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交通事故の被害者が死亡した場合、葬儀関係費と遺体搬送料を損害として賠償請求できます。
事故後に治療を受けた場合は、死亡するまでの治療費や付添看護費などの積極損害も、損害賠償請求できます。
葬儀関係費用について、ほぼ一定の金額を損害として認めています。
裁判所基準では 150万円程度です。これを下回る場合は、実際に支出した額(実費)となります。
葬儀費用について、『青本25訂版』では130万~170万円を基準額とし、『赤い本2016年版』では原則として150万円としています。
かつて、葬儀費は損害と認められるか否か、の争いがあったようです。人は交通事故に遭わなくても、いずれは死ぬ運命にあり、そのときには葬儀費がかかるからです。
これについて最高裁が、1968年(昭和43年)10月3日に、葬儀費用を損害と認める判決を出しました。
遺族の負担した葬式費用は、それが特に不相当なものでないかぎり、人の死亡事故によつて生じた必要的出費として、加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であり、人が早晩死亡すべきことをもつて、賠償を免れる理由とすることはできない。
個々の被害者について、社会通念からみて必要かつ相当とされる葬儀費用等を客観的に算出することは容易ではないこと、実際の葬儀等においては、香典収入等があるため、遺族が負担する金額は基準額に近くなること、などが理由とされています。
なお、香典は、損害を補填するものではないので、損害賠償額から控除されません。
(最高裁判決 1968年10月3日)
突然の事故で被害者がなくなり、遺族がその対応に追われる中、領収書がなければ賠償しないという運用は適切ではありません。例えば、お布施などは、たいてい領収書をもらいません。
150万円未満の領収書しか手元にない場合でも、示談交渉では、実際に支出したお布施等の葬儀関係費を主張し、基準額を認めさせることが大切です。
特段の事情(例えば、被害者が一定の社会的地位にあったような場合など)があれば、基準額を超える葬儀関係費用が認められる場合もあります。
しかし、基準額を超える葬儀関係費用を認める裁判例は、多くはありません。
※参考:『新版 交通事故の法律相談』(学陽書房)
葬儀費としては、火葬・埋葬料、読経・法名料、布施・供物料、花代、通信費、広告費、葬儀社に支払う費用が認められます。
そのほか、弔問客に対する饗応・接待費、遺族の交通費、49日忌までの法要費などは、相当なものに限り認められます。
遺族の帰国費用も、必要かつ相当な金額が認められます。
遺族以外の葬式参列のための交通費、引出物代、香典返し、49日忌を超える法要費などは認められません。
香典返しは損害として認められませんが、香典相当額が損害額から控除されることもありません。
葬儀費とは別に、仏壇・仏具購入費、墓碑建立費、墓地・墓石購入費も、判例では損害と認めています。
これらは、耐久財として将来、遺族のためにも使用される可能性があるものですが、積極損害として認められます。ただし、別途相当額を加算する例と、葬儀費用に含まれるとして加算しない例があります。
被害者の遺体を搬送する費用は、葬儀費用とは別個の損害として認められます。
裁判では、遠隔地で死亡した被害者の遺体を住所地まで空路で搬送した費用や、病院から葬儀場までの搬送費用を認めたものがあります。
葬儀関係費用について、裁判所基準と自賠責保険基準の違いをまとめておきます。
被害者側は裁判所基準で損害額を算定し、賠償請求することで、適正な賠償額を受け取ることができます。
裁判所基準 | 自賠責保険基準 | |
---|---|---|
葬儀費 |
130万~170万円。 |
100万円 |
その他 | 墓地・墓石・仏壇購入費も認められる。 | 墓地購入費は認められない。 |
※自賠責の葬儀費は、2020年3月31日までの事故については、60万円(立証資料等により100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費)でしたが、2020年4月1日以降の事故については、100万円に改訂されています。
交通事故で被害者が死亡した場合は、積極損害として葬儀関係費用を賠償請求できます。事故後に治療を行っていた場合は、治療費も別途請求できます。
葬儀費は定額化されています。葬儀にかかった費用だけでなく、墓地・墓石・仏壇購入費なども損害として認められます。
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