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ヘルメット不着用やシートベルト不装着が原因で、損害が拡大したと考えられるようなときは、過失相殺が適用されます。
ただし、受傷の部位や程度によっては、ヘルメット不着用やシートベルト不装着が損害の拡大に影響しているとはいえない場合もあります。
ヘルメット不着用やシートベルト不装着を理由とする過失相殺にあたっては、損害拡大との因果関係を正しく評価することが必要です。
バイクを運転するときは、ヘルメットをかぶることが法律で義務付けられています。
このことから「過失相殺率認定基準」では、ヘルメット不着用が被害の拡大に寄与しているようなときには、著しい過失に準じて加算修正するのが相当としています。
特に、高速道路でのヘルメット不着用は、重過失として評価すべきとしています。
頭部外傷の傷害を受けた場合等、ヘルメット着用義務違反が損害拡大に寄与しているようなときには、著しい過失に準じて、単車側の過失相殺率を加算修正するのが相当であろう。ただし、高速道路におけるヘルメット不着用は重過失と判断すべきである。
(『過失相殺率の認定基準』全訂5版(別冊判例タイムズ38号)より)
著しい過失とは、事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失、重過失とは、著しい過失よりさらに重い、故意に比肩する重大な過失をいいます。
著しい過失の修正率は10%、重過失の修正率は20%ですから、ヘルメット不着用の場合は、大きく減額されることになります。
頭部の受傷は、ヘルメット不着用との因果関係があるといえます。しかし、事故態様や受傷の部位・程度によっては、ヘルメット不着用と因果関係があるとはいえない場合があります。
例えば、頭部以外の受傷は、ヘルメット不着用とは無関係です。また、大型車両による頭部轢過など重篤な傷害の場合は、ヘルメットをかぶっていても傷害は避けられず、ヘルメット着用の有無は関係ないといえます。
ヘルメットをかぶらず運転していたら、ヘルメット着用義務違反です。しかし、ヘルメット不着用を理由に過失相殺する場合は、ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与しているか、因果関係を判断することが必要です。
バイク事故では、被害者に、ヘルメット不着用だけでなく、速度違反や前方不注視などの過失があわせて認められるケースが多く、過失相殺率が高くなることがあります。
ヘルメットをかぶっていなかったことにより、被害者の損害が拡大したと認められる場合には、おおむね10~30%程度の割合の過失相殺がされています。
ただし、被害者がヘルメットをかぶっていなかったとしても、ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与しておらず、ヘルメット不着用と損害拡大との間に相当因果関係が認められない場合は、過失相殺が否定されています。
ヘルメットをかぶっていなかったことを理由に過失相殺した裁判例には、次のようなものがあります。
過失相殺率は、ヘルメット不着用の過失と交通事故を発生させた過失をあわせた割合です。
ヘルメット不着用が損害の拡大に寄与したとはいえないとして、過失相殺しなかった裁判例には、次のようなものがあります。
自動車の運転者、同乗者は、原則としてシートベルトの装着が義務づけられています(道路交通法71条の3)。
しかし、「過失相殺率認定基準」では、自動二輪車のヘルメット不着用と異なり、過失相殺率の修正について明確にされていません。
とはいえ、ヘルメット不着用の場合と同様に、シートベルト不装着が損害の拡大に寄与したと考えられるときには、過失相殺されます。
ヘルメット不着用の場合と同じく、シートベルト不装着と損害の拡大との因果関係を、傷害の部位・程度から判断することが大切です。
例えば、車が衝突して被害者が車外に放り出されたとか、フロントガラスに衝突して負傷したというのであれば、シートベルト不着用を理由として過失相殺されます。
しかし、車とガードレールに足を挟まれて片足を切断したような場合は、シートベルト不着用と損害の拡大との因果関係はないといえるでしょう。
シートベルト装着義務には、例外規定があります。例えば、疾病・負傷・障害・妊娠・著しく座高が高い低い・著しく肥満などにより、シートベルトをしないことに相当の理由があるときは、シートベルト装着義務の適用除外となります。
こういう場合は、シートベルト不装着を理由とする過失相殺はできません。
シートベルト不装着により、被害者の損害が拡大したと認められるような場合には、おおむね10~30%程度の割合の過失相殺がされています。
ただし、被害者がシートベルトを装着していなかったとしても、シートベルト不装着が損害の拡大に寄与しておらず、シートベルト不装着と損害拡大との間に相当因果関係が認められない場合は、過失相殺が否定されています。
シートベルト不装着を理由に過失相殺した裁判例には、次のようなものがあります。
過失相殺率は、シートベルト不装着の過失と交通事故を発生させた過失をあわせた割合です。
シートベルト不装着が損害の拡大に寄与したとはいえないとして、過失相殺しなかった裁判例には、次のようなものがあります。
ヘルメットやシートベルトは、被害の拡大を防止するものです。そのため、ヘルメット不着用やシートベルト不装着が損害の発生・拡大に寄与していると考えられれば、被害者の過失が認められ過失相殺されます。
その際には、ヘルメット不着用・シートベルト不装着と損害の発生・拡大との相当因果関係が必要です。事故態様や受傷の部位・程度によっては因果関係が認められず、過失相殺が否定されることがあります。
保険会社から、ヘルメット不着用やシートベルト不装着を理由に過失相殺を迫られているときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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ここで紹介した裁判例は、『ヘルメット不着用、シートベルト不装着の場合の過失相殺に関する裁判例』判例タイムズ1033号、『新版・交通事故の法律相談』学陽書房に掲載の裁判例を参考にしました。