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民事調停は、中立・公正な第三者である調停委員に仲介してもらい、交通事故の損害賠償をめぐる紛争を、加害者と被害者とが話し合いで解決する方法です。交通調停と民事一般調停があります。交通調停と民事調停の違いはこちらをご覧ください。
民事調停の申立てにはメリット・デメリットがありますから、状況に応じて利用を検討することが大切です。ここでは、調停のメリット・デメリットについて説明します。
交通調停・民事調停には、次のようなメリットがあります。
交通調停・民事調停のメリットについて、補足説明しておきます。
調停は、裁判所に調停申立書を提出することで、手続きが開始されます。弁護士を頼まなくても、本人だけでも大丈夫です。調停申立書は、裁判所に用意されています。最高裁のホームページからダウンロードすることもできます。
また、当時者本人が必ず調停の場に出席しなければならないというわけでなく、調停委員会の許可を受ければ、家族を代理人にすることもできます(民事調停規則8条)。
調停の申立て費用は、訴訟費用の半分ですから、訴訟に比べて安い費用で解決できます。申立書に収入印紙を貼ります。
なお、調停が不成立になった後、本訴を提起する場合の貼用印紙は、調停不成立の通知を受けてから2週間以内に本訴を提起すれば、調停申立てのときに貼った印紙額を控除した差額を貼ればよいことになっています(民事訴訟費用等に関する法律第5条1項)。
訴額・請求額 | 訴訟費用 | 調停の申立て費用 |
---|---|---|
100万円 | 10,000円 | 5,000円 |
500万円 | 30,000円 | 15,000円 |
1,000万円 | 50,000円 | 25,000円 |
※最高裁のWebサイトにリンクしています。
調停が成立すると調停調書が作成されます。この調停調書には確定判決と同じ効力があり、調停条項が履行されない場合には、強制執行が可能です。
なお、「調停調書により強制執行できる」という法律上の直接的な規定があるわけではありません。そもそも強制執行は、債務名義により行うことができます(民事執行法22条)。調停調書を債務名義として強制執行できる根拠は、次のように三段論法になっています。
債務名義とは,強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在,範囲,債権者,債務者を表示した公の文書のことです。
(最高裁Webサイト「裁判手続 民事事件Q&A」より)
訴訟の場合は、訴訟物に対して判決が出されます。ですから、請求金額を上回る賠償額が認められることはありません。
それに対し、調停は、当事者間の話し合いにより合意して解決する手続きです。ですから、申立て時の請求以外でも、合わせて解決することが適当と判断されるものがあり、それを含めて当事者間で合意できれば、調停を成立させることができます。
例えば、調停の申立て時点では治療費のみ請求していたとしても、通院交通費や傷害慰謝料を含めた金額で調停を成立させることができるわけです。
調停の申立ては、時効の完成猶予事由となります。調停の申立てを行った場合、調停の手続きが終了するまでの間は、時効の完成は猶予されます(民法147条1項3号)。
調停が不成立で手続きが終了した場合、終了から6ヵ月間は時効の完成が猶予されます(民法147条1項)。調停が成立すれば、時効は新たに進行します(民法147条2項)。
交通調停・民事調停には、次のようなデメリットがあります。
交通調停・民事調停のデメリットについて、補足説明しておきます。
調停では、調停委員会が事実の調査をできるようになっています(民事調停規則13条)。
ただし、この事実の調査とは、「特別の方式によらず、かつ、強制力によらないで資料を収集することをいい、例えば、厳格な証拠調べ手続によることなく、当事者が持参した資料等を調べたり、参考人から意見を聴取する方法」(改訂版『交通事故実務マニュアル』ぎょうせい)とされています。
そもそも厳格な証拠調べが必要な場合というのは、当事者の説得が困難で、調停成立の見込みがないケースと考えられるので、調停では、事実上、厳格な事実の調査や証拠調べが行われることはありません。
ですから、厳格な事実の調査や証拠調べが必要なほど、当事者双方の主張に大きな隔たりがある場合は、調停は馴染みません。最初から訴訟の提起を検討する方がよいでしょう。
調停は、成立すれば確定判決と同じ効力を有しますが、成立するまでは強制力がありません。
ですから、調停は、相手方が出頭しないときは不成立となります。法律には、正当な理由なく出頭しないと5万円以下の過料に処されます(民事調停法34条)が、訴訟のような「欠席判決」の制度がありませんから、調停自体に影響を与えません。
また、調停は、民間のADR機関のように損保や共済に対する片面的拘束力をもった裁定を出すことはできません。ですから、相手方が主張を譲らなければ、調停は成立しません。
調停委員には、弁護士、税理士、不動産鑑定士、建築家など専門家がいます。書記官が、その事件に相応しい調停委員を任命することになっています。
調停委員は基本的に2人ですから、例えば、地代家賃等の争いの場合は、不動産鑑定士等が1人入って、あとは一般の学識経験者というような組み方をします。
しかし、交通調停の場合は、弁護士を除くと、必ずしも専門家という人がいません。
調停委員2人のうち1人は、だいたい弁護士が入りますが、もう1人は法律家でない人が入ります。ただ、弁護士についても、交通事故の損害賠償に精通している人は少なく、ほとんどのケースにおいて、交通事故にあまり詳しくない弁護士があたるのが実情です。
「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」の場合は、交通事故の損害賠償に精通した弁護士が担当するのと対照的です。
交通事故の損害賠償問題に詳しくない調停委員では、損害賠償について、法的に何が認められ何が否定されるのか、どこまで認められるのか、といった基本的なことが分かっていないため、双方の主張を足して2で割ったところを落としどころとする傾向があるようです。
(参考:加茂隆康弁護士『自動車保険金は出ないのがフツー』(幻冬舎新書)より)
東京簡裁の書記官の話によると、交通調停は、損保会社OB等の方に調停委員になってもらうことが多く、弁護士については、特に専門分野の方を選ぶわけでなく、必ずしも交通事故問題に精通した弁護士を調停委員に任命するわけではないようです。
(参考:『交通事故の損害賠償とADR』日弁連ADRセンター編(弘文堂)より)
調停は、本人や家族の申立てにより、裁判に比べて迅速に、費用も安く解決できるメリットがあります。また、調停の申立てには、損害賠償請求権の消滅時効の完成猶予の効力もあります。
ただし、調停委員は、必ずしも交通事故の損害賠償問題に詳しくないなど、被害者にとってデメリットとなる部分もあります。
調停のメリット・デメリットを十分知った上で利用することが大切です。
お困りのことがあったら、今すぐ交通事故の損害賠償請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。早く弁護士に相談するほど、メリットが大きいのです!
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