交通事故で被害者が死亡したとき損害賠償請求権は誰にあるのか

交通事故で被害者が死亡したとき損害賠償請求権は誰にあるのか

交通事故で夫が死亡したとき損害賠償請求をできるのは、原則として死亡した被害者の相続人です。誰が相続人になるかは民法の規定によります。相続人になれない場合でも近親者には固有の慰謝料請求権があります。

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夫が交通事故で死亡しました。保険会社との交渉は義父が行い、保険金は出たようですが、私には1円もくれません。私と子どもは、どれくらい請求する権利があるのでしょうか。

死亡事故の損害賠償請求権は、相続人にあります。この場合、配偶者と子どもが相続人になり、父親は相続人になれません。したがって、損害賠償金を受け取るのは、配偶者と子どもです。

 

ただし、父親は、相続人になれなくても、慰謝料を請求することができます。その慰謝料部分を除いた金額が、配偶者と子どものものとなります。

 

死亡事故の損害賠償請求権 2つのポイント
  • 死亡した被害者の損害賠償請求権があるのは、原則として相続人です。
  • 相続人でない近親者にも、固有の慰謝料請求権があります。

 

詳しい解説

さらに詳しく見ていきましょう。

 

被害者が死亡したとき、損害賠償請求権があるのは相続人

交通事故の被害者が死亡した場合、損害賠償請求権があるのは、原則として相続人です。相続人が複数いる場合は、各人が法定相続分に応じて損害賠償の請求権を持ちます。

 

損害賠償請求権を相続する相続人

誰が相続人になるのか、相続人の範囲と順序については、民法で定めています。

 

第1順位
(直系卑属)


(※子がいないときは孫)

第2順位
(直系尊属)

父母
(※父母がいないときは祖父母)

第3順位
(傍系血族)

兄弟姉妹
(※兄弟姉妹がいないときは甥・姪)

※第1順位は民法887条、第2順位と第3順位は民法889条で規定しています。

 

配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。すなわち、配偶者は、各順位の相続人と同順位で相続人となります。

 

内縁関係の場合、相続権はありませんが、損害賠償請求はできます。

 

相続の順序

相続人となる順序は、各順位の者と配偶者です。

 

第1順位+配偶者

まず、配偶者と第1順位の子が相続人となります。このとき、第2順位と第3順位の者は、相続人になれません。

 

第2順位+配偶者

第1順位の直系卑属がいないときは、配偶者と第2順位の父母が相続人となります。このとき、第3順位の者は、相続人になれません。

 

第3順位+配偶者

第1順位の直系卑属も第2順位の直系尊属もいないときは、配偶者と第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。

 

配偶者がいないときは、各順位の者だけで相続します。逆に、第1順位から第3順位まで相続人がだれもいない場合は、配偶者が単独で相続します。

 

法定相続分

法定相続分(分け前)は、次のような割合です(民法900条)

 

相続人 相続分
妻と子 妻1/2、子1/2
妻と父母 妻2/3、父母1/3
妻と兄弟姉妹 妻3/4、兄弟姉妹1/4

 

第1順位

配偶者と子がいるときは、配偶者が1/2、子が1/2。子が複数いれば、1/2を人数で等分します。配偶者がいないときは、全額を子が相続します。

 

第2順位

子がいなくて親がいるときは、配偶者が2/3、親が1/3。両親とも健在なら親一人あたりは1/6。配偶者がいないときは、全額を親が相続します。

 

第3順位

子も親もいないときは、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4。兄弟姉妹は1/4を人数で等分します。配偶者がいないときは、全額を兄弟姉妹で相続します。

 

子も親も兄弟姉妹もなく、配偶者だけなら、全額を配偶者が相続します。

相続人でなくても、固有の慰謝料請求権がある

交通事故で死亡したり、死亡に近い被害を受けたとき、被害者の父母・配偶者・子は、財産上の損害がない場合でも、慰謝料を請求することができます(民法711条)

 

これは、近親者に固有の慰謝料請求権で、相続人が相続する被害者本人の死亡慰謝料の請求権とは別のものです。

 

ただし、死亡慰謝料は、被害者1人につき定額化・基準化されており、この基準額には、近親者固有の慰謝料も含まれます。

 

死亡した被害者の損害賠償請求権を実際に行使するのは相続人で、ほとんどの場合、近親者固有の慰謝料請求権もあります。相続人として慰謝料請求するか、近親者として慰謝料請求するか、地位の違いによって、慰謝料の総額が変わらないようになっています。

 

つまり、死亡慰謝料は、請求者が何人いても、総額で決められ、妻・子・親といった請求者の間でどう分けるかについては、法律上の決まりはなく、遺族の内部の事情を考慮して決めることになります。

 

例えば、こんな事例があります。

 

  • 一家の支柱の死亡で、妻に1,300万円、子2人に各650万円、親に200万円、計2,800万円を認めた事例(仙台地裁・平成8年5月31日)
  • 一家の支柱に準ずる主婦・パートの死亡で、本人分が2,000万円、夫に300万円、子2人に各200万円、父母に各50万円、計2,800万円を認めた事例(大阪地裁・平成20年7月25日)

 

被害者の死亡が原因で、近親者が精神疾患を患ったような特別な場合は、近親者の慰謝料を別途増額することがあります。

まとめ

交通事故の被害者が死亡したとき、損害賠償請求権は、相続人が相続します。ただし、慰謝料については、相続人でない近親者にも、固有の慰謝料請求権があります。

 

ただし、死亡慰謝料は、被害者1人につき定額化・基準化されているので、慰謝料の請求権者が何人いても、総額が変わらないように調整されます。

 

死亡慰謝料が定額化されているとはいえ、あくまでも基準・目安です。個別事情を考慮して判断する必要があります。慰謝料や損害賠償についての疑問や悩みは、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

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【参考文献】
・『交通事故の法律相談Q&A』学陽書院 72ページ
・『交通事故の法律知識』自由国民社 9ページ

公開日 2018-07-07 更新日 2023/03/16 11:45:59