交通事故トラブル解決ガイド|損害賠償請求・示談交渉の悩みを解決!

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「 損害賠償請求権 」の検索結果
  • 死亡事故
    交通事故で被害者が死亡したとき損害賠償請求権は誰にあるのか
    夫が交通事故で死亡しました。保険会社との交渉は義父が行い、保険金は出たようですが、私には1円もくれません。私と子どもは、どれくらい請求する権利があるのでしょうか。死亡事故の損害賠償請求権は、相続人にあります。この場合、配偶者と子どもが相続人になり、父親は相続人になれません。したがって、損害賠償金を受け取るのは、配偶者と子どもです。ただし、父親は、相続人になれなくても、慰謝料を請求することができます。その慰謝料部分を除いた金額が、配偶者と子どものものとなります。死亡事故の損害賠償請求権 2つのポイント死亡した被害者の損害賠償請求権があるのは、原則として相続人です。相続人でない近親者にも、固有の慰謝料請求権があります。詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。被害者が死亡したとき、損害賠償請求権があるのは相続人交通事故の被害者が死亡した場合、損害賠償請求権があるのは、原則として相続人です。相続人が複数いる場合は、各人が法定相続分に応じて損害賠償の請求権を持ちます。損害賠償請求権を相続する相続人誰が相続人になるのか、相続人の範囲と順序については、民法で定めています。第1順位(直系卑属)子(※子がいないときは孫)第2順位(直系尊属)父母(※父母がいないときは祖父母)第3順位(傍系血族)兄弟姉妹(※兄弟姉妹がいないときは甥・姪)※第1順位は民法887条、第2順位と第3順位は民法889条で規定しています。配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。すなわち、配偶者は、各順位の相続人と同順位で相続人となります。内縁関係の場合、相続権はありませんが、損害賠償請求はできます。相続の順序相続人となる順序は、各順位の者と配偶者です。第1順位+配偶者まず、配偶者と第1順位の子が相続人となります。このとき、第2順位と第3順位の者は、相続人になれません。第2順位+配偶者第1順位の直系卑属がいないときは、配偶者と第2順位の父母が相続人となります。このとき、第3順位の者は、相続人になれません。第3順位+配偶者第1順位の直系卑属も第2順位の直系尊属もいないときは、配偶者と第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。配偶者がいないときは、各順位の者だけで相続します。逆に、第1順位から第3順位まで相続人がだれもいない場合は、配偶者が単独で相続します。法定相続分法定相続分(分け前)は、次のような割合です(民法900条)。相続人相続分妻と子妻1/2、子1/2妻と父母妻2/3、父母1/3妻と兄弟姉妹妻3/4、兄弟姉妹1/4第1順位配偶者と子がいるときは、配偶者が1/2、子が1/2。子が複数いれば、1/2を人数で等分します。配偶者がいないときは、全額を子が相続します。第2順位子がいなくて親がいるときは、配偶者が2/3、親が1/3。両親とも健在なら親一人あたりは1/6。配偶者がいないときは、全額を親が相続します。第3順位子も親もいないときは、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4。兄弟姉妹は1/4を人数で等分します。配偶者がいないときは、全額を兄弟姉妹で相続します。子も親も兄弟姉妹もなく、配偶者だけなら、全額を配偶者が相続します。相続人でなくても、固有の慰謝料請求権がある交通事故で死亡したり、死亡に近い被害を受けたとき、被害者の父母・配偶者・子は、財産上の損害がない場合でも、慰謝料を請求することができます(民法711条)。これは、近親者に固有の慰謝料請求権で、相続人が相続する被害者本人の死亡慰謝料の請求権とは別のものです。ただし、死亡慰謝料は、被害者1人につき定額化・基準化されており、この基準額には、近親者固有の慰謝料も含まれます。死亡した被害者の損害賠償請求権を実際に行使するのは相続人で、ほとんどの場合、近親者固有の慰謝料請求権もあります。相続人として慰謝料請求するか、近親者として慰謝料請求するか、地位の違いによって、慰謝料の総額が変わらないようになっています。つまり、死亡慰謝料は、請求者が何人いても、総額で決められ、妻・子・親といった請求者の間でどう分けるかについては、法律上の決まりはなく、遺族の内部の事情を考慮して決めることになります。例えば、こんな事例があります。一家の支柱の死亡で、妻に1,300万円、子2人に各650万円、親に200万円、計2,800万円を認めた事例(仙台地裁・平成8年5月31日)一家の支柱に準ずる主婦・パートの死亡で、本人分が2,000万円、夫に300万円、子2人に各200万円、父母に各50万円、計2,800万円を認めた事例(大阪地裁・平成20年7月25日)被害者の死亡が原因で、近親者が精神疾患を患ったような特別な場合は、近親者の慰謝料を別途増額することがあります。まとめ交通事故の被害者が死亡したとき、損害賠償請求権は、相続人が相続します。ただし、慰謝料については、相続人でない近親者にも、固有の慰謝料請求権があります。ただし、死亡慰謝料は、被害者1人につき定額化・基準化されているので、慰謝料の請求権者が何人いても、総額が変わらないように調整されます。死亡慰謝料が定額化されているとはいえ、あくまでも基準・目安です。個別事情を考慮して判断する必要があります。慰謝料や損害賠償についての疑問や悩みは、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故の法律相談Q&A』学陽書院 72ページ・『交通事故の法律知識』自由国民社 9ページ
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  • 胎児の損害賠償請求権
    交通事故で夫が死亡したとき胎児に損害賠償請求権はあるか
    夫が交通事故で死亡しました。私は初めての子どもを出産予定です。お腹の子どもに損害賠償請求権はあるのでしょうか。夫の父母にも、損害賠償請求権はあるのでしょうか。胎児は、相続や損害賠償請求の権利については、「すでに生まれたものとみなす」というのが、民法の規定です。ですから、お腹の子(胎児)には、近親者固有の慰謝料請求権と相続する損害賠償請求権があります。ただし、胎児が「生きて生まれてくる」ことが条件です。なお、被害者の子が相続人になると、被害者の父母は相続人になれません(⇒相続人の順位)。父母は、被害者本人の損害賠償請求権を相続できませんが、近親者固有の慰謝料請求権はあります。胎児の損害賠償請求権 2つのポイント胎児には、相続人となり、父親の損害賠償を請求する権利があります。同時に、近親者固有の慰謝料請求権もあります。被害者の子(胎児)が相続人となると、被害者の親は、死亡した被害者の損害賠償請求権を相続できません。ただし、近親者固有の慰謝料請求権はあります。詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。胎児にも、相続権・損害賠償請求権がある胎児にも、損害賠償請求権や相続権があります。民法は次のように定めています。民法721条(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。民法886条1項(相続に関する胎児の権利能力)胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。民法では「私権の享有は、出生に始まる」(民法3条1項)として、人は生まれると同時に権利・義務の主体となる資格があることを定めています。この規定によれば、胎児には何の権利もありませんが、例外を定めています。それが、損害賠償の請求権(民法721条)と、相続(民法886条)・遺贈(民法965条)を受ける資格です。胎児も損害賠償を請求できる父親が交通事故など不法行為で死亡したとき、民法の原則からすると、子どもが、たとえ小さな乳幼児でも損害賠償請求権がありますが、これから生まれてくる予定の子ども(胎児)の場合は請求権がありません。この不合理を救うために設けられたのが、民法721条の胎児の損害賠償請求権です。例えば、胎児も、民法711条にもとづく固有の慰謝料請求権を取得します。なお、胎児のとき(=生まれる前)に賠償請求できるわけではなく、生まれた後で、事故のときにさかのぼって請求できるということです。胎児も相続人になれる相続が始まったとき(=死亡したとき)、すでに胎児になっていれば、その胎児は、相続については、生まれる前でも生まれているものとして扱われます(民法886条1項)。ただし、死産だったときは、その規定が適用されません(同条2項)。ですから、胎児も相続人となることができ、相続の順位は第1順位です。あなたとお腹の子は、損害賠償を請求する権利があり、取り分は1/2ずつです。もし、死産であったときは、胎児はいなかったものとされ、第2順位の被害者の父母が相続人となります。この場合、あなたと夫の両親が相続人となり、あなたが2/3、夫の両親が1/3の損害賠償請求権を取得することになります。法定相続分はこちらをご覧ください。夫の両親には、固有の慰謝料請求権があるあなたの子どもが無事に生まれると、夫の両親は相続人になれません。この場合、夫の両親は、死亡した被害者の損害賠償請求権を相続することはできません。ただし、夫の両親には、近親者固有の慰謝料請求権があります(民法711条)。近親者固有の慰謝料近親者固有の慰謝料請求権は、死亡した被害者の父母・配偶者・子に認められる固有の慰謝料請求権です。死亡に匹敵するような重度の後遺障害も該当します。民法711条(近親者に対する損害の賠償)他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。あなたとお腹の子にも同じ慰謝料請求権があります。つまり、あなたと胎児には、相続により取得する被害者本人の損害賠償請求権と、それとは別に固有の慰謝料の請求権があります。ここで、請求できる慰謝料がいくつか出てきました。夫の両親が請求できる慰謝料、あなたと胎児が請求できる慰謝料、そして被害者本人の慰謝料です。死亡慰謝料は、被害者1人の基準があり、定額化していますから、慰謝料の請求者が複数いても、死亡慰謝料の総額はほとんど変わらないように算定されます。まとめ夫が交通事故で死亡したとき、妻のお腹の子(胎児)も相続人となり、損害賠償請求権があります。死亡事故は、損害賠償請求権をめぐり、トラブルになるようなこともあります。お困りのときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故の法律相談Q&A』法学書院 72~73ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 245ページ・『口語民法』自由国民社 関係条文の解説
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  • 内縁関係
    交通事故で内縁関係の夫が死亡したとき内縁の妻の損害賠償請求権
    内縁関係の夫が交通事故で死亡しました。私たちは5年前に結婚しましたが、婚姻届けを出していませんでした。内縁関係だと、損害賠償請求できないのでしょうか。内縁の妻は、死亡した夫の損害賠償請求権を相続し、賠償請求することはできませんが、別の方法で損害賠償を請求することができます。それは、「扶養利益喪失損害の賠償請求」と「近親者固有の慰謝料請求」です。あなたが内縁の夫に扶養されていた場合、今後は扶養を受けられなくなり、将来の扶養利益を失います。これが、扶養利益喪失損害で、被扶養者にはその賠償請求が認められます。近親者に固有の慰謝料は、戸籍上配偶者でなくても、配偶者と同視でき、被害者の死亡により大きな精神的苦痛を受けた者が請求できます。内縁関係の場合、何も損害賠償請求できないと思われがちですが、法的には、入籍していないという理由だけで損害賠償請求権を否定されることはありません。ところで、内縁関係とは、単に婚姻届けを出していないだけで、現実には普通の夫婦と同じように生活している男女のことです。最近は夫婦別姓のため、あえて入籍しない夫婦もいます。俗にいう愛人関係などは、内縁関係に含めません。内縁関係の損害賠償請求権 2つのポイント内縁関係は相続人になれませんが、扶養利益の喪失を損害として賠償請求できます。近親者固有の慰謝料請求権は、内縁関係でも認められます。詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。内縁の妻は、扶養利益の喪失について損害賠償請求できる内縁関係の夫が交通事故で死亡したとき、夫に扶養されていた内縁の妻は、将来の扶養利益を喪失するので、それを損害として賠償請求できます(民法711条)。扶養利益喪失損害の計算の仕方扶養利益喪失損害は、死亡事故の消極損害(死亡逸失利益)の一部です。被害者の生前の収入のうち、被扶養者の生計の維持に充てられていた部分に相当する額を賠償請求することになります。扶養利益喪失損害の計算の仕方は、簡単にいうと、こうです。死亡した被害者の年間の逸失利益(本人の生活費を控除した後の残額)に、死亡当時の扶養実態にもとづき一定の割合(30%とか50%)を乗じ、年間の扶養利益を算出します。年間の扶養利益に、扶養関係の存続期間に対応するライプニッツ係数またはホフマン係数を乗じて、将来の扶養利益を算定します。扶養関係の存続期間は、死亡した内縁の夫の就労可能期間と、残された内縁の妻の平均余命期間との共通部分です。(参考:『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂232ページ)死亡逸失利益の算定方法はこちらをご覧ください。10年以上にわたり内縁関係にあった妻につき、被扶養利益喪失による損害として、内縁の夫の死亡逸失利益の50%を認めた裁判例があります(東京地裁・平成12年9月13日)。内縁関係が認められる要件とは内縁関係が認められるには、単なる同居でなく、実質的に夫婦として生活し、客観的にも夫婦と認められる外形が必要とされています。また、扶養利益が認められるには、死亡した被害者が扶養可能な状態にあり、その内縁の配偶者等が要扶養状態にあることが必要です。内縁の妻と相続人とでは、どちらの損害賠償が優先されるか死亡した内縁の夫に、相続人がいる場合を考えます。例えば、夫の親や先妻の子が相続人となる場合です。このようなケースでは、内縁の妻が、被扶養者として扶養利益喪失損害を賠償請求するとともに、相続人が、死亡した被害者の損害賠償請求をすることができます。この場合、被扶養者(内縁の妻)に対する扶養利益喪失損害の賠償金の支払いが優先し、それを逸失利益から控除した残額を相続人が取得することになります。内縁の配偶者の扶養利益喪失につき損害賠償請求権を認めた最高裁判決「内縁の配偶者が他方の配偶者の扶養を受けている場合において、その他方の配偶者が保有者の自動車の運行によって死亡したときは、内縁の配偶者は、自己が他方の配偶者から受けることができた将来の扶養利益の喪失を損害として、保有者に対してその賠償を請求することができる」「政府が死亡被害者の内縁の配偶者にその扶養利益の喪失に相当する額を支払い、その損害をてん補したときは、右てん補額は相続人にてん補すべき死亡被害者の逸失利益の額からこれを控除すべきものと解するのが相当である」最高裁判決(平成5年4月6日)この最高裁判決は、直接的には政府保障事業についてのものですが、損害賠償請求一般についても同様に解されています。内縁の妻にも近親者固有の慰謝料請求権がある近親者固有の慰謝料請求権(民法711条)は、内縁関係の配偶者にも認められます。民法711条(近親者に対する損害の賠償)他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。民法711条は、「被害者の父母、配偶者及び子」となっていますが、これは限定的に解すべきではなく、実質的に同視できる場合は、慰謝料を請求できます。近親者の範囲についての最高裁判例右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者があっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。最高裁判決(昭和49年12月17日)まとめ内縁関係の場合、相続権はありませんが、死亡した被害者により扶養されていたときは、扶養利益を喪失することになるので、その損害について賠償請求できます。そのほか、内縁の配偶者であっても、近親者固有の慰謝料を請求することができます。ただし、賠償請求が認められるかどうかは、内縁関係の実態によります。また、損害賠償請求額の計算は難しいので、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 122~123ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 229~232ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 90ページ・『交通事故の法律知識』自由国民社 10ページ・『交通事故の法律相談Q&A』法学書院 74~75ページ・『判例タイムズ№882』110~111ページ・「交通事故判例解説』第一法規 106~107ページ
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  • 子どもが交通事故に遭ったとき
    未成年者の交通事故は親権者・未成年後見人が法定代理人として交渉
    交通事故の被害者が未成年者の場合、損害賠償の請求権は誰にあるのでしょうか。両親のほかに、示談交渉し、示談する権限があるのは誰ですか。交通事故の被害者が未成年者の場合でも、損害賠償の請求権があるのは、被害者本人です。ただし、未成年者は法律行為が制限されるため、示談などの法律行為は、親権者である父母が法定代理人として行います。親権者(両親)がいないときは、未成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立て、選任された未成年後見人が法定代理人として、示談交渉や損害賠償請求などの法律行為を行います。家庭裁判所に申立てができるのは、親族や利害関係人(児童相談所長・里親など)です。未成年者本人に意思能力があれば、本人からも申立てできます。通常は、親族の中から未成年後見人を選任しますが、適任者がいない場合は、弁護士など専門家を後見人に選任することもあります。未成年者の損害賠償請求 3つのポイント未成年者であっても、損害賠償請求権は被害者本人にあります。未成年者は法律行為が制限され、親権者が法定代理人となり、示談交渉などの法律行為を行います。親権者がいないときは、未成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立て、選任された後見人が法定代理人となります。詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。被害者が未成年者の場合、親権者が法定代理人になる損害賠償の請求権は、被害者が未成年であっても被害者本人にありますが、未成年者の法律行為は制限されます。未成年者が自分の判断だけで、損害賠償請求権を行使したり、示談したりすることはできません。未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意が必要です(民法5条1項)。法定代理人の同意がない示談は、取り消すことができます。民法5条(未成年者の法律行為)1.未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。2.前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。未成年者は「父母の親権に服する」(民法818条1項)と定められ、示談交渉や和解契約、損害賠償請求訴訟の提起など法律行為は、親権者である父母が法定代理人として行います。親権は、通常、両親が共同で行いますが(親権共同行使の原則)、離婚などで一方が親権を行えないときは、他の一方が行います。民法818条(親権者)1.成年に達しない子は、父母の親権に服する。2.子が養子であるときは、養親の親権に服する。3.親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。示談書に、被害者(未成年者)の名前に続き、「右未成年につき法定代理人親権者父○○○、母○○○」として、両親が署名捺印するのが正式なやり方です。離婚している場合は、どちらか親権のある方が法定代理人となります。親権者がいないときは、未成年後見人を家庭裁判所が選任する親権者がいないときは、未成年後見人を選任し、法定代理人とします。両親とも死亡している場合や、離婚後に親権のあった親が死亡した場合など、未成年後見人の選任が必要となるケースがあります。未成年後見人の選任は家庭裁判所が行いますから、家庭裁判所に未成年後見人の選任を求めて申立てをします(民法840条1項)。民法840条1項(未成年後見人の選任)家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。申立てができるのは、後見人を付ける未成年者(意思能力がある場合)のほか、その未成年者の親族、その他の利害関係人です。利害関係人とは、児童相談所長や里親などです。通常は、親族の中から未成年後見人を選任しますが、適任者がいない場合は、弁護士や司法書士などの専門家から適任者を選任することもあります。申立てに必要な費用は、収入印紙代800円と、連絡用の郵便切手代程度です。(2018年7月現在)未成年後見人の選任手続きは面倒ですから、示談で解決する場合は、加害者側が了承すれば、正式な後見人の選任手続きをとらずに、祖父母や叔父叔母が親代わりになって、示談することもあるようです。まとめ交通事故の被害者が未成年の場合は、法定代理人が示談交渉などの法律行為を行います。未成年者の法定代理人になれるのは、親権者である父母です。親権者がいないときは、法定代理人になる未成年後見人の選任が必要です。未成年者後見人の選任は、家庭裁判所が行います。たいてい親族の中から選任されますが、適任者がいない場合は、弁護士などの専門家が選任されます。交通事故の被害に遭い、お困りのときは、早めに、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。このサイトに掲載している弁護士事務所は、いずれも交通事故の被害者からの相談は何度でも無料です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故の法律相談Q&A』法学書院 82~83ページ・『交通事故の法律知識』自由国民社 11ページ・東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部「未成年後見人選任の申立ての手引」・最高裁Webサイト「未成年後見人選任」
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  • 植物状態
    交通事故で植物状態(遷延性意識障害)になったときの損害賠償請求
    交通事故に遭った夫が、植物状態(遷延性意識障害)です。こんなときは、誰が損害賠償請求をすることになるのでしょうか。成年後見人の選任が必要なのでしょうか。被害者に物事を判断する能力(意思能力)がない場合は、家庭裁判所が選任した成年後見人が、法定代理人として法律行為を行います。植物状態の被害者は、自分で損害賠償を請求し、交渉することができませんから、被害者の権利を守るためには、成年後見人の選任が必要です。成年後見人を選任するには、被害者の配偶者や4親等内の親族などから、家庭裁判所に成年後見開始の審判の申立てをします。家庭裁判所は、医学的な鑑定を実施した上で、成年後見開始の審判をし、成年後見人を選任します。家庭裁判所による成年後見開始の審判を経ずに、被害者の親族が加害者側と交渉することもありますが、それは、加害者側が応じる場合に限られます。当然ですが、調停や訴訟など法的手続きに持ち込む場合は、その前に後見開始の審判を家庭裁判所に申立てる必要があります。なお、後見開始の審判の申立て費用や後見人への報酬は、事故との相当因果関係が認められ、加害者側に損害賠償請求できます。被害者が重傷で損害賠償請求できる状態でないとき被害者が意識不明などの場合は、成年後見人が法定代理人として損害賠償請求します。後見開始の審判の申立て費用は、加害者側に損害賠償請求できます。詳しい解説さらに詳しく見ていきましょう。被害者が植物状態のときは、成年後見人が法定代理人となる遷延性意識障害(いわゆる植物状態)になった被害者には、判断能力がありません。こういう場合は、成年後見制度を利用することで、被った損害を賠償請求する権利を行使することができます。そもそも成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が十分でない人を法律的に支援する制度です。植物状態になった人は、重度の精神障害の人と同じく物事を判断する能力を欠きます。「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」については、家庭裁判所は、配偶者や4親等内の親族などの請求によって、後見開始の審判をすることができます(民法7条)。被害者が未成年の場合は、親権者が法定代理人となりますが、被害者が成年の場合は、後見人が必要かどうかを裁判所が判断します。その際、家庭裁判所は、成年被後見人となるべき者(被害者)の精神の状況について鑑定し(家事事件手続法119条1項)、判断能力がないと認めれば、成年後見開始を決定し、後見人を選任します(民法8条、838条2号、843条1項)。選任された後見人が、被害者の法定代理人として、損害賠償請求や示談交渉など法律行為を行います。申立てから審判までの審理期間後見開始審判の申立てから審判までの審理期間は、約8割が申立てから2ヵ月以内に審判に至り、3ヵ月以内には9割が審判に至っています。最高裁の公表資料によると、申立てから審判までの審理期間は、1ヵ月以内が47%、1ヵ月超2ヵ月以内が32%、2ヵ月超3ヵ月以内が11%です。(最高裁事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」平成29年より)成年後見制度の利用に関連する法律条文成年後見制度の利用に関連する法律条文をピックアップし、まとめておきます。民法7条(後見開始の審判)精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。民法8条(成年被後見人及び成年後見人)後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。民法838条(後見の開始)後見は、次に掲げる場合に開始する。一 (略)二 後見開始の審判があったとき。民法843条1項(成年後見人の選任)家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。家事事件手続法119条1項(精神の状況に関する鑑定及び意見の聴取)家庭裁判所は、成年被後見人となるべき者の精神の状況につき鑑定をしなければ、後見開始の審判をすることができない。ただし、明らかにその必要がないと認めるときは、この限りでない。成年後見開始の審判の申立て費用は、加害者側に請求できる成年後見開始の審判の申立ては、被害者の居住地を管轄する家庭裁判所に行います。申立て費用や成年後見人の報酬は、事故との相当因果関係が認められ、加害者側に損害賠償請求できます。成年後見開始の審判の申立て費用成年後見開始の審判の申立て費用は、印紙代800円と郵便切手代程度ですが、そのほか、鑑定費用が必要です。成年後見開始の審判をする場合、鑑定を実施するのが原則ですが、例外的に「明らかにその必要がないと認めるとき」は、鑑定を省略できます(家事事件手続法119条1項)。ただし、最高裁の資料によると、実際に鑑定を実施しているのは全体のわずか8%に過ぎません。鑑定費用は全体の98%が10万円以下です。(最高裁事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」平成29年)遷延性意識障害(植物状態)や重度の知的障害のほか、脳出血後遺症や脳梗塞後遺症などの客観所見が取りやすい疾患については、鑑定省略と判断されるようです。(東京弁護士会「成年後見の実務」10ページ)成年後見人の報酬親族が成年後見人となった場合は必要ない場合もありますが、第三者の専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が成年後見人に選任された場合は、後見人報酬が必要です。報酬額の基準は法令で決まっているわけでなく、裁判官が適正妥当な金額を算定します。東京家庭裁判所と東京家庭裁判所立川支部が公表している「成年後見人等の報酬額のめやす」によれば、専門職成年後見人の標準的な報酬額は次の通りです。成年後見人への報酬は、基本報酬と付加報酬に分かれます。基本報酬基本報酬は、成年後見人が通常の後見事務を行った場合の報酬で、目安は月2万円です。ただし、管理財産額が高額な場合は、基本報酬も増額します。管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合は、月額3万~4万円管理財産額が5,000万円を超える場合は、月額5万~6万円付加報酬付加報酬は、基本報酬に付加する報酬です。2つのケースがあります。後見事務において、身上監護等に特別困難な事情があった場合には、基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を付加します。成年後見人が、特別の行為をした場合には、相当額の報酬を付加します。特別の行為とは、例えば、訴訟、調停、訴訟外の示談、遺産分割協議、保険金請求、不動産の処分・管理などです。まとめ交通事故で被害者が植物状態(遷延性意識障害)になったような場合は、被害者本人が損害賠償請求できないので、成年後見人を選任する必要があります。家庭裁判所への成年後見開始の審判の申立て費用や、成年後見人報酬は、事故との相当因果関係が認められ、加害者側へ損害賠償請求することができます。交通事故の被害に遭ってお困りのときは、交通事故に詳しい弁護士に早めに相談することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・東京弁護士会「成年後見の実務」LIBRA Vol.10 No.12 2010/12 ・最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」平成29年1月~12月・東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部「成年後見人等の報酬額のめやす」・『交通事故の法律相談Q&A』法学書院 81~83ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 100~103ページ
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  • 損害賠償請求権の消滅時効
    交通事故の加害者に対する損害賠償請求権の消滅時効と起算日
    交通事故の加害者(相手方保険会社を含む)に対する損害賠償請求権は、時効により消滅します。時効が完成すると損害賠償金を受け取れなくなりますから、注意が必要です。2020年4月1日の改正民法施行により、消滅時効の期間が一部変更になりました。ここでは、改正民法の内容もふまえ、交通事故の加害者に対する損害賠償請求権の消滅時効、時効の起算日(時効がいつから進行するか)について説明します。加害者に対する損害賠償請求権の消滅時効交通事故で被害を被ったときの損害賠償請求権には、「民法による請求権」と「自動車損害賠償保障法(自賠法)による請求権」があります。両者の違いはこちらをご覧ください。損害賠償請求権の時効については、民法の規定にもとづき判断します。自賠法による損害賠償請求権の消滅時効も、民法の規定が適用されます(自賠法4条)。それでは、損害賠償請求権の消滅時効について、民法一部改正の内容をふまえて見ていきましょう。人身損害は5年、物件損害は3年不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、改正前の民法では、人損も物損もどちらも「損害および加害者を知った時から3年」でした(旧・民法724条)。改正後の民法では、人身損害については「損害および加害者を知った時から5年」に延びました(民法724条の2)。物件損害については、従来のままです。損害消滅時効旧民法新民法人損3年5年物損3年3年※人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効が、3年から5年に延びました。損害賠償請求権の消滅時効についての規定が、民法一部改正でどう変わったのか分かるように、改正後の民法とともに、改正前の民法もあわせて抜粋しておきます。民法724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。二 不法行為の時から20年間行使しないとき。民法724条の2(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは「5年間」とする。改正前の民法724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。「不法行為の時から20年」は除斥期間でなく消滅時効改正後の民法724条2号は、不法行為による損害賠償の請求権は「不法行為の時から20年間行使しないとき」には時効によって消滅する、と規定しました。改正前の民法724条は、「不法行為の時から20年を経過したとき」という期間制限が、消滅時効なのか、除斥期間なのか、条文上明らかでなく疑義が生じていました。判例では、除斥期間と解されてきたのですが(最高裁判決・平成元年12月21日)、民法一部改正により、除斥期間でなく、時効期間であることを明確にしたのです。最高裁第一小法廷判決(平成元年12月21日)民法724条後段の規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものと解するのが相当である。けだし、同条がその前段で3年の短期の時効について規定し、更に同条後段で20年の長期の時効を規定していると解することは、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図する同条の規定の趣旨に沿わず、むしろ同条前段の3年の時効は損害及び加害者の認識という被害者側の主観的な事情によってその完成が左右されるが、同条後段の20年の期間は被害者側の認識のいかんを問わず一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期間を画一的に定めたものと解するのが相当であるからである。除斥期間と解しながらも柔軟な解釈で被害者を救済してきた除斥期間とは、その期間内に権利を行使しないと権利がなくなる期間のことです。除斥期間は、消滅時効と異なり、中断や停止がありません。被害者の側にいかなる権利行使上の困難な事情があっても、20年を経過すると損害賠償請求権は消滅します。そうなると、被害者にとって酷な結果となる場合があり得ます。そのため、これまでの裁判では、民法724条(改正前)後段の期間制限を除斥期間としながらも、事案ごと柔軟に解釈し、除斥期間の適用を制限し、被害者の救済を図ってきたのです。例えば、次のような裁判例があります。最高裁第二小法廷判決(平成10年6月12日)不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6ヵ月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から六箇月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じない。最高裁第三小法廷判決(平成21年4月28日)被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し、そのために相続人はその事実を知ることができず、相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において、その後相続人が確定した時から6ヵ月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法160条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じない。この平成21年の最高裁判決には、民法724条後段の規定を時効と解すべきであり、そのように解しても不法行為法の体系に特段の支障を及ぼすとは認められないとの田原睦夫裁判官の意見が付されています。長期期間制限の性質の見直し民法724条(改正前)後段の20年の期間制限を除斥期間と解しながら、除斥期間の適用を排除して被害者の救済を図るのであれば、20年の期間制限の法的性質を端的に消滅時効とすることにより、具体的事案での適切な解決を図るべきであるとの指摘がありました。また、同条の立法過程に照らし、起草者は20年の期間制限を消滅時効であると考えていたものと理解されています。こうしたことから、民法一部改正により、「不法行為の時から20年間」の規定は、除斥期間でなく、消滅時効について定めたものであることが明確にされたのです。改めて、改正前後の民法724条を比べてみてください。改正前の民法724条は、[不法行為による損害賠償請求権の期間の制限]でしたが、改正後の民法724条は、[不法行為による損害賠償請求権の消滅時効]と、消滅時効について定めた条項であることを明記しました。その上で、新民法724条は、第1号で短期消滅時効期間(主観的起算点)、第2号で長期消滅時効期間(客観的起算点)について、区別して定めています。こうして、不法行為から20年が経過して損害賠償請求権が時効消滅する場面で、時効の更新や完成猶予(旧民法における時効の中断や停止)の手続を行い、権利を維持することが可能となったのです。[参考]法制審議会民法(債権関係)部会資料 69A「民法(債権関係)の改正に関する要綱案のたたき台(4)」9~11ページ消滅時効の起算点(起算日)次に、時効の起算点(起算日)です。いつから時効が進行するか、です。民法724条・724条の2の規定によれば、損害賠償の請求権は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」から3年(人損は5年)、「不法行為の時」から20年で消滅します。「損害を知った時」「加害者を知った時」が、短期消滅時効の起算点で、主観的起算点といわれます。「不法行為の時」が、長期消滅時効の起算点で、客観的起算点といわれます。「加害者を知った時」とは?「加害者を知った時」とは、加害者に対し損害賠償請求ができる程度に、加害者の住所氏名を知った時を指します。最高裁は、次のように判示しています。最高裁第二小法廷判決(昭和48年11月16日)加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を意味するものと解するのが相当であり、…被害者が加害者の住所氏名を確認したとき、初めて「加害者ヲ知リタル時」にあたるものというべきである。賠償義務者が複数の場合運転者と運行供用者が異なる場合や、相手が会社の車を運転していて使用者責任を問える場合は、相手の運転者だけでなく、運行供用者や雇用主も賠償義務者となります。賠償義務者が複数いる場合、時効は賠償義務者ごとに進行するので、損害賠償請求する相手によって、時効の完成する時期が異なるのです。例えば、事故が発生した日に加害運転者の住所氏名を確認し、後日、運行供用者が別にいたことを知ったとしましょう。この場合、運転者に対する損害賠償請求権の時効は、事故日から進行しますが、運行供用者に対する損害賠償請求権の時効は、運行供用者を知った時から進行します。運転者に対する請求権が時効消滅していても、運行供用者に対する請求権は時効になっていない場合もあるのです。「損害を知った時」とは?「損害を知った時」について、最高裁は「民法724条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう」(最高裁判決・平成14年1月29日)としています。最高裁第三小法廷判決(平成14年1月29日)民法724条は、不法行為に基づく法律関係が、未知の当事者間に、予期しない事情に基づいて発生することがあることにかんがみ、被害者による損害賠償請求権の行使を念頭に置いて、消滅時効の起算点に関して特則を設けたのであるから、同条にいう「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味するものと解するのが相当である。同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである。交通事故で受傷すると、一定期間治療を継続し、治癒もしくは症状固定に至り、損害額の全体が確定します。その過程のどの時点を「損害を知った時」と捉えるかが問題です。従来、交通事故による損害の賠償請求権の消滅時効は、受傷時に予見可能な損害の賠償請求については事故時から進行し、受傷時に予見し得ない後遺障害に関する損害の賠償請求権については、後遺症が顕在化した時や症状が固定した時から進行すると解されていました。しかし、近時の下級審裁判例では、人身損害については治療終了時点(治癒時・症状固定時)を主観的起算点とする見解がほぼ定着しています。すなわち、後遺障害が残存しない場合には、傷害の治療が終了した時から、傷害に関する全ての損害につき消滅時効が進行する後遺障害が残存する場合には、その症状が固定した時から、後遺障害にもとづくものを含む傷害に関する全ての損害につき消滅時効が進行するという解釈運用が、近時の下級審裁判例の傾向です。具体的な消滅時効の起算日は、次の通りです。損害消滅時効の起算日傷害治療終了の翌日が起算日です。後遺障害症状固定日の翌日が起算日です。複数の後遺障害があって症状固定日が異なるときは、直近の症状固定日を起算日とします。死亡死亡日の翌日が起算日です。請求権者が、被害者の死亡を知らなかったことに関し合理的な理由があるときは、請求権者が被害者の死亡を知った日の翌日を起算日とします。物損事故発生の翌日が起算日です。事故発生が午前0時の場合は、事故発生の当日が起算日となります。起算日を「翌日」とするのは、初日不算入原則によります。民法では「期間の起算」について、次のように定めています。民法140条(期間の起算)日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。自賠責保険に対する被害者請求権の消滅時効は3年自賠法(自動車損害賠償保障法)は、自賠責保険に対する被害者請求権(自賠法16条1項)と仮渡金請求権(自賠法17条1項)、すなわち、被害者が相手方自賠責保険に損害賠償額の支払いを直接請求できる権利は、「損害および保有者を知つた時から3年を経過したときは、時効によって消滅する」と定めています(自賠法19条)。人身損害について、加害者に対する損害賠償請求権の消滅時効は5年ですが、自賠責保険に被害者が直接請求する場合の消滅時効は3年であることに注意してください。物損は、自賠責保険の対象外です。自賠責保険は、そもそも、人身事故を起こして損害賠償責任を負うことになった加害車両の保有者が、被害者に損害賠償金を支払ったことにより発生する損害を填補する保険です。加害者が、自身の加入する自賠責保険に保険金の支払いを請求(加害者請求)する場合は、保険法95条が適用され、保険金の請求は、加害者が被害者に損害賠償金を支払った日から3年で時効となります。自賠法は、保険法の特別法ですから、被保険者である加害者からの自賠責保険に対する請求は、保険法の消滅時効の規定が適用されます。保険法では、保険会社に保険給付を請求する権利は、「行使することができる時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する」と定めています(保険法95条1項)。政府保障事業に対する請求権も、3年で時効消滅します(自賠法75条)。自賠責保険に対する被害者請求権の消滅時効、政府保障事業に対する填補金請求権の消滅時効について、詳しくは次のページをご覧ください。自賠責保険に対する被害者請求権の消滅時効政府保障事業に対する填補金請求権の消滅時効改正民法施行前に発生した事故の消滅時効は?改正民法の施行日(2020年4月1日)よりも前に発生した交通事故については、新民法の規定が適用となるかどうかは、被害者にとっては重大な問題です。新民法の消滅時効の規定が適用となる区分について、経過措置がどのように定められているのか、見ておきましょう。長期消滅時効の経過措置上で見たように、旧民法724条後段の「不法行為の時から20年」は、除斥期間と解されてきましたが、新民法724条2号では、長期消滅時効期間と位置づけられました。新法が適用されるか、旧法が適用されるかにより、損害賠償請求権を維持できるか否か大きな違いがあります。どちらが適用されるかは、旧民法724条後段の「不法行為の時から20年」の期間が、改正民法の施行日(2020年4月1日)までに満了しているか否で決まります。2020年4月1日に、不法行為の時から20年が経過していなければ、新民法の規定が適用され、時効の更新や時効の完成猶予の手続きが可能となります。経過措置について、新民法の附則で、次のように定めています。附則35条1項旧法第724条後段に規定する期間がこの法律の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については、なお従前の例による。短期消滅時効の経過措置人身損害(人の生命または身体を害する不法行為)による損害賠償請求権の短期消滅時効は、旧民法724条前段では3年でしたが、新民法724条の2では5年に延びました。改正民法施行のとき(2020年4月1日)に、旧民法724条前段の3年の時効が完成していれば、新民法の規定は適用となりませんが、3年の時効が完成していなければ、短期消滅時効の期間は5年となります。経過措置について、新民法の附則で、次のように定めています。附則35条2項新法第724条の2の規定は、不法行為による損害賠償請求権の旧法第724条前段に規定する時効がこの法律の施行の際既に完成していた場合については、適用しない。まとめ交通事故の加害者に対する損害賠償請求権には時効があり、それを過ぎると損害賠償請求できなくなりますから、注意が必要です。損害ごとの賠償請求権の消滅時効と起算日をまとめておきます。損害短期消滅時効傷害治療終了の翌日から5年後遺障害症状固定の翌日から5年死亡死亡日の翌日から5年物損事故日の翌日から3年時効にかかり、損害賠償請求権を失うことのないよう、早めに弁護士に相談して、時効の更新(時効の中断)の手続きをとるなど、適切な対応をすることが必要です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故損害賠償保障法 第2版』弘文堂 369~374ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 447~454ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 435~441ページ・『交通事故判例解説』第一法規 192~195ページ・『別冊Jurist交通事故判例百選 第5版』有斐閣 180~181ページ
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