交通事故トラブル解決ガイド|損害賠償請求・示談交渉の悩みを解決!

検索結果

「 刑事記録 」の検索結果
  • 刑事記録の入手方法
    交通事故刑事記録(実況見分調書・供述調書)の入手方法と注意点
    交通事故で賠償責任の有無や過失割合が争いとなるときには、刑事記録(実況見分調書・供述調書など)が有力な証拠となります。ここでは、刑事記録とは何か、どうやって入手するのか、刑事記録を入手する際の注意点について、見ていきます。刑事記録とは?刑事記録(刑事事件記録)とは、警察、検察、刑事裁判所が作成した書類です。そもそも刑事手続として作成するものですが、刑事記録を入手することにより、事故現場の状況、事故の原因、当事者の供述、関係機関の意見・認定などの情報を得ることができ、民事事件(損害賠償請求)においても有力な証拠資料となります。刑事記録には、実況見分調書、供述調書、写真撮影報告書、捜査報告書、起訴状、裁判書(判決書・決定書・命令書)などがあります。特に重要なのは、実況見分調書(写真撮影報告書も含む)と供述調書です。実況見分調書は、事故状況を客観的に証明することができ、供述調書は、当事者や目撃者の供述内容が記録されています。実況見分調書実況見分調書とは、実況見分の結果を記録したものです。実況見分の日時、場所、道路状況、事故車両の状況、立会人の説明、事故現場の見取図、写真などからなり、事故現場の状況や事故態様の重要な客観的証拠となります。実況見分調書が作成されるのは人身事故の場合警察官が実況見分を行うのは、人身事故の場合です。つまり、実況見分調書が作成されるのは、人身事故の場合です。物件事故(物損事故)の場合は、基本的に刑事事件となりませんから、実況見分調書は作成されません。注意が必要なのは、事故時には症状がなく、あとから発症したような場合です。物損事故としていた場合は、速やかに物損事故から人身事故への切り替えが必要です。そうでないと、実況見分調書を取得できないだけでなく、軽い怪我と判断されるため、賠償額が低く算定され、不利益を被るおそれがあります。人身事故として扱われているかどうかは、交通事故証明書を見れば分かります。交通事故証明書の入手方法はこちらをご覧ください。実況見分調書を過信してはいけない実況見分調書は、事故状況を証明する有力な証拠ですが、加害者の側に有利な内容となっていることがありますから、過信は禁物です。特に、被害者が死亡・意識不明の重体の場合は、被害者の言い分が反映されず、加害者の一方的な主張にもとづいて作成されます。その結果、被害者の側にとって、不利な内容になりがちです。実況見分調書は、立会人の指示説明を記載した書面です。誰が立会人として指示説明したものか、実況見分した日時(事故発生からどれくらい経ってされたのか、事故発生と同じ時間帯で行われたか等)に注意が必要です。また、実況見分調書は、常に完璧に作成されているとは限りません。例えば、必要な証拠写真が撮られていないこともあり、実況見分調書を取得できたとしても、事故の真実を解明するのに苦労するケースがあるのです。なので、事故直後、被害者の側で独自に、事故現場の写真を撮っておいたり、証拠や目撃証言を集めておくことが大事です。実況見分について被害者が知っておきたい3つのこと供述調書供述調書とは、事故の当事者や目撃者が、事故当時の状況等を述べた内容が記載された書面です。事故直後に警察官等へ供述した内容が記載されており、証拠として大きな価値を持ちます。加害者の供述調書は、必ず作成されますが、被害者や目撃者の供述調書は作成されないこともあります。被害者が、死亡・意識不明の重体の場合には作成できません。目撃者の供述調書は、警察が目撃者を把握していれば作成されますが、把握していなければ作成されません。目撃者の証言は重要な証拠となりますから、被害者の側で目撃者探しが必要な場合もあります。 交通事故の初期対応|被害者がやっておくべき3つのこと刑事記録の取得方法さて、刑事記録の入手方法についてです。刑事記録は、被疑者(加害者)の起訴・不起訴が決まった後でないと、コピーを入手できません。しかも、不起訴処分となった場合は、開示される記録が制限されます。交通事故が発生した場合の刑事手続は、次のような流れになります。交通事故が発生したときの刑事手続の流れ警察で捜査警察から検察へ送致検察で起訴・不起訴の決定起訴の場合は、刑事裁判手続裁判終了後、検察庁で刑事記録を保管刑事手続の進行段階に応じて、取得できる記録や入手方法(請求の根拠法)が異なります。各段階ごとに、具体的に見ていきましょう。刑事裁判終結後(判決確定後)は、検察庁で所定の期間保管されます。保管期間は法令で定められているので、保管期限内に取得する必要があります。捜査段階捜査段階は、原則として、刑事記録を取得することはできません(刑事訴訟法47条)。刑事訴訟法47条訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。ただし、自己の身分と利害関係を明らかにして、担当捜査官のもとに事情を聞きに行けば、捜査に支障のない範囲で説明してくれる場合もあります。起訴後から第1回公判期日前起訴後(公判請求後)から公判開始までの間は、被害者等から要望があれば、公判や関係者のプライバシーなどに特段の支障がない限り、公判提出予定の書面を交付する運用になっています。特に、被害者参加制度(刑事訴訟法316条の33)の対象事件の場合は、被害者参加の判断や被害者参加人としての準備のために必要であることから、被害者等から検察官手持ちの証拠の開示を求められたときは閲覧・謄写を認めるなど、弾力的な運用に務めることとされています。ただし、あくまでも運用であって、法律に基づく開示ではありません。【参考】・最高検企第436号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」・最高検企第437号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」の発出について(通知)刑事裁判の係争中刑事事件として裁判所に係属している段階、すなわち第1回公判期日後から訴訟終結までの間は、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」(犯罪被害者保護法)第3条にもとづき、刑事事件が係属する裁判所に対して被害者等から申出を行うことで、法廷に提出されている訴訟記録の閲覧・謄写が可能です。犯罪被害者保護法3条1項刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。なお、刑事裁判に被害者参加(刑事訴訟法316条の33)する場合は、第1回公判期日前でも上記のように、要望すれば、検察官から検察官請求証拠(検察官が証拠調べ請求をすることとしている証拠)等が開示されます。刑事裁判の終結後刑事裁判の終結後は、誰でも刑事確定記録(刑事確定訴訟記録)を閲覧できる建前です(刑事訴訟法53条1項)。謄写には制限がありますが、交通事故の場合は、被害者等からの請求であれば、通常、謄写も認められます。刑事訴訟法53条1項何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。刑事確定記録は、第1審の裁判をした裁判所に対応する検察庁で、所定の期間保管されます(刑事確定訴訟記録法2条)。保管期間を過ぎると入手できなくなりますから、保管期限内に保管している検察庁へ、閲覧・謄写を請求する必要があります。保管期間は、言い渡された刑の重さによって異なります。例えば、5年以上10年未満の懲役・禁固刑の場合は、保管期間10年、5年未満の懲役・禁錮刑の場合は5年、罰金刑の場合は3年です(刑事確定訴訟記録法 別表)。なお、刑事確定記録は、その刑事事件が終結した後3年が経過すると、原則として閲覧・謄写できませんが(刑事確定訴訟記録法4条2項2号)、交通事故の被害者等からの請求については、保管期限内であれば、たいていは閲覧・謄写が可能です。不起訴処分となったとき不起訴処分となった場合、刑事記録(不起訴記録)は、原則として非公開(刑事訴訟法47条)ですが、同条ただし書にもとづき、交通事故の被害者等から請求があった場合には、相当と認められる範囲で弾力的な運用を行っています。ただし、開示されるのは、通常、客観的証拠(実況見分調書や写真撮影報告書)に限られ、供述調書の開示は特定の場合に限定されます。具体的には、こうです。被害者参加対象事件について閲覧請求がなされた場合閲覧目的が、民事訴訟等において被害回復のための損害賠償請求権その他の権利を行使する目的である場合に加え、事件の内容を知ること等を目的とする場合であっても、原則として閲覧が認められます。閲覧の対象となる不起訴記録は、実況見分調書や写真撮影報告書等の客観的証拠です。原則として、代替性の有無にかかわらず、相当でないと認められる場合を除き、閲覧が認められます。被害者参加対象事件以外の事件について閲覧・謄写請求がなされた場合閲覧目的が、民事訴訟等において被害回復のための損害賠償請求権その他の権利を行使する目的である場合に閲覧が認められます。閲覧・謄写の対象となる不起訴記録は、客観的証拠であって、代替性に乏しく、その証拠なくしては立証が困難であるものです。代替性がないとまではいえない客観的証拠についても、必要性が認められ、弊害が少ないときは、閲覧・謄写が認められます。供述調書の開示供述調書については、例外的に、民事裁判所を通じた文書送付嘱託がなされ、次の要件をすべて満たす場合に限り、開示されます。不起訴記録中の供述調書を開示する要件民事裁判所から、不起訴記録中の特定の者の供述調書について文書送付嘱託がなされた場合であること。当該供述調書の内容が、当該民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであって、かつ、その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど、その証明に欠くことができない場合であること。供述者が死亡、所在不明、心身の故障若しくは深刻な記憶喪失等により、民事訴訟においてその供述を顕出することができない場合であること、または当該供述調書の内容が供述者の民事裁判所における証言内容と実質的に相反する場合であること。当該供述調書を開示することによって、捜査・公判への具体的な支障又は関係者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく、かつ、関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがあるとは認められない場合であること。不起訴記録の開示についての法務省の方針はこちら ※法務省のWebサイトにリンクしています。相手の運転者が未成年だった場合相手の運転者が未成年の場合には、少年保護事件として家庭裁判所で処理されます。少年保護事件の場合は、事件が確定していても、原則として、少年保護事件記録は公開されません(最高裁判所規則・少年審判規則7条1項)。ただし、事故にもとづく損害賠償請求に必要な場合は、審判開始決定から保護事件終局決定が確定した後3年を経過するまでは、被害者等の申出により、保護事件記録を閲覧・謄写できます(少年法5条の2)。少年保護事件記録は、第1審の家庭裁判所で保管されます(最高裁判所規程第8号・事件記録等保存規程3条1項)。物件事故(物損事故)の場合物件事故(物損事故)の場合は、刑事事件でなく、民事の話ですから、実況見分は行われず、警察官によって物件事故報告書が作成されるだけです。物件事故報告書は、事故の概要や簡単な事故状況図が記載されたものですが、警察官が事故直後に作成しており、有益な情報を得られることもあります。物件事故報告書の開示請求は、警察署に対して行います。検察庁ではありません。弁護士に頼めば、弁護士会照会(弁護士法23条の2)により、入手できます。民事訴訟係属中の場合には、文書送付嘱託(民事訴訟法226条)により取得することもできます。物損事故でも刑事事件となる場合物損事故であっても、他人の建造物を損壊した場合は、刑事責任を問われる場合があります(道路交通法116条)。道路交通法116条車両等の運転者が業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により他人の建造物を損壊したときは、六月以下の禁錮こ又は十万円以下の罰金に処する。刑事記録の取得は弁護士に任せる!刑事手続の各段階ごとに、刑事記録の入手方法をご紹介しました。刑事記録は、被害者が自分で入手することも可能ですが、刑事記録が必要となるほど加害者側と揉めているのであれば、弁護士に相談して、必要があれば刑事記録を弁護士に取得してもらい、示談交渉を弁護士に任せることをおすすめします。弁護士は、各法律の規定に基づき、あなたの代わりに刑事記録の開示を請求できます。また、運用により閲覧・謄写が認められている場合(不起訴記録など)でも、弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)を使って、スムーズに刑事記録を取得できます。そして、取得した刑事記録の内容をプロの目で検証し、相手方保険会社と交渉してくれます。弁護士法23条の2第1項 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。第2項 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。「弁護士会照会」は、弁護士法23条の2で定められていることから「23条照会」とも呼ばれます。まとめ刑事記録(刑事事件記録)は、刑事手続のために作成されるものですが、民事事件においても、相手の賠償責任や過失割合を判断する上で、有力な証拠となります。ただし、保管期限がありますから、過失割合に争いがある場合などは、早めに弁護士に相談して、取得することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故損害賠償保障法 第2版』弘文堂 390ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 272ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 117~120ページ・『交通損害関係訴訟・捕訂版』青林書院 17~18ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 322~326ページ・『改訂版 交通事故事件の実務ー裁判官の視点』新日本法規 262~263ページ・『実例と経験談から学ぶ 資料・証拠の調査と収集』第一法規 42~47ページ・最高検企第436号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」・最高検企第437号 平成26年10月21日「犯罪被害者等の権利利益の尊重について(依命通達)」の発出について(通知)あなたにおすすめのページ交渉力の違いだけでない! 弁護士の介入で賠償額が増える本当の理由とは?交通事故被害者が知っておきたい弁護士選び3つのポイント交通事故の示談交渉を弁護士に頼む5つのメリット・1つのデメリット交通事故被害者は弁護士にいつ相談するのがよいか
    Read More
  • 刑事記録の目的外使用の禁止
    刑事記録の目的外使用として禁止され刑事罰の対象となる行為
    刑事記録の目的外使用の禁止と罰則については、刑事訴訟法第281条の4と第281条の5で定めています。これは、平成16年(2004年)の刑事訴訟法一部改正により新たに設けられた規定です。この「刑事記録の目的外使用の禁止規定」が、刑事確定訴訟記録や被害者が取得した刑事記録にまで及ぶかのような誤解が一部にあるようです。どんな場合に目的外使用にあたるのか、誰が刑事罰の対象となるのか、当時の国会審議をふまえて整理しておきます。開示証拠の目的外使用の禁止と刑事罰まず、刑事訴訟法において、検察官から開示された証拠(供述調書、鑑定書、証拠物など)の目的外使用の禁止(第281条の4)と、それに違反した場合の刑事罰(第281条の5)が、どのように規定されているか見ておきましょう。刑事訴訟法 第281条の4第1項 被告人若しくは弁護人又はこれらであった者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。一 当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理二 当該被告事件に関する次に掲げる手続   (略)第2項 前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする。第1項の「証拠に係る複製等」とは、前条(第281条の3)で「複製その他証拠の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう」と規定しています。刑事訴訟法 第281条の5第1項 被告人又は被告人であった者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第1項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。第2項 弁護人又は弁護人であった者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。衆議院における修正と附帯決議この目的外使用の禁止規定は、平成16年の第159回国会において、刑事訴訟法の一部改正により新設されたものです。衆議院において修正されています。政府の提出した改正案では、第281条の4に第2項はなく、目的外使用を一律に禁止する規定だけでした。衆議院において第2項を追加し、第1項の目的外使用の禁止に違反した場合の措置について、諸事情を考慮することとしたのです。さらに、衆議院の法務委員会において、「本法第281条の4及び5の解釈については、国会での論議を十分に斟酌すること」と、附帯決議が付されました(平成16年4月23日)。刑事訴訟法281条の4 第2項の意味衆議院で修正が加えられた刑事訴訟法281条の4第2項について、衆議院における修正案の提案者は、参議院の法務委員会に出席し、委員からの質問に対して次のように答えています。参議院 法務委員会(平成16年5月18日)〇井上哲士・参議院議員(日本共産党)修正案の提案者にお聞きをいたします。この目的外使用の禁止につきましては、衆議院で修正が加えられました。前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえてとした上で、「その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする」という条項が追加をされたんですが、ここで言う「前項の規定に違反した場合の措置」、この「措置」というのは、例えばどういうことを言われているのか。いかがでしょうか。〇漆原良夫・衆議院議員(公明党)この「措置」というのは、刑事訴訟法第281条の4第1項の規定に違反する違反行為に対して取られる法的措置のことでありまして、例えば具体的には、弁護士が同項の規定に違反する行為に及んだことを理由に弁護士の品位を失うべき非行があったものとしてなされる弁護士法上の懲戒処分、あるいは被告人等が刑事訴訟法281条の4第1項の禁止規定に違反する行為に及んだことによって損害を受けた者による民法上の損害賠償請求権、そういうものがこれに当たるというふうに考えております。〇井上哲士・参議院議員この目的外使用の禁止については、被告人の防御権を不当に侵すものだとか弁護活動を困難にするという様々な批判の声がありました。その中で、衆議院でも様々な議論も行われ、また院外での議論もあります。その議論の中で、これ、被告人の防御のために必要な開示証拠の使用というのは審理の準備だけには限定されないではないかとか、それから関係人の名誉等を害さない場合には実質的には違法性がない場合もあるんじゃないかとか、また、公開の法廷で取り調べられた証拠についてまで目的外使用を禁止すべきでないなどなど様々な議論がありましたが、今回の修正はこういう議論を踏まえたものなのか、そしてどういうことを期待されたものなのか、その点お願いします。〇漆原良夫・衆議院議員正に衆議院においてもそういう議論がなされてこの修正に及んだわけでありますが、新設の刑訴法の281条の4第1項は、被告人、弁護人又はこれらであった者による開示目的の目的外使用を一般的に禁止するものであります。ただし、当然のことながら、同じく同項に違反する行為であったとしても、違反に係る複製等の内容やあるいは違反行為の目的、態様など、同条第2項に掲げたものを始めとするいろんな事情によって違反の悪質性の程度は相当に異なるものがあるというふうに思われます。例えば、違反に係る証拠が被害者の日記等のプライバシー性の高いものであるかどうか、あるいは営利目的によるものかどうか、さらにはインターネットで広く公開するなど不特定多数の者に対して提供をするものであるかどうかなど、事情によって悪質性の程度は大きく違うというふうに思われます。そこで、281条第2項として、被告人らが同条第1項の規定に違反した場合の措置を取るに当たっては、同条第2項に例示したものを始めとする諸事情を考慮すべきであるということを注意的に明らかにすることとしたものであります。したがいまして、例えば281条の4第1項に違反する行為によって関係人の名誉を害したかどうかなどを始めとする諸事情を考慮した上で、関係人の名誉が害されていないということが有利な事情の一つとして勘案し、当該違反行為に対して懲戒処分等の措置までは必要がないというふうに判断される場合が十分あり得るというふうに考えております。目的外使用禁止の対象となるもの、対象とならないもの刑事記録の目的外使用が法律で禁止され、違反すると刑事罰が科されるのは、被告人・弁護人(または被告人・弁護人であった者)が、刑事裁判の審理の準備のために検察官から開示された証拠の複製等を、審理の準備以外の目的で使用することです。すなわち、こういうことです規制の対象者は、被告人・弁護人または被告人・弁護人であった者です。⇒それ以外の者は、この対象ではありません。規制対象となる刑事記録は、現に係属する刑事事件に関し、被告人・弁護人が訴訟準備できるよう検察官から開示された証拠です。⇒訴訟終結後の刑事確定訴訟記録は、対象ではありません。規制対象となる行為は、検察から開示された証拠の複製そのものを出すことです。⇒概要を出すことまで、禁止するものではありません。国会審議を通じて明確になった法解釈開示証拠の目的外使用禁止の解釈について、国会の議論により明確になった点を、国会会議録から一部抜粋しておきます。参議院 本会議(平成16年4月28日)〇井上哲士・参議院議員更に重大なことは、被告人の防御権、弁護権を著しく侵害しかねない問題点が含まれていることです。その一つが、開示された証拠をその審理の準備以外の目的で使用することを一律に禁止していることです。これまで、無実を訴える被告人が、開示された証拠の問題点を指摘し、批判する文書を配布して支援を求める活動がなされてきました。かつての松川事件や死刑再審事件など、多くの国民が公開された訴訟記録をよく検討して真実を訴え、公正な裁判を求めることにより、冤罪が晴らされたことは少なくありません。開示された証拠の目的外使用の禁止は、こうした活動を妨げ、裁判公開の原則にも反します。衆議院で修正され、正当な理由がある場合は配慮する規定が入りましたが、禁止規定は残ったままです。被告人の防御権の擁護のためには、禁止規定自体を外すべきではありませんか。答弁を求めます。〇野沢太三・法務大臣次に、開示証拠の目的外使用の禁止についてお尋ねがありました。検察官による証拠開示につきましては、あくまでも現に係属する被告事件について十分に争点を整理するとともに、被告人、弁護人が訴訟準備を十分に整えることができるようにするために行われるものであります。また、開示証拠の複製等を本来の目的以外の目的で第三者に交付することなどが許されるものとすると、プライバシーの侵害などの弊害が拡大するおそれが大きく、また、そのことを考慮することにより、かえって証拠開示の範囲が狭くなると考えられます。他方、現行法におきましては、開示証拠の取扱いに関する明確なルールは定められておらず、開示証拠の複製等が暴力団関係者に流出したり、雑誌やインターネットで公開された事例が発生しております。そこで、開示証拠が本来の目的にのみ使用されることを担保し、証拠開示がされやすい環境を整えるため、被告人、弁護人は、開示証拠の複製等を本来の目的である被告事件の審理の準備等の目的にのみ使用すべきことを法律上明らかにする必要があるものと考えております。御指摘のように、開示証拠の問題点を指摘し、一般の支援を求めることが必要であるとしましても、あえて開示証拠のコピーをそのまま引用するのではなく、その概要を明らかにすることによってその目的は達せられると考えられますが、今回の法案はそのような行為を禁止するものではありません。参議院 法務委員会(平成16年5月18日)〇井上哲士・参議院議員開示証拠の目的外使用の禁止ということが盛り込まれているわけですが、この281条の4で、この手続又はその準備に使用する以外禁止と、こうなっているわけですね。この手続又はその準備に使用というのはどこまでが含まれるのかということをまずお聞きするんですが、実質的に弁護活動や訴訟活動のために使用するのであれば、その開示証拠に触れる人物が当該事件の被告人や弁護人の範囲を超えていてもこれは構わないのか、それとも被告人、弁護人の範囲を超えれば目的外使用になってしまうのかと、こういうことなんです。これが駄目だということになりますと、例えば弁護人の側が開示された証拠の鑑定を専門家に依頼するいわゆる私的鑑定など、こういうものが不可能になってくるわけで、この点はどのように考えているんでしょうか。〇山崎潮・司法制度改革推進本部事務局長ただいま御指摘のその弁護人が自ら鑑定を依頼した鑑定人に開示証拠のコピーを渡すというような場合だろうと思いますけれども、これにつきましては、その鑑定が当該事件における検察官の主張事実のその真実性ですね、これを調査することを目的とするということなど、自ら担当する被告事件の審理の準備のためであるという場合には、その鑑定のための資料として開示証拠のコピーを交付すること、これは禁止されるものではないということでございます。〇井上哲士・参議院議員目的外使用を禁止する「証拠に係る複製等」の解釈でありますが、「複製その他の証拠の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面」と、こうなっておりますが、これどういうものを指すんだろうかと。例えば供述調書のような書面の場合に、固有名詞、それから日時、これを黒塗りをするなど、こういう処理をした物というのは、この「全部、一部をそのまま記録した書面」ということに当たるということになるんでしょうか。〇山崎潮・司法制度改革推進本部事務局長これは具体的な事案に照らして判断する必要があるというふうに考えております。ただ、一般的に言えば、開示された供述調書の記載を加工、修正した物については「一部をそのまま記録した書面」に該当する場合もあり得ますけれども、それ以外の場合にはその証拠の複製等には該当しないということでございまして、抽象的でちょっと分かりにくいわけでございますけれども、例えば一つ例示的に言えば、被告人の自白調書におきまして固有名詞をすべて修正、加工したとしましても、被告人以外の者が登場しないような物について、あとは被害者ぐらいですね、そういうような物については、その場面についてその供述内容がそのまま残っているような場合、そのような場合には「一部をそのまま記録した書面」に該当し得る場合もあるということになります。あと、それからもう一つ、それに当たらないというような場合につきましては、登場人物が複数ある、それから場所もいろいろ複数あったり、日時もあるということで、そこを全部墨塗り等をするということによって、その具体的なストーリーというんですかね、それがどうも分かりにくくなっているというようなことになれば、これはもう複製としてそのまま外へ出したということにはならないということになりますので、その事案事案によって具体的に判断がされるということでございます。〇井上哲士・参議院議員逆に、文章としては要約をしてあるけれども固有名詞等は残っていると、こういうこともあろうかと思うんですけれども、こういう場合はどうなるんでしょうか。〇山崎潮・司法制度改革推進本部事務局長ここで禁止しているのは、複製がそのまま出るということを禁止しているわけでございまして、その全体を概要をまとめて出すということについては禁じているわけではないということでございます。〇井上哲士・参議院議員その場合に、固有名詞が残っている場合であっても禁じているわけでないと、こういうことでよろしいわけですね。〇山崎潮・司法制度改革推進本部事務局長要約している場合には、固有名詞が出てもそれは仕方がないということでございます。〇井上哲士・参議院議員再審請求などをされているいろんな支援運動の方からもこの目的外使用についてのいろんな批判の声が出ておりますが、その確定した事件の場合に、刑事確定訴訟記録法によって記録を謄写をしているという場合があります。これに基づいてこの再審請求の準備を行ったり、この記録の謄写を用いて宣伝活動をするという場合があるわけですが、こういう確定記録に含まれる開示証拠、これを目的外使用した場合というのはこの法の対象にはならないと、こういうことでよろしいでしょうか。〇山崎潮・司法制度改革推進本部事務局長改正法案の281条の4の証拠の複製等の目的外使用の規制でございますけれども、これは検察官において被告事件の審理の準備のために開示した証拠を対象にするという、そういう趣旨でございます。今御指摘がございました刑事確定訴訟記録法の規定によって記録を閲覧、謄写した場合、この場合につきましては、先ほど申し上げました281条の4による目的外使用規制の禁止対象とはならないということで考えております。目的外使用禁止の適用対象でない場合上記の場合以外は、法律で目的外使用が一律に禁止されたり、ましてや刑事罰が科されるようなことはありません。もっとも、法律で禁止されていないからといって、入手した刑事記録をどう扱ってもよい、ということではありません。刑事記録には、事件の加害者や被害者、関係者のプライバシーに関わる事実が記録されています。利用の仕方いかんによっては、その人たちに多大な被害を及ぼす恐れがあります。公判のどのタイミングで刑事記録の閲覧・謄写を請求するかによって、その根拠法が異なり、したがって使用を規制する法律、規制の内容が異なります。いずれにしても、開示された刑事記録から知り得たことをみだりに用いて、不当に関係人の名誉や生活の平穏を害する行為は許されず、捜査や公判に支障が生じることのないよう、取扱いに注意することが義務づけられます。その義務に違反し、関係者の名誉や生活の平穏を害した場合には、刑事罰は受けないものの、その被害者のみならず社会からも非難を受け、被害者から訴訟を起こされるリスクを負うこととなります。交通事故の被害者が刑事記録(実況見分調書等)を請求する方法はこちらなぜ、目的外使用を禁止する規定が設けられたのか?開示証拠の目的外使用の禁止規定が設けられた背景には、このとき(平成16年)の刑事訴訟法の一部改正により、証拠開示制度が創設されたことがあります。それまでは証拠開示に関する明文規定はなく、個別の事案において、弁護人から申出があった場合に、裁判所が訴訟指揮権にもとづき証拠開示を命じるという運用がなされていました。こうした運用は、次の最高裁決定にもとづきます。最高裁判所第二小法廷決定(昭和44年(1969年)4月25日)裁判所は、証拠調の段階に入った後、弁護人から、具体的必要性を示して、一定の証拠を弁護人に閲覧させるよう検察官に命ぜられたい旨の申出がなされた場合、事案の性質、審理の状況、閲覧を求める証拠の種類および内容、閲覧の時期、程度および方法、その他諸般の事情を勘案し、その閲覧が被告人の防禦のため特に重要であり、かつこれにより罪証隠滅、証人威迫等の弊害を招来するおそれがなく、相当と認めるときは、その訴訟指揮権に基づき、検察官に対し、その所持する証拠を弁護人に閲覧させることを命ずることができる。一定の証拠開示が認められていたとはいえ、裁判所が裁量によって命じるものに過ぎませんでした。そこで、平成16年の刑事訴訟法の一部改正により、証拠開示制度が創設されたのです。併せて公判前整理手続の制度も創設されました。公判前整理手続に組み込まれる形で、証拠開示制度が創設されたのです。証拠開示制度の導入で証拠開示が拡充従前は証拠調べの段階に入った後に、証拠開示の申出をすることができることになっていましたが、公判前整理手続が導入され、その段階で証拠の開示を求めることができることになりました。また、証拠開示制度の導入により、証拠の開示範囲も拡充されました。検察官は、公判前整理手続において、取調べを請求した証拠書類・証拠物を開示するほか、証人等の尋問を請求した場合には、以前のように証人等の氏名・住居を知る機会を与えるというだけではなく、その供述内容が明らかとなる供述調書等を開示しなければならない、とされています(刑事訴訟法316条の14)。検察官が取調べを請求した証拠以外の証拠についても、公判前整理手続の段階から、被告人・弁護人の請求によって提出していくという手続を設けました。(類型証拠の開示=刑事訴訟法316条の15、主張関連証拠の開示=刑事訴訟法316条の20)こうした新たな制度の創設により、従前よりも証拠開示の拡充が期待できる一方、開示証拠の取扱いルールがないため、プライバシーの侵害などの弊害が拡大する恐れがあるという理由から、開示証拠の目的外使用の禁止規定が盛り込まれたのです。平成28年(2016年)の刑事訴訟法の一部改正では、さらに、検察官が保管する証拠の一覧表を被告人側に交付する手続きが導入され(刑訴法316条の14第2項~第5項)、証拠のリストを手がかりとして、証拠の開示請求が可能となりました。証拠開示制度の導入に関する国会での議論証拠開示制度に関する国会審議における答弁を一部抜粋しておきます。質問は要旨のみとしました。参議院 法務委員会(平成16年5月13日)〇吉田博美・参議院議員(自由民主党)この改正案では証拠開示制度の拡充を図っているが、その趣旨は?〇野沢太三・法務大臣刑事裁判の充実、迅速化のためには、事件の争点を中心とした無駄のない充実した審理をできるだけ連続して行うことが肝要であることからいたしまして、今回の法案では、十分な争点整理を行いまして明確な審理計画を立てるための公判前整理手続を創設することとしておるわけでございます。そして、被告人、弁護人が公判前の整理手続におきまして公判でする予定の主張を明らかにし、十分に争点整理を行うとともに、防御の準備を十分に整えることができるようにするためには、その前提として、それを可能にするだけの証拠が開示される必要があります。そこで、今回の法案では、争点整理と被告人の防御の準備に十分な証拠が開示されるよう、検察官による証拠開示を拡充することとしたものでございます。〇吉田博美・参議院議員この改正案による証拠開示制度は、現行の制度に比べ、どの点でどのように開示が拡充されているのか?〇山崎潮・司法制度改革推進本部事務局長現行の刑事訴訟法では、検察官は証人等の尋問を請求する場合には、その氏名及び住居を知る機会を与え、それからまた証拠書類、それから証拠物もありますけれども、この取調べを請求する場合には、これを閲覧する機会、これを与えなければならないというふうにされているわけでございます。これが基本の考え方でございます。これに対しまして今回の法案では、まず、検察官が取調べを請求した証拠の開示の範囲を拡充しているわけでございます。すなわち、検察官は公判前の整理手続において、取調べを請求した証拠書類、それから証拠物、これを開示するほか、証人尋問、証人等の尋問を請求した場合について、現行制度のように証人等の氏名及び住居、これを知る機会を与えるというだけではなくて、その供述内容が明らかとなる供述調書等、これを開示しなければならないということにされているわけでございまして、そこで現在ともう手続は一つ違うということでございます。それから、検察官が取調べを請求した証拠以外の証拠、これに関しても、公判前整理手続の段階から、被告人、弁護人の請求によって提出をしていくという手続を設けているわけでございます。具体的には、検察官が取調べを請求した証拠の証明力、これを判断するために重要な一定類型の証拠、あるいは被告人、弁護人が明らかにした主張に関連する証拠、こういうものにつきまして、開示の必要性とそれを出すことによる弊害、これを両方を考えまして開示すべきものは開示しなければならない、こういう手続を新たに置くということでございます。参議院 法務委員会(平成16年5月18日)〇井上哲士・参議院議員検察官の手持ち証拠の開示については1969年(昭和44年)の最高裁の判例があるが、今回の法案で新たに設けられる証拠開示手続というのは、この69年の判例と比較してどこがどう違っているのか?〇山崎潮・司法制度改革推進本部事務局長何点か違う点がございます。まず、公判前の証拠開示の拡充という点でございます。この判例では、証拠調べの段階に入った後に証拠開示の申出をすることができるということになっておりますが、今回は公判前整理手続というものを導入するわけでございますので、その段階で開示を求めることができるという点が時期的にも違うと。それから、その内容でございますけれども、まず検察官が取調べを請求した証人等の供述調書等、これを開示しなければならない、これが一つでございます。それから、検察官が取調べを請求した証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠、これも開示しなければならないと。それから、被告人、弁護人が明らかにした主張に関連する証拠ですね、これについても開示の必要性と弊害、これを勘案しながら開示をしなければならないというふうにしているわけでございまして、かなり開示すべきものの範囲を明確にしているということでございます。それからもう一つは、その開示請求のその特定性の緩和という問題でございますけれども、この判例では一定の証拠についてその申出をする必要があるというふうにされておりますけれども、ここのこの新しい今私どもの御提案している制度では、当該証拠を識別するに足りる事項、すなわちその証拠の類型及びその範囲を明らかにすれば足りるということにしておりますので、例えば犯行現場で押収された証拠物、犯行の目撃者の供述調書とか、こういうような特定で足りるということにしているわけでございます。それからもう一点ございますけれども、現行の制度では、裁判所に開示命令の申出をいたしまして裁判所が開示命令を発しなかったという場合も、職権発動を促したにすぎないということから不服申立てをすることができないというのが現在のものでございます。これに対しまして、今回の制度では、これに対して、検察官が開示をしなかった場合には裁判所に対して裁定を求めることができるということでございまして、裁判所がこれで裁定をしない、開示をしないということであればその不服申立てをすることができるということで、即時抗告も可能にしているということで、かなり判例上の運用でやるものとは大きく違っているということを御理解賜りたいと思います。被害者が閲覧・謄写した刑事記録の使用規制ここまでは、公判において、争点整理と被告人の防御の準備のために、検察が被告人側に開示する証拠の話でした。被告人・弁護人が、訴訟準備以外の目的で開示証拠を使用することを禁止し、違反した場合には刑事罰が科されます。それでは、被害者が刑事記録(実況見分調書・供述調書など)の開示を請求する場合は、どうなのでしょうか?被害者は、刑事訴訟係属中は犯罪被害者保護法3条により、刑事訴訟終結後は刑事訴訟法53条により、それぞれ閲覧・謄写が可能です。被害者が刑事記録を入手する方法はこちらで説明していますので、ここでは、取得した刑事記録の使用規制について見ていきます。刑事訴訟の係属中に取得した刑事記録の使用規制被害者は、犯罪被害者保護法(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律)第3条1項により、公判中でも刑事記録の閲覧・謄写が認められます。犯罪被害者保護法3条(被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)第1項 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。第2項 裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。第3項 第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。第2項で、「裁判所は、…謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる」と定めています。「裁判所が、使用目的を制限し、条件を付することができる」という規定であって、明文で目的外使用を禁止するものではありません。第3項では、「閲覧・謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉・生活の平穏を害し、捜査・公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない」と、注意義務規定があるだけです。刑事罰まではありません。訴訟終結後の刑事確定訴訟記録の使用規制刑事訴訟終結後の確定訴訟記録は、訴訟記録の保存、裁判所・検察庁の事務に支障のない限り、原則として、誰でも閲覧可能という建前です(刑事訴訟法53条1項)。刑事訴訟法53条第1項 何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。第2項 弁論の公開を禁止した事件の訴訟記録又は一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録は、前項の規定にかかわらず、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があって特に訴訟記録の保管者の許可を受けた者でなければ、これを閲覧することができない。第3項 日本国憲法第82条第2項但書に掲げる事件については、閲覧を禁止することはできない。第4項 訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。第3項の「日本国憲法第82条第2項但書に掲げる事件」とは、「政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件」です。刑事確定訴訟記録の閲覧が認められないのは、刑事訴訟法53条1項ただし書に該当する場合(訴訟記録の保存、裁判所・検察庁の事務に支障のあるとき)と、同2項に該当する場合(弁論の公開を禁止した事件、一般の閲覧が禁止された訴訟記録)です。ただし、第2項については、訴訟関係人や閲覧につき正当な理由があって訴訟記録の保管者の許可を受けた者は閲覧できます。その他、刑事確定訴訟記録法4条2項で、閲覧を認めない場合を定めていますが、これらも、訴訟関係人や閲覧につき正当な理由があると認められる者は閲覧できます。刑事確定訴訟記録法4条刑事確定訴訟記録法4条(保管記録の閲覧)第1項 保管検察官は、請求があったときは、保管記録(刑事訴訟法第53条第1項の訴訟記録に限る。次項において同じ。)を閲覧させなければならない。ただし、同条第1項ただし書に規定する事由がある場合は、この限りでない。第2項 保管検察官は、保管記録が刑事訴訟法第53条第3項に規定する事件のものである場合を除き、次に掲げる場合には、保管記録(第二号の場合にあっては、終局裁判の裁判書を除く。)を閲覧させないものとする。ただし、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があった場合については、この限りでない。一 保管記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき。二 保管記録に係る被告事件が終結した後3年を経過したとき。三 保管記録を閲覧させることが公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき。四 保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。五 保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。六 保管記録を閲覧させることが裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者の個人を特定させることとなるおそれがあると認められるとき。第3項 第1項の規定は、刑事訴訟法第53条第1項の訴訟記録以外の保管記録について、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があった場合に準用する。第4項 保管検察官は、保管記録を閲覧させる場合において、その保存のため適当と認めるときは、原本の閲覧が必要である場合を除き、その謄本を閲覧させることができる。なお、開示された刑事確定訴訟記録の使用規制については、次のように定めています。刑事罰まではありません。刑事確定訴訟記録法6条(閲覧者の義務)保管記録又は再審保存記録を閲覧した者は、閲覧により知り得た事項をみだりに用いて、公の秩序若しくは善良の風俗を害し、犯人の改善及び更生を妨げ、又は関係人の名誉若しくは生活の平穏を害する行為をしてはならない。捜査当局が集めた証拠は、だれのもの?最後に、捜査当局(警察・検察)が集めた証拠は、誰のものか、本来どのように使われるべきものか、を考えてみましょう。これは、証拠開示の拡充や、開示証拠の目的外使用の禁止を考える上で、大事な点です。証拠は、真実を明らかにするためにこそ使われるべきもの捜査当局(警察・検察)が集めた証拠は、国民の税金を使って集められたものです。そうやって集められた証拠は、真実を明らかにするためにこそ使われるべきです。刑事訴訟法は、第1条で「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする」と規定しています。つまり、刑事訴訟法の目的は、「事案の真相を明らかに」することです。そして「刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現すること」です。それを「公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ」実現することです。ここで「個人の基本的人権の保障を全うしつつ」というのは、刑事手続に関わる全ての人の基本的人権の保障を全うすることですが、その中心は、被疑者の基本的人権の保障です。つまり、捜査当局が集めた証拠は、「公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかに」するためにこそ使われるべきものなのです。そのために、原則として証拠の全面的な開示が必要なのです。参議院 法務委員会(平成16年5月18日)〇井上哲士 参議院議員捜査当局が集めた証拠というのは一体だれのものか。本来、国民の税金を使って集められた証拠というものは、言わば有罪を得るためではなくて、真実発見のためにこそ使われるべきだと思うんですけれども、ここの基本的認識について、大臣にお聞きをいたします。〇野沢太三 法務大臣これは大変明確でございまして、検察官が収集した証拠は、「公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現すること」ということで、これはもう刑事訴訟法第一条の大原則でございまして、この刑事訴訟の目的が的確に果たされますように用いられるべきものであると考えておるところでございます。〇井上哲士 参議院議員捜査当局が税金使って集めた証拠は正に真実発見のために使われるものであるということでいいますと、できるだけ開示する、全面的に開示することが必要だという結論に私はなると思うんですね。刑事裁判終結後の刑事確定訴訟記録は誰のもの?刑事裁判終結後の刑事確定訴訟記録は、刑事訴訟法53条で、何人も閲覧できるとしながら、刑事確定訴訟記録法4条2項で閲覧させない場合を定めています。この第4条2項各号を見ると分かるように、解釈次第で閲覧を拒否できるため、保管検察官による恣意的な運用を生む余地があります。刑事訴訟法は、日本国憲法の施行を踏まえて、1948年(昭和23年)に全く新しい法律として成立しました。当時の国会で、第53条について、次のように提案理由を説明しています。第2回国会 参議院 司法委員会(昭和23年6月10日)宮下明義・法務廳事務官次は五十三條の規定でございまするが、これは全く新らしい規定でございまして、被告事件がすべて終結した後に、その確定記録を一般國民に公開する制度を新たに規定したわけでございます。勿論、記録の保存或いは裁判所、檢察廳の事務に支障を生じてはなりませんので、その支障のない場合に限つて、何人も訴訟記録の閲覽を請求することができるという趣旨の規定を設けたわけであります。而して第二項において、辯論の公開を禁止した事件の訴訟記録及び一般の閲覽に供しては適當でないと考えられる事件で禁止をしたもの、それらについては、特に許可した場合でなければ閲覽を許さない。併しながら日本國憲法八十二條の第二項但書の事件は、政治的な事件でありまするので、このような事件は絶對に閲覽を禁止することはできない、必ず公開するという建前をとりまして、裁判の公明明朗を期待したわけでございます。このように、民主化を進め、裁判の公正さを確保するため、刑事訴訟記録の公開制度は生まれたのです。刑事確定訴訟記録の開示は、刑事裁判が公正に行われたか点検をする上で重要です。また、政治家や行政が絡む事件の場合、時の政治や行政がどのように歪められたのかなど、事件の内容・背景の検証にも役立ちます。刑事確定訴訟記録の開示は、裁判の公開(憲法82条)と知る権利(憲法21条)に密接に関わる制度なのです。日弁連は、「刑事確定訴訟記録は、公的記録として、後日、人々に有意義な示唆を与える可能性があり、公文書管理法に規定する『国民共有の知的資源』(第1条)というべきものである」と位置づけています。(日弁連「刑事確定訴訟記録の保管、保存及び閲覧等に関する法改正及び運用改善に関する意見書」2020年9月10日)刑事裁判記録は誰のものかを考えると、法の原則にしたがって、誰でもが閲覧できるようにすることが重要です。まとめ検察が刑事確定訴訟記録の開示を制限したり、開示しても使用に必要以上の制約を課したりすることがあるようですので、自信をもって閲覧・謄写を請求し、刑事記録を真実の解明に役立てることが大切です。交通事故事件の刑事記録(実況見分調書や供述調書など)の入手方法はこちらで説明しています。刑事確定記録は誰でも閲覧できるというのが建前ですが、やはり、弁護士に任せるのがベストです。事故態様や過失割合に争いがあり、実況見分調書などの刑事記録の入手が必要な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・国会会議録・川出敏裕・東京大学教授「証拠開示制度の現状と課題」J-STAGE・福島至・龍谷大学教授「刑事裁判記録は誰のものか」NHK解説委員室・日弁連「刑事確定訴訟記録の保管、保存及び閲覧等に関する法改正及び運用改善に関する意見書」2020年(令和2年)9月10日
    Read More