交通事故トラブル解決ガイド|損害賠償請求・示談交渉の悩みを解決!

検索結果

「 慰謝料 」の検索結果
  • 損害項目
    交通事故で賠償請求できる損害は積極損害・消極損害・慰謝料
    交通事故による被害で賠償請求できる損害には、大きく「財産的損害」と「精神的損害」があります。財産的損害には「積極損害」と「消極損害」があり、精神的損害は「慰謝料」です。賠償請求する損害額は、これらをすべて積算した額です。詳しく見ていきましょう。交通事故による被害で、賠償請求できる損害とは?交通事故で賠償請求できる損害は、大きく「積極損害」「消極損害」「慰謝料」の3種類に分類されます。財産的損害積極損害事故に遭ったことで余儀なくされた支出(財産がマイナスになった損害)積極損害事故に遭ったことで得られなくなった収入(財産がプラスにならなかった損害)精神的損害慰謝料事故に遭ったことで受けた精神的な苦痛積極損害、消極損害、慰謝料について、それぞれ詳しく見ていきましょう。積極損害とは?積極損害は、交通事故の被害に遭ったことにより支払いを余儀なくされた費用です。事故に遭わなければ支払う必要のなかった費用であり、事故と相当因果関係のある損害ですから、加害者には賠償する責任が生じます。人身事故の積極損害人身事故の積極損害の費目には、治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費、義肢等の装具費用、後遺障害が残った場合の家屋や自動車の改造費、死亡した場合の葬儀費用などがあります。これらは、あらかじめ一定の基準が設けられています。主な積極損害について簡単に説明しておきます。損害内容治療費その事故による傷害の治療に必要かつ相当な範囲で実費全額が損害として認められます。付添看護費原則として医師の指示がある場合、または受傷の程度、被害者の年齢等により必要性がある場合に認められます。職業付添人は実費全額、近親者付添人は入院付添1日につき5,500円から7,000円程度です。入院雑費入院にともなう日用雑貨費(寝具・衣類・洗面具等の購入費)、電話代、新聞・雑誌代、テレビ・ラジオ賃借料などの費用は、多品目にわたるため定額化しています(入院日額1,500円程度)。通院交通費原則として、バス・電車等公共交通機関の利用料金が基準となります。自家用車による通院は、ガソリン代等の実費相当額です。葬儀関係費定額化が図られ、原則として150万円。これを下回る場合は、実際に支出した額が認められます。さらに詳しくは、次の記事をご覧ください。傷害事故の積極損害(治療費など)の計算方法死亡事故の積極損害(葬儀費用など)の計算方法物損事故の積極損害物損事故の積極損害は、車両の損害と車両以外の損害があります。損害内容車両損害車両の積極損害の主な費目には、修理費用、評価損(格落ち損)、代車使用料などがあります。車両に損害を受けた場合は、買換えでなく、修理費用の賠償が原則です。車両以外の物損車両以外の積極損害の費目には、建物の修理費、物品の修理・交換、後片付け費用などがあり、そのほか積荷や農作物などの損害賠償も認められます。車両損害について詳しくはこちら車両以外の物損について詳しくはこちら消極損害とは?消極損害は、事故に遭わなければ得られたであろう経済的利益を、事故によって得られなくなったことによる損害です。「得べかりし利益」とも呼ばれます。財産的損害には、積極損害と消極損害があります。積極損害との関係で消極損害を規定すれば、積極損害が、相手の不法行為により「財産がマイナスになった損害」をいうのに対し、消極損害は、相手の不法行為により「財産がプラスにならなかった損害」といえます。人身事故の消極損害人身事故の消極損害には、休業損害と逸失利益があります。逸失利益とは、加害行為がなければ、被害者が将来得られるであろう経済的利益を逸失したことによる損害です。休業損害も広い意味では逸失利益に含まれますが、通常、休業損害と逸失利益は分けて考えます。事故発生から症状固定まで(あるいは死亡まで)が休業損害、症状固定(あるいは死亡)以降が逸失利益です。治療により怪我が治癒した場合は、休業損害のみで、逸失利益は請求できません。休業損害休業損害は、治療・療養のために、休業または不十分な就業を余儀なくされたことにより生じた収入減(経済的利益の喪失)のことです。休業のほか労働能力の低下による減収も、休業損害として認められます。事故前の収入を基礎とする現実の収入減を補償するものです。給与所得者や個人事業主の収入減のほか、主婦・主夫が家事労働に従事できなかった場合や、学生のアルバイト収入減も休業損害として認められます。休業損害の計算方法逸失利益逸失利益には、後遺症(後遺障害)による逸失利益と、死亡による逸失利益があります。後遺障害逸失利益は、後遺障害が残り労働能力が喪失・低下することにより逸失する経済的利益のことです。事故前と同じように働けなくなることによる収入減のことです。死亡逸失利益は、被害者が死亡したことにより逸失する経済的利益のことです。死亡した被害者が、生きていたら働いて得られたであろう収入のことです。後遺障害が残った場合は、症状固定日までが休業損害、その後は逸失利益として計算します。被害者が治療の甲斐なく死亡した場合は、死亡するまでが休業損害、死亡後は逸失利益として計算します。後遺障害逸失利益の計算方法死亡逸失利益の計算方法物損事故の消極損害物損事故の消極損害として認められるのは、休業損害です。休車損害と営業損害があります。損害内容休車損害タクシーや運送会社のトラックのような営業車両が事故で破損し、修理や買換え期間中に見込まれる収入の損失です。営業損害店舗などに車が突っ込んで破損し、営業できなかった期間中の損害です。休車損害について詳しくはこちら営業損害について詳しくはこちら慰謝料とは?慰謝料は、交通事故による精神的損害(精神的な苦痛)に対する賠償です。精神的苦痛には個人差があり、被害者の心理的状態を第三者が客観的に判断することは難しいため、慰謝料は一定の基準を設け、定額化されています。入院・通院したことに対する傷害慰謝料(入通院慰謝料)、後遺障害が生じたことに対する後遺傷害慰謝料、被害者が死亡したことに対する死亡慰謝料があります。慰謝料を請求できるのは、原則的に人身損害が発生した場合のみです。物損については、「財産上の損害は、その損害が賠償されることによって精神的な苦痛も回復される」とみなされ、慰謝料は原則認められません。ただし、特別の事情がある場合は、物損でも慰謝料が認められることがあります。加害者に故意もしくは重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、信号無視の繰り返し、薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転した場合など)または著しく不誠実な態度がある場合には、慰謝料の増額事由となります。傷害慰謝料(入通院慰謝料)傷害慰謝料は、入院・通院の期間や怪我の状態により、一定の基準が決まっています。傷害慰謝料(入通院慰謝料)の計算方法後遺障害慰謝料後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて、ある程度定額化されています。後遺障害慰謝料の計算方法重度の後遺障害の場合は家族にも慰謝料が認められる死亡慰謝料死亡慰謝料は、死亡した本人と遺族に対して支払われます。請求権があるのは、父母・配偶者・子です。死亡した本人の年齢や家庭内の地位(一家の支柱・支柱に準じる)などにより、定額化されています。死亡慰謝料の計算方法事故の種類別に賠償請求できる損害費目を分類交通事故の損害賠償は、どんな事故かによって、すなわち、人身事故か物損事故か、人身事故の中でも傷害事故・後遺障害事故・死亡事故によって、賠償請求できる損害の項目・費目が異なります。事故の種類ごとに、賠償請求できる積極損害・消極損害・慰謝料の費目をまとめておきます。傷害事故積極損害治療費、付添看護費、通院交通費、入院雑費、義肢等の装具費用、診断書の発行費用など消極損害休業損害慰謝料入通院慰謝料傷害事故の損害賠償額の算定方法後遺傷害事故積極損害将来の治療費、付添看護費、介護費、家屋等改造費、義肢等の装具費用消極損害後遺障害による逸失利益慰謝料後遺障害慰謝料※後遺障害認定までの治療期間中の損害については、傷害事故の場合の各損害費目を賠償請求できます。後遺障害事故の損害賠償額の算定方法死亡事故積極損害葬儀費消極損害死亡による逸失利益慰謝料死亡慰謝料※死亡に至るまでの治療期間中の損害については、傷害事故の場合の各損害費目を賠償請求できます。死亡事故の損害賠償額の算定方法物損事故積極損害修理費、評価損、代車使用料、買換え諸経費、建物の修理費など消極損害休業損害(休車損害・営業損害)車両損害の賠償額の算定方法まとめ交通事故の被害者が賠償請求できる損害項目には、積極損害、消極損害、慰謝料があります。治療費や慰謝料は、ほぼ定型化・定額化されていますが、休業損害や逸失利益は、被害者の収入に応じて決まります。被害者の収入の証明は、被害者側でしなければなりません。特に逸失利益は将来の収入に対する賠償なので、被害者が若年者の場合ほど高額になります。被害者の職種別・年齢別の収入額の計算と証明の方法について詳しくはこちらで紹介しています。また、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部が、交通事故による逸失利益の算定方式について「共同提言」を発表しています。参考にしてみてください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。こちらも読まれています「示談後に失敗を後悔する人」と「満足できる損害賠償額を得る人」の違いとは?交渉力だけではない! 弁護士の介入で賠償額が増える本当の理由とは?交通事故の被害者が本来取得できる適正な損害賠償金額の調べ方弁護士に相談するタイミングはいつ?【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 169~175ページ・『補訂版 交通事故事件処理マニュアル』新日本法規 96~105ページ
    Read More
  • 傷害慰謝料
    傷害事故の傷害慰謝料・入通院慰謝料の裁判所基準での計算方法
    傷害慰謝料(入通院慰謝料)は、交通事故で怪我をしたことや、入通院しなければならず苦痛を受けたことによる精神的損害を賠償するものです。精神的苦痛は各人で異なりますが、自動車事故の大量発生と損害賠償をめぐる紛争の公平・迅速な解決の必要から、入通院慰謝料は、入通院期間に応じて基準化・定額化されています。現在、裁判所基準として参考にされている主なものは、次の2つです。日弁連交通事故相談センター編『交通事故損害額算定基準』(通称:青本)日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(通称:赤い本)この中の「入通院慰謝料表」を参考にして、慰謝料を算定します。あくまでも「基準」であって、個別事情が考慮されます。それぞれの入通院慰謝料基準と算定の仕方を見てみましょう。日弁連交通事故相談センター(青本)基準「青本」は、日本全国向けに作成された基準なので幅をもたせています。上限額と下限額との範囲内で妥当な慰謝料額を決定します。「青本」入通院慰謝料表(抜粋)入院期間1月2月3月4月通院期間60~32117~63171~92214~1151月29~1688~47144~78192~103232~1252月57~31115~62165~89210~113248~1343月84~46136~73183~99226~122262~1424月105~57154~83199~108240~130274~1485月123~67170~92213~116252~136283~1536月139~76184~100225~122261~141291~158※単位:万円※特に症状が重い場合は、上限額を2割増した金額まで増額を考慮する。「青本25訂版」の入通院慰謝料表より一部を抜粋しています。実際の入通院慰謝料表は、入院期間・通院期間とも、15ヵ月まであります。横軸が入院期間(入院の月数)、縦軸が通院期間(通院の月数)です。症状が重い場合は上限額の2割程度加算特に症状が重い場合は、上限の2割程度まで加算することにしています。軽度のムチ打ち症や軽い打撲などは、下限を適用することになります。通常の傷害の場合は、上限の7~8割程度を目安としています。通院の頻度通院は、週2回程度を標準としています。実際の通院日数がそれよりも多い場合や少ない場合は、適宜増減します。通院が長期化した場合通院が長期化(1年以上)し、通院頻度が月2~3回程度と低い場合や、通院していても治療というより検査や治癒経過の観察的色彩が強い場合などは、修正通院期間(通院実日数の3.5倍)を求め、妥当な金額を定めるとされています。「青本」入通院慰謝料表の使い方この表を用いた入通院慰謝料の算定の仕方を紹介しておきます。[例1]通院 1ヵ月だけの場合通院1ヵ月間だけの怪我の場合、縦軸(通院期間)の「1月」の入院なしの欄を見ると「29~16」となっています。16万円~29万円の範囲で慰謝料額を求めます。[例2]入院 2か月、通院 4ヵ月の場合2ヵ月間入院して、その後4か月間通院したとすると、横軸(入院期間)の「2月」の欄と縦軸(通院期間)の「4月」の欄の交差した欄の数値が「199~108」ですから、108万円~199万円の範囲内で慰謝料額を求めます。日弁連交通事故相談センター東京支部(赤い本)基準「赤い本」は、おもに東京を中心とする首都圏向けに作成された基準です。東京地方裁判所民事第27部(交通事故専門部)では、「赤い本」を主に参照しているようです。「赤い本」の入通院慰謝料表は「別表1」と「別表2」の2種類あります。原則として「別表1」を使い、ムチ打ち症で他覚症状がない場合は「別表2」を使います。「別表2」は、各欄の金額が少し低めに設定されています。ここでは「別表1」より一部を抜粋して掲載しておきます。「赤い本」入通院慰謝料表(抜粋)入院1月2月3月4月通院531011451841月28771221621992月52981391772103月731151541882184月901301651962265月1051411732042336月116149181211239※単位:万円※傷害の部位・程度によっては、20~30%程度増額する。「赤い本2016年版」より抜粋しています。実際の入通院慰謝料表は、入院期間・通院期間とも、15ヵ月まであります。横軸が入院期間(入院の月数)、縦軸が通院期間(通院の月数)です。傷害の部位や程度によっては20~30%程度増額傷害の部位や程度によっては、表の金額を20~30%程度増額します。通院の頻度通院は、隔日を標準としています。実際の通院日数が隔日通院よりも多い場合や少ない場合は、適宜増減します。入通院期間に端数が出た場合入通院慰謝料表では1ヵ月単位の慰謝料額を記載していますが、実際に1ヵ月単位でちょうど納まることは稀です。入通院期間に端数が出たときは、端数の出た月の金額から前月の金額を引いて、残った金額を1ヵ月を30日として日割りで計算します。入院・通院が月単位の場合は、表の交差する欄を見れば分かるのですが、入通院日数に端数が出る場合は複雑な計算が必要になります。通院が長期化した場合通院が長期(おおむね1年以上)にわたり、かつ不規則な場合は、実日数の3.5倍程度を通院期間の目安とすることができます。「別表2」についても、通院が長期にわたる場合は、症状や治療内容、通院頻度をふまえ、実通院日数の3倍程度を慰謝料算定の通院期間の目安とすることができます。「赤い本」入通院慰謝料表の使い方この表を用いた入通院慰謝料の算定の仕方を紹介しておきます。[例1]入院 3ヵ月、通院 3ヵ月の場合3ヵ月入院し、その後3ヵ月通院した場合、それぞれの欄が交差する188万円が入通院慰謝料の基準額となります。[例2]入院 70日で完治し、通院しなかった場合70日は、2ヵ月と10日です。まず、入院2ヵ月分の慰謝料は101万円です。残り10日分については、入院3か月(145万円)と入院2ヵ月(101万円)の差が44万円ですから、これを1ヵ月を30日として日割り計算します。44万円÷30日×10日=14万6,666円よって、この場合の入院慰謝料は、101万円+14万6,666円=115万6,666円[例3]入院 40日、通院 110日の場合入院40日は、1ヵ月と10日です。入院1ヵ月の慰謝料は53万円です。残り10日分は、入院2ヵ月(101万円)と入院1ヵ月(53万円)の差が48万円ですから、これを日割り計算します。48万円÷30日×10日=16万円ですから、入院40日の慰謝料は、入院1ヵ月の慰謝料(53万円)と入院10日分の慰謝料(16万円)の合計で、53万円+16万円=69万円次に通院慰謝料ですが、ここから複雑な計算が必要になります。この例の場合、全治150日(40+110)つまり全治5ヵ月です。うち40日は通院でなく入院ですから、通院110日の慰謝料は、5か月分の通院慰謝料(105万円)から40日分の通院慰謝料を引いて計算します。通院40日は、1ヵ月と10日ですから、通院1ヵ月の慰謝料は28万円です。残り10日分の通院慰謝料は、通院2ヵ月(52万円)と通院1ヵ月28万円との差が24万円ですから、これを日割り計算して24万円÷30日×10日=8万円通院40日の慰謝料は、通院1ヵ月の慰謝料(28万円)と通院10日の慰謝料(8万円)の合計で、28万円+8万円=36万円通院110日の通院慰謝料は、全治150日(5ヵ月)の通院慰謝料(105万円)から通院40日の通院慰謝料(36万円)を引いて、105万円-36万円=69万円したがって、この例の場合の入通院の合計慰謝料は、69万円+69万円=138万円[例4]通院期間が 12ヵ月、通院実日数が 60日の場合入院はなく、通院期間が12ヵ月だったけれども、実際の通院日数が60日だった場合、通院期間の修正計算が必要になります。実日数の3.5倍を通院日数とします。この場合の通院日数は、60日×3.5=210日通院210日は、通院7ヵ月に相当します。したがって、入院なし・通院7ヵ月の通院慰謝料は表より124万円です。自賠責保険基準の入通院慰謝料自賠責保険基準の入通院慰謝料は、1日につき4,300円の定額です。対象となる日数は、治療期間の範囲内で、傷害の態様、実治療日数その他を勘案し、特殊な場合を除き、入院日数を含む実治療日数の2倍に相当する日数(ただし、総治療期間の範囲)が対象日数となります(『自賠責保険のすべて 12訂版』保険毎日新聞社)。実治療日数は、入院日数と通院日数の合計です。総治療日数は、初診から治療を終了した日までの総日数です。つまり、自賠責保険基準の入通院慰謝料は、次の計算式になります。4,300円 × 実治療日数 × 2ただし、実治療日数×2の数値が総治療日数を上回る場合は、4,300円 × 総治療日数なお、自賠責保険基準における入通院慰謝料の限度額は、他の損害額(積極損害、消極損害)も含めて120万円です。自賠責保険の支払い基準・支払限度額はこちらまとめ傷害慰謝料(入通院慰謝料)は、裁判所基準においても基準化されていますが、あくまで基準であって、個別事情を考慮して算定されるものです。適正な慰謝料額を算定するには、「青本」や「赤い本」の基準だけでなく、判例なども考慮する必要があり、被害者自身で算定するのは難しいでしょう。交通事故事件に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
    Read More
  • むち打ち症の慰謝料計算
    むち打ち症12級13号・14級9号の逸失利益と慰謝料の計算例
    後遺障害による損害額の具体的な計算方法について、むち打ち症(頸椎捻挫)を中心にご紹介します。事例と計算方法次のような事例で、後遺障害等級が異なる3つのケースを考えます。被害者は、35歳の男性会社員で、年収400万円。加害者と被害者の過失割合は 9対1(すなわち、過失相殺率 10%)ここでは、後遺障害に関する損害(後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料)の計算例をご紹介します。治療費、休業損害、入通院慰謝料が、これに加算されます。後遺障害逸失利益の計算後遺障害逸失利益は、次の計算式で求めます。基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数計算式の説明はこちらをご覧ください。基礎収入は400万円です。労働能力喪失率は労働能力喪失率表より、ライプニッツ係数はライプニッツ係数表より、それぞれ求めます。ライプニッツ係数は、現行の年3%のライプニッツ係数を用いています。2020年3月31日以前に発生した事故については、年5%のライプニッツ係数が適用されます。後遺障害慰謝料の計算後遺障害慰謝料は、裁判所基準の後遺障害慰謝料表より求めます。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて慰謝料の基準額があります。むち打ち症で「14級9号」が認定されたケース後遺障害14級の労働能力喪失率は5%です。労働能力喪失期間が5年認められたとすると、ライプニッツ係数は4.5797です。後遺障害逸失利益は、400万円 × 5/100 × 4.5797 = 91万5,940円逸失利益91万5,940円慰謝料110万円合計201万5,940円被害者の過失を10%としていますから、過失相殺後の額は、201万5,940円 × 0.9 = 181万4,346円自賠責保険の後遺障害14級の支払限度額は75万円ですから、差額は任意保険会社が支払います。むち打ち症で「12級13号」に認定されたケース後遺障害12級の労働能力喪失率は14%です。労働能力喪失期間が10年認められたとすると、ライプニッツ係数は8.5302です。後遺障害逸失利益は、400万円 × 14/100 × 8.5302 = 477万6,912円逸失利益477万6,912円慰謝料290万円合計767万6,912円被害者の過失を10%としていますから、過失相殺後の額は、767万6,912円 × 0.9 = 690万9,221円自賠責保険の後遺障害12級の支払限度額は224万円ですから、差額は任意保険会社が支払います。神経系統の機能障害で「9級10号」に認定されたケース後遺障害9級の労働能力喪失率は35%です。労働能力喪失期間が67歳まで認められたとすると、就労可能年数32年に対応するライプニッツ係数は20.3888です。後遺障害逸失利益は、400万円 × 35/100 × 20.3888 = 2,854万4,320円逸失利益2,854万4,320円慰謝料690万円合計3,544万4,320円被害者の過失を10%(過失相殺率10%)としていますから、過失相殺後の額は、3,544万4,320円 × 0.9 = 3,189万9,888円自賠責保険の後遺障害9級の支払限度額は616万円ですから、差額は任意保険会社が支払います。まとめ交通事故で後遺障害が残った場合、正当な損害賠償を受けられるかどうかは、適正な後遺障害等級が認定されるかどうかがポイントです。特に、むち打ち症のような神経障害は、後遺障害等級の認定がされず、非該当となることがよくあります。そんなときは、弁護士に相談すると解決できる場合があります。まずは、無料相談をおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
    Read More
  • 後遺障害慰謝料の算定基準
    後遺障害慰謝料の計算方法と裁判所基準・自賠責保険基準
    後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことによる被害者の精神的損害を賠償するものです。後遺障害等級(後遺障害の程度)に応じて基準額があり、後遺障害等級が決まれば、慰謝料の額が決まります。後遺障害慰謝料の算定基準後遺障害慰謝料には、裁判所基準・任意保険基準・自賠責保険基準の3つの算定基準があり、被害者が賠償請求する損害額を計算するときには、裁判所基準で計算します。裁判所基準として用いられるのは、主に次の2つです。日弁連交通事故相談センター編『交通事故損害額算定基準』(通称:青本)日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(通称:赤い本)後遺障害等級ごとの慰謝料について、2つの裁判所基準と自賠責保険基準をまとめておきます。後遺障害慰謝料の裁判所基準と自賠責保険基準の比較等級裁判所基準(万円)自賠責保険基準(万円)青本赤い本要介護第1級1,650(1,850)要介護第2級1,203(1,373)第1級2,700~3,1002,8001,150(1,350)第2級2,300~2,7002,370998(1,168)第3級1,800~2,2001,990861(1,005)第4級1,500~1,8001,670737第5級1,300~1,5001,400618第6級1,100~1,3001,180512第7級900~1,1001,000419第8級750~870830331第9級600~700690249第10級480~570550190第11級360~430420136第12級250~30029094第13級160~19018057第14級90~12011032※( )内の金額は、被害者に扶養者がいる場合※『青い本』25訂版、『赤い本』2016年版※自賠責保険基準は、2020年4月1日以降の改正後の額。後遺障害慰謝料は傷害慰謝料と別に請求できる後遺障害慰謝料は、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と別に支払われます。例えば、1ヵ月入院、2ヵ月通院して治療したにもかかわらず、10級の後遺障害が残った場合、「赤い本」基準だと、入通院慰謝料が98万円、後遺障害慰謝料が550万円、合計648万円が慰謝料の目安となります。後遺障害なく完治した場合は、後遺障害慰謝料の請求はできません。後遺障害「非該当」でも後遺症慰謝料が認められることもある後遺障害慰謝料は、基本的に後遺障害等級により決まります。保険会社との示談交渉では、後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害慰謝料は認められません。しかし、裁判では、慰謝料の算定にあたって個別事情が考慮されます。傷害の内容や程度により、後遺障害「非該当」でも後遺症慰謝料を認める場合や、逸失利益が認められないことを考慮して慰謝料を増額する場合があります。例えば、次のような判例があります。後遺障害「非該当」でも、後遺症慰謝料が認められた判例後遺障害等級が認定されなかったものの、後遺症慰謝料が認められたものとして、次のような判例があります。裁判内容東京地裁1995年1月27日20歳女性の顔面醜状について、12級14号(外貌に醜状を残すもの)が認定されなかったが、慰謝料200万円を認めた。京都地裁2011年12月16日8歳男児の下肢醜状について、12級14号(外貌に醜状を残すもの)が認定されなかったが、慰謝料100万円を認めた。「逸失利益」が認められないことを考慮し、慰謝料を増額した判例裁判では、逸失利益など財産的損害が認められない場合、慰謝料を増額して補償することがあります(慰謝料の補完性)。後遺症が残ったものの、逸失利益は否定せざるを得ないが、無視できない不利益が予想される場合などは、慰謝料の増額でバランスを取るのです。裁判内容仙台地裁1995年2月6日30歳女性(主婦)の顔面醜状(第7級)について、家事能力が低下したとは認められないとして逸失利益を否定し、1,200万円の慰謝料を認めた。広島地裁福山支部1986年1月24日46歳女性(スナック経営者)の顔面醜状(第7級)について、逸失利益を認めなかったことを考慮して、慰謝料2,500万円(入通院慰謝料を含む)を認めた。重度の後遺障害の場合は、親族にも慰謝料が認められる場合があります。弁護士に相談してみるとよいでしょう。まとめ後遺障害慰謝料は、基本的に後遺障害等級にもとづいて額が決まります。後遺障害等級の認定を勝ち取ることがポイントです。ただし、後遺障害等級が認定されない場合や逸失利益が認められない場合でも、裁判では慰謝料が認められたり増額されることがあるので、あきらめずに弁護士に相談してみましょう。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
    Read More
  • 近親者の慰謝料請求権
    交通事故で重度の後遺障害が残ると家族にも慰謝料が認められる
    交通事故の被害者に「重度の後遺障害」が残った場合は、被害者本人の後遺障害慰謝料とは別に、親族(父母・配偶者・子など)にも「近親者慰謝料」が認められる場合があります。裁判では、本人慰謝料の2~3割程度の近親者慰謝料が認められるケースが多いようです。近親者の慰謝料請求権とは?近親者に対する損害の賠償について、民法では次のように定めています。民法711条(近親者に対する損害の賠償)他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者および子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。これは、生命を害された被害者の近親者が、慰謝料請求権を有することの根拠規定です。第三者の不法行為によって被害者の生命が害された場合、民法711条により、被害者の父母・配偶者・子は、たとえ財産上の損害を受けなくても、加害者に対して慰謝料を請求できます。この民法711条の規定は、被害者が死亡した場合だけでなく、死亡に近い場合にも適用できると解されています。また、父母・配偶者・子以外でも、これに準ずる者も、慰謝料を請求できると解されています。どんな場合に近親者の慰謝料請求権が発生するか?最高裁は、父母・配偶者・子のほか、被害者と一定の関係がある者について、被害者の生命を害されたときにも比肩するような精神的苦痛を受けた場合には、「自己の権利」として慰謝料請求権が認められるとする判断を示しています。「自己の権利」というのは、民法709条、710条にもとづく損害賠償請求権のことです。民法709条(不法行為による損害賠償)故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。民法710条(財産以外の損害の賠償)他人の身体、自由もししくは名誉を侵害した場合または他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。民法709条は、不法行為が成立すると、被害者に損害賠償請求権が発生することを定めたものです。民法110条は、精神的な損害の賠償、すなわち慰謝料の請求権が発生することを定めたものです。近親者の慰謝料請求権を認めた判例被害者に重度の後遺障害が残り、その家族にも慰謝料請求権が認められた最高裁判例として、次のものがあります。最高裁判決(昭和33年8月5日)不法行為により身体を害された被害者の母の慰謝料請求が認容された事例です。裁判要旨不法行為により身体を害された者の母は、そのために被害者が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けた場合、自己の権利として慰藉料を請求しうるものと解するのが相当である。最高裁判決(昭和39年1月24日)不法行為により身体の障害を受けた者の父母が自己の権利として慰謝料請求権を有するとされた事例です。裁判要旨12歳の娘が不法行為により身体の傷害を受け、世間並みの幸福な結婚生活をできるかどうかを危惧するなど親として相当の精神的苦痛を味わっている場合、父母は自己の権利として加害者に対し慰藉料の請求ができる。近親者の慰謝料請求権を認めなかった判例一方で、後遺障害の程度によっては、近親者の慰謝料請求権を認めなかった判例もあります。(⇒ 昭和43年6月13日、昭和43年9月19日の最高裁判決)「被害者が生命を害された場合にも比肩すべきとき」または「生命を害された場合に比して著しく劣らない精神上の苦痛を受けたとき」に限り、自己の権利として慰謝料を請求できるものと解するのが相当である、という判断からです。父母・配偶者・子以外の慰謝料請求権を認めた判例民法711条の類推適用により、被害者の父母・配偶者・子以外で慰謝料請求権が認められた事例があります。最高裁判決(昭和49年12月17日)被害者の夫の妹に慰謝料請求権が認められた事例です。判決の要旨は、次の2点です。不法行為により死亡した被害者の夫の妹であつても、この者が、跛行(はこう)顕著な身体障害者であるため、長年にわたり被害者と同居してその庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続を期待しており、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた等の事実関係があるときには、民法711条の類推適用により加害者に対し慰藉料を請求しうる。不法行為による生命侵害があつた場合、民法711条所定以外の者(条文に明文されてなく、文言上は該当しない者)であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうる。近親者慰謝料が認められる「重度の後遺障害」とは?最高裁のいう「被害者が生命を害されたにも比肩するような精神的苦痛を受けた場合」とは、どのような後遺障害が該当するのでしょうか。後遺障害等級が高位の場合、特に第1級に認定される場合は、ほとんどの判例において、請求すれば認められているようです。後遺障害等級が低くても、近親者慰謝料を認めた判例もあります。ただし、代わりに、本人分の慰謝料が低くなったり、介護料が認められて当然の場合でも認められなかったりして、残念ながら、高位の後遺障害等級ほどは認められないようです。重度の後遺障害で近親者慰謝料が認められた判例重度の後遺障害で、近親者慰謝料が認められた判例をご紹介します。後遺障害「1級3号」で、近親者慰謝料が認められた事例45歳・兼業主婦が、四肢不全麻痺等で後遺障害1級3号に認定。傷害慰謝料360万円のほか、後遺障害慰謝料として、本人分2,800万円、夫400万円、子2人各200万円、父母各100万円、後遺障害分合計3,800万円を認めた。(東京地裁・平成16年5月31日)後遺障害「併合2級」で、近親者慰謝料が認められた事例27歳・女性会社員が、右下肢欠損、高次脳機能障害、右股関節機能障害、左大腿部醜状、背部醜状で、後遺障害併合2級に認定。傷害慰謝料321万円のほか、後遺障害慰謝料として、本人分2,500万円、父母各100万円、姉妹2人各50万円、後遺障害分合計2,800万円を認めた。(横浜地裁・平成23年5月27日)軽度の後遺障害で近親者慰謝料が認められた判例軽度の後遺障害で、近親者慰謝料が認められた判例をご紹介します。併合4級の12歳・男子の父母に各100万円を認めた。(東京地裁・平成6年1月18日)高次脳機能障害等(5級)の10歳・男子の父母に各250万円を認めた。(名古屋地裁・平成25年3月19日)左下肢短縮による歩行障害等(7級)の72歳・主婦の夫に100万円を認めた。(横浜地裁・平成6年6月6日)頸部外傷、頭蓋陥没骨折、外傷性クモ膜下出血、急性硬膜外血腫の傷害を受け、神経障害(12級)の1歳・男子の父母に各30万円を認めた。(神戸地裁・平成8年5月30日)近親者慰謝料の額被害者死亡の場合は、被害者本人の慰謝料請求権を近親者が相続します。そのため、近親者の固有の慰謝料請求をしなくても、本人分と近親者分を合わせて慰謝料総額が変わらないように判断されます(⇒ 死亡慰謝料の詳細はこちら)。一方、後遺障害の場合は、被害者本人の後遺障害慰謝料に、近親者慰謝料が上乗せされます。ですから、被害者死亡の場合に比べて、後遺障害の場合は、被害者本人分に加え近親者慰謝料を請求すると、認められる慰謝料総額が高額になります。これは、被害者の日常的な介護などのために、近親者自身の自由が奪われる精神的苦痛が考慮されるからです。示談交渉はもちろん裁判においても、請求額を超えて慰謝料が認められることはありませんから、被害者の介護などで近親者慰謝料が認められる可能性がある場合は、近親者慰謝料分も算定し、被害者本人の後遺障害慰謝料と合わせて慰謝料請求することが大切です。なお、近親者慰謝料の金額は、ケースにより異なりますが、被害者本人慰謝料の2~3割程度を認めることが多いようです。まとめ後遺障害が残ったときは、被害者本人の慰謝料に加え、家族や親族も慰謝料請求が認められることがあります。そのため、後遺障害の場合の慰謝料総額の方が、被害者死亡の場合の慰謝料よりも高額になることが多くあります。近親者慰謝料は、被害者の家族や親族が請求しない限り、保険会社みずからが賠償額に算入するものではありません。近親者慰謝料を請求できる可能性がある場合は、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士と相談して、請求することが大切です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
    Read More
  • 死亡慰謝料
    死亡事故の慰謝料(死亡慰謝料)の裁判所基準での計算方法
    死亡慰謝料は、交通事故の被害者が死亡したことによる精神的損害に対する賠償です。死亡慰謝料は、被害者の年齢、家族構成、扶養家族の有無などにより、基準額があります。ただし、基準額はあくまでも目安です。個別事情を考慮して、算定することが大切です。基準額より高額な慰謝料が認められた事例もあります。死亡慰謝料の算定基準交通事故の死亡慰謝料は、日常多発する交通事故を迅速・公平に処理するため、被害者の年齢や家族構成、扶養家族の有無などにより、基準化・定額化されています。死亡慰謝料には、被害者本人分と遺族分があります。自賠責保険の支払基準では、本人分と遺族分を分けていますが、裁判所基準では、本人分と遺族分を合わせた額を基準額としています。「交通事故損害額算定基準」(青本)『青本25訂版』における死亡慰謝料の基準額は、次の通りです。一家の支柱の場合2,700~3,100万円一家の支柱に準ずる場合2,400~2,700万円その他の場合2,000~2,500万円「一家の支柱」とは、被害者の世帯の生計が、主として被害者の収入によって維持されている場合です。「一家の支柱に準ずる場合」とは、家族の中心をなす主婦、養育を必要とする母親、独身であっても高齢な父母や幼い兄弟を扶養しあるいは仕送りをする者とされています。「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(赤い本)『赤い本2016年版』における死亡慰謝料の基準額は、次の通りです。一家の支柱2,800万円母親・配偶者2,500万円その他2,000~2,500万円被害者の地位によって死亡慰謝料が異なるのは?『青本』でも『赤い本』でも、一家の支柱が亡くなった場合の慰謝料額が、他の場合の慰謝料額よりも高くなっています。これは、一家の支柱が死亡した場合、遺族は精神的支柱を失うだけでなく、経済的支柱を失ってしまうことになるからです。家族を守れず他界してしまうことによる本人の悔しさや無念さ、残された遺族の悲しみや将来への不安は、極めて大きなものです。遺族の扶養的要素を死亡慰謝料に取り入れる必要があるとする判断から、一家の支柱の場合は、他の場合に比べて高い慰謝料額となっています。自賠責基準の死亡慰謝料自賠責保険の死亡慰謝料の支払い基準は、次のようになっています。本人の慰謝料死亡本人 ⇒ 400万円遺族の慰謝料(遺族慰謝料の請求権者は、被害者の父母・配偶者・子)請求権者1名 ⇒ 550万円請求権者2名 ⇒ 650万円請求権者3名 ⇒ 750万円※被害者に被扶養者がいる場合は200万円加算※本人の慰謝料は、2020年4月1日に改訂しています。2020年3月31日以前に発生した事故については、本人分は350万円です。例えば、一家の大黒柱の夫が、妻と子2人を残して死亡したときの慰謝料は、死亡本人分の慰謝料が、400万円遺族の慰謝料は、請求権者は3名(妻と子2人)なので、750万円被害者に被扶養者がいるので、200万円を加算よって、死亡本人分と遺族分を合わせた慰謝料額は、400万円+750万円+200万円=1,350万円なお、死亡事故の場合、自賠責保険の支払限度額は、この慰謝料と葬儀費、逸失利益を合わせて3,000万円です。賠償額が支払限度額を上回ると、その部分は任意保険から支払われます。死亡慰謝料には被害者本人分と遺族分がある死亡慰謝料には、被害者本人分と遺族分があります。裁判所基準は、「死亡した被害者本人の慰謝料」と「遺族の固有の慰謝料」を合わせた額を基準額としています。これは、死亡した被害者本人の慰謝料請求権は、相続人が相続するとともに、民法711条(近親者に対する損害の賠償)の規定により、被害者遺族にも固有の慰謝料請求権が発生することを考慮しているからです。民法711条(近親者に対する損害の賠償)他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者および子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。相続人が慰謝料請求権を相続することは、最高裁が「不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる」と判示しています(最高裁判決・昭和42年11月1日)。死亡事故の場合の慰謝料請求は、次の3つの方法があります。被害者本人の慰謝料を相続人が請求する方法民法711条所定の遺族(父母・配偶者・子)及び、これらに準ずる者が固有の慰謝料を請求する方法上記①②を組み合わせて請求する方法①~③のいずれの方法によって慰謝料を請求しても、原則として慰謝料の総額が変わらないように裁判所では判断されます。そのため、裁判所基準における死亡慰謝料の基準額は、「死亡本人の慰謝料」と「遺族固有の慰謝料」を合わせた額になっているのです。死亡慰謝料を増額できるケース死亡慰謝料は、次のような場合に基準額より増額できることがあります。死亡したのが一家の支柱で、被扶養者数が多い場合加害者が酒気帯び運転だったなど悪質な過失の場合加害者の救護義務違反で損害が拡大した場合これら以外にも慰謝料が増額となる理由はあります。基準額にとらわれることなく個別事情を考慮して慰謝料請求額を算定することが大切です。基準額より高額な慰謝料が認められた事例をご紹介します。一家の支柱の場合の慰謝料34歳・男性(監査法人職員)の死亡事故で、本人3,000万円、妻200万円、父母各100万円、合計3,400万円の慰謝料を認めた事例。(東京地裁・平成20年8月26日)一家の支柱に準ずる場合の慰謝料55歳・女性(主婦)の死亡事故で、本人2,400万円、夫・子各200万円、父母各100万円、合計3,000万円の慰謝料を認めた事例。(岡山地裁・平成22年2月25日)その他の場合の慰謝料8歳・男子小学生の死亡事故で、本人2,300万円、父母各200万円、兄100万円、合計2,800万円の慰謝料が認められた事例。(東京地裁八王子支部・平成19年9月19日)加害者酒気帯びの場合の慰謝料加害者が酒気帯びのうえ、制限速度を30キロ以上オーバーで、自動二輪車搭乗の被害者(17歳・男子高校生)に追突し、被害者が死亡した事故で、慰謝料3,000万円を相当とした事例。(大阪地裁・平成12年1月19日)加害者救護義務違反の場合の慰謝料5歳の男子が道路を横断しようとしたところ、ひき逃げに遭い死亡した事故で、本人分2,400万円、父母各300万円、合計3,000万円を相当とした事例。(東京地裁・平成24年7月18日)まとめ死亡慰謝料は、定額化・基準化されています。死亡慰謝料には、被害者本人分と遺族分があり、通常は本人分と遺族分を合算して、死亡慰謝料額を算定します。基準額は目安であって、基準額を上回る慰謝料額を認められることがあります。個別事情を考慮して慰謝料を算定し、請求することが大切です。詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。
    Read More
  • 外貌醜状
    外貌醜状の後遺障害等級、労働能力喪失率、逸失利益、慰謝料
    外貌醜状とは、顔面や頸部など日常露出する部位に醜状痕が残った後遺障害です。外貌醜状障害による逸失利益は、被害者の性別、年齢、職業などを考慮し、労働能力に直接または間接的に影響を及ぼすおそれがあるか否かで判断されます。逸失利益が認定されなくても、慰謝料の増額事由として斟酌される場合があります。ここでは、外貌醜状の後遺障害等級とその認定基準、外貌醜状による後遺障害逸失利益と慰謝料の認定について近年の動向を見ていきます。醜状障害の後遺障害等級と認定基準交通事故により外貌の醜状障害が残った場合の後遺障害等級については、2010年までは女性と男性で異なる取り扱いがされていました。女性の方が、後遺障害等級の位置づけが高かったのです。現在は、男女の区別なく、同じ後遺障害等級となっています。2010年6月10日以降の事故については、新しい後遺障害等級と認定基準が適用されます。それでは、さっそく「新基準」を見ていきましょう。顔面などの醜状痕(醜状障害)の後遺障害等級まず、醜状痕の後遺障害等級についてです。醜状痕の後遺障害等級は、「外貌の醜状障害」と「上肢・下肢の露出面の醜状障害」について定めています。外貌とは、頭部、顔面部、頸部のように、上肢・下肢以外の日常露出する部分をいう、と障害等級認定基準において定められています。上肢の露出面とは、ひじ関節以下(手部を含む)、下肢の露出面とは、ひざ関節以下(足背部を含む)をいいいます。後遺障害等級は、次の通りです。醜状障害の後遺障害等級等級後遺障害外貌7級12号外貌に著しい醜状を残すもの9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの12級14号外貌に醜状を残すもの上肢14級4号上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの下肢14級5号下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの※後遺障害等級表(自動車損害賠償保障法施行令[別表第二])より抜粋。各等級の労働能力喪失率は、次のようになります。労働能力喪失率後遺障害等級労働能力喪失率第7級56%第9級35%第12級14%第14級5%※労働能力喪失率表(自賠責の保険金支払基準[別表1]より抜粋。醜状障害については、後遺障害等級が認定されても、それに対応した労働能力喪失率が認められない、したがって逸失利益が認められない、という問題があります。それについては、あとで詳しく見ることにして、後遺障害の各等級の認定基準、すなわち、「著しい醜状」、「相当程度の醜状」、単なる「醜状」とは、どういうものをいうのか、見ておきましょう。外貌醜状障害に関する後遺障害等級の認定基準「著しい醜状」、「相当程度の醜状」、単なる「醜状」については、「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」で、次のようになっています。ここに示したのは、労災保険における障害等級認定基準ですが、自賠責保険の後遺障害等級認定基準も、これと同じです。自賠責制度は、労災制度に準じて運用されています。したがって、自賠責の後遺障害等級表は、労災の障害等級表と基本的に同じです。自賠責制度における後遺障害等級の判断は、原則として労災制度の障害等級認定基準に準拠して行われます。著しい醜状外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のもの。頭部手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損顔面部鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没頸部手のひら大以上の瘢痕※「手のひら大」は、指の部分は含まない。相当程度の醜状外貌における「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5㎝以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの。醜状外貌における単なる「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のもの。頭部鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損顔面部10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3㎝以上の線状痕頸部鶏卵大面以上の瘢痕障害補償の対象となる外貌の醜状は、人目につく程度以上のものでなければならないから、眉毛、頭髪等にかくれる部分については、醜状として取り扱わないとされています。例えば、眉毛の走行に一致して3.5㎝の縫合創痕があり、そのうち1.5㎝が眉毛にかくれている場合は、顔面に残った線状痕は2㎝となるので、外貌の醜状には該当しないことになります。外貌醜状に関する障害等級の認定基準まとめると、こうなります。頭部顔面部頸部瘢痕頭蓋骨の欠損瘢痕線状痕組織陥没瘢痕第7級12号(著しい醜状)手のひら大以上手のひら大以上鶏卵大面以上―10円銅貨大以上手のひら大以上第9級16号(相当程度の醜状)―――長さ5㎝以上――第12級14号(醜状)鶏卵大面以上鶏卵大面以上10円銅貨大以上長さ3㎝以上―鶏卵大面以上【参考】「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」平成23年2月1日 厚生労働省労働基準局長通知(厚生労働省のWebサイトにリンクしています)外貌醜状障害に関する後遺障害等級の改正外貌醜状障害に関する後遺障害等級が改正された経緯を簡単に見ておきましょう。外貌の醜状障害は、従来、女性は7級と12級、男性は12級と14級に分類され、男性は女性より障害等級が低く取り扱われていました。ちなみに、旧基準では、このように分類されていました。第7級12号 女性のの外貌に著しい醜状を残すもの第12級13号 男性の外貌に著しい醜状を残すもの14号 女性の外貌に醜状を残すもの第14級10号 男性の外貌に醜状を残すもの京都地裁が、2010年(平成22年)5月27日、「外貌の著しい醜状に関し、男女の障害等級に5等級の差を設けている現行の障害等級表は、憲法14条1項に違反する」と判決。国は控訴しなかったため、同平成22年6月10日に判決が確定しました。これを受けて、厚生労働省は、労災保険の「障害等級表」と「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」を改正しました(平成23年2月1日)。自賠責保険の後遺障害等級認定は労災保険に準拠していることから、自賠責保険においても同様に、自賠法施行令の後遺障害等級表を改正しました(平成23年5月2日)。新基準の適用は、平成22年6月10日以降に発生した事故からです。醜状障害は労働能力喪失が否定され逸失利益が認められない?外貌の醜状障害は、それによって身体的機能が損なわれるわけではないため、労働能力の喪失が否定され、逸失利益が認められないことがほとんどでした。しかし、今は、状況が変わってきています。外貌の醜状障害に関する裁判実務での取り扱い従来、外貌の醜状障害による労働能力の喪失について、裁判所では、次のように取扱われてきました。被害者の性別、年齢、職業等を考慮した上で、<直接的に影響する場合>醜状痕の存在のために配置転換させられたり、職業選択の幅が狭められたりするなどの形で、労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合には、一定割合の労働能力の喪失を肯定して逸失利益を認める。<直接的な影響はないが、間接的に影響する場合>労働能力への直接的な影響は認めがたいが、対人関係や対外的な活動に消極的になるなどの形で、間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれが認められる場合には、後遺障害慰謝料の加算事由として考慮し、100万~200万円の幅で後遺障害慰謝料を増額する。<直接的にも間接的にも影響しない場合>直接的にも間接的にも労働能力に影響を与えないと考えられる場合には、逸失利益は認められず、慰謝料も基準通りとして増額しない。(参考:東京三弁護士会交通事故処理委員会編『新しい交通賠償論の胎動』ぎょうせい 9ページ)つまり、醜状障害の内容・程度と被害者の職業との相関関係により、直接的に労働能力に影響が生じるおそれがある場合には、制限的に逸失利益を認め、間接的な影響にとどまる場合は、慰謝料の増額で調整してきたのです。実際、醜状障害の逸失利益が認められるのは、被害者がモデルなど容姿が仕事の有無・内容に直結する職業に就いていた場合ぐらいでした。それ以外の職業では、現実に転職・配転・減収があったり、就職・転職において支障が生じた場合などに、仮に労働能力の喪失が認められても、労働能力喪失表の喪失率の半分以下の喪失率が認定されるにすぎず、その代わりに慰謝料の増額調整が行われてきたのです。ですが、今は、醜状障害が、直接的に労働能力に影響を与える場合だけでなく、間接的に影響を及ぼす場合にも、労働能力の喪失を認める方向に変わっています。つまり、外貌の醜状障害による逸失利益が認められるようになってきているのです。上で紹介したように、労災保険の障害等級表を違憲とした京都地裁の判決が確定したのを受けて、厚生労働省は、「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会」を開催。外貌障害による障害等級の見直しを行いました。専門検討会が取りまとめた報告書(2010年12月1日)の中の「障害を評価する観点」には、こうあります。外ぼうの障害自体は、稼得能力(労働能力)の直接の喪失をもたらすものではない。しかしながら、外ぼうの障害が、現状はもちろん将来にわたる就業制限、職種制限、失業、職業上の適格性の喪失等の不利益をもたらし、結果として労働者の稼得能力を低下させることは明らかであり、労災保険法の趣旨が業務上又は通勤による稼得能力(労働能力)の永続的な低下、すなわち労働能力の喪失のてん補であることからみると、当該不利益の特殊性にも着目して障害の評価を行うことが妥当である。(「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書」4ページ)時を同じくして、『赤い本』2011年版に、「外貌の醜状障害による逸失利益に関する近時の裁判実務上の取扱について」という、鈴木尚久裁判官の講演録が掲載されます。そこでは、外貌がその者の印象を大きく左右する要素であることを指摘し、こう述べられています。醜状障害が、円満な対人関係を構築し円滑な意思疎通を実現する上での阻害要因となるのは容易に理解されるところであり、この点こそ醜状障害によって喪失する労働能力の実質と考えられます。すなわち、醜状障害では、労働能力を伝統的な肉体的・機械的な観点のみから把握するのではなく、このような対人関係円滑化の観点からも把握する必要があると考えられます。労働能力を対人関係円滑化の観点からも把握するとすれば、被害者が実際に従事する労務を遂行する上で醜状障害が全く影響しない職業というのはおよそ考えられません。どちらも、外貌の醜状障害が労働能力へ及ぼす直接的な影響だけでなく、間接的な影響も重視する方向性が示されています。まだ裁判実務に明確な変化が生じたと一概にいうことはできないものの、今後は、労働能力に対する間接的な影響による逸失利益を認める傾向が強まり、慰謝料で斟酌する方式は例外的なものになっていくだろう、と考えられています。裁判例従来の裁判実務の取扱いによれば、労働能力に対する間接的影響として慰謝料で斟酌するにとどめていたと思われる事例で、逸失利益を認める例が出てきています。東京高裁判決(平成23年10月26日)被害者は女性・21歳・大学生外貌醜状7級を含む併合5級の事案につき、原告の年齢等からすれば、こうした外貌醜状によって職業・稼働に対する一層の制約が生じ、収入が減少することは十分考えられるから、労働能力の喪失がないとはいえず、労働能力喪失は5級に相当する79%とみるのが相当とした一審判決を支持しました。名古屋地裁判決(平成24年11月27日)被害者は女子・10歳・小学生外貌醜状12級の事案につき、今後の進路ないし職業の選択、就業等において、不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず、また原告が醜状痕を気にして消極的になる可能性をも考慮すると、障害にわたりその労働能力を5%喪失したものと認めるのが相当としました。さいたま地裁判決(平成27年4月16日)被害者は男性・39歳(症状固定時41歳)・自動車運転手外貌醜状9級を含む併合9級の事案につき、職業のいかんを問わず、外貌醜状があるときは、原則として当該後遺障害等級に相応する労働能力の喪失があるというのが相当であり、当該後遺障害等級の定める労働能力の喪失を否定するような特段の事情があるとまでいえないから、併合9級相当の35%の労働能力喪失があるものというのが相当とし、症状固定の41歳から67歳までの27年間について、逸失利益を認定しました。上肢・下肢の露出面の醜状障害外貌の醜状障害のほか、上肢・下肢の露出面の醜状障害が、後遺障害等級14級に位置づけられています。上肢・下肢の醜状障害による労働能力の喪失の判断についても、基本的に、外貌の醜状障害の場合と同じですが、その部位などから、労働能力の喪失が否定されるケースがほとんどです。労働能力喪失期間外貌醜状障害は、器質的障害で、経年による回復、改善があまり期待できません。そのため、労働能力喪失期間については、就労可能期間の終期とされる67歳までとすることが多いようです。ただし、将来の配置転換や転職の可能性があって、それにより労働能力に与える影響が緩和する可能性がある場合や、年齢によって業務の内容が変わり、その影響が変わる場合などは、それに応じた労働能力喪失期間の限定や、労働能力喪失率の逓減が加えられる場合もあります。旧別表7級12号に該当する顔面醜状が残存したホステス(20歳)につき、ホステスを継続することが困難となり、転職して収入が半分以下になったことを考慮し、症状固定時(22歳)から35歳までの13年間は、事故時の収入を基礎に56%の労働能力の喪失を認め、その後の67歳までの32年間は、女子平均賃金を基礎に25%の労働能力の喪失を認めました。(名古屋地裁判決・平成21年8月28日)醜状障害による労働能力喪失の認定で大事なこととは?醜状障害による労働能力への影響を認定する重要な要素は、醜状障害の内容・程度と、被害者の職業特性・業務内容、性別、年齢です。醜状障害の内容・程度醜状障害の内容・程度については、後遺障害等級該当性の簡単な主張にとどまらず、醜状痕の位置、頭髪などで隠れる度合い、他者に与える印象も含めて、具体的に主張・立証することが必要です。被害者の就業状況と業務への影響被害者の就業状況と、外貌醜状による業務への影響について、具体的に主張・立証する必要があります。業務に与える具体的な影響については、モデルなど容姿が直接影響する職業であるか、接客業務の割合、被害者の精神面による間接的な影響などを主張します。特に、醜状痕の残存のために、現実に転職・配転・減収があったとか、就職・転職に支障があったなど、すでに具体的に生じている影響があれば、労働能力の喪失が認定される可能性が高くなります。経緯などを主張・立証することが重要です。他の障害との併合による労働能力の喪失他の神経症状などの障害と併せて労働能力喪失を認定されることもあるので、それらの障害と外貌醜状が関連する状況について主張することも大事です。外貌の醜状障害は比較的高額な慰謝料が認められる外貌の醜状障害は、比較的高い後遺障害等級に位置づけられていますが、逸失利益の認定に消極的な傾向があるため、慰謝料の増額で調整されてきました。特に女性の場合は、財産上の損害以外の社会生活上の不利益も大きいことから、比較的高額な慰謝料を認める事例があります。未婚か既婚か、若年者か成人か高齢者か、などによっても慰謝料額に差がみられるのが普通です。一般的には、既婚より未婚、高齢者より若年者の方が、外貌醜状によって受ける精神的苦痛の程度が大きく、苦痛の期間も長くなるため、慰謝料額は高くなる傾向にあります。ただし、今後は逸失利益を認めるケースが増え、従来のように、逸失利益を否定する代わりに慰謝料を増額して調整する方式は少なくなることが考えられます。とはいえ、逸失利益の算定が困難な事案や、慰謝料の算定で諸般の事情を斟酌する方式が適切な事案では、引き続き慰謝料による補完性が重要な意味を持つことに変わりありません。まとめ外貌醜状障害は、それ自体が労働能力の直接的な喪失をもたらすものではないため、特定の職業を除き、逸失利益は否定され、その代わりに慰謝料の増額で調整する方法が採られてきました。しかし、今後は、労働能力への直接的な影響だけでなく、間接的な影響も考慮して労働能力の喪失を判断する方向性が示されています。逸失利益が認められるケースが増えてくることが考えられます。外貌醜状障害については、労働能力への直接的な影響だけでなく、対人関係が円滑でなくなったことによる間接的な影響という観点からも、労働能力の喪失を具体的に主張・立証することが大切です。まさに今、裁判例が変化しているときですから、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 127~128ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 185~186ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 176~180ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 164~165ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 191~196ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 147ページ・『l交通損害関係訴訟 増訂版』青林書院 165~166ページ・『交通事故判例140』学陽書房 209~210ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 80ページ・『交通事故事件の落とし穴』新日本法規 102~107ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 201~206ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 147~155ページ、194~199ページ
    Read More
  • 慰謝料
    物損事故(車両・建物の損壊、ペット死傷)で慰謝料を請求できるか?
    物損事故の場合、慰謝料の請求は認められません。ただし、特別な事情がある場合には、物損でも慰謝料請求が認められる場合があります。具体的に見ていきましょう。物損の慰謝料請求は認められない民法の規定によれば、論理的には、物損であっても慰謝料の請求は認められるのではないか、と考えられます。民法710条は、こう規定しています。民法710条(財産以外の損害の賠償)他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。この規定によれば、「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず」とありますから、財産権の侵害(物損)についても、慰謝料請求が認められそうです。財産権侵害のみの場合には、慰謝料の請求は認められない現実には、財産権の侵害のみの場合、慰謝料請求は認められません。それは、被害者が財産的損害について適正な損害賠償を受けることができれば、財産権侵害にともなう精神的損害も同時に回復されると解されるからです。物損で慰謝料の請求が認められる場合とは?財産権だけでなく、別の権利・利益が侵害されたと評価し得る特別の事情が存在する場合には、物損であっても慰謝料請求が認められる余地があります。特別の事情が存在する場合とは、次のようなケースです。被害物件が、被害者にとって特別の主観的・精神的価値を有する場合被害物件の損傷にともない、生活の平穏を害され、人格権が侵害された場合加害行為が著しく反社会的であるなど、加害者側に悪質な事情がある場合こうした特別の事情が存在する場合には、単に財産的損害に対する賠償だけでは、被害者の甚大な精神的苦痛を償えないとして、慰謝料が認められる場合があります。なお、1つ目の「被害者にとって特別の主観的・精神的価値」というのは、被害者個人の特殊な感情まで保護するものではなく、社会通念上相当と認められるものであり、一般人の常識に照らして判断されます。車両損傷に対する慰謝料請求車両の損傷についての慰謝料請求は、認められません。たとえ被害車両がクラシックカーで、被害者にとって愛着のあるものであっても、認められていないのが実情です。車両の損傷については、評価損に慰謝料的な側面がありますから、評価損として交渉するのが現実的でしょう。評価損について詳しくはこちらをご覧ください。建物などの損壊に対する慰謝料請求交通事故による建物などの損壊も、物損ですから、基本的に慰謝料は認められません。ただし、建物など被害物件に対する侵害が、被害者の生活の平穏を侵害するような場合には、慰謝料が認められる場合があります。建物の損壊で慰謝料請求が認められた裁判例建物の損壊で慰謝料が認められた裁判例としては、次のようなものがあります。居酒屋の店舗兼住居に自動車が突入した事案で、まかり間違えば人命に対する危険も生じた上、家庭の平穏を侵害したとして、30万円の慰謝料を認めました。(大阪地裁判決・平成元年4月14日)深夜に大型トラックが民家に激突した事案で、50万円の慰謝料を認めました。(岡山地裁判決・平成8年9月19日)大型貨物自動車が、被害者の家屋に衝突して損壊した事案につき、高齢者の身で住み慣れた家屋を離れ、半年間アパート暮らしを余儀なくされた心労や借財による修復工事等の事後処理に奔走した苦労等の諸事情を考慮して、被害者2名分計60万円の慰謝料を認めました。(神戸地裁判決・平成13年6月22日)このように、建物損壊に対して慰謝料が認められていますが、これらは、生活利益・人格的利益など財産権以外の利益も侵害されているケースです。建物損壊について、常に慰謝料が認められるわけではありません。建物以外で慰謝料請求が認められた裁判例建物以外では、次のような場合に慰謝料請求が認められています。墓石霊園内で墓石等に衝突した事故で、墓石が倒壊し、埋設されていた骨壺が露出した場合に、墓地等が先祖・故人の眠る場所として、通常その所有者にとって強い敬愛追慕の念の対象となるという特殊性に鑑み、10万円の慰謝料を認めました。(大阪地裁判決・平成12年10月12日)陶芸作品加害車両が陶芸家の敷地に突っ込み、屋外に置いてあった陶芸作品を壊した事案で、破損作品の財産的価値を確定できないとして、物の価格賠償は否定しつつ、慰謝料の算定で斟酌するとし、陶芸作品の破損により陶芸家に精神的苦痛を生じたとして100万円の慰謝料を認めました。(東京地裁判決・平成15年7月28日)ペットの死傷に対する慰謝料ペットは、法的には「物」ですが、生命があり、単なる物と同じように扱うことはできません。家族の一員としてかわいがっている人もいます。財産的損害の賠償だけでは、償いきれない場合があります。そのため、ペットの死傷につき、飼主が受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる余地があります。ただし、ペットが受傷したという程度では、慰謝料は認められません。慰謝料が認められる可能性があるのは、交通事故でペットが死亡した場合、もしくは、ペットが重篤な傷害を負った場合に限られます。ペットの死傷に対する慰謝料が認められる場合、5万円から数十万円とする裁判例が多いようです。ペットの死傷に関する損害賠償請求について詳しくはこちらをご覧ください。まとめ財産権のみの侵害の場合(物損のみの場合)には、慰謝料(精神的損害に対する損害賠償)は認められません。財産的損害については、その損害が賠償されることによって、精神的苦痛も原則として回復されると解されるからです。ただし、財産権だけでなく、それとは別の法益もあわせて侵害されたといえる場合には、慰謝料請求が認められる余地があります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 240ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 445~446ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 204~205ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 251~253ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 345~346ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 220~222ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 305~308ページ・『民事交通事故訴訟の実務Ⅱ』ぎょうせい 340~342ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 276ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 106~107ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 90~95ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 137~139ページ
    Read More
  • 事故でペットが怪我
    交通事故で死亡・負傷したペットの損害賠償請求・治療費・慰謝料
    ペットは、法的には「物」ですから、交通事故では、物損として扱われます。しかし、ペットには生命があり、家族の一員として大切にされているため、一般的な物損とは多少異なる扱いがされる部分もあります。交通事故でペットが死傷したときの損害賠償請求について、詳しく見ていきましょう。交通事故によるペットの死傷は物損交通事故によるペットの損害を考える場合、ペットは、民法上「動産」に分類され、車両の損害と同じ物損(財産権の侵害に係る損害)として扱われます。とはいえ、ペットには生命があり、単なる「物」とは異なります。しかも、飼主は、飼っているペットを家族の一員であるかのように大切にしているものです。また、動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)では、「動物が命あるものであることにかんがみ、・・・適正に取り扱うようにしなければならない」と定めています。動物愛護法 2条1項動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。そのため現在では、ペットを単なる「物」として扱うことは相当ではない、という意識の高まりを背景に、ペットの死傷に対し、一般の物損とは異なる損害賠償が認められる場合があるのです。ペットの死傷に対する損害賠償について、車両損害の場合と比較しながら見ていきます。なお、ペットの死傷はあくまでも物損です。飼主の方にとっては、表現が気になる部分もあるかもしれませんが、ご理解ください。ペットが死亡したときの損害賠償請求まず、ペットが交通事故で死亡した場合の損害賠償請求についてです。ペットの死亡は、車両損害でいえば物理的全損に相当します。自動車の場合は、被害車両が全損と判断されると、買替えが認められ、被害車両の時価相当額(同等車両の再調達価格)が損害賠償額となります。ここでは、買替差額や買替諸費用など細かい部分は省略します。ペットが死亡した場合も同様に、事故当時のペットの時価相当額(同種同等の動物の再購入費)が、損害賠償の対象となります。ここで問題となるのが、時価額(被害物件の事故当時の価格)の算定方法です。自動車であれば、被害車両の時価額を中古車市場における同等車両の販売価格をもとに算定しますが、ペットの場合には、中古車市場に相当するような流通市場がありません。ペットの時価額は、どう算定するか?ペットの価格を把握できるのは、ペットショップにおける同種類の動物の価格ぐらいです。ペットショップで販売しているのは、生まれて間もない子犬や子猫。自動車でいえば、新車に相当します。ペットの時価額を算定しようにも、飼育して数年経過したペットを売買する市場がないため、市場価格を把握することができないのです。そもそも、ペットには生命がありますから、飼っている途中でいらなくなったからと売ることは許されません。そこで、ペットの時価額の算定には、次のような方法がとられます。ペットの購入価格や年齢を考慮して時価額を算定ペットの時価額(財産的価値)は、通常、ペットの購入価格や年齢を考慮して判断します。具体的には、購入価格を平均寿命で割り、平均寿命から死亡時の年齢を差し引いた年数を乗じて求めるのが一般的です。交通事故による事案ではありませんが、例えば、こんな裁判例があります。名古屋地裁判決・平成18年3月15日ミニチュア・ダックス(オス・5歳)が他の犬に噛み殺された事故で、死亡時の流通価格を、購入金額(15万3,157円)の約3分の1の金額(5万円)と算定しました。ペットの時価額は低いペットの事故当時の価格(財産的価値)を把握できたとしても、その時価額は、飼い始めたときと比較して、著しく低廉化しているのが普通です。そのため、商業用の動物は別として、ペットそのものの財産的価値の損害賠償を請求し、認容された例は少ないようです。特殊なケースとして、例えば、品評会での入賞実績がペットの財産的価値に影響を与えたり、ブリーディングに用いられる犬や猫の場合は、交配料という経済的利益が生じるため、死亡時の時価額が購入価格よりも高くなることがあります。ペットの財産的価値(時価額)は低く評価されますが、その代わり、飼主の精神的苦痛に対して慰謝料が認められることがあります。商業用動物の損害賠償商業用の動物が死亡した場合は、その財産的価値が損害賠償において考慮される余地があります。例えば、こんな裁判例があります。札幌高裁判決・平成19年3月9日地方競馬の競走馬が死亡した事案において、休業損害として178万6,120円、逸失利益として784万4,382円の賠償が認容されました。被害動物の社会的価値から時価額を算定した例死亡した盲導犬の財産的価値(時価額)について、購入金額や市場価格を基礎とせず、盲導犬としての社会的価値を評価し、盲導犬育成に要した費用を基礎に財産的価値を算定した裁判例があります。名古屋地裁判決(平成22年3月5日)判決は、盲導犬の死亡自体による損害に関し、当該盲導犬の死亡時における客観的価値によるべきだとした上で、盲導犬の社会的価値を評価し、その能力を身に付けるために要した費用(当該盲導犬の育成に要した費用)を基礎に考えるのが相当としました。個々の盲導犬の客観的価値の算定においては、基本的には、当該盲導犬の活動期間を10年とみた場合の残余活動期間の割合に応じて、当該盲導犬の育成費用を減じるのが相当というべきであり、盲導犬としての経験を積み重ねることによって、一般的、客観的にも盲導犬としての技能が貸与時より向上したと評価し得る場合には、この点をも考慮して算定するのが相当としました。具体的な算定方法は、こうです。盲導犬Aの育成に要した費用は、盲導犬Aが訓練を受けた年度に支出した育成費用の合計を、同年度に育成されていた盲導犬の頭数(10頭)で割った 453万1,037円と判断。その上で、盲導犬Aについては、残余活動期間約5.13年を基礎に、一般的、客観的な技能の向上も考慮して 260万円と算定しました。盲導犬のように専門的な訓練を受け、特別な技能を取得し、活躍している動物は、他にも警察犬、聴導犬、介助犬、セラピー犬、災害救助犬など、たくさんいます。こうした動物については、社会的価値を有していることから、比較的高い財産的価値が認められる可能性があります。ペットの治療費の損害賠償請求次に、交通事故でペットが怪我をして、治療費や入院費を損害賠償請求する場合です。ペットの治療費・入院費は、自動車でいえば修理費に相当します。ペットの治療費には、経済的全損の考え方を形式的に適用しないペットの治療費の損害賠償で大事なのは、ペットの治療費には、経済的全損の考え方を形式的に適用しない、ということです。物損には、経済的全損の考え方があります。自動車の場合、修理費が車両時価額を超えると経済的全損と判断され、買替えが認められますが、買替えをしても修理をしても、車両時価額が損害賠償額の上限となります。ペットの治療費は、経済的全損の考え方を形式的に適用せず、ペットの時価額を超える金額が損害として認められる場合があります。ペットの治療費に経済的全損の考え方を適用すると?ペットの治療費に経済的全損の考え方を適用すると、治療費の上限が、ペットの時価相当額となります。ペットの治療費は、公的な医療保険がありませんから高額となります。その一方で、ペットの時価額は低廉です。例えば、治療費が30万円かかっても、ペットの時価額が5万円であれば、損害賠償額は5万円です。ペットの治療費に経済的全損の考え方を形式的に適用すると、十分な損害賠償を受けられなくなるのです。ペットの時価額を超える治療費を認めた裁判例ペットには生命があり、飼主としても可能な限り生命を守りたいと思うものです。治療費が時価額を超えるからといって、必要な治療を断り、別の動物を購入するようなことはしないでしょう。ペットを単なる「物」とみて、物損の損害賠償の考え方を形式的に適用することは相当ではないとして、時価相当額を超える治療費を認める裁判例も出てきています。名古屋高裁判決(平成20年9月30日)愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については、生命を持つ動物の性質上、必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上、相当と認められる限度において、不法行為との間に因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である。この裁判例は、後方から追突された被害車両に乗せていたペットの犬(ラブラドールレトリバー、購入価格6万5,000円)が、第二腰椎圧迫骨折の傷害を被り、後肢麻痺、排尿障害の症状が残った事案です。裁判所は、治療費11万1,500円、車いす製作料2万5,000円、合計13万6,500円を損害と認めるとともに、飼主夫婦に20万円ずつ計40万円の慰謝料も認めました。この名古屋高裁判決には、5つのポイントがあります。被害犬の時価額を超える治療費を認めました。「当面の治療費や、その生命の確保・維持に必要不可欠な費用」として、被害犬が入院し、症状が安定して光線治療を受けるようになるまでの間の治療費が該当すると具体的な判断を示しました。被害犬の後肢麻痺などの症状に鑑み、車いす制作費についても必要性を認めました。飼主への慰謝料を認めました。犬用シートベルトなど動物の体を固定するための装置を装着していなかったことにつき、過失相殺を認定しました。このように、ペットの治療費は、「当面の治療や生命の確保・維持に必要不可欠なもの」については、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上、相当と認める限度において、事故との相当因果関係のある損害として認められることがあります。ペットの死傷に関する慰謝料物損については、財産上の損害を賠償することにより、精神的苦痛も慰謝されると解され、原則として慰謝料は認められません。物損事故の慰謝料請求はこちらをご覧ください。ペットの死傷は物損ですから、ペットの死傷に対して慰謝料は認められません。ただし、ペットが死亡したり、重い傷害を負った場合は、飼主の精神的苦痛に対し慰謝料が認められることがあります。人損と物損の慰謝料請求の違い人身事故の場合は、被害者本人に慰謝料が認められます。被害者が死亡した場合は、被害者本人のほか、遺族の慰謝料が認められます。被害者が重篤な傷害を負った場合にも、被害者本人の慰謝料に加え、その家族にも慰謝料が認められます(近親者慰謝料)。ペットは、基本的には「物」として扱われますから、ペット(人間でいえば被害者本人)の慰謝料は認められません。しかし、ペットは生命を持ち、家族の一員であるかのように扱われ、飼主にとってかけがえのない存在です。ペットが死亡もしくは重傷を負い、飼主が甚大な精神的苦痛を受けたときは、飼主に慰謝料が認められる場合があります。ペットが重傷を負った場合の慰謝料についての裁判所の判断ペットが重傷を負った場合の飼主の慰謝料請求について、次のように判示した裁判例があります。大阪地裁判決(平成27年8月25日)愛玩動物が不法行為により重い傷害を負ったことにより、当該動物が死亡した場合に近い精神的苦痛を飼主が受けたときは、飼主の精神的苦痛は、社会通念に照らし、主観的な感情にとどまらず、損害賠償をもって慰謝されるべき精神的損害として、飼主は、これを慰謝するに足りる慰謝料を請求することができるもとと解するのが相当である。被害車両が停止中に追突され、その衝撃で、被害車両に乗せられていた被害犬が、後部座席から前方のカーナビゲーションに衝突。事故後、被害犬は、継続的に全身の震えや食欲不振といった症状を示すようになった事案です。判決は、ペットが死亡するに至らなかった場合についても、飼主の慰謝料請求が認められる余地があることを認めました。ただし、本事案については、被害犬が飼主にとってかけがえのない存在になっていることは認められるとしつつも、本件事故により、被害犬が負った被害は、全身の震えや食欲不振といった症状にとどまり、飼主の被った精神的苦痛は、社会通念上、損害賠償をもって慰謝されるべきものとまでは言い難いとして、慰謝料請求は否定しました。ペットが重篤な傷害を負った場合に慰謝料を認めた裁判例として、先に紹介した名古屋高裁判決(平成20年9月30日)があります。ペットの葬儀費用ペットが死亡した場合の葬儀費用は、否定されることが多いようです。これは、ペットの葬儀をあげることが、社会通念上一般的とはいえないからです。火葬代を認めた裁判例(札幌高裁判決・平成19年9月8日)がありますが、相手が争わなかったからのようです。火葬代も葬儀費用と同様に、認められることは困難です。過失相殺交通事故でのペットの負傷につき、管理者の過失が問われ、過失相殺されることがあります。例えば、次のような場合です。ペットを放し飼いにしていた場合ペットにリードを装着せず、ペットが路上に飛び出した場合車に乗せていたペットに、ペット用のシートベルトを装着していなかった場合先に紹介した名古屋高裁判決(平成20年9月30日)は、過失相殺について、次のように認定しました。名古屋高裁判決(平成20年9月30日)飼主は、動物を乗せて自動車を運転する者として、事故によって予想される危険性を回避し、あるいは、事故により生じる損害の拡大を防止するため、犬用シートベルトなどの動物の体を固定するための装置を装着させるなどの措置を講ずる義務を負うとし、これを怠った点に過失を認めて、被害者の過失割合を1割と判断しました。まとめペットは、法的には「物」に分類され、交通事故で死傷した場合は、物損として扱われます。しかし、動物愛護法の施行等、ペットの社会的位置づけの変化にともない、今日では、ペットを単なる「物」として扱うことは相当でない、とする意識が高まっています。裁判例でも、物損における経済的全損の考え方を形式的に適用することはせず、ペットの時価額を超える治療費を認める例や、物損では通常認められない慰謝料を認める例があります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 345~346ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 307ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 191ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 96~105ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 146~148ページ、246~258ページ
    Read More