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交通事故による被害の損害賠償について、当事者間の話し合いで示談が成立しないとき、大きくは次の2つの解決方法があります。
それぞれの手続きの特徴、メリット・デメリットについて、示談交渉の場合と比較しながらご紹介します。
示談 | ADR | 調停 | 訴訟 | |
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手続 | 当事者間の話し合い。 | 民間ADR機関に示談斡旋を申請。 | 裁判所に調停を申立て。 | 裁判所に訴えを提起。 |
特徴 | 加害者の加入する任意自動車保険会社の担当者との交渉となることが多く、保険の知識や交渉力に差が生じる。 | 審査に持ち込むと、保険会社や共済組合は審査結果に従う義務がある。交通事故に詳しい弁護士が担当。 | 訴訟に比べ利用しやすいが、担当する調停委員は必ずしも交通事故に詳しくない。 | 終局的な解決ができる。多くは裁判上の和解で解決し、判決にまで至るケースはわずか。 |
賠償額 | 弁護士が介入しなければ、保険金の支払基準による賠償額での示談となることが一般的。遅延損害金や弁護士費用は請求できない。 | 交通事故に詳しい弁護士が裁判所基準で損害算定し示談斡旋するが、あくまで中立の立場。遅延損害金や弁護士費用は請求できない。 | 裁判所基準での損害算定は期待できない。遅延損害金や弁護士費用は請求できない。 | 裁判所基準で損害算定。さらに、判決の場合は、遅延損害金・弁護士費用も請求できる。和解の場合は、調整金(遅延損害金の半額程度)が認められる。 |
費用 | 不要。 | 多くは無料。有料のADR機関もある。 | 調停申立て費用(裁判所へ支払う手数料)が必要。 | 訴訟費用(裁判所へ支払う手数料)が必要。 |
解決までの期間 | 迅速・柔軟な解決が可能。 | 比較的早い。 | 比較的早い。 | 和解の場合は比較的早いが、判決を求めると時間がかかる。 |
時効完成猶予効力 | 交渉が長引く場合は、時効の完成猶予手続が必要。 | ADR機関への示談斡旋申立てには、時効完成猶予の効力はない。例外もある。 | 調停申立には時効完成猶予の効力がある。 | 民事訴訟の提起には、時効完成猶予の効力がある。 |
適応事案 | 一般的な解決方法。示談がまとまらないときは、ADRや民事調停、民事訴訟により解決。 | 過失割合や後遺障害等級など事実関係に争いがなく、争点が賠償額のみで、相手が任意保険に加入している場合に有効。 | 事実関係に争いがなく、争点が賠償額のみの場合に有効。相手が任意保険に未加入でも申立て可能。 | どんな事案でも可能。 |
示談の詳細 | ADRの詳細 | 調停の詳細 | 訴訟の詳細 |
当事者間で示談が成立しない場合、最終的な解決方法は、民事訴訟(損害賠償請求訴訟)の提起になりますが、裁判は費用も時間もかかります。ADR、調停、訴訟、それぞれメリット・デメリットがあり、適する事案・適さない事案がありますから、どの手続を利用するのがよいのか、慎重に検討する必要があります。
賠償責任の有無や後遺障害等級などに争いがない場合は、ADR機関に相談すれば、それほど時間も費用もかからず、示談・和解の斡旋を受けることができます。
交通事故の被害者が利用できるADR機関としては、「公益財団法人 交通事故紛争処理センター」と「公益財団法人 日弁連交通事故相談センター」が広く利用されています。いずれも利用は無料で、それぞれ、損保会社・共済組合に対する片面的拘束力(損保や共済は審査結果に従う義務)があるので被害者にとって有利です。
「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」で示談斡旋を受ける場合、交通事故に詳しい弁護士が斡旋担当者として専門的な観点から合意形成に向けて積極的な働きかけをしてくれることが期待できます。
ただし、過失割合や後遺障害等級に争いがある場合は、「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」は馴染みません。
賠償責任の有無や過失割合、後遺障害の存否や等級に関して争いがある場合は、自賠責の判断に関することになるので、自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理(調停)を申立てます。
交通調停や民事調停は、相手方と合意することによって解決する点では示談交渉と同じですが、裁判所が関与する点が決定的に違います。すなわち、裁判所において、民間から選ばれた調停委員と裁判官の関与の下で、合意を形成する紛争解決手続きです。
調停委員や裁判官という中立・公正な第三者が間に介在し、合意の形成に向けて積極的に働きかけてくれることが期待できます。
ただし、交通調停や民事調停は、調停委員が必ずしも交通事故の損害賠償に詳しくないのが最大のデメリットです。調停の申立ては、相手が任意保険に加入していない場合など限定的に考えるのがよいでしょう。
双方の主張に極端な違いがあり、話し合いが難しい場合や、示談交渉や調停等による話し合いで、どうしても折り合えない場合は、訴訟を選択することになります。
損害賠償請求訴訟は終局的な解決方法ですが、判決にまで至るのは2割程度で、多くは裁判上の和解により解決しています。
調停の申立ては、交通事故の損害賠償事件の場合、ごく限られたケースしか利用するメリットはありません。そのため、多くの場合、ADRか裁判かの選択になります。
もちろん、ADRを利用しても、審査結果に被害者側が不服なら訴訟の提起ということになります。ですから、まずADRを利用して、それでダメなら訴訟という流れでもよいのですが、そもそもADRは、利用できないケースや馴染まないケースが最初から分かっています。
当事者間の対立が激しく合意の見込みがほとんどないような場合は、結局は裁判を起こすことになり、ADRを利用した期間が無駄になってしまいます。解決まで長引くと、時効の問題も出てきます。
ADRと訴訟の特徴を理解して、適切な方法を選択することが大切です。そこで、ADRと訴訟のどちらを利用するとよいのか、判断の目安をご紹介しておきましょう。
ADRを利用した方がよいケース | 訴訟を提起した方がよいケース |
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①~③の事故態様・賠償責任・後遺障害等級に争いがある場合は、そもそもADRに馴染みません。弁護士に示談交渉を頼むか、弁護士が介入しても示談が成立しない場合は、訴訟の検討が必要になります。いずれにしても、弁護士に相談することが大切です。
ご紹介している内容は一般論です。交通事故は個別事情を考慮することが大切です。あなたの場合、どの解決方法がよいかは、交通事故の損害賠償問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。