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  • 過失相殺率と過失割合の違い
    過失割合と過失相殺率の違いとは?わかりやすく詳しい解説
    交通事故の過失相殺において、過失割合と過失相殺率は、同じような意味で使われることがありますが、過失割合と過失相殺率は異なります。過失割合と過失相殺率の違いについて、分かりやすく説明します。過失相殺率と過失割合の違い過失相殺率と過失割合には、次のような違いがあります。過失相殺率とは過失相殺率は、過失相殺する割合です。被害者の過失相当分として損害賠償額から減額する割合が、過失相殺率です。例えば、過失相殺率が30%であれば、被害者の過失30%分を減額した額が、損害賠償額となります。この場合、被害者の過失が30%といっても、必ずしも過失割合が「加害者7:被害者3」というわけではありません。「加害者の過失」と「過失相殺の対象となる被害者の過失」は質的に異なるので、同じレベルの過失として対比できないからです。「被害者の過失」と「加害者の過失」の違いとは?過失相殺の対象となる被害者の過失は、単なる不注意というレベルです。自分の不注意により自身に損害が生じたというもので、相手に損害を与えて賠償責任が発生するようなものではありません。加害者の過失は、注意義務違反です。道路交通法などで自動車の運転者に課せられた注意義務を怠り、相手に損害を与え、賠償責任が生じます。被害者の過失と加害者の過失は、このような違いがあるので、同一線上で対比できないのです。過失割合とは過失割合は、発生した損害に対する当事者(加害者と被害者)の過失の割合です。加害者と被害者の過失を対比し、双方に過失を割り付けたものが過失割合です。例えば、「加害者7:被害者3」というように、被害者と加害者に損害の過失責任を割り付けます。この場合、被害者の過失が「10分の3」ですから、過失相殺率は30%となります。過失割合が妥当なのは、対等者間の事故の場合のみ過失割合の考え方ができるのは、当事者の過失が質的に同じものとして対比できる場合、すなわち、四輪車同士の事故のような対等者間の事故の場合のみです。歩行者と自動車との事故のように、交通弱者と交通強者との事故の場合には、過失の質が異なるので、過失割合という考え方は馴染みません。過失相殺における「相対説と絶対説」「交通弱者保護の原則」過失相殺率と過失割合の違いを、さらに深掘りします。ポイントは次の2つです。過失相殺には「相対説」と「絶対説」がある。過失相殺においては「交通弱者保護の原則」が考慮される。過失相殺における「相対説」と「絶対説」過失相殺の基本的な考え方には、「相対説」と「絶対説」があります。相対説:当事者双方の過失を対比して過失相殺を考える。絶対説:被害者の過失の大きさだけによって過失相殺を考える。相対説か絶対説かで過失相殺率が異なる相対説か絶対説か、どちらの立場によるかで、過失相殺率が異なります。例えば、被害者の過失も加害者の過失も、同程度の軽微な過失であった場合を考えてみましょう。相対説の立場で考えると、被害者の過失が小さくても、加害者の過失が同じように小さい場合は、過失相殺率は相対的に高くなります。絶対説の立場で考えると、被害者の過失が軽微なら、過失相殺率は小さくなります。相対説によるのが判例・保険実務の大勢ですが…通常、過失相殺における過失の評価は、加害者の過失と被害者の過失を対比し、双方の事情の総合的考慮により過失相殺の割合を定める方法(相対説)が採られます。ただし、対等者間の事故でない場合は、「相対説においても過失割合という思考をとらない」とされています(『別冊判例タイムズ38』44ページ)。過失相殺における「交通弱者保護の原則」過失相殺にあたっては「交通弱者保護の原則」が考慮されます。四輪車より単車、単車より自転車、自転車より歩行者、成人より幼児・児童といったように、交通弱者が保護される原則です。対等者間の事故の過失相殺には、過失割合と過失相殺率が同一のものとして機能しますが、対等者間でない事故の過失相殺には、過失割合を用いるのは妥当でなく、過失相殺率を用います。歩行者と自動車とでは過失の質が異なり、単車と四輪車でも単車の運転者の方が被害を受けやすく、保護する必要があるからです。歩行者と自動車の事故例えば、一般道路を歩行者が横断していて自動車にひかれ、歩行者の過失相殺率が20%だったとします。このとき、加害者(自動車の運転者)と被害者(歩行者)の過失割合が8;2かというと、そうはなりません。歩行者が、相手車両の物損に、20%責任を負うわけではないのです。自動車は、運転者の不注意(過失)によって他人に危害を加える危険があるため、運転者は、道路交通法で様々な注意義務が課されています。一方、歩行者は、不注意(過失)があったとしても、他人に危害を及ぼすことは基本的にありません。その不注意は、自分の身を守るために注意しなかった不注意にすぎません。過失相殺の過失は、注意義務違反でなく、不注意で足りるといわれる所以です。歩行者は、自分が損害を受けたことについて、自分の過失分について過失相殺されますが、それは加害者として責任を負う過失ではないのです。したがって、歩行者と自動車との事故では、双方の過失を対比する過失割合という考え方は馴染まないのです。単車と四輪車の事故四輪車と単車は、道路交通法で同じように規制を受けますが、四輪車同士の事故と単車対四輪車の事故では、過失相殺率が異なります。例えば、交差点における直進車と右折車との事故で考えてみましょう。道路交通法で直進車優先の基本原則がありますから、四輪車同士あるいは単車同士の事故の場合は、右折車の過失割合が80%、直進車の過失割合が20%で、これがそれぞれの過失相殺率となります。(過失相殺率認定基準【107】)単車が直進車、四輪車が右折車の場合、直進単車の過失相殺率は15%です。対等者間の事故なら直進車の過失相殺率は20%ですから、それより5%減ります。(過失相殺率認定基準【175】)逆に、単車が右折車、四輪車が直進車の場合、右折単車の過失相殺率は70%です。対等者間の事故なら右折車の過失割合は80%ですから、10%減ります。(過失相殺率認定基準【176】)基本的には道路交通法で同一の規制を受ける四輪車と単車であるにもかかわらず、過失相殺率が異なります。これは、単車が四輪車と衝突した場合、単車の運転者が被害を受けるのが通常であり、こうした被害については、公平の観点から救済する必要があるからです。損害賠償における損害の公平な分担という理念から、過失相殺率は、本来の過失割合に修正を加えているので、このように違った基準ができているのです。これを単車修正といいます。「過失相殺基準」の見方過失相殺率を判断するときには、『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ38)を参考にするのが一般的です。この『過失相殺率認定基準』では、交通弱者の側が被害者になったとき(人身損害が生じたとき)の過失相殺率を示しています。つまり、「歩行者と四輪車・単車・自転車との事故」「単車と四輪車との事故」「自転車と四輪車・単車との事故」で示されている基準は、それぞれ、歩行者、単車、自転車が被害者となった場合の過失相殺率を示しています。「四輪車同士の事故」の場合も、被害者の側の過失相殺率を示すものですが、対等者間の事故であるため、過失相殺率と過失割合は一致すると考えて差し支えありません。具体的に見てみましょう。「歩行者と四輪車・単車との事故」の過失相殺率「四輪車同士の事故」の過失相殺率「単車と四輪車との事故」の過失相殺率「歩行者と四輪車・単車との事故」の過失相殺率歩行者と四輪車・単車との事故については、『過失相殺率認定基準』では、歩行者が被害者となったときの過失相殺率を示しています。例えば、歩行者と四輪車・単車との事故で、歩行者が黄信号で横断を開始し、車両が赤信号で進入した場合の過失相殺率の基準は次のようになっています。歩行者と直進車との事故歩行者が、黄信号で横断を開始車両が、赤信号で進入基本10修正要素児童・高齢者-5幼児・身体障害者等-5集団横断-5車両の著しい過失-5車両の重過失-10※『別冊判例タイムズ№38』67ページ、基準【2】。修正要素は一部のみ抜粋。このような事故の場合、被害者(歩行者)の基本の過失相殺率は10%で、修正要素を考慮して過失相殺率を決めます。例えば、被害者が「児童・高齢者」の場合には「マイナス5」で、過失相殺率は5%となります。歩行者は、黄信号の場合に道路の横断を始めてはならないので(道路交通法施行令2条1項)、方向者が黄信号で横断を開始したこと自体に過失が認められます。また、この場合は、歩行者に左右の安全確認義務があるのが普通で、左右の安全確認も怠っていることの過失も問題となります。しかし、赤信号に違反した車両の過失の方がはるかに大きいので、過失相殺基準では「原則として10%以上の過失相殺をしない」とされています。歩行者が加害者となる場合歩行者が加害者となる場合について、過失相殺基準はありません。上の例では、歩行者が被害者となったときの過失相殺率が10%ということであり、過失割合が「加害者9:被害者1」というわけではありません。仮に、歩行者が怪我をせず、歩行者を避けようとした車両の運転者が怪我をして、歩行者が加害者、車両の運転者が被害者となった場合、車両の運転者から歩行者に損害賠償請求するとして、過失相殺率が90%になるわけではありません。歩行者が不法行為責任を負うか、負うとしてその過失責任がどの程度か、については、個別に判断する必要があり、『過失相殺率認定基準』では示していないのです。『過失相殺率認定基準』には、次のような解説があります。歩行者が被害者となる場合のみを取り上げることとし、被害者保護、危険責任の原則、優者危険負担の原則、自賠責保険の実務等を考慮して、歩行者に生じた損害のうちどの程度を減額するのが社会通念や公平の理念に合致するのかという観点から過失相殺率を基準化した。歩行者が加害者となる場合、例えば、歩行者が路上に急に飛び出したため、急停止をした四輪車・単車の運転者・同乗者が負傷したり、歩行者との衝突を避けようとしてハンドルを切り、対向車と衝突した四輪車・単車の運転者・同乗者が負傷した場合等に、歩行者が不法行為責任を負うか、負うとしてその負担割合がどの程度かなどは、本章の基準の対象外である。(『別冊判例タイムズ№38』60ページ)「四輪車同士の事故」の過失相殺率四輪車同士の事故の場合、『過失相殺率認定基準』は、被害車両の過失相殺率を表示しています。例えば、信号機のない同幅員の交差点において、A車・B車とも同程度の速度で進入し、出会い頭に衝突したケースです。A車が左方車、B車が右方車とすると、左方優先ですから、A車の過失相殺率の基準は次のようになります。信号機のない交差点での四輪車同士の事故A車:左方車B車:右方車基本A 40:B 60修正要素A車の著しい過失+10A車の重過失+20B車の著しい過失-10B車の重過失-20※『別冊判例タイムズ№38』215ページ、基準【101】。修正要素は一部のみ抜粋。ここで示しているのは、A車の基本の過失相殺率が40%ということですが、四輪車同士の事故の場合は、「対等者間の事故」なので、過失相殺率は過失割合と同一と解することができます。つまり、A車とB車の過失割合は「40:60」と考えて差し支えないということです。「単車と四輪車との事故」の過失相殺率『過失相殺率認定基準』では、単車と四輪車との事故で、単車側に人身損害が生じた場合の過失相殺率を示しています。例えば、信号機のない同幅員の交差点において、単車(A車)と四輪車(B車)がともに同程度の速度で進入し、出会い頭に衝突したケースです。単車(A車)が左方車、四輪車(B車)が右方車とすると、左方優先ですから、単車(A車)の過失相殺率の基準は次のようになります。信号機のない交差点での単車と四輪車の事故A車:単車(左方車)B車:四輪車(右方車)基本A 30:B 70修正要素A車の著しい過失+10A車の重過失+20B車の著しい過失-10B車の重過失-20※『別冊判例タイムズ№38』318ページ、基準【165】。修正要素は一部のみ抜粋。四輪車同士の事故の場合のように割合の形で表示していますが、対等者間の事故ではないので、過失割合と一致するわけではありません。単車の運転者は怪我をせず、四輪車の運転者が怪我して被害者になり、相手に損害賠償請求する場合、基準に示されている四輪車の過失70%を過失相殺率とすることはできません。別個に判断することが必要です。『過失相殺率認定基準』には、次のような注意書があります。一方が単車・自転車の事故の類型の基準においては、四輪車側の過失割合も示しているが、単車・自転車の過失割合は、そのまま過失相殺率として用いることを予定しているのに対し、>四輪車側の過失割合は、あくまで注意的な記載であり、単車・自転車が加害者であるとして請求された場合における過失相殺率を直ちに示すものではない。(『別冊判例タイムズ№38』44ページ)まとめ過失割合と過失相殺率は異なります。過失相殺にあたっては、過失相殺率を用います。対等者間の事故の場合は、過失割合と過失相殺率は一致するので、過失割合を考えて過失相殺しても差し支えありませんが、対等者間でない事故の場合は、過失割合の考え方は妥当ではありません。過失相殺率の判断には、『過失相殺率認定基準』を用いるのが一般的です。ただし、すべての事故態様を網羅しているわけではないので、過失相殺基準を参考に個別に判断することが必要です。相手方の保険会社が示す過失割合・過失相殺率について疑問に感じたり納得できないときは、交通事故の損害賠償請求や過失割合の争いに強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・別冊凡例タイムズ38『過失相殺率の認定基準 全訂5版』・『民事交通事故訴訟の実務』ぎょうせい 169~172ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 295~296ページ
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  • 過失相殺率認定基準
    過失相殺基準(過失相殺率認定基準)と利用上の注意点
    『過失相殺率認定基準』は、過去の判例をもとに事故の態様ごとに過失相殺率・過失割合を基準化したものですが、あらゆる事故に当てはまるものではありません。ここでは、『過失相殺率認定基準』がどんなものか、『過失相殺率認定基準』を使って過失相殺率・過失割合を決める際の注意点についてまとめています。過失割合の算定に使う過失相殺基準とは?過失相殺は、法律上(民法722条2項)は「裁判所の自由裁量」に委ねられていますから、裁判所が、個々の事件ごとに様々な要素を考慮して過失相殺の割合を決めるのが本来の在り方です。しかし、交通事故の損害賠償請求事件は数が多く、事故態様の似たものが多いため、同じような事故にもかかわらず過失相殺割合が裁判官によって大きく異なると、当事者間に不公平が生じます。それゆえ、民事交通訴訟を迅速・公平に処理するため、過失相殺基準が作成され、それを参考に過失相殺率・過失割合を決めるようにしています。過失相殺基準は、訴訟外の示談交渉においても用いられます。「過失相殺率の認定基準・全訂5版」(別冊判例タイムズ38)現在、過失相殺基準として広く使われているのは、東京地裁民事訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版』(別冊判例タイムズ38)です。以下、「過失相殺率認定基準」と略します。「過失相殺率認定基準」は、東京地裁民事第27部(民事交通部)の裁判官が、民事交通訴訟における過失相殺率の認定・判断基準を示したもので、この基準によって、実務が動いていると考えてよいでしょう。裁判で過失相殺が問題となるケースでは、裁判所からも「判タ(判例タイムズ)の何番だと思うのですけれど」と具体的に話が出てきます。示談代行を行う保険会社の担当者も、この「過失相殺率認定基準」を使って交渉するのが一般的です。このほか、『赤い本』や『青本』も用いられます。「過失相殺率認定基準」とはどんなもの?「過失相殺率認定基準」は、事故を大きく次の7つに分類し、それぞれの事故について、基本の過失相殺率(過失割合)と修正要素を示しています。歩行者と四輪車・単車との事故歩行者と自転車との事故四輪車同士の事故単車と四輪車との事故自転車と四輪車・単車との事故高速道路上の事故駐車場内の事故過失相殺率・過失割合を決める上で基本となる一般原則は、「弱者保護」と「道路交通法の優先関係」です。弱者保護弱者保護の原則から、四輪車より単車、単車より自転車、自転車より歩行者、成人より幼児・児童・高齢者・身体障害者等の交通弱者が、過失相殺率・過失割合は小さくなります。道路交通法の優先関係例えば、信号機のない交差点での車両同士の出会い頭の衝突事故の場合、道路交通法に定められた優先関係は次のようになります。左方優先他に優劣を定められないとき左方車が優先する(道交法36条1項)。[基本の過失割合 ⇒ 左方車40:右方車60]優先車優先一方が優先道路の場合、優先道路走行車が優先する(道交法36条2項)。[基本の過失割合 ⇒ 優先車10:劣後車90]広路車優先広い道を走行してきた車の方が狭い道を走行してきた車に優先する(道交法36条2項)。[基本の過失割合 ⇒ 広路車30:狭路車70]非停止規制車優先一方に一時停止の規制がある場合、一時停止の規制のない道路走行車が優先する(道交法43条)。[基本の過失割合 ⇒非停止規制車20: 停止規制車80]「過失相殺率認定基準」の利用の仕方と注意点「過失相殺率認定基準」の利用の仕方と、利用する際の注意点について見ていきましょう。「過失相殺率認定基準」の利用の仕方実際の事故で「過失相殺率認定基準」を利用するとき、次のような流れになります。事故を分析し、「過失相殺率認定基準」のどの類型に該当するのか、どの類型に類似するのかを検討します。その事故の諸事情が、修正要素に該当するかを検討します。基本の過失割合に修正要素を加味して、過失相殺の割合を計算します。修正要素には、幹線道路か否か、夜間などの見通し状況、速度違反の有無、子どもや高齢者か、著しい過失や重過失はないか、など様々な要素があります。事故態様に応じて、適正に修正要素を考慮することが大切です。著しい過失・重過失とは「過失相殺率認定基準」には、事故の類型ごとに主な修正要素を記載していますが、あらゆる要素を網羅できるわけではありません。そのため、「その他の著しい過失・重過失」という修正要素が盛り込まれています。著しい過失とは著しい過失とは、通常想定されている程度を超えるような過失をいいます。「過失相殺率認定基準」には、基本の過失相殺率を定めるにあたり、事故態様ごとに通常想定される過失を考慮に入れていますから、それを超えるような過失という意味です。車両一般の著しい過失としては、例えば、脇見運転などの著しい前方不注意、携帯電話などを通話のために使用したり画像を注視しながら運転すること、おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反(高速道路を除く)、酒気帯び運転などが該当します。重過失とは重過失とは、著しい過失よりもさらに重い、故意に比肩する重大な過失をいいます。車両一般の重過失としては、例えば、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、おおむね時速30㎞以上の速度違反(高速道路を除く)、過労・病気・薬物の影響などにより正常な運転ができない恐れがある場合などが該当します。過失相殺率認定基準に該当しない事故の場合「過失相殺率認定基準」により、あらゆる事故態様がカバーされているわけではありません。「過失相殺率認定基準」に該当しない事故の場合は、基準を参考に、個別具体的に判断する必要があります。過失相殺の割合は、おもに、道路交通法に定められた規制や優先権、事故発生の時間・場所・環境、事故発生の予見可能性・回避可能性、といった3つの要素によって判断されます。これらの要素を基礎に、類似する過失相殺基準を参考に、過失相殺率・過失割合を算定することになります。「過失相殺率認定基準」を利用するときに注意すること過失割合を算出するとき、まず、事故を分析し、「過失相殺率認定基準」のどの類型に該当するか、どの類型に類似しているかを検討しますが、重要なのは、現実の事故を基準・類型に無理やり当てはめるようなやり方をしてはいけない、ということです。交通事故の事故態様は千差万別で、「過失相殺率認定基準」にそのまま当てはまらない事故態様も多数あります。「過失相殺率認定基準」は、あくまで目安として参考にし、個別事情を考慮し適正に修正して使うことが大切です。例えば、歩行者(被害者)が横断歩道上で事故に遭った場合は過失相殺されませんが、横断歩道でない場所で事故に遭った場合は過失相殺されます。過失相殺基準を形式的に当てはめると、事故が発生したのが「横断歩道上か」「横断歩道外か」という一事で、過失相殺率が大きく変わります。ですが、こういう場合もあります。横断歩道を横断中に車が接近してきたので、歩行者が車を避けようとして横断歩道外に逃げて衝突した場合です。この場合、実況見分調書に衝突場所として記載されるのは、横断歩道外となります。衝突場所が横断歩道外だから過失相殺するというのでは、あまりにも機械的です。こういう場合は、横断歩道上の事故と同様に考えることが必要です。「過失相殺率認定基準」を使いこなすには専門知識と経験が必要「過失相殺率認定基準」を使って、実際の交通事故の過失割合を判断するには、どの類型を適用するか、どのような考慮の下に修正要素・修正率が規定されているのか、などの深い知識が必要になります。「過失相殺率認定基準」(別冊判例タイムズ38)は、だれでも比較的容易に入手することはできますが、それを使いこなすには、専門知識と経験が必要なのです。相手の保険会社の担当者は、「過失相殺率認定基準のコレに該当するので、過失割合は何%」というように過失相殺を主張してきます。それに疑問を感じ、ご自身でいろいろと調べる方もいるでしょう。もちろん被害者側が過失相殺の基本的な知識を身に着けておくことは大切ですが、生半可な知識で保険会社の担当者と示談交渉に臨んでも、勝ち目はありません。相手は、様々な事故について示談交渉しているプロです。過失割合に納得がいかないときは、無理をせず、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。まとめ交通事故の過失相殺の割合を算定するとき、参考にする過失相殺基準として、一般的に『民事訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ38)が用いられます。「過失相殺率認定基準」は、交通事故の損害賠償を迅速・公平に処理する上で有用ですが、あらゆる事故態様を網羅しているわけではありません。現実の事故は、「過失相殺率認定基準」をそのまま適用できない場合が多くあります。「過失相殺率認定基準」に機械的に当てはめたのでは、正しい過失相殺率・過失割合は算定できません。大事なのは、「過失相殺率認定基準」に示された基準や修正要素を、どう判断し、どのように修正して適用するかです。それには、専門知識と経験が必要です。過失割合や過失相殺率に納得がいかない場合は、交通事故の過失割合の争いに強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 人と車の事故の過失割合
    歩行者と自動車・単車との交通事故の過失割合・過失相殺率の基準
    歩行者と車(四輪車・単車)との交通事故は、ほとんどのケースで車側の過失責任が重くなります。車の運転者には、歩行者に十分注意して運転することが義務づけられているからです。ただし、歩行者が信号を無視して道路を横断したなど、歩行者に交通ルール違反があった場合は、重大な過失として大きく過失相殺されることがあります。ここでは、歩行者と車との交通事故の過失割合の基本的な考え方について、過失相殺率認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に、道路を横断中(横断歩道または横断歩道以外)の事故道路の端を通行中の事故路上横臥者の事故に分けて見ていきます。なお、ここで紹介するのは、代表的な事故類型における過失相殺率の基準です。『過失相殺率認定基準』の全てを紹介したものではありません。実際の交通事故で過失割合を判断するときには、『過失相殺率認定基準』のどの事故類型を参考にするか検討し、修正要素を加味し、個別事情を考慮して判断する必要があります。専門的な知識や経験がないと難しいので、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。「歩行者(=被害者)の過失」と「車両の運転者(=加害者)の過失」は、質的に注意義務が異なるので、厳密に言えば、同一線上で過失の程度を対比できません。そのため、過失割合でなく、過失相殺率が正しい表現です。ただ、一般的には過失割合という言葉の方が広く使われ、イメージしやすいので、ここでは厳密な表記が必要でない限り、過失割合を使っています。横断歩道を横断中の事故の過失割合※歩行者が横断歩道を横断中の事故横断歩道上では、法律により歩行者は強く保護され、絶対的優先権があります。道路交通法で、車両は、横断歩道を横断しようとする歩行者がある場合、横断歩道の直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない(道路交通法38条1項)と定められています。したがって、横断歩道上の事故は、原則として過失相殺されません。青信号で横断歩道を横断中の事故はもちろん、信号機のない横断歩道を横断中の事故であっても、さらに、相手が直進車であろうと右折車・左折車であろうと、過失相殺しないのが原則です。歩行者0:車100歩行者が横断歩道を外れて横断した場合は?横断歩道による横断かどうかは、交通事情などから具体的に検討すべきですが、おおむね、横断歩道の端から1~2m離れた場所の横断や、横断歩道上に停止した車両の前後の横断は、横断歩道と同視されます。つまり、横断歩道上とは、横断歩道内だけでなく、横断歩道の端から1~2m以内の場所も含まれます。(参考:「別冊判例タイムズ38」64ページ)歩行者が赤信号で横断歩道を渡った場合※信号機のある横断歩道を歩行者が赤信号を無視して横断したとき歩行者が赤信号を無視して横断した場合は、横断歩道上の事故であっても、歩行者の過失が認められ、過失相殺されます。もっとも、歩行者は交通弱者保護の観点から、過失相殺率100%ではなく、最大70%の過失相殺となります。車の側の信号の色によって、過失相殺率が異なります。車の側の信号基本の過失相殺率赤20黄50青70横断歩道以外の場所を横断中の事故の過失割合※横断歩道以外の場所を横断したとき横断歩道以外の場所を横断することは危険で、歩行者の注意義務は重くなります。そのため、横断歩道以外を横断して事故に遭ったときは、20%程度の過失相殺がされます。歩行者20:車80幹線道路の場合は、交通量が多く、車が高速で走行し、危険性が高いことから、10%加算修正されます。基本の過失相殺率20修正要素幹線道路+10横断禁止の規制あり+5~10児童・高齢者-5幼児・身体障害者等-10車両の著しい過失-10車両の重過失-20※修正要素は一部のみ抜粋。付近に横断歩道があるのに横断歩道を横断しなかった場合※横断歩道の付近を横断したとき歩行者が道路を横断しようとする場合、付近に横断歩道があるときは横断歩道を横断しなければなりません(道路交通法12条1項)。したがって、近くに横断歩道があるのに横断歩道を横断せず事故に遭った場合は、歩行者の過失が重く、基本の過失相殺率は30%となります。歩行者30:車70幹線道路の場合は、交通量が多く、車が高速で走行しているため、横断歩道を利用しないと危険性が高いことから、10%加算修正されます。基本の過失相殺率30修正要素幹線道路+10横断禁止の規制あり+10児童・高齢者-10幼児・身体障害者等-20車両の著しい過失-10車両の重過失-20※修正要素は一部のみ抜粋。横断歩道の付近とは、どの程度の距離範囲か?横断歩道の付近とは、道路の幅員・付近の状況・交通量などから判断して、通常なら横断歩道を利用するであろう、と考えられる距離です。おおよその基準としては、おおむね幅員14m(片側2車線)以上の道路で、交通量が多く、車が高速で走行している道路は、横断歩道から40~50m以内、それ以外の道路は、20~30m以内とされています。(参考:「別冊判例タイムズ38」89ページ)付近に横断歩道橋があるのに歩道橋を利用せず道路を横断した場合横断歩道橋は、横断歩道のような法的規制はありません。しかし、歩道橋が設置されている道路は、交通量が多く、車が高速で走行している場所です。ですから、横断歩道橋が付近にあるのに、歩道橋を利用せずに道路を横断した場合は、横断歩道の付近を横断する歩行者と同じように扱われます。横断歩道橋の構造上、乳母車や自転車を押しての利用、高齢者や身体障害者の利用は困難です。こういう歩行者の場合は、横断歩道が近くにない場所での横断の基準を参考に、過失相殺率を判断します。歩道や道路の端を歩行中の事故の過失割合歩行者が、歩道や道路の端を歩いているときの事故の場合です。交通事故の発生場所が、歩車道の区別のある道路か、歩車道の区別のない道路かによって、歩行者の過失相殺率が異なります。歩車道の区別のある道路における事故歩道を歩いていた場合車は、歩車道の区別のある道路では車道を通行し、道路外の施設や場所に出入りするためやむを得ず歩道を横断するときは、歩道に入る直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない(道路交通法17条1項2項)と定められています。したがって、歩道を通行する歩行者には法的保護があり、歩道上での事故は、原則として過失相殺されません。歩道には、路側帯も含みます。歩行者0:車100歩道があるのに車道を歩いていた場合歩行者は、歩道と車道の区別のある道路においては、道路を横断するときや道路工事等のため歩道を通行することができななど「やむを得ない事情」があるときを除き、歩道を通行しなければなりません(道路交通法10条2項)。したがって、歩行者が、歩車道の区別のある道路の車道を通行中に事故に遭った場合は、歩行者に過失が認められ、原則として過失相殺されます。歩行者20:車8020%の過失相殺率は車道の側端(端からおおむね1m以内)を通行した場合です。側端でない場合は、歩行者の過失が大きくなり、基本の過失相殺率が30%となります。やむを得ない事情がある場合は、車道の端を通行することが許されますが、前方・後方から走行してくる車の動きを注視し、安全を確認する注意義務があります。基本の過失相殺率は10%です。「やむを得ない事情」とは、歩道を工事している場合のほか、片側のみの歩道が設けられている道路で交通量が多く横断できない場合や、近距離を移動するため二度も横断することがかえって危険となる場合などです。歩車道の区別のない道路における事故歩行者は、歩道と車道の区別のない道路では、道路の右側端に寄って通行しなければならず、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄って通行することができます(道路交通法10条1項)。したがって、歩行者が、道路の右側端を通行していたか、左側端を通行していたか、それら以外の場所を通行していたか、によって過失相殺率が異なります。右側端を通行している場合※道路の右側端を通行していたとき歩行者が道路の右側端を通行している場合は、歩行者の側方を通行する車に、歩行者との間に安全な間隔を保ち、徐行する注意義務があります(道路交通法18条2項)。事故の発生は車の過失と考えられ、原則として過失相殺はされません。歩行者0:車100左側端の通行が例外的に許される場合も、この基準によります。例えば、道路の右側に崖があったり工事個所があったりして右側端通行が危険な場合や、右側端に駐車車両が並んでいて右側端通行ができない場合などです。左側端を通行している場合※道路の左側端を通行しているとき歩行者が左側端を通行し、右側端を通行していたら事故発生を容易に回避できた場合など、左側端通行と事故との間に因果関係がある場合は、過失相殺されます。歩行者5:車95道路の側端以外を通行している場合道路端からおおむね1m以上中央部分を通行している歩行者が、背面または正面から車に衝突された場合です。幅員8m以上の道路の中央部分(道路端からおおむね3m以上)を歩行者が通行していたときは、20%の過失相殺がされます。それ以外の場合(幅員8m未満の道路、幅員8m以上の道路の端からおおむね1~3m離れた部分)は、10%の過失相殺率となります。路上横臥者の事故の過失割合酒に酔った歩行者が、道路上で寝てしまったような場合の事故です。横臥者だけでなく、座り込んでいる者も同様です。昼間は、車からの路上横臥者の発見が比較的容易であることから、車の過失が大きく、路上横臥者の基本の過失相殺率は30%とされています。夜間は、車からの発見・衝突回避が遅れ、発見しても人とは思わずに轢過することもあります。そのため、夜間の場合は、昼間と比較して路上横臥者の過失が加重され、路上横臥者の基本の過失相殺率は50%とされています。昼間夜間基本の過失相殺率3050修正要素幹線道路+10+10~20住宅街・商店街等-5-10~20車の著しい過失-10-10車の重過失-20-20※修正要素は一部のみ抜粋。まとめ歩行者と車両(四輪車・単車)が衝突する事故の場合、歩行者は交通弱者として法的な保護があります。ですから、道路交通法に違反するような過失がなければ、基本的に過失相殺されることはありません。例えば、道路を横断するときは、横断歩道を渡る、信号を守る、歩道のある道路は歩道を歩く、歩道がない場合は道路の右側を通行する、といったことを守っていれば、歩行者は絶対的な法的保護がありますから、原則として過失相殺率はゼロです。過失割合・過失相殺率は、一応の基準はありますが、修正要素や具体的な事故態様により判断する必要があります。過失割合で揉めているときは、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』(別冊判例タイムズ38)・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房・『道路交通法解説16-2訂版』東京法令出版
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