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  • 健保一括とは
    健保一括とは?自賠一括・対人一括・人傷一括との違いと注意点
    人身事故の場合は、任意保険会社が、自賠責保険分を含め、保険金(損害賠償額)を一括払いするのが一般的です。任意保険会社による一括払いには、「対人一括」「人傷一括」「健保一括」の3つの一括払いがあります。この3つの一括払いの違いと、一括払いを利用するときの注意点を解説します。特に「健保一括払い」は、病院側とトラブルになりやすいので注意が必要です。任意・自賠一括(任意保険・自賠責保険の一括払い)「一括払い」とは、自賠責保険と任意保険の両方に請求しなくても、任意保険会社が自賠責保険分を含めて一括で支払う方式のことです。自賠一括とか任意一括、あるいは任意・自賠一括などと呼ばれます。任意・自賠一括払いには、相手方の任意保険会社による「対人一括払い」と、被害者の加入する人身傷害保険による「人傷一括払い」があります。保険会社による病院への治療費の支払いも、一括払いと呼ばれます。任意保険会社が、自賠責保険による支払分を含めて、病院に治療費を支払います。任意・自賠一括払いであれば、被害者は、通院のたびに、病院の窓口で治療費を支払う手間も経済的負担もかかりません。そのため、治療費の一括払いには、「治療費を通院のたびに支払わず、まとめて一括で支払う」というニュアンスが含まれていますが、本来の意味での一括払いは、任意保険会社が自賠責保険分を含めて一括で支払うことです。病院への治療費の一括払いについては、自由診療で治療する場合は問題ないのですが、健康保険を使用して治療する場合の一部負担金の一括払いは「健保一括払い」と呼ばれ、病院側とトラブルになることがありますから注意が必要です。それでは、「対人一括払い」「人傷一括払い」「健保一括払い」の3つの一括払いについて、詳しく見ていきましょう。対人一括払い「対人一括払い」は、対人賠償責任保険と自賠責保険の一括払いです。自動車の運行によって他人を死傷させたときの人身損害に対する賠償は、強制保険である自賠責保険と、その上積み保険である対人賠償責任保険(任意保険)によって補償する仕組みです。「対人一括払い」とは、対人賠償責任保険を引き受けている任意保険会社が、自賠責保険分と対人賠償保険分を一括で被害者に支払う方式のことです。治療費については、保険会社が直接医療機関に支払います。通常「一括払い」といえば、この対人賠償の一括払いです。「対人一括払い」のほか、「任意一括払い」「自賠責一括払い」「対人任意一括払い」とも呼ばれます。被害者が、相手方の任意保険会社に同意書を提出することで、保険会社による一括対応が可能となります。任意保険会社は、立て替えた自賠責保険金分を、あとで加害者の代わりに自賠責保険に加害者請求(自賠法15条)します。本来、対人賠償責任保険の保険金請求は、加害者(被保険者)が、被害者に賠償金を支払った後で、自賠責保険と任意保険に対し、それぞれ別々に保険金を請求するものです。しかし、それでは、保険金請求の手間がかかります。何より、加害者が賠償金を支払わないと保険金の請求ができないとなると、加害者に賠償資力がなければ、被害者は損害賠償を受けられません。そこで、被害者の早期救済と、被保険者の保険金請求の手間を省くため、任意保険会社が加害者の代わりに示談代行し、自賠責保険分を含めて一括対応する仕組みにしているのです。「任意・自賠一括払い制度」について詳しくはこちら人傷一括払い「人傷一括払い」とは、人身傷害保険と自賠責保険の一括払いです。被害者が、加害者への損害賠償請求より先に、自分の人身傷害保険に保険金請求を行った場合、人身傷害保険会社(人身傷害保険を引き受けている任意保険会社)が、加害者の加入する自賠責保険から支払われる自賠責保険金分を含めて、人身傷害保険金を支払います。人身傷害保険会社は、立て替えた自賠責保険金分を、あとで自賠責保険に請求します。これは、対人賠償保険会社の請求(自賠法15条)と異なり、被害者請求権(自賠法16条)の代位取得によるものです。「人傷一括払い」の場合も、被害者が、人身傷害保険会社による治療費の一括払いに同意していれば、治療費を保険会社から病院に直接支払ってもらうことができます。ただし、人身傷害保険を使用して、治療費を一括払いするときは、次の点に注意が必要です。治療費の人傷一括払いの注意点人身傷害保険を利用する場合、保険会社から、健康保険など公的制度の利用を求められます。人身傷害保険の約款に、「傷害の治療を受けるに際しては、公的制度の利用等により費用の軽減に努めること」という規定があるからです。これは、被保険者の損害拡大防止義務(保険法13条)の具体化です。保険法13条(損害の発生及び拡大の防止)保険契約者及び被保険者は、保険事故が発生したことを知ったときは、これによる損害の発生及び拡大の防止に努めなければならない。人身傷害保険は、被害者の加入する保険ですから、被害者が被保険者です。被害者は、傷害保険の被保険者として、健康保険等を使い、治療費の軽減に努めなければならない、ということです。問題は、健康保険を使用して治療を受ける場合、病院側から、任意保険会社による一括払いを断られる場合があることです。健康保険を使用して一括払いとすること(健保使用一括払い)は、あとで説明するように法律に違反すると病院側が考えるからです。なので、人身傷害保険を使用する場合は、健康保険を使って治療を受けるのであれば、一部負担金は、被害者自身が立て替えて病院の窓口で支払い、あとで人身傷害保険に請求する。治療費を保険会社から病院に直接支払ってもらう(すなわち「人傷一括払い」とする)のであれば、健康保険を使わず自由診療で治療を受ける。とするのが無難です。なお、人身傷害保険の約款の規定については、医師会と損保会社との間で、「公的保険の使用を強要するものではない」とする申し合わせがあります。健康保険の使用が強制されるものではなく、自由診療で治療を受けることも認められます。このことについて、日本医師会の労災・自賠責委員会が次のような指摘をしています。日本医師会 労災・自賠責委員会答申(平成24年2月)人身傷害補償保険は、平成10年に東京海上火災保険株式会社(当時)により開始された自動車保険(任意保険)の1つで、①被害者自身の損害の補償が受けられる、②被害者の過失分の保障が受けられる、③加害者の過失分の立替払いが受けられるといった特徴があり、現在、各損保会社は一般ユーザー向けの自動車保険(任意保険)に組み込んでいるのが一般的となっている。問題は、この人身傷害補償保険の約款に「傷害の治療を受けるに際しては、公的制度の利用等により費用の軽減に努めること。」といった規程があるため、各損保会社はこの保険を使用するにあたり、被害者に対しほぼ例外なく健康保険の使用を促してくるのである。しかしながら、平成11年、日本医師会は東京海上火災保険株式会社(当時)との間で、公的保険の使用を強要するものではないことを確認し、自賠責保険に関わる案件については従来と同様の取扱いとする等の文書を交わし、その後、大手損保各社もこれに倣った取扱いとされている。こうした申し合わせについて周知徹底されておらず、時間の経過とともに忘れられている傾向がある。健保一括払い「健保一括払い」とは、健康保険等を使って治療を受ける場合に、被害者が病院の窓口で支払う一部負担金を、任意保険会社が一括払いすることです。「健保使用一括払い」ともいいます。任意保険会社にとっては、健康保険診療になれば診療単価が低いので、自由診療の場合より、治療費の支払いを抑えることができます。被害者にとっても、保険会社が治療費を一括払いしてくれたら、通院のたびに一部負担金を病院に支払う手間や経済的な負担がなくなるメリットがあります。そのため、保険会社は、交通事故の被害者に健康保険の使用を誘導する手段として、「健保一括払い」を持ち掛けます。しかし、これが病院側とのトラブルとなります。健康保険や国民健康保険を使用して治療を受ける場合は、診療の都度、被保険者は病院の窓口で一部負担金を支払い、病院側も一部負担金の支払いを受けることが、法律で義務づけられています(健康保険法74条、国民健康保険法42条)。「健保一括払い」は、法律のこの規定に違反するとして、病院側は「健保一括払い」を拒否するのです。「健保一括払い」は、病院側とトラブルになることが多いので、保険会社から提案があったときは要注意です。健康保険を使用するときは、「健保一括払い」とせずに、診療の都度、被害者が一部負担金を立て替えて支払い、任意保険会社(対人賠償保険会社・人身傷害保険会社)に立替金の支払いを求める方式とするのが無難です。「健保一括払い」は本当に違法?病院側は「健保一括払い」は違法だと主張するのですが、本当に健康保険法や国民健康保険法の一部負担金の規定に違反するのかは、疑問があります。詳しくは、次のページをご覧ください。健康保険の一部負担金を「一括払い」とするのは本当に違法?まとめ「一括払い」とは、任意保険会社が、自賠責保険部分を含めて一括で支払うことをいいます。対人賠償責任保険における「対人一括払い」と、人身傷害保険における「人傷一括払い」があります。被害者の治療費を、任意保険会社が、自賠責保険部分を含めて、病院に直接支払うことも「一括払い」といいます。健康保険を使用して治療する際、保険会社が治療費を一括払いすることを「健保使用一括払い」あるいは「健保一括払い」といいますが、これは法律に違反するとして病院側が拒否します。保険会社から提案されても、避けるのが賢明です。治療費の一括払いは、被害者が治療費を支払わなくてもよい、というメリットがある反面、保険会社からいつ治療費を打ち切られるか分からない、といったデメリットがあります。一括払いのメリット・デメリットについてはこちらをご覧ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故実務入門』司法協会 74~77ページ・『Q&Aハンドブック交通事故診療 全訂新版』創耕舎111~125ページ、142~143ページ
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  • 健保一括は違法?
    健康保険の一部負担金の一括払い(健保一括)は本当に違法?
    交通事故の治療に健康保険や国民健康保険を使用するときは、診療のたびに窓口で一部負担金(自己負担分)を支払わなければなりません。この一部負担金を任意保険会社による一括払いにすることは、「健保使用一括払い」または「健保一括払い」と呼ばれ、病院側から断られます。一部負担金についての健康保険法や国民健康保険法の規定に違反するから、というのが理由です。「健保使用一括払い」は、本当にできないのでしょうか?一部負担金に関する法律の規定は?まず、一部負担金について、法律でどのように規定されているか、見ておきましょう。健康保険法74条と国民健康保険法42条で、次のように定められています。被保険者は、「療養の給付を受ける際」に、一部負担金を保険医療機関等へ支払わなければならない。保険医療機関等は、一部負担金の支払いを受けるべきものとする。該当する条文を抜粋しておきます。健康保険法74条(一部負担金)第1項 第63条第3項の規定により保険医療機関又は保険薬局から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該給付につき第76条第2項又は第3項の規定により算定した額に当該各号に定める割合を乗じて得た額を、一部負担金として、当該保険医療機関又は保険薬局に支払わなければならない。(以下、略)第2項 保険医療機関又は保険薬局は、前項の一部負担金の支払を受けるべきものとし…。国民健康保険法42条(療養の給付を受ける場合の一部負担金)第1項 第36条第3項の規定により保険医療機関等について療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、次の各号の区分に従い、当該給付につき第45条第2項又は第3項の規定により算定した額に当該各号に掲げる割合を乗じて得た額を、一部負担金として、当該保険医療機関等に支払わなければならない。(以下、略)第2項 保険医療機関等は、前項の一部負担金の支払を受けるべきものとし…。※保険医療機関等の等とは、保険薬局です。保険医療機関・保険薬局の一部負担金の受領義務については、療養担当規則(厚生省令)でも定めています。保険医療機関及び保険医療養担当規則 5条保険医療機関は、…法第74条の規定による一部負担金…の支払を受けるものとする。保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則 4条保険薬局は、…法第74条の規定による一部負担金…の支払を受けるものとする。このように、被保険者が、療養の給付を受ける際に、一部負担金を保険医療機関等へ支払い、保険医療機関等は、その一部負担金を受領することが、法令で義務づけられています。「健保使用一括払い」は、本当に違法なのか?このような規定から、「一部負担金の窓口での支払いが、療養給付の要件」とする病院側の主張も分からないわけではありませんが、やはり疑問を感じます。「健保使用一括払い」は、本当に一部負担金の規定に違反するのか、次の3つの点から、改めて考えてみます。3つの点とは、①一部負担金制度を採用した目的、②窓口払い原則の意味、③一部負担金の法律的性格です。一部負担金制度を採用した目的から考えると…そもそも、健康保険診療に一部負担金制度を採用したのは、濫受診を防止し、低廉な保険料で保険経済を維持することが目的とされています。(参考:厚生省保険局国民健康保険課『改訂 詳解国民健康保険』昭和47年発行 740ページ)ならば、一部負担金を支払うのが、被保険者(被害者)でも損保会社でも、支障はないはずです。窓口払いが原則の意味から考えると…「窓口払い」というのは、「診療の都度、保険医療機関の窓口で支払うこと」と一般に理解されていますが、そもそもは「保険医療機関に支払う」という意味です。これについては、国民健康保険の一部負担金制度の沿革を見ると明らかです。国民健康保険の一部負担金は、もともと「窓口払い」と「保険者徴収」の二本立てでした。この二本立てを廃し、療養の給付を受ける際は、原則として保険医療機関(当時は「療養取扱機関」と呼んでいました)に支払わなければならないものとし、窓口払いの原則が確立されたのです(参考:『改訂 詳解国民健康保険』743ページ)。実際、一部負担金を窓口で支払わなければ、療養の給付を受けられないわけではありません。例示が適切でないかもしれませんが、例えば、急な検査を行ったため持ち合わせがない場合や、救急診療のため保険証や所持金がない場合など、後日支払うケースも現実にあります。また、医療機関では、「クレジットカード払い」や「キャッシュレス化」を進めています。こういう場合は、後日まとめて決済されるのですから、損保による一括払いとしても何ら問題ないはずです。一部負担金の法律的性格から考えると…一部負担金の法律的性格について、窓口払いにおける関係は、保険医療機関等と被保険者との間の債権債務関係というのが、厚生労働省の解釈です。厚生省保険局国民健康保険課編集『改訂 詳解国民健康保険』(昭和47年発行)には、次のように書かれています。一部負担金は、本来は保険者と被保険者との関係における公法上の債権債務関係と考えられるが、窓口払いにおける関係は、法第42条第1項の規定に基づいて、法律上の原因による療養取扱機関の開設者と被保険者との間の債権債務関係と解すべきである。(厚生省保険局国民健康保険課『改訂 詳解国民健康保険』昭和47年発行 757ページ)平成6年ぐらいまで、国民健康保険法では「療養取扱機関」と言っていましたが、今は「保険医療機関」と統一されています。一部負担金の法律的性格についての厚生労働省の解釈は、今も変わっていません。平成20年7月10日に厚生労働省保険局が取りまとめた「医療機関の未収金問題に関する検討会報告書」にも、同様の記載があります。厚生労働省の解釈は、窓口払いにおける関係は、国保法第42条第1項の規定に基づいて、法律上の原因による保険医療機関等と被保険者との間の債権債務関係と解すべきであり、…(厚生労働省保険局「医療機関の未収金問題に関する検討会報告書」平成20年7月10日 2ページ)保険診療契約については、後記のような諸学説があるが、厚生労働省からは、どの説に立っても、健保法及び国保法に基づき、被保険者は保険診療にかかる一部負担金を保険医療機関等に支払うこととされていること、保険医療機関及び保険医療養担当規則等に基づき、保険医療機関等は一部負担金の支払いを受けることとされていること、被保険者の債務は保険医療機関等の債権に対応するものであることなどから、窓口における関係が保険医療機関等と被保険者との間の債権債務関係ということは現行法上明確であり、保険者が未払い一部負担金を立替払いする必要はないとの解釈が示された。(厚生労働省保険局「医療機関の未収金問題に関する検討会報告書」平成20年7月10日 3ページ)保険診療契約の解釈については、厚生労働省は3つに分類・整理しています。3つの学説については後でご紹介しますが、「どの説に立っても、窓口における関係が保険医療機関等と被保険者との間の債権債務関係ということは現行法上明確」とされています。図を使って説明しましょう。保険診療の基本構造保険診療の基本構造を図で示すと、次のようになります。※厚生労働省保険局「第2回医療機関の未収金問題に関する検討会」(平成19年8月3日)に提出された「資料2・保険診療契約について」5~6ページを参考に作成この図を参考に、保険者と保険医療機関等との関係、保険医療機関等と被保険者との関係について、見ていきましょう。保険者と保険医療機関等との法律関係保険者と保険医療機関等との法律関係については、公法上の契約と解されています。保険医療機関等が、一定の療養の給付の担当方針等に従い、被保険者に対して療養の給付を行えば、その対価として診療報酬を請求し、保険者から支払いを受ける、という双務契約です。ただし、保険医療機関等が保険者に請求できる診療報酬の額は、「療養の給付に要する費用の額から、一部負担金に相当する額を控除した額とする」と、法律で定められています(健康保険法76条1項、国民健康保険法45条1項)。したがって、一部負担金については、保険医療機関等が、自己の責任において、被保険者から支払いを受けることになります。保険医療機関等と被保険者との法律関係窓口払いにおける保険医療機関等と被保険者との間の法律関係は、私法上の債権債務関係と解されています。被保険者が、自分で保険医療機関等を選定し、保険医療機関等と被保険者とが、保険診療契約の当事者として、直接、診療契約が締結されます。療養取扱機関と被保険者との間の私法上の債権債務関係として、債権の全部または一部の放棄、変更等の意思表示は当然許されるが、この場合、国民健康保険法上の保障はもちろん与えられない。もっとも市町村の直営診療施設である療養取扱機関の場合は、地方自治法上債権管理の制約がある。(厚生省保険局国民健康保険課『改訂 詳解国民健康保険』昭和47年発行 768ページ)つまり、診療契約は、保険医療機関等と被保険者との私法上の契約ですから、一部負担金の支払い方法について、診療契約の当事者である保険医療機関と被保険者との間で自由に決めることができるということです。もっとも、保険者が支払う診療報酬の額は、療養の給付に要する費用の額から一部負担金に相当する額を控除した額ですから、一部負担金の徴収は、保険医療機関等の自己責任というわけです。したがって、自由診療なら一括払いができるのに、健康保険診療の場合には一括払いができない、というのは成り立たないのではないでしょうか。なお、一部負担金の支払い方法を診療契約の当事者間で自由に決められるということは、保険医療機関等が一括払いに合意するかどうかは、保険医療機関等の自由な判断ということになります。しかも、一括払いは損保会社がサービスで行うものです。健康保険や国民健康保険の使用は、被保険者が希望すれば病院側は拒否できませんが、一部負担金の一括払いは、法令により強制されるものでもありません。一部負担金の支払いと受領を法律で義務づけているのは、健康保険や国民健康保険の運営上、一部負担金に重要な意義があるからです。療養の給付は全額現物給付が建前なのに、保険財政を維持するため一部負担金制度を採用しています。保険者が支給する療養の給付に関する費用の支払い方法として、その一部を被被験者が負担する公法上の義務を負うということです。以上のことから、保険診療の際の一部負担金を任意保険会社による一括払いにすること(健保使用一括払い)は、健康保険法74条と国民健康保険法42条の一部負担金の規定に、必ずしも違反するものではないと考えられます。保険診療契約についての3つの学説さて、保険診療契約に関する3つの学説について、ご紹介しておきましょう。保険診療契約の解釈について、厚生労働省は、保険診療契約の当事者をどう考えるかによって、3つの学説に分類・整理しています。3つの学説については、厚生労働省の「第2回 医療機関の未収金問題に関する検討会」(平成19年8月3日)の資料と議事録、「医療機関の未収金問題に関する検討会報告書」(平成20年7月10日)を参考にしています。被保険者・保険医療機関当事者説被保険者と保険医療機関が保険診療契約の当事者であり、被保険者と保険医療機関との間で直接、診療契約が締結されるという説です。この契約は準委任契約と解されます。これが通説です。準委任契約とは、法律行為でない事務を委託する契約です(民法656条)。被保険者と保険医療機関との間に直接の診療契約が締結されることは、保険医療機関と保険者、被保険者と保険者、それぞれの間に公法上の法律関係が存在することと矛盾しないと考えられます。このように解釈できる理由として、被保険者は、自分の意思で自由に保険医療機関を選べる被保険者は、一部負担金を保険医療機関に直接支払う義務がある保険診療内容には一定の基準があるものの、個々の診療内容は、医師の判断と被保険者の意思によって決まるなどが挙げられます。保険者・保険医療機関当事者説保険者と保険医療機関が保険診療契約の当事者であり、医療行為と診療報酬に関する契約は、保険者と保険医療機関との間で成立し、患者たる被保険者の意思表示によって治療が行われることから、第三者のためにする契約であるという説です。第三者のためにする契約とは、契約の当事者でない第三者(患者たる被保険者)が、他人間(保険者と保険医療機関)の契約から利益を受ける関係にあります(民法537条~539条)。患者が被保険者証を提示し、受益の意思表示をすることによって、その保険者と保険医療機関で定められた契約内容に従って給付が受けられる、という考え方です。保険医療機関と保険者との法律関係を第三者のためにする契約と解しても、患者と保険医療機関との間に私法上の契約が存在することは矛盾するものではなく、保険者と保険医療機関との間の一般的・基本的な第三者のためにする契約と、個々の患者と保険医療機関との個別的契約は両立し得ると考えられます。保険医療機関は、療養担当規則に従って療養を担当しなければならないことや、厚生労働大臣または都道府県知事の指導・監督を受けることなど、公法上の諸義務がかかることを説明しやすいことから、このように解釈されます。保険者・被保険者当事者説保険者と被保険者が保険診療契約の当事者とする説です。保険者が現物給付として患者に療養の給付を提供するのに際し、保険医療機関は、保険者の被用者・履行補助者の立場に立という考え方です。医療保険制度の下では、現物給付が原則的な形態であって、療養担当規則による診療内容の制限、診療内容に対する指導・監督、支払金額の制限などの制約を保険者から受けるというようなことが説明をしやすいことから、このように解釈されています。まとめ交通事故で健康保険や国民健康保険を使用する場合、一部負担金の保険会社による一括払い(健保使用一括払い)は、病院側が拒否することがあります。健康保険法74条や国民健康保険法42条の一部負担金の規定により違法となる、というのが病院側の主張です。この主張には疑問がありますが、いずれにしても、「健保使用一括払い」とするには病院側の合意がいります。病院側の合意が得られない場合は、被害者自身が診療の都度、病院の窓口で一部負担金を支払い、あとで保険会社に請求することになります。一部負担金の支払いが経済的に負担となる場合は、加害者側の自賠責保険に仮渡金請求や直接請求をする方法があります。一部負担金の支払いが負担になるようなら、いくつか解決方法はありますから、詳しい弁護士に相談してみるとよいでしょう。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『Q&Aハンドブック交通事故診療 全訂新版』創耕舎 90ページ、142~145ページ・『交通事故における医療費・施術費問題 第3版』保険毎日新聞社 88~91ページ・厚生省保険局国民健康保険課『改訂 詳解国民健康保険』昭和47年発行 738~781ページ・厚生労働省保険局「医療機関の未収金問題に関する検討会」資料・議事録・報告書(平成19年6月1日~平成20年7月10日)
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