交通事故トラブル解決ガイド|損害賠償請求・示談交渉の悩みを解決!

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  • 治療費打ち切りを保険会社から言われたときの3つの対処方法
    交通事故でむち打ち症(頸椎捻挫)になり通院治療していたら、まだ治っていないのに、一方的に「治療費を打ち切られた」というケースが少なくありません。まだ痛みやしびれがあり治療を続けたいのに、保険会社から突然一方的に「治療費の打ち切り」を言われたときには、どうすればいいのでしょうか?保険会社から「治療費打ち切り」を宣告されたときの対処方法は、3つあります。医師に治療継続の必要性を証明してもらう保険診療に切り替えて治療を続ける弁護士に相談して対応してもらう詳しく見ていきましょう。「治療費の打ち切り」は「治療の打ち切り」とは違う対処方法を見る前に、まず、このことを押さえておいてください。保険会社が打ち切るのは、保険会社から医療機関への治療費の支払いです。治療費の支払いを終了することであって、「治療の終了」や「治療の打ち切り」ではありません。ですから、保険会社が治療費の支払いを打ち切ったとしても、治療を受けている本人が引き続き治療を希望し、医師が「治療を継続することで症状の改善が見込まれる」と判断するのであれば、治療は継続できます。というか、治療を継続すべきです。治療が終了するのは、医師が「これ以上の治療を続けても改善は見込めない」と判断したときです。これを「症状固定」といいます。症状固定とは?交通事故診療における症状固定の判断は、労災保険法の「治癒」に準拠して判断します。労災保険法における「治癒」とは、症状が安定し、疾病が固定した状態にあるものをいい、すなわち治療の必要がなくなった状態とされています。(参考:『Q&Aハンドブック交通事故診療・全訂新版』創耕舎114ページ)保険会社が治療費を打ち切るのは、「もう症状は固定し、これ以上の治療費の支払いは必要ない」と、保険会社として経験則にもとづき判断したからにすぎません。しかし、怪我の程度や治療効果の現れ方は個人ごと異なり、回復状況や治療の必要性は、医師が個別に判断するべきものです。症状固定は、医師が判断することであって、保険会社が決めることではありません。それでは、保険会社から「治療費の打ち切り」を宣告されたときの3つの対処方法について、見ていきましょう。【対処法①】医師に治療継続の必要性を証明してもらう痛みやしびれが残っているのに、保険会社から「治療費を打ち切る」と言われたときは、医師に相談します。医師も「治療を続けた方がよい」と判断するなら、保険会社にその旨を説明して、治療費の支払い継続を要請します。その際、「治療の継続を要する」という医師の診断書や意見書があると有効です。今後の治療方針や治療期間の見通しを示すことができれば、保険会社との交渉がやりやすくなります。保険会社との交渉が不安なときは、「対処法③」で紹介するように、交通事故の損害賠償問題に強い弁護士に相談するとよいでしょう。それでも保険会社が治療費の支払い継続に応じない場合医師の診断にもとづいて説明しても、保険会社が治療費の支払い継続に応じない場合は、次の3つのうちから対処方法を選択することになります。治療を諦める健康保険診療に切り替えて治療を継続する(⇒対処法②へ)弁護士に保険会社との交渉を頼む(⇒対処法③へ)保険会社が応じなくても、決して諦めることはありません。【対処法②】保険診療に切り替えて治療を続ける保険会社が治療費の支払いを打ち切ったとしても、被害者が治療の継続を望み、医師も治療の継続が必要と判断するなら、治療を続けることができます。この場合、自費診療として治療費を全額支払いながら治療を続けるか、健康保険診療に切り替えて、治療費の3割だけ一部自己負担しながら治療を続けるか、2つの方法があります。なお、勤務中や通勤途中の交通事故の場合は、労災保険を使って治療できます。労災保険診療には、治療費の自己負担がありません。自己負担した治療費は、あとで保険会社に請求するどちらを選択したとしても、自己負担した治療費は、あとから保険会社に損害賠償請求します。交通事故に遭って治療を受けるのに、治療費を自分で支払わないといけないのは納得しがたいかもしれませんが、そもそも交通事故診療は、患者(被害者)と病院との契約ですから、治療費の支払い義務は患者(被害者)にあります。保険会社が病院に治療費を支払うのは、患者である被害者に代わって支払っているにすぎず、保険会社の自主的なサービスです。つまり、治療費を病院に支払って治療を受け、あとから治療費を含めて損害賠償請求するのは、本来の姿に戻るだけのことなのです。自身の任意保険に人身傷害保険を付帯して契約していれば、自己負担した治療費を含めた損害を自分の保険会社に支払ってもらうこともできます。健康保険に切り替えるときの注意点自費診療(自由診療)の場合は、治療費は高くなりますが、治療内容の制約はありません。一方、健康保険診療に切り替えた場合は、治療費は一部負担で済みますが、治療内容に制約がかかります。自費診療と健康保険診療のどちらを選択するかは、それぞれのメリット・デメリットをふまえて、個別に判断することになりますが、保険適用外の治療が必要なケースは、それほど多くありません。健康保険に切り替えて治療を継続するのが一般的です。なお、交通事故の治療に最初から健康保険を使うと、自賠責様式の診断書・後遺障害診断書を発行してもらえない場合がありますが、治療の途中で健康保険に切り替える場合は、交通事故診療の扱いは継続されるため、その心配がありません。【関連】交通事故で健康保険や国民健康保険を使うメリット・デメリット交通事故で健康保険を使うと医師が後遺障害診断書を書いてくれない?治療費の打ち切り後に治療を続けるときの注意点保険会社が治療費の支払いを打ち切った後、治療を継続する場合は、次の点に注意が必要です。保険会社が治療費の支払いを打ち切るということは、保険会社としては「これ以上の治療費の支払いは損害賠償の範囲を超える」と判断したということです。そのため、あとで損害賠償請求するとき、治療費打ち切り後の治療費については、保険会社が任意の支払いに応じる見込みは低くなります。示談交渉で保険会社が支払いに応じなければ、最終的には裁判で争うことになります。ですから、保険会社が治療費の支払いを打ち切った後、自己負担で治療を続ける場合は、あらかじめ弁護士と相談し、あとから治療費を回収できるよう、必要な対策をとりながら治療することをおすすめします。【対処法③】弁護士に相談して対応してもらう保険会社から治療費の打ち切りを言われたとき、弁護士に相談して対応してもらうのが、最も有効な対処法です。弁護士に頼めば、治療費の支払い継続について保険会社と交渉してもらえます。実際、弁護士が介入して、治療費の支払いを1~2ヵ月程度延長できたケースは多くあります。治療費の支払いが打ち切られてしまった場合でも、弁護士に相談し依頼することで、あとから治療費を回収できる可能性が高まります。保険会社が治療費の支払いを打ち切った後の治療費を請求する場合、治療の必要性や事故との相当因果関係を証明しなければならなず、被害者が個人でそれを立証するのは困難です。弁護士に頼むことで、裁判で通用するレベルの書類を治療中から準備することが可能となり、いざとなれば裁判で争うこともできます。それを武器に、実際に訴訟を提起しなくても、示談交渉で保険会社が任意で支払いに応じる可能性が高まるのです。その他にも、弁護士に相談し依頼することには、次のようなメリットがあります。後遺障害の認定申請や示談交渉まで全て任せられる保険会社が治療費を打ち切った後も治療が必要なケースというのは、たいてい後遺障害が問題となります。弁護士に依頼することによって、後遺傷害等級認定の際にも、様々なサポートを受けることができます。さらに、保険会社との示談交渉に至るまで全て任せられ、納得できる損害賠償金(示談金)を得ることができます。生活に困窮するときの対応も可能治療費を打ち切られると、休業補償も打ち切りとなります。そうなると、生活に困窮する場合もあります。弁護士に相談すると、当面必要な治療費や生活費の支払いを求め、仮払い仮処分を裁判所に申し立てることもできます。裁判所の決定が出れば、保険会社は通常ただちに支払いに応じます。保険会社から治療費の打ち切りを宣告されたとき、弁護士に相談すれば、こういった対応も可能なのです。まとめ保険会社が治療費の打ち切りを言ってきたときは、①医師に治療継続の必要性を証明してもらう、②健康保険等に切り替えて治療を継続する、③弁護士に相談して対応してもらう、といった3つの対処法があります。痛みやしびれがある状態で、治療費の支払いを求めて保険会社と交渉するのは、相当なストレスになります。休業補償を受けていれば、治療費の支払い終了とともに休業補償もストップします。そうなると、生活が成り立たなくなり、早々に示談に追い込まれることもあり得ます。健康保険に切り替えて治療を継続するにしても、治療費が負担になります。あとで治療費を賠償請求する場合も、保険会社が必要ないと判断した治療費の支払いを認めさせるのは容易ではありません。保険会社から治療費の打ち切りを宣告されたときは、弁護士に相談し、対応を任せるのがベストです。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 交通事故は健康保険を使えない?病院が健康保険診療を嫌う本当の理由
    「交通事故に健康保険は使えません!」と、病院の窓口で健康保険の使用を断られることがあります。ですが、それは間違いです。交通事故の治療は自由診療が基本ですが、患者(被害者)が希望すれば、交通事故による怪我の治療にも健康保険を使えます。ただし、交通事故に健康保険を使うことにはデメリットもあるので、それを知ったうえで健康保険を使って治療するかどうか判断することが大切です。交通事故は、なぜ「自由診療が原則」なのか?「交通事故は、自由診療が原則」とされる理由は、2つあります。1つは、交通事故の被害者の治療費は、加害者が支払うものだからです。交通事故は、民法の不法行為(民法709条など)に該当します。なので、加害者の側が、被害者の治療費を損害賠償する責任を負います。もう1つは、交通事故の被害者を救済する国の制度があるからです。被害者への損害賠償を補償するため、法律にもとづき自賠責保険制度が整備され、自動車の保有者は、自賠責保険への加入が義務付けられています。つまり、交通事故被害者の治療費は、健康保険等から支払うのでなく、自動車保険から支払う仕組みです。そのため、交通事故は、健康保険診療でなく、自由診療が原則とされているのです。一方、健康保険法や国民健康保険法では、「疾病、負傷、死亡、出産に関して保険給付を行う」と規定しています。受傷の原因は問いません。なので、交通事故が原因の傷病であっても、自身の加入する健康保険や国保を使って治療することができます。この場合は、健康保険組合等の保険者が給付した金額は、あとで加害者側(自動車保険)に求償することになります。労災保険が適用される業務災害は、労災保険でカバーしますから、健康保険から除外されます。それは、交通事故でも同じです。業務中や通勤途中の交通事故は、健康保険を使えません。労災保険を使います。交通事故にも健康保険が使える根拠交通事故の治療にも、健康保険が使えます。そのことを病院の窓口で自信をもって主張できるよう、その根拠を押さえておきましょう。次の2つです。健康保険の保険給付の対象について、法律上「交通事故の場合を除く」とする規定はありません。国(厚生省・厚生労働省)の通知で、交通事故の場合も健康保険の給付対象となることが、明確に示されています。健康保険法や国民健康保険法では交通事故を除外していない健康保険法では、労働者またはその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷、死亡、出産に関して保険給付を行う(健康保険法第1条)と定めています。業務災害は労災保険でカバーします。自営業者などが加入する国民健康保険も、被保険者の疾病、負傷、出産、死亡に関して必要な保険給付を行う(国民健康保険法第2条)と定めています。被保険者に傷病や負傷など保険事故が発生したときに、保険者は保険給付を行う義務を負います。その場合、保険事故の発生原因は問わないのが原則です。法律上、交通事故を除外するという規定はなく、交通事故による傷病も、公的医療保険給付の対象となります。保険給付の制限自己の故意の犯罪行為、泥酔や著しい不行跡を理由とする傷病については、保険給付が制限されます(健康保険法116条・117条、国民健康保険法60条・61条)。これを交通事故で考えると、酒酔運転、無免許運転、暴走運転などを原因とする自損事故の場合に限り適用され、過失にもとづく交通事故による傷病には適用されないと解されています(大阪地裁判決・昭和60年6月28日)。「自動車事故も保険給付の対象」と明確にした国の通知交通事故の治療に健康保険や国民健康保険を使えることは、国が繰り返し通知で明らかにしています。昭和43年の厚生省通知「自動車事故も保険給付の対象」交通事故の治療にも健康保険が使えることを明確にしたのが、昭和43年(1968年)の厚生省通知です。この通知によって、交通事故に健康保険が「使える・使えない」の議論に決着がついたと言ってよいでしょう。昭和43年の厚生省通知は、自動車事故も健康保険の保険給付の対象となることを明記し、その周知徹底を図るよう都道府県に求めました。「自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変わりなく、保険給付の対象となる」「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」(昭和43年10月12日保険発第106号)平成23年の厚生労働省通知「自動車事故は保険給付の対象」平成23年(2011年)にも、厚生労働省が、自動車事故による疾病も医療保険の給付対象となることを改めて示す通知を出しています。犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた疾病は、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律)において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています。「犯罪被害や自動車事故等による疾病の保険給付の取り扱いについて」(厚生労働省 平成23年8月9日)なぜ病院は交通事故の治療に健康保険の使用を嫌うのか?なぜ病院は「交通事故に健康保険は使えない」と言ったり、交通事故の治療に健康保険を使うことを嫌うのでしょうか?理由は、いくつか考えられます。単に誤解しているだけのこともあります。手続上、交通事故の場合は第三者行為届が必要なので(あとで加害者側に求償するため)、それが提出されていないから健康保険を使えない、という意味の場合もあるでしょう。ですが、たいていは、交通事故診療は業務が煩雑になるのに、健康保険診療だと診療報酬が減り、割に合わないからです。「割に合わない」というと語弊があるかもしれませんが、医療機関に負担と矛盾が集中するのです。これが、病院が交通事故による怪我の治療に健康保険の使用を嫌う本当の理由です。交通事故に健康保険を使うと医療機関に負担と矛盾が集中する医療機関の懸念は、もっともなのです。交通事故の診療に健康保険を使うと、医療機関に負担や矛盾が集中します。具体的に医療機関の業務がどうなるか、考えてみましょう。自由診療で治療するのであれば、自賠責様式の診療報酬明細書等を作成して自動車保険会社に診療費を請求すればよく、しかも診療報酬単価が高いので、業務上、特に問題になることはありません。しかし、健康保険を使うと、健康保険診療の業務と自由診療の業務の両方を求められ、業務が非常に煩雑になるのです。しかも、診療報酬単価は保険診療なので低くなります。健康保険を使うと、診療費の請求先は健康保険組合になりますから、保険診療用のレセプトを作成して診療費を請求します。患者には、診療費の自己負担分を支払ってもらいます。ここまでは、通常の保険診療です。交通事故の場合は、これと別に、自賠責様式の診断書や診療報酬明細書、後遺症が残る場合は後遺障害診断書の作成などを求められます。これらは、本来なら自由診療の場合の業務です。そのほか、加害者や保険会社、警察の対応も求められます。健康保険診療とするなら、本来これらに対応しなければならない義務は医療機関にはないのですが、当たり前のように要求されるのです。しかも、診療報酬単価は、保険診療ですから自由診療に比べ低くなります。このように、交通事故の診療に健康保険を使うと、医療機関に負担や矛盾が集中してしまうのです。健康保険診療の診療報酬は、自由診療の半分以下保険診療は、診療行為ごとの点数が定められ、健康保険を使う場合、1点あたりの単価を10円として診療報酬を算定します。ちなみに、労災保険診療は1点あたり12円です。それに対し、自由診療は、医師が患者と合意すれば診療報酬を自由に決められます。一般的には、自賠責診療費算定基準にもとづき、おおむね1点単価を20円程度とすることが多いようです。自由診療健康保険診療単価20円10円つまり、健康保険診療だと、自由診療の半分、場合によってはそれ以下の診療報酬となってしまいます。業務量は増えて煩雑になるのに、診療報酬は大幅に下がるのです。相手方保険会社が健康保険の使用を被害者に勧める理由とは?病院が交通事故に健康保険を使うことを嫌うのに対し、相手方の保険会社が「健康保険での診療をお願いします」と言ってくることがあります。保険会社は、なぜ健康保険の使用を勧めるのでしょうか?健康保険を使うと被害者の自己負担が3割だから、保険会社は3割の賠償でよいから? ではありません。残りの7割は、健康保険組合など保険者から求償されますから、保険者に支払います。つまり、健康保険を使っても使わなくても、治療費の全体が賠償対象です。それでも保険会社が健康保険の使用を被害者に求めるのは、自由診療より健康保険診療の方が、治療費全体が安くなるからです。自由診療の診療単価は1点20円程度ですが、健康保険診療は1点10円です。つまり、被害者が健康保険を使うと、保険会社は治療費の支払いを半分に抑えられるのです。そのため、入院治療が必要な場合など治療費が高額になりそうなときは、保険会社は被害者に健康保険の使用を強要する場合があるのです。なお、比較的短期間の通院で完治するような怪我にまで、健康保険の使用を保険会社が強要することはありません。治療費が自賠責保険の範囲内で収まる額なら、保険会社は自分の懐が痛まないからです。治療費が自賠責保険の支払限度額を超えるような場合は、その超過した治療費を自社で負担することになるので、健康保険診療にして治療費をできるだけ抑えたいというわけです。交通事故で健康保険を使うときの注意点交通事故で健康保険を使う場合は、次の点に注意してください。健康保険を使うことによるデメリットをふまえ、判断することが大切です。患者(被害者)または家族が窓口で健康保険を使用する意思を表明し、医療機関が承諾した日から健康保険診療となります。健康保険証を窓口に提出しただけでは適用となりません。遡っての適用はできません。健康保険組合など保険者に「第三者行為による傷病届」の提出が必要です。通常の診療と同じように、受診の都度、窓口で一部負担金(自己負担金)を支払わなければなりません。任意保険会社による一括払いは、できなくなります。保険診療にすると、医療機関には、自賠責様式の診断書や診療報酬明細書、後遺障害診断書などを発行する義務がなくなるので、発行してもらえない場合があります。健康保険の使用はやむを得ない場合に限る交通事故の治療は、あくまでも自由診療が基本です。もちろん、患者が希望すれば健康保険を使えますが、「交通事故でも健康保険は使えるでしょ!」と喧嘩腰で病院に詰め寄るのは問題です。損害賠償請求では、医師や病院の協力が欠かせないからです。医師や病院とは、良好な関係を築くことが大切です。ですから、健康保険を使うのは、使わないと損をする場合に限るのがよいでしょう。次のページも参考にしてみてください。交通事故で健康保険を使う2つのメリット・5つのデメリット健康保険を使う方がよいケース・自由診療でよいケース被害者の過失が大きいときは健康保険を使わないと損!保険会社が健康保険の使用を勧めてきたら?保険会社は、自社の支払う保険金を少なくしようと、健康保険診療を勧めてくることがあります。そのとき、「どうして自分の健康保険を使わないといけないの!」と喧嘩腰で突っぱねるのは損です。もちろん、保険会社の言うとおりにする必要はありませんが、保険会社が健康保険の使用を勧めてくるのは、治療費が高額になるケースが多いので、被害者であるあなたにも過失があるような場合は、健康保険の使用を検討してみて損はありません。治療費を抑えておけば、示談交渉においても有利です。まとめ交通事故による怪我の治療は、自由診療が基本です。「交通事故に健康保険は使えない」と言われることがありますが、患者(被害者)が希望すれば、交通事故による怪我の治療にも健康保険を使えます。ただし、交通事故に健康保険を使うのは、使う必要がある場合に限るべきでしょう。どんな場合でも健康保険を使った方がよい、というわけではありません。もし、交通事故の治療に健康保険を使うことでトラブルになっていたり、困ったこと、疑問に感じることがあれば、交通事故の損害賠償問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・大阪地裁判決・昭和60年6月28日「判例タイムズ№575」170~178ページ・中込一洋『交通事故事件 社会保険の実務』学陽書房 78~79ページ
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  • 交通事故で健康保険や国民健康保険を使うメリット・デメリット
    交通事故の治療は、自由診療が原則ですが、患者本人(交通事故の被害者)が希望すれば、健康保険や国民健康保険を使えます。ただし、健康保険や国民健康保険を使うメリットのあるケースは限られ、多くの場合、デメリットしかありません。どんな場合でも健康保険や国民健康保険を使う方が良い、というわけではありませんから、健康保険や国民健康保険を使うメリット・デメリットを検討した上で、使用を判断することが大切です。それでは、交通事故に健康保険や国民健康保険を使うメリット・デメリットについて、具体的に見ていきましょう。なお、ここでは健康保険について説明していますが、国民健康保険等も同じです。交通事故の治療に健康保険を使うメリット交通事故で健康保険を使うメリットは、次の3つです。医療点数単価が低く、治療費の総額を低く抑えられる。治療費の自己負担が少なくなる。健康保険給付額は、過失相殺の対象とならない。このため、健康保険を使うと、最終的に受け取れる損害賠償額が多くなる場合があるのです。ただし、このメリットが現実のものとなるのは、特定の場合に限られます。健康保険は医療点数単価と自己負担が低い健康保険を使うと、治療費の総額と自己負担額が、自由診療に比べて少なくなります。自由診療は、診療単価が高いため治療費が高額となるうえ、全額自己負担です。それに対し、健康保険診療は、診療単価が低いため治療費が低く抑えられ、しかも、その3割の自己負担で済みます。診療単価と自己負担を比べると、こうです。自由診療健康保険診療診療単価20円10円自己負担全額3割健康保険診療の診療単価は10円です。自由診療の場合、診療単価は、医師と患者との間で自由に決めることができ、1点25円とか30円という場合もありますが、1点20円程度が一般的です。交通事故の診療費については、自賠責診療費算定基準があります。もっとも、治療費は、加害者(相手方保険会社)に損害賠償請求できますから、加害者から治療費が支払われる場合には、基本的に、健康保険を使用する経済的メリットは生じません。例外として、加害者から治療費が支払われる場合でも、被害者の過失割合が大きいときは、健康保険を使用する経済的メリットはあります。では、健康保険を使う経済的メリットが生じるのは、どんな場合なのでしょうか?健康保険を使う経済的メリットが生じるケースとは?健康保険を使う経済的メリットが生じるのは、ひき逃げや未保険などで加害者から治療費が支払われない場合と、被害者の過失割合が大きい場合です。具体的に見ていきましょう。ひき逃げの場合ひき逃げの場合は、加害者が不明のため、損害賠償請求も、自賠責保険への直接請求もできません。このような場合は、政府保障事業に損害の填補を請求できますが、これには、健康保険等を使って治療することが前提になっています。つまり、ひき逃げ事故に遭った場合は、健康保険を使って治療することで、治療費の負担を抑えるとともに、国に損害の填補金を請求できるのです。加害者が任意保険に未加入の場合加害者が任意保険に加入していない場合は、たいてい、自賠責保険の範囲でしか損害賠償を受けることができません。自賠責保険金は、治療費・休業補償・入通院慰謝料を合わせて120万円が上限です(⇒自賠責保険の支払い基準はこちら)。自由診療だと、治療費の全額が自己負担ですから、治療費だけで120万円を超えることもあり得ます。そうなると、休業補償や慰謝料は、全く受け取れなくなってしまいます。こういう場合、健康保険を使うと、治療費の負担額が低くなり、その分、休業補償や慰謝料を確保できるのです。もちろん、自賠責保険から支払われる上限額は、健康保険を使った場合でも、120万円で変わりません。治療費に充当する額が少なくなれば、それだけ休業補償や慰謝料などに充てられる賠償金額が増える、というわけです。被害者の過失が大きい場合被害者の過失が大きい場合は、過失相殺により損害賠償額が大きく減額されます。過失相殺の対象となるのは、自由診療だと治療費の全額ですが、健康保険診療の場合には、治療費のうち3割の自己負担分だけです。健康保険からの給付額は過失相殺の対象となりません。その結果、健康保険を使う方が、受け取れる賠償額が多くなるのです。詳しくはこちらをご覧ください。治療費を抑えることで、保険会社との示談交渉で有利にこれは、健康保険を使う直接的な経済的メリットではありませんが、こんな効果も期待できます。健康保険を使って治療すると、自由診療の場合よりも、治療費の総額が少なくなりますから、相手方保険会社としても、支払う保険金(賠償金)の額を低く抑えられるメリットがあります。そのため、健康保険を使うと「治療費の減額に協力した」ということで、慰謝料の増額交渉で有利に作用する可能性があるのです。ただし、あくまでも可能性の話です。また、交渉材料として使えるとしても、このことをもって、そんなに慰謝料がアップするわけではありません。交通事故の治療に健康保険を使うのは、デメリットの方がはるかに大きいので、そのデメリットを超えるメリットがあるか、慎重に判断することが必要です。交通事故の治療に健康保険を使う5つのデメリット健康保険を使うと、健康保険法等の規制が適用され、医療機関も患者(被害者)も健康保険診療のルールに従わなければなりません。他方で、医療機関と保険会社との間で、治療費の請求・支払いの関係はなくなります。このことから、被害者に様々なデメリットが生じるのです。主なデメリットとしては、次のようなものがあります。交通事故の治療に健康保険を使うデメリット自分の加入している健康保険組合に「第三者行為の届出」をし、健康保険を使う了承を得る必要がある。医療機関には自賠責様式の書類作成の義務がなくなり、診断書は医療機関所定のものを交付され、診療報酬明細書は自分で健康保険組合に開示請求することになる。保険適用の治療に制限され、十分な治療を受けられない場合がある。治療の都度、医療費の一部負担金を病院の窓口で支払わないといけない。健康保険診療には症状固定や後遺障害の概念がなく、後遺障害診断書を作成できないので、後遺障害等級の認定請求が困難になることがある。簡単にいえば、交通事故で健康保険を使うデメリットとは、健康保険の使用と治療費の請求に手間がかかる、治療費の立替払いが必要、後遺障害等級の認定で不利になるリスクがある、ということです。詳しく見ていきましょう。①「第三者行為による傷病届」の提出が必要1つ目のデメリットは、健康保険を使用するにあたっての手続き上の問題です。健康保険を使って治療するには、健康保険組合に「第三者行為による傷病届」を提出し、健康保険を使用することについて了承を得る必要があります。これは、後で健康保険組合から加害者(または加害者加入の保険会社)に治療費(保険給付額)を請求するためです。②自賠責様式の診断書・診療報酬明細書を発行してもらえない2つ目のデメリットは、健康保険を使うと、医療機関から自賠責様式の診断書や診療報酬明細書を発行してもらえないことです。患者が健康保険を使うと、医療機関は、健康保険法の規定に従い、健康保険診療報酬明細(健保レセプト)を作成し、健康保険の保険者に診療費を請求します。したがって、健康保険診療報酬明細書と自賠責診療報酬明細を二重に発行することはできない、というのが理由です。自賠責診断書についても、作成義務はありません。そうはいっても、治療費のうち3割の自己負担部分は、あとで被害者が、加害者(相手方保険会社)に請求します。その際には、診断書や診療明細書が必要です。どうすればよいのでしょうか?医療機関所定の診断書や領収書・診療明細書で代用病院の窓口で治療費の一部負担金を支払うと、病院から領収書と診療明細書が交付されます。自賠責診療報酬明細書を発行してもらえないときは、この領収書と診療明細書を代用できます。紛失したときは、病院に領収書の再発行をお願いし(領収書の再発行をしてくれない場合は、領収額証明書等の治療費の額が分かるものを発行してもらいます)、診療明細書は、保険者(健康保険は健康保険組合等、国民健康保険は市区町村)に個人情報開示請求して開示してもらいます。診断書は、医療機関所定の診断書を発行してもらい、代用します。損害保険料率算出機構は、「各医療機関所定の診断書でも必要事項の記載があれば、自賠責保険の支払手続(後遺障害等級の認定も含む)を行う」としています。(『Q&Aハンドブック交通事故診療・全訂新版』創耕舎 89ページ)医療機関所定の診断書でも代用できますが、「必要事項の記載があれば」としていることに注意してください。適正な損害賠償を受けるためには、必要事項がもれなく記載されていることが大切です。自賠責様式の診断書を書いてくれる医療機関もある健康保険を使って治療を受けた場合でも、自賠責様式の診断書等を作成してくれる医療機関もあります。日本医師会が全国の医療機関に対して行ったアンケート調査によると、「健保を使用しているにもかかわらず、損保会社所定の書類作成を求められるケースがあるか」という問に対し、「ある」と回答した医療機関が70.4%、そのうち、「患者の請求・支払い等を考え、損保会社所定の様式で作成し、患者に交付している」と回答した医療機関が63.6%となっています。※参考:日本医師会「労災・自賠責委員会答申」(2012年2月)治療を開始する前に、健康保険を使っても自賠責様式の診断書や診療報酬明細書を発行してもらえるかどうかを確認し、発行してくれる病院で治療を受けるという方法もあります。③治療に制約があり、十分な治療を受けられない可能性がある3つ目のデメリットは、治療内容に制限があることです。健康保険診療だと、保険適用外の診療を受けられず、使用できる薬の種類や量、リハビリの回数などにも制限があります。診療内容が制限され、十分な治療を受けられないことがあります。この点について、日本医師会は次のように指摘しています。交通事故診療を担う医療の現場では、医療機関に搬送直後から患者の全身状態を素早く確認するとともに、あらゆる可能性を考慮しながら、早期に集中的な治療を行う必要がある。こうした患者の治療に対し、法律、療担規則などの縛りの多い、いわゆる制限診療につながる現行の健康保険を適用するということは、結果的に十分な治療を提供できず、被害者の不利益につながる可能性がある。(日本医師会 労災・自賠責委員会 答申(平成24年2月2日)より抜粋)ただし、診療内容が問題となるのは、特に救急搬送された重症患者の場合でしょう。ですが、交通事故の治療は、比較的軽度の傷害(傷害度1)が84%と大半です(損害保険料算出機構『自動車保険の概況』2020年5月発行)。裁判例でも、次のような指摘があります。保険診療においては診療内容につき法及び規則に基づく制約が存在するために、保険診療によっては交通事故による傷害に対して十分な診療を施すことができないとは速断しえない。現在では健康保険で施すことができない治療方法はなく、…医師が自由診療を選択しているのは、医学的な理由によるのではなく、経営上の判断に基づくものと考えていることが認められ、…公的医療機関に比較して私的医療機関において自由診療の割合が高いことは、右の見解を裏付けるものである。(東京地裁判決(平成元年3月14日)より抜粋)つまり、診療内容の制約が現実に問題となるケースは、ごく一部に限られます。とはいえ、保険診療では必要な治療を受けることができない場合は、自由診療を選択する必要があります。④治療の都度、医療費の窓口負担の支払いが必要4つ目のデメリットは、治療の都度、病院の窓口で治療費の自己負担分を支払わなければならず、経済的負担が生じることです。自由診療であれば、治療費は、相手方の任意保険会社が病院に直接支払う「一括対応」ができますが、健康保険診療の場合は、それができなくなってしまいます。健康保険を使うと、健康保険法上の規制がかかるからです。健康保険法は、医療費の自己負担金(一部負担金)は患者が医療機関の窓口で支払うよう義務付けています。この原則は、交通事故による怪我の治療に健康保険を使う場合にも適用されます。したがって、普段、病院にかかるときと同じように、通院のたびに、窓口で自己負担分を支払わなければなりません。損保会社から「窓口負担分は、あとでウチが一括して支払うので、治療のたびに支払う必要はありません」などと説明されることがありますが、これは、健康保険を使うよう誘導するのが目的です。この手法を保険会社は「健保一括払い」と呼んでいますが、患者自身が、治療のたびに窓口で支払わないと、本来は違法です。健康保険法第74条(一部負担金)…保険医療機関または保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際…、一部負担金として、当該保険医療機関または保険薬局に支払わなければならない。⑤後遺障害等級の認定が不利になるリスクがある5つ目のデメリットは、健康保険を使うと、医師に後遺障害診断書を作成してもらえず、後遺障害に対する損害賠償を受ける上で不利になるリスクがあることです。交通事故の治療費の損害賠償は、治療の効果が見えなくなった時点で症状固定と判断し、完治していなくても治療費の支払いは終了します。後遺症が残った場合は、後遺障害等級を認定し、後遺障害等級に応じて逸失利益や慰謝料を支払います。ところが、健康保険診療には、症状固定や後遺障害といった概念がありません。治療の必要があれば、治療を継続するからです。したがって、健康保険診療の場合は、症状固定の診断ができず、後遺障害診断書の作成ができません。そうすると、後遺障害等級の認定を受けられず、後遺障害に対する損害賠償請求ができなくなるリスクがあるのです。詳しくは、「交通事故で健康保険を使うと医師が後遺障害診断書を書いてくれない?」をご覧ください。まとめ健康保険や国民健康保険を使って治療を受けることのメリットがあるのは、加害者の側から治療費が支払われない場合、または、被害者の過失割合が大きい場合です。相手方任意保険から十分な損害賠償を受けられる場合は、健康保険や国民健康保険を使うメリットはなく、デメリットしかありません。健康保険や国民健康保険を使うことによるメリットとデメリットの両面を考慮して、判断することが大切です。健康保険を使うべきケースはこちらにまとめていますから、参考にしてみてください。交通事故での健康保険や国民健康保険の使用について、お困りのことがあれば、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『別冊判例タイムズ38』4ページ・日本医師会 労災・自賠責委員会 答申(平成24年2月2日)・損害保険料算出機構『自動車保険の概況』2020年5月発行・『Q&Aハンドブック交通事故診療全訂新版』創耕舎 88~93ページ
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  • 交通事故の治療で健康保険を使うべきケース・自由診療でよいケース
    交通事故による怪我の治療は自由診療が原則ですが、患者(被害者)が希望すれば、健康保険を使って治療できます。国保その他の公的医療保険も同様です。健康保険を使うか、自由診療にするか、その判断のポイントと、健康保険を使って治療する方がよいケース、自由診療でよいケースについて、具体的に見ていきましょう。交通事故で実際に健康保険を使うのは1~2割まず、交通事故の診療で、実際に健康保険がどの程度使用されているのか、見ておきましょう。あなたが、健康保険を使うかどうかを判断する上で、参考になると思います。交通事故診療における健康保険の使用率を見るには、2つのデータがあります。1つは、損害保険料率算出機構が毎年度公表している「自動車保険の概況」の社会保険利用率の数値です。もう1つは、日本医師会が2012年(平成24年)の労災・自賠責委員会答申で公表した、全国の医療機関に対するアンケート調査(交通事故診療に係る健保使用問題に関する調査)の結果です。日本医師会のアンケート調査結果は、たんに健康保険の使用率だけでなく、交通事故診療を行っている医療機関での健康保険使用の実態がよく分かります。損害保険料率算出機構が公表している社会保険利用率損害保険料率算出機構が公表している各年度の「自動車保険の概況」によると、自賠責保険における社会保険利用率は11%前後で推移しています。(損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」より)交通事故診療で健康保険を使っているのは、およそ1割です。案外少ないと感じたのではないでしょうか。日本医師会が調査した健康保険使用率日本医師会の調査では、健康保険使用率は19.9%です。交通事故診療で健康保険を使っているのは、約2割という結果になっています。損害保険料率算出機構の数値との違いは、「損害保険料率算出機構が発表している数値には、死亡事故で健康保険を使用した場合が含まれていない」からとされています。(※参考:『Q&Aハンドブック交通事故診療・全訂新版』創耕舎 88ページ)医療機関種別に健康保険の使用率を見ると、病院が23.6%、診療所が10.8%と、病院は診療所の2倍以上です。入院・外来別では、入院が58.1%、外来が17.2%で、入院が外来の3倍以上です。日本医師会は、「入院においては治療費が高額になることが予想されるために健康保険を使用する案件が多いと思われる」と分析しています。日本医師会の労災・自賠責委員会答申(平成24年2月)はこちら※日本医師会のWebサイトにリンクしています。健康保険を使うか自由診療とするか判断のポイント交通事故で実際に健康保険を使うケースは1~2割程度という現実もふまえ、ここからが本題です。健康保険を使うか、自由診療とするか、どう判断すればよいのでしょうか?まず押さえておきたいのは、交通事故に健康保険を使うメリット・デメリットです。健康保険診療は、診療単価が低いため医療費を安く抑えられますが、保険適用外の治療は受けられません。その他にも、交通事故に健康保険を使うには特別の手続きが必要ですし、治療のたびに診療費の自己負担分を支払わないといけない、自賠責様式の診断書などを発行してもらえないなど、多くのデメリットがあります。一方、自由診療は、健康保険診療のような規制はありませんが、診療費が高くなります。したがって、治療費を加害者側が全額支払ってくれるのであれば、自由診療として問題ありません。そもそも、交通事故診療は自由診療が基本で、そのために自賠責保険制度があり、それを補完する任意保険もあるのです。ただし、加害者側から十分な損害賠償を受けられない可能性がある場合は、健康保険を使って治療した方が有利です。次のようなケースです。加害者側から十分な賠償を受けられない可能性があるケースとは?ひき逃げで加害者を特定できないとき加害者が任意保険に加入していないとき被害者の過失が大きいとき治療が長期化し、医療費が多額になりそうなときこの4つのケースのように、相手の任意保険から十分な支払いを見込めない場合は、健康保険を使って治療した方が有利です。それ以外は、自由診療でよいでしょう。この4つは、医療機関も「健保使用もやむを得ない」と考えるケースです。一般的に医療機関は交通事故の治療に健康保険の使用を嫌うのですが、その医療機関でさえ理解を示すケースですから、医療機関と健康保険の使用をめぐってトラブルになることは少ないといえます。医療機関も「健康保険の使用をやむを得ない」と考えるケース日本医師会が全国の医療機関に行ったアンケート調査の結果によると、医療機関が「健保使用もやむを得ない」と考えるのは、多い順に次の5つのケースです。加害者が特定できない場合(轢き逃げ等)…60.9%患者側の過失が大きい場合…53.0%加害者が任意保険に未加入かつ支払い能力がないと考えられる場合…50.8%患者が医療保険者に「第三者の行為による傷病届」を提出済みの場合…49.1%長期の療養を要する等、医療費が多額になる場合…20.2%※日本医師会の労災・自賠責委員会答申(2012年2月)より(複数回答可)第三者行為届は手続上のことですから除外して考えると、その他の4つは上で挙げた4つのケースと同じです。健康保険を使って治療するとよい4つのケースこの4つのケースは、なぜ健康保険を使うと有利なのか、見ていきましょう。健康保険を使うべき4つのケースひき逃げで加害者を特定できないとき加害者が任意保険に加入していないとき被害者の過失が大きいとき治療が長期化し、医療費が多額になりそうなとき①ひき逃げで加害者を特定できないときひき逃げで加害車両を特定できない場合は、必ず健康保険を使うべきです。理由は2つあります。1つは、加害車両が不明なので自賠責保険にすら請求できず、治療費が全て自己負担となるからです。健康保険を使えば、治療費全体の金額を抑えることができ、しかも、その一部負担で済みます。もう1つは、こういう場合に被害者を救済する制度として政府保障事業があるのですが、この制度を利用するには、健康保険の使用が前提だからです。政府保障事業に請求すると、自賠責保険と同程度の補償を受けることができます。②加害者が任意保険に加入していないとき相手が任意保険に加入していない場合は、たいてい、自賠責保険の範囲でしか賠償を受けられません。賠償されない損害は被害者の負担となりますから、健康保険を使って治療費を低く抑えることが大切です。自賠責保険には支払限度額があります。例えば、傷害事故なら、治療費のほか休業補償や慰謝料など全て合わせて120万円が上限です。仮に自由診療で治療費だけで120万円かかったとしたら、あとの休業損害や慰謝料に対する支払いはありません。一方、健康保険を使うと、大まかな計算ですが、自由診療で120万円(診療単価1点20円)の治療費だと、健康保険診療では治療費は半分の60万円(診療単価1点10円)で、その3割が本人負担ですから、被害者が支払う治療費は18万円です。支払限度額は120万円ですから、残りの102万円は休業補償や慰謝料として支払いを受けられることになります。このように、健康保険を使って治療費を抑えることで、自賠責保険から休業補償や逸失利益、慰謝料についても支払いを受けることができるようになるのです。交通事故の被害者が賠償請求できる損害とは?もっとも、幸いにも軽傷で、自賠責保険の範囲内で全ての賠償が完結するなら、健康保険診療にこだわる必要はありません。加害車両が自賠責保険が切れていたなど無保険車で、自賠責保険の支払も受けられない場合は、政府保障事業に損害の填補を請求することになります。この場合は、健康保険を使って治療することが前提です。③被害者の過失割合が大きいとき被害者の過失割合が大きいときは、健康保険を使って治療すると断然有利です。理由は2つあります。1つは、被害者の過失が大きいと過失相殺により賠償金額が大幅に減額されますが、健康保険を使うことで治療費の支出を抑えることができるからです。もう1つは、健康保険からの給付額が過失相殺の対象とならないため、健康保険を使って治療すると、自由診療に比べて賠償金の手取額が多くなるからです。詳しくは次のページをご覧ください。過失相殺があるとき健康保険を使うと賠償金の手取額が多くなる理由とは?④治療が長期化し、医療費が多額になりそうなとき治療が長期化し、医療費が多額になりそうなときは、健康保険を使うと有利です。2つのケースがあります。1つは、入院の場合です。入院が必要な場合は、治療が長期化し、医療費が多額になる傾向がありますから、たいてい保険会社から「健康保険を使ってください」と打診があります。治療費が多額になると、自賠責保険の支払限度額を超え、超過分は困るのは、任意保険会社です。自賠責保険の支払限度額を超える部分は、任意保険会社の持ち出しとなります。健康保険診療にして、治療費の全体額を抑えることができると、任意保険会社が支払う保険金の額(損害賠償額)を減らすことができるので助かるのです。ですから、任意保険会社から健康保険の使用について打診があったときは、健康保険を使いましょう。保険会社に協力することで、あとで示談交渉を有利に進めることができます。もう1つは、通院が長期化しそうな場合です。通院の場合は基本的に自由診療でよいのですが、むち打ち症などで治療が長期化すると、保険会社が治療費の支払いを打ち切る場合があります。こういう場合は医師と相談し、医師が治療を続けた方がよいという判断であれば、健康保険に切り替えて治療を継続します。保険会社からの支払いはありませんから、治療費は自己負担となりますが、健康保険を使うことで負担額を抑えることができます。保険会社から治療費の打ち切りを宣告されたときの3つの対処法まとめ交通事故の治療は自由診療が原則ですが、相手方の任意保険会社から十分な損害賠償を受けられない場合は、健康保険を使って治療します。例えば、①ひき逃げ、②相手が任意保険に未加入、③被害者の過失が大きい、④医療費が多額になる、という場合です。こういったケースは、交通事故に健康保険を使用することについて、医療機関の理解を得られやすいので、診断書の発行などで医療機関とのトラブルも起こりにくくなります。お困りのことがあれば、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 交通事故で健康保険を使うと医師が後遺障害診断書を書いてくれない?
    交通事故による怪我の治療に健康保険を使うと、原則として後遺障害診断書を発行してもらえません。これは、交通事故の治療に健康保険を使うデメリットの1つです。健康保険を使うと、なぜ後遺障害診断書を書けないのか、後遺障害診断書を発行してもらえないときはどうすればいいのか、わかりやすく解説します。健康保険を使うと、なぜ後遺障害診断書を書けないのか?交通事故で健康保険を使うと、医療機関は、なぜ後遺障害診断書を発行してくれないのでしょうか?2つの理由があります。健康保険診療には、そもそも、症状固定や後遺障害の概念がない。医療機関は自動車保険との関係がなくなり、自賠責様式の診断書を書く義務がない。詳しく見ていきましょう。健康保険診療には「症状固定」や「後遺障害」の概念がないそもそも、健康保険診療には「症状固定」や「後遺障害」といった概念がありません。症状固定や後遺障害というのは、自賠責保険や労災保険に規定され、損害賠償を前提とした概念です。健康保険は、損害賠償を前提とした保険でないので、症状固定や後遺障害の規定がないのです。したがって、最初から健康保険を使って治療すると、交通事故診療の扱いとならず、後遺障害診断書を発行することができないのです。ただし、任意保険会社から治療費を打ち切られたなどで、途中から健康保険に切り替えた場合は、引き続き交通事故診療の取り扱いとなり、自賠責様式の後遺障害診断書の作成が可能です。交通事故診療と健康保険診療の違いを簡単にまとめると、こうなります。交通事故診療交通事故で被害者が被った損害は、加害者側が賠償する責任を負います。交通事故診療では、治療費は加害者側から賠償されることを前提としています。そのため、交通事故診療では、治療をして症状が安定したら「症状固定」と診断し、その時点で「治癒」とみなします。治療を続けても効果がないので、それ以上の治療費の支払いは、損害賠償の範囲を超えるということです。後遺症が残ったときは、後遺障害等級を認定し、後遺障害等級に応じた賠償金(逸失利益や慰謝料)を支払います。健康保険診療健康保険診療は、症状が安定したからといって、治療を打ち切ることはありません。症状が安定していても、必要なら治療を続けられます。健康保険は、加入者が自身の疾病の治療に備えるための保険だからです。もちろん、健康保険診療の診断書は、「症状固定日」や「後遺障害の内容」を記入するようにはなっていません。健康保険診療の場合、自賠責様式の診断書を作成する義務がない健康保険診療にすると、医療機関は、健康保険法等の規程に従うことになる一方で、損保会社(自賠責保険会社・任意保険会社)との関係はなくなります。したがって、健康保険診療にすると、医療機関には、後遺障害診断書だけでなく、損保会社に提出する書類は全て、作成する義務がなくなります。なぜ、そうなるのか、交通事故診療と健康保険診療を比べてみましょう。交通事故診療交通事故診療は自由診療ですから、診療内容や診療費、診療費の支払方法について、医療機関と患者との間で自由に決められます。治療費の支払いは「任意一括払い方式」とするのが一般的です。これにより、医療機関が損保会社に診療費を請求し、それを損保会社が医療機関に支払う関係が生じます。医療機関は、後遺障害診断書の発行を求められると、交通事故診療の一環として作成してくれるのです。健康保険診療健康保険診療の場合、医療機関が診療費を請求するのは、健康保険組合など保険者です。患者(被害者)にも、一部負担金を窓口で支払ってもらうことになります。この場合、医療機関と損保会社との間には何の関係もなく、損保会社との関係が生じるのは、健康保険組合など保険者です。保険者が、医療機関に支払った診療費を損保会社に求償し、損保会社が保険者に支払う関係になります。つまり、健康保険診療になると、健康保険法等の規程に従う義務が生じる一方で、医療機関と損保会社との関係はなくなり、医療機関には自賠責様式の書類を作成する義務がないのです。医師の協力で後遺障害診断書を発行してもらえる場合がある健康保険を使って治療したら、絶対に後遺障害診断書を発行してもらえないのかというと、そうとも限りません。本来なら、「後遺障害診断書は書けない」と拒否されるところですが、医療機関の善意で協力してくれる場合もあります。日本医師会の「交通事故診療に係る健保使用問題に関するアンケート調査」によると、「患者の請求・支払い等を考え、損保会社所定の様式で作成し、患者に交付している」と回答した医療機関が6割を超えています。これは後遺障害診断書に限った調査ではありませんが、6割以上の医療機関で、患者から要請があれば、自賠責様式の書類を作成し交付しているのです。損保会社所定の書類(明細書・診断書)の作成依頼への対応状況日本医師会 労災・自賠責委員会『「地域医療再生における労災保険、自賠責保険の役割」に対する答申』(平成24年2月2日)ただし、これは、あくまで医療機関が善意で協力しているものです。医療機関の負担が大きいことは知っておいてください。また、自賠責様式・損保会社所定の診断書を作成してくれるのが「良い病院」で、拒否するのは「悪い病院」というわけではありませんから、誤解しないでください。後遺障害診断書を発行してもらえないときの対処法健康保険を使って治療したことで医療機関が後遺障害診断書を作成してくれなくても、医療機関所定の診断書で代用できます。上で紹介した日本医師会のアンケート調査からも、4分の1の医療機関が、健保の様式や医療機関所定の様式の診断書を発行しているのが分かります。後遺障害等級の認定機関である損害保険料率算出機構も、「各医療機関所定の診断書でも必要事項の記載があれば、後遺障害等級の認定を含め自賠責保険の支払手続を行う」としています。(参考:『Q&Aハンドブック交通事故診療・全訂新版』創耕舎 89ページ)ただし、「必要事項の記載があれば」という点に注意してください。必要事項を適確に漏れなく記載することが大事後遺障害等級の認定申請をしても、後遺障害そのものが認定されないことや、後遺障害等級が認定されても想定していた等級より低い等級となることは、よくあります。これは「医療機関所定の診断書だから」というのではありません。自賠責様式の後遺障害診断書でも同じことが言えるのですが、適正な後遺障害等級が認定されるために必要な情報が適確に記載されていない場合が多いのです。ノウハウの蓄積があるのは医師でなく弁護士医師は、医学の専門家ですが、賠償問題に関しては専門ではありません。後遺障害診断書を何度も書いているような医師ならポイントも分かるでしょうが、普通の医師に、そこまでの蓄積はありません。どんな情報をどう書けば適正な後遺障害等級の認定を受けられるか、について蓄積があるのは、医師でなく弁護士なのです。交通事故の損害賠償を得意とする弁護士は、常に研究・分析し、ノウハウを蓄積しています。ですから、後遺障害等級の認定申請は、交通事故の損害賠償問題を得意とし、後遺障害に詳しい弁護士に相談することが大切なのです。医療機関に後遺障害診断書の発行を要請するときの注意点そもそも、健康保険を使って治療すると、医療機関には後遺障害診断書を作成する義務はありません。また、多くの医師は「できれば書きたくない」というのが本音です。自分の書いた後遺障害診断書が損害賠償額を左右しますから、後々トラブルに巻き込まれたり、裁判で証言を求められたりするのが嫌だからです。そういう点をふまえて、後遺障害診断書の作成をお願いすることが大切です。まとめ健康保険を使って治療を受けると、医療機関には自賠責様式や損保会社所定の様式の書類を作成する義務がなくなり、原則として後遺障害診断書を作成してもらえません。その場合は、医療機関所定の様式の診断書で代用できます。後遺障害等級を認定する損害保険料率算出機構も、医療機関所定の診断書でも必要事項が記載されていれば手続きするとしています。なお、健康保険を使って治療した場合でも、後遺障害診断書の作成をお願いすれば、対応してくれる医療機関もあります。お困りのことがあれば、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 交通事故で被害者の過失割合が大きいときは健康保険を使わないと損!
    被害者の過失割合が大きい場合は、康保険を使って治療すると、経済的メリットが生じます。健康保険を使って治療すると、治療費の自己負担が軽減できるとともに、健康保険を使わない場合に比べて、受け取れる損害賠償額が多くなります。健康保険を使うと、治療費の自己負担を軽減できる被害者の過失割合が大きい場合、過失相殺により損害賠償額が大幅に減額されるほか、そもそも相手方保険会社が一括払いをしないことがあるため、治療費の自己負担が大きくなります。加害者が任意保険に加入していれば、通常、治療費は、相手方任意保険会社が病院に直接支払ってくれますが、被害者の過失が大きく、自賠責保険の支払額内で足りる場合は、任意保険会社が一括払をしないことがあります。こういう場合は、健康保険を使って治療すると、治療費そのものを低くでき、その3割の負担でよいため、治療費の自己負担を軽減することができます。健康保険を使うと、治療費の自己負担をどれくらい軽減できるか?例えば、こんなケースを考えてみてください。自由診療で治療費が 200万円。被害者の過失割合が 8割。この場合、200万円の8割が過失相殺され、加害者からの賠償額は40万円です。あとの160万円は、被害者の負担となります。このケースで、健康保険を使うと、どうなるでしょうか?仮に、診療単価が同じとしても、被害者が病院の窓口で支払うのは治療費の3割のみですから、治療費200万円のうち3割の60万円が被害者の損害となります。この60万円の損害に対し、8割が過失相殺され、損害賠償額は12万円。被害者の負担は48万円です。診療単価の差が大きいほど、メリットが大きくなる実際は、自由診療と健康保険診療とでは、診療単価が異なりますから、被害者の負担額は、もっと軽減されます。健康保険の診療単価は10円です。自由診療の場合は、医師と患者との間で自由に決めることができ、診療単価20円程度が多いようです(⇒自賠責診療費算定基準)。そうすると、あくまで単純計算ですが、健康保険を使ったときの治療費は、自由診療の場合の半分程度となります。自由診療で治療費が200万円なら、健康保険診療だと治療費は100万円。被害者が病院の窓口で支払うのは、その3割ですから、30万円が被害者の損害となります。この30万円に対し、8割が過失相殺され、支払われる賠償額は6万円。被害者の負担は24万円となります。つまり、自由診療であれば、被害者が160万円の治療費を負担しなければなりませんが、健康保険を使うと、被害者の負担は24万円で済むのです。健康保険を使うと、より多く損害を回復できる被害者の過失割合が大きい場合は、健康保険を使って治療すると、より多く損害を回復することができます。健康保険からの給付額(治療費の7割分)が過失相殺の対象とならないからです。健康保険を使って治療したときの過失相殺の仕組み健康保険を使って治療すると、治療費の7割が健康保険から給付され、これにより、被害者に発生した損害の一部が填補されたことになります。損害賠償にあたっては、被害者の損害が二重に填補されないよう調整するため、健康保険からの給付額は、既払金として損害賠償額から控除されます。このとき、被害者に過失があり過失相殺する場合は、過失相殺後に既払金を控除するのが一般的ですが、健康保険の給付額については、先に健康保険給付額を控除し、後から過失相殺する取扱です。つまり、健康保険給付額は、過失相殺されることなく、損害の填補に充当されることになります。過失相殺されるのは、自己負担部分だけです。どれくらい損害の回復ができるのか?もう一度、上の例で考えてみましょう。健康保険を使って治療し、治療費が100万円、被害者の過失割合が8割です。健康保険から治療費の7割の70万円が給付され、被害者が病院の窓口で支払った一部負担金は3割の30万円です。被害者が支払った30万円については、過失相殺のうえ、2割の6万円が加害者(相手方保険会社)から賠償されます。あとの24万円が、被害者の最終的な負担となります。つまり、被害者に8割の過失がある場合、健康保険を使うと、治療費は76%(健康保険から70%、加害者から6%)が補填され、24%の負担で済む計算です。これに対して、自由診療の場合には、治療費全体が過失相殺の対象となりますから、治療費200万円に対し、加害者から賠償されるのは2割(40万円)。損害額のわずか20%が填補されるだけで、80%(160万円)が被害者の負担となるのです。まとめると、こうです。自由診療の場合には、治療費の全体に対し過失相殺するため、被害者の過失割合が大きいと、損害賠償額は少額となります。被害者の過失が8割なら損害の2割、被害者の過失が9割なら損害の1割しか回復できません。健康保険診療の場合は、治療費の7割が健康保険から給付され、残りの3割については、過失相殺して加害者から賠償されます。すなわち、損害の少なくとも7割以上が回復できるのです。被害者の過失が8割でも9割でも、損害の7割以上を回復できます。なお、被害者に過失がない場合は、健康保険を使っても使わなくても、損害は100%填補されますから、相手が任意保険に加入し、賠償資力に問題がなければ、健康保険を使う経済的メリットは生じません。健康保険を使わないと、これだけ損する!過失相殺があるとき、被害者の過失割合が大きいか小さいかによって、自由診療と健康保険診療で、どれくらい賠償金の受取額に差が生じるのか、具体的に見てみましょう。次のような事例を考えます。設例自由診療の診療単価は20円とします。健康保険診療の診療単価は10円です。治療費は、自由診療で200万円、健康保険診療で100万円とし、その他の損害(休業損害や慰謝料など)を300万円とします。ここでの計算は、過失相殺率の大小により、自由診療と健康保険診療とで、どれくらい損害賠償金の受領額に差が生じるかをイメージしやすくするため、細かな計算は省いています。また、健康保険からの給付額は、被害者の損害から除外し、実際に被害者が負担する3割分のみを被害者に発生する損害としています。実際の損害算定においても、健康保険給付額は過失相殺前に控除する扱いが定着しているため、3割の一部負担分のみを治療費として計上しています。被害者の過失割合が80%の場合被害者の過失割合が80%の場合を考えてみます。自由診療健康保険診療治療費(自己負担)200万円(200万円)100万円(30万円)慰謝料等300万円300万円損害の合計額500万円330万円過失相殺後の額(賠償金額)100万円66万円既払金200万円賠償金の受取額-100万円66万円損害額と賠償金額の計算自由診療の場合、治療費の200万円は全額が被害者の負担ですから、全損害額は500万円です。80%の過失相殺をして、賠償金額は100万円となります。健康保険診療の場合、治療費は100万円ですが、被害者の負担は3割の30万円ですから、被害者の負った損害は、治療費の自己負担30万円と慰謝料等の300万円と合わせ330万円です。これに80%の過失相殺をして、賠償金額は66万円となります。治療費100万円を被害者の損害として計上し、慰謝料等と合わせて400万円を損害としたとしても、健康保険給付額70万円を先に400万円から控除し、330万円に対して過失相殺しますから、同じことです。損害賠償金の受取額の計算過失相殺後の賠償金額は、自由診療の場合が100万円、健康保険診療の場合は66万円ですから、一見すると、自由診療の方が賠償額を多く受け取れるように思えます。自由診療の場合は、任意一括払いにより保険会社が治療費を病院に支払い済みですから、治療費の200万円は既払金として、賠償金額から差し引かれます。すると、損害賠償金の受取額は、計算上はマイナスとなり、賠償請求できる損害はなく、賠償金の受取額はゼロです。任意保険会社が一括払いしていない場合は、100万円を受け取れますが、200万円の治療費は被害者が支払っていますから、100万円の賠償金では治療費も回収できません。なお、被害者に50%以上の過失がある場合は、任意保険会社は一括払いを認めない傾向にあるようです。あとで自賠責保険からの回収が困難になる可能性があるからです。(参考:『交通事故が労災だったときに知っておきたい保険の仕組みと対応』日本法令 30ページ)一方、健康保険診療の場合、治療費の一部負担金は病院の窓口で被害者が支払いますから、既払金はなく、賠償金の受取額は66万円です。被害者が支払った治療費は30万円ですから、66万円のうち30万円は治療費に充当し、残り33万円は慰謝料等に充てることができます。被害者の過失割合が10%の場合ちなみに、被害者の過失割合が10%の場合は、次のようになります。自由診療健康保険診療治療費(自己負担)200万円(200万円)100万円(30万円)その他の損害300万円300万円損害の合計額500万円330万円過失相殺後の額450万円297万円既払金200万円賠償金の受取額250万円297万円損害額は先ほどと同じですが、過失相殺率が10%となりますから、賠償金額が違います。過失相殺後の損害賠償額は、自由診療の場合が450万円、健康保険診療の場合が297万円です。自由診療の場合は、治療費200万円が既払金として控除され、賠償金の受領額は250万円です。250万円を慰謝料などに充てることができます。健康保険診療の場合は、既払金はありませんから、受領額は297万円です。治療費の30万円を差し引いた267万円を慰謝料などに充てることができます。まとめ被害者の過失割合が大きいときは、過失相殺により損害賠償金額が大幅に減額されますから、健康保険を使って治療した方が、経済的メリットが生じ、断然有利です。これは、健康保険が、治療費の被害者過失部分の一部または全部を、結果的に負担することになるためです。自分の人身傷害保険を使うと良い場合もあります。人身傷害保険は、過失相殺なしに全損害が補償されます。ただし、対人賠償保険より支払基準が低い「人傷基準」で損害額を算定するのがデメリットではあります。どうすれば一番多く損害賠償を受けられるかは、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談すると良いでしょう。あなたにとって、最善の方法を提案してくれます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 交通事故の治療を健康保険から労災保険に変更するには?
    業務中や通勤中の交通事故は、労災保険を使って治療することはできますが、健康保険は使えません。健康保険を使って治療していた場合は、労災保険に切り替えなければいけません。さもないと、あとで厄介な問題が生じます。それに、健康保険よりも労災保険の方が有利です。労災保険を使えることが分かったときは、早めに切り替えることが大切です。健康保険から労災保険に切り替えるべき理由とは?健康保険を使って治療中に、労災保険の適用対象となることが分かったときは、労災保険に切り替えることができます。というか、速やかに切り替えないといけません。法律上、業務災害・通勤災害に健康保険は使えないそもそも法律上、労災(業務災害・通勤災害)に、健康保険は使えません。健康保険法では、「労働者又はその被扶養者の業務災害(労災保険法第7条1項1号に規定する業務災害)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い…」(健康保険法1条)と、業務災害を適用除外しています。また、健康保険法には「他の法令による保険給付との調整」規定があり、労災保険給付を受けられる場合は、健康保険給付を行わない旨を定めています(健康保険法55条1項)。国民健康保険法も同様の「他の法令による医療に関する給付との調整」規定があり、労災保険給付を受けられる場合は、国民健康保険給付を行わない旨を定めています(国民健康保険法56条1項)。ですから、業務災害(労災保険法第7条1項1号)はもとより、通勤災害(労災保険法第7条1項2号)も、健康保険の適用外です。業務災害や通勤災害で、労災保険による療養の給付を受けることができる場合には、実際に労災保険による診療を行っているか否かにかかわらず、健康保険を使用することはできません。健康保険から返金を求められたとき困った事態に本来使用できない健康保険を使って診療を受けた場合、健康保険は支払うべきでない給付を行ったことになり、あとで被害者は健康保険から返金を求められます。相手方との示談が成立した後で健康保険から返金を求められると、相手方に追加で請求することも、労災保険に給付を請求することもできません。健康保険から返金を求められた治療費を、被害者は、どこへも請求できない事態となります。間違って健康保険を使用している状態は、速やかに是正する必要があるのです。労災保険の方が健康保険よりメリットが大きい「法律で決まっているから」というだけでなく、被害者にとって、労災保険の方が健康保険よりも補償が充実していて有利です。健康保険は治療費の自己負担があり、治療を受けるたびに3割の自己負担分を窓口で支払わないといけませんが、労災保険には自己負担がありません。また、労災保険は、休業補償給付や障害補償給付、特別支給金など消極損害に対する補償も充実しています。こういった点からも、速やかに労災保険に切り替えるべきです。交通事故で労災保険を使うメリットはこちらで詳しく説明していますから、ご覧ください。損害費目との対応関係損害費目健康保険労災保険治療費療養給付療養補償給付(療養給付)休業損害傷病手当金休業補償給付(休業給付)後遺障害逸失利益なし障害補償給付(障害給付)健康保険から労災保険に変更するための手続き早めに切り替え手続きをすれば、病院で切り替えできる場合があります。まずは、受診した病院に、初診日まで遡って、健康保険から労災保険への切り替えができるかどうかを確認してください。病院で切り替えができる場合受診した病院が労災指定病院であれば、労災であったことを早めに病院へ申し出ると、病院で切り替えが可能です。その場合は、病院の窓口で、今まで支払った治療費の自己負担分が返還され、その後は治療費の窓口負担なく無料で受診できます。手続は、労災保険の療養の給付請求書を受診した病院の窓口に提出するだけです。病院で切り替えができない場合受診した病院が労災指定病院でない場合は、病院で切り替えができません。労災指定病院であっても、病院がすでに健康保険へ診療費を請求し、受領している場合は、病院から健康保険への診療費の返還手続きが必要となってしまうため、対応してくれる病院は少ないでしょう。病院で切り替えができない場合は、健康保険給付を返還し、あらためて労災保険給付を受けることになります。すなわち、健康保険からの給付額(医療機関が健康保険の保険者から支払を受けた額)を返還し、窓口負担分と合わせて、医療費の全額を労災保険に請求します。手続はこうです。まず、加入している健康保険組合等へ、労災(業務災害または通勤災害)だった旨を申し出ます。健康保険組合等から医療費返還の通知と納付書が送られてきますから、返納金を支払います。次に、返納金の領収書と病院に支払った窓口一部負担金の領収書を添えて、労働基準監督署へ医療費(療養の費用)を請求します。このとき、レセプトの写しが必要になる場合がありますから、請求の際に労働基準監督署にご確認ください。手続は、先に健康保険に保険給付額を返還し、その後、労災保険に医療費を請求するのが原則ですが、これにより、多大な経済的負担が生じるなどの場合は、診療報酬の返還が完了する前であっても、労災請求を行うことができます。(参考:厚生労働省「労働基準行政全般に関するQ&A」より)健康保険に返還する前に、労災保険に請求する方法とは?健康保険に返還する前に労災保険に請求するには、2つの方法があります。労災保険に対し、窓口負担分は被害者へ、健康保険給付額は労災保険から健康保険へ、それぞれ支払ってもらうよう請求する方法労災保険に対し、10割の治療費を請求し、それで健康保険へ返還し、その領収書を労災保険に提出する方法。こうすれば、いったん治療費を全額負担しなくて済みます。どちらの方法をとるかは、管轄の労働基準監督署と相談してみてください。まとめ健康保険を使って治療中に労災保険が適用されることが分かった場合、健康保険から労災保険に変更することができます。もしも、会社が労災保険に未加入であっても、労災保険の請求はできます。本来、労災(業務災害・通勤災害)に健康保険を使うことはできませんから、健康保険を使って治療しているときでも、交通事故が労災に該当することが分かった時点で、健康保険から労災保険に切り替えなければなりません。受診した病院が労災指定病院であれば、早めに切り替えを申し出れば、手続は面倒ではありません。ただし、労災指定病院でなかったり、労災指定病院でも初診から日が経っている場合、切り替えは面倒ですし、一時的に医療費の全額自己負担が発生する場合があります。切り替えがうまくできなかったり、手続きに不安のある方は、弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故事件社会保険の実務』学陽書房 84~86ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 259~260ページ・厚生労働省「お仕事でのケガには労災保険」2ページ・全国健康保険協会「仕事中や通勤途中にケガをしたとき」「病気やケガで会社を休んだとき」
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