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接骨院や整骨院の施術は、①医師の診断よりも施術部位が増え、②施術期間が長期化し、③施術費が高額になりやすい傾向があります。濃厚・過剰・高額施術と見なされると、その部分については損害賠償を受けられません。
ここでは、接骨院や整骨院の施術が、多部位化・長期化・高額化しやすい理由と、施術費の支払いをめぐる保険会社とのトラブルを防ぐための注意点についてまとめています。
整骨院・接骨院で施術を受けると、医師の診断よりも施術部位が増えることがあります。
例えば、事故直後にかかった整形外科での診断は頸椎捻挫だったのに、後日、接骨院や整骨院にかかると、頸部のほかにも近接部位の施術も受けるというようなケースです。
柔道整復の施術では、施術部位の数が、整形外科医師の診断した疾病名の数に比べ、1つ2つ増えるのはよくあります。これは、柔道整復師の施術が、全身を診ながら「人間の持つ治癒能力を最大限に発揮させる治療」(日本柔道整復師会HPより)だからですが、実は、それだけではありません。
医師の診断による「疾病名の数」と、柔道整復師の「施術部位の数」に差が生じるのは、医療機関では診療行為ごとの点数にもとづき診療報酬を算定するのに対して、柔道整復師の施術料は、施術部位を単位に算定するからです。
つまり、施術部位が増えるほど、施術費を多く請求できる仕組みになっているのです。
「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」では、施術料は、次に掲げる部位を単位として算定するとしています。
【打撲の部分】
頭部、顔面部、頸部、胸部、背部(肩部を含む)、上腕部、肘部、前腕部、手根・中手部、指部、腰殿部、大腿部、膝部、下腿部、足根・中足部、趾部
【捻挫の部分】
頸部、肩関節、肘関節、手関節、中手指・指関節、腰部、股関節、膝関節、足関節、中足趾・趾関節
柔道整復の施術では、近接部位もいっしょに施術することはあり得ることですが、中には、事故と全く関係のない部位まで施術し、施術費を請求する柔道整復師もいます。実際に施術していないのに、請求だけするようなケースもあります。、
そのため、医師の診断より施術部位が大きく増えたときは、その施術と事故との相当因果関係が問題となるので、注意が必要です。
例えば、こんな裁判例があります。平成22年4月27日の大阪高裁判決です。
事故直後に受診した病院での診断は頸椎捻挫だったのに、後日受診した接骨院では、頸部捻挫、腰部捻挫、胸部打撲、左手間接捻挫、左膝関節打撲として施術。医師による診断と柔道整復師による施術部位の差が大きいことが問題となった事案です。
裁判では、事故直後の医師の診断が尊重し、柔道整復師の施術を過剰と判断しました。
接骨院や整骨院へ通う場合は、事前に評判などを確認しておくことが大切です。
接骨院や整骨院の施術は、一般に長期化する傾向があります。柔道整復の施術が、身体を治す目的だけでなく、保健(予防)も目的とするからです。
そのため、柔道整復師の側から施術を終了とすることはなく、極端にいえば「被害者は通いたいだけ通える」ので、施術期間が長期化しやすいのです。
施術が長期化する場合は、「事故と相当因果関係のある施術期間」が問題となります。
「事故と相当因果関係のある施術期間」と認められるには、医師による治療の一環として施術を受けている実態のあることが大切です。
整形外科で定期的に診察を受け、柔道整復施術の効果について診断を受けておくと、施術費の支払いをめぐる保険会社とのトラブルを回避できる可能性が高くなります。
医師から、施術を継続すれば症状が改善する可能性があるとの判断があれば、施術を継続してもよいでしょう。しかし、医師が、これ以上は改善する見込みがないと判断する場合は、症状固定として、次のステップに進むことを考える必要があります。
施術を継続するか、症状固定とするか、大きくは2つの節目があります。
1つは、健康保険で「長期施術継続理由書」の提出が義務づけられている3ヵ月。もう1つは、裁判で目安とされている6ヵ月です。
健康保険を使って柔道整復施術を受けるとき、初検の日から3ヵ月を超えて1ヵ月間の施術回数の頻度が高い(1ヵ月あたり10~15回以上)場合には、長期施術継続理由書の提出が義務づけられています。
(参考:厚生労働省保健局医療課通知「柔道整復施術療養費に係る疑義解釈資料」平成25年4月24日)
自由診療であっても、この3ヵ月が1つの目安となります。
裁判例では、「頸椎捻挫の場合における通常の治療期間を考慮すれば、相当な施術期間は6ヵ月とみるべき」(東京高裁判決・平成16年8月31日)とした事例があります。
症状があまり改善せず施術期間が長期化した場合、特に6ヵ月に達するような場合には、被害者が訴える自覚症状や柔道整復師の判断だけでは、施術の有効性は認められません。
医師による診察・検査・診断を受けて、他の治療方法への切り換えや症状固定の判断が迫られることになります。
実際に保険会社が認める施術期間は、どの程度でしょうか?
損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況」(2017年3月)によれば、施術期間が6ヵ月を超えて認められているるケースも12.5%ありますが、大半は6ヵ月以内です。
もっとも多いのが、91日以上120日以内(3~4ヵ月)で20.3%。次いで、61日以上90日以内(2~3ヵ月)で17.5%です。
※損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」2017年3月より
接骨院や整骨院の施術費は、高額になりやすい傾向があります。
医師の診療報酬は、自由診療の場合、診療報酬単価を1点=20円で計算するのが一般的です。労災保険診療費算定基準に準拠した自賠責診療費算定基準もあります。
それに対して、柔道整復師は、自由診療の場合、施術費の基準は特に定まっていません。交通事故の施術費は、患者でなく保険会社が負担することもあり、高額化しやすいのです。
なお、基準がないといっても、無制限に支払われるわけではありません。当然「社会通念に照らして合理的な範囲の金額」でなければ認められません。
実際の「柔道整復の施術費」と「医療機関の診療費」を比較してみましょう。
※損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」2017年3月より
※被害者1人1件あたり
診療期間 | 診療実日数 | 平均診療費 | 1実日数あたり |
---|---|---|---|
70.0日 |
19.7日 |
243,889円 |
12,380円 |
施術期間 | 施術実日数 | 平均施術費 | 1実日数あたり |
---|---|---|---|
108.6日 |
51.4日 |
299,546円 |
5,828円 |
※損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」2017年3月より
上のグラフと表から分かるように、被害者1人1件あたりの平均診療費が243,889円であるのに対して、平均施術費は299,546円と、柔道整復の施術費が医療機関の診療費の1.2倍です。
1実日数あたりでみると施術費は診療費の47%ですが、施術実日数が診療実日数の2.6倍となっています。
つまり、1日あたりの施術費は診療費の半分ですが、施術実日数(施術期間)が長いため、施術費の方が診療費よりも高額になるのです。
裁判例では、労災保険や健康保険の算定基準を参考にしたものがあります。
また、施術費の算定基準を請求額通りとし、施術期間、施術頻度、施術料、施術の必要性などを総合的に勘案して、施術費総額の何割かの限度で損害として認める裁判例もあります。
接骨院・整骨院の施術費をめぐる裁判例はこちらをご覧ください。
接骨院や整骨院の施術は、むち打ち症などに有効な場合がありますが、濃厚・過剰・高額施術と見なされ、施術費の支払いを受けられなくなるケースが多いのも事実です。
定期的に整形外科を受診し、医師による治療の一環として施術を受けているという実態を作っておくことが大切です。
接骨院や整骨院の施術費のことでお困りの場合は、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
【参考文献】
・日弁連交通事故相談センター編『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい
・交通事故賠償研究会編集『交通事故診療と損害賠償実務の交錯』創耕舎
・『損害保険の法律相談Ⅰ〈自動車保険〉』青林書院
・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院