交通事故トラブル解決ガイド|損害賠償請求・示談交渉の悩みを解決!

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  • MRI検査
    MRIは万能の検査ではない?! レントゲン・CTとの違いとは?
    レントゲンとCTの違いは、たいていの人が分かるでしょう。では、CTとMRIの違いは? 検査は、治療のためにするものですが、交通事故の場合には損害賠償が絡んでくるので、症状の原因や存在を証明するためにも検査が必要となります。ここでは、レントゲン、CT、MRI検査について、それぞれの特徴と違いについて解説します。被害者としても、治療を受けるにあたって知っておきたい点ですから、ぜひチェックしておいてください。XP、CT、MRIの特徴と違いXP(レントゲン写真)、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)について、それぞれの特徴は次の通りです。XP(レントゲン写真)XP(X-ray Photograph)は、X線を照射し、透過したX線を写真乾板、写真フィルム等に検出・可視化する画像検査方法です。レントゲン撮影、単純X線撮影ともいわれます。骨状態(骨折の有無など)や脊髄の状態を見るのに必須の検査方法です。レントゲン写真の原理照射されたX線は、体内に入ると、透過して体外に出てくるものと、吸収されるものとに分かれます。その透過・吸収の差を、白から黒の濃淡の変化で表したものがX線写真です。X線が透過した部分は黒、吸収された部分は白く表されます。高密度な組織ほどX線を吸収します。骨は密度が高く、X線を吸収するため白く表されます。空気を多く含む肺の部分は密度が低く、X線を吸収する組織が少ないため黒く表されます。CT(コンピューター断層撮影)CT(Computed Tomography)は、X線を360度回転しながら人体に照射して、人体の断層像をコンピューターによって再構成する装置です。人体を輪切りにしたような断面画像や立体的な画像を得ることができ、1枚のレントゲン写真より情報量が多く、詳細な診断ができます。X線は、密度が低い組織は通り抜け、密度が高い組織ほど通り抜けにくい性質があります。CTは、体に多方向からX線を照射し、透過したX線の量を測定することで、 体の組織の密度を計算し、 画像化する仕組みです。骨など硬部の組織を見るのに適しています。CT撮影には、次のような特徴があります。骨や肺の内部構造が明確に描出される(⇒骨病変の描出に優れている)。軟部組織の変化が分かりにくい。骨に囲まれた部位のアーチファクト(虚像)が出やすい。MRI(磁気共鳴画像)MRI(Magnetic Resonance Imaging)は、磁力と電波によって、体の細胞に含まれる水素原子に影響を与え、水素原子が出す信号の強弱に応じて濃淡の差をつけて、体内の状態を断面像として描写する装置です。成人の体重の 60~70%は水分といわれ、 水素原子は体のどこにでもあり、 データが取りやすいことを利用しています。水分の多い軟部組織を見るのに適しています。MRIの画像には、「T1強調」と「T2強調」があります。T1強調磁場の繰り返し時間を短くすることで、水分が黒く描写され、解剖学的状態に近い画像となる。T2強調磁場の繰り返し時間を長くすることで、水分が白く描写され、輪郭がはっきりした画像となる。MRI撮影には、次のような特徴があります。軟部組織構造の描出に優れている。骨によるアーチファクトが少ない。空気が存在する領域(肺など)はCTより劣る。骨の解像度はレントゲン写真やCTより劣る。MRIといえども万能の検査ではないMRIは、頭部(脳動脈・脳実質)の検査や、脊椎、四肢などの関節軟部組織の描出を得意とする検査方法です。骨に囲まれた部分のアーチファクト(虚像)が出にくいので、内部の質的評価を行う場合に優位性を発揮します。その一方で、骨折の治癒過程の判断には適しておらず、骨の解像度は、レントゲン写真やCTより劣ります。骨や関節面の形態変化を評価する場合には、レントゲン写真やCTに優位性があり、関節内骨折の評価は、CTさえ不要で、レントゲン写真の両側撮影だけで事足りるケースが多いといわれます。(参考:濱口裕之・メディカルコンサルティング合同会社代表医師『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル26ページ)なお、不顕性骨折(初診時にレントゲン写真で確認できない骨折)には、MRI検査が有効です。単純X線像やCT像では骨折線が認められない場合でも、MRI像において、わずかな骨髄内の浮腫や出血が確認されることで、骨折を判断できるからです。後遺症が残るときは特に注意後遺症が残るときは、後遺障害等級が認定されるか否かによって、賠償額が大きく違います。後遺障害等級の認定を受けるには、後遺症の存在を証明しなければなりませんから、適切な検査を行っておく必要があるのです。検査は、もちろん治療のために行うものです。しかし、交通事故の場合は損害賠償が絡むため、症状の原因や存在を証明するためにも必要なのです。交通事故後遺症でよく問題となる頸椎捻挫(むち打ち)の場合、レントゲン写真(単純X線像)だけでは、後遺障害が認定されたとしても、最も低い14級9号どまりです。それより高い後遺障害等級の認定を受けるには、頸椎MRIが必須とされています。ただし、MRI検査をすれば、すべての症状の原因や存在を証明できるわけではありません。先に説明したように、MRI検査も万能ではありません。症状や部位によっては、レントゲン写真やCTの撮影の方が望ましい場合も多いので、ご注意ください。大切なのは、その症状の原因や存在を証明できる検査です。まとめMRI撮影をすれば、どんな後遺症でも存在を立証でき、後遺障害が認定されるわけではありません。レントゲン、CT、MRIにはそれぞれ長所・短所がありますから、症状の原因と存在を明らかにするために最適な検査を行うことが必要です。そのことが、適切な後遺障害等級の認定に結びつき、損害賠償額アップにつながります。症状に見合った最適な後遺障害等級の認定を受けるために、どんな検査が必要かは、医師よりも弁護士の専門分野となるので、早い段階で交通事故に詳しい弁護士に相談し、弁護士のサポートを受けながら治療を進めるとよいでしょう。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人ステラ へ弁護士法人ステラは、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績17,000件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。もちろん弁護士保険にも完全対応。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-221-274     ( 24時間・365日受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談予約フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※ 「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集―交通事故編―』第一法規 95ページ・『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 24~27ページ・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 64ページ・北海道大学病院Webサイト https://www2.huhp.hokudai.ac.jp/~houbu-w/x-ray.html・東京大学医学部附属病院予防医学センターWebサイト https://www.todai-yobouigaku-dock.jp/contents/useful/column/2022/07/post-26.html
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  • むち打ち損傷
    むち打ち症(むち打ち損傷)とは?発生メカニズム・症状・分類
    ここでは、むち打ち損傷(むち打ち症)とはどういうものか、むち打ち損傷の発生メカニズムや症状について、詳しく解説します。むち打ち損傷(むち打ち症)とは?まず押さえておきたいのは、むち打ち損傷(むち打ち症)とは、診断名・傷病名でなく、受傷の仕方(受傷機転)を示す用語である、ということです。もともと「むち打ち損傷」とは、頭部への慣性外力による頸部の連続的な過伸展(後屈)と過屈曲(前屈)を伴う「むち打ち運動」のために生じる特殊な損傷を意味しています(『賠償科学概説』民事法研究会 109ページ)。その損傷とは、「骨折や脱臼のない、頸部脊柱の軟部支持組織(靭帯、椎間板、関節包および頸部筋群の筋、筋膜)の損傷」(同前)との説明が一般的ですが、軟部組織が損傷したかどうかさえも明らかでありません。臨床的には、事故で「頸部が振られたことによって生じた頭頸部の衝撃によって、X線写真上、外傷性の異常を伴わない頭頸部症状を引き起こしているもの」(『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 6ページ)、つまり、「骨折や脱臼なく、頭頸部症状を訴えているもの」は、広く「むち打ち損傷」と捉えられています(『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1303ページ)。診断名・傷病名としては、頸椎捻挫、頸部捻挫、頸部挫傷、外傷性頸部症候群、外傷性頭頸部症候群、むち打ち関連障害、むち打ち症候群など様々ですが、いずれも、ほぼ同じ病態を指しています。近時は「外傷性頚部症候群」を用いることが多くなっているようです。外傷性頚部症候群とは、自動車事故などの様々な外力によって発生した多様な頸部愁訴を包含する症候群です(『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1304ページ)。むち打ち症(外傷性頚部症候群)は、自覚症状としては、頸部痛、頭痛、上肢や手指のしびれ、めまい、など多様ですが、他覚所見に乏しいため、保険金・賠償金めあての「詐病」を疑われやすい傷病でもあります。頸部の構造むち打ち損傷の発生メカニズムや症状の説明の前に、頸部の構造を簡単に見ておきましょう。人間の頭頸部は、「重たい頭」が「細い頸(くび)」にのっている状態で、非常に不安定な構造です。頸部に位置する頸椎は7個の椎骨からなり、その周りを筋肉や靭帯などの軟部組織が取り巻いて、「重たい頭」を支え、安定を保っています。むち打ち損傷は、椎骨の骨折を伴う骨傷ではなく、大半は単純な頸部軟部組織の捻挫であり、それほど重篤なものとは把握されていません。頸椎骨は、上から順に、第1頸椎(C1)から第7頸椎(C7)と呼ばれます。椎骨と椎骨は、軟骨組織である椎間板によって連結されており、椎間板は、骨同士の円滑な動きを確保するとともに、衝撃や圧迫を吸収する緩衝材として機能しています。頸椎骨が重なることで椎孔は管状の脊柱管を構成し、その脊柱管の中に脊髄が通っています。頸椎部分では、脊髄から左右8本の神経根が分岐しており、、神経根内には運動神経と知覚神経が併走しています。神経根が圧迫や刺激を受けると、その神経根の支配領域の身体部位に痛みやしびれ等の神経症状が現れます。(参考:『後遺障害入門』青林書院165~166ページ、『標準整形外科学第14版』医学書院505~509ページ)むち打ち損傷の発生メカニズム急激な加速度・減速度が加わると、頸部は「重い頭」をのせたまま前後に揺れ動きます。それは、あたかも鞭を振り上げて強く打ち付けたような動き(むち打ち運動)です。その結果、頸部が受傷します。これが、むち打ち損傷です。『最新医学大辞典 第3版』(医歯薬出版株式会社)では、むち打ち損傷を「過屈曲過伸展損傷」として説明しています。過屈曲過伸展損傷(むち打ち損傷)典型は、自動車事故での後方からの追突にみることができる。この場合、座席に固定されている体幹は、追突により自動車と同じように急速に前へ押し出されるが、細い頸部につながれた頭部は、慣性で後へ取り残され激しく後屈し、ついで反動で前方へ屈曲する。この一連の動きは、鞭の先の動きに似ているので、むち打ち損傷の名で呼ばれることが多かった。受傷外力を正確に説明する意味では、本名称のほうが正確である。(『最新医学大辞典第3版』医歯薬出版株式会社 267ページ)過伸展・過屈曲とは?頸椎の運動には、屈曲(曲げる運動)、伸展(うしろに反らす運動)、側屈(左右に曲げる運動)、回旋(左右を向く運動)の4種類があります。正常な頸椎の運動の範囲は、屈曲:顎が胸の前面に触れるくらいまで伸展:横から見て下顎の源が水平線から30~40度くらい上向きになる程度まで側屈:耳がかろうじて肩に触れるまで回旋:真横を向けるくらいまでといわれます(『むち打ち症教室』(同文書院55ページ)。『標準整形外科学』では、頸部の関節可動域について、次のように記しています。運動方向参考可動域角度屈曲(前屈)60度伸展(後屈)50度回旋左回旋60度右回旋60度側屈左側屈50度右側屈50度(『標準整形外科学第14版』医学書院942ページ)。車両の衝突などの外力により、屈曲・伸展の正常な可動範囲(生理的可動範囲)を超える運動が頸椎に生じると、過屈曲・過伸展となり、損傷が生じるのです。特に問題となるのが、過伸展です。なぜ過伸展の方が問題なのか?頸椎の屈曲(前屈)は、顎が胸に当たるところで一応は止まります。側屈も、頭が肩に当たるところで一応は止まります。頸椎の動きが、この範囲に止まるくらいの外力であれば、正常な頸椎の可動範囲に近いので、あまり重大な傷害は起こりません。もちろん、屈曲・側屈を強制する外力が強い場合は別です。これに対して、過伸展(後屈)を強制された場合は、頸の後方に、頭の動きを止めるものが何もありません。つまり、後頭部が背中にぶつかるまでは、過伸展を強制する力は止まりません。そのため、外力の程度によっては、骨折、さらには脊髄の損傷をともなう重大な結果を招きやすいのです。(参考:河端正也『むち打ち症教室』同文書院 61~62ページ)むち打ち損傷の発生機序それでは、むち打ち損傷の発生機序(発生メカニズム)について見ていきましょう。従来の説明従来、むち打ち損傷については、こう説明されていました。追突を受けると、その衝撃によって、躯幹(からだ)は座席によって前方へ急激に押し出されますが、重い頭は慣性の法則で後方に取り残され、のけぞるように頸部が過伸展状態(後屈)になり、次の瞬間には、その反動で前方に屈曲(前屈)します。続いてまた伸展というように、前後方向の振動が起こります。ちょうど、鞭を強く振った状態です。これが、むち打ち運動です。このときに、頸部の組織が、正常の限界を超えて引き伸ばされたり、部分的な断裂を起こします。また、このような鞭打ち現象が起こっているときに、頸椎は上下に強く圧縮され、椎骨と椎骨が互いに押しつけられるような状態となります。このため、椎骨と椎骨の間にある椎間関節やその他の部分が損傷されたり、ある場合には損傷された靭帯の間を椎間板が突出してヘルニアを起こすことがあります。(参考:『交通事故における むち打ち損傷問題第3版』保険毎日新聞社340ページ、『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 68~69ページ)むち打ち運動が起きなくても「むち打ち症」は生じる?現在は、頸椎の過伸展を抑制するために開発されたヘッドレストレイントがあり、適正な高さのヘッドレストレイントが装着されていれば、単なる追突事故では「むち打ち運動」は生じにくくなっています。ところが、追突事故などで、いわゆる「むち打ち症」の症状を訴える被害者は減っていません。その発症原因としては、頸部の過伸展・過屈曲(むち打ち運動)というよりも、頭部の急激な後屈を止めるために、後頚部の筋群が反射的に過緊張・収縮したり、後頭部や頸部をヘッドレストレイントで打撲したときなどに軽微な筋断裂や小出血が発生することの方が多いと考えられています(『賠償科学概説』民事法研究会109ページ)。また、ボランティアによる実験から、「低速度車両衝突が、頸椎の過伸展・過屈曲を惹起しないことが明らかになり、頸部のむち打ち状態にならなくとも、むち打ち損傷の症状が出現することがある」ということも分かっています(『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版152ページ)。つまり、事故で頭頸部に「むち打ち運動」が起きていなくても、いわゆる「むち打ち症」の症状が発症することがあり得ます。むち打ち損傷の発生メカニズムは、医学的・工学的に明らかとなっているわけではないのです。むち打ち損傷といわれるようになった理由「むち打ち損傷(むち打ち症)」という言葉は、1928年に米国の整形外科医Crowe(クロウ)博士が、交通事故に起因する新たな頚部傷害例の報告として「whiplash injury(むち打ち損傷)」という言葉を使ったのが最初とされています。河端正也医師が『むち打ち症教室』(同文書院、1990年)で、次のように「むち打ち損傷という名のおこり」について紹介しています。むち打ち損傷という名のおこり1928年、サンフランシスコで開催された西部整形外科学会で、当時はまだ新進気鋭の若手整形外科医であったハロルド・ディー・クロウ博士は、治療に苦労している8例の交通事故によるくびの外傷について報告しました。これらの患者さんは、すべて普通の検査では何ら悪いところが発見されないのに、頑固な頭痛や、めまい、はきけ、頸部(くび)の痛みなどが、交通事故、おもに追突されて以来起こっているのでした。彼がこれらの症例を報告しようとした理由は、どうも自分の手には負えないので、多くの整形外科医の意見を聞きたいということだったのです。報告の中で彼は、これらの外傷の起こったメカニズムを説明するつもりで「whiplash injury(むち打ち損傷)」という言葉を使いました。当然のこととして、彼は、この言葉が病気の名前として受け取られるなどとは夢にも考えていませんでしたし、聴衆の整形外科医たちも、そうだったはずだったのです。ところがどうでしょう。この名前は一般の人々、ジャーナリスト、法律家、ひいては医師たちの間ですら、病名として猛威をふるい、以来40年近く数多くの議論と社会問題を巻き起こしながら、日本にもやってきました。(河端正也著『むち打ち症教室』同文書院 17~18ページ)この説明で注目してほしいのは、2つの点です。1つは、むち打ち損傷とは、外傷の発生メカニズムを説明するために用いた言葉であり、傷病名ではないということ。もう1つは、交通事故による頸部傷害例として、いろいろ検査をしても悪いところは発見されない(他覚的所見がない)のに、頑固な頭痛や、めまい、吐き気、頸部の痛みなどが続く症例が、古くからあったということです。ともすると、加害者・保険会社側は、他覚所見のない「むち打ち症」を賠償金や保険金めあての「詐病」や「神経症」などと決めつけがちですが、賠償金や保険金など全く関係のないケースでも、このような症状が長く続く症例は、古くから存在していたのです。では、むち打ち損傷は、どんな症状が出現するのか、詳しく見ていきましょう。むち打ち損傷の症状と分類日本整形外科学会のWebサイトでは、「外傷性頚部症候群」の症状として、「交通事故などで頸部の挫傷(くびの捻挫)の後、長期間にわたって頸部痛、肩こり、頭痛、めまい、手のしびれ、などの症状が出て、X線(レントゲン)検査での骨折や脱臼は認められません」と解説されています。「むち打ち症」については、同サイトで、「いわゆる “むち打ち症” は、追突や衝突などの交通事故によってヘッドレストが整備されていない時代に首がむちのようにしなったために起こった頚部外傷の局所症状の総称」と説明されています。なお、外傷性頚部症候群は、頸部が鞭のようにしならない(すなわち「むち打ち運動」が生じない)、軽微な外傷による病変も含まれます(『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1341ページ)。したがって、正しくは、外傷性頚部症候群の症状・分類として説明すべきところですが、追突事故などによる頸部の外傷を(むち打ち運動の有無にかかわらず)、いまも一般に「むち打ち症」と呼ばれているため、ここでは、むち打ち損傷の症状・分類として説明します。むち打ち損傷の症状むち打ち損傷による症状の多くは、頸部痛や頭痛です。しかし、むち打ち損傷で生じる症状は、頸(くび)の痛みや頭痛だけではありません。むち打ち損傷による症状は多彩です。事故態様(衝突方向や速度、事故予測の有無、ヘッドレストの位置など)や、被害者の姿勢・頸椎の状態(頸椎症性変化・椎間板膨隆などの有無)など、多くの因子によって傷害発生部位は変化し、症状も異なります。受傷直後、急性期、慢性期、それぞれの症状の特徴を見ていきましょう。受傷直後~急性期むち打ち損傷による症状は、事故直後には痛み等の自覚症状がなく、事故の数時間後、あるいは、事故の翌朝に症状が現われることが多いようです。もっとも、いつ症状が出現するかは一概に言えず、事故から2~3日後に出現することもあれば、もう少し後になって出現することもあります。事故直後もちろん、事故直後から症状が出現することもあります。軽い脳震盪や頸部軟部組織損傷を原因とし、頭がボーッとした状態になったり、項部痛・圧迫感・緊張感、吐き気、意識混濁、頭痛、上肢のしびれ感・脱力感などを感じることがあります。これらの症状は、重症例を除き、大部分のものは数時間以内に消失するといわれています。急性期・初発症状(受傷後数時間~1週間)急性期・初発症状(受傷後数時間~1週間)の自覚症状としては、頸椎支持組織の損傷を原因とし、頸部痛・圧迫感・緊張感、頭痛・頭重感、頸椎運動制限、肩こり、吐き気、上肢のしびれ感、腰痛などがあります。他覚所見としては、頸椎運動制限、項頸部筋の圧痛などが見られます。急性期・後発症状(受傷後2~4週間以後)急性期・後発症状(受傷後2~4週間以後)の自覚症状としては、頭痛、めまい、悪心、耳・眼症状、上肢放散痛などがあります。バレー・リュー症状が出現します。バレー・リュー症状とは、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、視力低下、聴力低下などの自律神経症状を呈するものです。むち打ち損傷では、自律神経症状を併発する場合があります。他覚所見としては、知覚障害や神経根症状などの神経学的陽性所見の増加、椎間板損傷によるX線検査上の椎間腔狭小化や変形性頸椎症所見の出現が見られます。(参考:『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規302ページ、『賠償科学概説』民事法研究会114ページ)慢性期慢性期における症状としては、頸部痛、頭痛、めまい、頭部・顔面領域のしびれ、眼症状、耳鳴り・難聴、吐き気・嘔吐、四肢症状、腰痛、バレー・リュー症候群による脳幹・自律神経症状があります。そのほか、不眠、集中力低下、易疲労感、微熱感、記銘力低下なども報告されています。これらの症状は不定愁訴と捉えられがちですが、軽微な脳損傷が発生している可能性も指摘されています。むち打ち損傷は、軽傷の部類に入るため軽視されがちなところがありますが、くびの痛みだけでなく、自律神経症状や認知機能障害、神経疾患まで幅広く合併する可能性がありますから、注意が必要です。(参考:『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 49~59ページ、『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル122~125ページ)なぜ、事故直後は痛みを感じず、あとから痛みを感じるのか?一般的には、「事故直後は、精神的に緊張状態にあり、肉体的にも、損傷を受けた頸(くび)の周囲の筋肉が自動的に緊張して副木をあてたような状態にあるのが、落ち着いてくると、事故のことよりも怪我のことを考える余裕が出てくることによる」と考えられています(河端正也著『むち打ち症教室』同文書院 71ページ)。事故によって器質的な損傷が生じていないにもかかわらず、数時間後に頸部痛が発生し、症状が遷延化するメカニズムとして、頸椎椎間関節内に介在する滑膜組織が、追突による衝撃によって損傷し、数時間後に滑膜炎が惹起され、疼痛・可動域制限を生じる、とする説があります(『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版44ページ)。むち打ち症の平均的な治療期間と保険会社の治療費打ち切りの判断基準むち打ち損傷の分類臨床的には、「むち打ち損傷の診断をするときは、むち打ち損傷によって何が生じているかを考えることが重要」とされます(『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 6ページ)。むち打ち損傷によって生じる傷病には、いくつかの分類方法があります。土屋分類日本で代表的な分類は「土屋分類」です。「土屋分類」によれば、むち打ち損傷は、次のような5類型に分類されます。頸椎捻挫型頸椎捻挫型は、頸部の筋の過度の伸長ないし部分断裂の状態で、頸部周囲の運動制限、運動痛が主症状です。神経症状は認められません。予後良好で、大部分がこのタイプです。根症状型根症状型は、頸神経の神経根の症状が明らかで、頸椎捻挫型に加え、知覚障害、放散痛、反射異常、筋力低下などの神経症状をともないます。バレー・リュー症候群型バレー・リュー症候群型は、自律神経症状や脳幹症状が出現し、頭痛、めまい、耳鳴、眼の疲労、悪心をともないます。神経根、バレー・リュー症状混合型根症状型の症状に加えて、バレー・リュー症状がみられるものです。脊髄症状型脊髄症状型は、深部腱反射の亢進、病的反射の出現などの脊髄症状をともなうものです。この型は、現在ではむち打ち損傷の範疇に含まれず、非骨傷性の頚髄損傷とされるのが一般的です。※ バレー・リュー症候群は、「椎骨神経(頸部交感神経)の刺激状態によって生じ、頭痛、めまい、耳鳴、視障害、嗄声、首の違和感、摩擦音、悪心、易疲労感、血圧低下などの自覚症状を主体とするもの」と定義されています。しかし、その発生原因に関して、定説は確立されていません。ただし、これらの分類は、臨床症状で明確に分類することが難しく、分類別の治療法も確立していません。また、近年は、これらの分類に加え、外傷性胸郭出口症候群、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の病態を呈するむち打ち損傷が存在することが報告されています。(参考:土屋分類については『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 6~8ページ)ケベック分類海外では、1995年に発表されたケベック報告による分類(ケベック分類)が普及しています。むち打ち症関連障害(WAD)を症状・重症度により、5段階のグレードに分類したものです。ケベック報告とは、カナダのケベック州自動車保険協会の要請のもとに組織された「ケベックむち打ち症関連障害特別調査団」が、むち打ち症関連障害(WAD)の種々の問題について科学的解析を行い、まとめた報告書です。この報告書にある「むち打ち症関連障害の重症度分類」が、いわゆる「ケベック分類」と呼ばれるものです。頸部愁訴、理学神経学的所見、脊椎の骨折・脱臼の有無からなされた分類です。ケベック分類(WADの重症度分類)grade臨床所見0頸部の愁訴なし、理学的異常所見なしⅠ頸部の愁訴(痛み、こわばり、圧痛)のみ、理学的異常所見なしⅡ頸部の愁訴と、骨・筋肉症状の存在(関節可動域の低下、圧痛点など)Ⅲ頸部の愁訴と、神経学的所見の存在(深部腱反射の低下・消失、筋力低下、感覚障害など)Ⅳ頸部の愁訴と、骨折または脱臼*難聴、めまい、耳鳴り、頭痛、記憶喪失、嚥下障害、顎関節痛などの症状は、どのグレードにも出現し得るとされています。*6ヵ月以上症状を示している場合を慢性化と定義。。(参考:『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 8ページ、『交通事故における むち打ち損傷問題第3版』保険毎日新聞社18ページ、『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1304ページ)ケベック分類の「grade0」~「gradeⅡ」が、いわゆる「むち打ち損傷」と認識され、「gradeⅢ」「gradeⅣ」は、外傷性頸髄損傷として分類されます。(『臨床整形外科2023 Vol.58 №11』医学書院 1341~1342ページ)むち打ち損傷で後遺症が問題となるケースむち打ち損傷は、ほとんどの場合、後遺障害を残さずに治癒するとされていますが、事故により受傷した後に、椎間板損傷、神経根症状、バレー・リュー症状、脊髄症状が出現した場合には、その症状が後遺する可能性があるといわれています(『賠償科学概説』民事法研究会 116ページ)。根症状型は、神経根への刺激や圧迫によって、頸部筋、項部筋、肩胛部筋などへの圧痛、頸椎運動制限、運動痛、末梢神経分布に一致した知覚症状、放散痛、反射異常、筋力低下などがみられます。これらの症状の発生原因が他覚所見によって認められれば、後遺障害の等級認定がなされる可能性があります(『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 303ページ)。バレー・リュー症状型は、その発生原因について定説は確立されておらず、現在においても病態の詳細は不明です。そのため、バレー・リュー症状を他覚的所見によって説明・証明することは難しいとされています(『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 304ページ)。まとめむち打ち症(むち打ち損傷)は、大半は単純な頸部軟部組織の捻挫で、それほど重篤なものとは捉えられていません。しかし、むち打ち症の発症メカニズムは、いまだ明らかでありません。他覚的所見に乏しく、自覚症状のみのケースがほとんどなので、治療の必要性、症状固定時期や後遺障害の有無をめぐって争いになることが少なくありません。適正な損害賠償を受けるには、治療の段階から早めに、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人ステラ へ弁護士法人ステラは、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績17,000件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。もちろん弁護士保険にも完全対応。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-221-274     ( 24時間・365日受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談予約フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※ 「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 6~9ページ、49~59ページ・『補訂版 交通事故事件処理マニュアル』新日本法規 49~51ページ・『後遺障害入門 認定から訴訟まで』青林書院 164~169ページ・『弁護士のための後遺障害の実務』学陽書房 16~23ページ・『交通事故診療のピットフォール』日経メディカル 122~125ページ・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集―交通事故編―』第一法規 97~98ページ、239~240ページ・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社 26~35ページ、46~62ページ、127~128ページ・『三訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 176~181ページ・『交通事故医療法入門』勁草書房 105~132ページ・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 300~304ページ・『交通事故における むち打ち損傷問題 第3版』保険毎日新聞社 11~28ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 132ページ・『賠償科学概説』民事法研究会 108~123ページ
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  • 他覚的所見
    他覚的所見(医学的他覚所見)とは?狭義の他覚所見、広義の他覚所見
    保険会社は、他覚的所見のない ”むち打ち症” を、「詐病」や「賠償性神経症」などと決めつけ、受傷を否認し、治療費の支払いを拒否する傾向があります。人身傷害保険では、保険約款において、医学的他覚所見のない場合は、保険金の支払い対象から除外しています。医学的他覚所見(他覚的所見)とは何か、見ていきましょう。他覚所見(他覚的所見)とは?他覚所見とは、「他者が確認できる、当該患者の身体の変化や異常」または「これに関する医師の意見・判断」をいいます(東京弁護士会親和全期会編著『交通事故事件の実務用語辞典』第一法規 99~100ページ)。「医学的他覚所見」あるいは「他覚的所見」ともいわれます。他覚所見(他覚的所見)に対する語は、自覚症状(自覚的症状)です。自覚症状患者自身が感じ訴える症状のこと。例えば、痛み・しびれ・めまい・吐き気・耳鳴など。他覚所見患者の訴えのあるなしに関わらず、第三者にはっきり分かるもの。例えば、出血・皮下出血・腫れ・発赤・局所熱感(他人が触って感じる)・変形など。検査所見(検査によって確認される所見)も含まれます。「他覚所見」は「他覚症状」ともいわれる他覚所見(他覚的所見)は、他覚症状(他覚的症状)といわれることもあります。【他覚症状】医師など観察者が明白に認識できた症状や異常な徴候または他覚的所見をいう。これらのうち、医師が理学的検査によって見出した所見を理学的所見という。自覚症状との関係は時にあいまいなこともあって、時には症状とか徴候という名称で漠然とよばれることもある。(『最新医学大辞典』医歯薬出版)他覚的症状とは、患者の訴えのあるなしにかかわらず、第三者にはっきりとわかるもので、たとえば、皮膚の着色や局所の熱感、触れて分かる雑音や、レントゲン検査、血液検査の結果などです。患者さんが無意識の状態にあっても、医師は他覚的症状から診断をつけることができます。どんな病気でもこれら自覚的症状と他覚的症状が入りまじって、全体としてのすがたをかたちづくっているのです。(河端正也『むち打ち症教室』同文書院69ページ)「他覚所見」と「他覚症状」の違いとは?症状と所見について、次のような指摘があります。一般人に限らず保険業界でも、時には医師でさえ、「症状(自覚的訴え)」と「所見(徴候)」を混同している人を見受けます。英語では、symptom(症状)とsign(所見・徴候)といったようにしっかり区別されています。簡単にいうと、痛みやしびれ、だるさ、凝りなどは「(自覚)症状」であり、腫れや皮下出血、発赤、局所熱感(自分で感じるのではなく他人が触って感じる)、変形、筋委縮、さらに広義には検査所見などが「(他覚)所見」ということになります。(井上久『医療審査「覚書」』自動車保険ジャーナル80ページ)「他覚症状」という用語について、次のような指摘があります。「他覚症状」というのは法律の用語になっているものの、一般には理解し難い用語です。「他の人が感じる症状」というものはありませんので、おそらく他覚所見あるいは理学的所見のことと思われます。一度決定された法律用語ですのでこれまで修正されてきていませんが、「他覚症状」という言葉は医学的にみておかしいのではないかと思われます。いつか法律が変わる時に修正されるべき言葉ともいえますが、これまであまり指摘されていません。(丸の内クリニック石川隆院長 Credentials 2014年9月号 16~17ページ)「他覚症状」は、労働安全衛生法にもとづく健康診断項目に出てきます。労働安全衛生規則は、「雇入時の健康診断」および「定期健康診断」の項目として11項目を事業者に義務付け、その中に「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」という項目があります(労働安全衛生規則43条2号、44条1項2号)。「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」が、2016年に6回にわたって開催され、報告書を取りまとめています(2016年12月28日)。検討会において、「他覚だと所見ではないか」という意見もあり、「他覚症状」の名称を「他覚所見」に見直すなどの検討を行う旨が報告書に明記されました。保険会社のいう「医学的他覚所見」とは?次に、保険会社のいう「医学的他覚的所見」はどういうものなのか、一般的に他覚所見といわれるものとどう違うのか、見ていきましょう。自動車保険標準約款では、「医学的他覚所見」を次のように定義しています(『自動車保険の解説2023』保険毎日新聞社88ページ)。医学的他覚所見理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査等により認められる異常所見をいいます。この「医学的他覚所見」の定義規定について、自動車保険の逐条解説では、「理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査などの医学的手段により、症状の存在を認める、医師などの第三者による判断・意見をいう」と解説しています(『自動車保険の解説2023』保険毎日新聞社90ページ)。つまり、保険会社のいう「医学的他覚所見」とは、「医学的検査により、症状の存在を認める医師の意見」であり、「症状を裏付ける客観的根拠」という意味で用いられます。保険約款で「医学的他覚所見」に関する規定が出てくるのは人身傷害条項(人身傷害保険)においてですが、対人賠償責任保険においても、医学的他覚所見についての捉え方は基本的に同じです。他覚的所見のないむち打ち症について、保険会社が、受傷を否認して治療費の支払いを拒否したり、後遺障害を否定したりして、よくトラブルとなります。医学的他覚所見がなければ保険金は支払われない?人身傷害保険は、保険約款における「傷害」や「後遺障害」の用語の定義規定において、「被保険者が症状を訴えている場合であっても、それを裏付けるに足る医学的他覚所見のないものを含みません」と明記しています。つまり、たとえ被保険者が症状を訴えていても、その症状を客観的に裏付ける医学的他覚所見がなければ、人身傷害保険金の支払い対象の傷害に該当しない、後遺障害の認定対象としない、ということです。こうした規定について、次のように解説されています(『自動車保険の解説2023』保険毎日新聞社100ページ)。「被保険者が症状を訴えている場合であっても、それを裏付けるに足る医学的他覚所見のないもの」とは、患者が自覚症状を訴えている場合であっても、医学的な立場から見ると他覚所見のないものをいい、たとえば、ムチ打ち症や腰痛などで、他覚所見がないものはこれにあたる。これらを保険金支払いの対象外としたのは、モラルリスクが混入することを排除するためである。理学的検査・神経学的検査・臨床検査・画像検査とは?理学的検査・神経学的検査・臨床検査・画像検査について、保険約款に特段規定はありませんが、臨床医学的には次のようなものが挙げられます。理学的検査視診、打診、聴診、触診など臨床検査血液検査、脳波・心電図の測定検査など神経学的検査深部反射検査、神経根症状誘発検査、徒手筋力検査など画像検査XP、CT、MRIなどなお、これらの検査所見には客観性に差があり、保険会社は、画像検査による所見のように、異常所見が客観的に明らかであるものは他覚的所見として認めますが、被害者(患者)の主観の入る余地のある検査所見は、他覚的所見として認めることに否定的です。保険会社は、医学的他覚所見を「理学的検査、神経学的検査、臨床検査、画像検査等により認められる異常所見」と約款上規定していますが、これらの検査所見のすべてを医学的他覚所見として認めるわけでなく、実際には非常に狭く捉えています。この点について、東京三弁護士会等も厳しく指摘しています。狭義の他覚所見、広義の他覚所見東京三弁護士会の論文「むち打ち症に関する医学・工学鑑定の諸問題」や、北河隆之弁護士の「『頸部外傷性症候群』再論」において、次のような指摘があります。要旨を記しておきます。単純レ線所見、ミエログラフィ(脊髄造影)、ディスコグラフィ(椎間板造影)、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴診断装置)などによる所見(いわゆる画像診断)が、他覚的所見にあたることに[賠償医学者も(=引用者)]異論がない。これを「狭義の他覚的所見」と呼ぶ。画像診断の他に、四肢反射検査や筋電図検査なども「狭義の他覚所見」に含まれる。臨床医学的には、このほかに、聴診・打診・触診・視診、あるいは角度を測るなど、機械を使わない理学的検査方法による所見(いわゆる理学的所見)も、他覚的所見と考えられている。これと狭義の他覚的所見を合わせて、「広義の他覚的所見」と呼ぶ。むち打ち症については、圧痛、知覚鈍麻、握力低下、スパーリングテスト・ジャクソンテストの陽性所見などは、「広義の他覚的所見」といえる。しかし、賠償医学者の多く(すなわち法医学鑑定の多く)は、これらは反応を教えてくれるのが患者自身であるから「他覚的所見」とはいえないとされており、特に、加害者=保険会社側においては、レ線上異常所見が見られないと「他覚的所見」がないという認識が強いといわれる。論者により、想定している「他覚的所見」の意味がやや異なっているかもしれないが、概ね「狭義の他覚的所見」が念頭におかれていると考えて大過ないであろう。・北河隆之「『頸部外傷性症候群』再論―第63回日本整形外科学会学術集会のパネルディスカッションを終えて」日本交通法学会編『人身賠償・補償研究第2巻』判例タイムズ社184~185ページ・東京三弁護士会交通事故処理委員会むち打ち症特別研究部会「むち打ち症に関する医学・工学鑑定の諸問題」判例タイムズ№737 18ページ保険会社が「医学的他覚所見」として認める検査・認めない検査医学的他覚所見の有無が問題となりやすいのは、外傷性頚部症候群(いわゆる「むち打ち症」)です。そこで、むち打ち症の場合に、保険会社が「医学的他覚所見」として認める検査・認めない検査について、具体的に見ていきましょう。むち打ち症の根拠となるのは、おもに画像所見と神経学的検査所見です。次のような検査方法があります。おもなものを挙げておきます。画像検査レントゲン検査レントゲン検査は、X線による撮像により、骨傷の有無、脊柱管のずれ、頸椎骨の並び方や曲がり方、骨棘等による神経根の圧迫の有無や程度などを診断しようとするものです。レントゲン検査には、単純撮影と造影剤を用いる椎間板造影(ディスコグラフィー)、脊髄造影(ミエログラフィ―)がありますが、造影検査は、造影剤を注入しなければならず侵襲的であるため、MRIの普及により施行頻度は減少しているようです。CT(コンピューター断層撮影)CT検査は、コンピューターにより断層撮影を行うレントゲン検査です。骨病変の描出に優れ、後縦靭帯骨化症など靭帯骨化症の診断に有用とされています。単純CTと脊髄造影後に行うCTM(CTミエログラフィ―)があり、CTMは、脊髄や神経根の観察も可能となります。MRI(核磁気共鳴画像撮影法)MRI検査は、時期と電波による核磁気共鳴現象により体内を撮影し画像化します。X線被曝はありません。MRIは、組織分解能が高いので、脊髄、靭帯、椎間板、神経根などの頸椎を支持する軟部組織の描出に有効であるとされ、神経組織の圧迫や椎間板ヘルニアの有無等の確認に有用といわれています。MRIとCTの違いについて詳しくはこちらをご覧ください。神経学的検査深部腱反射検査深部腱反射検査は、腱を打診することによって生じる反射を確認する検査です。腱反射は、末梢神経障害により減弱、消失することから、腱反射の異常を見ることにより、末梢神経の障害の有無等を確認しようとするものです。筋電図検査筋電図検査は、針電極を用いて運動単位の状態を調べる検査です。筋肉に針電極を刺し、筋肉が活動する際に発する電気信号の状態を確認するものです。徒手筋力検査(MMT)徒手筋力検査は、筋力の低下の有無や度合いを、徒手的に(つまり検者の手を使って)評価する確認する検査です。神経が障害された部位がある場合、神経障害部位に応じて筋力の低下がみられる部位が異なることから、筋力の低下の部分や度合いを検査することにより、末梢神経の障害の有無や部位等を確認しようとするものです。例えば、うつ伏せの状態で、医師が頭部を押さえつけ、患者がそれに対抗し、その反応を見たり、圧迫せずに患者の反応だけを観察して、頭部の活動状況を、0(活動なし)から5(正常)までの6段階で評価し、頸部の筋力を判断します。感覚検査感覚検査は、皮膚の触覚や痛覚の検査です。神経の障害部位に応じて、皮膚の感覚鈍麻や感覚消失のみられる部位が異なることから、皮膚の感覚障害を検査することにより、神経の障害の有無や部位等を確認しようとするものです。神経根症状誘発検査(スパーリングテスト・ジャクソンテスト)神経根症状誘発検査は、脊髄から分かれて上肢へ行く神経根の異常を調べるため、神経根に圧迫を加え、神経根の支配領域に疼痛・しびれ等の神経根症状が生じるかを確認する検査です。スパーリングテストは、痛みのある側(患側)に頭と頸を傾けさせ、やや後屈位で頭頂から軽い圧迫を加えます。ジャクソンテストは、頭部を背屈させ、頭部を軽く下方へ押さえます。いずれも圧迫を加えることにより椎間孔が狭められるので、そこを通る神経根に障害がある場合、その神経根の支配領域に疼痛・しびれ感が放散します。通常、これらはセットで実施され、上肢における痛みを誘発・増強すれば陽性として、神経根の異常(神経根症)が疑われます。放散痛を生じた部位により、障害根の高位を推測することができます。患者の意思に左右される検査は客観性が低いこれらの検査法は、大きく2つに分かれます。患者の意思と全く無関係に結果の得られる検査法患者の応答と協力が不可欠な検査法いうまでもなく、①の検査所見の方が、②の検査所見よりも「客観性が高い」と評価されます。すなわち、レントゲン撮像やMRI等の画像所見、および神経学的検査の中でも深部腱反射検査や筋電図検査などは、患者の意思が介在する余地がないので、症状を裏付ける客観的根拠となり得ます。一方、スパーリングテストやジャクソンテスト等の神経学的検査は、医師が患者の身体に軽い圧迫を加え、その際に痛みが生じるか否かを検査するもので、痛みが生じるかについては、結局は患者の申告によります。徒手筋力検査も同様で、患者の意思が介在する余地があります。そのため、この種の検査所見は、純粋な客観的所見とは評価されず、この検査所見だけでは、保険会社は医学的他覚所見として認めないのが普通です。なお、画像所見が「医学的他覚所見」として認められたとしても、後遺障害の認定に際し、画像所見上で確認される状態(たとえば頸椎の狭小化やヘルニア症状など)について、事故との相当因果関係や症状との関係性が問題とされることも多く、事故により生じたものであること、および被害者の症状の要因となっていることにつき、証明・説明する必要があります。まとめ他覚所見には、画像所見だけでなく、理学的検査や神経学的検査等の所見も含みます。他覚所見を症状を裏付ける客観的根拠として保険会社側に認めさせるには、他覚所見と自覚症状とが整合的であることが重要です。むち打ち症の後遺障害12級13号・14級9号の認定基準と認定獲得のポイント交通事故で「むち打ち症」となり、他覚所見がなく、「保険会社が治療費の支払いを拒否する」あるいは「後遺障害の認定を受けられない」などでお困りのときは、交通事故に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人ステラ へ弁護士法人ステラは、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績17,000件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。もちろん弁護士保険にも完全対応。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-221-274     ( 24時間・365日受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談予約フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※ 「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『後遺障害の認定と意義申立―むち打ち損傷事案を中心として―』保険毎日新聞社 5~9ページ、27~34ページ、44~54ページ・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規 287~300ページ・『交通事故における むち打ち損傷問題 第3版』保険毎日新聞社 196~201ページ・『後遺障害入門』青林書院 169~176ページ・『むち打ち症教室』同文書院 68~73ページ・『むち打ち損傷ハンドブック第3版』丸善出版 99~109ページ・『交通事故医療法入門』勁草書房 135~140ページ・『実例と経験談から学ぶ資料・証拠の調査と収集―交通事故編―』第一法規 241~242ページ・『弁護士のための後遺障害の実務』学陽書房 25~28ページ・東京三弁護士会交通事故処理委員会むち打ち症特別研究部会「むち打ち症に関する医学・工学鑑定の諸問題」判例タイムズ№737 4~26ページ・北河隆之「『頚部外傷性症候群』再論―第63回日本整形外科学会学術集会のパネルディスカッションを終えて」日本交通法学会編『人身賠償・補償研究第2巻』判例タイムズ社 180~201ページ・『自動車保険の解説2023』保険毎日新聞社 88~90ページ、96~100ページ・『交通事故事件の実務用語辞典』第一法規 99~100ページ
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