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  • 全損
    事故車両の買替えが認められるのは?物理的全損・経済的全損の違い
    交通事故による車両損害は、修理が可能であれば、修理費用の賠償が原則です。たとえ新車であっても、「新車だから」という理由だけで、新車買替えが認められるわけではありません。例えば、新車引渡し20分後の事故ですら、新車購入費用の請求を認めなかった裁判例もあります(東京地裁判決・平成12年3月29日)。どんな場合に車両の買替えが認められるのか、詳しく見ていきましょう。車両の買替えが認められるのは全損の場合車両損害は、修理が可能かどうかで全損と分損に区分されます。修理不能の場合は全損、修理可能な場合は分損となります。車両の買替えが認められるのは、全損の場合です。全損修理不能なので買替が認められる分損修理可能なので修理が相当買替えでも賠償額は被害車両の時価額の範囲買替えが認められるといっても、自動車を新しく買い替えるための費用が全額認められるわけではなく、損害として賠償を受けられるのは、事故時の被害車両の時価額の範囲です。そもそも、物損の損害賠償は、財産上の損害を事故前の状態に回復させることなので、被害車両の時価額を超える損害賠償は、被害者に利得をもたらすことになり、公平でないという考え方です。分損でも買替えが認められる場合がある技術的には修理が可能でも、修理費が車両時価額(事故時の車両価額)より高くなる場合は、買替えが認められます。修理をするよりも、買い替える方が経済的合理性があるからです。つまり、車両の損害は、修理費か車両時価額のいずれか低い方を賠償すればよい、ということなのです。買替えが相当と認められる3つのケース買替えが認められるのは全損の場合ですが、全損には次の3つのタイプがあります。物理的に修理不能(物理的全損)のとき経済的に修理不能(経済的全損)のとき社会通念上相当(社会的全損)と認められるとき①物理的全損車両の損傷が激しく、技術的・物理的に修理が不可能な状態を「物理的全損」といいます。本来の意味の全損ですから、買替えが認められます。②経済的全損技術的には修理可能でも、修理費が車両時価額を上回る場合は、修理をするより買い替える方が経済的合理性があると判断されます。このように「経済的に修理不能」な状態を「経済的全損」といい、車両の買替えが認められます。こういう場合は、修理をしても、車両時価額を超える修理費は、損害賠償を受けられません。③社会的全損技術的に修理不能ではないものの、車体の本質的構造部分に重大な損傷を受け、買替えをすることが社会通念上相当とされるときは、「社会的全損」という場合があります。損傷が車両の安全性に関わる部分に生じ、車両性能の著しい減損を伴うため、事実上、物理的全損ともいえます。「社会的全損」という呼称は、北河隆之氏が『交通事故損害賠償法第2版』弘文堂337~338ページで使用しています。「社会通念上相当と認められるとき」とは?物理的全損・経済的全損のほか、「買替えをすることが社会通念上相当と認められるとき」も、買替差額を請求できるというのは、最高裁判決で示されました。次のような判決です。最高裁第二小法廷判決(昭和49年4月15日)交通事故により自動車が損傷を被った場合において、被害車両の所有者が、これを売却し、事故当時におけるその価格と売却代金との差額を損害として請求しうるのは、被害車両が事故によって物理的または経済的に修理不能と認められる状態になったときのほか、フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷の生じたことが客観的に認められ、被害車両の所有者においてその買替えをすることが社会通念上相当と認められるときをも含むと解すべきである。ただし、このケースに該当することを肯定した裁判例は極めて少ないのが実情です。肯定例として、札幌高裁判決・昭和60年2月18日があります。なぜ、該当例が少ないかというと、「買替えをすることが社会通念上相当と認められるとき」とは、どのような場合が該当するのか、その判断が容易ではないこと、さらに「重大な損傷の生じたことが客観的に認められ」ることが必要で、主観的に車両の安全性に不安を感じるというだけでは該当しないこと、などが理由として挙げられます。なお、車体の本質的構造部分とは、フレームのほか、クロスメンバー、フロントインサイドパネル、ピラー、ダッシュパネル、ルーフパネル、フロアパネル、トランクフロアパネル、エンジン、車軸などを指します。まとめ車両の損害は、修理費の賠償が原則です。車両の損害は、大きくは全損と分損に区分されます。全損(物理的全損・経済的全損・社会的全損)の場合は、買替えが認められ、買替差額を損害賠償請求請求できます。分損の場合は、適正修理費用(必要かつ相当な修理費用)を損害賠償請求できます。なお、ローン返済中の所有権留保車両の場合、使用者(購入者)は、車両の所有権がないため、買替差額を請求することはできません。所有権留保車両やリース車両の損害賠償請求権について詳しくはこちらをご覧ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『別冊判例タイムズ38』 17ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 206~210ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 427~431ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 278~282ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 337~338ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 100~103ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 239~241ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 227~231ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 271~287ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 169~170ページ
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  • 車両時価額
    全損車両の損害額(車両時価額・買替差額)の算定方法
    被害車両が全損の場合は、事故時の車両時価額が損害として認められます。ここでは、全損となった場合に賠償請求できる損害額の算定方法、車両時価額の算定方法について説明します。被害車両が全損のときに請求できる損害とは?全損の場合は、事故時の被害車両の価格(車両時価額)が損害として認められます。ただし、被害車両の売却代金が車両時価額から控除されます。この売却代金には、スクラップ代金を含みます。スクラップ代金とは、車両を解体した際に鉄くず代金として車両所有者が得る金銭のことで、解体業者に支払う解体費用ではありません。車両時価額から売却代金を控除した差額を買替差額といいます。買替差額に加えて、買替えに要する買替諸費用(登録手続関係費)も、損害賠償請求が認められます。つまり、被害車両が全損の場合に賠償請求できる損害は、買替差額と買替諸費用です。全損車両の損害賠償額=買替差額+買替諸費用買替差額=車両の時価額-売却代金事故時の車両価格(車両時価額)の算定方法買替差額の算定で大事なのが、事故時の車両価格(車両時価額)をいくらと評価するかです。請求する側で、車両時価額の立証が必要です。車両時価額は、中古車市場における販売価格(再調達価格)によるのが原則です。車両時価額(被害車両の事故当時における取引価格)の算定方法について、最高裁は次のように判示しています。最高裁第二小法廷判決・昭和49年4月15日いわゆる中古車が損傷を受けた場合、当該自動車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によって定めるべきであり、右価格を課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によって定めることは、加害者及び被害者がこれによることに異議がない等の特段の事情のないかぎり、許されないものというべきである。具体的には、次のような方法により、車両時価額を算定します。事故車両と同一の車種・年式・型の車両について、「オートガイド自動車価額月報」(通称:レッドブック)の価格を基礎に、中古車専門雑誌やインターネット上の中古車価格情報などで、事故車両と使用状態や走行距離などが同程度の車両の価格を参考に判断します。車両時価額の調査に用いられるものとして、次のものがあります。有限会社オートガイド発行の「自動車価格月報」(通称:レッドブック)一般財団法人日本自動車査定協会発行の「中古車価格ガイドブック」(通称:イエローブック、シルバーブック)全国技術アジャスター協会発行の「建設車両・特殊車両標準価格表」インターネット上の中古車価格情報一般的には「レッドブック」を参考にしますが、「レッドブック」の掲載期間は長いものでも10年程度です。「レッドブック」に掲載のないような古い車両の価格算定には、インターネット上の中古車価格情報を参考にすることになります。ただし、このような情報は販売店の販売希望価格であって、実際の取引価格でないことに注意が必要です。市場価値のない古い車両の時価額の算定方法新車登録時から長期間経過して市場流通性を喪失し、レッドブック等にも掲載がなく、中古車市場価格が判明しない古い車両については、新車価格の10%を時価額とする場合が多いようです。中古車市場における交換価値(市場価値)を喪失した古い車両でも、実際に走行していた以上、使用価値はあったと評価できます。この使用価値相当の評価方法として定着しているのが、新車価格の10%と算定する方法です。これは、減価償却資産の残存価額の考え方にもとづくものです。減価償却資産については、法定耐用年数が経過しても使用価値はあるため(これを「残存価額」といいます)、減価償却は10%の残存価額を残して行うことになっていました。これの考え方にもとづき、法定耐用年数の経過した古い車両は、新車販売価格の10%を時価額としていたのです。ただし、平成19年度税制改正により、減価償却資産については「償却可能限度額及び残存価額」が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになりました。その結果、減価償却の方法をもとに車両時価額を新車価格の10%とすることについて、法律上の根拠は失われたのです。しかし、この税制改正以降もなお、裁判では、新車価格の10%を時価額として認定しています。こうした裁判例からみると、新車登録時から長期間経過し、適切な資料により車両時価額を立証できないような場合には、裁判所が新車価格の10%と認定するケースが今後もあり得ると考えられます。新車の時価額の算定方法新車であっても、登録するだけで、いわゆる「登録落ち」(車検落ち、ナンバー落ち)が生じ、車両価格が1~2割程度下落するといわれています。たとえ、納車直後の新車であっても、査定は中古車価格となります。新車価格を車両時価額として、買替差額を算定することは認められません。販売が開始されたばかりの新車で、まだ中古車市場価格が形成されていない場合は、新車価格から適宜減額して価格を算定する方法もとられます。学説的には、「走行距離1,000㎞以内、購入日から1年以内が、新車買替差額の認められる限界」とし、新車買替差額を認める場合は、損害の公平な分担の観点から、新車買替諸費用の賠償は認めない、とする見解もあります。裁判例には、新車購入後6日目に事故に遭い、車体の基幹部分に重大な損傷を受けた車両について、修理しても走行機能等に欠陥を生じることが推測されるとして、新車購入価格と登録諸費用も認めた例(札幌高裁昭和60年2月13日判決)もありますが、基本的に、新車買替え請求には否定的な裁判例が多いようです。例えば、新車を購入し、引渡しを受けた直後の事故だったことを理由に、新車買替えを要求したことについて、次のような裁判例があります。東京地裁平成12年3月29日判決事故により損傷した被害車が、店舗内に陳列中であったり、車両運搬車で運搬中であったりする等、完全な新車の状態であった場合であれば格別、既に、一般の車両と同様に公道において通常の運転利用に供されている状態であった以上、新車の買替えを肯認すべき特段の事情とまではいえない。特殊車両(商業車・改造車など)の時価額の算定方法商業車や改造車などの特殊車両は、レッドブックに掲載がなく、中古車市場での流通も少ないことから、車両時価額の算定が困難です。商業車の場合商業車の車両時価額の算定については、次のような方法を採用した裁判例があります。タクシー現実の交換価値により近くするため、法定耐用年数ではなく、一般的な使用期間を考慮して減価償却を行い、これに特殊装備(料金メーター等)の価値を加算する方法。観光バス法定耐用年数ではなく、実際の使用可能期間を考慮して減価償却を行う方法。郵便物集配業務用車両車体本体の時価額に、特別仕様部分の残存価値を加算する方法。改造車の場合改造車の車両価格は、原則として、ベース車の車両価格に改造費用を含めて算定の基準とします。ただし、改造が、法令に抵触したり、車両の効用を低下させたりするなど、改造車の交換価値を減価させる場合は、ベース車の車両価格を減額するのが相当とされます。まとめ全損車両については買替えが認められ、買替差額と買替諸費用を損害賠償請求できます。買替差額は、事故時の車両時価額から売却価額を控除した額です。全損車両の損害額の算定においては、車両時価額をいくらと評価するかがポイントです。一般的には、レッドブックの価格を基礎に、インターネット上の中古車価格情報などを参考にして、車両時価額を算定します。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通関係訴訟の実務』商事法務 433~434ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 224~227ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規72~79ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 281~284ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 229~230ページ・『民事交通事故訴訟の実務』ぎょうせい 156~160ページ
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  • 買替諸費用
    全損車両の買替えで損害賠償請求できる諸費用
    被害車両が全損で買替えが相当となった場合は、車両の購入代金のほか、車両買替えに要する諸費用についても、損害賠償を受けられるものがあります。買替諸費用のうち、損害賠償を受けられるもの、受けられないものについて、具体的に見ていきましょう。損害賠償の対象となるか否かの判断の基準買替諸費用とは、買い替えた車両を使用できるようにするために必要な、検査・登録に要する費用や税金です。被害車両に関する諸費用(廃車費用のほか、既払いの自動車税や自賠責保険料など)についても、通常、買替諸費用に含めて考えます。具体的には、自動車税(環境性能割・種別割)、自動車重量税、消費税、リサイクル料金、自賠責保険料、検査・登録費用、車庫証明費用、廃車費用などです。損害賠償の対象と認められるかの判断のポイント買替諸費用が、損害賠償の対象と認められるか、すなわち、事故と相当因果関係のある損害として認められるかは、基本的に次の観点から判断します。損害賠償の対象となるかの判断基準車両を買い替えるために必要な費用か、保有するために必要な費用か。被害車両に関する既払い費用については、未経過分の還付制度があるか否か。車両を新たに取得するするために要する費用、事故車両を廃車にするために要する費用や無駄になる既払い費用は、損害として認められます。それに対し、車両を保有することにより発生する費用で、事故車両を廃車するときに還付制度があり、既払い費用のうち未経過分が返金されるものは、損害として認められません。損害賠償を受けられる買替諸費用の額損害として認められる買替諸費用であっても、具体的に損害賠償の対象として認められる額は、被害車両と同等の車両の取得に要する金額に限られます。東京地裁判決は、次のように判示しています。東京地裁判決・平成15年8月4日買替諸費用等とは、被害車両に代えて新車を購入した場合に要する諸費用ではなく、被害車両と同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得した場合に要する諸費用等をいう。例えば、被害者が新車に買い替えたとしても、車両価格はもちろん、買替諸費用についても、事故車両と同等の中古車を購入するのに要する費用相当分しか認められません。こんな裁判例があります。神戸地裁判決・平成25年7月25日新車への買替時に要する費用合計額が13万9,782円であると認定した上で、被害車両と同等の中古車相当分として約5割の7万円のみを損害賠償の対象として認めました。それでは、損害として認められる費用、認められない費用、それぞれ具体的に見ていきましょう。損害賠償の対象となる買替諸費用次の諸費用は、事故がなければ、被害者が負担することのなかったものであり、新たに車両を取得するのに要する費用なので、事故と相当因果関係のある損害として認められています。買替車両の自動車税環境性能割自動車税環境性能割は、自動車を取得したときに、自動車の燃費性能等に応じて課税される税金です。軽自動車税環境性能割も同様です。旧・自動車取得税が2019年10月1日より廃止になり、自動車税環境性能割が導入されました。自動車の取得時に課税されるので、損害として認められます。自動車税環境性能割(地方税法145条1号)自動車のエネルギー消費効率の基準エネルギー消費効率に対する達成の程度その他の環境への負荷の低減に資する程度に応じ、自動車に対して課する自動車税をいう。軽自動車税環境性能割(地方税法442条1号)三輪以上の軽自動車のエネルギー消費効率の基準エネルギー消費効率に対する達成の程度その他の環境への負荷の低減に資する程度に応じ、三輪以上の軽自動車に対して課する軽自動車税をいう。自動車税・軽自動車税の納入義務者については、次のように定めています。自動車税の納税義務者(地方税法146条1項)自動車税は、自動車に対し、当該自動車の取得者に環境性能割によって、当該自動車の所有者に種別割によって、それぞれ当該自動車の主たる定置場所在の道府県が課する。軽自動車税の納税義務者(地方税法443条1項)軽自動車税は、三輪以上の軽自動車に対し、当該三輪以上の軽自動車の取得者に環境性能割によって、軽自動車等に対し、当該軽自動車等の所有者に種別割によって、それぞれ当該三輪以上の軽自動車及び当該軽自動車等の主たる定置場所在の市町村が課する。買替車両の消費税一般的には、車両価格(車両時価額)に消費税も含めますが、車両価格に含まれていない場合は、事故車両と同程度の車両を取得した場合の消費税相当額が、損害として認められます。買替車両のリサイクル預託金(リサイクル料金)リサイクル預託金とは、自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)にもとづき、自動車購入時に納めるリサイクルのための費用です(自動車リサイクル法73条)。自動車を新車で購入する場合には、購入者は販売店経由で公益財団法人自動車リサイクル促進センターに、リサイクル預託金を収めることになります。中古車を購入する場合には、中古車販売店にリサイクル預託金相当額を支払います。所有車両を売却したり下取りに出したりした場合には、車両所有者は相手方からリサイクル預託金相当額を受領します。自動車重量税自動車重量税は、車両の重さに応じて課される税金です。車検のタイミングで、車検証の有効期間分をまとめて支払います。自動車重量税には未経過分の還付制度がありませんから、被害車両の自動車重量税の未経過分は、損害として認められます。自動車重量税は、自動車が車検を受けること等によって走行可能になるという法的地位あるいは利益を受けることに着目して課税される一種の権利創設税であるという考え方により、廃車した場合の還付制度は認められていません。ただし、「使用済自動車に係る自動車重量税の廃車還付制度」により還付された分は除きます。「使用済自動車に係る自動車重量税の廃車還付制度」とは?平成14年度税制改正において、使用済自動車の不法投棄防止・自動車リサイクルの促進の観点から、自動車リサイクル法の制定及び道路運送車両法の改正に伴い、廃車還付制度を創設し、平成17年1月から自動車リサイクル法の施行と同時にスタートしました。自動車リサイクル法に基づき使用済自動車が適正に解体され、解体を事由とする永久抹消登録申請または解体届出と同時に還付申請が行われた場合に、車検残存期間に対応する自動車重量税額が還付されます(租税特別措置法90条の15)。検査・登録法定費用と手続代行費用検査・登録の法定費用と、その手続きを業者に委託するときの代行費用(手数料)は、損害として認められます。次の費用が該当します。買替車両の検査・登録法定費用、車庫証明法定費用被害車両の廃車法定費用ディーラー(販売業者)の手続代行費用(検査・登録手続代行手数料、車庫証明手続代行手数料、納車手数料、廃車手数料、これらに対する消費税額)の相当額ディーラー(販売業者)の手続代行費用については、法定費用と異なり、本人自ら行い得る手続きを業者に代行してもらうことに対する報酬であるため、かつては事故との相当因果関係を否定する見解も有力でした。現在の裁判例では、車両を購入した際、これらをディーラーに依頼しているのが実情であることに照らし、相当な範囲で損害と認めるのが一般的です。損害賠償の対象とならない買替諸費用次の諸費用は、車両を取得するためでなく、保有するために要するものであり、廃車したときには未経過分について還付制度があること等から、損害として認められません。自動車税種別割・軽自動車税種別割自動車税種別割・軽自動車税種別割は、毎年4月1日現在の自動車の所有者に対し、用途や排気量に応じて課税されます。2019年10月1日より、自動車税から自動車税種別割に、軽自動車税から軽自動車税種別割に、名称が変わりました。自動車税種別割(地方税法145条2号)自動車の種別、用途、総排気量、最大積載量、乗車定員その他の諸元の区分に応じ、自動車に対して課する自動車税をいう。軽自動車税種別割(地方税法442条2号)軽自動車等の種別、用途、総排気量、定格出力その他の諸元の区分に応じ、軽自動車等に対して課する軽自動車税をいう。自動車税種別割自動車税種別割は、賦課期日(4月1日)後に新規登録または廃車した場合、月割課税となります(地方税法177条の10)。すなわち、賦課期日後に新規登録した場合は、登録月の翌月から年度末までの月数による課税となり、賦課期日後に廃車した場合は、抹消登録の翌月から年度末までの未経過分が還付されます。車両を売却し、所有者が変更となる場合は、4月1日現在の所有者にその年度分が全額課税され、未経過分の還付はありません。この場合は、車検付きの車両として、その分、車両価格が高めに評価されます。したがって、自動車税種別割は、自動車の買替えにともない、損害として認められません。軽自動車税種別割軽自動車税種別割は、自動車税種別割のような月割課税の制度はありません。4月1日現在の所有者にその年度分が全額課税されます。年度の途中で廃車や譲渡をした場合に、月割での税金の還付はありませんが、年度の途中で取得した場合は、翌年度4月1日現在で所有の時点まで税金はかからない仕組みです。このため、軽自動車税種別割は、廃車にともなう未経過分の還付はありませんが、その未経過分を損害とは認められません。自賠責保険料自賠責保険料は、車両購入時と車検時に、車検有効期間分をまとめて支払います。自動車を廃車し、抹消登録を受けた場合には、自賠責保険を解約できます(自賠法20条の2、同法施行規則5条の2第1号、自賠責保険普通保険約款10条1項)。自賠責保険を解約した場合には、保険料の返還を受けることができます(自賠責保険普通保険約款13条2項)。したがって、自賠責保険料は、車両買替えにともない、損害として認められません。車両保険料差額被害者が、自身の車両保険を利用すると保険料が上がることから、増額した保険料差額を損害として賠償請求が認められるか否かが問題となる場合があります。車両保険は、被害者のリスク回避のために締結されたもので、車両保険を利用するか否かは、被害者の自由な判断にゆだねられていることを理由に、事故と相当因果関係を否定され、保険料差額については損害として認められません。まとめ車両買替えのために必要となる諸費用のうち、自動車税環境性能割、検査登録費用、車庫証明費用、廃車費用などは、損害として認められます。他方、被害車両の自動車税種別割、自賠責保険料については、廃車により抹消登録や保険解約すれば、未経過分が還付または返金されるので、損害とは認められません。軽自動車税種別割については、未経過分の還付はありませんが、損害として認められません。自動車重量税は、自動車リサイクル法に定める要件を満たす場合には、廃車還付制度があるので損害として認められませんが、それ以外の場合に未経過分が損害として認められます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 231ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 433ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 196ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 344~345ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 248~249ページ・『交通事故事件の実務-裁判官の視点-』新日本法規 102~103ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 213~214ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 173~175ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 262~264ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 284~286ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 82~88ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 70~71ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 59~62ページ
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