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幼児・小学生・中学生・高校生など年少者・未就労者の逸失利益を算定する際の基礎収入は、原則として、賃金センサスの学歴計・男女別の全年齢平均賃金を用います。
被害者が大学進学を確実視される場合は、学歴別平均賃金(大卒の平均賃金)を用いることもできます。
幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方法については、1999年11月に東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の民事交通部の「三庁共同提言」により「指針」が示され、全国でほぼ同じ運用がされています。
すなわち、原則として「基礎収入額を賃金センサスの全産業計・企業規模計・学歴計・男女別全年齢平均賃金とし、ライプニッツ方式で中間利息を控除する」方式です。
交通事故による逸失利益には、後遺障害逸失利益と死亡逸失利益があり、それぞれ次の計算式で求めます。
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対するライプニッツ係数
逸失利益の算定にあたって、いくつかの注意点をまとめておきます。
基礎収入は、原則として、賃金センサスの学歴計・男女別の全年齢平均賃金を採用します。
原則として、死亡の場合には死亡した年の平均賃金、後遺障害の場合には症状が固定した年の平均賃金を用います。
被害者が大学進学を確実視される場合は、学歴計でなく学歴別、すなわち「大卒の平均賃金」を用いることもできます。
おもに問題となるのは高校生の場合ですが、小学4年生の女子について、4年制大学卒の平均賃金を認めた判例もあります。
年少女子の逸失利益の算定には、原則として女性労働者の平均賃金を使うため、女性の賃金水準の低さを反映し、男子に比べて逸失利益が低く算定されます。
そこで、男女間格差の解消のため、年少女子(おおむね義務教育終了まで)の死亡逸失利益の算定においては、基礎収入を男女計の全労働者平均賃金とし、生活費控除率で調整する方式が定着しています。後遺障害逸失利益については、男女間格差の問題が残されたままです。
死亡逸失利益の算定に用いる生活費控除率は、基準化されています。
男子が50%、女子が30%。なお、年少女子で基礎収入に全労働者平均賃金を使う場合は45%です。
労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて基準化されています。
裁判でも、その基準が尊重されますが、実態に照らして適当でない場合は、個別事情を考慮して労働能力喪失率が認定されます。
18歳未満の場合、就労可能年数は18歳から67歳までの49年ですが、適用するライプニッツ係数は、49年に対応するライプニッツ係数 18.169 ではありません。
ここでは、年5%のライプニッツ係数(年金現価表)を用いています。2020年4月1日以降の事故については、年3%のライプニッツ係数が適用されます。
「就労終期(67歳)までの年数に対応する係数」から「就労始期(18歳)までの年数に対応する係数」を差し引いた数値となります。起点は、死亡事故の場合は死亡日、傷害事故の場合は症状固定日です。
例えば、5歳の子どもが死亡事故に遭ったとしましょう。この場合、年収から生活費を控除した額に乗じるライプニッツ係数は、
67歳までの年数62年(67歳-5歳)に対応するライプニッツ係数が 19.029
18歳までの年数13年(18歳-5歳)に対応するライプニッツ係数が 9.394
よって、適用するライプニッツ係数は
19.029-9.394=9.635
となります。
就労可能年数が同じ49年間であっても、遠い将来分の分であればあるほど、中間利息の控除額が大きくなり、その結果、適用するライプニッツ係数は小さくなります。
自賠責保険の支払い基準の別表「就労可能年数とライプニッツ係数表」の「18歳未満の者に適用する表」を利用すると、面倒な計算は不要です。
※国土交通省のWebサイトにリンクしています。こちらは年3%のライプニッツ係数です。
幼児・小学生・中学生の逸失利益の具体的な計算例をご紹介しておきます。高校生・大学生の逸失利益の計算例はこちらのページをご覧ください。
ここでは、2020年3月31日以前の事故例なので、年5%のライプニッツ係数(年金現価表)を用いています。
事故日 | 平成28年3月(死亡事故) |
---|---|
被害者 | 8歳の男子 |
労働能力喪失率 | 100%(死亡) |
基礎収入を平成28年の男性の全年齢平均賃金549万4,300円とし、生活費控除率50%、8歳のライプニッツ係数11.154を乗じて算定します。
ライプニッツ係数の計算
8歳から67歳まで59年に対応するライプニッツ係数は18.8757
8歳から18歳まで10年のライプニッツ係数は7.7217
よって、18.8757-7.7217=11.1540
549万4,300円 ×(1-0.5)× 11.154 = 3,064万1,711円
事故日 | 平成28年3月(死亡事故) |
---|---|
被害者 | 8歳の女子 |
労働能力喪失率 | 100%(死亡) |
基礎収入を平成28年の全年齢平均賃金489万8,600円とし、生活費控除率45%、8歳のライプニッツ係数11.154を乗じて算定します。
489万8,600円 ×(1-0.45)× 11.154 = 3,005万1,441円
事故日 | 平成28年3月(傷害事故・症状固定) |
---|---|
被害者 | 10歳の男子 |
労働能力喪失率 | 35% |
労働能力喪失期間 | 生涯(18歳~67歳まで49年) |
基礎収入を平成28年の男性の全年齢平均賃金549万4,300円とし、労働能力喪失率35%、10歳のライプニッツ係数12.297を乗じて算定します。
ライプニッツ係数の計算
10歳から67歳まで57年に対応するライプニッツ係数は18.7605
10歳から18歳まで8年のライプニッツ係数は6.4632
よって、18.7605-6.4632=12.2973
549万4,300円 × 0.35 × 12.297 = 2,364万7,192円
事故日 | 平成28年3月(傷害事故・症状固定) |
---|---|
被害者 | 10歳の女子 |
労働能力喪失率 | 35% |
労働能力喪失期間 | 生涯(18歳~67歳まで49年) |
基礎収入を平成28年の女性の全年齢平均賃金376万2,300円とし、労働能力喪失率35%、10歳のライプニッツ係数12.297を乗じて算定します。
376万2,300円 × 0.35 × 12.297 = 1,619万2,751円
幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方式は、「三庁共同提言」以降、ほぼ定型化され、全国で同じような運用がされています。
とはいえ、個別事情を考慮し、算定しなければなりません。逸失利益は高額となりますから、賠償額の算定にあたっては、相手方保険会社と揉めやすいところです。きちんと損害額の立証ができるよう、交通事故の損害賠償請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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休業損害や逸失利益の計算方法は、次のページをご覧ください。