのが最初とされています。河端正也医師が『むち打ち症教室』(同文書院、1990年)で、次のように「むち打ち損傷という名のおこり」について紹介しています。むち打ち損傷という名のおこり1928年、サンフランシスコで開催された西部整形外科学会で、当時はまだ新進気鋭の若手整形外科医であったハロルド・ディー・クロウ博士は、治療に苦労している8例の交通事故によるくびの外傷について報告しました。これらの患者さんは、すべて普通の検査では何ら悪いところが発見されないのに、頑固な頭痛や、めまい、はきけ、頸部(くび)の痛みなどが、交通事故、おもに追突されて以来起こっているのでした。彼がこれらの症例を報告しようとした理由は、どうも自分の手には負えないので、多くの整形外科医の意見を聞きたいということだったのです。報告の中で彼は、これらの外傷の起こったメカニズムを説明するつもりで「whiplash injury(むち打ち損傷)」という言葉を使いました。当然のこととして、彼は、この言葉が病気の名前として受け取られるなどとは夢にも考えていませんでしたし、聴衆の整形外科医たちも、そうだったはずだったのです。ところがどうでしょう。この名前は一般の人々、ジャーナリスト、法律家、ひいては医師たちの間ですら、病名として猛威をふるい、以来40年近く数多くの議論と社会問題を巻き起こしながら、日本にもやってきました。(河端正也著『むち打ち症教室』同文書院 17~18ページ)この説明で注目してほしいのは、2つの点です。1つは、むち打ち損傷とは、外傷の発生メカニズムを説明するために用いた言葉であり、傷病名ではないということ。もう1つは、交通事故による頸部傷害例として、いろいろ検査をしても悪いところは発見されない(他覚的所見がない)のに、頑固な頭痛や、めまい、吐き気、頸部の痛みなどが続く症例が、古くからあったということです。ともすると、加害者・保険会社側は、他覚所見のない「むち打ち症」を賠償金や保険金めあての「詐病」や「神経症」などと決めつけがちですが、賠償金や保険金など全く関係のないケースでも、このような症状が長く続く症例は、古くから存在していたのです。では、むち打ち損傷は、どんな症状が出現するのか、詳しく見ていきましょう。むち打ち損傷の症状と分類日本整形外科学会のWebサイトでは、「外傷性頚部症候群」の症状として、「交通事故などで頸部の挫傷(くびの捻挫)の後、長期間にわたって頸部痛、肩こり、頭痛、めまい、手のしびれ、などの症状が出て、X線(レントゲン)検査での骨折や脱臼は認められません」と解説されています。「むち打ち症」については、同サイトで、「いわゆる “むち打ち症” は、追突や衝突などの交通事故によってヘッドレストが整備されていない時代に首がむちのようにしなったために起こった頚部外傷の局所症状の総称」と説明されています。なお、外傷性頚部症候群は、頸部が鞭のようにしならない(すなわち「むち打ち運動」が生じない)、軽微な外傷による病変も含まれます(『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1341ページ)。したがって、正しくは、外傷性頚部症候群の症状・分類として説明すべきところですが、追突事故などによる頸部の外傷を(むち打ち運動の有無にかかわらず)、いまも一般に「むち打ち症」と呼ばれているため、ここでは、むち打ち損傷の症状・分類として説明します。むち打ち損傷の症状むち打ち損傷による症状の多くは、頸部痛や頭痛です。しかし、むち打ち損傷で生じる症状は、頸(くび)の痛みや頭痛だけではありません。むち打ち損傷による症状は多彩です。事故態様(衝突方向や速度、事故予測の有無、ヘッドレストの位置など)や、被害者の姿勢・頸椎の状態(頸椎症性変化・椎間板膨隆などの有無)など、多くの因子によって傷害発生部位は変化し、症状も異なります。受傷直後、急性期、慢性期、それぞれの症状の特徴を見ていきましょう。受傷直後~急性期むち打ち損傷による症状は、事故直後には痛み等の自覚症状がなく、事故の数時間後、あるいは、事故の翌朝に症状が現われることが多いようです。もっとも、いつ症状が出現するかは一概に言えず、事故から2~3日後に出現することもあれば、もう少し後になって出現することもあります。事故直後もちろん、事故直後から症状が出現することもあります。軽い脳震盪や頸部軟部組織損傷を原因とし、頭がボーッとした状態になったり、項部痛・圧迫感・緊張感、吐き気、意識混濁、頭痛、上肢のしびれ感・脱力感などを感じることがあります。これらの症状は、重症例を除き、大部分のものは数時間以内に消失するといわれています。急性期・初発症状(受傷後数時間~1週間)急性期・初発症状(受傷後数時間~1週間)の自覚症状としては、頸椎支持組織の損傷を原因とし、頸部痛・圧迫感・緊張感、頭痛・頭重感、頸椎運動制限、肩こり、吐き気、上肢のしびれ感、腰痛などがあります。他覚所見としては、頸椎運動制限、項頸部筋の圧痛などが見られます。急性期・後発症状(受傷後2~4週間以後)急性期・後発症状(受傷後2~4週間以後)の自覚症状としては、頭痛、めまい、悪心、耳・眼症状、上肢放散痛などがあります。バレー・リュー症状が出現します。バレー・リュー症状とは、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、視力低下、聴力低下などの自律神経症状を呈するものです。むち打ち損傷では、自律神経症状を併発する場合があります。他覚所見としては、知覚障害や神経根症状などの神経学的陽性所見の増加、椎間板損傷によるX線検査上の椎間腔狭小化や変形性頸椎症所見の出現が見られます。(参考:『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規302ページ、『賠償科学概説』民事法研究会114ページ)慢性期慢性期における症状としては、頸部痛、頭痛、めまい、頭部・顔面領域のしびれ、眼症状、耳鳴り・難聴、吐き気・嘔吐、四肢症状、腰痛、バレー・リュー症候群による脳幹・自律神経症状があります。そのほか、不眠、集中力低下、易疲労感、微熱感、記銘力低下なども報告されています。これらの症状は不定愁訴と捉えられがちですが、軽微な脳損傷が発生している可能性も指摘されています。むち打ち損傷は、軽傷の部類に入るため軽視されがちなところがありますが、くびの痛みだけでなく、自律神経症状や認知機能障害、神経疾患まで幅広く合併する可能性がありますから、注意が必要です。(参考:『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 49~59ページ、『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル122~125ページ)なぜ、事故直後は痛みを感じず、あとから痛みを感じるのか?一般的には、「事故直後は、精神的に緊張状態にあり、肉体的にも、損傷を受けた頸(くび)の周囲の筋肉が自動的に緊張して副木をあてたような状態にあるのが、落ち着いてくると、事故のことよりも怪我のことを考える余裕が出てくることによる」と考えられています(河端正也著『むち打ち症教室』同文書院 71ページ)。事故によって器質的な損傷が生じていないにもかかわらず、数時間後に頸部痛が発生し、症状が遷延化するメカニズムとして、頸椎椎間関節内に介在する滑膜組織が、追突による衝撃によって損傷し、数時間後に滑膜炎が惹起され、疼痛・可動域制限を生じる、とする説があります(『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版44ページ)。むち打ち症の平均的な治療期間と保険会社の治療費打ち切りの判断基準むち打ち損傷の分類臨床的には、「むち打ち損傷の診断をするときは、むち打ち損傷によって何が生じているかを考えることが重要」とされます(『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 6ページ)。むち打ち損傷によって生じる傷病には、いくつかの分類方法があります。土屋分類日本で代表的な分類は「土屋分類」です。「土屋分類」によれば、むち打ち損傷は、次のような5類型に分類されます。頸椎捻挫型頸椎捻挫型は、頸部の筋の過度の伸長ないし部分断裂の状態で、頸部周囲の運動制限、運動痛が主症状です。神経症状は認められません。予後良好で、大部分がこのタイプです。根症状型根症状型は、頸神経の神経根の症状が明らかで、頸椎捻挫型に加え、知覚障害、放散痛、反射異常、筋力低下などの神経症状をともないます。バレー・リュー症候群型バレー・リュー症候群型は、自律神経症状や脳幹症状が出現し、頭痛、めまい、耳鳴、眼の疲労、悪心をともないます。神経根、バレー・リュー症状混合型根症状型の症状に加えて、バレー・リュー症状がみられるものです。脊髄症状型脊髄症状型は、深部腱反射の亢進、病的反射の出現などの脊髄症状をともなうものです。この型は、現在ではむち打ち損傷の範疇に含まれず、非骨傷性の頚髄損傷とされるのが一般的です。※ バレー・リュー症候群は、「椎骨神経(頸部交感神経)の刺激状態によって生じ、頭痛、めまい、耳鳴、視障害、嗄声、首の違和感、摩擦音、悪心、易疲労感、血圧低下などの自覚症状を主体とするもの」と定義されています。しかし、その発生原因に関して、定説は確立されていません。ただし、これらの分類は、臨床症状で明確に分類することが難しく、分類別の治療法も確立していません。また、近年は、これらの分類に加え、外傷性胸郭出口症候群、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の病態を呈するむち打ち損傷が存在することが報告されています。(参考:土屋分類については『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 6~8ページ)ケベック分類海外では、1995年に発表されたケベック報告による分類(ケベック分類)が普及しています。むち打ち症関連障害(WAD)を症状・重症度により、5段階のグレードに分類したものです。ケベック報告とは、カナダのケベック州自動車保険協会の要請のもとに組織された「ケベックむち打ち症関連障害特別調査団」が、むち打ち症関連障害(WAD)の種々の問題について科学的解析を行い、まとめた報告書です。この報告書にある「むち打ち症関連障害の重症度分類」が、いわゆる「ケベック分類」と呼ばれるものです。頸部愁訴、理学神経学的所見、脊椎の骨折・脱臼の有無からなされた分類です。ケベック分類(WADの重症度分類)grade臨床所見0頸部の愁訴なし、理学的異常所見なしⅠ頸部の愁訴(痛み、こわばり、圧痛)のみ、理学的異常所見なしⅡ頸部の愁訴と、骨・筋肉症状の存在(関節可動域の低下、圧痛点など)Ⅲ頸部の愁訴と、神経学的所見の存在(深部腱反射の低下・消失、筋力低下、感覚障害など)Ⅳ頸部の愁訴と、骨折または脱臼*難聴、めまい、耳鳴り、頭痛、記憶喪失、嚥下障害、顎関節痛などの症状は、どのグレードにも出現し得るとされています。*6ヵ月以上症状を示している場合を慢性化と定義。。(参考:『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 8ページ、『交通事故における むち打ち損傷問題第3版』保険毎日新聞社18ページ、『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1304ページ)ケベック分類の「grade0」~「gradeⅡ」が、いわゆる「むち打ち損傷」と認識され、「gradeⅢ」「gradeⅣ」は、外傷性頸髄損傷として分類されます。(『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1341~1342ページ)むち打ち損傷で後遺症が問題となるケースむち打ち損傷は、ほとんどの場合、後遺障害を残さずに治癒するとされていますが、事故により受傷した後に、椎間板損傷、神経根症状、バレー・リュー症状、脊髄症状が出現した場合には、その症状が後遺する可能性があるといわれています(『賠償科学概説』民事法研究会 116ページ)。根症状型は、神経根への刺激や圧迫によって、頸部筋、項部筋、肩胛部筋などへの圧痛、頸椎運動制限、運動痛、末梢神経分布に一致した知覚症状、放散痛、反射異常、筋力低下などがみられます。これらの症状の発生原因が他覚所見によって認められれば、後遺障害の等級認定がなされる可能性があります(『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 303ページ)。バレー・リュー症状型は、その発生原因について定説は確立されておらず、現在においても病態の詳細は不明です。そのため、バレー・リュー症状を他覚的所見によって説明・証明することは難しいとされています(『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 304ページ)。まとめむち打ち症(むち打ち損傷)は、大半は単純な頸部軟部組織の捻挫で、それほど重篤なものとは捉えられていません。しかし、むち打ち症の発症メカニズムは、いまだ明らかでありません。他覚的所見に乏しく、自覚症状のみのケースがほとんどなので、治療の必要性、症状固定時期や後遺障害の有無をめぐって争いになることが少なくありません。適正な損害賠償を受けるには、治療の段階から早めに、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 6~9ページ、49~59ページ・『補訂版 交通事故事件処理マニュアル』新日本法規 49~51ページ・『後遺障害入門 認定から訴訟まで』青林書院 164~169ページ・『弁護士のための後遺障害の実務』学陽書房 16~23ページ・『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 122~125ページ・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集―交通事故編―』第一法規 97~98ページ、239~240ページ・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社 26~35ページ、46~62ページ、127~128ページ・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 176~181ページ・『交通事故医療法入門』勁草書房 105~132ページ・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 300~304ページ・『交通事故における むち打ち損傷問題 第3版』保険毎日新聞社 11~28ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 132ページ・『賠償科学概説』民事法研究会 108~123ページ
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  • むち打ち症の治療の注意点
    交通事故での「むち打ち症」の通院治療はココに注意!
    むち打ち症(むち打ち損傷)は、多くの場合、自覚症状のみで、他覚的所見がありません。そのため、保険会社との間で、治療費の支払いや後遺障害の有無などをめぐってトラブルになりがちです。むち打ち症の治療では、注意すべき点がいくつかあります。むち打ち症で治療を受けるときの注意点むち打ち症(むち打ち損傷)は、ほとんどの場合に自覚症状のみで他覚的所見に乏しいため、痛みなど症状の原因や存在を客観的に明らかにすることが困難です。そのため、保険会社による一括払いがされている場合には、治療費支払いの打ち切りのリスクがあり、後遺症が残る場合には、後遺障害の認定に困難をともないます。なので、むち打ち症で治療を受けるときには、完治を目指しつつも、万が一にも後遺症が残る場合に備え、後遺障害の認定を見据えて、次の点に注意が必要です。事故後すぐに病院で診療を受ける少しの違和感であっても医師に伝える通院は週2回~3回の頻度でブランクなく6ヵ月以上必要な検査を受ける整骨院・接骨院は避ける事故後すぐに病院(整形外科)に通う交通事故で受傷したときは、事故後すぐに、病院にかかることが大切です。これは、むち打ち損傷にも当てはまります。むち打ち損傷は、事故の翌日あるいはそれ以降に症状が出現することも多いので、違和感を感じたら、速やかに病院で診療を受けることが重要です。事故から通院開始まで1週間以上も空いてしまうと、事故との因果関係が問題となり、保険会社が治療費を支払わないことがあります。後遺障害の認定も難しくなります。少しの違和感であっても医師に伝える初診のとき、少しでも違和感が感じられるところは、漏らさず、自覚症状を医師に伝えることが大事です。自分の判断で症状が重いと感じている部分のみを医師に伝えるというケースはよくありますが、急性期に症状を伝えていないと、あとから症状を訴えて診療記録に記載されても、事故との因果関係が否定されてしまう恐れがあります。また、通院の都度、症状の部位と程度を医師にしっかりと伝えることも大事です。急性期以降、症状を訴えないと、途中から傷病名の記載がなくなってしまうこともあるので、そこで症状がなくなった、すなわち完治した、と保険会社に判断されてしまう恐れがあります。症状は、例えば「首のここが痛い」というように、端的に訴えることが大切です。通院は週2回~3回の頻度でブランクなく6ヵ月以上むち打ち損傷による傷病の場合、受傷直後は安静を指示されることもありますが、その後は、リハビリ治療を行うことが一般的です。むち打ち損傷は他覚的所見が乏しく、症状の客観的な評価が難しいため、後遺障害等級の認定を受ける際には、通院期間や通院頻度が重要な判断要素の1つとなります。自賠責保険で後遺障害が認定されるのに必要な通院期間は、最低6ヵ月といわれています(『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 84ページ)。通院期間が5か月だと、後遺障害に認定される可能性は極めて低くなります。さらに、むち打ち損傷の場合、通院頻度も重要です。自賠責保険で後遺障害に認定されるには、毎月10回以上、合計で60日~80日の通院日数が必要ともいわれます(同前 85ページ)。通院頻度が少ないと、症状が軽かったと自賠責保険から評価されてしまうからです。逆に、毎日通院するなど通院日数が多すぎるのも問題です。治療費がかかりすぎることになるので、治療費打ち切りのリスクが高まります。また、通院を中断しないことも大切です。通院に1ヵ月も2ヵ月もブランクがあると、その前後の通院日数が多くても、後遺障害の認定を受けることは難しくなります。もっとも、こうした後遺障害の認定基準が公表されているわけではなく、この通院期間・通院頻度をクリアすれば、後遺障害が必ず認定されるというわけではありません。それでも、重要な目安とされているようです。事故時の衝撃が大きく、後遺症が残りそうなときは、週2~3回(月10日程度)の頻度で、6ヵ月(半年)以上通院することが必要です。必要な検査を受けるむち打ち損傷は、画像検査では異常所見がみられないことが多いのですが、後遺障害の認定を受けるには、画像検査が不可欠です。たいてい、レントゲン写真は撮影するでしょうが、できればMRI検査も行っておくとよいでしょう。MRIは軟部組織の撮影に優れています。むち打ち損傷は「頸部軟部組織の損傷」とされていますから、軟部組織の異常を見つけるのに、MRI撮像は有効なのです。ただし、むち打ち損傷は、MRI撮像でも異常が見られないことがほとんどです。MRIは、設備のない病院もあり、必ずしも撮影しなければならないものではありませんが、万が一、症状の原因が頸椎捻挫以外にあった場合に、早期発見・早期治療につながります。MRI検査は、後遺障害の認定にも有効です。MRIまで撮影するということは、「MRIによる精密検査をする必要があった」と、保険会社に対して主張することができるからです。むち打ち症による後遺障害等級は、14級9号か12級13号です。後遺障害等級14級9号認定には、MRI画像での異常所見までは必ずしも必要ありませんが、12級13号認定のためには、頸椎MRIはほぼ必須化しています。レントゲン写真(単純X線)だけでは、最も低い14級9号しか認定されません。(『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 25ページ)MRI撮影費用は比較的高額なので、後遺障害の認定に備え、保険会社が治療費を支払っている期間中に、主治医に相談し、MRI撮影をしておくとよいでしょう。整骨院や接骨院への通院は避ける整骨院や接骨院での施術は、整形外科での治療と異なり、損害賠償において評価が低くなります。整形外科の医師の許可や同意を得て、整骨院や接骨院へ補助的に通院するならまだしも、整骨院や接骨院への通院がメインになってしまうと、かえってマイナスとなることもあります。交通事故で整骨院や接骨院へ通院することには、例えば次のようなリスクがあります。交通事故で整骨院や接骨院に通院するリスク整骨院や接骨院の施術費は、整形外科での治療費よりも高額となりやすく、保険会社から治療費の支払いを打ち切られるリスクが高まります。整骨院や接骨院では後遺障害診断書が書けず、整骨院や接骨院への通院がメインとなっていたら、整形外科の医師も後遺障害診断書が書けません。結果、後遺障害の認定を受けることができず、後遺症に対する損害賠償を受けることができなくなります。整骨院や接骨院での施術は、病院での治療と同等に評価されないため、整骨院や接骨院に通って病院への通院日数が減ると、通院日数の不足で後遺障害が認定されなくなります。通院日数は、休業損害や傷害慰謝料の算定にも影響を及ぼすため、損害賠償額が減ってしまいます。こうしたリスクを避けるため、整骨院や接骨院への通院はおすすめできません。どうしても整骨院や接骨院へ通院したい場合は、整形外科の医師の許可や同意を得たうえで通うことが大切です。その際、整骨院・接骨院での施術部位が、整形外科での治療部位より増えないように気をつけましょう。施術部位が増えと、保険会社は、過剰診療として施術費の支払いを拒否することがあります。関連むち打ち症で保険会社が治療費の支払いに応じる平均的な治療期間治療費打ち切りを保険会社から宣告されたときの3つの対処方法MRIは万能の検査ではない?! XP、CT、MRIの違いとは?交通事故による捻挫や打撲で整骨院・接骨院に通う場合の注意点まとめむち打ち症(むち打ち損傷)は、大半は単純な頸部軟部組織の捻挫で、それほど重篤なものとは捉えられていません。しかし、むち打ち症の発症メカニズムは、いまだ明らかでありません。他覚的所見に乏しく、自覚症状のみのケースがほとんどなので、治療の必要性、症状固定時期や後遺障害の有無をめぐって争いになることが少なくありません。適正な損害賠償を受けるには、治療の段階から早めに、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 63~67ページ、119~121ページ・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社 26~35ページ、46~62ページ、127~128ページ・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 176~181ページ・『賠償科学概説』民事法研究会 108~123ページ
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  • むち打ち症の治療期間
    むち打ち症の平均的な治療期間と保険会社の治療費打ち切りの判断基準
    むち打ち症は、レントゲンなどの画像検査をしても他覚的所見がなく、被害者本人の自覚症状しか症状を示す要素が存在しないケースがほとんどです。そのため、治療期間や治療の必要性自体が問題になりやすく、保険会社は一定の時期が来ると治療費の支払いを打ち切ろうとします。それでは、むち打ち症の平均的な治療期間はどれくらいなのか? 保険会社が治療費の支払いを打ち切る判断基準とは? 詳しく見ていきましょう。むち打ち症の平均的な治療期間むち打ち症の治療期間は、症状の把握と診断・治療が適切にされた場合、一般的な医学的知見として、おおむね2~3ヵ月程度の期間が相当とされています。もちろん個人差があり、衝撃が強くある程度重篤なものについては、6ヵ月ないしそれ以上の治療期間を要する場合もあります。保険実務では、むち打ち症の治療期間を2~3ヵ月から6ヵ月程度の範囲で認めている例が多いようです。(参考:東京弁護士会法友全期会 交通事故実務研究会編集『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい(2024年) 178~179ページ)医学的に相当とされる治療期間むち打ち症について、医学的に相当とされる治療期間を示したものとしては、次のものが代表的です。なお、むち打ち症(むち打ち損傷)は、受傷の仕方を表す用語であって、臨床の現場では、頸椎捻挫、頚部挫傷、外傷性頚部症候群などの傷病名で呼ばれます。むち打ち損傷の分類についてはこちらをご覧ください。統計学上、本症患者の7割は受傷3ヵ月以内に軽快・治癒する。この事実は、アンケートによる臨床医の印象と、レセプトによる実際とよく一致している。通常、遅くとも6ヵ月以内で症状固定に至ると考えられており、6ヵ月を過ぎても尚、治療を続けている症例は慢性難治例とされる。(平林洌「外傷性頸部症候群の診断・治療ガイドラインの提案」(1999年))軽傷例(頸椎捻挫症状)であれば、大部分は1ヵ月以内に症状軽快し、一般には全治2~3週間。重症例(頸椎運動制限あり)であっても、その大部分は3ヵ月以内に症状軽快し、残りも1年以内にほとんど症状が消失する。(日本賠償科学会編『賠償科学 改訂版―医学と法学の融合』民事法研究会(2013年)122ページ)一般的に、むち打ち損傷は長期化することは少なく、1ヵ月以内で治療終了例が約80%を占め、6ヵ月以上要するものは約3%であるという報告が多い。しかし、少数例ではあるが症状が持続する場合もあり病態の把握と治療に難渋する。(遠藤健司/鈴木秀和編著『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版(2018年)49~50ページ)治療期間に関する裁判例よく引用される裁判例としては次のものがあります。なお、ここに挙げている裁判例は、衝撃が軽度で、頚椎捻挫にとどまる場合です。むち打ち損傷(外傷性頚部症候群)は病態によって分類され、椎間板損傷や神経根症状、自律神経症状等が出現している場合など、治療期間が長引くケースもあり、1年程度の治療期間を認めている裁判例は多くあります。むち打ち症の分類についてはこちらをご覧ください。最高裁判所第一小法廷判決(昭和63年4月21日)最高裁判所は、昭和63年4月21日の判決において、原審(東京高裁判決・昭和58年9月29日)の次の認定を「原審が適法に確定した事実関係」であるとして是認しています。外傷性頭頸部症候群とは、追突等によるむち打ち機転によって頭頸部に損傷を受けた患者が示す症状の総称であり、その症状は、身体的原因によって起こるばかりでなく、外傷を受けたという体験によりさまざまな精神症状を示し、患者の性格、家庭的、社会的、経済的条件、医師の言動等によっても影響を受け、ことに交通事故や労働災害事故等に遭遇した場合に、その事故の責任が他人にあり損害賠償の請求をする権利があるときには、加害者に対する不満等が原因となって症状をますます複雑にし、治癒を遷延させる例も多く、衝撃の程度が軽度で損傷が頸部軟部組織(筋肉、靱帯、自律神経など)にとどまっている場合には、入院安静を要するとしても長期間にわたる必要はなく、その後は多少の自覚症状があっても日常生活に復帰させたうえ適切な治療を施せば、ほとんど1か月以内、長くとも2、3か月以内に通常の生活に戻ることができるのが一般である。大阪地裁判決(平成9年1月28日)本件事故に基づいて原告に生じた傷害は頸椎捻挫にとどまるものと考えられ、…右傷害(=頸椎捻挫)の治療に必要な期間は、個人差があることを考慮しても最大限6ヵ月程度とみられる。以上が、むち打ち症の一般的な治療期間です。それでは保険会社は、治療費の一括払いをする期間をどう判断しているのでしょうか?保険会社が治療費の一括払いを打ち切る判断基準前提として、次の点をおさえておいてください。保険会社は、被害者が通院を続けている限り、無条件で治療費を支払ってくれるわけではありません。治療費は、事故と相当因果関係があり、必要かつ相当な治療行為の費用が、損害賠償の対象となります。加害者が、被害者の治療費について損害賠償責任を負うのは、症状固定となるまでです。つまり、保険会社が治療費を一括払いするのは、事故と相当因果関係の認められる治療費の範囲であり、期間は症状固定となるまでです。もちろん完治したときは、そこで治療費の支払いは終了です。では、「事故と相当因果関係のある治療か?」「症状固定になったか?」ということを、保険会社はどう判断しているのでしょうか?一般的な治療期間を参考に個別事情を考慮むち打ち症(外傷性頚部症候群)は、発生機序や病態などの詳細はいまだ解明されていない部分が多いものの、一般的にどれくらいの期間で症状が改善するかは、臨床上の統計がありますから、保険会社も、そういったものを参考にします。ただし、そういう統計上の平均的な治療期間よりも、早く治ることもあれば、長引くこともあります。ですから、平均的な治療期間を参考にしつつ、「どんな事故だったのか?」「どんな怪我をして、どんな治療をしているのか?」「治療の経過はどうか?」といったことを個別・具体的に検討したうえで、いつまで治療費を支払うかを判断することになります。「○○の場合は、○ヵ月で一括払い終了」というように、傷病ごとに画一的に決まっているわけではないのです。誤解のないように言っておきますが、保険会社が個別事情をふまえて判断するというのは、決して被害者のためではなく、保険金(損害賠償額)の支払い額を少なくするためです。では、保険会社は「事故の状況」や「被害者の症状・治療内容・治療経過」をどのように把握し、検討しているのか、見ていきましょう。事故状況の把握・検討どんな事故だったのか(事故態様)は、保険会社が、いつまで治療費を支払うかを判断するうえで重要な要素です。なぜ事故態様の把握が重要かひと口に「追突」や「衝突」といっても、車両がつぶれてしまっているような重大事故もあれば、どこに当たったのか分からないような軽微事故もあります。一般に、大きな事故ほど身体への衝撃が強く、症状は重篤で、治療期間も長くなりやすいと考えられています。軽微な事故なら、短期間の通院治療で治るでしょう。場合によっては、治療すら必要ないかもしれません。なので、治療期間を判断するうえで、事故の状況を把握することが重要というわけです。特に、むち打ち症は、外傷所見がなく、被害者からの自覚症状のみというケースがほとんどなので、事故態様の把握を重要視しているのです。物損額(車両修理代)を参考にする事故態様の把握には、事故発生状況報告書やドライブレコーダーのほか、車両の損傷状況や修理額を参考にします。例えば、普通乗用車両の場合、修理費用が10万円程度だと損傷状況も軽微に見えることが多く、症状が残るほどの怪我だったとは評価されにくい傾向があります(『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社 49ページ)。つまり、車両の修理費用が低額の場合には、軽微な事故だったと判断され、保険会社からの治療費の一括払いが、短期間で打ち切られる可能性がある、ということです。症状が残っても、後遺障害の認定を受けるのが難しくなります。近時、自賠責保険が、軽微事故で治療期間が長くなると、事故による受傷そのものを否認するケースがあるようですから、注意が必要です。お困りのときは、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。【相談無料】交通事故に詳しい弁護士事務所はこちら症状の経過や治療内容の把握・検討傷病名や症状、治療内容、治療経過などについては、病院から保険会社に毎月送られてくる「経過診断書」や「診療報酬明細書(レセプト)」などを参考に検討します。経過診断書病院が毎月発行する傷病名や症状などが記載される診断書です。診療報酬明細書病院の診療報酬の根拠として、どのような治療が行われているかが記録されているもので、治療内容を一通り把握できる資料です。経過診断書から情報を読み取る経過診断書には、「症状の経過・治療の内容・今後の見通し」や「主たる検査所見」などが記載されます。むち打ち症は、他覚的所見のないケースがほとんどですが、保険会社は、検査結果だけでなく、どんな検査をしているかもチェックしています。被害者がどんな症状を訴えているかを読み取ることができるからです。「症状の経過・治療の内容および今後の見通し」欄は、「保存的に加療した」とか「経過観察中」などの簡単な記載が毎月繰り返されているだけだったり、一見すると詳しく書かれているような場合でも、全く同じ記載だったりする場合があるようです。実は、このことが、あとで説明するように、治療費打ち切りの要因となってしまうこともあります。診療報酬明細書から情報を読み取る経過診断書から、症状の経過や治療内容が読み取れない場合でも、診療報酬明細書(レセプト)から、どのような治療がなされたかを推測することができます。例えば、どの部位の画像撮影をしたのか、どのような内服薬や外用薬を処方しているのか、消炎鎮痛処置は行っているのか、などの情報を読み取ることができます。こんな経過診断書やレセプトが治療費の打ち切りの要因にレセプトにおいて処置の内容に変化がなく、経過診断書においても症状や治療内容に変化が見られない状態が続くと、「治療を続けても特段の変化が見られない」すなわち「症状固定に至っているのではないか」と保険会社から判断されてしまいます。もちろん、保険会社も、推測だけで治療費の一括払いを打ち切るわけではありません。「そろそろ症状固定と見てよいのではないか」と判断したときは、担当医の意見を求めてきます。担当医が症状固定を判断したという形をとるのです。任意保険会社の一括払いとすることに同意した際、医療調査に関することも含めて同意書を提出したと思いますが、その同意書を盾に、担当医に状況を尋ねるのです。損保会社は、「医療アジャスタ」とか「MI(メディカル・インスペクター)」と呼ばれる医療調査のための専門スタッフを配置しています。症状が重篤で損害額が高額化すると予想されるケース、通院が想定よりも長期化しているケース、事故と症状との因果関係に疑問が生じるケースなどで、専門スタッフが医療調査を実施します。半年以上の治療は意味がない?むち打ち症で治療期間が長くなると、保険会社から「最高裁判例で半年以上の治療は意味がないとされている」と言ってくることがあるようです。しかし、そのような最高裁判例はありません。保険会社が、なぜ6ヵ月にこだわるかというと、治療期間6ヵ月以上であることが、後遺障害認定の1つの目安となるからです。治療期間が6ヵ月に満たなければ、自賠責保険の後遺障害認定がされにくくなります。自賠責保険において後遺障害が認定されると、後遺症に対する損害賠償が発生します。後遺症に対する損害賠償額は、大きな金額となります。保険会社としては支払額を抑えたいので、後遺障害等級が認定されないよう、6カ月未満で治療を打ち切りたいのです。もし保険会社が治療費の打ち切りを言ってきても、あなたが治療の継続を望み、主治医もまだ治療を継続すべきだと判断するなら、保険会社の担当者と話をして、治療費の支払いを継続してもらえるよう交渉することが大切です。まとめむち打ち症の治療期間は、事故から3ヵ月から6ヵ月程度が多く、長くとも1年程度といわれています。保険会社は、事故から6ヵ月程度を経過すると、症状固定になったとして治療費の支払い打ち切りを通告してくることがあります。この背景には、むち打ち症の治療期間について、「通常、遅くとも6ヵ月以内で症状固定に至ると考えられている」とする医学論文(平林洌「外傷性頸部症候群の診断・治療ガイドラインの提案」(1999年))や、「頸椎捻挫にとどまる傷害の治療に必要な期間は、個人差があることを考慮しても最大限6ヵ月程度とみられる」とする裁判例(大阪地裁平成9年1月28日判決)などがあるからのようです。治療期間が6ヵ月に満たないうちに治療費の一括払いを打ち切られると、後遺症が残るほどの強いむち打ち損傷だった場合でも、後遺障害の認定を受けられなくなります。まだ痛みやしびれがあるのに、保険会社から治療費の打ち切りを通告され、お困りのときは、交通事故に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。関連・治療費打ち切りを保険会社から通告されたときの3つの対処方法【参考文献】・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 178~179ページ・『交通事故における むち打ち損傷問題』保険毎日新聞社 67~70ページ、74~83ページ・『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 49~50ページ・『後遺障害入門』青林書院 167ページ・『補訂版 交通事故事件処理マニュアル』新日本法規 49~50ページ・『交通事故医療法入門』勁草書房 127ページ・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 301~302ページ・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社 46~49ページ、124~125ページ・『交通事故損害賠償入門』ぎょうせい 85~91ページ
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  • 他覚的所見
    他覚的所見(医学的他覚所見)とは?狭義の他覚所見、広義の他覚所見
    保険会社は、他覚的所見のない ”むち打ち症” を、「詐病」や「賠償性神経症」などと決めつけ、受傷を否認し、治療費の支払いを拒否する傾向があります。人身傷害保険では、保険約款において、医学的他覚所見のない場合は保険金の支払い対象から除外しています。医学的他覚所見(他覚的所見)とは何か、見ていきましょう。他覚所見(他覚的所見)とは?他覚所見とは、「他者が確認できる、当該患者の身体の変化や異常」または「これに関する医師の意見・判断」をいいます(東京弁護士会親和全期会編著『交通事故事件の実務用語辞典』第一法規 99~100ページ)。「医学的他覚所見」あるいは「他覚的所見」ともいわれます。他覚所見(他覚的所見)に対する語は、自覚症状(自覚的症状)です。自覚症状患者自身が感じ訴える症状のこと。例えば、痛み・しびれ・めまい・吐き気・耳鳴など。他覚所見患者の訴えのあるなしに関わらず、第三者にはっきり分かるもの。例えば、出血・皮下出血・腫れ・発赤・局所熱感(他人が触って感じる)・変形など。検査所見(検査によって確認される所見)も含まれます。他覚所見(他覚的所見)は、他覚症状(他覚的症状)といわれることもあります。他覚的症状とは、患者の訴えのあるなしにかかわらず、第三者にはっきりとわかるもので、たとえば、皮膚の着色や局所の熱感、触れて分かる雑音や、レントゲン検査、血液検査の結果などです。患者さんが無意識の状態にあっても、医師は他覚的症状から診断をつけることができます。どんな病気でもこれら自覚的症状と他覚的症状が入りまじって、全体としてのすがたをかたちづくっているのです。(河端正也『むち打ち症教室』同文書院69ページ)【他覚症状】医師など観察者が明白に認識できた症状や異常な徴候または他覚的所見をいう。これらのうち、医師が理学的検査によって見出した所見を理学的所見という。自覚症状との関係は時にあいまいなこともあって、時には症状とか徴候という名称で漠然とよばれることもある。(『最新医学大辞典』医歯薬出版)なお、症状と所見について、次のような指摘もあります。一般人に限らず保険業界でも、時には医師でさえ、「症状(自覚的訴え)」と「所見(徴候)」を混同している人を見受けます。英語では、symptom(症状)とsign(所見・徴候)といったようにしっかり区別されています。簡単にいうと、痛みやしびれ、だるさ、凝りなどは「(自覚)症状」であり、腫れや皮下出血、発赤、局所熱感(自分で感じるのではなく他人が触って感じる)、変形、筋委縮、さらに広義には検査所見などが「(他覚)所見」ということになります。(井上久『医療審査「覚書」』自動車保険ジャーナル80ページ)これが臨床医学上、一般的に他覚的所見といわれるものです。それでは、保険会社のいう「医学的他覚的所見」は、どういうものなのでしょうか?保険会社のいう「医学的他覚所見」とは?自動車保険標準約款では、「医学的他覚所見」を次のように定義しています(『自動車保険の解説2023』保険毎日新聞社88ページ)。医学的他覚所見理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査等により認められる異常所見をいいます。この「医学的他覚所見」の定義規定について、自動車保険の逐条解説では、「理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査などの医学的手段により、症状の存在を認める、医師などの第三者による判断・意見をいう」と解説しています(『自動車保険の解説2023』保険毎日新聞社90ページ)。つまり、保険会社のいう「医学的他覚所見」とは、「医学的検査により、症状の存在を認める医師の意見」であり、「症状を裏付ける客観的根拠」という意味で用いられます。保険約款で「医学的他覚所見」に関する規定が出てくるのは人身傷害条項(人身傷害保険)においてですが、対人賠償責任保険においても、医学的他覚所見についての捉え方は基本的に同じです。他覚的所見のないむち打ち症について、受傷を否認して治療費の支払いを拒否したり、後遺障害を否定することは、よくトラブルとなります。医学的他覚所見がなければ保険金は支払われない?人身傷害保険は、保険約款における「傷害」や「後遺障害」の用語の定義規定において、「被保険者が症状を訴えている場合であっても、それを裏付けるに足る医学的他覚所見のないものを含みません」と明記しています。つまり、たとえ被保険者が症状を訴えていても、その症状を客観的に裏付ける医学的他覚所見がなければ、人身傷害保険金の支払い対象の傷害に該当しない、後遺障害の認定対象としない、ということです。こうした規定について、次のように解説されています(『自動車保険の解説2023』保険毎日新聞社100ページ)。「被保険者が症状を訴えている場合であっても、それを裏付けるに足る医学的他覚所見のないもの」とは、患者が自覚症状を訴えている場合であっても、医学的な立場から見ると他覚所見のないものをいい、たとえば、ムチ打ち症や腰痛などで、他覚所見がないものはこれにあたる。これらを保険金支払いの対象外としたのは、モラルリスクが混入することを排除するためである。理学的検査・神経学的検査・臨床検査・画像検査とは?理学的検査・神経学的検査・臨床検査・画像検査について、保険約款に特段規定はありませんが、臨床医学的には次のようなものが挙げられます。理学的検査視診、打診、聴診、触診など臨床検査血液検査、脳波・心電図の測定検査など神経学的検査深部反射検査、神経根症状誘発検査、徒手筋力検査など画像検査XP、CT、MRIなどなお、これらの検査所見には客観性に差があり、保険会社は、画像検査による所見のように、異常所見が客観的に明らかであるものは他覚的所見として認めますが、被害者(患者)の主観の入る余地のある検査所見は、他覚的所見として認めることに否定的です。保険会社は、医学的他覚所見を「理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査等により認められる異常所見」と約款上規定していますが、これらの検査所見のすべてを医学的他覚所見として認めるわけでなく、実際には非常に狭く捉えています。この点について、東京三弁護士会等も厳しく指摘しています。狭義の他覚所見、広義の他覚所見東京三弁護士会の論文「むち打ち症に関する医学・工学鑑定の諸問題」や、北河隆之弁護士の「『頸部外傷性症候群』再論」において、次のような指摘があります。要旨を記しておきます。単純レ線所見、ミエログラフィ(脊髄造影)、ディスコグラフィ(椎間板造影)、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴診断装置)などによる所見(いわゆる画像診断)が、他覚的所見にあたることに[賠償医学者も(=引用者)]異論がない。これを「狭義の他覚的所見」と呼ぶ。画像診断の他に、四肢反射検査や筋電図検査なども「狭義の他覚所見」に含まれる。臨床医学的には、このほかに、聴診・打診・触診・視診、あるいは角度を測るなど、機械を使わない理学的検査方法による所見(いわゆる理学的所見)も、他覚的所見と考えられている。これと狭義の他覚的所見を合わせて、「広義の他覚的所見」と呼ぶ。むち打ち症については、圧痛、知覚鈍麻、握力低下、スパーリングテスト・ジャクソンテストの陽性所見などは、「広義の他覚的所見」といえる。しかし、賠償医学者の多く(すなわち法医学鑑定の多く)は、これらは反応を教えてくれるのが患者自身であるから「他覚的所見」とはいえないとされており、特に、加害者=保険会社側においては、レ線上異常所見が見られないと「他覚的所見」がないという認識が強いといわれる。論者により、想定している「他覚的所見」の意味がやや異なっているかもしれないが、概ね「狭義の他覚的所見」が念頭におかれていると考えて大過ないであろう。・北河隆之「『頸部外傷性症候群』再論―第63回日本整形外科学会学術集会のパネルディスカッションを終えて」日本交通法学会編『人身賠償・補償研究第2巻』判例タイムズ社184~185ページ・東京三弁護士会交通事故処理委員会むち打ち症特別研究部会「むち打ち症に関する医学・工学鑑定の諸問題」判例タイムズ№737 18ページ保険会社が「医学的他覚所見」として認める検査・認めない検査医学的他覚所見の有無が問題となりやすいのは、外傷性頚部症候群(いわゆる「むち打ち症」)です。そこで、むち打ち症の場合に、保険会社が「医学的他覚所見」として認める検査・認めない検査について、具体的に見ていきましょう。むち打ち症の根拠となるのは、おもに画像所見と神経学的検査所見です。次のような検査方法があります。おもなものを挙げておきます。画像検査レントゲン検査レントゲン検査は、X線による撮像により、骨傷の有無、脊柱管のずれ、頸椎骨の並び方や曲がり方、骨棘等による神経根の圧迫の有無や程度などを診断しようとするものです。レントゲン検査には、単純撮影と造影剤を用いる椎間板造影(ディスコグラフィー)、脊髄造影(ミエログラフィ―)がありますが、造影検査は、造影剤を注入しなければならず侵襲的であるため、MRIの普及により施行頻度は減少しているようです。CT(コンピューター断層撮影)CT検査は、コンピューターにより断層撮影を行うレントゲン検査です。骨病変の描出に優れ、後縦靭帯骨化症など靭帯骨化症の診断に有用とされています。単純CTと脊髄造影後に行うCTM(CTミエログラフィ―)があり、CTMは、脊髄や神経根の観察も可能となります。MRI(核磁気共鳴画像撮影法)MRI検査は、時期と電波による核磁気共鳴現象により体内を撮影し画像化します。X線被曝はありません。MRIは、組織分解能が高いので、脊髄、靭帯、椎間板、神経根などの頸椎を支持する軟部組織の描出に有効であるとされ、神経組織の圧迫や椎間板ヘルニアの有無等の確認に有用といわれています。MRIとCTの違いについて詳しくはこちらをご覧ください。神経学的検査深部腱反射検査深部腱反射検査は、腱を打診することによって生じる反射を確認する検査です。腱反射は、末梢神経障害により減弱、消失することから、腱反射の異常を見ることにより、末梢神経の障害の有無等を確認しようとするものです。筋電図検査筋電図検査は、針電極を用いて運動単位の状態を調べる検査です。筋肉に針電極を刺し、筋肉が活動する際に発する電気信号の状態を確認するものです。徒手筋力検査(MMT)徒手筋力検査は、筋力の低下の有無や度合いを、徒手的に(つまり検者の手を使って)評価する確認する検査です。神経が障害された部位がある場合、神経障害部位に応じて筋力の低下がみられる部位が異なることから、筋力の低下の部分や度合いを検査することにより、末梢神経の障害の有無や部位等を確認しようとするものです。例えば、うつ伏せの状態で、医師が頭部を押さえつけ、患者がそれに対抗し、その反応を見たり、圧迫せずに患者の反応だけを観察して、頭部の活動状況を、0(活動なし)から5(正常)までの6段階で評価し、頸部の筋力を判断します。感覚検査感覚検査は、皮膚の触覚や痛覚の検査です。神経の障害部位に応じて、皮膚の感覚鈍麻や感覚消失のみられる部位が異なることから、皮膚の感覚障害を検査することにより、神経の障害の有無や部位等を確認しようとするものです。神経根症状誘発検査(スパーリングテスト・ジャクソンテスト)神経根症状誘発検査は、脊髄から分かれて上肢へ行く神経根の異常を調べるため、神経根に圧迫を加え、神経根の支配領域に疼痛・しびれ等の神経根症状が生じるかを確認する検査です。スパーリングテストは、痛みのある側(患側)に頭と頸を傾けさせ、やや後屈位で頭頂から軽い圧迫を加えます。ジャクソンテストは、頭部を背屈させ、頭部を軽く下方へ押さえます。いずれも圧迫を加えることにより椎間孔が狭められるので、そこを通る神経根に障害がある場合、その神経根の支配領域に疼痛・しびれ感が放散します。通常、これらはセットで実施され、上肢における痛みを誘発・増強すれば陽性として、神経根の異常(神経根症)が疑われます。放散痛を生じた部位により、障害根の高位を推測することができます。患者の意思に左右される検査は客観性が低いこれらの検査法は、大きく2つに分かれます。患者の意思と全く無関係に結果の得られる検査法患者の応答と協力が不可欠な検査法いうまでもなく、①の検査所見の方が、②の検査所見よりも「客観性が高い」と評価されます。すなわち、レントゲン撮像やMRI等の画像所見、および神経学的検査の中でも深部腱反射検査や筋電図検査などは、患者の意思が介在する余地がないので、症状を裏付ける客観的根拠となり得ます。一方、スパーリングテストやジャクソンテスト等の神経学的検査は、医師が患者の身体に軽い圧迫を加え、その際に痛みが生じるか否かを検査するもので、痛みが生じるかについては、結局は患者の申告によります。徒手筋力検査も同様で、患者の意思が介在する余地があります。そのため、この種の検査所見は、純粋な客観的所見とは評価されず、保険会社は医学的他覚所見として認めないのが普通です。なお、画像所見が「医学的他覚所見」として認められたとしても、後遺障害の認定に際し、画像所見上で確認される状態(たとえば頸椎の狭小化やヘルニア症状など)について、事故との相当因果関係や症状との関係性が問題とされることも多く、事故により生じたものであること、および被害者の症状の要因となっていることにつき、証明・説明する必要があります。まとめ他覚所見には、画像所見だけでなく、理学的検査や神経学的検査等の所見も含みます。他覚所見を症状を裏付ける客観的根拠として保険会社側に認めさせるには、他覚所見と自覚症状とが整合的であることが重要です。交通事故で「むち打ち症」となり、他覚所見がなく、「保険会社が治療費の支払いを拒否する」あるいは「後遺障害の認定を受けられない」などでお困りのときは、交通事故に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『後遺障害の認定と意義申立―むち打ち損傷事案を中心として―』保険毎日新聞社 5~9ページ、27~34ページ、44~54ページ・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 287~300ページ・『交通事故における むち打ち損傷問題 第3版』保険毎日新聞社 196~201ページ・『後遺障害入門』青林書院 169~176ページ・『むち打ち症教室』同文書院 68~73ページ・『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 99~109ページ・『交通事故医療法入門』勁草書房 135~140ページ・『実例と経験談から学ぶ資料・証拠の調査と収集―交通事故編―』第一法規 241~242ページ・『弁護士のための後遺障害の実務』学陽書房 25~28ページ・東京三弁護士会交通事故処理委員会むち打ち症特別研究部会「むち打ち症に関する医学・工学鑑定の諸問題」判例タイムズ№737 4~26ページ・北河隆之「『頚部外傷性症候群』再論―第63回日本整形外科学会学術集会のパネルディスカッションを終えて」日本交通法学会編『人身賠償・補償研究第2巻』判例タイムズ社 180~201ページ・『自動車保険の解説2023』保険毎日新聞社 88~90ページ、96~100ページ・『交通事故事件の実務用語辞典』第一法規 99~100ページ
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  • むち打ち損傷の後遺障害
    むち打ち症の後遺障害12級13号・14級9号の認定基準と認定獲得のポイント
    むち打ち症は、他覚的所見に乏しいため、後遺障害等級の認定を受けるのに困難を伴います、後遺障害「非該当」となることもよくあります。ここでは、交通事故による「むち打ち症」で、12級13号ないし14級9号の後遺障害等級の認定を受けるために知っておきたいポイントについて、お伝えします。むち打ち損傷による後遺障害むち打ち損傷(頸部捻挫・外傷性頚部症候群)による後遺症は、末梢神経障害として取り扱われます。後遺障害等級は、「局部の神経系統の障害」として、12級13号ないし14級9号該当性が問題となります。自賠責保険における後遺障害の等級認定は、原則として労災保険における障害の等級認定の基準に準じて行うとされていますから、労災保険の障害認定基準を参照しながら見ていきます。末梢神経障害の等級認定は、次のように行います。末梢神経障害の等級認定末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級により認定することとなる。(『労災補償障害認定必携第17版』158ページ)例えば、こうです。聴神経を損傷して難聴が残存した場合は、聴力障害の等級を適用する。視神経を損傷して視力障害が残存した場合は、視力障害の等級を適用する。腕神経叢の損傷にともない上肢の関節機能障害が残存した場合は、上肢の機能障害の等級を適用する。(参考:『詳説 後遺障害 等級認定と逸失利益算定の実務』創耕舎30ページ)末梢神経障害は、損傷した神経の支配する「身体部位の機能障害」が生じている場合には、その器官の機能障害として後遺障害等級を評価しますが、身体部位の機能障害として独立して評価できない場合には、「局部の神経系統の障害」として取り扱われます。むち打ち損傷による後遺症は、たいてい、このケースに該当します。局部の神経系統の障害は、後遺障害等級表(自賠法施行令2条別表第2)において、12級13号ないし14級9号(労災保険の障害等級表では12級の12ないし14級の9)に分類されています。つまり、むち打ち損傷(外傷性頚部症候群)の後遺障害認定は、残存症状が「局部の神経系統の障害」に該当するか、該当する場合、14級となるか12級が認定されるかが焦点です。後遺障害等級12級13号と14級9号の認定基準の違いとは?では、「局部の神経系統の障害」の12級と14級の認定基準の違いは何か?後遺障害等級表(自賠法施行令2条別表第2)では、12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号は「局部に神経症状を残すもの」と規定しています。等級後遺障害12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの14級9号局部に神経症状を残すもの残存する神経症状が「頑固か、そうでないか」の違いですが、「頑固さの程度」に基準があって、12級か14級かが決まるわけではありません。自賠責保険の後遺障害等級12級13号ないし14級9号に該当するかどうかは、労災保険の障害等級認定基準に準じて判断します。後遺障害12級13号と14級9号の認定基準労災保険における「神経系統の機能または精神の障害」の認定基準では、12級は「通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの」、14級は「12級よりも軽度のもの」が該当するとされています(『労災補償障害認定必携第17版』141ページ)。これを、自賠責保険の後遺障害等級表に当てはめると、こうなります。等級後遺障害の程度認定基準12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの14級9号局部に神経症状を残すもの第12級より軽度なもの労災保険の障害認定基準は、労働災害を前提としたものですから、補償の対象は労働者であり、労務への支障の有無や程度が認定基準の中心となっています。自賠責保険の後遺障害認定の対象となる被害者は、労働者だけでなく、老若男女すべての属性の人が対象となり得ます。したがって、ここでいう「労務」には、家事や就学といった賃金を得る目的以外のものも当然に含まれます(『後遺障害入門』青林書院170ページ)。12級は「労務への支障」が判断の基準とされていますが、抽象的です。14級は「12級より軽度なもの」とあるだけで、何について、どれほど軽度であるか不明です。判断要素が、客観的に明確でありません。それでは、自賠責保険(正確には損害保険料率算出機構)では、むち打ち損傷による後遺症が、後遺障害等級12級13号ないし14級9号に該当するか否かを、どう判断しているのでしょうか?実は、現行の障害認定基準には明記していない大原則があります。それは、12級は「障害の存在が医学的に証明できるもの」、14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」という判断基準です。後遺障害12級と14級の認定基準(改正前後の比較)労災保険の障害等級認定基準は、平成15年(2003年)に大幅な改正が行われました。平成15年8月8日に厚生労働省労働基準局長通知「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」として公表され、その後、数次の改正を経て現行に至っています。平成15年の改正で「神経系統の機能または精神の障害に関する障害等級認定基準」がどう変わったのか、12級と14級の関係部分をピックアップし、改正前後の認定基準を比べてみます。労災保険の障害等級「12級の12」「14級の9」は、自賠責保険の後遺障害等級「12級13号」「14級9号」に相当します。障害等級認定の基準「神経系統の機能または精神の障害」の等級認定の基準は、次の通りです。改正前改正後第12級他覚的に神経系統の障害が証明されるもの通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの第14級第12級よりも軽度のもの第12級よりも軽度のもの改正前の等級認定基準では、「他覚的に証明されるもの」が、第12級に該当するとされていました。末梢神経障害末梢神経障害の等級認定の仕方については、認定基準の改正前後において基本的に変わっていません。いずれも「損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級」によるとされています。改正前改正後根性及び末梢神経障害 根性及び末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級を準用すること。末梢神経障害 末梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級により認定すること。中枢神経系(脳)の障害中枢神経系(脳)の障害については、MRI・CT等の画像診断技術の進歩や最新の医学的知見もふまえ、次のように説明が変わっています。等級改正前改正後12級の12労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる神経系統の機能又は精神の障害を残すもの 中枢神経系の障害であって、たとえば、感覚障害、錐体路症状及び錐体外路症状を伴わない軽度の麻痺、気脳撮影により証明される軽度の脳萎縮、脳波の軽度の異常所見等を残しているものが、これに該当する。 なお、自覚症状が軽い場合であっても、これらの異常所見が認められるものは、これに該当する。通常労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの 4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが該当する。14級の9労働には通常差し支えないが、医学的に可能な神経系統又は精神の障害に係る所見があると認められるもの 医学的に証明しうる精神神経学的症状は明らかではないが、頭痛、めまい、疲労感などの自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるものが、これに該当する。通常労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるものが該当する。※4能力とは、①意思疎通能力、②問題解決能力、③作業負荷に対する持続力・持久力、④社会行動能力の4つです。改正後の12級の12の認定基準では、MRIやCT等による他覚的所見についての記述はありませんが、実は、脳の器質性障害の認定について説明している前段部分に、「高次脳機能障害は、脳の器質的病変に基づくものであることから、MRI、CT等によりその存在が認められることが必要となる」とあります(『労災補償障害認定必携』142ページ)。つまり、高次脳機能障害について後遺障害等級の認定をする場合、MRI・CT等によりその存在が認められることが前提であって、例外的にMRI・CT等による他覚的所見が認められない場合でも、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測できるときは、14級該当性の評価対象となるということです。「医学的(他覚的)に証明できるもの」が12級に該当し、「医学的に説明可能なもの」「医学的に証明はできないが、自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの」「他覚的所見は認められないが、損傷のあることが医学的にみて合理的に推測できるもの」が14級に該当します。ちなみに、認定基準の見直しを行った専門検討会の報告書には、高次脳機能障害の評価について、次のような記載があります。本検討会としては、後遺障害として労働能力のそう失を伴うと認められる高次脳機能障害についても上記の各障害等級に区分して評価することが妥当であり、また、上記の各障害等級に相当する障害の程度は、以下のとおりとするのが適当であると考える。……(第1級~第9級)……第12級 MRI、CT等により他覚的に証明される軽度の脳挫傷、脳出血等又は脳波の軽度の異常所見が認められるものであって、4能力のいずれか1つ以上の能力が「困難はあるが概ね自力でできる」に該当すると認められるものが該当する。第14級 MRI、CT、脳波等によっては、脳の器質的病変は明らかではないが、頭部打撲等の存在が確認され、脳損傷が合理的に推測されるものであって、4能力のいずれか1つ以上の能力が「困難はあるが概ね自力でできる」又は「多少の困難はあるが概ね自力でできる」ような状態に該当するものが該当する。この内容によれば、12級は「MRI、CT等により他覚的に証明される異常所見がみとめられるもの」であり、14級は「MRI、CT等により他覚的に確認はできないが、頭部打撲等の存在が確認され、脳損傷が合理的に推測されるもの」です。この判断基準は、他の神経症状の認定基準としても妥当すると考えられています(『後遺障害の認定と意義申立ーむち打ち損傷事案を中心としてー』保険毎日新聞社29ページ)。頭痛頭痛については、改正後の認定基準において、「頭痛については、頭痛の型の如何にかかわらず、疼痛による労働または日常生活上の支障の程度を疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見により把握し、障害等級を認定すること」という文言が、新たに加えられています。等級改正前改正後12級の12労働には通常差し支えないが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの14級の9労働には差し支えないが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの通常の労務に服することはできるが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの失調、めまい及び平衡機能障害失調、めまい及び平衡機能障害については、改正後の認定基準において、「失調、めまい及び平衡機能障害については、その原因となる障害部位によって分けることが困難であるので、総合的に認定基準に従って障害等級を認定すること」という文言が加えられました。等級改正前改正後12級の12労働には通常差し支えないが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの14級の9めまいの自覚症状はあるが、他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるものめまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの「検査の結果に異常所見が認められるもの」が12級に該当し、「他覚的には異常所見が認められないが、自覚症状が単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの」「検査の結果に異常所見が認められないが、症状の存在が医学的にみて合理的に推測できるもの」が14級に該当します。疼痛等感覚障害受傷部位の疼痛については次により認定し、疼痛以外の異常感覚(蟻走感、感覚脱失等)が発現した場合は、その範囲が広いものに限り、14級の9に認定するとしています。等級改正前改正後12級の12労働には通常差し支えないが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの14級の9労働には差し支えないが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの12級と14級の認定要件このように「局部の神経系統の後遺障害」の認定においては、現行の認定基準と従前の認定基準に文言上の相違がありますが、文言が変わったからといって、12級と14級の認定要件が変更されたというわけではなく、実務上は従来と同様に取り扱われています(『後遺障害の認定と意義申立ーむち打ち損傷事案を中心としてー』保険毎日新聞社29ページ)。すなわち、自賠責保険実務において、現在も、12級は「障害の存在が医学的に証明できるもの」、14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」という考え方が採用されているのです(『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規289ページ)。12級13号・14級9号を獲得するためのポイント「医学的に証明できる」と「医学的に説明可能」はどう違うのか、さらに、12級13号ないし14級9号の認定を獲得するためのポイントについて、見ていきましょう。12級13号の認定基準と認定獲得における注意点後遺障害12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」が該当し、等級認定には、神経系統の障害を医学的(他覚的)に証明できることが必要です。他覚的に証明できなければなりませんから、当然、他覚的所見が不可欠です。「医学的(他覚的)に証明できる」とは?痛みや痺れなどの症状は、あくまで神経系統の障害による結果であって、神経系統の障害そのものではありません。神経系統の障害が証明されるということは、症状の原因となる神経組織・機能の異常の存在が証明されることです。例えば、「症状は、頸椎の神経根症によるもの」ということが、神経系統の障害の存在の証明に当たります(『新・現代損害賠償法講座5交通事故』日本評論社158ページ)。つまり、「医学的(他覚的)に証明できる」とは、残存している症状の原因が何か、他覚的所見にもとづいて判断できるということです。ここで重要なのは、他覚的所見の捉え方です。「画像所見」=「他覚的所見」ではないよくある誤解が、画像所見のみを他覚的所見と捉え、画像検査において異常が確認できれば、医学的(他覚的)に証明されたとするものです。もちろん、他覚的所見には画像所見を含みますが、画像所見だけが他覚的所見ではありません。他覚的所見とは、理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査等により認められる異常所見です。他覚的所見について詳しくはこちらをご覧ください。むち打ち症で、後遺障害認定の根拠となるのは、おもに画像所見と神経学的検査所見です。XP、CT、MRI等の画像検査は、患者の意思と無関係に結果が得られるので客観性が高く、神経学的検査は、検査結果が患者の意思に左右されうるため客観性が低いと評価されます。そのため、画像所見のみを他覚的所見と評価し、「医学的(他覚的)に証明できる」ことの意味を「画像で明らかになること」と考えてしまうのです。確かに、画像所見は、症状の存在を裏付ける有力な根拠となり得ますが、異常画像が確認されたからといって、それだけで「医学的(他覚的)に証明された」とはいえません。この点に注意が必要です。他覚的証明に必要なこと医学的(他覚的)に証明できるかどうかにおいては、「どのような検査が他覚的なのか、そうではないのか」ではなく、自覚症状を裏付けるため、どのような検査所見が、どういう具合にそろっているかが大事といわれます(『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規290ページ)例えば、神経根症状型であれば、画像上、神経圧迫の存在が考えられる所見があり、圧迫されている神経の支配領域に知覚障害などの神経学的異常所見が確認された場合には、神経障害が医学的(他覚的)に証明されたとして、12級13号と認定されやすくなります。しかし、画像所見があっても、画像所見において圧迫されていることが疑われる神経の支配領域と神経学的異常所見が一致しないと、神経障害が他覚的に証明されたとはいえません。もっとも、画像上の異常所見がない場合には、たとえ神経学的検査で異常所見が認められたとしても、神経障害が他覚的に証明されたということは困難です。すなわち、局部の神経系統の障害について「他覚的に証明された」といえるためには、他覚的所見として画像所見は必須ですが、画像所見さえあれば十分というわけではなく、画像所見と整合性のある神経学的検査所見が不可欠です。大事なのは、①自覚症状、②神経学的所見、③画像所見の整合性です。むち打ち症で12級13号を獲得するポイント残存する「頑固な神経症状」の原因を、画像所見と神経学的所見により整合性をもって裏付けることができれば、局部の神経系統の障害の存在を他覚的に証明できたといえ、12級13号の認定に近づきます。加えて、後遺障害の認定には、残存症状が事故による受傷を原因とすること(事故との因果関係)の立証が不可欠であることはいうまでもありません。14級9号の認定基準と認定獲得における注意点後遺障害14級9号は「局部に神経症状を残すもの」が該当し、等級認定には、障害の存在を他覚的に証明はできないが医学的に説明可能であること、あるいは、自覚症状が故意の誇張でないと医学的に推定されること、が要件です。「医学的に説明可能」とは?14級9号の認定には、必ずしも画像所見や神経学的検査所見などの他覚的所見は必要ありません。自覚症状を裏付ける他覚的所見がない場合には、14級9号の認定をねらうことになります。受傷状況・治療経過・臨床所見などから、事故による受傷と残存症状に整合性が認められる(=神経症状の存在を医学的に合理的に説明可能である)場合や、症状の一貫性・治療の継続性などから、神経症状が残存していても不自然でないと推測できる(=自覚症状が故意の誇張でないと医学的に推定される)場合は、14級9号が認定される可能性があります。14級の認定には、必ずしも画像所見や神経学的検査所見などの他覚所見を必要としない取扱いがされていますが、次のような指摘もあり、14級といえども、むち打ち症で後遺障害の認定獲得は簡単ではないのが実情です。自賠責保険を管轄する自動車保険料率算定会(現在の損害保険料率算出機構)の方から伺ったところでは、他覚的所見がなくても、被害者の愁訴が神経の流れに沿って合理的な内容であれば14級に認定する、とのことであった。しかし、一線の損害調査事務所において、そのような認定がなされているかは、はなはだ疑問というのが実感である。(北河隆之「いわゆる鞭打ち症に関する賠償医学的アプロウチに対する批判的検討」『人身賠償・補償研究第2巻』判例タイムズ社152ページ注7)14級9号認定のポイント14級9号の認定獲得のポイントは、医学的に見て、後遺症が残存していても「おかしくはない」と説明できる要素をそろえることです。症状を医学的に説明できる他覚的所見の存在画像所見や神経学的検査所見に、自覚症状があっても不自然でないといえる程度の所見がある場合には、14級9号の認定に近づきます。例えば、神経根症状型については、画像所見において明らかな神経圧迫の存在は認められないが、頸椎椎間板の膨隆等による神経圧迫を示唆する程度の画像所見があり、神経学的検査所見において、神経症状を示す異常所見が得られている場合には、14級9号に認定されやすいといえます。症状の一貫性・治療の継続性自覚症状が一貫して訴えられており、症状に対する適切な治療を症状固定まで継続して受けていたか、がポイントです。事故直後の症状、その後の症状の推移、治療内容、治療期間、治療頻度などにより、症状の一貫性・治療の継続性が認められれば、14級9号認定の要素となります。例えば、症状が受傷数日以内に発症して、症状固定まで一貫して持続し、それに対する治療が継続されていれば、その症状が事故による外傷を原因とするものであることは比較的明らかです。他方、事故後数週間を経過してから症状が現われた場合や、治療中いったん軽快した後に再び症状が増悪したような場合には、症状と事故との因果関係の認定が難しくなります。受傷態様事故により「後遺障害が残存するほどのダメージを受けた」ということを、実況見分調書や事故状況報告書、物損資料などにもとづき立証することができれば、14級9号認定の要素となります。事故の発生状況は、受傷の妥当性の判断要素となります。受傷自体が疑問視されるような軽微事故の場合には、自覚症状と事故との因果関係が問題となるケースも少なくありません。まとめ12級13号の獲得には、後遺障害の存在を医学的(他覚的)に証明できなければなりませんから、他覚的所見が不可欠です。むち打ち症の場合、おもに画像所見と神経学的検査所見が必要となります。大切なのは、自覚症状を裏付ける画像所見と神経学的所見の整合性です。なお、他覚的所見が存在し、医学的に証明できるとしても、事故との因果関係が否定されることも多いので注意が必要です。14級9号の獲得をめざすようなケースの場合には、他覚的所見がなく、自覚症状のみであることがほとんどです。こういう場合は、各要素を駆使して、医学的に説明可能であることを立証しなければなりません。当然、事案ごとに、どんな資料が有効であるか変わってきます。有利な事実・資料を見逃さずに用いることが重要です。むち打ち損傷(頸椎捻挫・外傷性頚部症候群)による後遺障害は、保険会社との間でよく争いになりやすいところです。むち打ち損傷による後遺症が心配な方、むち打ち症の後遺障害で保険会社と揉めている方は、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故医療法入門』勁草書房135~140ページ・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 287~319ページ・『裁判例と自賠責認定にみる神経症じぃおうの等級評価』新日本法規 1~9ページ・『交通事故における むち打ち損傷問題 第3版』保険毎日新聞社 190~194ページ・『後遺障害入門』青林書院 169~174ページ・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 179~180ページ・『詳説 後遺障害』創耕舎 29~31ページ・『賠償科学概説』民事法研究会 116~120ページ、130~137ページ・『新・現代損害賠償法講座5交通事故』日本評論社 155~164ページ・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社91~117ページ・『弁護士のための後遺障害の実務』学陽書房24~32ページ・『労災補償障害認定必携 第17版』一般財団法人労災サポートセンター 137~163ページ
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