交通事故で夫が死亡したとき胎児に損害賠償請求権はあるか

交通事故で夫が死亡したとき胎児に損害賠償請求権はあるか

交通事故で夫が死亡したとき、損害賠償債権が相続人に相続されるので、死亡した被害者の妻のお腹の中の子ども(胎児)の損害賠償請求権が問題になることがあります。

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夫が交通事故で死亡しました。私は初めての子どもを出産予定です。お腹の子どもに損害賠償請求権はあるのでしょうか。夫の父母にも、損害賠償請求権はあるのでしょうか。

胎児は、相続や損害賠償請求の権利については、「すでに生まれたものとみなす」というのが、民法の規定です。ですから、お腹の子(胎児)には、近親者固有の慰謝料請求権と相続する損害賠償請求権があります。ただし、胎児が「生きて生まれてくる」ことが条件です。

 

なお、被害者の子が相続人になると、被害者の父母は相続人になれません(⇒相続人の順位。父母は、被害者本人の損害賠償請求権を相続できませんが、近親者固有の慰謝料請求権はあります。

 

胎児の損害賠償請求権 2つのポイント
  • 胎児には、相続人となり、父親の損害賠償を請求する権利があります。同時に、近親者固有の慰謝料請求権もあります。
  • 被害者の子(胎児)が相続人となると、被害者の親は、死亡した被害者の損害賠償請求権を相続できません。ただし、近親者固有の慰謝料請求権はあります。

 

詳しい解説

さらに詳しく見ていきましょう。

 

胎児にも、相続権・損害賠償請求権がある

胎児にも、損害賠償請求権や相続権があります。民法は次のように定めています。

 

民法721条(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)

胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。

 

民法886条1項(相続に関する胎児の権利能力)

胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。

 

民法では「私権の享有は、出生に始まる」(民法3条1項)として、人は生まれると同時に権利・義務の主体となる資格があることを定めています。

 

この規定によれば、胎児には何の権利もありませんが、例外を定めています。それが、損害賠償の請求権(民法721条)と、相続(民法886条)・遺贈(民法965条)を受ける資格です。

 

胎児も損害賠償を請求できる

父親が交通事故など不法行為で死亡したとき、民法の原則からすると、子どもが、たとえ小さな乳幼児でも損害賠償請求権がありますが、これから生まれてくる予定の子ども(胎児)の場合は請求権がありません。

 

この不合理を救うために設けられたのが、民法721条の胎児の損害賠償請求権です。例えば、胎児も、民法711条にもとづく固有の慰謝料請求権を取得します。

 

なお、胎児のとき(=生まれる前)に賠償請求できるわけではなく、生まれた後で、事故のときにさかのぼって請求できるということです。

 

胎児も相続人になれる

相続が始まったとき(=死亡したとき)、すでに胎児になっていれば、その胎児は、相続については、生まれる前でも生まれているものとして扱われます(民法886条1項)。ただし、死産だったときは、その規定が適用されません(同条2項)

 

ですから、胎児も相続人となることができ、相続の順位は第1順位です。あなたとお腹の子は、損害賠償を請求する権利があり、取り分は1/2ずつです。

 

もし、死産であったときは、胎児はいなかったものとされ、第2順位の被害者の父母が相続人となります。この場合、あなたと夫の両親が相続人となり、あなたが2/3、夫の両親が1/3の損害賠償請求権を取得することになります。

 

法定相続分はこちらをご覧ください。

夫の両親には、固有の慰謝料請求権がある

あなたの子どもが無事に生まれると、夫の両親は相続人になれません。この場合、夫の両親は、死亡した被害者の損害賠償請求権を相続することはできません。

 

ただし、夫の両親には、近親者固有の慰謝料請求権があります(民法711条)

 

近親者固有の慰謝料

近親者固有の慰謝料請求権は、死亡した被害者の父母・配偶者・子に認められる固有の慰謝料請求権です。死亡に匹敵するような重度の後遺障害も該当します。

 

民法711条(近親者に対する損害の賠償)

他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

 

あなたとお腹の子にも同じ慰謝料請求権があります。つまり、あなたと胎児には、相続により取得する被害者本人の損害賠償請求権と、それとは別に固有の慰謝料の請求権があります。

 

ここで、請求できる慰謝料がいくつか出てきました。夫の両親が請求できる慰謝料、あなたと胎児が請求できる慰謝料、そして被害者本人の慰謝料です。

 

死亡慰謝料は、被害者1人の基準があり、定額化していますから、慰謝料の請求者が複数いても、死亡慰謝料の総額はほとんど変わらないように算定されます。

まとめ

夫が交通事故で死亡したとき、妻のお腹の子(胎児)も相続人となり、損害賠償請求権があります。

 

死亡事故は、損害賠償請求権をめぐり、トラブルになるようなこともあります。お困りのときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

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【参考文献】
・『交通事故の法律相談Q&A』法学書院 72~73ページ
・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 245ページ
・『口語民法』自由国民社 関係条文の解説

公開日 2018-07-07 更新日 2023/03/16 11:45:59