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  • 整骨院のまえに整形外科にかかる
    交通事故で接骨院・整骨院にかかる前に整形外科を受診すべき理由
    「なぜ、整骨院や接骨院にかかる前に整形外科を受診しなければいけないのか?」というと、次のような理由から治療費などの損害賠償を受けられないことがあるからです。接骨院や整骨院は、診断書や後遺障害診断書が書けない。医師の指示がないと、接骨院や整骨院の施術費は治療費(損害)として認められにくい。それぞれ詳しく見ていきましょう。接骨院・整骨院では、診断書や後遺障害診断書を書けない接骨院や整骨院では、損害賠償請求に必要な診断書や後遺障害診断書が書けません。接骨院や整骨院の先生は、国家資格を有する柔道整復師ですが、医師ではありません。医師でなければ、診断書は書けないのです。特に、後遺障害診断書を書けないのは、後遺症が残った場合に致命的です。接骨院や整骨院では、診断書が書けなくても、それに代わるものとして施術証明書を書けますから、それで代用できる場合もありますが、後遺障害診断書に代わるものは、接骨院や整骨院にはないのです。柔道整復師の施術証明書では認められない場合があるもし、整形外科を受診せず、接骨院や整骨院だけに通っていたとしても、施術期間が短く、施術費が自賠責保険の範囲内で収まるような場合は大丈夫です。保険会社も、たいてい施術証明書・施術費明細書にもとづき施術費の支払いに応じます。しかし、施術期間が長期化する場合は、施術証明書では足りず、医師の診断書が必要になります。医師は、医学的知見や検査結果にもとづき総合的な診断ができますが、柔道整復師は、国家資格を有しているとはいえ、限界があるからです。残念ながら保険会社は、医師による診断書や診療報酬明細書に比べ、施術証明書や施術費請求書を軽視する傾向があります。これは、裁判所も同様です。後遺障害診断書を取得するには整形外科を受診しなければいけない特に問題なのが、後遺症が残る場合です。治療の効果が見られなくなれば、症状固定と判断し、後遺障害に対する損害賠償を請求することになります。後遺障害の損害賠償を請求するには、後遺障害等級の認定を受けなければいけませんが、それには後遺障害診断書が必要です。これは、医師でなければ書けません。つまり、整形外科を受診して後遺障害診断書を書いtもらわない限り、後遺障害の損害賠償請求はできないのです。それなら、後遺障害診断書を書いてもらうだけに整形外科を受診すればいいのかというと、それでは整形外科の医師は、後遺障害診断書を書いてくれません。後遺障害診断書は、当初の症状や治療の経過を知っていないと書けないからです。整形外科を受診すれば必ず後遺障害診断書を書いてもらえるとは限らない医師は、患者から診断書の作成を求められた場合、正当な理由がない限り拒否できないと法律で定められています(医師法第19条)。同時に、医師は、みずから診察しないで、治療し、診断書を交付することを法律で禁止されています(医師法第20条)。後遺障害診断書は、治療を施したものの残った症状について、後遺障害として後遺障害等級認定機関で認定してもらい、損害賠償を受けるために、自覚症状、他覚症状、検査結果、機能低下の程度、他覚的所見などについて記入し、作成するものです。ですから、当初の症状や検査結果、治療の経過、症状の改善程度を知っていないと、後遺障害診断書は書けないのです。医師が後遺障害診断書を作成できるケース・作成できないケースそれでは、どんな場合に後遺障害診断書の交付を受けられるのか、どんな場合に後遺障害診断書の作成が難しいのか、考えてみましょう。医師に後遺障害診断書の作成を依頼するために整形外科を受診するケースとしては、大きく3つのケースがあります。そのケースごとに、後遺障害診断書の作成が可能か、困難か、が分かれます。ケース1事故直後から、整形外科と接骨院・整骨院に並行して通院・通所していたケースです。これは、さらに2つのケースに分かれます。1.医師の指示あるいは承諾を得て、接骨院・整骨院に通所していた場合2.医師に相談せず、医師の承諾を得ずに、接骨院・整骨院に通所していた場合「1」の場合は、基本的に問題なく後遺障害診断書を作成してもらえます。「2」の場合は、微妙な問題があります。医師によっては嫌な顔をされることもあります。いずれにしても、この場合、医師は患者の経過を把握しているので、医師は接骨院・整骨院での施術内容や経過も参考にして後遺障害診断書を作成できます。「2」の場合は、「接骨院や整骨院の施術費が損害として認められない可能性が高まる」といった別の問題も生じます。ケース2事故直後に整形外科を受診したものの、その後は接骨院・整骨院に通い、後遺障害診断書の作成を依頼するために整形外科を受診するケースです。これも、さらに2つのケースに分かれます。1.診断書作成のために受診する整形外科が、当初受診した病院と同一の場合2.当初受診した整形外科と別の病院を受診し、診断書作成を依頼する場合この場合、医師は症状の経過を把握できていないので、後遺障害診断書の作成は困難です。特に「2」の場合は、当初の症状すら分かりません。こういう場合は、しばらく通院して、改めて後遺障害診断書の作成を依頼することになります。「2」の場合は、当初受診した整形外科を受診することも考える必要があります。作成してくれるとしても、医師は患者から聞ける情報をもとに作成せざるを得ません。後遺障害が認定される可能性は低くなります。ケース3事故直後から整形外科を全く受診せず、接骨院・整骨院で施術を受け、後遺障害診断書の作成を依頼するためだけに整形外科を受診するケースです。これは、ケース2の「2」の場合と基本的に同じです。受診した整形外科の医師には、当初の症状も治療経過も全く分かりませんから、後遺障害診断書の作成は困難です。しばらく通院して、改めて後遺障害診断書の作成を依頼するしかありません。また、作成するにしても、患者からの情報しかありませんから、後遺障害が認定される可能性が低くなります。このように、整形外科を受診していないと、後遺障害診断書の作成を依頼するためだけに整形外科を受診しても、後遺障害診断書は書いてもらえません。後遺障害が認定されず、後遺症に対する損害賠償を受けられなくなる恐れがあるので、交通事故による捻挫や打撲は、必ず整形外科を受診し、定期的に通院することが大切なのです。医師の指示がなければ施術費を損害として認められにくい接骨院や整骨院の施術費は、整形外科医師の指示がなければ、治療費(損害)として認められにくいのが実情です。保険会社はもちろん、裁判所も同じです。むしろ裁判になったときの方が、施術費が争われた場合、施術の必要性・合理性・相当性・有効性が問題となります。それが立証できなければ、裁判所は、施術費を認めなかったり、減額したりします。なぜ医師の指示がないと認められにくいのか?なぜ、医師の指示が必要かというと、医学的な見地からの総合的な判断は、医師でなければできないからです。そのほか、柔道整復師の施術は、医師の治療と比べて限界があること、施術者によって技術レベルが異なり施術の方法も多種多様であること、などの理由もあります。そのため、医師の指示のもと、治療の一環として柔道整復施術が行われた実態がなければ、施術費が治療費(損害)として認められにくいのです。施術期間が長くなるときは要注意接骨院や整骨院の柔道整復施術については、医療機関での治療より効果が高い場合があることは広く知られています。そのため、保険会社も裁判所も頭から柔道整復施術を否定することはありません。自費で施術を受けるのなら自分で納得いくまで通えばいいのですが、損害賠償となると事情が違います。「賠償すべき損害の範囲」をはっきりさせる必要があるからです。そのため、比較的短期間で治癒したときは問題となることはありませんが、むち打ち症などで施術が長期間に及び、施術の効果が見えにくい場合は、事故との相当因果関係が問題となるのです。保険会社は、いつまでも施術費を支払ってくれるわけではありません。医師による治療の場合でも治療費の支払い打ち切りがあるように、接骨院や整骨院の施術費も支払いの打ち切りがあります。保険会社が施術費の支払いを打ち切った後の施術費を損害賠償請求する場合は、医師の指示なしに施術を受けていると認められにくく、施術の必要性や有用性などの立証も困難であることを知っておいてください。病院・整形外科と整骨院・接骨院のメリットデメリット損害賠償の世界においては、医療機関よりも低く見られる接骨院や整骨院ですが、メリットがあります。だからこそ、交通事故による捻挫や打撲で接骨院や整骨院に通う方が多いのです。最後に、「病院・整形外科」と比べた「接骨院・整骨院」のメリット・デメリットをまとめておきます。患者が接骨院や整骨院へ通うことを嫌う医師もいますが、柔道整復施術の効果については広く知られており、多くの方が実感しているところです。必要に応じて、接骨院や整骨院を有効に活用してもよいでしょう。病院・整形外科接骨院・整骨院メリット診断書・後遺障害診断書を書いてもらえる。レントゲンやMRIなど画像診断ができる。外科手術や投薬ができる。手技の施術で丁寧に細かいところまで診てもらえる。比較的遅い時間まで営業しており、通いやすい。デメリット営業時間や待ち時間の問題で通院しにくく、通院間隔が空きがちになる。問診だけ処方箋だけの場合がある。むち打ち症などはレントゲンやMRIで異常なしと診断されることがある。診断書・後遺障害診断書を書いてもらえない。医師の指示がないと施術費が損害として認められにくい。外科手術や投薬はできない。まとめ短期間で治癒する場合は、接骨院や整骨院だけでも、保険会社は施術費を支払いますが、施術期間が長期になると、施術の必要性や有用性などが問題となります。まず最初に整形外科を受診して、医師の指示のもとで接骨院や整骨院に通うと、施術費の損害賠償が認められやすくなります。後遺症が残る場合は、後遺障害診断書を医師に書いてもらう必要があります。後遺障害診断書は、接骨院や整骨院の柔道整復師には書けないので、必ず整形外科を受診する必要があります。ただし、後遺障害診断書の作成を依頼するためだけに整形外科を受診しても、後遺障害診断書は書いてもらえません。そういったことも踏まえて、交通事故による捻挫や打撲は、まず整形外科を受診し、医師の指示のもとで、必要に応じて接骨院や整骨院に通うことが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 施術費が治療費と認められる要件
    交通事故で接骨院・整骨院の施術費が治療費として損害賠償される要件
    接骨院や整骨院の施術費が損害として認められるには、一定の要件を満たす必要があります。ここでは、接骨院・整骨院の施術費が損害として認められる要件、裁判例について、まとめています。接骨院・整骨院の施術費が損害として認められる要件接骨院・整骨院の施術費が、損害賠償の対象となる治療費として認められる要件は、大きく次の2つです。柔道整復の施術を受けることに「医師の指示」があること施術に必要性・合理性・相当性・有効性があることそれぞれ、詳しく見ていきましょう。柔道整復施術を受けることに「医師の指示」があること接骨院・整骨院での柔道整復施術は、医師の指示があれば「治療の一環」とみなされ、施術費が損害賠償の対象となる治療費として認められやすくなります。医師の指示には、消極的な承諾も含む医師の指示とは、医師の積極的な指示だけでなく、患者が接骨院や整骨院で柔道整復施術を受けることを希望し、医師が消極的に承諾した場合も含みます。整形外科の医師が、接骨院や整骨院で柔道整復施術を受けるよう指示することは稀です。柔道整復師施術を認めない医師もいるくらいです。患者が希望して医師が承諾するケースが大半でしょう。柔道整復の施術費について、日弁連交通事故相談センターが発行している「青本」「赤本」では次のようになっています。青本医師の指示により受けたものであれば認められる。医師の指示は積極的なものでなくとも、施術を受けることによる改善の可能性が否定できないことから、とりあえず施術を受けることを承諾するという消極的なものも含まれる。このような医師の指示・承諾がなくとも、改善効果があれば賠償を認める例もある。(青本25訂版)赤本症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向にある。(赤本2017年版)医師の指示がない場合は?上で紹介したように「青本」では、「医師の指示・承諾がなくとも、改善効果があれば賠償を認める例もある」とされています。医師の指示・承諾がない場合でも、接骨院や整骨院へ通うことを、保険会社が頭から否定することはありません。柔道整復師による施術が、怪我の治療に有効な場合があることは、一般に認められているからです。ですから、接骨院・整骨院での施術に必要性や有用性などが認められ、妥当な金額であれば、保険会社は施術費の支払いに応じています。裁判でも、加害者(保険会社)側が施術費について争わない限り、裁判所は原則として施術費を損害として認めています。裁判で施術費が争われた場合でも、「医師の指示がない」という理由だけで認めないということはありません。一定の要件を満たせば、損害として認められます。その要件とは、次の必要性・合理性・相当性・有効性が立証できることです。施術に必要性・合理性・相当性・有効性があること施術費が損害賠償すべき治療費として認められるには、医師の指示の有無にかかわりなく、施術に必要性・合理性・相当性・有効性があることが必要です。医師の指示があれば、施術の必要性・合理性・相当性・有効性が認められやすいのですが、医師の指示がない場合は、これらの点について立証しなければなりません。施術費が損害として認められる4つの要件施術の必要性施術を行うことが必要な身体状態であったのかどうか。施術の合理性施術の内容が合理的であるといえるかどうか。過剰・濃厚な施術となっていないか。施術の相当性医師による治療ではなく施術を選択することが相当かどうか。医師による治療を受けた場合と比較して、費用、期間、身体への負担等の観点で均衡を失していないかどうか。施術の有効性施術の具体的な効果が見られたかどうか。(参考:東京地裁判決・平成14年2月22日)これらの立証が必要なのは、「医師の治療」と「柔道整復師の施術」の違いがあります。柔道整復師は、レントゲンやMRIなど画像を用いた損傷状況の把握ができず、医師のような医学的見地から総合的な判断ができないこと、施術者によって技術が異なること、施術費用についても客観的な目安がないこと、などが理由です(東京地裁判決・平成14年2月22日)。なお、医師の指示がない場合は、施術の必要性や有効性が認められても、期間や費用が制限され、施術費の全額が認められることは少ないと考えておいた方がよいでしょう。医師の指示がなくても施術費が認められた裁判例をご覧ください。立証に必要な証拠書面損害の発生の証拠書面としては、接骨院・整骨院の領収書だけでは足りません。接骨院や整骨院の柔道整復師の作成する施術証明書、施術費支払明細書のほか、診療を受けた医療機関の医師の診断書、診療録、医師の同意書もしくはこれに代わる書面、診療報酬明細書などが必要です。施術費の妥当性を証明するには、健康保険や労災保険における柔道整復師施術料金算定基準などがあれば、その基準と比較して妥当性を判断する証拠となります。裁判で施術費を争うと、裁判所は厳密に審理します。場合によっては、すでに保険会社が支払っていた通院期間までも否定されることもありますから、注意してください。医師の指示がなくても施術費が認められた裁判例医師の積極的な指示がない場合に、接骨院や整骨院の施術費が事故と相当因果関係のある損害として認定・一部認定された裁判例をご紹介します。大阪地裁判決(平成13年8月28日)頸部・腰部捻挫の傷害を受けて後遺障害等級14級10号の認定を受けた被害者の整骨院における施術について、医師の明確な指示を受けたことの証明はないが、ある程度の痛みを緩和する効果はあったものと認められるとして、120万円の請求のうち30万円の限度で認めた。東京地裁判決(平成16年2月27日)頸椎捻挫、両膝捻挫、右下腿打撲で併合14級の認定を受けた被害者の整骨院における施術について、医師の指示はないが、施術により疼痛が軽快し、整形外科における治療回数が減少していること、施術費の額が社会一般の水準と比較して妥当であること、加害者らが一定期間の施術を認めていたこと等から、症状固定日までの整骨院の施術費全額を認めた。東京地裁判決(平成16年3月29日)頸椎捻挫等の被害者が、医師の指示・同意なく約14ヵ月間に185回整骨院で施術を受け、1回あたり平均3万9,040円、合計722万円余の請求した事案で、頸部及び右肩部については6ヵ月程度(実通院日数96日)の施術の必要性を認め、損害額としては、自賠責保険施術料金、厚生省の施術費算定基準、健康保険診療報酬算定方法の手引も参考に50万円の限度で認めた。大阪地裁判決(平成18年12月20日)整骨院での施術について、整形外科の医師は施術を受けることを容認し、症状を緩和する効果があったと認められるが、医師は施術を積極的に指示していたとまでは認められないこと、治療日が整形外科と重複していることなどを考慮し、症状固定時期までの施術費等のうち50%を認めた。京都地裁判決(平成23年11月18日)病院の医師が医学的必要性から整骨院への通院を指示した旨の意見書を差し入れていること、整骨院の詳細な施術録から施術により症状が改善していること、ほぼ連日にわたり整骨院に通院しているが医学的に見てそれほどの頻回な施術が必要であったと認めるに足りる証拠がないことから、被害者の症状の程度と改善効果とを総合考慮し、施術料の8割を認めた。東京地裁判決(平成25年8月9日)診療時間が限られている整形外科医院には、ほとんど週末しか受診することができなかったため、勤務終了後に通院できる整骨院に通院し、医師もこれを承知していたこと、整骨院で受けた施術の内容は、整形外科で受けていた消炎鎮痛等の処置と概ね同じであり、症状改善に効果的であったことから、整骨院の施術を事故と相当因果関係があると認めた。裁判で施術費を争うかどうかの判断は慎重に!接骨院・整骨院での施術費について、よく争点となるのは、事故との相当因果関係と通院期間の妥当性です。保険会社が任意で支払った施術費については、示談交渉で問題となることは通常ありません。医師の指示がないような場合でも、保険会社も、柔道整復の施術の有効性について社会一般で認められているので、緩やかな対応をしています。しかし、裁判で施術費が争点となった場合は、厳密な対応となります。保険会社側は、医師の指示の有無、事故との相当因果関係、通院期間の妥当性などを争点化してきます。裁判所も、施術を受けることに医師の指示があったか、施術に必要性・合理性・相当性・有効性があるか、事故との相当因果関係、通院期間や施術費の妥当性など、厳密に審理します。場合によっては、保険会社が既に支払った通院期間まで否定される場合があります。判決だけでなく、裁判上の和解の場合も同様に厳格な判断がなされています。訴訟を提起して接骨院・整骨院の施術費を争うかどうかは、慎重に判断する必要があります。まとめ交通事故による負傷(捻挫・打撲など)で接骨院・整骨院に通う場合は、まず整形外科で医師の診断を受け、柔道整復施術の承諾を得ることが重要です。また、定期的に整形外科を受診し、治療の経過を医師が把握できるようにしておくことが大切です。これは、治療費のみならず、後遺障害の損害賠償を受ける際にも大切なポイントとなります。そうでなければ、医師が後遺障害診断書を書けないからです。整形外科でなく接骨院や整骨院に通うときには十分注意してください。もし、接骨院や整骨院の施術費が損害として認められないなど、お困りのときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・日弁連交通事故相談センター編『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい・『交通損害関係訴訟(補訂版)』青林書院・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院・『交通事故裁判和解例集』第一法規
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  • 医師の指示・承諾
    むち打ち症の治療で接骨院・整骨院へ通うとき医師の指示が必要な理由
    治療費等の損害賠償には、医学的な見地からの診断が必要ですが、接骨院や整骨院の柔道整復師は、医師ではないため、医学的見地からの診断ができません。そのため、交通事故で接骨院・整骨院へ通う場合は、整形外科医師による医学的な見地からの診断が重要となります。接骨院や整骨院で施術を受けることにつき医師の指示があると、施術が治療の一環とみなされ、施術費を治療費とみなされやすくなります。ここでは、接骨院や整骨院の柔道整復師が行える施術の範囲や医師との関係について、損害賠償の実務で、どのように考えられているか、まとめています。「医師の治療」と「柔道整復師の施術」の違い「医師の治療」と「柔道整復師の施術」の違いについて、東京地裁判決(平成14年2月22日)において、次のような指摘があります。ここでは、柔道整復師としていますが、同判決では、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師も含めています。医師の治療特段の事情のない限り、その治療の必要があり、かつ、その治療内容が合理的で相当なものと推定され、それゆえ、それに要した治療費は、加害者が当然に賠償すべき損害となる。柔道整復師の施術その施術を行うことについて医師の具体的な指示があり、かつ、その施術対象となった負傷部位について医師による症状管理がなされている場合、すなわち、医師による治療の一環として行われた場合でない限り、当然には、その施術による費用を加害者の負担すべき損害と解することはできない。つまり、医師の治療は「必要性・合理性・相当性が推定される」ので、その治療費は、加害者が賠償すべき損害として原則認められるのに対して、柔道整復師の施術費は、「医師による治療の一環として行われた場合」という条件付きで認められるということです。もちろん現実には、医師の治療であっても、無条件に治療費の全額が認められるわけではありません。保険会社は「必要かつ妥当な範囲」しか支払いません。また、保険会社が一方的に治療費の支払いを打ち切ることはよくあります。しかし、損害賠償の実務においては、医師の治療費は原則認めるが、柔道整復師の施術費は条件付きで認めるという違いがあるのです。その条件とは「医師による治療の一環として行われる場合」ということです。なぜ、このような差が生じるのでしょか?それは、柔道整復師による施術は、医師の治療のように「必要性・合理性・相当性を推定できない」からです。同判決は、その理由として次の点を挙げています。柔道整復師の施術が、必要性・合理性・相当性を推定できない理由医師の治療と異なり、柔道整復師の施術は限られた範囲内でしか行うことができない。柔道整復師には、施術内容の客観性・合理性を担保し、適切な医療行為を継続するために必要な診療録の記載、保存義務が課せられていない。柔道整復師は、外傷による身体内部の損傷状況等を的確に把握するために重要な放射線による撮影、磁気共鳴画像診断装置を用いた検査ができない。外傷による症状の見方、評価、施術方法等にも大きな個人差が生じる可能性がある。施術者によって施術の技術が異なり、施術方法・程度が多様。自由診療で報酬規定がないため施術費が施術者の技術の有無、技術方法によってまちまちであり、客観的で合理的な施術費を算定するための目安がない。(参考:東京地裁判決・平成14年2月22日)柔道整復師の施術は、医師の治療と違い限定されています。レントゲンやMRIなど画像診断もできません。医師ではありませんから、医学的な見地から総合的な判断ができません。一方で、施術の技術や方法が多様で、症状の見方にも個人差があります。施術費も、報酬規定がないため目安がありません。こうしたことから、条件付きで施術費を損害として認めるという扱いがされているのです。もちろん、医師の指示がなくても、施術により症状が軽減するなどの効果が認められる場合は、施術の必要性が認定されるべきものです。しかし、そのためには、施術の必要性・合理性・相当性・有効性を立証しなければなりません。仮に施術費が認められたとしても、その何割かを事故と相当因果関係のある損害と認定されることが多く、施術費の全額が認められるのは稀です。そもそも柔道整復師は、どんな施術ができる?そもそも、接骨院や整骨院の柔道整復師の業務とは、どのようなものなのでしょうか?柔道整復師について定めた法律は、柔道整復師法です。柔道整復師法は、昭和45年に議員立法により制定された法律です。柔道整復師の医学的業務範囲について、法律に規定がない実は、柔道整復師の業務の範囲について、柔道整復師法には明確に定められていません。柔道整復の定義規定すらないのです。このことについて、国会で厚生労働省の医政局長が次のように答弁しています。法律には、柔道整復の定義を定める規定はございません。議員立法ということで出されて、全会一致で可決したという記録のみ残っておりますので、どのような定義づけがなされていたかということは、残念ながら承知しておりません。(平成16年3月1日・衆院予算委員会第5分科会での厚生労働省医政局長答弁)それでは、柔道整復師の業務について、法律でどのように定めているのでしょうか?柔道整復師法では「柔道整復師とは、厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者をいう」(第2条)とし、柔道整復師の業務について、次の3つの規定があるだけです。医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行なつてはならない。(第15条)柔道整復師は、外科手術を行ない、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない。(第16条)柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼きゆう又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。(第17条)このように、法律上、柔道整復師の医学的業務範囲の規定はないに等しいのです。柔道整復師の業務の範囲柔道整復師の業務の範囲について、法律には明確な規定がないのですが、根拠とされているのは、昭和45年の柔道整復師法の提案理由説明です。「その施術の対象ももっぱら骨折、脱臼の非観血的徒手整復を含めた打撲、捻挫など、新鮮なる負傷に限られている」(昭和45年3月17日衆院本会議 柔道整復師法の提案理由説明より)柔道整復師法が制定されるまでは、あんま・マッサージ・はり・きゅう・柔道整復等営業法として1つの法律でした。それが昭和45年に柔道整復業に関する部分を分離して、単独法として柔道整復師法が制定されました。柔道整復技術が、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等とは異なるというのが理由です。あんま・マッサージ・はり・きゅうが、慢性的に起きる病態を対象とするのに対して、柔道整復師が対象とするのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫といった、スポーツや事故などによる急性の傷害だからです。つまり、柔道整復師の業務の範囲は、骨折・脱臼・打撲・捻挫など、負傷原因のはっきりしている急性の傷害です。柔整療養費の支給対象柔道整復施術の保険対象(療養費の支給対象)は、平成9年の厚生省「留意事項通知」で示されています。平成9年の厚生省通知「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項」療養費の支給対象となる負傷は、急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと。(平成9年4月17日・厚生省保険局医療課長通知「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」より)この平成9年の厚生省通知によると、健康保険等を使って柔道整復施術を受ける場合、保険から療養費の支給対象となるのは、「急性または亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲、捻挫」となります。この内容は現在も生きていますが、通知が出された当時から、整形外科医師からは「亜急性の外傷」が問題視されていました。外傷はすべて「急性」であり、「亜急性の外傷」は医学的にあり得ないからです。「亜急性」というのは、医学的には傷病の時間的経過を指します。受傷時から順に急性・亜急性・慢性として使われます。「亜急性」は、急性と慢性の間の時期、つまり「亜急性期」と表記されるのが一般的です。一方、柔道整復学では、亜急性を時間軸で考えません。亜急性外傷とは、亜急性期(急性期、亜急性期、慢性期というふうに受傷からの期間によって分類している)の外傷という意味ではなく、外傷を起こす原因として急激な外力より起こる急性外傷に準ずるもので、軽度な外力でも反復や持続した外力により、急性外傷と同様に軟部組織などの損傷が見られる外傷を指すものです。(公益社団法人・栃木県柔道整復師会HPより)「亜急性」「外傷性」の定義については国会でも質問主意書が提出され、次のような政府答弁書が出されました。亜急性とは、身体の組織の損傷の状態が急性のものに準ずることを示すものであり、外傷性とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すものである。(平成15年1月31日・参院・政府答弁書より)。ただ、この説明では、亜急性が、受傷からの時間的経過を指すものなのか、軽度な反復・持続した外力によるものなのか、明確ではありません。柔道整復施術の保険適用範囲を広げることは、接骨院や整骨院にとっては死活問題であり、もちろん患者にとってもメリットがあることです。そのため、厚労省はファジーなままにしてきたのかもしれません。しかし、厚労省の見解は明瞭なのです。この平成15年の答弁書以前の国会答弁で「急性期のもの」とはっきり答えています。柔道整復で保険の対象になりますのは、骨折それから脱臼、打撲、捻挫の4つの外傷性の疾患でございます。このうち、骨折、脱臼につきましては医師の同意が必要である、こういうことになっているわけでございます。こういった一定の条件を満たす場合だけ療養費の支給対象になるわけでございまして、捻挫とか打撲というのを、いつの時点での打撲とかなんとかというのは確かに判定しがたいわけでございますけれども、制度の趣旨からいたしますと、当然のことながら急性期のものであると、こういうふうに私どもは理解いたしているわけでございまして、そうであるかないかという個々の認定というのは別にいたしまして、そういう考え方を持っているわけでございます。(平成12年11月16日・参院・国民福祉委員会での厚生省保険局長の答弁より)一方、「亜急性」について、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会・柔道整復療養費検討専門委員会で議論がなされ、平成29年3月21日の同専門委員会で、「留意事項通知」の改正案が示されました。現行療養費の支給対象となる負傷は、急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと。改正案療養費の支給対象となる負傷は、負傷の原因が明らかで、身体の組織の損傷の状態が慢性に至っていない急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと。厚生労働省の保険医療企画調査室長は、「急性、亜急性、慢性と時期の問題として分けた場合に、その急性、亜急性であるということを、この通知の改正案で明確にしたい」と説明しています(平成29年3月21日柔道整復療養費検討専門委員会議事録より)。これにより、亜急性が受傷からの時期の問題であり、慢性に至っていない外傷性の骨折・脱臼・打撲・捻挫が柔道整復の療養費の支給対象となることが明確となりました。もともと柔道整復師法の提案理由説明で「新鮮なる負傷」としていたのですから、急性期の外傷が柔道整復の施術の対象としていたことは明らかです。平成9年に当時の厚生省が「亜急性」という文言を入れたことが、複雑にしてきた元凶です。何らかの忖度があったことは容易に想像できます。その後、国会の答弁書で亜急性を定義づけたことにより、亜急性という文言を外せなくなってしまったと考えられます。いずれにしても、「亜急性」については一定の決着を見ました。保険会社からの施術費の支払いは、ますます厳しくなる問題は「留意事項通知」の改正が、交通事故の場合における保険会社からの施術費の支払いに与える影響です。「留意事項通知」は、社会保険からの療養費の支給に関するものですが、自賠責保険の施術費の支払いにも影響するでしょう。これまでも損保会社は、施術費の支払いには厳しかったのですが、亜急性の判断も絡み、ますます厳しくなることが予想されます。裁判になれば、より厳格に審理されることになるでしょう。損保会社から施術費の支払いを打ち切られた場合、これまでは健康保険などを利用して一部負担で施術を受けることができたようなケースも、これからは全額自己負担となることも予想されます。また、「留意事項通知」の改正案には、「負傷の原因が明らかで」という文言が盛り込まれました。事故との相当因果関係のある部位の施術に、これまで以上に限定されてくることが考えられます。接骨院や整骨院での施術が長期化する場合は、これまで以上に注意が必要です。医師の指示のもと施術を受けることが、正当な損害賠償を得る上で、ますます大切になってきます。医師の同意が必要な場合がある接骨院や整骨院で骨折や脱臼の患部に対する柔道整復施術を受ける場合は、医師の同意が必要ですから、注意してください。これは、法律で定められています(柔道整復師法第17条)。骨折や脱臼の患部に対する施術を整骨院や接骨院で受ける場合は、診断書や紹介状などで、医師が柔道整復による施術に同意したことを明らかにする必要があります。柔道整復師法第17条柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼または骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。例外とされている「応急手当」とは、「骨折または脱臼の場合に、医師の診断を受けるまで放置すると、生命または身体に重大な危害をきたす恐れのある場合に、柔道整復師がその業務の範囲内において患部を一応整復する行為」(日本整形外科学会『医業類似行為関連Q&A』)です。なお、実際に骨折・脱臼で接骨院や整骨院にかかっているケースはほとんどありません。厚生労働省の調査(平成24年10月サンプル調査)によると、柔道整復に係る療養費の負傷種類別の支給額割合は、骨折・脱臼はわずか0.6%、打撲が29.9%、捻挫が69.5%です。骨折・脱臼は、医療機関で正しい診察・検査・診断の上で治療しなければ、大きな障害を残す危険性があります。もし、骨折や脱臼の恐れがある場合は、接骨院や整骨院でなく、必ず整形外科を受診することが大切です。まとめ「整形外科より接骨院や整骨院がいい」という方もいるでしょう。確かに接骨院や整骨院の方が丁寧に診てくれるし、通いやすいというメリットはあります。しかし、交通事故の場合は損害賠償が絡みます。損害賠償の世界では、東洋医学は西洋医学に比べて、低く扱われる傾向があるのです。整形外科医師の指示のもと、接骨院や整骨院に通う方が損害賠償を受けられやすいので、まず、整形外科を受診して、医師の指示・承諾を得て、治療の一環として接骨院や整骨院に通うことをおすすめします。なお、損害賠償の面からだけでなく、頸椎捻挫の症例の中には脳脊髄液減少症を発症することもありますから、医師による正確な診断が絶対に必要です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 濃厚・過剰・高額施術
    交通事故の治療では接骨院・整骨院の濃厚・過剰・高額施術に注意
    接骨院や整骨院の施術は、①医師の診断よりも施術部位が増え、②施術期間が長期化し、③施術費が高額になりやすい傾向があります。濃厚・過剰・高額施術と見なされると、その部分については損害賠償を受けられません。ここでは、接骨院や整骨院の施術が、多部位化・長期化・高額化しやすい理由と、施術費の支払いをめぐる保険会社とのトラブルを防ぐための注意点についてまとめています。医師の診断より施術部位が増える整骨院・接骨院で施術を受けると、医師の診断よりも施術部位が増えることがあります。例えば、事故直後にかかった整形外科での診断は頸椎捻挫だったのに、後日、接骨院や整骨院にかかると、頸部のほかにも近接部位の施術も受けるというようなケースです。柔道整復の施術では、施術部位の数が、整形外科医師の診断した疾病名の数に比べ、1つ2つ増えるのはよくあります。これは、柔道整復師の施術が、全身を診ながら「人間の持つ治癒能力を最大限に発揮させる治療」(日本柔道整復師会HPより)だからですが、実は、それだけではありません。柔道整復の施術費は、施術部位数に応じて請求する医師の診断による「疾病名の数」と、柔道整復師の「施術部位の数」に差が生じるのは、医療機関では診療行為ごとの点数にもとづき診療報酬を算定するのに対して、柔道整復師の施術料は、施術部位を単位に算定するからです。つまり、施術部位が増えるほど、施術費を多く請求できる仕組みになっているのです。参考「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」では、施術料は、次に掲げる部位を単位として算定するとしています。【打撲の部分】頭部、顔面部、頸部、胸部、背部(肩部を含む)、上腕部、肘部、前腕部、手根・中手部、指部、腰殿部、大腿部、膝部、下腿部、足根・中足部、趾部【捻挫の部分】頸部、肩関節、肘関節、手関節、中手指・指関節、腰部、股関節、膝関節、足関節、中足趾・趾関節悪質な柔道整復師に注意柔道整復の施術では、近接部位もいっしょに施術することはあり得ることですが、中には、事故と全く関係のない部位まで施術し、施術費を請求する柔道整復師もいます。実際に施術していないのに、請求だけするようなケースもあります。、そのため、医師の診断より施術部位が大きく増えたときは、その施術と事故との相当因果関係が問題となるので、注意が必要です。例えば、こんな裁判例があります。平成22年4月27日の大阪高裁判決です。事故直後に受診した病院での診断は頸椎捻挫だったのに、後日受診した接骨院では、頸部捻挫、腰部捻挫、胸部打撲、左手間接捻挫、左膝関節打撲として施術。医師による診断と柔道整復師による施術部位の差が大きいことが問題となった事案です。裁判では、事故直後の医師の診断が尊重し、柔道整復師の施術を過剰と判断しました。接骨院や整骨院へ通う場合は、事前に評判などを確認しておくことが大切です。施術期間が長期化しやすい接骨院や整骨院の施術は、一般に長期化する傾向があります。柔道整復の施術が、身体を治す目的だけでなく、保健(予防)も目的とするからです。そのため、柔道整復師の側から施術を終了とすることはなく、極端にいえば「被害者は通いたいだけ通える」ので、施術期間が長期化しやすいのです。事故と相当因果関係のある施術期間施術が長期化する場合は、「事故と相当因果関係のある施術期間」が問題となります。「事故と相当因果関係のある施術期間」と認められるには、医師による治療の一環として施術を受けている実態のあることが大切です。整形外科で定期的に診察を受け、柔道整復施術の効果について診断を受けておくと、施術費の支払いをめぐる保険会社とのトラブルを回避できる可能性が高くなります。医師から、施術を継続すれば症状が改善する可能性があるとの判断があれば、施術を継続してもよいでしょう。しかし、医師が、これ以上は改善する見込みがないと判断する場合は、症状固定として、次のステップに進むことを考える必要があります。施術を継続するか、症状固定とするか、大きくは2つの節目があります。1つは、健康保険で「長期施術継続理由書」の提出が義務づけられている3ヵ月。もう1つは、裁判で目安とされている6ヵ月です。健康保険で長期施術継続理由書を提出する3ヵ月健康保険を使って柔道整復施術を受けるとき、初検の日から3ヵ月を超えて1ヵ月間の施術回数の頻度が高い(1ヵ月あたり10~15回以上)場合には、長期施術継続理由書の提出が義務づけられています。(参考:厚生労働省保健局医療課通知「柔道整復施術療養費に係る疑義解釈資料」平成25年4月24日)自由診療であっても、この3ヵ月が1つの目安となります。裁判例で示されている6ヵ月裁判例では、「頸椎捻挫の場合における通常の治療期間を考慮すれば、相当な施術期間は6ヵ月とみるべき」(東京高裁判決・平成16年8月31日)とした事例があります。症状があまり改善せず施術期間が長期化した場合、特に6ヵ月に達するような場合には、被害者が訴える自覚症状や柔道整復師の判断だけでは、施術の有効性は認められません。医師による診察・検査・診断を受けて、他の治療方法への切り換えや症状固定の判断が迫られることになります。自動車保険から支払われている実際の施術期間実際に保険会社が認める施術期間は、どの程度でしょうか?損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況」(2017年3月)によれば、施術期間が6ヵ月を超えて認められているるケースも12.5%ありますが、大半は6ヵ月以内です。もっとも多いのが、91日以上120日以内(3~4ヵ月)で20.3%。次いで、61日以上90日以内(2~3ヵ月)で17.5%です。施術期間別の件数(2015年度)※損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」2017年3月より施術費が高額になりやすい接骨院や整骨院の施術費は、高額になりやすい傾向があります。医師の診療報酬は、自由診療の場合、診療報酬単価を1点=20円で計算するのが一般的です。労災保険診療費算定基準に準拠した自賠責診療費算定基準もあります。それに対して、柔道整復師は、自由診療の場合、施術費の基準は特に定まっていません。交通事故の施術費は、患者でなく保険会社が負担することもあり、高額化しやすいのです。なお、基準がないといっても、無制限に支払われるわけではありません。当然「社会通念に照らして合理的な範囲の金額」でなければ認められません。自動車保険から支払われている実際の施術費実際の「柔道整復の施術費」と「医療機関の診療費」を比較してみましょう。平均治療費(2015年度)※損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」2017年3月より※被害者1人1件あたり1実日数あたりの治療費(2015年度)診療期間診療実日数平均診療費1実日数あたり70.0日19.7日243,889円12,380円項目1項目2項目3項目4)★ -->施術期間施術実日数平均施術費1実日数あたり108.6日51.4日299,546円5,828円項目1項目2項目3項目4)★ -->※損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」2017年3月より上のグラフと表から分かるように、被害者1人1件あたりの平均診療費が243,889円であるのに対して、平均施術費は299,546円と、柔道整復の施術費が医療機関の診療費の1.2倍です。1実日数あたりでみると施術費は診療費の47%ですが、施術実日数が診療実日数の2.6倍となっています。つまり、1日あたりの施術費は診療費の半分ですが、施術実日数(施術期間)が長いため、施術費の方が診療費よりも高額になるのです。裁判ではどのように施術費を算定するか裁判例では、労災保険や健康保険の算定基準を参考にしたものがあります。また、施術費の算定基準を請求額通りとし、施術期間、施術頻度、施術料、施術の必要性などを総合的に勘案して、施術費総額の何割かの限度で損害として認める裁判例もあります。接骨院・整骨院の施術費をめぐる裁判例はこちらをご覧ください。まとめ接骨院や整骨院の施術は、むち打ち症などに有効な場合がありますが、濃厚・過剰・高額施術と見なされ、施術費の支払いを受けられなくなるケースが多いのも事実です。定期的に整形外科を受診し、医師による治療の一環として施術を受けているという実態を作っておくことが大切です。接骨院や整骨院の施術費のことでお困りの場合は、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・日弁連交通事故相談センター編『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい・交通事故賠償研究会編集『交通事故診療と損害賠償実務の交錯』創耕舎・『損害保険の法律相談Ⅰ〈自動車保険〉』青林書院・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院
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