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  • 自賠責保険から出る?出ない?
    自賠責保険金が支払われる事故・支払われない事故の違いとは?
    自賠責保険金がどんな場合に支払われるかは、法律(自動車損害賠償保障法=自賠法)で定めています。どんな場合に支払われ、どんな場合に支払われないのか、詳しく見ていきましょう。自賠責保険金が支払われる事故とは?自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)とは、被保険者が被害者に対して自賠法3条に定める損害賠償責任を負担することによって被る損害について、一定額を限度として填補する保険です(『民事交通事故訴訟の実務Ⅱ』ぎょうせい20ページ)。「自賠責保険金が支払われるのはどんなときか?」というのは、「自賠責保険の保険事故(保険会社が保険金を支払う原因となるもの)は何か?」ということです。自賠責保険における保険事故とは?自賠法(自動車損害賠償保障法)は、責任保険(自賠責保険)と責任共済(自賠責共済)の契約について、次のように規定しています。自賠法11条責任保険の契約は、第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。責任共済の契約は、第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を組合がてん補することを約し、共済契約者が組合に共済掛金を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。第1項が自賠責保険、第2項が自賠責共済についての規定です。自賠責共済では、「保険」が「共済」に、「保険会社」が「組合」に変わるだけで、あとの文言は同じです。「第3条の規定」とは、運行供用者責任についての規定です。「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」(自賠法3条)と定めています。つまり、自賠法3条の規定による保有者の損害賠償責任の発生、すなわち保有者が運行供用者責任を負ったという事実が、自賠責保険における保険事故です。逆にいえば、保有者に運行供用者責任が発生しない場合には、自賠責保険における保険事故にあたらないので、自賠責保険金は支払われません。では、保有者と運行供用者責任について、詳しく見ていきましょう。 保有者とは?保有者とは、「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するもの」と定義されています(自賠法2条3項)。①自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者であり、②自己のために自動車を運行の用に供するもの(=運行供用者)が、その自動車の保有者です。図で表すと次のようになります。「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者」という集合と「運行供用者」という集合の重なる部分が、「保有者」です。保有者がどういう人かは、保有者の集合から外れる人(すなわち保有者に当たらない人)を考えると、イメージしやすいでしょう。自動車の所有者であるけれども保有者でない人とは、所有権留保売買における所有者や、自動車を盗まれた所有者です。これらの人は、自動車の所有者ではありますが、自動車を運行の用に供するにあたっての責任はない(運行供用者ではない)ので、保有者には当たりません。運行供用者であるけれども保有者でない人とは、自動車を盗んで運転していた泥棒運転者です。泥棒運転者は、自己のために自動車を運行の用に供しているため運行供用者ではありますが、所有権も正当な使用権もなく運転しているので、保有者には当たりません。盗難車両による事故で、保有者の運行供用者責任を問えない場合は、自賠責保険から保険金(損害賠償額)の支払いを受けることはできません。こういう事故の被害者は、政府保障事業の保護対象となります。運行供用者責任とは運行供用者責任については、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と定めています(自賠法3条)。「自己のために自動車を運行の用に供する者」を運行供用者といいます。運行供用者は、自動車の運行によって、他人の生命・身体を害したとき、損害賠償責任を負います。これが運行供用者責任です。運行供用者責任が発生するためには、①自動車の運行による事故であり、②他人の生命・財産を害したことが要件となります。要件①:自動車の運行による事故であることまず、「自動車」の「運行」「による」事故であることです。自動車の運行によらない事故は、自賠責保険の対象外です。ちなみに、任意自動車保険は、自動車の運行による場合だけでなく、「被保険自動車の所有、使用または管理に起因して他人の生命または身体を害すること」を対人事故と定義し、広くカバーしています。さらに詳しくは、次のページをご覧ください。自動車の「運行によって」とは?運行起因性が認められる要件自動車の「運行によって」と「所有、使用または管理」の違い要件②:他人の生命・身体を害したこと次に、「他人」の「生命・身体を害した」ということです。物損は自賠責保険の対象外であり、また、マイカーを運転中に事故を起こして自分が怪我をしても自賠責保険の対象外です。自賠責保険金が支払われるのは、「他人」を死傷させた場合です。では「他人」とは、どういう人が該当するのか?自賠法にいう「他人」とは、運行供用者及び運転者以外の人です(最高裁第二小法廷判決・昭和42年9月29日)。したがって、マイカーを運転中、同乗していた家族が負傷した場合、家族であっても「他人」に当たり、自賠責保険金が支払われるケースがあります。有名な「妻は他人」判決というものがあります(最高裁第三小法廷判決・昭和47年5月30日)。運行供用者が複数いる事故の他人性交通事故被害者を保護するため、歴史的に運行供用者の概念が広げられ、逆に「他人」の範囲が狭まってきました。そのため、運行供用者が複数いる事故が増えてきました。そんな中で、運行供用者(及び運転者)以外の人を「他人」というのが原則ではあるものの、運行供用者が複数いて、中心的に運行している人と、そうでもないような人がいるとき、そうでもない人が怪我をしたのであれば、その人は被害者(自賠法上の「他人」)として認めてあげてもいいのではないかとする議論があり、そういう判決も出ています(最高裁第二小法廷判決・平成9年10月31日)。自賠法3条の他人とは?自賠責保険における他人性の判断基準自賠責保険の被保険者は保有者と運転者自賠責保険の保険事故は、保有者に、自賠法3条規定の損害賠償責任(=運行供用者責任)が発生することですが、自賠法は、この保有者に加え運転者も被保険者と定めています(自賠法11条)。自賠法における「運転者」とは、一般的な意味での運転者ではなく、「他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者」をいいます。(自賠法2条4項)。例えば、運送会社の業務で運転している人、バスの運転手や車掌、クレーン車の玉掛け作業をしている人などです。運転者も被保険者とされている理由自賠法が、なぜ運転者を自賠責保険の被保険者にしているかというと、被保険者にしておかないと、保有者に運行供用者責任が生じ、運転者も直接の加害者として賠償責任を負うときに、運転者が保有者から求償(民法715条3項)されたり、保険会社から代位求償(保険法25条)されたりすることがあるからです。そういう理由から、運転者を被保険者の仲間にいれているのであって、運転者が本来的に賠償責任を負う人だというわけではありません。自賠法が規定する運行供用者・保有者・運転者・被保険者の違いについてさらに詳しくはこちらをご覧ください。自賠責保険金が支払われない事故とは?自賠責保険が支払われるためには「保有者が運行供用者責任を負うこと」が必要ですから、これに該当しない事故の場合、すなわち、①運行供用者責任が発生しない場合、②運行供用者責任は発生するが、保有者に生じるのではない場合には、自賠責保険による保険金(損害賠償額)の支払いはありません。このほか、③免責になる場合や、④そもそも自賠責保険契約が存在しない場合にも、当然支払われません。運行供用者責任が発生しない場合運行供用者責任は発生するが、保有者に生じるのではない場合保有者に運行供用者責任が発生するが免責となる場合自賠責保険契約が存在しない場合それぞれ見ていきましょう。運行供用者責任が発生しない場合運行供用者責任は、運行供用者が、自動車の運行によって、他人の生命・身体を害したときに発生します。したがって、次のような場合には運行供用者責任は発生しません。「運行によって」にあたらない(運行起因性がない)場合被害者が「他人」にあたらない場合自損事故(単独事故)の場合物損事故の場合自賠法3条但書免責が成立する場合自動車からの落下物による事故や荷物の積み降ろしによる事故などの場合には、運行起因性が認められないケースがあり得ます。「他人」とは自賠法上の「他人」です。すなわち、運行供用者(及び運転者)以外の者です。自損事故・単独事故とは、当該車両の保有者・運転者が怪我をした場合です。もっとも、同乗者がいて怪我をした場合、同乗者に対しては運行供用者責任が発生し得ます。他人の「生命・身体を害したとき」が対象ですから、物損については対象外です。自賠法3条ただし書免責とは、次のようなものです。自賠法3条は運行供用者責任について、「ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない」と定めています。つまり、①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと、この3つをすべて立証できたときは、運行供用者責任を負わない、ということです。これが「3条ただし書き免責」です。運行供用者責任は発生するが、保有者に責任が生じるのではない場合泥棒運転がそうです。泥棒運転者は、運行供用者責任を負いますが、車を盗まれた所有者(保有者)には責任がないので、自賠責保険上の保険事故は発生していないのです。ただし、自動車の保管状況等から、所有者(保有者)の運行供用者責任が認められることがあり、この場合は、自賠責保険から保険金(損害賠償額)が支払われます。詳しくはこちらをご覧ください。保有者に運行供用者責任が発生するが免責となる場合「保険契約者または被保険者の悪意によって生じた損害」については免責となり、自賠責保険金は支払われません(自賠法14条)。ただし、免責となるのは、被保険者(加害者)が保険金を請求する場合であって、被害者が損害賠償額の支払いを請求する場合には、相手方自賠責保険会社は免責を主張できません。つまり、被害者が直接請求する場合には、自賠責保険から支払ってもらえます。関連自賠責保険は免責事由に該当しても被害者請求は可能自賠責保険の免責事由とは? 悪意免責と故意免責の違い自賠責保険契約が存在しない場合そもそも自賠責保険契約が存在しない場合には、当然支払われません。自賠責保険は強制保険ですから、自賠責保険契約が存在しないというのはあってはならないことですが、車検が切れ自賠責保険契約が切れていた、ということがあり得ます。こういう場合、自賠責保険金は支払われませんが、被害者は政府保障事業に請求することで、自賠責保険による損害賠償額とほぼ同等の損害の填補を受けることができます。自賠責保険が出ないとき任意保険に請求できるか?同じ自動車保険でも、自賠責保険と任意対人賠償責任保険とでは、保険事故が異なります。例えば、自賠責保険は、自動車の「運行によって」起きた事故が対象ですが、対人賠償責任保険は、自動車の「所有、使用または管理」上の問題があって起きた事故なら支払われます。しかも、対人賠償責任保険は自賠責保険の上積み保険ですから、自賠責保険が出ない場合でも、任意保険から損害の全額が補償されるということもあり得るのです。「運行によって」と「所有、使用または管理」の違いはこちらをご覧ください。ただし、任意保険は、自賠責保険よりもカバーする範囲は広いのですが、免責事由は自賠責保険よりも多いので注意が必要です。対人賠償責任保険の免責事由はこちらをご覧ください。なお、自賠責保険にしろ任意保険にしろ、被保険者が損害賠償したことによって発生する損害を填補する保険ですから、そもそも損害賠償責任が生じていない場合には、保険金は支払われません。まとめ自賠責保険から保険金(損害賠償額)が支払われるのは、自動車の保有者に運行供用者責任が発生した場合です。自賠責保険が出ない場合でも、政府保障事業に請求したり、任意自動車保険に請求したりすることができる場合があります。お困りのときには、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通事故訴訟の実務Ⅱ』ぎょうせい 20~24ページ・『新Q&A自動車保険相談』ぎょうせい 6~8ページ、35~37ページ・『被害者側弁護士のための交通賠償法実務』日本評論社 47~51ページ
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  • 自賠責保険の被保険者とは?
    自賠責保険の被保険者、自賠責共済の被共済者とは?
    自賠責保険の被保険者、自賠責共済の被共済者は、その自動車の「保有者」と「運転者」です。保有者は、所有者とイコールではありません。また、運転者は、一般的な意味の運転者とは異なる概念です。では、保有者と運転者に該当するのは誰か? 自賠法が、なぜ保有者と運転者を被保険者としているのか? 詳しく解説します。自賠責保険の被保険者、自賠責共済の被共済者とは誰か?損害保険契約における被保険者は、「損害保険契約によりてん補することとされる損害を受ける者」と保険法で定めています(保険法2条4項イ)。ただし、自賠責保険の被保険者、自賠責共済の被共済者は、保険契約や共済契約でなく、法律で定めています。それが、次の自賠法11条です。自賠法11条(責任保険及び責任共済の契約)責任保険の契約は、第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。責任共済の契約は、第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を組合がてん補することを約し、共済契約者が組合に共済掛金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。第1項が自賠責保険契約、第2項が自賠責共済契約についての規定です。「保険」と「共済」、「保険会社」と「組合」の違いはありますが、内容は同じですので、以下、自賠責保険について説明します。自賠責保険とはどのような保険か?自賠法11条1項の規定によると、自賠責保険は、「第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合」に、「これによる保有者の損害」「及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害」を保険会社が填補する保険です。どんな場合に保険金が支払われるのか?まず、自賠責保険の保険事故(保険会社が保険金を支払う原因となるもの)は、「第3条の規定による保有者の損害賠償責任の発生」です。第3条の規定とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」という運行供用者責任を定めた規定です。すなわち、自賠責保険の保険事故は、保有者が運行供用者責任(自賠法3条の規定による損害賠償責任)を負担することです。誰の、どんな損害を填補するのか?第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合に、「これによる保有者の損害」「及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害」を保険会社が填補すると定めています。「これによる保有者の損害」とは、保有者が損害賠償責任を負担することによって生じる損害です。「これによる運転者の損害」も同様です。この「保有者の損害」「運転者の損害」を填補するのが、自賠責保険です。したがって、自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者です。保有者とは? 運転者とは?保有者と運転者については、自賠法2条で次のように定義しています。保有者自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するもの(自賠法2条3項)運転者他人のために自動車の運転または運転の補助に従事する者(自賠法2条4項)自賠法における運転者は、一般的な意味の運転者とは異なります。「他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者」ですから、例えば、運送会社の業務で運転している人、バスの運転手や車掌などが該当します。ちなみに、マイカーの運転者は、自賠法では保有者にあたります。保有者とは誰か保有者について、詳しく見ていきましょう。保有者の要件保有者の要件は、次の2つを満たす者であることです。自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者自己のために自動車を運行の用に供する者すなわち、保有者とは、「自動車を使用する権利を有する者」であり、かつ「運行供用者」です。[要件①]自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者「使用する権利」とは、例示されている所有権のほか、使用貸借契約や賃貸借契約にもとづくもの、委任にもとづくもの、その他いかなる法律関係によるかを問わず、正当な権原にもとづく使用権をいいます(『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい65ページ、『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第3版』弘文堂17ページ)。泥棒運転者や無断運転者は、「使用する権利」を有しないので、この要件に該当しませんが、要件②の運行供用者には該当します。[要件②]自己のために自動車を運行の用に供する者「自己のために」とは、自動車の使用についての支配権とその使用により享受する利益とが自己に帰属することを意味します(『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい65ページ)。自賠法における運転者は、「他人のために」自動車の運転または運転補助に従事する者ですから、この要件に該当しませんが、要件①の自動車を使用する権利を有する者には該当します。保有者の具体例保有者の具体的な例としては、次のものが挙げられます。自家用自動車の所有者自動車運送業者自動車の賃貸人自動車の委託販売業者自動車の整備業者陸送業者(自動車をメーカーの工場からディーラーまで移送する契約を結ぶ者)(参考:『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい66ページ)保有者が賠償責任の主体となるケースが大半ですが…自賠法は、第3条で、損害賠償の責任主体を「自己のために自動車を運行の用に供するもの」(運行供用者)とする一方で、第11条では、運行供用者すべてを被保険者とせず、運行供用者のうち自動車を使用する権利を有する者を保有者と規定し、保有者に生じた損害を保険会社が填補するとしています。ほとんどの場合、保有者が賠償責任の主体となり、自賠責保険金が支払われますが、保有者に賠償責任が発生せず、自賠責保険金が支払われないケースが生じ得ます。保有者に賠償責任が発生せず、自賠責保険金が支払われないケースとは?例えば、泥棒運転者が事故を起こし、所有者に管理責任がないような場合です。この場合、泥棒運転者は、運行供用者ではありますが、自動車を使用する権利を有しないので保有者でなく、所有者は、自動車を使用する権利を有しますが、自己のために自動車を運行の用に供したとは言えないので保有者でありません。このような場合には、保有者(=被保険者)に損害が発生していないので、自賠責保険金は支払われません。保有者に賠償責任が発生しないときは、被害者請求(16条請求)することもできません。16条請求ができるのは、「第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したとき」と規定されているからです(自賠法16条1項)。こういう場合、被害者は、政府保障事業に損害の填補を請求することができます。なぜ運転者も自賠責保険の被保険者としているのか?自賠法は、賠償責任を運行供用者(自己のために自動車を運行の用に供するもの)に集中させています(自賠法3条)。運転者は、「他人のために自動車の運転・運転補助に従事する者」ですから、運行供用者責任を負うことはありません。にもかかわらず、保有者とともに運転者も自賠責保険の被保険者としているのはなぜか?それは、保有者を責任主体とした立法趣旨の観点から、究極の負担が運転者に転嫁されることのないようするため、とされています。具体的には、次のような理由からです。運転者は、直接の加害者として、民法709条(不法行為責任)による損害賠償責任を負うことが想定されるため。保有者に保険金を支払った保険会社が、保険法25条(請求権代位)により、運転者に対し、保険金相当額の求償をすることを避けるため。運転者は直接の加害者として民事上の責任を負う運転者は、自賠法上の損害賠償責任(運行供用者責任)は負いませんが、直接の加害行為者として民法709条(不法行為責任)にもとづく損害賠償責任を負うことが想定されるため、被保険者と法定されたものと解されています(『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第3版』弘文堂129ページ)。保険者からの求償を避けるため被保険者の損害が第三者の行為によって生じたとき、保険給付した保険者(保険会社)は、被保険者が第三者に対して有する権利を代位取得します(保険法25条)。保険法25条1項は、「保険者は、保険給付を行ったときは、…保険事故による損害が生じたことにより被保険者が取得する債権について…当然に被保険者に代位する」と、請求権代位(第三者に対する権利の代位)について規定しています。請求権代位とは?一般に、請求権代位とは、損害保険契約において保険者の保険給付義務の発生事由と同一の事由に基づき、保険給付請求権者が第三者に対して損倍賠償請求権等の権利を取得する場合において、保険給付義務を履行した保険者が保険給付請求権者の第三者に対する権利を取得する制度であるといわれています。例えば、自動車の損害保険契約において、第三者が運転する車に衝突されて損害が発生した場合に、保険者がその損害を填補したときは、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を保険者が代位取得することになります。(参考:法制審議会保険法部会第4回会議(平成19年1月17日)議事録、資料5「保険法の現代化に関する検討事項(4)」)通常、「保有者と運転者」は、「使用者と被用者」の関係です。使用者責任について規定した民法715条は、第1項で「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定め、第3項で「使用者から被用者に対する求償権の行使を妨げない」としています。運転者に代わって賠償金を支払った保有者は、運転者に求償する権利を有します(民法715条3項)。保険会社が保有者の損害賠償額を填補したときは、保険会社が、保有者の「運転者に対する求償権」を取得します。その求償権を行使すれば、最終的な負担が運転者に転嫁されることになります。これを避けるため、運転者を被保険者とし、保険法25条でいう「第三者でない」こととしたのです(『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい126ページ)。運転者が被保険者となるには、保有者に運行供用者責任が生じることが前提になるので、運転者だけが被保険者となることはありません。被保険者が法律で定められている意味自賠責保険の被保険者は、保険契約で定まるのではなく、法律(自賠法11条)で定められています。したがって、任意自動車保険のように、契約で被保険者を限定することはできません。また、自賠責保険の契約は、車両単位(自動車一両ごと)に締結することが義務付けられています(自賠法12条)。そのため、ある特定の自動車に自賠責保険契約が締結されていれば、その自動車を所有または正当に使用する一切の保有者及び運転者が被保険者になります。例えば、Aが友人Bの自動車を借りて運転中に事故を起こした場合、Aは自動車を使用する権利を有する者であり、運行供用者でもありますから、Aは保有者であり、被保険者となります。もちろん、Bが自分の車を運転中に事故を起こした場合には、Bは所有者であり、運行供用者でもありますから、Bは保有者であって被保険者です。自賠責保険が付保された自動車の所有権・使用権が変動した場合には、それに伴い保有者・運転者も変動し、運行供用者責任が発生した時点で確定される保有者・運転者が、被保険者となります。まとめ自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者です。これは、保険契約で決まるのではなく、法律(自賠法11条)で定められています。保有者とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいいます(自賠法2条3項)。運転者とは、他人のために自動車の運転または運転の補助に従事する者をいいます(自賠法2条4項)。被害者は、自賠法16条にもとづいて相手方保険会社に損害賠償額の支払いを請求できますが、この直接請求権は自賠法の規定によって特別に認められるものであり、被害者は被保険者ではありません。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『自賠責保険のすべて13訂版』保険毎日新聞社 44~45ページ・『三訂 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 65~67ページ、123~126ページ、133ページ・『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第3版』弘文堂 16~18ページ,128~130ページ
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  • 運行供用者・保有者・運転者・被保険者
    自賠法が規定する運行供用者・保有者・運転者・被保険者の違い
    自賠法(自動車損害賠償保障法)において、損害賠償の責任主体は運行供用者で、自賠責保険の被保険者は自動車の保有者と運転者です。ここでは、自賠法における運行供用者・保有者・運転者・被保険者の関係と違いを見ていきましょう。自賠法では、運行供用者に損害賠償責任がある自賠法は、人身事故の損害賠償責任について、次のように定めています。自賠法3条自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。「自己のために自動車を運行の用に供する者」を運行供用者といいます。自賠法では、運行供用者が、損害賠償の責任主体です。事故を起こした運転者でなく、運行供用者に損害賠償責任があります。もっとも、運転者が運行供用者という場合もあり、マイカーの事故は、たいてい運転者と運行供用者が同一です。この場合、運転者が運行供用者として、自賠法3条の損害賠償責任を負います。「自己のために」とは、自動車の使用についての支配権と、その使用により享受する利益とが、自己に帰属することを意味します。運行供用者の判断基準についてはこちらをご覧ください。自賠法の定める運転者は、通常の運転者の概念と異なる運転者については、自賠法で次のように定義しています。自賠法2条4項この法律で「運転者」とは、他人のために自動車の運転または運転の補助に従事する者をいう。自賠法の運転者は、他人のために運転や運転補助する人一般的には、自動車のハンドルを操作する者を運転者と呼びますが、自賠法では「他人のために自動車の運転または運転の補助に従事する者」を運転者と定義しています。自賠法の定める運転者は、他人のために運転する者ですから、自己のために自動車を運行の用に供する運行供用者には当たりません。したがって、自賠法3条の運行供用者責任を負いません。ただし、事故を起こした当事者として過失があれば、民法709条の不法行為による損害賠償責任を負います。なお、自己のために運転する一般的な意味での運転者は、自賠法では運行供用者に分類されます。自分の車を自分で運転する場合はもちろん、人の車を借りて運転する場合も、無断運転や泥棒運転であっても、自己のために運転する運転者は、運行供用者です。つまり、自賠法における運転者とは、通常の運転者の概念から、運行供用者を除外し、運転補助者を加えたものといえます。運転者・運転補助者とは自賠法でいう運転者・運転補助者とは、次のような人です。運転者自動車の所有者との雇用関係にもとづき運転している者、委任関係にもとづき運転している者など。運転補助者クレーン車の玉掛作業者、車掌、工事車両の誘導者など。例えば、運送会社の従業員が、配送業務のため会社所有のトラックを運転中に事故を起こした場合、運送会社は運行供用者として自賠法3条の運行供用者責任を負い、従業員は運転者として民法709条の不法行為責任を負います。保有者は、正当な使用権限を有する運行供用者保有者については、自賠法で次のように定義しています。自賠法2条3項この法律で「保有者」とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいう。保有者としての要件は、①自動車を使用する権利を有する者、②自己のために自動車を運行の用に供するものです。この2つの要件を両方とも満たすのが保有者です。自動車を使用する権利を有する者使用する権利とは、法律上の正当な権限に基づく使用権を意味します。所有権に基づくもの、使用貸借契約や賃貸借契約に基づくもの、委任契約に基づくものなどがあります。したがって、所有者や所有者の許諾を得て使用する者など、正当な権限に基づき使用する者が保有者に該当し、所有者の許諾なく不正に使用する者(無断運転者・泥棒運転者)は保有者に該当しません。自己のために自動車を運行の用に供するもの「自己のために」とは、自動車の使用についての支配権と、その使用により享受する利益とが、自己に帰属することを意味します。これは自賠法3条の運行供用者と同義ですから、運行供用者であることが、保有者のもう1つの要件ということになります。自賠法の定める運転者は「他人のために」運転しますから、保有者に該当しません。つまり、保有者とは、運行供用者のうち、自動車を使用する正当な権限を有する者といえます。保有者に運行供用者責任が生じると、自賠責保険金が支払われる保有者は、自賠責保険の被保険者の範囲を定めるものとして重要です。自賠法11条1項責任保険の契約は、第3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。(※自賠責共済については、第2項で同様に規定されています。)自賠責保険から保険金が支払われるのは、保有者に運行供用者責任(自賠法3条による損害賠償責任)が生じた場合です。自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者自賠法の定める自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者です。保有者は、運行供用者責任を負うことが一般的であるため、被保険者として法定されています。運転者は、運行供用者ではないため、自賠法3条の運行供用者責任を負うことはありませんが、直接の加害者として不法行為責任(民法709条)を負うことが想定されるため、被保険者として法定されています。なお、運転者は、保有者が運行供用者責任を負う場合に被保険者となるのであって、運転者が単独で被保険者となることはありません。自賠責保険の被保険者についてさらに詳しくはこちら自賠責保険金が支払われないケース保有者でない運行供用者、すなわち、自動車を不正に使用した者に損害賠償責任が生じても、自賠責保険から保険金は支払われません。この場合、被害者は政府保障事業に損害の填補を請求することになります。自賠責保険金が支払われる事故・支払われない事故の違いとは?運行供用者・保有者・運転者・被保険者の関係自賠法における運行供用者・保有者・運転者・被保険者の関係をまとめると、次のようになります。運転者他人のために自動車の運転・運転補助をする者。自賠責保険の被保険者運行供用者自己のために自動車を運行の用に供する者。保有者自動車を正当に使用する権利を有する者。所有者、所有者の承諾を得て使用する者など。自動車を不正に使用した者無断運転者、泥棒運転者など。自己のために自動車を運行の用に供する運行供用者と、他人のために自動車を運転または運転補助する運転者に、大きく分かれます。運行供用者は、自動車を正当に使用する権利を有する者(=保有者)と、不正に使用した者に分かれます。保有者に運行供用者責任(運行供用者としての損害賠償責任)が発生したときに、自賠責保険金が支払われます。自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者です。人身事故を起こした相手が自動車を不正に使用していた場合、相手は「運行供用者」ではありますが「保有者」ではないため、自賠責保険から保険金(損害賠償額)は支払われません。こういう場合は、被害者は政府保障事業に損害の填補を請求することができます。まとめ自賠法では、運行供用者が損害賠償責任を負い、自動車の保有者に損害賠償責任が発生したときに、自賠責保険から保険金が支払われます。自賠責保険の被保険者は、保有者と運転者です。自賠法に定める運転者は、通常の運転者の概念と異なり、他人のために運転または運転補助に従事する者のことで、運行供用者には当たりません。保有者でない運行供用者に賠償責任が発生しても、自賠責保険から保険金は支払われません。この場合、被害者が、政府保障事業に損害の填補を請求することになります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 10~13ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 63~66ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 41~44ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 29ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 3~12ページ・『新版 逐条解説 自動車損害賠償保障法』ぎょうせい 57~59ページ、71ページ・『逐条解説 自動車損害賠償保障法 第2版』弘文堂 16~19ページ、126~128ページ・『交通事故事件対応のための保険の基本と実務』学陽書房 83~87ページ
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