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追突事故は、基本的に、追突された車(被追突車)に過失はなく、追突した車(追突車)に100%の過失があります。
ただし、被追突車が、危険回避のためなど「やむを得ない理由」がないのに急ブレーキをかけ、急停止したことが、追突事故の要因となった場合は、被追突車にも過失が認められます。
追突事故の過失割合の基本的な考え方について、過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ38)を参考に見ていきましょう。
交通規制に従って停止した車に衝突した事故
「赤信号や一時停止の規制に従って停止した車」や「渋滞などで停止した車」に後続車が追突した場合は、原則として追突車に100%の責任があります。
したがって、過失割合はこうなります。
追突車A:被追突車B=100:0
なぜ、追突車の過失割合が100%になるのかというと、他の車の直後を走行する車には、前方注視義務(道交法70条)や車間距離保持義務(道交法26条)があるからです。
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
特に、車間距離保持義務(道交法26条)違反は、裁判でも厳しく問われます。法律条文に、前車が急停止したときでも「追突するのを避けることができるため必要な距離」を保たなければならないと、はっきり書いているからです。
もっとも、追突事故の原因は、車間距離保持義務違反だけではありません。
必要な車間距離を保持していても、脇見をしていて前車が急停止したことの発見が遅れ、追突することもあります。この場合は、安全運転義務(道交法70条)違反が問われます。
また、必要な車間距離を保持していても、ブレーキのききが悪くて衝突した場合は、整備不良車の運転禁止(道交法62条)違反が問われます。
いずれにせよ、過失割合は、追突車の側に100%認められるのが普通です。
理由なく急ブレーキをかけた車に衝突した事故
道路交通法では、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、急ブレーキをかけてはならない(道交法24条)とされています。
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、またはその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
したがって、危険を回避するために、やむを得ず急ブレーキをかけた場合を除き、前車が急ブレーキをかけ、後続車が追突した場合は、前車(被追突車)も一定の過失責任を負うことになります。
基本的に、追突車の前方不注視(道交法70条)や車間距離不保持(道交法26条)が重く、基本の過失割合は、次のようになります。
追突車A:被追突車B=70:30
おもな修正要素を挙げておきます。
追突車Aに、15㎞/h以上の速度違反がある場合は10%程度、30㎞/h以上の速度違反がある場合は20%程度が、追突車Aに加算されます。
住宅街や商店街などは歩行者が多く、急ブレーキをかけたり、減速したりすることがあります。歩行者が横断するものと見誤り、結果的に理由のない急ブレーキになるケースもあり得ます。
後続車も、そのような事態を予測して運転する必要があるので、住宅街や商店街での追突事故は、追突車Aに10%程度が加算されます。
幹線道路では、車の流れに従って走行するのが通常ですから、幹線道路の走行車線上で理由のない急ブレーキをかけて後続車に追突された場合は、被追突車Bに10%程度が加算されます。
ブレーキランプ(制動灯)が故障して点灯しない場合のほか、泥などによる汚れのため法定の照度がない場合、夜間にテールランプが点灯していない場合なども、被追突車Bに10~20%程度が加算されます。
「必要な車間距離をとっていたか否か」が争いとなっている場合は、こちらを参考にしてみてください。
前車が急停車したときでも追突を避けることができるために必要な車間距離の基準としては、「警視庁管内自動車交通の指示事項」があります。これは、裁判でも参考にする基準です。
「警視庁管内自動車交通の指示事項」は、必要な車間距離について、乾燥した平たん舗装路面における基準として次のように定めています。
速度(㎞/h) | 必要な車間距離(m) |
---|---|
55 | 20 |
50 | 18 |
45 | 17 |
40 | 15 |
35 | 13 |
32 | 10 |
30 | 9 |
25 | 8 |
20 | 6 |
15 | 5 |
10 | 4 |
8 | 3 |
※参考:16-2訂版『道路交通法解説』東京法令出版
乾燥した舗装道路では、約16㎞/hごとに普通乗用車の長さの1車長(約6m)を加えた車間距離(雨天の場合はその2倍)をとれば、おおむね前車が急停止しても追突を避けることができるとされています(16-2訂版『道路交通法解説』東京法令出版)。
「警視庁管内自動車交通の指示事項は、特殊の事情のない限り、通常妥当する基準として信頼してしかるべきもの」(仙台高裁判決・昭和46年6月8日)です。
ただし、「必要な距離は、車両等の種類、構造、速度、性能、道路の状況、昼夜の別、見透しの状況、積載量、制動操作の運転技術等の諸条件によって異なる」(名古屋高裁判決・昭和30年3月10日)ことはいうまでもありません。
したがって、「基準」を参考にしつつも、実際の追突事故における諸条件を考慮し、個別に必要な車間距離を判断することが必要です。
追突事故は、原則として、追突した車が一方的に悪く、過失割合は追突車が100%となります。後続車には、前方注視義務や、前車が急停止したときに追突しないよう必要な車間距離を保持する義務があるからです。
ただし、追突された車が、危険を回避するためにやむを得ないといった理由もなく急ブレーキをかけた場合や、ブレーキランプが故障していた場合などは、追突された車の側にも過失が認められることがあります。
追突事故で過失割合に納得できない場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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【参考文献】
・『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』(別冊判例タイムズ38)
・『道路交通法解説16-2訂版』東京法令出版