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  • 労働能力喪失
    労働能力喪失率とは?労働能力喪失率表の由来と問題点
    ここでは、労働能力喪失率とは何か、そもそも労働能力とは何をいうのか、労働能力の喪失率はどのように決められているのか、さらに、労働能力喪失率を判定するのに用いられる「労働能力喪失率表」の由来と問題点について解説します。労働能力喪失率とは?労働能力喪失率とは、交通事故の後遺障害のために、事故前と比べて「労働能力」が低下した割合のことです。後遺障害逸失利益の算定に用います。ここでいう労働能力とは、一般的な平均的労働能力をいい、被害者の年齢・職種・知識・経験などの職業能力的諸条件については、障害の程度を決定する要素とはなっていません。(『労災補償障害認定必携第17版』一般財団法人労災サポートセンター70ページ)労働能力喪失率は、どのように決まるのか?労働能力喪失率は、該当する後遺障害等級に応じて決まります。自賠責支払基準の「別表Ⅰ 労働能力喪失率表」において、各後遺障害等級に対応する労働能力喪失率が定められており、自賠責保険では、後遺障害等級が決まれば、それに応じて労働能力喪失率も決まる仕組みです。労働能力喪失率表とは?労働能力喪失率表とは、次のようなものです。自賠責支払基準の「別表Ⅰ」より抜粋しておきます。介護を要する後遺障害(自賠法施行令別表第1)の場合等級労働能力喪失率第1級100/100第2級100/100後遺障害(自賠法施行令別表第2)の場合等級労働能力喪失率第1級100/100第2級100/100第3級100/100第4級92/100第5級79/100第6級67/100第7級56/100第8級45/100第9級35/100第10級27/100第11級20/100第12級14/100第13級9/100第14級5/100なお、この労働能力喪失率表の数値(労働能力喪失率)には、科学的根拠はないといわれています。この数値になった理由については、あとで説明します。労働能力喪失率表の由来自賠責保険の労働能力喪失率表には、「労働基準局長通牒 昭32.7.2基発第551号による」という但し書きが付いている場合があります。例えば、こちらの国土交通省のWebサイトに掲載している労働能力喪失率表です。自賠責保険の運用は労災保険に準じて行われており、労働能力喪失率は、昭和32年7月2日労働基準局長通牒(基発第551号)で示された労働能力喪失率表にもとづき判定されます。そもそも労働能力喪失率表とは、労災保険の第三者行為災害の事案で、保険者である国が、第三者(加害者)に求償するにあたり、代位の対象となる「被災者が加害者に対して有する損害賠償請求債権額」の目安をつけるためのものです。第三者行為災害の場合、労災保険の保険者である政府は、保険給付をすると、被災労働者が第三者(加害者)に対して有する損害賠償請求権を代位・取得し、その第三者に対して求償請求を行うことになります(労災法12条の4)。労働者災害補償保険法第12条の4第1項政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。この求償額は、①保険給付額の範囲で、かつ②被災労働者が加害者に対して有する損害賠償請求債権額が限度となります。問題は、①の保険給付額は明らかであっても、②の「被災労働者が加害者に対して有する損害賠償請求権の額」が、裁判所の判断を待たなければ確定せず、保険給付額をそのまま求償請求したのでは妥当性を確保できない、ということです。そのため、「被災者が加害者に対して有する損害賠償請求権の額」を算出する目安が必要となります。そこで、国(旧労働省)は、事務取扱の便をはかり行政取扱いを統一化するために、「被災者が加害者に対して有する損害賠償請求権の範囲」や「賠償額の算定方法」などについて、基準を定めて各都道府県労働基準局長あて通達しました。それが、昭和32年7月2日基発第551号労働基準局長通牒で、この中で労働能力喪失率表が示されたのです。その意味で、労働能力喪失率表は、民事損害賠償実務を前提とした「国としての損害算定基準」という性格をもつことになり、さらに、国の示した基準という性格上、一定の信頼性があるとの考えから、裁判における損害算定にも採用されるようになったのです。労働能力喪失率表の数値の意味労働能力喪失率表の労働能力喪失率は、第4級が92%、第5級が79%、第6級が67%、第7級が56%・・・となっており、何らかの意味がありそうな数値です。どのような経緯で、この数値になったのでしょうか?労働能力喪失率表は、労働基準法77条所定の労働災害の障害補償に関する別表「身体障害等級及び災害補償表」にもとづいて作成されたものです。労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号)の中で、労働能力喪失率については、労働基準法の「身体障害等級及び災害補償表」にもとづき、各障害等級の後遺障害につき障害補償日数を10分の1にしてパーセントを附し、かつ第3級以上をすべて100%としたものを「労働能力喪失率表」と称して用いるとしています(『現代損害賠償法講座7』日本評論社200ページ)。詳しく見ていきましょう。労働基準法77条は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない」と定めています。ここでいう別表第二が、「身体障害等級及び災害補償表」です。身体障害等級及び災害補償表等級災害補償第1級1340日分第2級1190日分第3級1050日分第4級920日分第5級790日分第6級670日分第7級560日分第8級450日分第9級350日分第10級270日分第11級200日分第12級140日分第13級90日分第14級50日分これと労働能力喪失率をあわせて1つの表にまとめると、こうなります。等級給付日数労働能力喪失率第1級1340日100/100第2級1190日100/100第3級1050日100/100第4級920日92/100第5級790日79/100第6級670日67/100第7級560日56/100第8級450日45/100第9級350日35/100第10級270日27/100第11級200日20/100第12級140日14/100第13級90日9/100第14級50日5/100この表を見れば分かるように、労働能力喪失率表の4級以下の喪失率は、障害補償の給付日数を10で割った数値が、喪失率のパーセンテージと一致するのです。第3級以上が労働能力喪失率100%となっているのは、「終身労務不能」を第3級としているからです。障害等級表では、第3級の3が「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」、第3級の4が「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」と規定しています。そのため第3級が労働能力喪失率100%となり、これより上の第1級と第2級は、100%を超える喪失率はあり得ないので、労働能力喪失率100%としているのです。このことから、労働能力喪失率は、保険給付額からの単純な逆算であり、後遺障害と労働能力喪失率についての科学的な検討をふまえて定められたものではない、といわれています。とはいえ、全く何らの科学的検討も経ないで決められたものともいえません。現行労災補償における等級評価体系の基礎となった過去の障害等級表作成過程において、労働能力喪失率についての一定の検討がなされており、あながち非科学的なものとはいえない、との指摘もあります。現行の労災給付額は、昭和6年制定の労働者災害扶助法施行令別表に逢着する。これは内務省社会局労働部において医学専門家をも交えて、鉄道共済会の公傷給付査定標準(大正8年制定)、官営八幡製鉄所共済組合の公傷病等差規程(大正11年制定)等を資料として検討した結果に基づくもので、現在の労働能力喪失率表は、100%以上の積極損害部分を捨象すれば、ほぼ昭和初年に考えられた労働能力喪失割合とさほどの差はないことになるから、むしろこれは一応の科学的検討を経て出されたものと評価すべきものであろう。(加藤和夫「後遺症における逸失利益の算定」『現代損害賠償法講座(7)』日本評論社199~201ページ)東京地裁民事27部(交通専門部)の判事も、労働能力喪失率表の数値は、「ただちに科学性・合理性を積極的に認めることができないとしても、実際に事件を担当していると『当たらずとも遠からず』という感じのする事例が多いことも事実」と話しています(『新しい交通賠償論の胎動』ぎょうせい34ページ)。裁判における労働能力喪失率表の取扱い現在の民事損害賠償実務においても、この旧労働省の発した通牒で示された労働能力喪失率表を使っていますが、そもそも労働能力喪失率表は、労災保険手続き上の基準を示した通達にすぎず、民事損害賠償の権利義務に関して法的効力を持ちません。したがって、現実の裁判実務では、労働能力喪失率表の数値を参考にしつつも、適宜数値を調整して損害算定する例もみられます。東京地裁民事27部の河邉義典判事は、講演の中で、「他に代わるべき客観的な基準がない現状においては、判断の客観性、統一性を確保するため、第一次的には喪失率表を参考にするのが妥当であると思われるが、喪失率表の定める喪失率が後遺障害の実情に合致しない場合にまで、画一的、定型的に喪失率表にしたがう必要はない」と話しています。(東京三弁護士会交通事故処理委員会編集『新しい交通賠償論の胎動』ぎょうせい34ページ)東京地裁民事27部(交通部)における炉王道能力喪失率表の取扱い東京地裁民事27部(交通部)では、次のように取り扱っています。後遺障害等級が認定されると、通常は、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率を認めているが、労働能力の低下の程度については、労働能力喪失率表を参考としながら、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位・程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して、具体的に評価することとなる。(「東京地裁民事27部における民事交通訴訟の実務について」別冊判例タイムズ3815ページ)裁判では被害者の具体的事情を考慮裁判でも基本的に自賠責の判断した労働能力喪失率が尊重されますが、その労働能力喪失率が適当でない場合は、個別事情を考慮して、修正した労働能力喪失率が認定されます。最高裁は、「労働能力喪失表にもとづく労働能力喪失率以上に収入の減少を生じる場合には、その収入減少率に照応する損害の賠償を請求できる」と判示しています。事案は、小学校教諭を退職後、ピアノと書道の家庭教師として各家庭に出張教授し、毎月5万円の収入を得ていた男性が、交通事故に遭い、右膝関節屈曲障害(労災等級9級(喪失率35%)または10級(喪失率27%)該当)により、正座はもちろん、ピアノのペダルを踏むことも困難となり、家庭教師を辞めたというものです。原判決が90%の労働能力喪失率を認定したところ、加害者側から、喪失率表に従わずに労働能力喪失率を認定したのは、法的安定性を破るものであるとして、上告したものです。最高裁は、この上告に対し、次のように述べ、90%の労働能力喪失率を認めた原判決の判断を是認し、上告を棄却しました。最高裁判所第二小法廷 昭和48年11月16日 判決交通事故による傷害のため、労働能力の喪失・減退を来たしたことを理由として、得べかりし利益の喪失による損害を算定するにあたって、上告人の援用する労働能力喪失率表が有力な資料となることは否定できない。しかし、損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、被害者の職業と傷害の具体的状況により、同表に基づく労働能力喪失率以上に収入の減少を生じる場合には、その収入減少率に照応する損害の賠償を請求できることはいうまでもない。労働能力喪失の実態について適切な立証を行うことにより、喪失率表所定の喪失率よりも高い労働能力喪失率を認めた判決も少なくありません。まとめ後遺障害によって労働能力がどの程度失われるのかという労働能力喪失率は、自賠責保険制度においては、後遺障害等級が認定されれば、その等級に対応した労働能力喪失率が認められます。ただし、後遺障害等級に対応する労働能力喪失率を定めた労働能力喪失率表は、科学的根拠のあるものではなく、しかも労災保険手続上の基準を示した通達において示されたものにすぎません。したがって、労働能力喪失率表は、民事損害賠償実務において法的拘束力を持つものではありませんから、労働能力喪失率表により導かれる労働能力喪失率が、後遺障害の実情に合致しない場合には労働能力喪失率表に従う必要はありません。労働能力喪失率表を参考としながら、被害者の職業、年齢、後遺症の部位・程度などから総合的に判断し、具体的に評価することが大切です。労働能力喪失率をどう判断するかは、後遺障害逸失利益の算定において難しいところなので、交通事故の後遺障害に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新・現代損害賠償法講座 5交通事故』日本評論社137~166ページ・『現代損害賠償法講座7』日本評論社187~214ページ・『新しい交通賠償論の胎動』ぎょうせい31~38ページ、169~174ページ・『別冊判例タイムズ38』15ページ・『労災補償障害認定必携』一般財団法人労災サポートセンター69~70ページ
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  • 後遺障害等級認定
    交通事故後遺症の損害賠償請求は後遺障害等級認定がカギ
    「後遺症が残った」というだけでは、後遺症に対する慰謝料等を請求することはできません。後遺症が残ったことで逸失利益や慰謝料を請求するには、自賠責保険において後遺障害等級の認定を受ける必要があります。ここでは、後遺症と後遺障害の違い、後遺障害等級の認定条件、適正な後遺障害等級の認定を獲得するためのポイントについて、解説します。自賠責保険における後遺障害の等級認定は、「原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」(自賠責保険の支払基準)とされています。また、勤務中の交通事故は、労災補償の対象です。ですから、労災保険の障害補償も参照しながら説明していきます。「後遺症」と「後遺障害」の違い治療しても完全に回復せず、身体や精神の機能に不完全な状態が残る場合があります。このような治療終了後に残存する身体・精神の不調を一般的には「後遺症」と呼んでいますが、損害賠償の分野では「後遺障害」と呼びます。「後遺障害」という呼び方が特別に意味をもつのは、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)や労災保険(労働者災害補償保険)の支払手続においてです。自賠責保険制度における後遺障害自賠法(自動車損害賠償保障法)は、後遺障害を「傷害が治ったとき身体に存する障害をいう」と定め(自賠法施行令第2条1項2号)、障害の程度に応じて第1級から第14級までの14等級に区分し、各等級ごとに保険金額(支払限度額)を決めています(自賠法施行令第2条別表)。「治ったとき」とは、症状固定に至ったときです。すなわち、症状固定後に残存する障害が後遺障害です。労災補償制度における後遺障害労働基準法は、「労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、……障害補償を行わなければならない」と定めています(労基法77条)。この「傷病が治ったときに身体に存する障害」が後遺障害で、「治ったとき」とは症状固定に至ったときです。労災保険における障害補償も、障害の程度に応じて第1級から第14級までの14等級に区分し、各等級ごとに保険給付額を定めています。そもそも自賠責保険の後遺障害等級が、労災保険の障害等級に準拠したものです。後遺障害は補償対象を規定する法律上の概念後遺症が残った場合、それが自賠責保険や労災保険に定める後遺障害として認定されなければ、原則として保険金は支払われません。後遺症が残ったときは、それが後遺障害に該当するか、どの等級に認定されるか、が重要なのです。このように、「後遺障害」とは、労災補償制度や自賠責保険制度において、補償対象を規定する法律上の概念であり、「等級」は、支払限度額を決定するための格付けです。後遺症も後遺障害も、どちらも「症状固定後に残存する身体・精神の不調」を意味するものですが、後遺障害に該当するか否かによって、保険金(損害賠償額)の支払いを受けられるかどうかが決まります。後遺症が残ったとき、その後遺症が、後遺障害に該当すれば、保険金(損害賠償額)が支払われますが、後遺障害に該当しなければ、保険金(損害賠償額)は支払われません。さらに、認定される後遺障害の等級によって、支払われる保険金額(上限額)が決まります。後遺症と後遺障害の関係は、次のようなイメージです。後遺症後遺障害(保険による補償対象)では、後遺症のうち、どのようなものが後遺障害に該当するのでしょうか?後遺障害の認定条件自賠責保険の後遺障害認定は、労災保険の障害認定の基準に準じて行われます。労災保険における「障害補償の対象」は、「傷病(負傷または疾病)が治ったときに残存する当該傷病と相当因果関係を有し、かつ、将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的毀損状態(=障害)であって、その存在が医学的に認められ、労働能力の喪失を伴うもの」としています(『労災補償障害認定必携第17版』労災サポートセンター69ページ)。これを交通事故の場合に当てはめると、①事故による受傷の結果発生した障害(精神的または身体的毀損状態)であって、②永続残存性があり、③その存在が医学的に認められ、④労働能力の喪失を伴うものが、自賠責保険による補償対象である後遺障害ということになります。すなわち、後遺障害に該当するためには、次の4つの条件を満たす必要があります。なお、この4つの条件は、後遺障害の該当性を判断する基本的事項であり、各障害等級ごとの認定基準は別途定められています。後遺障害 4つの条件事故による受傷との間に相当因果関係がある将来においても回復が困難と見込まれる医学的に存在が認められる労働能力の喪失を伴うそれぞれ見ていきましょう。事故による受傷との相当因果関係後遺障害の1つ目の条件は、事故による受傷が原因で残存した障害であるということ、すなわち、事故と相当因果関係があることです。事故により発生した損害の賠償ですから、事故との相当因果関係が要求されます。例えば、既存の障害のある人が、事故で増悪した場合、事故との相当因果関係が争いとなることがあります。永久残存性後遺障害の2つ目の条件は、永久残存性です。後遺障害という用語には、「回復しない」という性質が前提にあります。将来においても機能回復しないだろうと見込まれる状態を念頭においているのです。将来も回復せず障害が残るとして後遺障害が認められると、将来の逸失利益について損害賠償を受けることができます。逆にいうと、障害状態が永久には続かないだろうと見込まれる場合には、後遺障害とは評価されないということです。例えば、頸椎捻挫(むち打ち損傷)による神経症状などは、時間が経てば改善すると考えられ、後遺障害「非該当」と判断されることが多く、仮に後遺障害が認められても、永久残存性が否定され、逸失利益発生期間(労働能力喪失期間)を比較的短期間に限定されるのが一般的です。むち打ち症の後遺障害等級と労働能力喪失期間の問題医学的に存在が認められる後遺障害の3つ目の条件は、障害の存在が医学的に認められることです。医学的に認められるとは、障害の存在を「医学的に証明できる」あるいは「医学的に説明できる」ということです。医学的に証明できるというのは、レントゲン写真などの他覚的所見により、障害を他覚的に証明できることです。医学的に説明できるというのは、他覚的に証明することまではできないけれども、受傷態様や治療経過などから、障害が残存していてもおかしくはない、と医学的見地から合理的に推定できるということです。いくら自覚症状を訴えても、医学的に説明すらできなければ、後遺障害とは認められません。医学的に「証明できる」と「説明できる」の違いについて詳しくはこちら労働能力の喪失後遺障害の4つ目の条件は、労働能力の喪失を伴うということです。そもそも労災保険における障害補償は、障害による労働能力の喪失に対する損失填補を目的とした制度であり、自賠責保険の逸失利益に対する保険金(損害賠償額)の支払いも同趣旨ですから、労働能力の喪失を伴うということは大前提といえます。なお、ここでいう労働能力とは、「一般的な平均的労働能力」をいい、被害者の年齢・職種・利き腕・知識・経験等の職業能力的諸条件は、損害の程度を決定する要素とはなっていません(『労災補償 障害認定必携 第17版』70ページ)。その後遺障害によって労働能力がどの程度失われるのかについては、後遺障害等級に応じて、所定の労働能力喪失率が認められる仕組みです。自賠責保険と労災保険で、後遺障害等級の認定に差が出る?交通事故が労災事故でもある場合、同じ後遺障害であっても、自賠責保険と労災保険とで認定に差が出ることがあります。自賠責保険も労災保険も、同じ「労災補償の障害認定基準」を使用しますが、一般的に、自賠責保険による認定の方が、被害者にとって厳しい結果となるようです。これは、労災保険が本来的には「補償」の性格を有するのに対し、自賠責保険は「賠償」の性格を有する、という制度趣旨の違いに由来していると考えられています(『詳説 後遺障害』創耕舎60ページ注37)。適正な後遺障害等級の認定を受けるためのポイント適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、次の点が重要なポイントとなります。提出書類が後遺障害を裏付けるものとなっているか事前認定でなく被害者請求する交通事故に詳しい弁護士に相談する提出書類が後遺障害を裏付けるものとなっているか自賠責保険における後遺障害等級の審査は、基本的に書面審査です。審査にあたって、被害者本人に状態を聞くこともなければ、診療医から話を聞くこともありません。提出する書類が全てです。ただし、外貌醜状障害などは、面接して醜状を確認します。ですから、後遺障害等級の認定を受けるには、自賠責保険に提出する書類が、後遺障害の存在を裏付けるものとなっていることが大事です。重要なのは、後遺障害診断書と他覚的所見です。自賠責保険において後遺障害として認定されるには、主治医に後遺障害診断書を作成してもらって、自賠責保険に提出します。この後遺障害診断書こそが、症状固定時の残存症状を記載した書類であり、後遺障害申請手続きにおいて最も重要な書類です。後遺障害診断書の見本後遺障害診断書の記載で注意が必要なのが、「自覚症状」と「①精神・神経の障害/他覚症状および検査結果」の欄です。むち打ち症など局部の神経症状の場合には、これらの記載が特に重要です。よくあるのが、簡単な記載にとどまっているケースです。後遺障害の認定が不利になります。もっとも、記載するのは医師ですから、医師に任せるしかありませんが、残存する自覚症状については、医師にしっかり伝えることが大切です。大事なのは、自覚症状が詳しく記載され、その自覚症状を裏付ける他覚症状や検査結果が整合性をもって記載されることです。さらに、それを画像検査などの他覚的所見で客観的に裏付けることができれば、後遺障害等級が認定される可能性が高まります。こういった点に注意しながら後遺障害診断書を作成してくれる医師ならよいのですが、現実には、そこまで後遺障害診断書の書き方を熟知している医師は多くありません。ここまでやるには、あとで説明するように弁護士の力が必要です。事前認定でなく被害者請求する自賠責保険における後遺障害等級の認定手続には、任意保険会社による「事前認定」と、被害者による「直接請求」(被害者請求)の2つの方法があります。事前認定は、任意保険会社が事務的に自賠責保険に書類を提出するだけです。任意保険会社は、積極的に後遺障害等級の認定獲得を目指すわけではありません。任意保険会社が必要な書類をそろえて手続をしてくれるので被害者は楽なのですが、提出した書類の内容を被害者側で把握することはできません。これに対し、被害者請求は、自賠責保険に提出する書類の内容を精査し、必要なら補足資料を追加で提出することもできるので、適切な後遺障害等級が認定される可能性が高くなるのです。事前認定と被害者請求の違いについて詳しくはこちら交通事故に詳しい弁護士に相談する後遺障害等級の認定には、医師の作成する後遺障害診断書等が重要な役割を果たします。ところが、ここで深刻な問題があります。医師は、傷病の治療については専門ですが、「どうすれば後遺障害等級が認定されるか」ということについては専門ではありません。また、治療費が保険会社から支払われますから、保険会社と揉めたくないという思いが先に立ちます。そのため、保険会社に逆らってまで、被害者のために行動してくれる医師は、残念ながら少ないのです。そもそも後遺障害は賠償上の概念ですから、この分野の専門は弁護士なのです。どのように後遺障害診断書や経過診断書が記載されていれば後遺障害等級が認定されるか、後遺障害等級の認定に必要な検査所見は何か、といったことを判断できるのは、医師ではなく弁護士なのです。ですから、弁護士に相談して的確なアドバイスを受けることで、適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まるのです。ただし、交通事故の問題は、弁護士にとっても特殊な法律分野となるため、弁護士なら誰でも対応できるわけではありません。交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することが大切です。関連いつ・どのタイミングで弁護士に相談すればよいか弁護士に依頼する5つのメリット・1つのデメリット交通事故被害者が知っておきたい弁護士選び3つのポイントまとめ後遺症に対する慰謝料などは、後遺障害等級によって決まります。適正な後遺障害等級の認定を受けることが大切です。むち打ち症などは、後遺傷害の認定を受けるのが難しいので、治療中の早い段階で交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。自賠責保険で後遺障害「非該当」となったり、想定していた後遺障害等級よりも低い等級となった場合は、異議申し立てができます。後遺障害等級の異議申し立てについてはこちら交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『労災補償 障害認定必携 第17版』一般財団法人労災サポートセンター69~70ページ・『弁護士のための後遺障害の実務』学陽書房4~14ページ・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社91~100ページ・『詳説 後遺障害』創耕舎19~21ページ、60~63ページ・『後遺障害入門』青林書院3~5ページ、17~19ページ・『改訂版 後遺障害等級認定と裁判実務』新日本法規2~16ページ・『新・現代損害賠償法講座 5交通事故』日本評論社156~159ページ
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  • 併合等級
    後遺障害は複数部位で等級認定されると併合で等級が繰り上がる
    複数の部位で後遺障害が残ったときは、一定のルールに従って等級が繰り上がります。これを等級の「併合」といいます。ただし、第14級については、いくつ認定されても繰り上げになりません。複数の後遺障害が残った場合に自賠責保険から支払われる保険金額は、併合等級に対応する額となりますが、その額が併合前の等級に対応する保険金の合算額を超える場合は、合算額が支払われます。後遺障害等級の「併合」とは?自賠責保険制度では、2つ以上の後遺傷害の等級認定を受けた場合、一定のルールに従って等級が繰り上がる仕組みになっています。繰り上がった等級を「併合等級」といいます。併合による等級繰り上げのルールは、自動車損害賠償保障法(自賠法)施行令で定められています(自賠法施行令第2条1項3号)。なお、自賠法施行令では、介護を要する後遺障害が「別表1」、後遺障害が「別表2」で定められていますが、併合等級があるのは「別表2」の方だけです。併合による「等級の繰り上げ」のルール併合による等級の繰り上げのルールは、次のように定められています。第5級以上が2つ以上存する場合、重い等級の3級上位の等級に繰り上げ。第8級以上が2つ以上存する場合(上記の場合を除く)、重い等級の2級上位の等級に繰り上げ。第13級以上が2つ以上存する場合(上記の場合を除く)、重い等級の1級上位の等級に繰り上げ。後遺障害の13級以上が2つ以上ある場合、上のルールに従って等級が繰り上がります。これ以外の場合は、重い等級が後遺障害の等級となります。なお、第14級は、いくつ等級認定されても、繰り上げになりません。例4級と5級が認められた場合は、4級が3つ繰り上がって、併合1級。7級と8級が認められた場合は、7級が2つ繰り上がって、併合5級。11級と12級が認められた場合は、11級が1つ繰り上がって、併合10級。5級と13級が認められた場合は、5級が1つ繰り上がって、併合4級。12級と14級が認められた場合は、等級の繰り上げはなく、12級。併合等級の保険金額(自賠責保険から支払われる金額)後遺障害に対して自賠責保険から支払われる保険金の限度額は、後遺障害等級に応じて決められています。後遺障害に対する自賠責保険の支払基準と支払限度額2つ以上の後遺障害が認定された場合は、原則として、一番重い等級の保険金額が適用されます。ただし、複数の後遺障害が併合により等級が繰り上がった場合は、併合等級に対応する保険金額が、自賠責保険の支払限度額となります。なお、併合等級の場合は、注意しなければならない点があります。併合等級の保険金額の決定ルール併合等級に対応する保険金額が、併合前のそれぞれの後遺障害等級の保険金額の合算額を超える場合は、合算額が支払われます。つまり、「併合等級に対応する保険金額」と「併合前のそれぞれの等級に対応する保険金額の合算額」の少ない方の金額が、自賠責保険から支払われる保険金額となる仕組みです。(例1)12級と13級で、併合11級の場合等級保険金額11級331万円12級224万円13級139万円※後遺障害等級表「別表2」より抜粋。12級と13級の保険金額の合算額は363万円ですから、併合11級の331万円の方が少ないので、支払われる保険金額は、併合等級の331万円となります。(例2)10級と13級で、併合9級の場合等級保険金額9級616万円10級461万円13級139万円※後遺障害等級表「別表2」より抜粋。10級と13級の保険金額の合算額は600万円ですから、併合9級の616万円の方が高いので、支払われる保険金額は、合算額の600万円となります。併合等級の労働能力喪失率をどうするか併合等級の場合、後遺障害逸失利益の算定にあたって、労働能力喪失率をどうするかという難しい問題があります。これについては、判例も分かれ、確定した手法がありません。裁判では、併合等級に対応する労働能力喪失率を認定するもの、併合前の最も重い後遺障害等級に対応する労働能力喪失率を認定するもの、併合等級を下方修正するもの、逓減方式をとるものなど、判例が分かれています(『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂)。自賠責保険の支払基準では、後遺障害等級に対応して労働能力喪失率が決まっています。単一の後遺障害の場合は、その等級に応じた労働能力喪失率を採用すればよいのですが、複数の後遺障害の場合は、単純ではありません。自賠責保険では、労働能力喪失率が問題となることはありません。支払限度額があるからです。逸失利益は高額になるため、自賠責保険は支払限度額いっぱいを支払えばよいのです。上で見たように、併合等級が関わる場合でも、「併合等級に対応する保険金額」と「併合前のそれぞれの等級に対応する保険金額の合算額」の少ない方の金額を支払うというように、保険金額を決めておけば足りるわけです。それに対して、実際に損害額を算定するときには、労働能力喪失率をどうするかが大きな問題となります。単一の後遺障害の場合でも、裁判では、自賠責保険の支払基準に定められた労働能力喪失率に準拠しながらも、具体的状況を考慮し、適宜これを修正します。それが併合等級の場合なら、労働能力喪失率をどうするかは、非常に難しい問題なのです。過去の判例も参考にしながら個別に判断することになるので、被害者個人ができることではなく、詳しい弁護士に相談するしかありません。まとめ13級以上の後遺障害が2つ以上認定されると、一定のルールに従って等級が繰り上がり、併合等級となります。自賠責保険から支払われる保険金額(賠償額)も単一の後遺障害に比べて多くなります。ただし、複数の後遺障害が残った場合、損害賠償請求額の算定にあたっては、逸失利益の算定で労働能力喪失率をどう決めるかといった難しい問題があります。交通事故の後遺障害に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 異議申立て
    自賠責の後遺障害等級・非該当に不服のときの異議申立て
    後遺障害「非該当」とされた場合や、認定された等級に納得がいかない場合は、不服を申し立てることができます。不服申立ての方法は2つあります。自賠責への異議申立て損害保険・共済紛争処理機構への調停申立てここでは、自賠責への異議申立てについて見ていきます。損害保険・共済紛争処理機構への調停申立てはこちらをご覧ください。自賠責への異議申立て後遺障害の認定結果に不服がある場合は、自賠責に対して異議申立てができます。自賠責への異議申立ては、最初の申請が事前認定か被害者請求かによって、申立て先が異なります。被害者請求だった場合は、自賠責に対して異議申立書を提出します。事前認定だった場合は、相手方任意保険会社に対して異議申立書を提出します。被害者請求に切り替えて異議申立てをすることもできます。どちらにしても、実際に審査するのは、自賠責保険審査会です。同じ自賠責(損害保険料率算出機構)への申立てなので、再調査という形になります。異議申立書は、保険会社に定型書式も備えられていますが、書式が決まっているわけではありません。申立書に必要なのは、申立ての趣旨(どのように見直せと申し立てるのか)、申立ての理由(申立てが正当であることを基礎づける具体的な理由)、申立て理由を基礎づける証拠資料です。異議申し立ては何度でも可能ですが…異議申立ては、回数に制限はありません。被害者に不利益に変更されることもないとされています。だからといって、同じような理由で何度も申し立てをしても意味はありません。新たな根拠(例えば診断書や医師の意見など)を提出するか、自賠責の事実認定についての誤りを具体的に指摘しなければ、結論が変更されることはありません。異議申立てが多いのは非該当とされたケース異議申立てで多いのは、後遺障害非該当の結果に対して、適切な等級(多くは14級9号)に該当することを求めて申し立てるケースです。ただ、新たな資料の提出ができないと、結果を変えることは難しいようです。弁護士に相談すれば、後遺障害等級の認定理由をふまえ、刑事記録や経過診断書、診療報酬明細書などを吟味し、必要なら主治医とも面談し、適切な等級認定を受けられるよう動いてくれます。自賠責の認定した後遺障害等級が裁判でも尊重される後遺障害等級は、自賠責の認定が裁判でも尊重されますから注意が必要です。後遺障害等級が1級違うだけで損害賠償金額に大きく影響します。等級認定に納得がいかないときは、異議申立てを弁護士に相談してみましょう。その他の注意点異議申立ては、加害者に対する請求ではないため、時効の更新(中断)とはなりませんから注意してください。この異議申立ての方法は、損害保険料率算出機構に加盟していない共済組合などの認定には利用できません。まとめ後遺障害等級の認定に納得できないときは、異議申立てができます。ただし、新たな根拠が示せなければ、結果が変わることはありません。交通事故の後遺障害に詳しい弁護士とよく相談することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 130~131ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 30~31ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 51~52ページ・『交通事故案件対応のベストプラクティス』中央経済社 106~107ページ
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  • 将来介護費の計算
    交通事故の後遺障害で付添看護が必要なときの将来介護費の算定方法
    交通事故が原因で、寝たきりになったり、自分で食事や移動ができなくなった場合は、将来にわたって必要となる介護費を損害賠償請求できます。ここでは、どんな場合に将来介護費が認められるのか、将来介護費の算定方法、将来介護費を認めた裁判例について、見ていきます。将来介護費が認められる後遺障害とは?将来介護費が認められるのは、基本的には、自賠法(自動車損害賠償保障法)施行令の[別表第1]に明示されている、「介護を要する後遺障害」の第1級と第2級に該当する場合です。第1級が常時介護を要する後遺障害、第2級が随時介護を要する後遺障害です。自動車損害賠償保障法施行令[別表第1]等級介護を要する後遺障害第1級一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの第2級一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するものしかし、裁判では、これ以外の後遺障害であっても、具体的に後遺障害の内容・程度を検討し、介護の必要性が認められる場合は、将来介護費を認めています。等級3級以下の後遺障害でも、高次脳機能障害、脊髄損傷、下肢欠損、下肢機能障害に関する場合は、将来介護費が認められる傾向にあるようです。特に、高次脳機能障害の場合は、身体介護の必要性に乏しくても、記憶障害、遂行機能障害、注意障害、判断力低下などの症状があり、介護として「見守り」や「声かけ」の必要性が認められるときは、将来介護費が認められています。将来介護費の基準額将来介護費の基準額は、「近親者による介護」か「職業付添人による介護」かによって異なります。近親者による介護の場合近親者による介護の場合の基準額は、常時介護を要するときは、1日あたり 8,000円(赤い本)、8,000~9,000円(青本)となっています。随時介護を要するとき、すなわち、入浴、食事、更衣、排泄、外出など一部の行動について介護を必要とする状態のときは、具体的な介護の内容や必要な時間に応じて、基準額から減額します。職業付添人による介護の場合職業付添人による介護の場合の介護費は、実費が認められます。認定される介護費には幅があり、後遺障害等級1級の場合で、日額1万5,000円~2万円の範囲で認めることが多いようです。24時間態勢での看視が必要な場合や数時間ごとの体位交換が必要な場合など、複数の職業付添人が必要で介護の負担が特に思いケースでは、日額2万円を超える金額が認められています。将来介護費の計算方法将来介護費は、次のように計算します。[日額]×[365日]×[介護期間に対応するライプニッツ係数]一般的には、一時金賠償のため、ライプニッツ方式で中間利息を控除します。近親者による介護と職業付添人による介護を併用したり、将来的に近親者介護から職業付添人による介護に変わる場合は、近親者による介護費と職業付添人による介護費をそれぞれ計算して合計します。日額の決め方将来介護費の日額は、介護の主体、介護の内容や時間、両親など近親者が介護する場合は肉体的・精神的な負担の程度、などを考慮して判断します。介護の内容・程度を考慮被害者が植物状態にあって若年者であるなど、介護する近親者の肉体的・精神的負担が著しく重いと認められる場合には、近親者介護の基準額より増額されます。また、被害者の体格や介護の内容により、複数の付添人による介護が必要と認められるような場合には、職業付添人による介護費が高めに認められることもあります。近親者介護と職業付添人介護の併用近親者が就労している場合は、休日は近親者による介護、平日は職業付添人による介護というように、近親者による介護と職業付添人による介護の併用が認められます。将来の介護態勢の変更介護する近親者が被害者より高齢の場合は、近親者が就労可能な終期である67歳に達するまでは近親者による介護、その後は職業付添人による介護が認められます。介護期間将来介護費が認められる介護の期間は、原則として、被害者の生存する期間です。被害者の生存可能期間は、厚生労働省の簡易生命表の平均余命にもとづき、症状固定時からの余命年数とします。重度後遺障害者は、平均余命よりも生存期間が短いといわれますが、被害者が平均余命よりも短いと認定するに足りるだけの根拠が提出されない限り、平均余命までの介護費を認めるのが普通です。遷延性意識障害(植物状態)にある被害者についても、近時の裁判例は、平均余命まで生存する蓋然性が否定される特別な事情(例えば、被害者の健康状態が重度の合併症の存在等によって思わしくない状況にあるなどの事情)が認められない限り、生存可能期間を平均余命の年数をもって認める傾向にあります。余命期間の認定が困難であることから、一時金賠償でなく、定期金賠償を認めた裁判例もあります。計算例被害者は、症状固定時20歳の男性で、常時介護が必要。母親(50歳)の稼働可能年齢(67歳)までは近親者介護(1日あたり8,000円)、それ以降は職業付添人による介護(1日1万5,000円)とします。この場合の将来介護費は、次のように計算します。男性20歳の平均余命は、厚生労働省の簡易生命表(平成20年)によると、59年です。症状固定時から母親が67歳になるまで、17年間分の介護費は、17年のライプニッツ係数(年5%)が 11.2741ですから、 8,000円×365日×11.2741=3,292万372円それ以降の42年間分(59年-17年)の介護費は、59年のライプニッツ係数(年5%)が18.8758ですから、 1万5,000円×365日×(18.8758-11.2741)=4,161万9,307円よって、将来介護費は、 3,292万372円+4,161万9,307円=7,453万9,679円将来介護費の立証に必要なもの介護の必要性や、必要とされる介護の内容・程度については、将来介護費を請求する被害者の側で立証しなければなりません。少なくとも医師の診断書、後遺障害診断書のほか、自賠責の後遺障害等級の認定を受けた場合は、後遺障害等級認定票が必要です。必要とされる介護の内容・程度については、日常生活動作に関する報告書や、介護を担っている近親者等の報告書・陳述書を提出し、被害者の生活実態、介護の内容・程度を明らかにする必要があります。将来介護費の日額については、被害者と家族の生活実態、介護の内容・程度に関する報告書や陳述書、職業付添人による介護の場合は、介護費の領収書・見積書等により、必要な介護費を立証することが必要です。介護保険給付、自動車事故対策機構の介護料との関係将来介護費の算定にあたり、「介護保険給付」や「自動車事故対策機構からの介護料」が問題となることがあります。結論をいえば、どちらも将来介護費の算定にあたり、損益相殺の対象となりません。介護保険給付は損益相殺の対象となるか?第三者が起こした交通事故によって要介護状態になった場合であっても、介護保険の給付がされます。第三者が被保険者に対する損害賠償義務を履行する前に市町村が保険給付を行ったときは、市町村は、その給付の価額の限度において被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得するとされています(介護保険法21条1項)。このように代位規定があることから、すでに給付のあった介護保険給付が損益相殺の対象となることは明らかです。しかし、将来の介護保険給付については、現在と同じ給付の内容・水準が維持されるかどうかは不確定なため、損益相殺の対象としないのが一般的です。裁判では、次のような理由で、被害者が未だ受領していない介護保険給付についての損益相殺を否定しています(さいたま地裁判決・平成17年2月28日)。介護給付を受けるか否かは被害者の選択による。介護施策が未来永劫に同一であるとの保証はなく、法改正により施策の変更される可能性がある。介護度の変化は予測困難である。介護保険給付は福祉的給付であり、損害賠償義務者の負担を軽減する制度ではない。自動車事故対策機構からの介護料は損益相殺の対象となるか?自動車事故対策機構(NASVA・ナスバ)からの介護料は、家族の負担を軽減するための贈与の性格を有するもので、損害から控除すべきでないとされており、損益相殺の対象となりません。将来介護費を認めた裁判例将来介護費を認めた裁判例を、いくつか挙げておきます。遷延性意識障害の事例8歳の男子(植物状態)職業的介護人1名と近親者の合計3名の介護が必要として、1日当たり2万4,000円を平均余命まで、合計1億4,519万円余を認めた。(大阪地裁・平成19年7月26日)脊髄損傷の事例26歳の男性(膀胱障害を伴う四肢麻痺、1級3号)2人分の職業付添介護費日額1万8,300円、平均余命53年分、合計1億2,302万円余を認めた。(東京地裁八王子支部判決・平成12年11月28日)高次脳機能障害の事例23歳の女性(左不全麻痺、左知覚鈍麻、知能低下等、併合1級)母親が67歳になるまでの10年間は、母親の介護費として日額8,000円、職業付添人の介護費として日額3,692円(2時間分)、その後平均余命までの52年間は職業付添人の介護費用として日額2万4,000円、合計1億3,200万円余を認めた。(東京地裁・平成15年8月28日)RSD(反射性交感神経ジストロフィー)の事例35歳の女性(右下肢のRSD、9級)母親が67歳に達するまでは母、その後は職業介護人による介護が必要として日額1,000円、合計669万円余を認めた。(大阪高裁・平成18年8月30日)まとめ重度の後遺障害により、将来にわたり介護が必要となったときは、将来介護費を賠償請求できます。近親者が介護する場合は、1日あたり8,000円が基準額です。職業付添人による介護の場合は、実費が認められます。そのほか、次の点は、知っておくとよいでしょう。生命を維持するため24時間の付添看護が必要な場合は、1日2~3人分の介護費用が認められます。介護期間は、基本的に平均余命まで認められます。重度後遺障害でなくても(後遺障害等級3級以下でも)、随時介護が必要と認められれば、招待介護費は認められます。将来介護費は、一般的に高額となるため、よく争いになります。お困りのときは、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通損害関係訴訟 捕訂版』青林書院 179~191ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 124~129ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 54~56ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 155~158ページ
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  • 後遺障害逸失利益の計算
    交通事故で後遺症が残ったときの後遺障害逸失利益の計算方法
    後遺障害逸失利益とは、被害者に後遺障害が残り、労働能力が失われたり低下したりするために、将来発生するであろう収入の減少のことです。同じ消極損害でも、休業損害は「現実に生じた収入の喪失」ですが、逸失利益は「将来発生するであろう収入の喪失」です。後遺障害逸失利益の計算の仕方後遺障害逸失利益は、次のように計算します。基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数被害者の基礎収入(年収)に労働能力喪失率を乗じると、1年間の減収額が分かります。この1年間の減収額に就労可能期間を乗じると、将来の収入の喪失額が計算できます。ただし、損害賠償は将来にわたって得られる利益を先にまとめて支払うため、中間利息を控除します。これが、計算式の意味です。それでは、各要素について、詳しく見ていきましょう。基礎収入基礎収入は、一般的には事故前年の収入額(年収)を用います。子ども、学生、専業主婦など事故前の収入がない場合は、賃金センサスの平均賃金を用います。逸失利益に対する賠償は「将来の収入減」を補償するものですから、学生や年少者など未就労者も対象となります。逸失利益の基礎収入の算定について、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が「三庁共同提言」を発表しています。職種ごとに、後遺障害逸失利益の基礎収入の算出方法をご紹介します。給与所得者原則として、事故前年の実収入額を基礎に計算します。年収の証明は、事故前の源泉徴収票や確定申告書などで行います。交通事故の後遺症が理由で退職した場合、「実際にもらった退職金」と「定年まで働いたら、もらえたはずの退職金」との差額も逸失利益となります。給与所得者の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら若年労働者若年労働者(おおむね30歳未満)の場合は、実収入でなく、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入として計算するのが通例です。若年労働者は、収入が低い一方、仕事を長く続けていけば収入が上がっていくことが一般的です。前年の実収入を基礎収入とすると、将来の給与の上昇を反映できず、逸失利益が不当に低く算出さてしまいます。また、学生の逸失利益には、賃金センサスの全年齢平均賃金を用いて計算するため、仕事をしていない学生より低い逸失利益になってしまい不合理だからです。会社役員会社役員の場合は、利益配当部分を除き、労務対価部分のみを基礎収入とします。会社役員の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら事業所得者原則として、事故前年の確定申告所得額を基礎収入とします。税金対策のため過少申告している場合は、実際の収入額が申告所得額より高いことを証明すれば、その収入額が基礎収入額として認められることがあります。確定申告をしていないときでも、相当の収入があったと認められるときは、賃金センサスの平均賃金を基礎することが認められています。個人事業主の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら家事従事者専業主婦の場合、賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とします。パート収入などがある有職主婦の場合は、実際の収入と賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金のいずれか高い方を基礎収入とします。男性の家事従事者(専業主夫)の場合も同じです。主婦・主夫の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら学生・生徒・幼児被害者が症状固定時に、学生・生徒・幼児等の場合、原則として、賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入とします。大学在学中の学生は、「大学・大学院卒」の平均賃金を用います。18歳未満の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら高校生・大学生の基礎収入の算定方法について詳しくはこちら失業者失業者であっても、労働能力と労働意欲があり、就労の可能性がある場合は、原則として失業前の収入を参考に収入額を計算します。失業前の収入が賃金センサスの全年齢平均賃金を下回っている場合は、将来、全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性(可能性が高いこと)が認められれば、全年齢平均賃金を収入額とできます。労働能力喪失率後遺障害のため労働能力の低下した割合を「労働能力喪失率」といいます。自賠責保険の支払基準において、後遺障害等級に対応した労働能力喪失率が決められています。つまり、後遺障害等級が決まれば、労働能力喪失率が決まるという関係です。通常は、この自賠責の労働能力喪失率を用いて、後遺障害逸失利益を算定します。裁判では、被害者の実情に照らして、自賠責の労働能力喪失率を適用するのが適当でないと判断された場合は、修正した労働能力喪失率が認定されることがあります。自賠責保険の労働能力喪失率表とその問題点労働能力喪失期間労働能力喪失期間とは、労働能力喪失による収入の減少が続く期間のことです。原則は症状固定日から67歳まで後遺障害は「症状固定により、それ以上よくならない」ということですから、労働能力喪失期間は、症状固定日から就労可能年限とされる67歳までが原則です。始期終期後遺傷害事故の場合症状固定時67歳死亡事故の場合死亡時67歳この始期から終期までの期間が、労働能力喪失期間となります。ただし、後遺障害の部位や機能回復の見込み、被害者の年齢や仕事内容などによっては、就労可能年限よりも短く労働能力喪失期間を限定する場合があります。労働能力喪失期間を限定する場合腕や足を切断したような器質障害や重篤な後遺障害の場合は、通常、67歳までを労働能力喪失期間とします。しかし、神経症状のように、後遺障害といっても相当期間後には回復が予想される場合や、軽度の障害で本人の慣れなどにより労働能力に対する影響が次第に薄れていくと考えられる場合は、労働能力喪失期間を制限されることがあります。特に、むち打ち症は、短期間に制限される傾向があります。未就労者の場合は学校卒業年齢から67歳まで被害者が未就労者の場合は、労働能力喪失期間の開始時期が症状固定日でなく、学校を卒業する年齢になります。一般に、就労開始年齢は18歳です。4年制大学に在学している学生なら22歳です。高校生などで大学進学が確実視される場合は、大学卒業年齢の22歳からとなります。高齢者は平均余命の2分の1高齢者の場合、症状固定日から67歳までを労働能力喪失期間とすると、労働能力喪失期間が全く認められない場合や、認められても極めて短期間となってしまう場合があります。そのため、症状固定日から67歳までの年数が、平均余命の2分の1を下回る場合は、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。これは、67歳を超えて就労する蓋然性が認められる者は、平均余命の2分の1くらいは働くだろうと考えられるからです。平均余命は、厚生労働省の簡易生命表を用います。労働能力喪失期間として「症状固定日から67歳までの年数」を用いるか「平均余命の2分の1」を用いるか、境界となる年齢は何歳でしょうか?2015年(平成27年)の簡易生命表によると、男性が52歳、女性が47歳で、就労可能年数が平均余命の2分の1を下回るようになります。ですから、男性は52歳以上、女性は47歳以上が、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とする目安となります。男性年齢平均余命平均余命の1/267歳までの年数51歳31.4815.741652歳30.5715.28515※厚生労働省・2015年簡易生命表(男)より一部抜粋して作成。女性年齢平均余命平均余命の1/267歳までの年数46歳41.9420.972147歳40.9820.4920※厚生労働省・2015年簡易生命表(女)より一部抜粋して作成。就労可能年限が67歳というのは、第12回生命表(昭和44年)の男子0歳の平均余命を採用したものであり、大して根拠のあるものではないようです。(北河隆之著『交通事故損害賠償法・第2版』弘文堂 224ページ)中間利息控除係数後遺障害逸失利益は、将来得られたであろう利益を一時金で支払いますから、中間利息を控除します。中間利息控除とは、得られたお金を預金したり運用したりすれば利息が付くはずだから、利息分を差し引くということです。これを簡単に計算するための係数が、中間利息控除係数です。中間利息控除係数には、複利計算のライプニッツ係数と単利計算のホフマン係数があり、現在は、ライプニッツ係数を用いる方式(ライプニッツ方式)が主流です。自賠責保険の支払基準でも、「ライプニッツ係数を乗じて算出した額とする」とされています。中間利息控除とライプニッツ方式・ホフマン方式について詳しくはこちら中間利息控除係数(ライプニッツ係数・ホフマン係数)について詳しくはこちらまとめ後遺障害逸失利益は、被害者の基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間によって決まります。基礎収入を証明する書類は被害者自身が用意する必要がありますが、後遺障害逸失利益の計算を被害者自身で行い、保険会社と交渉するのは無理です。自分で何とかしようなどとせず、まずは、詳しい専門の弁護士に相談することをおすすめします。その方が賠償金額が増えますから、結果的にお得です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 後遺障害慰謝料の算定基準
    後遺障害慰謝料の計算方法と裁判所基準・自賠責保険基準
    後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことによる被害者の精神的損害を賠償するものです。後遺障害等級(後遺障害の程度)に応じて基準額があり、後遺障害等級が決まれば、慰謝料の額が決まります。後遺障害慰謝料の算定基準後遺障害慰謝料には、裁判所基準・任意保険基準・自賠責保険基準の3つの算定基準があり、被害者が賠償請求する損害額を計算するときには、裁判所基準で計算します。裁判所基準として用いられるのは、主に次の2つです。日弁連交通事故相談センター編『交通事故損害額算定基準』(通称:青本)日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(通称:赤い本)後遺障害等級ごとの慰謝料について、2つの裁判所基準と自賠責保険基準をまとめておきます。後遺障害慰謝料の裁判所基準と自賠責保険基準の比較等級裁判所基準(万円)自賠責保険基準(万円)青本赤い本要介護第1級1,650(1,850)要介護第2級1,203(1,373)第1級2,700~3,1002,8001,150(1,350)第2級2,300~2,7002,370998(1,168)第3級1,800~2,2001,990861(1,005)第4級1,500~1,8001,670737第5級1,300~1,5001,400618第6級1,100~1,3001,180512第7級900~1,1001,000419第8級750~870830331第9級600~700690249第10級480~570550190第11級360~430420136第12級250~30029094第13級160~19018057第14級90~12011032※( )内の金額は、被害者に扶養者がいる場合※『青い本』25訂版、『赤い本』2016年版※自賠責保険基準は、2020年4月1日以降の改正後の額。後遺障害慰謝料は傷害慰謝料と別に請求できる後遺障害慰謝料は、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と別に支払われます。例えば、1ヵ月入院、2ヵ月通院して治療したにもかかわらず、10級の後遺障害が残った場合、「赤い本」基準だと、入通院慰謝料が98万円、後遺障害慰謝料が550万円、合計648万円が慰謝料の目安となります。後遺障害なく完治した場合は、後遺障害慰謝料の請求はできません。後遺障害「非該当」でも後遺症慰謝料が認められることもある後遺障害慰謝料は、基本的に後遺障害等級により決まります。保険会社との示談交渉では、後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害慰謝料は認められません。しかし、裁判では、慰謝料の算定にあたって個別事情が考慮されます。傷害の内容や程度により、後遺障害「非該当」でも後遺症慰謝料を認める場合や、逸失利益が認められないことを考慮して慰謝料を増額する場合があります。例えば、次のような判例があります。後遺障害「非該当」でも、後遺症慰謝料が認められた判例後遺障害等級が認定されなかったものの、後遺症慰謝料が認められたものとして、次のような判例があります。裁判内容東京地裁1995年1月27日20歳女性の顔面醜状について、12級14号(外貌に醜状を残すもの)が認定されなかったが、慰謝料200万円を認めた。京都地裁2011年12月16日8歳男児の下肢醜状について、12級14号(外貌に醜状を残すもの)が認定されなかったが、慰謝料100万円を認めた。「逸失利益」が認められないことを考慮し、慰謝料を増額した判例裁判では、逸失利益など財産的損害が認められない場合、慰謝料を増額して補償することがあります(慰謝料の補完性)。後遺症が残ったものの、逸失利益は否定せざるを得ないが、無視できない不利益が予想される場合などは、慰謝料の増額でバランスを取るのです。裁判内容仙台地裁1995年2月6日30歳女性(主婦)の顔面醜状(第7級)について、家事能力が低下したとは認められないとして逸失利益を否定し、1,200万円の慰謝料を認めた。広島地裁福山支部1986年1月24日46歳女性(スナック経営者)の顔面醜状(第7級)について、逸失利益を認めなかったことを考慮して、慰謝料2,500万円(入通院慰謝料を含む)を認めた。重度の後遺障害の場合は、親族にも慰謝料が認められる場合があります。弁護士に相談してみるとよいでしょう。まとめ後遺障害慰謝料は、基本的に後遺障害等級にもとづいて額が決まります。後遺障害等級の認定を勝ち取ることがポイントです。ただし、後遺障害等級が認定されない場合や逸失利益が認められない場合でも、裁判では慰謝料が認められたり増額されることがあるので、あきらめずに弁護士に相談してみましょう。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 近親者の慰謝料請求権
    交通事故で重度の後遺障害が残ると家族にも慰謝料が認められる
    交通事故の被害者に「重度の後遺障害」が残った場合は、被害者本人の後遺障害慰謝料とは別に、親族(父母・配偶者・子など)にも「近親者慰謝料」が認められる場合があります。裁判では、本人慰謝料の2~3割程度の近親者慰謝料が認められるケースが多いようです。近親者の慰謝料請求権とは?近親者に対する損害の賠償について、民法では次のように定めています。民法711条(近親者に対する損害の賠償)他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者および子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。これは、生命を害された被害者の近親者が、慰謝料請求権を有することの根拠規定です。第三者の不法行為によって被害者の生命が害された場合、民法711条により、被害者の父母・配偶者・子は、たとえ財産上の損害を受けなくても、加害者に対して慰謝料を請求できます。この民法711条の規定は、被害者が死亡した場合だけでなく、死亡に近い場合にも適用できると解されています。また、父母・配偶者・子以外でも、これに準ずる者も、慰謝料を請求できると解されています。どんな場合に近親者の慰謝料請求権が発生するか?最高裁は、父母・配偶者・子のほか、被害者と一定の関係がある者について、被害者の生命を害されたときにも比肩するような精神的苦痛を受けた場合には、「自己の権利」として慰謝料請求権が認められるとする判断を示しています。「自己の権利」というのは、民法709条、710条にもとづく損害賠償請求権のことです。民法709条(不法行為による損害賠償)故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。民法710条(財産以外の損害の賠償)他人の身体、自由もししくは名誉を侵害した場合または他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。民法709条は、不法行為が成立すると、被害者に損害賠償請求権が発生することを定めたものです。民法110条は、精神的な損害の賠償、すなわち慰謝料の請求権が発生することを定めたものです。近親者の慰謝料請求権を認めた判例被害者に重度の後遺障害が残り、その家族にも慰謝料請求権が認められた最高裁判例として、次のものがあります。最高裁判決(昭和33年8月5日)不法行為により身体を害された被害者の母の慰謝料請求が認容された事例です。裁判要旨不法行為により身体を害された者の母は、そのために被害者が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けた場合、自己の権利として慰藉料を請求しうるものと解するのが相当である。最高裁判決(昭和39年1月24日)不法行為により身体の障害を受けた者の父母が自己の権利として慰謝料請求権を有するとされた事例です。裁判要旨12歳の娘が不法行為により身体の傷害を受け、世間並みの幸福な結婚生活をできるかどうかを危惧するなど親として相当の精神的苦痛を味わっている場合、父母は自己の権利として加害者に対し慰藉料の請求ができる。近親者の慰謝料請求権を認めなかった判例一方で、後遺障害の程度によっては、近親者の慰謝料請求権を認めなかった判例もあります。(⇒ 昭和43年6月13日、昭和43年9月19日の最高裁判決)「被害者が生命を害された場合にも比肩すべきとき」または「生命を害された場合に比して著しく劣らない精神上の苦痛を受けたとき」に限り、自己の権利として慰謝料を請求できるものと解するのが相当である、という判断からです。父母・配偶者・子以外の慰謝料請求権を認めた判例民法711条の類推適用により、被害者の父母・配偶者・子以外で慰謝料請求権が認められた事例があります。最高裁判決(昭和49年12月17日)被害者の夫の妹に慰謝料請求権が認められた事例です。判決の要旨は、次の2点です。不法行為により死亡した被害者の夫の妹であつても、この者が、跛行(はこう)顕著な身体障害者であるため、長年にわたり被害者と同居してその庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続を期待しており、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた等の事実関係があるときには、民法711条の類推適用により加害者に対し慰藉料を請求しうる。不法行為による生命侵害があつた場合、民法711条所定以外の者(条文に明文されてなく、文言上は該当しない者)であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうる。近親者慰謝料が認められる「重度の後遺障害」とは?最高裁のいう「被害者が生命を害されたにも比肩するような精神的苦痛を受けた場合」とは、どのような後遺障害が該当するのでしょうか。後遺障害等級が高位の場合、特に第1級に認定される場合は、ほとんどの判例において、請求すれば認められているようです。後遺障害等級が低くても、近親者慰謝料を認めた判例もあります。ただし、代わりに、本人分の慰謝料が低くなったり、介護料が認められて当然の場合でも認められなかったりして、残念ながら、高位の後遺障害等級ほどは認められないようです。重度の後遺障害で近親者慰謝料が認められた判例重度の後遺障害で、近親者慰謝料が認められた判例をご紹介します。後遺障害「1級3号」で、近親者慰謝料が認められた事例45歳・兼業主婦が、四肢不全麻痺等で後遺障害1級3号に認定。傷害慰謝料360万円のほか、後遺障害慰謝料として、本人分2,800万円、夫400万円、子2人各200万円、父母各100万円、後遺障害分合計3,800万円を認めた。(東京地裁・平成16年5月31日)後遺障害「併合2級」で、近親者慰謝料が認められた事例27歳・女性会社員が、右下肢欠損、高次脳機能障害、右股関節機能障害、左大腿部醜状、背部醜状で、後遺障害併合2級に認定。傷害慰謝料321万円のほか、後遺障害慰謝料として、本人分2,500万円、父母各100万円、姉妹2人各50万円、後遺障害分合計2,800万円を認めた。(横浜地裁・平成23年5月27日)軽度の後遺障害で近親者慰謝料が認められた判例軽度の後遺障害で、近親者慰謝料が認められた判例をご紹介します。併合4級の12歳・男子の父母に各100万円を認めた。(東京地裁・平成6年1月18日)高次脳機能障害等(5級)の10歳・男子の父母に各250万円を認めた。(名古屋地裁・平成25年3月19日)左下肢短縮による歩行障害等(7級)の72歳・主婦の夫に100万円を認めた。(横浜地裁・平成6年6月6日)頸部外傷、頭蓋陥没骨折、外傷性クモ膜下出血、急性硬膜外血腫の傷害を受け、神経障害(12級)の1歳・男子の父母に各30万円を認めた。(神戸地裁・平成8年5月30日)近親者慰謝料の額被害者死亡の場合は、被害者本人の慰謝料請求権を近親者が相続します。そのため、近親者の固有の慰謝料請求をしなくても、本人分と近親者分を合わせて慰謝料総額が変わらないように判断されます(⇒ 死亡慰謝料の詳細はこちら)。一方、後遺障害の場合は、被害者本人の後遺障害慰謝料に、近親者慰謝料が上乗せされます。ですから、被害者死亡の場合に比べて、後遺障害の場合は、被害者本人分に加え近親者慰謝料を請求すると、認められる慰謝料総額が高額になります。これは、被害者の日常的な介護などのために、近親者自身の自由が奪われる精神的苦痛が考慮されるからです。示談交渉はもちろん裁判においても、請求額を超えて慰謝料が認められることはありませんから、被害者の介護などで近親者慰謝料が認められる可能性がある場合は、近親者慰謝料分も算定し、被害者本人の後遺障害慰謝料と合わせて慰謝料請求することが大切です。なお、近親者慰謝料の金額は、ケースにより異なりますが、被害者本人慰謝料の2~3割程度を認めることが多いようです。まとめ後遺障害が残ったときは、被害者本人の慰謝料に加え、家族や親族も慰謝料請求が認められることがあります。そのため、後遺障害の場合の慰謝料総額の方が、被害者死亡の場合の慰謝料よりも高額になることが多くあります。近親者慰謝料は、被害者の家族や親族が請求しない限り、保険会社みずからが賠償額に算入するものではありません。近親者慰謝料を請求できる可能性がある場合は、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士と相談して、請求することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
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  • 外貌醜状
    外貌醜状の後遺障害等級、労働能力喪失率、逸失利益、慰謝料
    外貌醜状とは、顔面や頸部など日常露出する部位に醜状痕が残った後遺障害です。外貌醜状障害による逸失利益は、被害者の性別、年齢、職業などを考慮し、労働能力に直接または間接的に影響を及ぼすおそれがあるか否かで判断されます。逸失利益が認定されなくても、慰謝料の増額事由として斟酌される場合があります。ここでは、外貌醜状の後遺障害等級とその認定基準、外貌醜状による後遺障害逸失利益と慰謝料の認定について近年の動向を見ていきます。醜状障害の後遺障害等級と認定基準交通事故により外貌の醜状障害が残った場合の後遺障害等級については、2010年までは女性と男性で異なる取り扱いがされていました。女性の方が、後遺障害等級の位置づけが高かったのです。現在は、男女の区別なく、同じ後遺障害等級となっています。2010年6月10日以降の事故については、新しい後遺障害等級と認定基準が適用されます。それでは、さっそく「新基準」を見ていきましょう。顔面などの醜状痕(醜状障害)の後遺障害等級まず、醜状痕の後遺障害等級についてです。醜状痕の後遺障害等級は、「外貌の醜状障害」と「上肢・下肢の露出面の醜状障害」について定めています。外貌とは、頭部、顔面部、頸部のように、上肢・下肢以外の日常露出する部分をいう、と障害等級認定基準において定められています。上肢の露出面とは、ひじ関節以下(手部を含む)、下肢の露出面とは、ひざ関節以下(足背部を含む)をいいいます。後遺障害等級は、次の通りです。醜状障害の後遺障害等級等級後遺障害外貌7級12号外貌に著しい醜状を残すもの9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの12級14号外貌に醜状を残すもの上肢14級4号上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの下肢14級5号下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの※後遺障害等級表(自動車損害賠償保障法施行令[別表第二])より抜粋。各等級の労働能力喪失率は、次のようになります。労働能力喪失率後遺障害等級労働能力喪失率第7級56%第9級35%第12級14%第14級5%※労働能力喪失率表(自賠責の保険金支払基準[別表1]より抜粋。醜状障害については、後遺障害等級が認定されても、それに対応した労働能力喪失率が認められない、したがって逸失利益が認められない、という問題があります。それについては、あとで詳しく見ることにして、後遺障害の各等級の認定基準、すなわち、「著しい醜状」、「相当程度の醜状」、単なる「醜状」とは、どういうものをいうのか、見ておきましょう。外貌醜状障害に関する後遺障害等級の認定基準「著しい醜状」、「相当程度の醜状」、単なる「醜状」については、「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」で、次のようになっています。ここに示したのは、労災保険における障害等級認定基準ですが、自賠責保険の後遺障害等級認定基準も、これと同じです。自賠責制度は、労災制度に準じて運用されています。したがって、自賠責の後遺障害等級表は、労災の障害等級表と基本的に同じです。自賠責制度における後遺障害等級の判断は、原則として労災制度の障害等級認定基準に準拠して行われます。著しい醜状外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のもの。頭部手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損顔面部鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没頸部手のひら大以上の瘢痕※「手のひら大」は、指の部分は含まない。相当程度の醜状外貌における「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5㎝以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの。醜状外貌における単なる「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のもの。頭部鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損顔面部10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3㎝以上の線状痕頸部鶏卵大面以上の瘢痕障害補償の対象となる外貌の醜状は、人目につく程度以上のものでなければならないから、眉毛、頭髪等にかくれる部分については、醜状として取り扱わないとされています。例えば、眉毛の走行に一致して3.5㎝の縫合創痕があり、そのうち1.5㎝が眉毛にかくれている場合は、顔面に残った線状痕は2㎝となるので、外貌の醜状には該当しないことになります。外貌醜状に関する障害等級の認定基準まとめると、こうなります。頭部顔面部頸部瘢痕頭蓋骨の欠損瘢痕線状痕組織陥没瘢痕第7級12号(著しい醜状)手のひら大以上手のひら大以上鶏卵大面以上―10円銅貨大以上手のひら大以上第9級16号(相当程度の醜状)―――長さ5㎝以上――第12級14号(醜状)鶏卵大面以上鶏卵大面以上10円銅貨大以上長さ3㎝以上―鶏卵大面以上【参考】「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」平成23年2月1日 厚生労働省労働基準局長通知(厚生労働省のWebサイトにリンクしています)外貌醜状障害に関する後遺障害等級の改正外貌醜状障害に関する後遺障害等級が改正された経緯を簡単に見ておきましょう。外貌の醜状障害は、従来、女性は7級と12級、男性は12級と14級に分類され、男性は女性より障害等級が低く取り扱われていました。ちなみに、旧基準では、このように分類されていました。第7級12号 女性のの外貌に著しい醜状を残すもの第12級13号 男性の外貌に著しい醜状を残すもの14号 女性の外貌に醜状を残すもの第14級10号 男性の外貌に醜状を残すもの京都地裁が、2010年(平成22年)5月27日、「外貌の著しい醜状に関し、男女の障害等級に5等級の差を設けている現行の障害等級表は、憲法14条1項に違反する」と判決。国は控訴しなかったため、同平成22年6月10日に判決が確定しました。これを受けて、厚生労働省は、労災保険の「障害等級表」と「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」を改正しました(平成23年2月1日)。自賠責保険の後遺障害等級認定は労災保険に準拠していることから、自賠責保険においても同様に、自賠法施行令の後遺障害等級表を改正しました(平成23年5月2日)。新基準の適用は、平成22年6月10日以降に発生した事故からです。醜状障害は労働能力喪失が否定され逸失利益が認められない?外貌の醜状障害は、それによって身体的機能が損なわれるわけではないため、労働能力の喪失が否定され、逸失利益が認められないことがほとんどでした。しかし、今は、状況が変わってきています。外貌の醜状障害に関する裁判実務での取り扱い従来、外貌の醜状障害による労働能力の喪失について、裁判所では、次のように取扱われてきました。被害者の性別、年齢、職業等を考慮した上で、<直接的に影響する場合>醜状痕の存在のために配置転換させられたり、職業選択の幅が狭められたりするなどの形で、労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合には、一定割合の労働能力の喪失を肯定して逸失利益を認める。<直接的な影響はないが、間接的に影響する場合>労働能力への直接的な影響は認めがたいが、対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で、間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれが認められる場合には、後遺障害慰謝料の加算事由として考慮し、100万~200万円の幅で後遺障害慰謝料を増額する。<直接的にも間接的にも影響しない場合>直接的にも間接的にも労働能力に影響を与えないと考えられる場合には、逸失利益は認められず、慰謝料も基準通りとして増額しない。(参考:東京三弁護士会交通事故処理委員会編『新しい交通賠償論の胎動』ぎょうせい 9ページ)つまり、醜状障害の内容・程度と被害者の職業との相関関係により、直接的に労働能力に影響が生じるおそれがある場合には、制限的に逸失利益を認め、間接的な影響にとどまる場合は、慰謝料の増額で調整してきたのです。実際、醜状障害の逸失利益が認められるのは、被害者がモデルなど容姿が仕事の有無・内容に直結する職業に就いていた場合ぐらいでした。それ以外の職業では、現実に転職・配転・減収があったり、就職・転職において支障が生じた場合などに、仮に労働能力の喪失が認められても、労働能力喪失表の喪失率の半分以下の喪失率が認定されるにすぎず、その代わりに慰謝料の増額調整が行われてきたのです。ですが、今は、醜状障害が、直接的に労働能力に影響を与える場合だけでなく、間接的に影響を及ぼす場合にも、労働能力の喪失を認める方向に変わっています。つまり、外貌の醜状障害による逸失利益が認められるようになってきているのです。上で紹介したように、労災保険の障害等級表を違憲とした京都地裁の判決が確定したのを受けて、厚生労働省は、「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会」を開催。外貌障害による障害等級の見直しを行いました。専門検討会が取りまとめた報告書(2010年12月1日)の中の「障害を評価する観点」には、こうあります。外ぼうの障害自体は、稼得能力(労働能力)の直接の喪失をもたらすものではない。しかしながら、外ぼうの障害が、現状はもちろん将来にわたる就業制限、職種制限、失業、職業上の適格性の喪失等の不利益をもたらし、結果として労働者の稼得能力を低下させることは明らかであり、労災保険法の趣旨が業務上又は通勤による稼得能力(労働能力)の永続的な低下、すなわち労働能力の喪失のてん補であることからみると、当該不利益の特殊性にも着目して障害の評価を行うことが妥当である。(「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書」4ページ)時を同じくして、『赤い本』2011年版に、「外貌の醜状障害による逸失利益に関する近時の裁判実務上の取扱について」という、鈴木尚久裁判官の講演録が掲載されます。そこでは、外貌がその者の印象を大きく左右する要素であることを指摘し、こう述べられています。醜状障害が、円満な対人関係を構築し円滑な意思疎通を実現する上での阻害要因となるのは容易に理解されるところであり、この点こそ醜状障害によって喪失する労働能力の実質と考えられます。すなわち、醜状障害では、労働能力を伝統的な肉体的・機械的な観点のみから把握するのではなく、このような対人関係円滑化の観点からも把握する必要があると考えられます。労働能力を対人関係円滑化の観点からも把握するとすれば、被害者が実際に従事する労務を遂行する上で醜状障害が全く影響しない職業というのはおよそ考えられません。どちらも、外貌の醜状障害が労働能力へ及ぼす直接的な影響だけでなく、間接的な影響も重視する方向性が示されています。まだ裁判実務に明確な変化が生じたと一概にいうことはできないものの、今後は、労働能力に対する間接的な影響による逸失利益を認める傾向が強まり、慰謝料で斟酌する方式は例外的なものになっていくだろう、と考えられています。裁判例従来の裁判実務の取扱いによれば、労働能力に対する間接的影響として慰謝料で斟酌するにとどめていたと思われる事例で、逸失利益を認める例が出てきています。東京高裁判決(平成23年10月26日)被害者は女性・21歳・大学生外貌醜状7級を含む併合5級の事案につき、原告の年齢等からすれば、こうした外貌醜状によって職業・稼働に対する一層の制約が生じ、収入が減少することは十分考えられるから、労働能力の喪失がないとはいえず、労働能力喪失は5級に相当する79%とみるのが相当とした一審判決を支持しました。名古屋地裁判決(平成24年11月27日)被害者は女子・10歳・小学生外貌醜状12級の事案につき、今後の進路ないし職業の選択、就業等において、不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず、また原告が醜状痕を気にして消極的になる可能性をも考慮すると、障害にわたりその労働能力を5%喪失したものと認めるのが相当としました。さいたま地裁判決(平成27年4月16日)被害者は男性・39歳(症状固定時41歳)・自動車運転手外貌醜状9級を含む併合9級の事案につき、職業のいかんを問わず、外貌醜状があるときは、原則として当該後遺障害等級に相応する労働能力の喪失があるというのが相当であり、当該後遺障害等級の定める労働能力の喪失を否定するような特段の事情があるとまでいえないから、併合9級相当の35%の労働能力喪失があるものというのが相当とし、症状固定の41歳から67歳までの27年間について、逸失利益を認定しました。上肢・下肢の露出面の醜状障害外貌の醜状障害のほか、上肢・下肢の露出面の醜状障害が、後遺障害等級14級に位置づけられています。上肢・下肢の醜状障害による労働能力の喪失の判断についても、基本的に、外貌の醜状障害の場合と同じですが、その部位などから、労働能力の喪失が否定されるケースがほとんどです。労働能力喪失期間外貌醜状障害は、器質的障害で、経年による回復、改善があまり期待できません。そのため、労働能力喪失期間については、就労可能期間の終期とされる67歳までとすることが多いようです。ただし、将来の配置転換や転職の可能性があって、それにより労働能力に与える影響が緩和する可能性がある場合や、年齢によって業務の内容が変わり、その影響が変わる場合などは、それに応じた労働能力喪失期間の限定や、労働能力喪失率の逓減が加えられる場合もあります。旧別表7級12号に該当する顔面醜状が残存したホステス(20歳)につき、ホステスを継続することが困難となり、転職して収入が半分以下になったことを考慮し、症状固定時(22歳)から35歳までの13年間は、事故時の収入を基礎に56%の労働能力の喪失を認め、その後の67歳までの32年間は、女子平均賃金を基礎に25%の労働能力の喪失を認めました。(名古屋地裁判決・平成21年8月28日)醜状障害による労働能力喪失の認定で大事なこととは?醜状障害による労働能力への影響を認定する重要な要素は、醜状障害の内容・程度と、被害者の職業特性・業務内容、性別、年齢です。醜状障害の内容・程度醜状障害の内容・程度については、後遺障害等級該当性の簡単な主張にとどまらず、醜状痕の位置、頭髪などで隠れる度合い、他者に与える印象も含めて、具体的に主張・立証することが必要です。被害者の就業状況と業務への影響被害者の就業状況と、外貌醜状による業務への影響について、具体的に主張・立証する必要があります。業務に与える具体的な影響については、モデルなど容姿が直接影響する職業であるか、接客業務の割合、被害者の精神面による間接的な影響などを主張します。特に、醜状痕の残存のために、現実に転職・配転・減収があったとか、就職・転職に支障があったなど、すでに具体的に生じている影響があれば、労働能力の喪失が認定される可能性が高くなります。経緯などを主張・立証することが重要です。他の障害との併合による労働能力の喪失他の神経症状などの障害と併せて労働能力喪失を認定されることもあるので、それらの障害と外貌醜状が関連する状況について主張することも大事です。外貌の醜状障害は比較的高額な慰謝料が認められる外貌の醜状障害は、比較的高い後遺障害等級に位置づけられていますが、逸失利益の認定に消極的な傾向があるため、慰謝料の増額で調整されてきました。特に女性の場合は、財産上の損害以外の社会生活上の不利益も大きいことから、比較的高額な慰謝料を認める事例があります。未婚か既婚か、若年者か成人か高齢者か、などによっても慰謝料額に差がみられるのが普通です。一般的には、既婚より未婚、高齢者より若年者の方が、外貌醜状によって受ける精神的苦痛の程度が大きく、苦痛の期間も長くなるため、慰謝料額は高くなる傾向にあります。ただし、今後は逸失利益を認めるケースが増え、従来のように、逸失利益を否定する代わりに慰謝料を増額して調整する方式は少なくなることが考えられます。とはいえ、逸失利益の算定が困難な事案や、慰謝料の算定で諸般の事情を斟酌する方式が適切な事案では、引き続き慰謝料による補完性が重要な意味を持つことに変わりありません。まとめ外貌醜状障害は、それ自体が労働能力の直接的な喪失をもたらすものではないため、特定の職業を除き、逸失利益は否定され、その代わりに慰謝料の増額で調整する方法が採られてきました。しかし、今後は、労働能力への直接的な影響だけでなく、間接的な影響も考慮して労働能力の喪失を判断する方向性が示されています。逸失利益が認められるケースが増えてくることが考えられます。外貌醜状障害については、労働能力への直接的な影響だけでなく、対人関係が円滑でなくなったことによる間接的な影響という観点からも、労働能力の喪失を具体的に主張・立証することが大切です。まさに今、裁判例が変化しているときですから、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 127~128ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 185~186ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 176~180ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 164~165ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 191~196ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 147ページ・『l交通損害関係訴訟 増訂版』青林書院 165~166ページ・『交通事故判例140』学陽書房 209~210ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 80ページ・『交通事故事件の落とし穴』新日本法規 102~107ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 201~206ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 147~155ページ、194~199ページ
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