交通事故トラブル解決ガイド|損害賠償請求・示談交渉の悩みを解決!

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  • 追突事故
    物損事故には自賠法(自動車損害賠償保障法)が適用されない
    物損事故には、自賠法(自動車損害賠償保障法)が適用されません。自賠法が適用されないと、損害賠償請求はどうなるのか、人損と物損の損害賠償請求権の違いについて、具体的に見てみましょう。物損に自賠法が適用されないことの意味自賠法(自動車損害賠償保障法)は、自動車の運行によって人の生命・身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立し、被害者の保護を図るのが目的です(自賠法1条)。そのため、自賠法が適用されるのは人損についてのみです。物損については、自賠法が適用されません。つまり、人的損害と物的損害の損害賠償請求権には、次のような違いがあります。人的損害物的損害賠償請求の法的根拠自賠法3条民法709条民法709条請求の相手方運行供用者運転者運転者自賠責保険への請求できるできない自賠法が適用されないということは、次のことを意味します。運行供用者に対し、損害賠償請求できない。自賠責保険から保険金(損害賠償額)の支払いを受けられない。加害者の過失(損害賠償責任)を被害者側が立証しなければならない。それぞれ、詳しく見ていきましょう。物損事故は、自賠法にもとづく損害賠償請求ができない交通事故による人的損害については、自賠法3条(運行供用者責任)にもとづき、運行供用者に賠償請求できます。そのほかにも、民法709条(不法行為責任)により相手の運転者に賠償請求できるほか、相手の運転者が業務中に起こした事故であれば、運転者の雇用主に対し、民法715条(使用者責任)により損害賠償請求することもできます。最も効果的に損害賠償を受けられる相手を選んで請求できます。自賠法3条と民法709条・715条の違いはこちらをご覧ください。それに対し、物損には自賠法が適用されないので、運行供用者に対する損害賠償請求ができません。民法にもとづく損害賠償請求ができるだけです。例えば、A運送会社の従業員が、A社所有のトラックを運転して商品を運送していたときに、人身事故を起こし、人損と物損の両方が発生したとします。人損については自賠法が適用されます。この場合、A社が運行供用者に該当し、被害者は、A社に対して自賠法3条にもとづく損害賠償請求が可能です。運転者に対しては、民法709条にもとづく損害賠償請求ができます。もちろん、二重に損害賠償請求できるわけではありません。たいていは、自賠法にもとづき運行供用者に損害賠償請求します。その方が十分な賠償金額を受領でき、相手の過失責任の証明も不要だからです。物損については自賠法は適用されません。運転者に対し、民法709条にもとづく損害賠償請求ができます。この事例では、業務中の事故ですから、A社に対し、民法715条にもとづく使用者責任を追及することもできます。損害賠償の関係条文をまとめておきます。自賠法3条(運行供用者責任)自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。民法709条(不法行為責任)故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。民法715条1項(使用者責任)ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。物損事故は、自賠責保険に請求できない自賠責保険(自賠責共済を含む)は、自賠法にもとづ強制保険であり、自賠責保険がカバーするのは、人的損害のみです。物損事故の場合、自賠責保険から支払いは受けられません。自賠責保険に対し、直接請求もできません。物損に対する損害賠償を補償するのは、任意自動車保険の対物保険(対物賠償責任保険)です。そのため、物損については、相手が任意自動車保険に加入しておらず、相手に賠償資力がなければ、自分の車両保険を使って修理せざるを得ません。物損事故は、相手の過失を被害者が立証しないといけない自賠法にもとづく損害賠償請求は、加害者が自分に過失がなかったことを立証しない限り、損害賠償責任を免れることができません(自賠法3条ただし書き)。被害者は、損害額を算定して、賠償請求すればよいのです。しかし、物損については、自賠法の適用がなく、民法709条にもとづく損害賠償請求となりますから、賠償請求する被害者の側が、相手に過失があり損害賠償責任があることを立証しなければなりません。なお、損害額がいくらになるかについては、民法にもとづく場合でも、自賠法にもとづく場合でも、請求する側に立証責任があります。まとめ物損事故には、自賠法の適用がありません。そのため、人身事故で人損と物損の両方が発生した場合には、損害賠償請求の相手方が、人損と物損で異なる場合があります。また、物損については、自賠責保険からの損害賠償額の支払は受けられません。物損について損害賠償請求するには、相手に過失があり、損害賠償責任があることを、請求する側が立証しなければなりません。その他にも、物損についての損害賠償請求権の消滅時効は人損より短い、などの違いもあります。物損特有の問題について詳しくはこちらをご覧ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通関係訴訟の実務』商事法務 426~429ページ・『民事交通事故訴訟の実務Ⅱ』ぎょうせい 332~334ページ
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  • 物損の損害賠償請求の注意点
    物損の損害算定の方法、損害賠償請求権と消滅時効の注意点
    物損は自賠法が適用されないほか、損害算定の方法や損害賠償請求権に物損特有の考え方があり、人損の損害賠償請求とは異なる点があります。人身事故の場合は、人損と物損の両方が発生しますから特に注意が必要です。物損の損害賠償請求権と消滅時効人身事故では、たいてい人損と物損の両方が発生します。同一の事故であっても、人損と物損は、損害賠償の請求権は別個のもので、消滅時効も異なります。物損の賠償請求権の方が、先に時効が完成します。気が付いたら、物損について損害賠償請求権が時効で請求できない、ということにならないよう、注意が必要です。交通事故被害の損害賠償請求権の消滅時効は、物損が3年、人損が5年です。時効起算点も異なります。消滅時効について詳しくはこちらをご覧ください。さらに、物損の損害賠償請求権は、侵害された財産権ごとに生じます。複数の財産権が侵害された場合は、財産権ごとに損害賠償請求権が別です。ちなみに、人損には財産的損害(治療費や逸失利益など)と精神的損害(慰謝料)がありますが、損害賠償の請求権は、1個とされています。人損の賠償請求権は1個同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は一個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個であると解すべきである。(最高裁第一小法廷判決 昭和48年4月5日)人的損害物的損害消滅時効5年3年請求権1個財産権ごと物損特有の損害算定の論理物損は、財産権の侵害による損害ですから、その損害賠償は、財産上の損害を事故前の状態に回復させることです。したがって、修理をするにしろ、買替えをするにしろ、損害賠償額は、事故時における時価額の範囲となります。車両損害で考えてみましょう。被害車両が修理可能の場合は、修理をして、かかった修理費を損害賠償請求するのが原則です。修理可能であるのに、買替えを求めても認められません。修理不能の場合は、全損(物理的全損)と判断され、車両の買替えが認められます。ただし、損害として認められるのは、被害車両の時価相当額です。なお、修理可能でも、修理費が被害車両の時価額を上回る場合は、経済的全損と判断され、買替が相当となり、損害賠償額は被害車両の時価相当額です。修理費のうち、車両時価額を上回る部分は、相当因果関係のある損害と認められません。このように、物損の場合は、修理費もしくは時価額のいずれか低い方の額が、損害賠償額となります。原則は修理による原状回復ですが、買替える方が安いなら、その方が経済的に合理的というわけです。実況見分調書がなく事故状況を立証する客観的資料が乏しい物損事故の場合には、警察に事故の届出をしたとしても、通常、実況見分調書は作成されず、簡易な物件事故報告書が作成されるだけです。しかも、事故後、車両を修理し、車両の損傷状況が証拠として保存されていないこともあります。そのため、後日、過失割合が争いとなったとき、事故態様を客観的に証明する資料を欠く場合が少なくないのです。ですから、事故後、記憶が鮮明なうちに、事故現場の道路状況や双方の車両の動静などをできる限り正確に記録した図面を作成しておくことが大切です。双方の車両の損傷状況を写真撮影し、どのように衝突・接触したのかの資料を確保しておく必要があります。最近は、ドライブレコーダーを搭載している車両も多くなってきています。事故時のドライブレコーダーの動画がある場合は、動画のデータを確保し、保存しておくことが大事です。物損事故の場合、軽く考え、警察への届出をしないこともあります。しかし、警察へ事故を届出していないと、後日、交通事故証明書の発行を受けられず、事故の発生自体が争いとなりかねません。必ず事故の届出をしておくことが大切です。交通事故の初期対応で被害者がやっておくべき3つのこと損害賠償額が比較的少額にとどまる物損事故は、人身事故に比べて損害賠償額が比較的少額にとどまります。物損には、人損における逸失利益や慰謝料がなく、損害項目が限られます。車両の損害であれば、原則は修理ですが、修理費は車両の時価額までしか認められません。修理費が時価額を超える場合は、時価額までしか損害賠償を受けられません。そのため、想定した修理ができないような賠償額にとどまることも多く、お詫び的な金銭の支払いもないので、法的には適正な賠償額であったとしても、被害者の心情的には、納得できないケースも少なくありません。損害賠償額に納得できないからといって、弁護士に依頼しても、時価額を大幅に超える損害賠償を受けることは期待できません。物損の場合は、人損のように損害算定基準が、保険会社と弁護士とで違うということがないからです。物損の場合は、そもそも受け取れる損害賠償額が多くはなく、弁護士が介入することで増額できる余地も少ないため、弁護士に依頼しても、弁護士費用の負担を考えると、費用対効果の点でメリットがないのです。最近は、弁護士保険に加入している方も増えています。弁護士保険を利用すれば、法律相談料を含め、弁護士費用が保険から支払われますから、弁護士保険を利用するのであれば、物損であっても弁護士に相談・依頼するメリットはあります。まとめ物損は財産権の侵害に係る損害であるため、修理でも買替でも損害賠償額の上限は時価額です。慰謝料や逸失利益は認められません。そのため、物損の損害賠償額は、一般的に少額にとどまります。また、人損であれば、保険会社と弁護士とで損害算定基準に大きく差がありますが、物損には、そういった違いもありません。なので、物損のみの場合、弁護士費用の負担を考えると、弁護士に相談・依頼するメリットは、あまりありません。弁護士に依頼する場合は、費用倒れにならないよう注意が必要です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通関係訴訟の実務』商事法務 426~429ページ・『民事交通事故訴訟の実務Ⅱ』ぎょうせい 332~334ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 2~7ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 3~6ページ
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  • 諸油研留保車両・リース車両
    所有権留保車両やリース車両の損害賠償請求権は誰にある?
    交通事故で車両が損傷した場合の損害賠償請求権は、車両の所有者にあります。車両の所有者と使用者が異なる場合、使用者が加害者に対し、損害賠償請求することはできるのでしょうか?問題となりやすい「所有権留保車両」や「リース車両」の場合について、詳しく見ていきましょう。車両の所有者と使用者が異なる場合の損害賠償請求権所有権留保車両(ローンで購入した車両)、リース車両(リース契約の車両)の場合は、車両の所有者と使用者が次のように分離します。所有者使用者所有権留保車両売主・信販会社買主リース車両リース会社ユーザー被害車両の所有者は、加害者に対し、車両損害の賠償請求権を取得します。問題となるのは、所有権留保車両やリース車両の使用者にも、車両損害の賠償請求権が認められるのか、ということです。車両使用者の損害賠償請求権については、損害費目(修理費、買替差額、評価損など)ごとに判断します。具体的に見ていく前に、基本的な考え方を押さえておきましょう。基本的な考え方物には、交換価値と使用価値があります。それゆえ物損には、交換価値の損害と使用価値の損害があります。交換価値の損害については、所有者に損害賠償請求権があり、使用価値の損害に関しては、使用者に損害賠償請求権があります。物損賠償請求権者交換価値の損害所有者使用価値の損害使用者所有権留保車両の場合、リース車両の場合、それぞれ具体的に見ていきましょう。「所有権留保車両」の損害賠償請求権まず、所有権留保車両の場合です。そもそも、所有権留保とは何か、押さえておきましょう。自動車を売買すれば、その所有権は、売主から買主に移転します。オートローンで自動車を購入する場合、自動車は売主から買主に引き渡されますが、代金が完済されるまでは、売主(ディーラー・信販会社)が車両の所有権を留保します。このような売買契約を「所有権留保付売買契約」といいます。所有権留保の法的性質売主が所有権を留保するのは、万が一、買主が代金を払えなくなったときに、自動車を売却して残代金の回収を図るためです。買主は、所有権はなくても、代金を分割で支払うことで、先に自動車の占有・使用が認められます。代金の支払いが完了すれば、所有権を取得できます。つまり、所有権留保には、次のような法的性質があります。売主の留保所有権は、実質的には担保の性質を有するものです。自動車を占有・使用する権能は買主にあり、売主にはありません。買主が債務不履行によって期限の利益を喪失した場合は、売主は車両を占有・処分する権能を有します。買主が代金を完済すれば、買主は所有権を取得します。期限の利益とは、期限が到来するまでは弁済しなくてもよいということです。契約通り支払いを履行しないと期限の利益を喪失し、一括弁済できないときは担保権が実行されます。所有権留保の法的性質についての最高裁判例所有権留保の法的性質に関しては、次のような最高裁判例があります。事案は、駐車場の所有者が、駐車場賃貸借契約解除後も自動車が駐車されていたため、所有権を留保している信販会社に対し、自動車の撤去・駐車場の明渡しを求めるとともに、駐車場の使用料相当損害金の支払いを求めたものです。最高裁第三小法廷判決要旨(平成21年3月10日)動産の購入代金を立替払した者が、立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保する場合において、買主との契約上、期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の到来前は当該動産を占有、使用する権原を有せず、その経過後は買主から当該動産の引渡しを受け、これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができるとされているときは、所有権を留保した者は、第三者の土地上に存在してその土地所有権の行使を妨害している当該動産について、上記弁済期が到来するまでは、特段の事情がない限り、撤去義務や不法行為責任を負うことはないが、上記弁済期が経過した後は、留保された所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはない。このように、留保所有権は、完全な所有権ではなく、形式的な所有権です。所有権といっても、留保所有権は、車両を占有・使用する権原はなく、実質的には担保権の性質を有するものにすぎないのです。それでは、損害費目ごとに、車両の使用者に損害賠償請求権が認められるか、見ていきましょう。修理費所有権留保車両の修理費は、使用者(買主)が損害賠償請求できます。使用者(買主)は、所有権留保者を排除して自動車を占有使用できる一方、所有権者に対し、車両の修理保守を行い担保価値を維持する義務を負っています。したがって、車両の損壊は、使用者に対する不法行為(利用権の侵害)に該当し、車両の使用者は、加害者に対して修理費相当額を損害賠償請求できるとされています。使用者が車両を修理し、修理費を支払い済みの場合は、所有者は実質的に修理費相当額の賠償を受けたといえるので、民法422条(損害賠償による代位)の類推適用により、使用者は、所有者が加害者に対し有していた修理費相当額の損害賠償請求権を代位取得すると考えられます。使用者が未修理で修理費を支払っていないときに修理費を請求する場合は、自らが修理し費用を負担する予定があることを主張立証する必要があります。未修理でも修理費の損害賠償請求は可能とした裁判例被害車両の修理が完了しておらす、修理費を支払っていなくても、使用者が修理費の賠償請求をすることが可能とした、次のような裁判例があります。東京地裁判決(平成26年11月25日)留保所有権は、担保権としての性質を有し、所有者は車両の交換価値を把握しているにとどまるから、使用者は、所有者に対する立替金債務の期限の利益を喪失しない限り、所有者による車両の占有、使用権限を排除して自ら車両を占有使用することができる。使用者はこのような固有の権利を有し、車両が損壊されれば、前記の排他的占有、使用権限が害される上、所有権者に対し、車両の修理保守を行い、担保価値を維持する義務を負っている。したがって、所有権留保車両の損壊は、使用者に対する不法行為に該当し、使用者は加害者に対し、物理的損壊を回復するために必要な修理費用相当額の損害賠償を請求することができ、請求にあたり修理の完了を必要とすべき理由はない。買替差額費所有権留保車両が全損(物理的全損・経済的全損)となった場合は、車両の交換価値に対する賠償ですから、損害賠償請求権は、留保所有権者に帰属します。物理的全損の場合物理的全損の場合は、交換価値が完全に失われたと考えられるので、交換価値を把握する所有者が損害賠償を請求でき、交換価値を把握しない使用者は、損害賠償を求めることはできないとされています。ただし、事故後に、車両代金が完済された場合には、使用者(買主)は、留保所有権者が有する買替差額賠償請求権を代位取得し、行使できます。これについては、次のような裁判例があります。東京地裁判決(平成2年3月13日)所有権留保売買において、代金完済前に車両が第三者の不法行為により毀損した場合、車両の交換価値相当の損害賠償請求権を取得するのは留保所有権者である売主とした上で、次のように述べています。買主は、第三者の不法行為により右自動車の所有権が滅失するに至っても売買代金の支払債務を免れるわけではなく(民法534条1項)、また、売買代金を完済するときは右自動車を取得しうるとの期待権を有していたものというべきであるから、右買主は、第三者の不法行為後において、売主に対して売買代金の支払いをし、代金を完済するに至ったときには、本来右期待権がその内容の通り現実化し右自動車の所有権を取得しうる立場にあったものであるから、民法536条2項但し書及び304条の類推適用により、売主が右自動車の所有権の変形物として取得した第三者に対する損害賠償請求権及びこれについての不法行為の日からの民法所定の遅延損害金を当然に取得するものと解するのが相当である。また、東京地裁平成26年7月15日判決では、交通事故により所有権留保車両(二輪車)が物理的全損状態となり、運転者も死亡した事案で、事故後に車両代金を一括返済した運転者の母親による車両時価額賠償請求につき、所有権留保車両の損害に係る一切の損害賠償請求権を代位取得したことを前提として、請求を認めています。経済的全損の場合経済的全損の場合は、物理的には修理が可能であり、実際に修理して使用することも多くあります。そのため、基本的には分損の場合と同じに考え、①使用者が修理義務を負うこと、②使用者が修理し修理費相当額を負担する予定があることを主張・立証すれば、使用者が、車両時価相当額の損害賠償を求めることができるとされています。実際、横浜地裁平成25年10月17日判決、京都地裁平成26年8月26日判決など、所有権留保付売買契約の買主による修理費賠償請求につき、所有権留保車両が経済的全損状態であることを認定したうえで、車両時価額の賠償を認めた裁判例があります。評価損評価損は、自動車の交換価値の低下を意味するので、損害賠償請求権は、交換価値を把握している留保所有権者に帰属します。ただし、売主と買主との間に、評価損賠償請求権を買主に帰属させる合意があれば、買主による評価損の賠償請求が認められます。なお、事故後に買主が代金を完済したときは、売主が評価損について賠償を受けていない場合は、買主は評価損請求権を取得し、売主が評価損につき賠償を受けている場合は、買主は評価損相当額を売主に請求できます。代車料代車は、被害車両の修理中、その車両を使用することができない車両使用者に提供されるものなので、代車費用の損害賠償請求権は、車両使用者に帰属します。「リース車両」の損害賠償請求権リース契約は、リース会社が、顧客(ユーザー)が希望するリース物件を販売会社から購入し、これを顧客に賃貸して、賃貸借期間(リース期間)中に顧客から賃料(リース料)を受領する契約です。通常、リース物件の欠陥や破損について、リース会社は責任を負わず、補修・修理は、ユーザーが行うとされています。リース契約の種類自動車のリース契約には、「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」があります。ファイナンス・リースは、ユーザーが自ら資金を調達して自動車を購入する代わりに、リース会社に指定した自動車を購入してもらって、リース契約するものです。リース期間中の解約はできず、リース物件の取得価格のほか、金利、税金、維持管理費の一切を含めてリース料を設定します。その実態は、売買契約に近いものです。オペレーティング・リースは、ファイナンス・リース以外のリースです。残存価格を設定し、これをふまえて算定されるリース料で、期間中、ユーザーに使用させます。リース物件が順次複数のユーザーに利用されることが予定され、その実態は、一般的な賃貸借契約(レンタカー契約)に近いものです。オペレーティング・リースは、契約終了時に精算を行うか否かにより、「オープンエンド方式」と「クローズドエンド方式」に区分されます。オープンエンド方式は、契約終了時に残価予定額と時価査定額の精算を行い、クローズドエンド方式は、そのような清算を行わないものです。それでは、具体的に損害費目ごとに、リース車両のユーザーに損害賠償請求権が認められるか、見ていきましょう。修理費リース契約の場合、約款に、使用者が修理義務を負うことが明記されているのが一般的ですから、ユーザーが修理費を損害賠償請求できます。その場合、次の点を主張・立証する必要があります。加害者の過失によって、自らが使用する車両が損傷したこと当該車両の使用者がリース契約のユーザーであり、ユーザーが修理義務を負う旨が約款に定められていること当該車両の修理費相当額自らが当該車両を修理し、修理費相当額を負担する予定があること買替差額費リース車両が全損となった場合の損害賠償請求の帰属は、所有権留保車両が全損となった場合と、おおむね同じです。ただし、留保所有権が担保の性質を有するのにすぎないのに対し、リース業者の所有権は、通常の所有権である点が異なります。したがって、リース車両が物理的全損となった場合は、リース業者が所有権侵害による賠償請求権を取得し、ユーザーに買替差額の賠償請求権が認められることはありません。リース車両が経済的全損状態となった場合は、所有権留保車両の場合と同様に、ユーザーによる買替差額賠償請求も認められます。評価損評価損は、車の交換価値を把握している所有者に認められるので、リース車両について評価損賠償請求権は、リース業者に帰属します。ユーザーによる評価損賠償請求は、基本的に認められません。ただし、リース業者とユーザーとの間に、ユーザーに評価損賠償請求権を帰属させるとの合意がある場合は、ユーザーによる評価損請求が認められます。なお、リース期間満了後に、ユーザーが事故車両を買い取る場合、一般的には、その代金は価値低下分だけ安くされることが多いと考えられ、ユーザーは加害者に対し、評価損は請求できないと考えられます。代車料リース車両の使用利益を毀損されたユーザーに、請求権が認められます。まとめ交通事故による車両損害の賠償請求権は、車両の所有者に帰属しますが、所有権留保車両やリース車両のように、所有者と使用者が異なる場合は、使用者に車両損害の賠償請求権が認められるかが問題となることがあります。基本的には、次のようになります。全損の場合の車両時価額の損害賠償請求権は、原則として車両の所有者に帰属します。ただし、経済的全損の場合は、物理的には修理可能であることから、分損の場合と同じく、車両使用者にも認められることがあります。分損の場合の修理費については、車両使用者も、損害賠償請求できます。評価損は、車両の交換価値の低下を意味するので、損害賠償請求権は所有者に帰属します。代車料は、車両使用者が損害賠償請求できます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 217~222ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 45~47ページ・『交通事故損害賠償法第2版』弘文堂 341~342ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 427~428ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 105~106ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 208ページ・『交通事故の法律相談と事件処理』ぎょうせい 239~246ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 168ページ、175~176ページ・『要約交通事故判例140』学陽書房 294~295ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 18~27ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 120~136ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 197~198ページ・『交通事故損害賠償の手引き』企業開発センター 62~64ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 192~193ページ
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  • 慰謝料
    物損事故(車両・建物の損壊、ペット死傷)で慰謝料を請求できるか?
    物損事故の場合、慰謝料の請求は認められません。ただし、特別な事情がある場合には、物損でも慰謝料請求が認められる場合があります。具体的に見ていきましょう。物損の慰謝料請求は認められない民法の規定によれば、論理的には、物損であっても慰謝料の請求は認められるのではないか、と考えられます。民法710条は、こう規定しています。民法710条(財産以外の損害の賠償)他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。この規定によれば、「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず」とありますから、財産権の侵害(物損)についても、慰謝料請求が認められそうです。財産権侵害のみの場合には、慰謝料の請求は認められない現実には、財産権の侵害のみの場合、慰謝料請求は認められません。それは、被害者が財産的損害について適正な損害賠償を受けることができれば、財産権侵害にともなう精神的損害も同時に回復されると解されるからです。物損で慰謝料の請求が認められる場合とは?財産権だけでなく、別の権利・利益が侵害されたと評価し得る特別の事情が存在する場合には、物損であっても慰謝料請求が認められる余地があります。特別の事情が存在する場合とは、次のようなケースです。被害物件が、被害者にとって特別の主観的・精神的価値を有する場合被害物件の損傷にともない、生活の平穏を害され、人格権が侵害された場合加害行為が著しく反社会的であるなど、加害者側に悪質な事情がある場合こうした特別の事情が存在する場合には、単に財産的損害に対する賠償だけでは、被害者の甚大な精神的苦痛を償えないとして、慰謝料が認められる場合があります。なお、1つ目の「被害者にとって特別の主観的・精神的価値」というのは、被害者個人の特殊な感情まで保護するものではなく、社会通念上相当と認められるものであり、一般人の常識に照らして判断されます。車両損傷に対する慰謝料請求車両の損傷についての慰謝料請求は、認められません。たとえ被害車両がクラシックカーで、被害者にとって愛着のあるものであっても、認められていないのが実情です。車両の損傷については、評価損に慰謝料的な側面がありますから、評価損として交渉するのが現実的でしょう。評価損について詳しくはこちらをご覧ください。建物などの損壊に対する慰謝料請求交通事故による建物などの損壊も、物損ですから、基本的に慰謝料は認められません。ただし、建物など被害物件に対する侵害が、被害者の生活の平穏を侵害するような場合には、慰謝料が認められる場合があります。建物の損壊で慰謝料請求が認められた裁判例建物の損壊で慰謝料が認められた裁判例としては、次のようなものがあります。居酒屋の店舗兼住居に自動車が突入した事案で、まかり間違えば人命に対する危険も生じた上、家庭の平穏を侵害したとして、30万円の慰謝料を認めました。(大阪地裁判決・平成元年4月14日)深夜に大型トラックが民家に激突した事案で、50万円の慰謝料を認めました。(岡山地裁判決・平成8年9月19日)大型貨物自動車が、被害者の家屋に衝突して損壊した事案につき、高齢者の身で住み慣れた家屋を離れ、半年間アパート暮らしを余儀なくされた心労や借財による修復工事等の事後処理に奔走した苦労等の諸事情を考慮して、被害者2名分計60万円の慰謝料を認めました。(神戸地裁判決・平成13年6月22日)このように、建物損壊に対して慰謝料が認められていますが、これらは、生活利益・人格的利益など財産権以外の利益も侵害されているケースです。建物損壊について、常に慰謝料が認められるわけではありません。建物以外で慰謝料請求が認められた裁判例建物以外では、次のような場合に慰謝料請求が認められています。墓石霊園内で墓石等に衝突した事故で、墓石が倒壊し、埋設されていた骨壺が露出した場合に、墓地等が先祖・故人の眠る場所として、通常その所有者にとって強い敬愛追慕の念の対象となるという特殊性に鑑み、10万円の慰謝料を認めました。(大阪地裁判決・平成12年10月12日)陶芸作品加害車両が陶芸家の敷地に突っ込み、屋外に置いてあった陶芸作品を壊した事案で、破損作品の財産的価値を確定できないとして、物の価格賠償は否定しつつ、慰謝料の算定で斟酌するとし、陶芸作品の破損により陶芸家に精神的苦痛を生じたとして100万円の慰謝料を認めました。(東京地裁判決・平成15年7月28日)ペットの死傷に対する慰謝料ペットは、法的には「物」ですが、生命があり、単なる物と同じように扱うことはできません。家族の一員としてかわいがっている人もいます。財産的損害の賠償だけでは、償いきれない場合があります。そのため、ペットの死傷につき、飼主が受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる余地があります。ただし、ペットが受傷したという程度では、慰謝料は認められません。慰謝料が認められる可能性があるのは、交通事故でペットが死亡した場合、もしくは、ペットが重篤な傷害を負った場合に限られます。ペットの死傷に対する慰謝料が認められる場合、5万円から数十万円とする裁判例が多いようです。ペットの死傷に関する損害賠償請求について詳しくはこちらをご覧ください。まとめ財産権のみの侵害の場合(物損のみの場合)には、慰謝料(精神的損害に対する損害賠償)は認められません。財産的損害については、その損害が賠償されることによって、精神的苦痛も原則として回復されると解されるからです。ただし、財産権だけでなく、それとは別の法益もあわせて侵害されたといえる場合には、慰謝料請求が認められる余地があります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 240ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 445~446ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 204~205ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 251~253ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 345~346ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 220~222ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 305~308ページ・『民事交通事故訴訟の実務Ⅱ』ぎょうせい 340~342ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 276ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 106~107ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 90~95ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 137~139ページ
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  • 全損
    事故車両の買替えが認められるのは?物理的全損・経済的全損の違い
    交通事故による車両損害は、修理が可能であれば、修理費用の賠償が原則です。たとえ新車であっても、「新車だから」という理由だけで、新車買替えが認められるわけではありません。例えば、新車引渡し20分後の事故ですら、新車購入費用の請求を認めなかった裁判例もあります(東京地裁判決・平成12年3月29日)。どんな場合に車両の買替えが認められるのか、詳しく見ていきましょう。車両の買替えが認められるのは全損の場合車両損害は、修理が可能かどうかで全損と分損に区分されます。修理不能の場合は全損、修理可能な場合は分損となります。車両の買替えが認められるのは、全損の場合です。全損修理不能なので買替が認められる分損修理可能なので修理が相当買替えでも賠償額は被害車両の時価額の範囲買替えが認められるといっても、自動車を新しく買い替えるための費用が全額認められるわけではなく、損害として賠償を受けられるのは、事故時の被害車両の時価額の範囲です。そもそも、物損の損害賠償は、財産上の損害を事故前の状態に回復させることなので、被害車両の時価額を超える損害賠償は、被害者に利得をもたらすことになり、公平でないという考え方です。分損でも買替えが認められる場合がある技術的には修理が可能でも、修理費が車両時価額(事故時の車両価額)より高くなる場合は、買替えが認められます。修理をするよりも、買い替える方が経済的合理性があるからです。つまり、車両の損害は、修理費か車両時価額のいずれか低い方を賠償すればよい、ということなのです。買替えが相当と認められる3つのケース買替えが認められるのは全損の場合ですが、全損には次の3つのタイプがあります。物理的に修理不能(物理的全損)のとき経済的に修理不能(経済的全損)のとき社会通念上相当(社会的全損)と認められるとき①物理的全損車両の損傷が激しく、技術的・物理的に修理が不可能な状態を「物理的全損」といいます。本来の意味の全損ですから、買替えが認められます。②経済的全損技術的には修理可能でも、修理費が車両時価額を上回る場合は、修理をするより買い替える方が経済的合理性があると判断されます。このように「経済的に修理不能」な状態を「経済的全損」といい、車両の買替えが認められます。こういう場合は、修理をしても、車両時価額を超える修理費は、損害賠償を受けられません。③社会的全損技術的に修理不能ではないものの、車体の本質的構造部分に重大な損傷を受け、買替えをすることが社会通念上相当とされるときは、「社会的全損」という場合があります。損傷が車両の安全性に関わる部分に生じ、車両性能の著しい減損を伴うため、事実上、物理的全損ともいえます。「社会的全損」という呼称は、北河隆之氏が『交通事故損害賠償法第2版』弘文堂337~338ページで使用しています。「社会通念上相当と認められるとき」とは?物理的全損・経済的全損のほか、「買替えをすることが社会通念上相当と認められるとき」も、買替差額を請求できるというのは、最高裁判決で示されました。次のような判決です。最高裁第二小法廷判決(昭和49年4月15日)交通事故により自動車が損傷を被った場合において、被害車両の所有者が、これを売却し、事故当時におけるその価格と売却代金との差額を損害として請求しうるのは、被害車両が事故によって物理的または経済的に修理不能と認められる状態になったときのほか、フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷の生じたことが客観的に認められ、被害車両の所有者においてその買替えをすることが社会通念上相当と認められるときをも含むと解すべきである。ただし、このケースに該当することを肯定した裁判例は極めて少ないのが実情です。肯定例として、札幌高裁判決・昭和60年2月18日があります。なぜ、該当例が少ないかというと、「買替えをすることが社会通念上相当と認められるとき」とは、どのような場合が該当するのか、その判断が容易ではないこと、さらに「重大な損傷の生じたことが客観的に認められ」ることが必要で、主観的に車両の安全性に不安を感じるというだけでは該当しないこと、などが理由として挙げられます。なお、車体の本質的構造部分とは、フレームのほか、クロスメンバー、フロントインサイドパネル、ピラー、ダッシュパネル、ルーフパネル、フロアパネル、トランクフロアパネル、エンジン、車軸などを指します。まとめ車両の損害は、修理費の賠償が原則です。車両の損害は、大きくは全損と分損に区分されます。全損(物理的全損・経済的全損・社会的全損)の場合は、買替えが認められ、買替差額を損害賠償請求請求できます。分損の場合は、適正修理費用(必要かつ相当な修理費用)を損害賠償請求できます。なお、ローン返済中の所有権留保車両の場合、使用者(購入者)は、車両の所有権がないため、買替差額を請求することはできません。所有権留保車両やリース車両の損害賠償請求権について詳しくはこちらをご覧ください。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『別冊判例タイムズ38』 17ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 206~210ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 427~431ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 278~282ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 337~338ページ・『交通事故事件の実務』新日本法規 100~103ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 239~241ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 227~231ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 271~287ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 169~170ページ
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  • 車両時価額
    全損車両の損害額(車両時価額・買替差額)の算定方法
    被害車両が全損の場合は、事故時の車両時価額が損害として認められます。ここでは、全損となった場合に賠償請求できる損害額の算定方法、車両時価額の算定方法について説明します。被害車両が全損のときに請求できる損害とは?全損の場合は、事故時の被害車両の価格(車両時価額)が損害として認められます。ただし、被害車両の売却代金が車両時価額から控除されます。この売却代金には、スクラップ代金を含みます。スクラップ代金とは、車両を解体した際に鉄くず代金として車両所有者が得る金銭のことで、解体業者に支払う解体費用ではありません。車両時価額から売却代金を控除した差額を買替差額といいます。買替差額に加えて、買替えに要する買替諸費用(登録手続関係費)も、損害賠償請求が認められます。つまり、被害車両が全損の場合に賠償請求できる損害は、買替差額と買替諸費用です。全損車両の損害賠償額=買替差額+買替諸費用買替差額=車両の時価額-売却代金事故時の車両価格(車両時価額)の算定方法買替差額の算定で大事なのが、事故時の車両価格(車両時価額)をいくらと評価するかです。請求する側で、車両時価額の立証が必要です。車両時価額は、中古車市場における販売価格(再調達価格)によるのが原則です。車両時価額(被害車両の事故当時における取引価格)の算定方法について、最高裁は次のように判示しています。最高裁第二小法廷判決・昭和49年4月15日いわゆる中古車が損傷を受けた場合、当該自動車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によって定めるべきであり、右価格を課税又は企業会計上の減価償却の方法である定率法又は定額法によって定めることは、加害者及び被害者がこれによることに異議がない等の特段の事情のないかぎり、許されないものというべきである。具体的には、次のような方法により、車両時価額を算定します。事故車両と同一の車種・年式・型の車両について、「オートガイド自動車価額月報」(通称:レッドブック)の価格を基礎に、中古車専門雑誌やインターネット上の中古車価格情報などで、事故車両と使用状態や走行距離などが同程度の車両の価格を参考に判断します。車両時価額の調査に用いられるものとして、次のものがあります。有限会社オートガイド発行の「自動車価格月報」(通称:レッドブック)一般財団法人日本自動車査定協会発行の「中古車価格ガイドブック」(通称:イエローブック、シルバーブック)全国技術アジャスター協会発行の「建設車両・特殊車両標準価格表」インターネット上の中古車価格情報一般的には「レッドブック」を参考にしますが、「レッドブック」の掲載期間は長いものでも10年程度です。「レッドブック」に掲載のないような古い車両の価格算定には、インターネット上の中古車価格情報を参考にすることになります。ただし、このような情報は販売店の販売希望価格であって、実際の取引価格でないことに注意が必要です。市場価値のない古い車両の時価額の算定方法新車登録時から長期間経過して市場流通性を喪失し、レッドブック等にも掲載がなく、中古車市場価格が判明しない古い車両については、新車価格の10%を時価額とする場合が多いようです。中古車市場における交換価値(市場価値)を喪失した古い車両でも、実際に走行していた以上、使用価値はあったと評価できます。この使用価値相当の評価方法として定着しているのが、新車価格の10%と算定する方法です。これは、減価償却資産の残存価額の考え方にもとづくものです。減価償却資産については、法定耐用年数が経過しても使用価値はあるため(これを「残存価額」といいます)、減価償却は10%の残存価額を残して行うことになっていました。これの考え方にもとづき、法定耐用年数の経過した古い車両は、新車販売価格の10%を時価額としていたのです。ただし、平成19年度税制改正により、減価償却資産については「償却可能限度額及び残存価額」が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになりました。その結果、減価償却の方法をもとに車両時価額を新車価格の10%とすることについて、法律上の根拠は失われたのです。しかし、この税制改正以降もなお、裁判では、新車価格の10%を時価額として認定しています。こうした裁判例からみると、新車登録時から長期間経過し、適切な資料により車両時価額を立証できないような場合には、裁判所が新車価格の10%と認定するケースが今後もあり得ると考えられます。新車の時価額の算定方法新車であっても、登録するだけで、いわゆる「登録落ち」(車検落ち、ナンバー落ち)が生じ、車両価格が1~2割程度下落するといわれています。たとえ、納車直後の新車であっても、査定は中古車価格となります。新車価格を車両時価額として、買替差額を算定することは認められません。販売が開始されたばかりの新車で、まだ中古車市場価格が形成されていない場合は、新車価格から適宜減額して価格を算定する方法もとられます。学説的には、「走行距離1,000㎞以内、購入日から1年以内が、新車買替差額の認められる限界」とし、新車買替差額を認める場合は、損害の公平な分担の観点から、新車買替諸費用の賠償は認めない、とする見解もあります。裁判例には、新車購入後6日目に事故に遭い、車体の基幹部分に重大な損傷を受けた車両について、修理しても走行機能等に欠陥を生じることが推測されるとして、新車購入価格と登録諸費用も認めた例(札幌高裁昭和60年2月13日判決)もありますが、基本的に、新車買替え請求には否定的な裁判例が多いようです。例えば、新車を購入し、引渡しを受けた直後の事故だったことを理由に、新車買替えを要求したことについて、次のような裁判例があります。東京地裁平成12年3月29日判決事故により損傷した被害車が、店舗内に陳列中であったり、車両運搬車で運搬中であったりする等、完全な新車の状態であった場合であれば格別、既に、一般の車両と同様に公道において通常の運転利用に供されている状態であった以上、新車の買替えを肯認すべき特段の事情とまではいえない。特殊車両(商業車・改造車など)の時価額の算定方法商業車や改造車などの特殊車両は、レッドブックに掲載がなく、中古車市場での流通も少ないことから、車両時価額の算定が困難です。商業車の場合商業車の車両時価額の算定については、次のような方法を採用した裁判例があります。タクシー現実の交換価値により近くするため、法定耐用年数ではなく、一般的な使用期間を考慮して減価償却を行い、これに特殊装備(料金メーター等)の価値を加算する方法。観光バス法定耐用年数ではなく、実際の使用可能期間を考慮して減価償却を行う方法。郵便物集配業務用車両車体本体の時価額に、特別仕様部分の残存価値を加算する方法。改造車の場合改造車の車両価格は、原則として、ベース車の車両価格に改造費用を含めて算定の基準とします。ただし、改造が、法令に抵触したり、車両の効用を低下させたりするなど、改造車の交換価値を減価させる場合は、ベース車の車両価格を減額するのが相当とされます。まとめ全損車両については買替えが認められ、買替差額と買替諸費用を損害賠償請求できます。買替差額は、事故時の車両時価額から売却価額を控除した額です。全損車両の損害額の算定においては、車両時価額をいくらと評価するかがポイントです。一般的には、レッドブックの価格を基礎に、インターネット上の中古車価格情報などを参考にして、車両時価額を算定します。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通関係訴訟の実務』商事法務 433~434ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 224~227ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規72~79ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 281~284ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 229~230ページ・『民事交通事故訴訟の実務』ぎょうせい 156~160ページ
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  • 買替諸費用
    全損車両の買替えで損害賠償請求できる諸費用
    被害車両が全損で買替えが相当となった場合は、車両の購入代金のほか、車両買替えに要する諸費用についても、損害賠償を受けられるものがあります。買替諸費用のうち、損害賠償を受けられるもの、受けられないものについて、具体的に見ていきましょう。損害賠償の対象となるか否かの判断の基準買替諸費用とは、買い替えた車両を使用できるようにするために必要な、検査・登録に要する費用や税金です。被害車両に関する諸費用(廃車費用のほか、既払いの自動車税や自賠責保険料など)についても、通常、買替諸費用に含めて考えます。具体的には、自動車税(環境性能割・種別割)、自動車重量税、消費税、リサイクル料金、自賠責保険料、検査・登録費用、車庫証明費用、廃車費用などです。損害賠償の対象と認められるかの判断のポイント買替諸費用が、損害賠償の対象と認められるか、すなわち、事故と相当因果関係のある損害として認められるかは、基本的に次の観点から判断します。損害賠償の対象となるかの判断基準車両を買い替えるために必要な費用か、保有するために必要な費用か。被害車両に関する既払い費用については、未経過分の還付制度があるか否か。車両を新たに取得するするために要する費用、事故車両を廃車にするために要する費用や無駄になる既払い費用は、損害として認められます。それに対し、車両を保有することにより発生する費用で、事故車両を廃車するときに還付制度があり、既払い費用のうち未経過分が返金されるものは、損害として認められません。損害賠償を受けられる買替諸費用の額損害として認められる買替諸費用であっても、具体的に損害賠償の対象として認められる額は、被害車両と同等の車両の取得に要する金額に限られます。東京地裁判決は、次のように判示しています。東京地裁判決・平成15年8月4日買替諸費用等とは、被害車両に代えて新車を購入した場合に要する諸費用ではなく、被害車両と同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得した場合に要する諸費用等をいう。例えば、被害者が新車に買い替えたとしても、車両価格はもちろん、買替諸費用についても、事故車両と同等の中古車を購入するのに要する費用相当分しか認められません。こんな裁判例があります。神戸地裁判決・平成25年7月25日新車への買替時に要する費用合計額が13万9,782円であると認定した上で、被害車両と同等の中古車相当分として約5割の7万円のみを損害賠償の対象として認めました。それでは、損害として認められる費用、認められない費用、それぞれ具体的に見ていきましょう。損害賠償の対象となる買替諸費用次の諸費用は、事故がなければ、被害者が負担することのなかったものであり、新たに車両を取得するのに要する費用なので、事故と相当因果関係のある損害として認められています。買替車両の自動車税環境性能割自動車税環境性能割は、自動車を取得したときに、自動車の燃費性能等に応じて課税される税金です。軽自動車税環境性能割も同様です。旧・自動車取得税が2019年10月1日より廃止になり、自動車税環境性能割が導入されました。自動車の取得時に課税されるので、損害として認められます。自動車税環境性能割(地方税法145条1号)自動車のエネルギー消費効率の基準エネルギー消費効率に対する達成の程度その他の環境への負荷の低減に資する程度に応じ、自動車に対して課する自動車税をいう。軽自動車税環境性能割(地方税法442条1号)三輪以上の軽自動車のエネルギー消費効率の基準エネルギー消費効率に対する達成の程度その他の環境への負荷の低減に資する程度に応じ、三輪以上の軽自動車に対して課する軽自動車税をいう。自動車税・軽自動車税の納入義務者については、次のように定めています。自動車税の納税義務者(地方税法146条1項)自動車税は、自動車に対し、当該自動車の取得者に環境性能割によって、当該自動車の所有者に種別割によって、それぞれ当該自動車の主たる定置場所在の道府県が課する。軽自動車税の納税義務者(地方税法443条1項)軽自動車税は、三輪以上の軽自動車に対し、当該三輪以上の軽自動車の取得者に環境性能割によって、軽自動車等に対し、当該軽自動車等の所有者に種別割によって、それぞれ当該三輪以上の軽自動車及び当該軽自動車等の主たる定置場所在の市町村が課する。買替車両の消費税一般的には、車両価格(車両時価額)に消費税も含めますが、車両価格に含まれていない場合は、事故車両と同程度の車両を取得した場合の消費税相当額が、損害として認められます。買替車両のリサイクル預託金(リサイクル料金)リサイクル預託金とは、自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)にもとづき、自動車購入時に納めるリサイクルのための費用です(自動車リサイクル法73条)。自動車を新車で購入する場合には、購入者は販売店経由で公益財団法人自動車リサイクル促進センターに、リサイクル預託金を収めることになります。中古車を購入する場合には、中古車販売店にリサイクル預託金相当額を支払います。所有車両を売却したり下取りに出したりした場合には、車両所有者は相手方からリサイクル預託金相当額を受領します。自動車重量税自動車重量税は、車両の重さに応じて課される税金です。車検のタイミングで、車検証の有効期間分をまとめて支払います。自動車重量税には未経過分の還付制度がありませんから、被害車両の自動車重量税の未経過分は、損害として認められます。自動車重量税は、自動車が車検を受けること等によって走行可能になるという法的地位あるいは利益を受けることに着目して課税される一種の権利創設税であるという考え方により、廃車した場合の還付制度は認められていません。ただし、「使用済自動車に係る自動車重量税の廃車還付制度」により還付された分は除きます。「使用済自動車に係る自動車重量税の廃車還付制度」とは?平成14年度税制改正において、使用済自動車の不法投棄防止・自動車リサイクルの促進の観点から、自動車リサイクル法の制定及び道路運送車両法の改正に伴い、廃車還付制度を創設し、平成17年1月から自動車リサイクル法の施行と同時にスタートしました。自動車リサイクル法に基づき使用済自動車が適正に解体され、解体を事由とする永久抹消登録申請または解体届出と同時に還付申請が行われた場合に、車検残存期間に対応する自動車重量税額が還付されます(租税特別措置法90条の15)。検査・登録法定費用と手続代行費用検査・登録の法定費用と、その手続きを業者に委託するときの代行費用(手数料)は、損害として認められます。次の費用が該当します。買替車両の検査・登録法定費用、車庫証明法定費用被害車両の廃車法定費用ディーラー(販売業者)の手続代行費用(検査・登録手続代行手数料、車庫証明手続代行手数料、納車手数料、廃車手数料、これらに対する消費税額)の相当額ディーラー(販売業者)の手続代行費用については、法定費用と異なり、本人自ら行い得る手続きを業者に代行してもらうことに対する報酬であるため、かつては事故との相当因果関係を否定する見解も有力でした。現在の裁判例では、車両を購入した際、これらをディーラーに依頼しているのが実情であることに照らし、相当な範囲で損害と認めるのが一般的です。損害賠償の対象とならない買替諸費用次の諸費用は、車両を取得するためでなく、保有するために要するものであり、廃車したときには未経過分について還付制度があること等から、損害として認められません。自動車税種別割・軽自動車税種別割自動車税種別割・軽自動車税種別割は、毎年4月1日現在の自動車の所有者に対し、用途や排気量に応じて課税されます。2019年10月1日より、自動車税から自動車税種別割に、軽自動車税から軽自動車税種別割に、名称が変わりました。自動車税種別割(地方税法145条2号)自動車の種別、用途、総排気量、最大積載量、乗車定員その他の諸元の区分に応じ、自動車に対して課する自動車税をいう。軽自動車税種別割(地方税法442条2号)軽自動車等の種別、用途、総排気量、定格出力その他の諸元の区分に応じ、軽自動車等に対して課する軽自動車税をいう。自動車税種別割自動車税種別割は、賦課期日(4月1日)後に新規登録または廃車した場合、月割課税となります(地方税法177条の10)。すなわち、賦課期日後に新規登録した場合は、登録月の翌月から年度末までの月数による課税となり、賦課期日後に廃車した場合は、抹消登録の翌月から年度末までの未経過分が還付されます。車両を売却し、所有者が変更となる場合は、4月1日現在の所有者にその年度分が全額課税され、未経過分の還付はありません。この場合は、車検付きの車両として、その分、車両価格が高めに評価されます。したがって、自動車税種別割は、自動車の買替えにともない、損害として認められません。軽自動車税種別割軽自動車税種別割は、自動車税種別割のような月割課税の制度はありません。4月1日現在の所有者にその年度分が全額課税されます。年度の途中で廃車や譲渡をした場合に、月割での税金の還付はありませんが、年度の途中で取得した場合は、翌年度4月1日現在で所有の時点まで税金はかからない仕組みです。このため、軽自動車税種別割は、廃車にともなう未経過分の還付はありませんが、その未経過分を損害とは認められません。自賠責保険料自賠責保険料は、車両購入時と車検時に、車検有効期間分をまとめて支払います。自動車を廃車し、抹消登録を受けた場合には、自賠責保険を解約できます(自賠法20条の2、同法施行規則5条の2第1号、自賠責保険普通保険約款10条1項)。自賠責保険を解約した場合には、保険料の返還を受けることができます(自賠責保険普通保険約款13条2項)。したがって、自賠責保険料は、車両買替えにともない、損害として認められません。車両保険料差額被害者が、自身の車両保険を利用すると保険料が上がることから、増額した保険料差額を損害として賠償請求が認められるか否かが問題となる場合があります。車両保険は、被害者のリスク回避のために締結されたもので、車両保険を利用するか否かは、被害者の自由な判断にゆだねられていることを理由に、事故と相当因果関係を否定され、保険料差額については損害として認められません。まとめ車両買替えのために必要となる諸費用のうち、自動車税環境性能割、検査登録費用、車庫証明費用、廃車費用などは、損害として認められます。他方、被害車両の自動車税種別割、自賠責保険料については、廃車により抹消登録や保険解約すれば、未経過分が還付または返金されるので、損害とは認められません。軽自動車税種別割については、未経過分の還付はありませんが、損害として認められません。自動車重量税は、自動車リサイクル法に定める要件を満たす場合には、廃車還付制度があるので損害として認められませんが、それ以外の場合に未経過分が損害として認められます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 231ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 433ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 196ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 344~345ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 248~249ページ・『交通事故事件の実務-裁判官の視点-』新日本法規 102~103ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 213~214ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 173~175ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 262~264ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 284~286ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 82~88ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 70~71ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 59~62ページ
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  • 修理工場
    交通事故被害車両の修理費の損害賠償額はどう決まる?
    交通事故による被害車両の修理費は、必要かつ相当な範囲で損害賠償を受けられます。必要かつ相当な修理費とは、どのような金額で、どうやって決まるのか、どう主張・立証すればよいのか、見ていきましょう。損害と認められる修理費被害車両の修理費については、必要かつ相当な修理費が損害として認められます。また、修理費の損害賠償額には上限があり、それは事故時の車両価額(車両時価額)です。修理費が車両時価額を超える場合は、車両時価額が損害賠償額となります。つまり、車両損害については、修理費か車両時価額のいずれか低い方の金額を賠償すればよいルールです。例えば、実際の修理費が100万円であったとしても、車両時価額が50万円であれば、損害賠償を受けられるのは50万円です。修理費が車両時価額を超える場合を「経済的全損」といいます。古い車両の場合は、車両時価額が低いため、修理費が全額賠償されないことがありますから注意が必要です。修理費の上限が車両時価額とされる理由とは?損害賠償は、不法行為により被害者が被った損害を加害者が填補し、不法行為がなかった状態に回復させることです。修理不能なら時価額の賠償、修理可能なら修理費の賠償が基本です。ただし、修理可能でも、時価額を超える修理費の支払は、かえって被害者を利得させる結果となり、損害賠償の趣旨にそぐわないと考えられるため、修理費の上限を車両時価額としています。未修理でも修理費を賠償請求できる未修理でも、事故によって現実に損傷を受けている以上、すでに損害は発生しているため、修理費相当額の請求が認められます(大阪地裁平成10年2月24日判決)。ただし、修理費見積額が適正か否かが争点となっている場合は要注意です。修理しないまま長期間経過すると、修理の必要性に疑念を抱かれ、修理をしていない合理的説明が必要となる場合があり得ます。車両修理費の認定方法任意保険の実務上、車両修理費の認定は、損害保険会社のアジャスターが事故車両を検分し、修理工場との間で修理内容を協議し、修理費について協定が結ばれることによって行われています。アジャスターとは?アジャスターとは、一般社団法人・日本損害保険協会にアジャスター登録された資格保有者です。損保会社から委嘱を受け、保険事故の損害調査業務(自動車の損害額や事故の原因・状況などの調査)を行います。修理費認定の流れ具体的な修理費認定の流れは、こうです。車両の所有者が、事故車両を修理工場に入庫し、所有者自身もしくは修理工場から、その旨を保険会社に連絡します。修理工場では、車両の損傷を確認し、修理の見積もりを出します。保険会社は、アジャスターに車両の損害調査を委託します。アジャスターが事故車両の損害調査を行い、修理工場との間で修理の範囲や方法、修理費について協議します。協議がまとまれば、保険会社と修理工場との間で修理費協定を結びます。こうして修理費協定を結ぶと、保険会社が修理費を認定したことになります。保険会社と修理工場との間で修理費協定が締結されていれば、あとから修理費が争いになることは特別な事情がない限りありません。修理費協定とは?保険会社と修理工場との修理費協定は、法律的な行為というよりも、保険会社が修理費用として支払い可能な保険金額を合意する事実的な行為と理解されています。実際の修理費と保険会社から支払われる保険金額に差が生じると、当事者が負担を余儀なくされます。修理費協定は、そんなリスクを回避し、修理費の損害賠償を円滑に進める機能があるのです。協定済にもかかわらず修理費が争いになるケースとは?修理費協定が成立すれば、その金額を前提とする限り、争いとなることはありません。ただし、協定に法的拘束力はなく、協定後に修理費の見積もりが変わると、争いとなることがあり得ます。例えば、次のような場合です。被害者が、「アジャスターの検分時に発見されなかった損傷が発見された」として、協定額を上回る修理費を請求する場合。保険会社が、「協定内容を検証した結果、事故と相当因果関係がないとの判断に至った」として、協定額を下回る修理費が相当と主張する場合。事前に保険会社に連絡せずに修理をしたり、協定が未成立のまま修理すると、「損傷の事故起因性」や「修理の必要性・相当性」が問題となり、修理費の全部または一部が認められない場合があります。修理費を請求するとき、何を主張・立証する?車両の修理費を請求しようとする場合は、請求する側が次のことを主張・立証する必要があります。車両が当該事故によって損傷した事実修理済または修理予定の事実修理費の額または見込額ただし、損傷の事故起因性や修理の必要性・相当性について争いがある場合は、これでは足りません。損傷の事故起因性が争われる場合損傷の事故起因性とは、その損傷が、当該事故によるものか、ということです。事故前や事故後に生じた損傷箇所まで便乗修理しようとしているのではないか、と争いになる場合があります。損傷の事故起因性が争われる場合は、事故直後の被害車両と加害車両の写真、両車両の本来の形状を示す資料、アジャスターの意見書などを参考に、損傷の個所・形状と事故態様(衝突の部位・角度、衝撃の程度など)との整合性をふまえ、その損傷が当該事故によるものと言えるかを判断します。修理の必要性・相当性が争われる場合修理の必要性・相当性とは、修理が必要か、修理の内容や金額が適正か、といういことです。例えば、次のような点につき、過剰修理ではないのか、と争いになることがあります。ドアの損傷につき、板金修理が相当か、それとも交換修理が必要か。部分塗装で足りるか、全面塗装が必要か。修理費が、過大に見積もられていないか。修理の必要性や相当性が争われるときは、修理内容の明細を明らかにするために修理見積書や修理明細書、事故車両の損傷状況と修理内容が分かる写真、アジャスターや修理業者の意見書、当該車両の修理マニュアルなどにもとづき、必要かつ相当な修理の範囲や金額が認定されます。まとめ交通事故による被害車両の修理費は、必要かつ相当な修理費が損害賠償額として認められます。ただし、修理費が事故車両の時価額を超える場合は、車両時価額が損害賠償額の上限となります。こういうケースを経済的全損といいます。車両を修理するときは、事前に保険会社に連絡をし、保険会社による損害調査を受け、保険会社と修理会社の間で協定をした上で修理すると、あとから修理費の支払いで揉める心配がありません。修理費協定が未成立のまま修理すると、損傷の事故起因性(便乗修理の問題)、修理の必要性・相当性(過剰修理の問題)について、争いとなることがあります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通関係訴訟の実務』商事法務 429~431ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 227~228ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 31~32ページ・『交通事故事件処理の道標』日本加除出版株式会社 216~221ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 164~168ページ・『交通事故損害主張のポイント』新日本法規 253~257ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 206~208ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 58~60ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 193ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 337ページ・『別冊判例タイムズ38』17ページ
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  • 車両修理部品交換
    車両修理で部品交換・全塗装が認められる場合とは?
    車両修理費の賠償は、必要かつ相当な範囲で認められ、基本的には板金修理費と部分塗装費用が相当とされます。部品交換や全面塗装の費用が認められるのは、合理的な理由があるときのみです。どんな場合に、部品交換や全面塗装の費用まで認められるのか、裁判例から見ていきましょう。板金修理が相当か、部品交換まで認められるか板金修理が相当か、部品交換まで認められるかは、板金修理が不可能ないし不適当かを考慮し、社会常識的に見た部品交換の必要性・相当性から判断されます。板金修理とは、車体の損傷部分の金属板を加工する修理方法です。板金修理が可能であれば、修理は損傷した車体の一部のみで済み、部品交換に要する費用は修理費として過分となります。部品交換の必要性・相当性について争われた裁判例には、次のようなものあります。板金修理が相当とした裁判例部品交換の必要性を否定し、板金修理が相当とした裁判例には、次のようなものがあります。被害車両に認められるべき修理の程度は、「社会常識的に見て、車両の異常が除去され、事故前の状態に復したと認められる程度」であるとし、部品交換の方が経済的である等の理由がない以上、板金修理によるべきとしました。(岡山地裁判決・平成6年9月6日)左フロントフェンダーと左フロントドアパネルの損傷につき、板金塗装による不具合の恐れを抽象的可能性に過ぎないとし、板金による修理に比して部品代が相当に高額であるとして、部品交換の必要性を認めませんでした。(東京地裁判決・平成27年2月23日)部品交換を認めたもの部品交換を認めた裁判例としては、次のようなものがあります。樹脂製のリヤバンパーについて、金属部品と異なり、板金修理・塗装は困難として、同部分の交換の相当性を認めました。(名古屋地裁判決・平成28年9月5日)交換が相当であるリヤバンパーの着脱に付随して、変形及び損傷が余儀なくされる部品の取替えの必要性を損害額の認定に際して考慮しました。(東京地裁判決・平成28年2月4日)ボディ交換の必要性の判断ボディ交換の必要性については、モノコック構造(エンジンやサスペンションが取り付けられている車台としてのフレーム部分が独立していない構造)の車両の損傷の場合に、争点となることがあります。モノコックボディというだけで、ボディ全部を交換する必要があるとは認められず、修理見積書・報告書・意見書等に基づいて、ボディ交換の必要性を判断します。(名古屋地裁判決・平成23年6月17日、名古屋地裁判決・平成12年2月28日、大阪地裁判決・平成6年9月20日)全塗装費用は、どんな場合に認められるか塗装は修理の一環として行われ、塗装費用は、修理費用と同様、必要かつ相当な範囲で認められます。基本的には、車両全体を全面塗装しなければならない合理的理由がない限り、部分塗装が相当とされます。全塗装が認められる場合とは?全塗装費用の請求が認められるのは、次の3つの場合です。特殊な塗装技術を施してあるため、部分塗装では他の部分との相違が明白となって美観を害する場合車両自体が高価なもので、車両の価値の大部分が外観にかかっている場合再塗装の範囲が広いため全塗装する場合と比較して費用に大きな差異を生じない場合これは、札幌地裁室蘭支部判決(昭和51年11月26日)が指摘したものです。この3つ場合に限り、全塗装費用が認められるとして、当該事件については全塗装費用を否認しました。全塗装費用を認めた裁判例全塗装費用が認められた裁判例として、次のものがあります。バッテリー液により汚損された事案につき、汚損された範囲が明確にできず、広範囲な部位にわたって飛散したため、車体の保護等のため全塗装が選択されたことに合理性があるとして、全塗装費用を損害として認めました。(東京地裁判決・平成元年7月11日)外観の損傷が著しく、全塗装しても部分塗装しても金額が変わらないことから、全塗装が認められました。(京都地裁判決・平成5年10月27日)ベンツの中でも特に高級車とされるメルセデスベンツ500SLのオープンカーにつき、特殊塗装のため、部分塗装では色合わせが困難であり、事故車であることが時とともに一目瞭然となり、車両価値がそれだけ低下するとして、全塗装の必要性を認めました。(神戸地裁判決・平成13年3月21日)部分塗装費用を損害賠償の対象とした裁判例部分塗装費用を損害賠償の対象とした裁判例として、次のものがあります。新車購入後約2年のキャデラックにつき、塗装部分と非塗装部分との差異は、外観に重大な影響を与えるものとは言い難く、光沢の差異は被害車両に既に色あせ等が生じていたためであること、全塗装費用は部分塗装費用の2倍以上に及ぶことから、全塗装では過大な費用をかけて原状回復以上の利益を得させることになるとして、部分塗装費用のみを損害賠償の対象としました。(東京地裁判決・平成7年2月14日)この東京地裁判決(平成7年2月14日)は、もう1つ別の注目すべき部分があります。全面塗装か部分塗装かについて、被害者と加害者側保険会社で話し合いがまとまらず、修理されないまま放置された結果、車両に劣化が生じて、新たな修理費用が必要となったとしても、部分塗装を前提とすべきである等の理由から、新たに必要となった修理費用は、本件事故と相当因果関係を有する損害とは言えないと判示しました。修理した後で、修理費が一部しか賠償されないといったリスクを避けるには、修理・塗装を実施する前に、保険会社と修理費協定しておくことが大切です。しかし、協議がまとまらず訴訟を提起するような場合は、修理しないまま放置しておくと、車両は劣化が進み、新たな修理費が必要となります。それについては損害賠償を受けられませんから、注意が必要です。全面塗装が否定されても評価損は認められる現在の塗装の精度は飛躍的に向上し、部分塗装であることによって修復歴が認められるほどの色むらが発生することはありませんが、色むらが不可避的に生じるような場合には、評価損を請求することになります。全面塗装は否定されても、評価損が認められる場合があります。この場合の評価損は、取引上の評価損でなく、技術上の評価損です。製造から40年経過のビンテージカーのフロント部分が損傷した事案につき、ボディ全体の交換と全塗装の費用を請求しましたが、板金修理・部分塗装が可能であるとして、板金修理と部分塗装の費用が事故と相当因果関係を有する損害であると認定。別途、評価損を認定しました。(大阪地裁判決・平成20年3月27日)相当な修理の観点から必要な塗装を立証全塗装費用についての賠償請求が認められるか否かの問題は、結局のところ、修理の相当性の問題につきます。したがって、相当な修理の範囲として、どのような塗装が必要とされるのか、という観点から検討する必要があります。その参考になるのが、東京高裁判決(平成26年1月29日)です。キャンディ・フレーク塗装が施されていた車両について、車両の塗色、塗装後の見え方をふまえて、全塗装までは不要とされた事例です。キャンディ・フレーク塗装とは、フレーク塗装(光を反射するフレークを塗料に混入して塗布)を下塗りした後に、キャンディ・カラー塗装(有色透明のキャンディ・カラー塗料とクリアコート剤とを混ぜたもの塗布)を施して、独特の光沢を出す塗装方法です。この裁判例は、結論としては、キャンディ・フレークという特殊な塗装方法でも、それだけでは全面塗装が必要とは認められなかったものの、損害箇所のみの部分塗装でなく、損傷個所の周辺部分までの塗装を認めました。損害箇所のみの部分塗装では足りないとしたのです。このように、損害箇所のみの部分塗装か、全面塗装か、の二者択一でなく、相当な修理がどの範囲かという観点で検討すれば、合理的な落としどころもあるのです。改造車の修理費金メッキを施したバンパーや、デコレーション「飾り」などは、走行等の車両の機能にプラスの影響を及ぼすものではなく、むしろ修理費を増大させ、無用に損害を拡大させているとして、修理費を減額した裁判例があります。まとめ車両修理費の賠償は、基本的に、板金修理と部分塗装の費用です。部品交換や全面塗装の費用が認められるのは、合理的な理由があるときのみです。全塗装費用が認められなくても、評価損が認められる場合があります。保険会社と修理費について合意できないからと、修理に着手せず放置していると、車両の劣化が進み、不要な修理費がかかってしまうことになりかねませんから、注意が必要です。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 195ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 200~205ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 32~33ページ、44~47ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務 58~63ページ、173~178ページ
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  • 改造車
    改造車の修理費・車両価格は改造費も含めて損害賠償の対象
    改造車の修理費や車両価格の算定においては、改造費も考慮され、違法な改造でなければ、原則として損害賠償の対象となります。ただし、改造していたことで損害が拡大した場合には、過失相殺があり得ます。車両価値を下げるような改造の場合は、ベース車両の価格を算定基準としたり、ベース車両の価格を減額したりします。改造費用も原則として損害賠償の対象改造車には、個人的な嗜好からドレスアップを施したものから、業務上の必要から改造されたもの(例えば、タクシー、冷凍車など)まで多種多様なものがあります。改造車とは、メーカーが販売している標準車をベースに、何らかの装備・装飾等について改造を施している車をいいます。改造車の修理費用は、原則として、改造に関する修理費も損害賠償の対象となります。車両価格も、ベース車の車両時価額に改造費を含めて算定されます。改造車の修理費の算定改造車の修理費の算定については、一般的に次のように考えられます。自動車に高額の設備・装備を付加するのは、基本的に所有者の自由ですから、原則として、改造に関する修理費は、民法416条の「通常生ずべき損害」として、事故との相当因果関係が認められます。ただし、次のような場合は例外です。改造が、法に抵触する場合改造内容に照らし、ことさらに損害を拡大するような場合こういう場合は、過失相殺により減額ないし免責を行うのが相当とされています。金メッキ・バンパー事件メルセデス・ベンツのバンパーに金メッキを施した車両が事故で損傷し、金メッキ・バンパーの修理代請求の可否が争われた事件です。第一審では、バンパーに金メッキをしても、バンパーの効用が増加することはなく、事故時には無用に損害を拡大させる結果となるとして、事故との相当因果関係を否定しました(東京地裁判決・平成2年2月8日)。控訴審では、事故との相当因果関係は認めた上で、金メッキによりバンパーとしての効用が増加するわけでなく、かえって損害を拡大させているため、損害拡大防止義務の視点から、過失相殺の法理を理由に金メッキ修理代金の50%減額して認容しました(東京高裁判決・平成2年8月27日)。改造した部分の修理費につき、事故との相当因果関係が認められ、損害賠償の対象となるとしても、本来の効用と違うことをし、それによって損害が拡大したのだから、その全額を相手に請求することはできないということです。改造車の車両価格の算定改造車の車両価格の算定についても、所有者の改造の自由を考慮し、原則として、ベース車の車両価格に改造費を含めて算定します。ただし、次のような場合は例外です。改造が、法に抵触する場合改造車の交換価値を増加させない場合、かえって交換価値を減価させる場合こういう場合は、ベース車の車両価格のみを算定基準とします。ベース車の価格を減額する場合もあります。車両価格は、原則として、同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価格によって定めますが、特段の事情がある場合は、減価償却の方法により算定することも認められます。改造車の車両価格の算定について、市場価格方式によることが困難な場合は、「特段の事情」に該当するとして、減価償却による算定方法が採られます。(東京地裁判決・平成29年10月3日)まとめ法令に違反するような改造でない限り、自動車を改造するのは所有者の自由です。したがって、改造車であっても、交通事故により損傷が発生したのであれば、改造部分を含めて修理費用の損害賠償が認められるのが原則です。ただし、改造が法令違反をしていたり、車両の効用や交換価値を低下させるなどの場合には、ベース車両価格を基準としたり、減額したりする場合があります。また、改造の内容、程度、損害額によっては、相当因果関係が否定されたり、車両の改造が損害を拡大させる要因となった場合は、過失相殺によって減額されたりします。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『民事交通事故訴訟の実務』ぎょうせい 152~153ページ・『交通事故の法律相談と事件処理』ぎょうせい 236~239ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 64~66ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 255~256ページ
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  • 評価損
    評価損とは?技術上の評価損と取引上の評価損の違い
    事故歴のある車両は、無事故車両に比べ、下取りや売却の際に評価が下がります。これが評価損です。ただし、車両の損害賠償において、常に評価損が損害として認められるわけではありません。どんな場合に評価損が認められるのか、評価損の判断基準や算定方法などについて、詳しく見ていきましょう。評価損とは?「評価損」とは、事故前の車両価格と修理後の車両価格の差額のことです。事故車両は、たとえ十分に修理しても、修理後の車両価格が事故前の車両価格を下回ります。中古車市場において、事故歴のある車両は無事故車よりも減価します。これが評価損です。格落ち損とも呼ばれます。評価損の発生原因なぜ、修理後の車両価格が事故前の価格より下落するのか? すなわち「評価損の発生原因」として、次の4つが挙げられます(参考:東京地裁判決・昭和61年4月25日)。修理技術上の限界から、顕在的に、自動車の性能・外観が低下すること。事故による衝撃のために車体各種部品に負担がかかり、修理後間もなくは不具合がなくても、経年的に不具合が発生しやすくなること。修理後も隠れた損傷があるかもしれないとの懸念が残ること。事故に遭ったということで縁起が悪いと嫌われる傾向にあること。①②は、使用価値の侵害に対応する「技術上の評価損」、③④は、交換価値の侵害に対応する「取引上の評価損」と、区別されます。取引上の評価損が「いわゆる評価損」です。技術上の評価損を含めて「広義の評価損」といいます。技術上の評価損、取引上の評価損、それぞれ詳しく見ていきましょう。技術上の評価損技術上の評価損とは、修理技術上の限界から機能や外観に障害が残り、車両の使用価値が低下する場合の損害です。例えば、事故前に比べて、エンジンの調子が悪い、ドアの開閉に難がある、塗装ムラが目立つ、などの場合です。客観的評価損ともいわれます。欠陥が残存している以上、車両価値は事故前と比べて低下していると考えられるため、技術上の評価損については、損害賠償の対象となることに、ほぼ争いはありません。だだし、修理して走行性能は回復したものの外観の欠陥が残ったという場合は、車種によって評価損が認められる場合と認められない場合があります。自家用車、タクシー、バスなど、美観が要求される車両の場合は、使用価値の低下が認められますが、トラックなど外観がそれほど重要でない車両の場合は、多少美観が損なわれても使用価値が低下するとはいえず、評価損が認められにくい傾向があります。車体の本質的構造部分に重大な損傷を受け、買替えをすることが社会通念上相当とされる場合は、全損となり、修理費と評価損の損害賠償でなく、買替差額の損害賠償となります。取引上の評価損取引上の評価損とは、機能や外観上の障害はないものの、事故歴があるという理由で車両の交換価値が下落する場合の損害です。事故車であることの買主の心理的な不安感にもとづくもので、主観的評価損ともいわれます。取引上の評価損については、実際に売却されない限り損害が顕在化しないことから、損害として認めるか否か、争いがあります。近時の裁判例は、取引上の評価損についても、損害として認める傾向にあります。取引上の評価損を否定する見解かつては、次のような理由から、取引上の評価損を否定する見解がありました。修理によって原状回復され欠陥が存在していない以上、客観的には価値の低下はない。このような損害は事故車両を売却して初めて現実化するものであるが、事故後も事故車両を売却せず使用している限り、損害として現実化していない。修理が可能であるから車両の買替えが認められないのに、買替えたと仮定して評価損を認めると、買替えを認められない場合に、買替えを認めたのと同一の利益を被害者に与えることになってしまう。取引上の評価損を肯定する見解中古車市場では、補修歴の表示義務があり、修理した車両は「事故歴車」「修復歴車」として販売されます。そのため、事故車両は、十分に修理しても、売却する場合や下取りに出す場合に、無事故者と比べ売却価格や下取り価格が低く評価されます。現在は、次のように考え、取引上の評価損を肯定するのが一般的です中古車市場において、事故歴や修理歴のある車両の価格が低下することは公知の事実。評価損も他の損害と同様、事故時に発生していると評価でき、事故車両を売却して価格の低下が現実化していることまでは要しない。こうして、取引上の評価損を肯定した上で、具体的な事情に応じて、評価損の有無・金額を判断しています。取引上の評価損を肯定する理由としては、次のような点が挙げられます。車両損害は、基本的には車両の事故前と事故後の価値(修理前の車両価値)の差額と考えられ、この基本的な考えからは取引上の評価損が認められることが合理的である。下取りに出さなければ現実に損害は発生しないというが、自動車の交換価値の低下を積極損害とみれば、むしろ事故時に交換価値の減少が発生したとみることができる。修理の後も隠れた損傷があるかもしれないとの懸念が残る。事故に遭ったことで縁起が悪いこと等の諸点から中古車市場の価格が事故に遭っていない車両よりも減価される。評価損には車両損害を機械的、算数的な計算ではカバーしきれない主観的・非合理的な部分を吸収して損害額を評価できて実際の解決に妥当である。(参考:『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 264ページ)評価損の判断基準と考慮要素評価損の有無や程度の判断においては、次の要素が考慮されます。市場流通性損傷の車両価値への影響車種走行距離初度登録からの期間損傷の部位・程度修理の内容・程度高級車、車両の希少性との関連性高級車は大衆車より、大衆車でも人気車は、評価損が認められやすい傾向にあります。希少車両も、評価損が認められやすい傾向にあります。初度登録から事故時までの時間的経過の長短「初度登録からの期間」「走行距離」については、次の期間あるいは距離を経過すると、評価損が認められにくくなる傾向があります。車種初度登録からの期間走行距離外国車国産人気車種5 年6 万㎞国産車3 年4 万㎞損傷、修理・修理費の程度一般的には、損傷が大きく修理費が大きいほど、評価損が発生しやすく認められやすいと考えられます。ただし、比較的小さな損傷や少ない修理費でも評価損の請求認められる場合があり、裁判例では、損傷や修理費の大小は、評価損の認定には、あまり影響を与えていない傾向にあります。事故減価額証明書一般財団法人日本自動車査定協会の事故減価額証明書は、1つの資料として考慮要素となり得ますが、減価額の査定基準が明確でないため、同証明書を提出しても、記載された減価額が認められるとは限りません。なお、事故減価額証明書の取得費用(査定料)は、同証明書が評価損の立証に不可欠なものではなく、事故によって通常支出が予定される費用とはいえないことから、事故と相当因果関係のある損害とは認められず、賠償請求は否定されています(京都地裁判決・平成4年11月24日)。評価損の算定方法評価損の算定方法については、次のような4つの方法があります。差額基準方式(減価方式)事故時の価格と修理後の価格との差額(減価)を評価損とする方法。事故直前の車両売却価格と修理後の車両売却価格との差額です。時価基準方式事故時の価格の一定割合を評価損とする方法。妥当な時価算出が難しく採用する裁判例は少ないのですが、初度登録から数ヵ月しか経過していない極端に新しい自動車の場合に採用されることがあるようです。総合勘案基準方式諸要素を斟酌し、金額で示す方法。被害車両の車種、初度登録からの経過年数、修理金額などを総合勘案して、金額で決定する方法です。金額は、裁判官の職権によって決定されます。修理費基準方式修理費(裁判所が認容した修理費)の一定割合を評価損とする方法。裁判例の多くは、この方式を採用しています。修理費の何%とするかは、バラつきがあり、修理費の10~30%台とするのが多いようです。一般に、損傷の程度が大きいほど修理費が高額になり、車両の価値の低下も大きくなります。このように修理費の金額と評価損は比例関係にあると考えられるので、実務における評価損の算定方法は、修理費の一定割合とする修理費基準方式が多いようです。外国車は修理費の20%以上、国産車は10%台での肯定例が多く、新車同然の車両や希少価値のある高級車などでは、修理費の50%以上の認定例もあります。評価損の請求権者評価損は、車両価値の下落を損害として捉え、自動車の所有権侵害に対する損害賠償請求ということになるので、被害車両の所有者が正当な請求権者となります。割賦販売の場合、評価損の請求権は、所有権留保者(販売店・信販会社)にあり、購入者(使用者)は、修理費を請求することはできても、評価損は請求できません。リース契約車両も同様に、所有権はリース会社にあるため、評価損の請求権は、リース会社に帰属します。ユーザーは、修理費は請求できても、評価損を請求することはできません。所有権留保車両やリース車両の損害賠償請求権は誰にある?まとめ事故車両を修理しても機能や外観に欠陥が残ったり、事故歴があることにより中古車取引市場での価格が低下したりすることがあります。このような事故による車両価値の低下を評価損といいます。示談交渉で、損害保険会社が評価損を認めることはなく、たいていは裁判で判断されます。裁判所が認定する修理費の何%かを評価損として認める裁判例が多いようです。また、裁判例の傾向としては、外国車または国産人気車種では、初度登録から5年(走行距離で6万㎞程度)、一般の国産車では、初度登録から3年(走行距離で4万㎞程度)を経過すると、評価損は認められにくくなります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通関係訴訟の実務』商事法務 442~445ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 48~50ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 177~179ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 89~93ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 197~200ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 194~195ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 265~269ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 237~240ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 211~212ページ、249~269ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 285~286ページ・『交通事故損害賠償保障法 第2版』弘文堂 340~341ページ・『別冊判例タイムズ38』17~18ページ
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  • 代車費用
    代車料の損害賠償請求が認められる車種・グレード・使用期間
    被害車両の修理や買替えの間、代車を使用する必要性・相当性が認められれば、代車費用(代車料、代車使用料)が損害として認められ、賠償請求できます。代車費用が事故と相当因果関係のある損害と認められる要件、代車費用の支払いが認められる代車の車種・グレード、使用期間について見ていきましょう。代車費用が損害と認められる要件とは?代車費用が、事故と相当因果関係のある損害と認められるためには、現実に代車を使用し、代車料を支出したこと代車を使用する必要性があったことが要件となります。代車使用の事実代車費用は、現実に代車を使用し、代車料を支出した場合に損害として認められます。代車を使用しなかった場合や、自己所有の他の自動車や家族の自動車を使用した場合など、代車料を支出しなかった場合には、代車料は認められません。また、未修理のまま将来の修理実施時に要する可能性があるとして代車費用を請求したり、修理期間中に有償代車使用実績がないにもかかわらず代車費用相当額を請求するなど、いわゆる「仮定的代車料」の請求は認められません。代車使用料の領収書が書証として提出されている場合は、基本的に損害として認められますが、代車使用料の見積書のみの場合は、現実に代車を利用した事実や代車使用料を支出した事実の立証が必要となります。なお、友人や懇意の業者から代車を借りた場合は、領収書だけ証拠提出しても、信用性に乏しいとされることがあります。請求書を発行してもらい、銀行送金とすることなども検討するとよいでしょう。代車使用の必要性代車を使用し、費用を支出していれば、その事実だけで損害として認められるわけではなく、代車を使用する必要性が要件となります。代車使用の必要性については、①使用目的や使用状況、②代替車両の有無、③代替交通機関の利用可能性から判断されます。事故車両の使用目的・使用状況から判断代車の必要性の判断は、事故車両の使用目的が、営業用か自家用かによって、扱いが異なります。営業用車両の場合営業用車両については、原則として代車の必要性が認められます。営業の範囲も広く解され、業務に直接車両を利用していた場合に限らず、顧客の接待や会社役員等の専用車として用いる場合も認められます。自家用車両の場合自家用車(マイカー)については、通勤や通学に利用されている場合は、代車の必要性が認められることが多く、通院や要介護者の送迎、買物など日常生活利用も、代車の必要性が認められる場合があります。趣味やレジャーの利用しかない場合は、代車の必要性は低いと考えられるため、利用の頻度、修理期間中の利用予定の存否、代替交通機関の利用可能性・容易性を考慮し、代車の必要性が判断されます。代替車両の有無から判断営業用、自家用を問わず、代車になり得る代替車両が存在し、その使用が可能である場合には、代車の必要性は認められません。営業用であれば遊休車、自家用であれば複数台所有している場合や同居家族の自動車などが、代替車両となり得ます。代車になり得る車両を保有している場合は、それが代車になり得ないことを主張・立証する必要があります。代車になり得るかどうかは実質的に判断されるので、被害車両の使用目的に当該他車両の性質が適合するかどうかについても具体的に主張すべきです。例えば、保有している別の車両について、「使用目的に照らして代車になり得ない」とした、次のような裁判例があります。京都地裁判決・平成14年8月29日顧客送迎用に使用していた被害車両(ロールス・ロイス)の他にメルセデス・ベンツを所有していたとしても、当該ベンツは、いわゆるスポーツ車であり、使用目的に照らして代車になり得るものとはいえないとして、代車の必要性を認めました。代替交通機関の利用可能性から判断代替交通機関(電車、バスなど)が存在するとしても、ただちに代車の必要性が否定されるものではありません。しかし、代車の使用目的・使用状況に照らし、代替交通機関の利便性(本数、目的地到着時刻との兼ね合い等)も考慮して、代替交通機関の利用が十分可能であり、利用するのが相当と認められる場合には、代車の必要性が否定されます。代替交通機関が存在する場合には、公共交通機関では十分でないことについて、具体的に主張・立証する必要があります。例えば、自動車を利用しないと時間がかかり大変不便であるとか、早朝・深夜の通勤が必要である等です。代車の必要性が否定されたとしても、代替公共交通機関の利用料金相当額が損害となり得ます。タクシーの利用については、必要性・相当性が肯定される場合(受傷のため公共交通機関の利用が困難など)には、その料金が損害として認められます。代車として認められる車種・グレード代車の車種・グレードについては、代車が比較的短期間の利用権の侵害に対する代替手段であることから、「被害車両と同一の車種である必要はなく、被害車両と相応する車種の代車料で足りる」とされています(別冊判タ38号18ページ)。そのため、被害車両が高級外車で、同一車種の代車を使用した場合でも、同等の高級外車を代車として使用する合理的必要性が認められる特別の事情がない限り、国産高級車の代車料を基準とする裁判例がほとんどです。被害車両が国産高級車の場合は、その車種の通常グレードの車両を借りるのに要する費用の限度で、代車料が認められます。なお、修理工場が代車を提供してくれる場合は、レンタカーを借りるよりも割安となることが多く、実際にかかった料金が代車使用料となります。代車費用が認められる代車使用期間代車費用が認められる代車の使用期間は、現実に修理・買替えに要した全期間ではなく、修理・買替えに要する相当期間とされています。修理・買替えに要する相当期間とは?修理・買替えに要する相当期間は、損傷の部位・程度や事故車両の車種などにより異なりますが、一般的な目安としては、修理の場合はおおむね2週間程度、買替の場合はおおむね1ヵ月程度といわれています。なお、修理・買替えに要する相当期間は、修理それ自体の期間や、買替えにおける契約締結から納車までの期間に限定されるものではなく、見積もり・交渉・検討の期間や部品調達期間なども含みます。交渉期間・検討期間修理であれ買替えであれ、見積もり、交渉、検討などの期間を経た上で、契約締結に至るのが普通ですから、こうした期間も、修理・買替えに要する相当期間として考慮されます。修理するか買い替えるかを検討する期間も認められます。加害者が対物保険を利用する場合は、修理業者と保険会社のアジャスターとの間で修理内容、修理方法について協議がなされ、修理費用について協定をした後に修理に着工するのが通常であるため、修理内容や修理費などの交渉期間中の代車使用も、相当な範囲で認められます。部品調達期間被害車両が外国車で、部品の調達に時間がかかるなどの理由により、修理期間が長期化した場合は、個別・具体的事情をふまえ、代車使用期間の延長が認められる場合があります。代車使用が長期化した場合過失割合や買替えの要否などについて被害者と加害者側保険会社の見解が対立するなどして、修理や買替えに着手しないまま時間が経過し、代車使用期間が長期化することがあります。代車使用の相当な期間を超える代車料については、長期化した原因が被害者側にあるのか加害者側にあるのかを判断して、原因を有する側の負担とされます。被害者側の原因で代車使用期間が長期化した場合修理や買替えは、本来、加害者側の意向にかかわらず、被害車両の所有者が自らの判断で実施できるものです。とはいえ、被害者にも信義則上、損害の拡大を防止する義務があり、速やかに修理や買替えに着手することが求められます。合理的理由を欠く被害者側の主張が原因で長期間の代車使用に至った場合は、一定期間以降の代車使用につき相当性が否定され、その間の代車料は被害者の負担となります。次のような裁判例があります。浦和地裁判決・平成3年10月29日修理協定成立までに時間を要した原因が、被害者が過大な修理というべき全塗装を要求していたことにあるとして、その期間に対する代車使用を否定しました。横浜地裁判決・平成22年12月27日修理可能な事案で新車買替えを要求するなどして修理着工の指示が遅れたことから、合理的な理由がない期間に対する代車使用料の祖払い義務はないとしました。保険会社側の原因で代車使用期間が長期化した場合加害者の示談交渉を代行する損保会社の担当者は、被害者との交渉において、法理論や実務上の通常の扱いを含め、合理的な損害賠償額の算定方法について被害者に十分な説明をし、被害者の理解を得て、迅速に解決に至るよう真摯な努力を尽くすことが求められます。保険会社側がその努力を尽くさなかったために、被害者が判断に迷い、態度を決めかねている間に時間が経過し、代車使用期間が長期化したと認められる場合は、その費用を加害者側保険会社が負担することになります。例えば、被害者側に落ち度のない追突事故において、加害者側保険会社としては、損害賠償額の算定方法にかかる説明と算定根拠の提示を行って被害者の理解を得ることの必要性は高いとし、次のように判決した裁判例があります。東京地裁判決・平成13年12月26日被害者が納得するための説明、交渉等に時間を要し、その結果、修理または買替手続に着手する以前の交渉等に費やされた期間中に代車料が生じたとしても、それが、加害者(損害保険会社の担当者)の具体的な説明内容や被害者との交渉経過から見て、通常の被害者が納得して修理または買替手続に着手するに足りる合理的な期間内の代車料にとどまる限り、加害者(損害保険会社)はその代車料についても当然に負担する責任を負わなければならない。代車の経費代車使用中のガソリン代やエンジンオイル代などの経費は、自分の車を使用していても要するものですから、損害とはいえず、加害者側に支払いを求めることはできません。まとめ被害車両を修理または買替えする間に代車を使用する場合、代車使用の必要性が認められれば、代車使用料を損害賠償請求できます。ただし、被害車両が高級車だからといって、同じ高級車を代車として借り受ける費用が認められるわけではありません。また、代車を借りている期間すべてが認められるわけではなく、修理や買替えに要する相当期間が基準となります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通関係訴訟の実務』商事法務 435~439ページ・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 232~234ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 293~299ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 214~215ページ、240~246ページ・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 246~247ページ・『別冊凡例タイムズ38』18ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 287~288ページ・『交通事故と保険の基礎知識』自由国民社 192ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 200~202ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 180~183ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 270~276ページ・『交通事故損害賠償保障法 第2版』弘文堂 342~343ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 55~57ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 50~52ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 96~99ページ
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  • 休車損害
    休車損とは?事故による休車損害が認められる要件と算定方法
    貨物自動車やタクシーなど営業用の自動車が事故により損傷し、車両の修理や買替えのために営業ができず損失が生じた場合、休車損(休車損害)が認められます。休車損が認められるための具体的な要件、休車損の算定方法について、詳しく見ていきましょう。休車損(休車損害)とは?休車損(休車損害)とは、事故により営業用車両が損傷し、修理や買替えのために使用不能となった期間、車両を運行していれば得られたであろう営業利益の損失のことです。その性質上、営業用車両についてのみ認められます。事故により減少した営業収益であり、物損における消極損害(逸失利益)の性格を有する損害です。基本的な考え方は、人損における休業損害と同じです。休車損は、交通事故によって通常生ずべき損害と解され(最高裁判決・昭和33年7月17日)、要件を満たせば損害賠償を受けられます。休車損は、車両を使えなかったことにより生じる損害ですから、代車を使用することができ、代車料が認められる場合には、休車損の請求はできません。休車損が認められるための要件休車損が認められるには、次のような要件を満たすことが必要です。その立証責任は、被害者の側にあります。被害車両が営業用車両であり、代車の調達が困難であること休車損は、車両を運行していれば得られたであろう営業利益の損失ですから、その車両が営業に用いられ、利益を上げていたことが必要です。また、代車を利用できる場合には、代車料を請求すればよいので、休車損が問題となるのは、代車の調達が困難である場合ということになります。つまり、休車損は、通常は緑ナンバーの営業車両(タクシー、ハイヤー、路線バス、観光バス、営業用貨物トラックなど)で発生します。緑ナンバー車両による運送業は、許認可の関係があり、レンタカー等を使用して行うわけにいきません。休車損とは、白ナンバー車両の代車料に代わって、緑ナンバー車両の稼働できない期間の営業利益を補償するものです。ただし、白ナンバー車両は休車損を請求できない、というわけではありません。例えば、冷蔵車など設備のある特殊な車両は、代車を調達することが困難ですから、白ナンバー車両であっても、休車損が認められる場合があります。また、営業免許を有していない白ナンバーの営業車であっても、行政法規違反による制裁の問題と私法上の損害賠償の問題は別ですから、休車損害の賠償請求は認められる場合があります(最高裁判決・昭和39年10月29日)。利用可能な遊休車が存在しないこと利用可能な遊休車(代替車両・予備車両)を保有していれば、事故車両の代わりに遊休車を稼働させることで、休車損の発生を回避できます。したがって、利用可能な遊休車が存在する場合は、休車損が否定されます。被害者も、信義則上、損害の拡大を防止する義務を負っているので、遊休車があればそれを利用して、損害の拡大を防止することが求められるのです。ただし、遊休車を保有していれば、休車損が否定されるわけではありません。ポイントは、保有している遊休車が、事故車の代わりに利用できる状態にあるか否かです。遊休車を保有していても、遊休車の活用が容易でない場合にまで、それを強いることは相当ではない、とされています。例えば、その車両が車検や定期点検中である場合や、遠隔地の営業所にあり回送に時間や費用がかかる場合、運転者の手配が困難である場合などです。利用可能な遊休車が存在しないことの立証利用可能な遊休車が存在しないことの立証責任は、休車損の発生を主張する被害者側にあります。立証方法は、保有車の実働率、保有台数と運転手の数、運転手の勤務体制、営業所の配置・配車数、仕事の受注体制などから、被害者が保有車をできる限り稼働させていたことを証明すれば足りるとされています。路線バスのように、法令上、予備車両の保有が事業許可の条件となっている場合は、予備車両によって代替することが想定されているので、特段の事情がない限り、休車損の請求は認められません。営業収入の減少休車損の賠償は、事故車両の休車にともなう営業利益の損失を補填するものですから、被害者の営業収入の減少を要件とする場合があります。ただし、現在の裁判実務では、営業収入の減少がない事実のみを理由に、休車損の発生を否定することはありません。営業収入は、事故車の稼働状況だけでなく、被害者の営業努力や景況などによっても左右されるからです。例えば、営業用普通貨物自動車の事故につき、被害者は事故前と同程度の売上を確保していたが、それは被害者の営業努力による面も大きいとして、休車損を認めた裁判例があります(名古屋地裁判決・平成15年5月16日)。このようなことから、単に営業収入減少の有無のみならず、その原因にも着目して判断しているのです。営業収入の減少は、休車損を認定する際に考慮はされますが、決定的な要素とはなりません。休車損の算定方法休車損は、被害車両によって得られるであろう 1日あたりの営業利益に、休車日数を乗じて算定されます。1日あたりの営業利益は、被害車両が稼働した場合の1日あたりの営業収入(売上高)から、稼働に必要とされる経費を控除して算出する方法が一般的です。つまり、休車損は、次の計算式で算定されます。休車損 =(1日あたりの営業収入-経費)× 休車日数なお、営業利益は、経費を控除する方法以外にも、営業収入に利益率を乗じて算出する方法もあります。事故車の1日あたりの営業収入の認定方法事故車両の1日あたりの営業収入は、人損における休業損害の場合と同様に考え、事故直前の3ヵ月間の実績にもとづき算出します。ただし、季節により売上高に変動がある業種等については、事故前年の1年間の売上高を見た上で適宜修正する方法をとるなど、別途考慮されます。事故車両が大型観光バスであった事案について、休車時期の前年同期の稼働実績にもとづき、被害車両の事故前の売上を算定した例もあります(京都地裁判決・平成12年11月9日)。営業収入から控除する経費営業収入から控除する経費とは、事故車両を運行できなかったことで支出を免れた経費です。つまり、燃料費、修繕費、有料道路通行料など、車両の実働率に応じて発生額が比例的に増減する変動経費です。車両の減価償却費、自動車保険料、駐車場使用料などの固定経費は、休車期間中も支出を免れないものですから、控除しません。人件費は、乗務手当など支出を免れる部分(変動経費的な部分)は控除しますが、固定給など休車期間中も支出を免れない部分(固定経費的な部分)は控除しません。休車日数休車損が認められる休車期間は、事故車を修理するのに相当な期間、または、買替えに要する相当な期間です。休車期間(休車日数)の相当性は、基本的に代車の使用期間と同様の考え方です。売上高・経費の立証資料売上高や経費の立証資料として望ましいのは、損益明細表や輸送実績報告書です。これらは、監督官庁に提出されるものだけに客観性も担保されているといえるからです。個人の場合も同様に、確定申告書、納税証明書等の公的書類による証明が求められます。庸車損害貨物運送事業者は、原則として緑ナンバー車両を使用する必要があるため、代車手配が困難ないし不可能な場合が多く、事故車両が担っていた業務を外部業者に委託する場合があります。これを庸車といいます。庸車利用料(外注費)が発生した場合、庸車料の全額が損害とはなりません。庸車料から、庸車を利用することにより支出を免れた事故車両にかかる変動経費を控除した額が損害となります。まとめ営業用車両が事故により運行できない期間、代替車両やレンタカーの利用などができなければ、営業利益が喪失します。この損害を休車損(休車損害)といいます。休車損は、事故車両の1日あたりの営業収益と休車期間により算出します。休車損は、代車利用が困難な緑ナンバー車両の場合に発生し、代車料が請求できる場合には、休車損は請求できません。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通損害関係訴訟 補訂版』青林書院 234~237ページ・『交通関係訴訟の実務』商事法務 439~442ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 100~111ページ・『改訂版 交通事故実務マニュアル』ぎょうせい 202~204ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 184~186ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 52~54ページ・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 343~344ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 290~291ページ・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 215~216ページ、234~239ページ・『事例にみる交通事故損害主張のポイント』新日本法規 277~280ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 300~304ページ・『交通賠償実務の最前線』ぎょうせい 212~216ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 57~58ページ・「東京地裁民事第27部における民事交通訴訟の実務について」別冊凡例タイムズ38号18ページ
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  • レッカー車
    事故車両のレッカー代、保管料、査定料・修理見積費用の損害賠償請求
    車両損害については、修理費や買替費用のほか、事故車両のレッカー代や保管料、査定料、修理見積費用なども損害として認められます。事故車両の引揚費用・レッカー代被害車両を事故現場から修理工場へ移動させるための引揚費用・レッカー代は、必要かつ相当な実費が損害として認められます。通常は、事故現場から直接修理工場へ 1回のレッカー移動で済みますが、諸般の事情により 2回のレッカー移動が不可避な場合もあります。この場合、2回のレッカー移動の必要性・相当性が認められれば、2回のレッカー移動費が損害として認められます。例えば、搬入する修理工場が休みであったり、修理工場内に保管スペースがない場合には、いったん事故現場から保管できる場所へ移動し、再度、修理工場へ移動させる必要性が認められます。ただし、このとき、保管場所として高額な貸駐車場に運び込んだような場合には、相当性は認められません。必要性・相当性の両方の立証が必要です。2回のクレーン移動費用が認められた裁判例(大阪地裁判決・平成13年12月19日)事故が起きたのが深夜であったことから、クレーン会社に事故現場から同社へ引き揚げてもらい、その後、同社から修理工場へ移動したケースです。自走不能のため、クレーンによる移動が必要だったこと。深夜の事故だったので、一旦事故現場からクレーン会社に移動させて保管する必要があったこと。クレーン会社が自社に一旦移動たことにつき、保管場所として適当であったこと。こうしたことから、裁判では、2度にわたる引揚の必要性・相当性が認められました。保管料保管料が発生するのは、2つのケースがあります。修理か買替かを検討するのに要する期間の保管料、証拠として保管する場合の保管料です。修理か買替か検討する期間の保管料は認められる経済的全損の場合、修理するか買い替えるか、見積もりを出してもらって検討する期間が必要です。修理か廃車かを判断するのに必要な相当期間の保管料は、事故と相当因果関係のある損害として認められます。証拠として保管するための保管料は認められない他方、事故態様に争いがある場合、車両自体が有力な証拠となりますが、通常は、車両の破損状態は車両の写真等によって確認することが可能です。そのため、車両自体が事案解明に不可欠であるような特段の事情がない限り、事故車両を証拠として保管するための保管料は、事故と相当因果関係のある損害とは認められません。被害車両の時価査定料・修理見積費用被害車両の時価額の査定や修理の見積もりは、修理が相当か、廃車・買替えが相当か、を判断するために必要ですから、損害として認められます。次のような裁判例があります。大阪地裁判決・平成16年2月13日加害者側で被害車両の修理見積書を作成したからといって、被害者側が修理見積をする必要はないということはできないとして、修理見積費用請求を認めました。横浜地裁判決・平成29年2月6日救急車について、修理のためには詳細な見積書を作成しなければならないとして、45万円という高額な修理見積費用の請求を認めました。その他の雑費その他にも、次のものが裁判で認められています。買替車両の整備費用全損となった被害車両の代替車両購入にともなう諸経費として、整備費用、エンジン調整費用、看板文字代が、損害として認められました。(名古屋地裁判決・平成6年11月30日)装置載せ替え費用業務上、装置を載せ替える必要があるとして、買い替えた新車に荷台とクレーンの載せ替え費用が損害として認められました。(東京地裁判決・平成11年2月5日)器機移設費用被害車両に搭載していたカーオーディオ、カーナビゲーション等の買替車両への移設費用が損害として認められました。(横浜地裁判決・平成24年6月21日)交通事故証明書の交付手数料被害者側が自費で交通事故証明書を入手した場合、その交付手数料が損害賠償の対象となります。(東京地裁判決・平成14年8月30日)まとめ車両損害に関わる雑費として、車両引揚費用・レッカー代、車両保管料、修理見積費用などが、事故と相当因果関係のある損害と認められ、損害賠償の対象となります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 217ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 187ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 54~55ページ、66~69ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 112~113ページ
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  • カーナビ
    カーナビ、オーディオ、ドライブレコーダー、ETCの損害賠償請求
    カーナビゲーション、カーオーディオ、ドライブレコーダー、ETC車載器など、被害車両の付属品・装備品が交通事故で損傷した場合、修理可能であれば、修理費を時価額の範囲で損害賠償請求できます。修理不能で新しいものに取替えた場合には、時価相当額額の損害賠償を受けられます。車両が全損となった場合、標準装備品なら通常は車両価格に組み込まれていますが、後付けしたものであれば、その時価額を車両価格に加算して損害賠償請求できます。車両装備品・付属機器の損害算定最近の自動車には、カーオーディオ機器、ETC車載器、カーナビゲーション、ドライブレコーダーなどが搭載されていることが多くあります。したがって、事故が発生したら、こうした付属品も車両とともに損傷することは通常予見可能であり、付属品の損害も事故と相当因果関係のある損害として認められます。修理が可能なときは修理費を、修理不能の場合は時価額を、損害賠償請求できます。車両損害と同じく損害賠償額の上限は時価額であり、修理不能のため買替えたとしても、買替えに要した金額が、そのまま損害額と認められるわけではありません。標準装備か? 後付けか?車両が全損の場合、標準装備品であれば、通常、車両価格に装備品の価格も組み込まれていますが、念のため確認しておくべきでしょう。標準装備でない場合には、その付属品の時価額を別途算定し、車両本体価格に加算して請求することができます。東京高裁判決(平成28年11月10日)被害車両の事故前の価格を算定するにあたり、当該車両に設置された付属機器の価格が本体価格で評価されていないときは、本体価格に当該付属機器の価格を加えた合計額をもって被害車両の価格とすべきである。それでは、車両付属品の時価額は、どのように算定するのでしょうか?車両付属品の時価額の算定方法車両本体の時価額は、中古車流通市場が確立されていますから、同種同等の中古車価格をもって時価額を証明できます。しかし、車両付属品については、自動車のように中古品の流通市場が確立されているとはいえませんから、同等の中古品の価格をもって時価額を証明することは困難です。そのため、購入価格から減価償却の方法により減額して、時価額を算定する方法によるのが一般的です。付属品の購入金額や購入時期が、領収書等を保管していないため明確でない場合は、被害者の記憶にもとづいて、だいたいの時期や金額を申告することになります。もっとも、申告した額がそのまま認められるわけではなく、同種の商品の新品価格を示したり、クレジットカードの購入履歴を確認するなどして、何らかの客観的な証拠を示し、証明することも必要でしょう。車両付属品の損害賠償を認めた裁判例車両付属品の損傷の損害賠償を認めた裁判例として、次のようなものがあります。大阪地裁判決(平成26年1月21日)自動車の購入から約1年経過したころに事故が発生し、車両が全損となった事案です。車両購入時の取り付けたメーカーオプション(タイヤ、セーフティシステム、クリアランスソナー、ムーンルーフ)について、いずれも車両の価値向上に資するオプションで、かつ容易に他の車両に転用が効くものではないことを理由に、その価格を車両時価額に加算して計算すべきとしました。車両本体価格が事故時に新品の8割程度の価格になっていたことから、オプションの新品価格(32万5,500円)の8割(26万400円)を車両価格に加算しました。東京地裁判決(平成28年6月17日)高級品のアルミホイール4本等が取り付けられていた車両が事故により損傷した事案です。事故前の被害車両価格を算定するにあたっては、純正品の価格(4本分18万400円)と高級品の価格(4本分55万6,000円)との差額を考慮するのが相当であるとしつつ、高級品の価格は新品の価格であるから上記差額をそのまま加算することはできないとして、被害車両の初年度登録年月日や事故発生日等を考慮して、上記差額の6割(22万5,360円を車両本体価格に加算しました。名古屋地裁判決(平成29年3月29日)交通事故により損傷した車両にタイヤホイール、エアクリーナー、ハードトップ(屋根)、マニホールド、マフラー、スポイラー等の部品やスピードREU(コンピュータシステム)の変更が行われていた事案です。被害車両はロードレース用の競技車両であり、取付部品は違法性がないから、取付部品は付加価値として評価するのが相当であるとしつつ、各部品の取り付けから約1年から2年半程度経過しており、一定程度消耗していることが推測されること等を考慮して、取付費用等の合計額の70%を事故と相当因果関係のある損害と認めました。事故と付属品損傷の因果関係が争われることも事故で車両が損傷した場合、車両装備品・付属品も損傷し得ることは、通常予見できることですから、車両本体とともに損害賠償の対象となり得ます。ただし、衝突の箇所や衝撃の程度によっては、装備品・付属品の損傷と事故との相当因果関係が争いとなることがあります。相当因果関係を認めなかった事例として、次のような裁判例があります。横浜地裁判決(平成30年5月18日)加害車両が被害車両の後部に追突した事故であり、車両の損傷状況からうかがわれる事故の衝撃の大きさを考慮しても、事故により、被害車両の前方に搭載された搭載品(カーナビやETC車載器など)が損傷することが当然に想定されるとはいえず、搭載品が損傷したことを示す証拠もないことから、事故によりこれらの搭載品が損傷したことの事実を認めることはできない。まとめカーナビゲーション、カーオーディオ、ドライブレコーダー、ETC車載器など、被害車両の付属品の損害については、損害算定の際、被害車両本体の価格に含まれていない場合には、付属品の価格を車両価格に加算することができます。ただし、その価額は、購入時から事故発生時までの経過期間等を考慮し、購入価格から減額されます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 217~218ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 114~117ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 72~73ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 189~190ページ
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  • 事故でペットが怪我
    交通事故で死亡・負傷したペットの損害賠償請求・治療費・慰謝料
    ペットは、法的には「物」ですから、交通事故では、物損として扱われます。しかし、ペットには生命があり、家族の一員として大切にされているため、一般的な物損とは多少異なる扱いがされる部分もあります。交通事故でペットが死傷したときの損害賠償請求について、詳しく見ていきましょう。交通事故によるペットの死傷は物損交通事故によるペットの損害を考える場合、ペットは、民法上「動産」に分類され、車両の損害と同じ物損(財産権の侵害に係る損害)として扱われます。とはいえ、ペットには生命があり、単なる「物」とは異なります。しかも、飼主は、飼っているペットを家族の一員であるかのように大切にしているものです。また、動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)では、「動物が命あるものであることにかんがみ、・・・適正に取り扱うようにしなければならない」と定めています。動物愛護法 2条1項動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。そのため現在では、ペットを単なる「物」として扱うことは相当ではない、という意識の高まりを背景に、ペットの死傷に対し、一般の物損とは異なる損害賠償が認められる場合があるのです。ペットの死傷に対する損害賠償について、車両損害の場合と比較しながら見ていきます。なお、ペットの死傷はあくまでも物損です。飼主の方にとっては、表現が気になる部分もあるかもしれませんが、ご理解ください。ペットが死亡したときの損害賠償請求まず、ペットが交通事故で死亡した場合の損害賠償請求についてです。ペットの死亡は、車両損害でいえば物理的全損に相当します。自動車の場合は、被害車両が全損と判断されると、買替えが認められ、被害車両の時価相当額(同等車両の再調達価格)が損害賠償額となります。ここでは、買替差額や買替諸費用など細かい部分は省略します。ペットが死亡した場合も同様に、事故当時のペットの時価相当額(同種同等の動物の再購入費)が、損害賠償の対象となります。ここで問題となるのが、時価額(被害物件の事故当時の価格)の算定方法です。自動車であれば、被害車両の時価額を中古車市場における同等車両の販売価格をもとに算定しますが、ペットの場合には、中古車市場に相当するような流通市場がありません。ペットの時価額は、どう算定するか?ペットの価格を把握できるのは、ペットショップにおける同種類の動物の価格ぐらいです。ペットショップで販売しているのは、生まれて間もない子犬や子猫。自動車でいえば、新車に相当します。ペットの時価額を算定しようにも、飼育して数年経過したペットを売買する市場がないため、市場価格を把握することができないのです。そもそも、ペットには生命がありますから、飼っている途中でいらなくなったからと売ることは許されません。そこで、ペットの時価額の算定には、次のような方法がとられます。ペットの購入価格や年齢を考慮して時価額を算定ペットの時価額(財産的価値)は、通常、ペットの購入価格や年齢を考慮して判断します。具体的には、購入価格を平均寿命で割り、平均寿命から死亡時の年齢を差し引いた年数を乗じて求めるのが一般的です。交通事故による事案ではありませんが、例えば、こんな裁判例があります。名古屋地裁判決・平成18年3月15日ミニチュア・ダックス(オス・5歳)が他の犬に噛み殺された事故で、死亡時の流通価格を、購入金額(15万3,157円)の約3分の1の金額(5万円)と算定しました。ペットの時価額は低いペットの事故当時の価格(財産的価値)を把握できたとしても、その時価額は、飼い始めたときと比較して、著しく低廉化しているのが普通です。そのため、商業用の動物は別として、ペットそのものの財産的価値の損害賠償を請求し、認容された例は少ないようです。特殊なケースとして、例えば、品評会での入賞実績がペットの財産的価値に影響を与えたり、ブリーディングに用いられる犬や猫の場合は、交配料という経済的利益が生じるため、死亡時の時価額が購入価格よりも高くなることがあります。ペットの財産的価値(時価額)は低く評価されますが、その代わり、飼主の精神的苦痛に対して慰謝料が認められることがあります。商業用動物の損害賠償商業用の動物が死亡した場合は、その財産的価値が損害賠償において考慮される余地があります。例えば、こんな裁判例があります。札幌高裁判決・平成19年3月9日地方競馬の競走馬が死亡した事案において、休業損害として178万6,120円、逸失利益として784万4,382円の賠償が認容されました。被害動物の社会的価値から時価額を算定した例死亡した盲導犬の財産的価値(時価額)について、購入金額や市場価格を基礎とせず、盲導犬としての社会的価値を評価し、盲導犬育成に要した費用を基礎に財産的価値を算定した裁判例があります。名古屋地裁判決(平成22年3月5日)判決は、盲導犬の死亡自体による損害に関し、当該盲導犬の死亡時における客観的価値によるべきだとした上で、盲導犬の社会的価値を評価し、その能力を身に付けるために要した費用(当該盲導犬の育成に要した費用)を基礎に考えるのが相当としました。個々の盲導犬の客観的価値の算定においては、基本的には、当該盲導犬の活動期間を10年とみた場合の残余活動期間の割合に応じて、当該盲導犬の育成費用を減じるのが相当というべきであり、盲導犬としての経験を積み重ねることによって、一般的、客観的にも盲導犬としての技能が貸与時より向上したと評価し得る場合には、この点をも考慮して算定するのが相当としました。具体的な算定方法は、こうです。盲導犬Aの育成に要した費用は、盲導犬Aが訓練を受けた年度に支出した育成費用の合計を、同年度に育成されていた盲導犬の頭数(10頭)で割った 453万1,037円と判断。その上で、盲導犬Aについては、残余活動期間約5.13年を基礎に、一般的、客観的な技能の向上も考慮して 260万円と算定しました。盲導犬のように専門的な訓練を受け、特別な技能を取得し、活躍している動物は、他にも警察犬、聴導犬、介助犬、セラピー犬、災害救助犬など、たくさんいます。こうした動物については、社会的価値を有していることから、比較的高い財産的価値が認められる可能性があります。ペットの治療費の損害賠償請求次に、交通事故でペットが怪我をして、治療費や入院費を損害賠償請求する場合です。ペットの治療費・入院費は、自動車でいえば修理費に相当します。ペットの治療費には、経済的全損の考え方を形式的に適用しないペットの治療費の損害賠償で大事なのは、ペットの治療費には、経済的全損の考え方を形式的に適用しない、ということです。物損には、経済的全損の考え方があります。自動車の場合、修理費が車両時価額を超えると経済的全損と判断され、買替えが認められますが、買替えをしても修理をしても、車両時価額が損害賠償額の上限となります。ペットの治療費は、経済的全損の考え方を形式的に適用せず、ペットの時価額を超える金額が損害として認められる場合があります。ペットの治療費に経済的全損の考え方を適用すると?ペットの治療費に経済的全損の考え方を適用すると、治療費の上限が、ペットの時価相当額となります。ペットの治療費は、公的な医療保険がありませんから高額となります。その一方で、ペットの時価額は低廉です。例えば、治療費が30万円かかっても、ペットの時価額が5万円であれば、損害賠償額は5万円です。ペットの治療費に経済的全損の考え方を形式的に適用すると、十分な損害賠償を受けられなくなるのです。ペットの時価額を超える治療費を認めた裁判例ペットには生命があり、飼主としても可能な限り生命を守りたいと思うものです。治療費が時価額を超えるからといって、必要な治療を断り、別の動物を購入するようなことはしないでしょう。ペットを単なる「物」とみて、物損の損害賠償の考え方を形式的に適用することは相当ではないとして、時価相当額を超える治療費を認める裁判例も出てきています。名古屋高裁判決(平成20年9月30日)愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については、生命を持つ動物の性質上、必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上、相当と認められる限度において、不法行為との間に因果関係のある損害に当たるものと解するのが相当である。この裁判例は、後方から追突された被害車両に乗せていたペットの犬(ラブラドールレトリバー、購入価格6万5,000円)が、第二腰椎圧迫骨折の傷害を被り、後肢麻痺、排尿障害の症状が残った事案です。裁判所は、治療費11万1,500円、車いす製作料2万5,000円、合計13万6,500円を損害と認めるとともに、飼主夫婦に20万円ずつ計40万円の慰謝料も認めました。この名古屋高裁判決には、5つのポイントがあります。被害犬の時価額を超える治療費を認めました。「当面の治療費や、その生命の確保・維持に必要不可欠な費用」として、被害犬が入院し、症状が安定して光線治療を受けるようになるまでの間の治療費が該当すると具体的な判断を示しました。被害犬の後肢麻痺などの症状に鑑み、車いす制作費についても必要性を認めました。飼主への慰謝料を認めました。犬用シートベルトなど動物の体を固定するための装置を装着していなかったことにつき、過失相殺を認定しました。このように、ペットの治療費は、「当面の治療や生命の確保・維持に必要不可欠なもの」については、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上、相当と認める限度において、事故との相当因果関係のある損害として認められることがあります。ペットの死傷に関する慰謝料物損については、財産上の損害を賠償することにより、精神的苦痛も慰謝されると解され、原則として慰謝料は認められません。物損事故の慰謝料請求はこちらをご覧ください。ペットの死傷は物損ですから、ペットの死傷に対して慰謝料は認められません。ただし、ペットが死亡したり、重い傷害を負った場合は、飼主の精神的苦痛に対し慰謝料が認められることがあります。人損と物損の慰謝料請求の違い人身事故の場合は、被害者本人に慰謝料が認められます。被害者が死亡した場合は、被害者本人のほか、遺族の慰謝料が認められます。被害者が重篤な傷害を負った場合にも、被害者本人の慰謝料に加え、その家族にも慰謝料が認められます(近親者慰謝料)。ペットは、基本的には「物」として扱われますから、ペット(人間でいえば被害者本人)の慰謝料は認められません。しかし、ペットは生命を持ち、家族の一員であるかのように扱われ、飼主にとってかけがえのない存在です。ペットが死亡もしくは重傷を負い、飼主が甚大な精神的苦痛を受けたときは、飼主に慰謝料が認められる場合があります。ペットが重傷を負った場合の慰謝料についての裁判所の判断ペットが重傷を負った場合の飼主の慰謝料請求について、次のように判示した裁判例があります。大阪地裁判決(平成27年8月25日)愛玩動物が不法行為により重い傷害を負ったことにより、当該動物が死亡した場合に近い精神的苦痛を飼主が受けたときは、飼主の精神的苦痛は、社会通念に照らし、主観的な感情にとどまらず、損害賠償をもって慰謝されるべき精神的損害として、飼主は、これを慰謝するに足りる慰謝料を請求することができるもとと解するのが相当である。被害車両が停止中に追突され、その衝撃で、被害車両に乗せられていた被害犬が、後部座席から前方のカーナビゲーションに衝突。事故後、被害犬は、継続的に全身の震えや食欲不振といった症状を示すようになった事案です。判決は、ペットが死亡するに至らなかった場合についても、飼主の慰謝料請求が認められる余地があることを認めました。ただし、本事案については、被害犬が飼主にとってかけがえのない存在になっていることは認められるとしつつも、本件事故により、被害犬が負った被害は、全身の震えや食欲不振といった症状にとどまり、飼主の被った精神的苦痛は、社会通念上、損害賠償をもって慰謝されるべきものとまでは言い難いとして、慰謝料請求は否定しました。ペットが重篤な傷害を負った場合に慰謝料を認めた裁判例として、先に紹介した名古屋高裁判決(平成20年9月30日)があります。ペットの葬儀費用ペットが死亡した場合の葬儀費用は、否定されることが多いようです。これは、ペットの葬儀をあげることが、社会通念上一般的とはいえないからです。火葬代を認めた裁判例(札幌高裁判決・平成19年9月8日)がありますが、相手が争わなかったからのようです。火葬代も葬儀費用と同様に、認められることは困難です。過失相殺交通事故でのペットの負傷につき、管理者の過失が問われ、過失相殺されることがあります。例えば、次のような場合です。ペットを放し飼いにしていた場合ペットにリードを装着せず、ペットが路上に飛び出した場合車に乗せていたペットに、ペット用のシートベルトを装着していなかった場合先に紹介した名古屋高裁判決(平成20年9月30日)は、過失相殺について、次のように認定しました。名古屋高裁判決(平成20年9月30日)飼主は、動物を乗せて自動車を運転する者として、事故によって予想される危険性を回避し、あるいは、事故により生じる損害の拡大を防止するため、犬用シートベルトなどの動物の体を固定するための装置を装着させるなどの措置を講ずる義務を負うとし、これを怠った点に過失を認めて、被害者の過失割合を1割と判断しました。まとめペットは、法的には「物」に分類され、交通事故で死傷した場合は、物損として扱われます。しかし、動物愛護法の施行等、ペットの社会的位置づけの変化にともない、今日では、ペットを単なる「物」として扱うことは相当でない、とする意識が高まっています。裁判例でも、物損における経済的全損の考え方を形式的に適用することはせず、ペットの時価額を超える治療費を認める例や、物損では通常認められない慰謝料を認める例があります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『交通事故損害賠償法 第2版』弘文堂 345~346ページ・『新版 交通事故の法律相談』青林書院 307ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 191ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 96~105ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 146~148ページ、246~258ページ
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  • 建物の損害賠償請求
    自動車の衝突事故による建物の修繕費・修理費用の損害賠償請求
    自動車が突っ込んで来て、家屋が損壊した場合の建物の修理費・修繕費は、必要かつ相当な範囲であれば、原則として、全額を損害賠償請求できます。自動車の修理費の損害賠償のように、車両時価額が上限となり、時価額を超える修理費は支払われない、ということはありません。ただし、修理・修繕により建物の耐用年数が延長する場合、延長される耐用年数分は、損益相殺により減額されることがあります。建物の修理費用は、原則として全額請求できる建物(不動産)と自動車(動産)とでは、修理費の損害賠償に対する考え方が異なります。自動車の修理費に対する損害賠償は、事故時の車両価格(車両時価額)が上限となります。車両時価額を超える修理費は、損害賠償を受けられません。自動車は動産です。修理費が車両時価額を上回るような場合は、修理に余計なお金をかけなくても、同等の中古車に買い替えることで損害を回復できるので、修理するより買替えの方が合理的というわけです。それに対して、建物は不動産ですから、自動車のように簡単に買替えはできません。建物の残存価値よりも修理・修繕費用が高額となるからといって、建物を取り壊し、そこに同価値の建物を建築したり、同等の中古物件を買って移設するといったことは、現実的ではありません。同価値の中古物件を買って、移転・引越しすればいい、というのは論外です。ですから、建物の損壊については、必要かつ相当な範囲の修理費であれば、基本的に修理費用が全額、賠償すべき損害として認められるのです。相当な範囲の修理であれば、原状回復がなされたにすぎない、と判断されます。経過年数を考慮して減額したり、建物の時価評価額を修理費用の上限とするようなことはありません。例えば、次のような裁判例があります。東京地裁判決(平成7年12月19日)修理により耐用年数が延長され、あるいは、価値の増加により被害者が不当利得を得たような場合であれば格別、相当な範囲の修理を施しただけの場合には、原状回復そのものがなされたにすぎないというべきであるから、これについて、改めて経過年数を考慮し、減価償却をなすのは相当ではない。前段で「修理により……被害者が不当利得を得たような場合であれば格別」とあるように、修理をしたことで耐用年数の延長や価値の増加があった場合は、事情が異なります。「被害者が不当利得を得たような場合」というと言葉は悪いですが、次のようなケースのことです。修理や建替で建物の耐用年数が延長すると損益相殺もある修理や建替えにより、耐用年数が延びたり、価値が増加したり、被害者が損害を上回る利益を得たと見なされる場合は、損益相殺により修理費・修繕費が減額されます。耐用年数の延長を不当利得と認定し損益相殺した例修理により耐用年数が延長されるして、損益相殺した例として、次のような裁判例があります。名古屋地裁判決(昭和63年3月16日)築26年の店舗兼住宅が自動車事故で損壊した事案で、修理により耐用年数が10年延長されると認定し、修理代から19%(1年あたりの減価率を1.9%とし、1.9%×10年=19%)減額しました。耐用年数の延長にともなう不当利得を否定した例「耐用年数の延長部分が不当利得になる」という加害者側の主張を否定した例として、次のような裁判例があります。神戸地裁判決(平成13年6月22日)大型貨物自動車が家屋に衝突した事故で、建物の修理費用につき、加害者から、修理工事にともなう耐用年数の延長部分が不当利得になる旨の主張がなされましたが、判決は「これを認めるに足る証拠はない」と否定しました。しかも、判決は、建物の修理費の他に、建物の修理が完了するまで居住した賃貸アパートの家賃・仲介手数料・駐車料金・退去時修理費を損害として認め、長年住み慣れた自宅を離れて約半年もの間アパート生活を余儀なくされ、高齢の居住者に生活の不便があったこと等の諸般の事情を考慮して、精神的苦痛に対する慰謝料を損害として認めました。新築建物の場合は評価損が認められることもある損傷した建物が、新築後間もない建物であった場合、修理によって安全面や機能面で問題がなくなったとしても、心理的要因から不動産の価値が低下するため、評価損が認められる場合があります。例えば、次のような裁判例があります。大阪地裁判決(平成27年8月27日)販売中の新築建売物件に自動車が衝突し、建物の通し柱の基礎部分に損傷が生じたり土台がずれたりし、壁など複数の箇所に亀裂が生じただけでなく、2階のバルコニーにもひび割れが生じた事案です。本件建物は、修理工事によって安全面や機能の点では特に問題はなくなったとみられるものの、そのような大規模な修理が必要な損傷を受けたということは、不動産の評価に当たり考慮されるべきであるし、心理的な要因からもその不動産の価値は低下したといわざるを得ない。新築建物の損傷という点を考慮した場合、その価値の低下は決して軽視することができず、本件建物の評価や修理費の額等を考慮して、270万円の評価損を認めました。まとめ建物の修理費用は、必要かつ相当な範囲で全額が損害として認められます。修理費用が建物の評価額を上回るからといって、修理費用の上限額が時価額となることはありません。ただし、修理や建替えにより建物の耐用年数が延長され、被害者が利益を得るような場合は、耐用年数の延長部分が不当利得とみなされ、損益相殺により、損害額から減額されることがあります。建物の修理費用のほかにも、修理期間中に借りたアパートの賃料等や、修理期間中の生活の不便に対する慰謝料が認められることもあります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 140~141ページ、237~241ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 84~85ページ・『要約 交通事故判例140』学陽書房 292~293ページ・『交通事故損害賠償の手引』企業開発センター 64ページ
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  • 店舗損壊
    自動車事故で店舗が損壊した場合の営業損害に対する賠償請求
    自動車事故で店舗が損壊したときは、店舗(建物)の修理費用のほか、修理のため休業を余儀なくされたことによる営業損害も、損害賠償請求できます。その他、商品損害、商品の仕入れのための交通費、営業再開のための広告費用なども、損害として認められる場合があります。営業損害の賠償請求自動車が衝突するなどして店舗が損壊し、その修理のため休業を余儀なくされた場合、店舗の修理期間中、営業できないことにより生じる損失を損害賠償請求することができます。ただし、営業損害の額については、妥当な休業期間であるとともに、かなり厳格な立証が求められます。営業損害の算定方法営業損害は、基本的には事故前3ヵ月の売上平均を基準とします。時期・季節により売上に変動がある場合は、同時期の3年分の売上平均を基準とするなどして算出する場合もあります。経費については、変動経費か固定経費かにより異なります。原材料の仕入原価など変動経費は、休業期間中は原材料の仕入もないと考えられるので損害から控除します。地代家賃など固定経費は、休業期間中も発生しますから営業損害として認められます。営業損害を認めた裁判例営業損害を認めた裁判例として、次のものがあります。大阪地裁判決(昭和59年3月15日)自動車が飲食店店舗に衝突し、店舗が破損したことで営業できなくなった事案です。事故前3ヵ月の売上から算出した1ヵ月分の平均売上げ173万836円から、原材料費の仕入原価や光熱費などの必要諸経費を控除し、所得率39.6%に相当する利益68万5,411円があったものとして、7日間の休業期間につき合計16万円5,438円を損害と認めました。東京地裁判決(平成23年11月25日)ペットショップ店舗に自動車が衝突した事案です。基礎収入額の算定について、季節による売上変動を考慮して、事故前年同時期の実績値にもとづき算定するのが相当であるとしつつ、さらに、事故発生年に売上が減少傾向にあったことを指摘して減額修正を行いました。横浜地裁判決(平成24年7月30日)開店直前の不動産業の店舗に、自動車が衝突した事案です。事故後も若干の売上を上げていたことから、想定された売上額と現実の売上額との差額を営業損害として認定しました。名古屋地裁判決(平成26年2月5日)不動産仲介業者の店舗に、自動車が衝突した事案です。不動産仲介業者は、営業活動が売上に直結しているわけではないこと、営業活動の成果が入金となって得られるまでには一定の期間を要すること等を理由として、民事訴訟法248条を適用して休業損害を認定しました。民事訴訟法248条(損害額の認定)損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。東京地裁判決(平成29年1月18日)自動車の衝突により、駐車場入り口ゲートや料金精算機などを損壊した事案です。駐車場の営業利益が時期によって変動があることから、過去3年間の同時期の売上合計額を日割し、1日あたりの変動経費を控除して算定した額を基礎に損害額を認めました。名古屋地裁判決(平成29年6月16日)基礎収入の算定方法について、最終所得額に固定経費にあたる租税公課、損害保険料、減価償却費、利子割引料、地代家賃等を加えて加算するのが相当としました。什器・商品などの損害自動車が店舗に飛び込んできたような場合には、店舗内の什器や商品も損傷することがあります。店舗内の什器や商品も、損害賠償の対象となります。什器の損害什器の損害については、事故発生時、すでに購入して相当の年月が経っていたり、什器管理が厳格になされていない等の理由から、損害の立証が困難なことがあります。裁判例では、什器の損害について、客観的に裏付ける証拠がないことを指摘しつつも、事故態様や建物の損傷状況から、什器に損傷が生じたと認め得るとして、民事訴訟法248条により相当額の損害を認定したものがあります(横浜地裁判決・平成26年2月17日)。商品の損害商品の損害については、次のような裁判例があります。岡山地裁判決・平成14年9月6日紳士服量販店に自動車が飛び込み、礼服、ジャケット、スラックスなどの商品が被害を受けた事案です。各商品についての得べかりし利益の額について、販売価格に粗利益率を乗じた額に仕入原価を加え戻したものに販売率を乗じたものとして商品損害額を算定しました。その他の損害営業損害や商品損害のほかにも、次のような損害が認められています。事故により店舗内の多数の商品が損傷し、海外への出張を余儀なくされたことにつき、出張交通費25万円を損害と認めました(東京地裁判決・平成13年8月28日)。店舗改修工事後、リニューアルオープンのための営業再開案内のハガキやチラシ配布の集客活動の費用34万円余りを損害と認めました(東京地裁判決・平成23年11月25日)。事故によりショーウィンドウが破損したままの状態で営業を係属したことにより生じた夜間警備費用を損害として認めました(岡山地裁判決・平成14年9月6日)。まとめ自動車が店舗に衝突するなどして、建物が損壊した場合、店舗や什器の修理費のほか、店舗修理のため休業を余儀なくされたことによる営業損害も賠償請求できます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『新版 交通事故の法律相談』学陽書房 249~250ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 142~145ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 86~87ページ
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  • 積荷の損害
    交通事故被害車両の積荷・積載物の損害額算定と損害賠償請求
    被害車両内に積載物があった場合、その積載物の損傷が、事故と相当因果関係のある損害として、賠償請求が認められることがあります。損害額の算定方法は、商品か被害者の携行品かによって異なります。裁判例を参考に、具体的に見ていきましょう。被害者の携行品が事故の衝撃で破損した場合被害車両内に置いてあったスマホやパソコンなどの積載物が事故で破損した場合、修理可能なら修理費を、修理不能なら時価相当額を、損害賠償請求できます。修理費が時価額より高額となる場合は、時価相当額が賠償額の上限となります。このことは、車両の修理費の損害賠償と同じです。では、損傷した積載物の時価額は、どうやって算定するのでしょうか?損傷した積載物の時価額の算定方法自動車であれば、事故車両と同等の中古車両の価格でもって車両時価額を証明できますが、多くの場合、かならずしも中古品の流通市場が確立されているわけではないので、同等の中古品で時価額を証明するのは困難です。そのため、購入からの経過期間に応じて、その物の状態もふまえ、購入価格から減価償却の方法により減額した額を時価とするのが一般的です。その際、購入年月や購入金額の証明が必要です。領収書等がなく、購入時期や購入価格がはっきりしない場合は、記憶にもとづいて、だいたいの購入時期や価格を申告したり、同種の商品の新品価格を示して証明することになります。ただし、記憶にもとづくおおよそのものに過ぎないため、そのまま認められるとは限りません。その一定割合を損害認定した裁判例があります(神戸地裁判決・平成27年1月29日)。購入年月や購入金額については、領収書等がない場合、クレジットカードの購入履歴や購入店で確認する方法もあります。楽器の損傷被害車両に積載していた楽器が損傷した場合、楽器については、「年数の経過によって価値が減少するものではない」という理由から、減額を免れる場合があります。名古屋地裁判決(平成15年4月28日)購入から1年半程度経過したバイオリンとバイオリン弓の破損につき、その価格は、その作者、音質、制作方法等で決められるものであり、年数の経過により価値が減少するものではないとして、購入価格(バイオリン700万円とバイオリン弓200万円の合計900万円)を損害と認定しました。PCのデータ復旧費用被害車両に積載していたパソコンが損壊し、データが毀損した場合に、パソコン本体の時価額に加え、データ復旧費用も損害と認められる場合があります。東京地裁判決(平成17年10月27日)被害車両に積載していたノートパソコンが損傷し、ハードディスク内のデータが毀損した事案において、ノートパソコン購入価格の半額とデータ復旧費用11万円余りについて、事故と相当因果関係のある損害と認めました。積載物の損害賠償請求が否定された例事故との相当因果関係が認められなければ、当然、損害賠償請求は否定されます。東京地裁判決(平成25年11月8日)交通事故によりパソコンが故障したとして、購入費・検査費を請求した事案です。検査をしたのが事故発生から2年7ヵ月経過した後であったため、事故後に故障した可能性が否定できないこと等を理由に、購入費・検査費用を損害と認めませんでした。名古屋地裁判決(平成29年5月12日)トランペットを収納したセミハードケースが、事故の衝撃で、車両の後部座席から床に落ちたことにより、トランペットに変形・陥没が生じたという被害者の主張に対し、被害者の説明する通りの積載方法、落下状況であったとしても、それでトランペットが損傷するのか明らかでないこと等を理由に、損害と認めませんでした。積荷が商品の場合の損害算定積載物が商品の場合は、損害の発生について、被害者の携行品の場合とは異なる考慮がなされます。被害者の携行品の場合は、使用するのに特段の支障が生じていなければ損害として認められませんが、積荷が商品の場合は、商品価値の毀損が考慮されます。具体的に見てみましょう。損傷の有無に関わらず積載していた全商品が損害となるケース事故による外観上の破損の有無に関わらず、積載していた商品の全部が損害と認められる場合があり得ます。大阪地裁判決(平成24年3月23日)事故により被害車両の冷凍冷蔵機能が停止した事案です。破損していないものを含めて、積荷の豆腐全部の品質を保持することができなくなったとして、荷主から請求された金額を積荷損害としました。大阪地裁判決(平成28年4月26日)カップ麺入りの段ボール製ケース1,344個が積載されていた貨物自動車が追突され、外箱に明らかな破損がなくとも、中身の商品が破損している可能性があることから、運送委託契約にもとづき、被害車両所有者が、積荷を全て買い取った上で廃棄処分したことは、事故との間に相当因果関係があるとし、全積荷の買取価格での賠償を認めました。商品の検査費用が商品価格を上回る場合の損害算定被害車両に積載していて破損しなかった商品も、販売するためには検査が必要です。その検査費用が、商品の価格よりも高額となる場合は、商品の価格に相当する金額が損害となります。大阪地裁判決(平成24年3月23日)エアコン60セットを積載していたトラックが衝突され、その一部が路上に散乱した事案です。再び販売ルートにのせるために必要となる検査等の費用が、積荷の時価額と破棄費用の合計額を大きく上回ることから、積荷の時価額と廃棄費用の合計額を損害と認めました。名古屋地裁判決(平成29年9月8日)エンジンポンプ376台を積載していたトラックが追突され、積荷が大きな衝撃を受けた事案です。商品を出荷し品質に責任を負うエンジン製造業者が、内部に不具合が生じている可能性を懸念し、積荷の全部について検査を求めたことは合理性があり、検査費用が、積荷の価格よりも高額となることから、積荷価格を損害賠償の対象として認めました。高額の積荷が事故により損壊した場合発生した損害を何でもかんでも請求できるわけではなく、相手に負担させることが公平といえる範囲でなければ認められません。事故で高額の積荷が損壊し、損害額が著しく高額になった場合、このことを社会通念から通常予見できないときには、「特別な事情によって生じた損害」として、加害者は損害賠償責任の全部または一部を負わないことになります。民法の規定する損害賠償の範囲加害者が、被害車両の積荷に関する損害賠償の責任を負うか、どの範囲で責任を負うかは、一般的には予見可能性の問題とされています。民法は、損害賠償の範囲について、次のように定めています。民法416条(損害賠償の範囲)債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。民法416条は債務不履行についての規定ですが、不法行為にも類推適用されます。第1項は、損害の範囲の基本についての規定です。損害賠償の範囲は、通常発生する範囲内の損害(通常損害)で、これが事故と相当因果関係にある損害のことです。特別の事情によって生じた損害(特別損害)は、原則的に、加害者は損害賠償の責任を負いません。相当因果関係を超えた損害となるからです。ただし、第2項が規定するように、特別損害であっても、当事者がその特別の事情を予見すべきであったときは、被害者は損害賠償を請求できます。これも、事故と相当因果関係のある損害に含まれることになります。民法416条2項は、2017年の民法一部改正の際に改正され、2020年4月1日に施行されました。改正前は「当事者がその事情を予見し、又は予見することができたとき」が要件だったのですが、改正後は「当事者がその事情を予見すべきであったとき」となりました。「予見していたとき」または「予見できたとき」から、「予見すべきであったとき」と変わりました。この「予見」に関する要件は、もともと、債務者が現実に予見していたかどうかという事実の有無を問題とするものではなく、債務者が予見すべきであったかどうかという規範的な評価を問題とするものです。このことが条文上明確でないとの問題があったことから、改正により、予見可能性が事実のレベルの問題ではなく、規範のレベルの問題であることを明らかにしたのです。したがって、従来の解釈論・判例法理に変化をもたらすものではありません。参考:法制審・民法(債権関係)部会資料 79-3 民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案の原案(その1)補充説明 12ページ1億円を超す積荷の損害賠償を認めた裁判例被害車両の積荷が高額な場合、加害者側から、特別事情による損害であり、予見することができなかったから、賠償義務を負わないとの主張がなされることがあります。しかし、次のように1億円を超す積荷の損害賠償を認めた裁判例もあり、積荷が高額というだけでは、予見可能性がなく賠償義務を負わないということにはなりません。大阪地裁判決(平成23年12月7日)トラックの荷台に1億円を超す精密装置が積載されていた事案で、「積載物が超高額品であることもあり得る」「一般人の社会通念から通常予見できないものということはできない」として、当該積荷の新規製作費用と輸送費の合計1億円余について、損害賠償責任を負うとしました。高額品を積載している車両もあり得るわけで、そういう車両に衝突すると著しく高額の損害となることは、自動車を運転する以上、予見すべきなのです。なお、次のような場合は、特別損害と認められ、加害者が損害賠償義務を負わないことがあります。積載量オーバーの積荷の損傷積載量を超過して積載されていた積荷が事故により破損したときは、積載量オーバー分については特別損害であり、加害者は損害賠償義務を負いません。仙台地裁判決(平成8年1月26日)事故により、積荷の10トンの石鹸材料が損傷した事案で、積載量オーバー分については特別損害であり、加害者はこれを予見できなかったとして、被害車両の所有者が荷主に賠償した一部に限って、加害者の損害賠償責任を認めました。まとめ事故により被害車両の積載物が損傷した場合、修理可能であれば修理費を、修理不能であれば時価相当額を、損害賠償請求できます。修理費は、時価額が上限となります。なお、被害者の携行品か、商品かによって、損害算定が異なります。商品の場合は、商品価値の毀損が考慮されます。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 217~218ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 80~83ページ・『Q&Aと事例 物損交通事故解決の実務』新日本法規 118~119ページ、229~236ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 187~190ページ・法制審議会 民法(債権関係)部会資料 79-3 民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案の原案(その1)補充説明 12ページ・『口語民法』自由国民社 第416条解説部分
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  • 着衣・所持品の損害賠償
    交通事故で被害者の着衣・所持品が損傷したときの損害賠償請求
    交通事故で被害者の着衣や所持品が損傷した場合、その損害も賠償請求できます。損害額は、修理費か時価額の低い方の額とするのが本来ですが、着衣等は修理費の算定が困難であるため、時価額をもって損害額とすることが一般的です。着衣や所持品の損害額の算定方法被害者の着衣や所持品(ヘルメット、コート、シャツ、ズボン、手袋、靴、腕時計、バッグなど)の損傷についても、損害賠償請求できます。こうした損害は、特に、被害者がバイクや自転車に乗っていて事故が発生したときに、多く見られます。被害車両内に積載していたスマホやパソコンが損傷したときの損害賠償はこちらをご覧ください。身体機能を補完するもの(義肢、歯科補綴、義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖など)の損傷は人損扱いとなり、自賠責保険の支払い対象です。着衣や所持品の損害額は、本来なら経済的全損の考え方にもとづき、修理費と時価額を比較して判断することになりますが、個々の着衣や所持品について修理費を算定することは困難です。しかも、着衣類は、たいてい全損となっています。そのため、実際の保険会社との交渉や訴訟においては、修理費が問題となることは少なく、時価額をもって損害額とすることが多いようです。時価額については、着衣や所持品の時価額は、車両のように同等の中古品の価格をもって証明することが困難なので、購入してからの経過期間に応じて、その物の状態もふまえ、購入価格から減価償却の方法により、減額した額を時価額とするのが一般的です。損害を立証する証拠資料損害額を証明する証拠資料として、購入年月・購入金額、損傷写真が必要です。写真は、物品の全体の写真に加え、着衣であればタグ、所持品であれば品番・型番などが分かる部分(保証書や取扱説明書を利用する場合もあります)の写真も撮っておくべきです。高級腕時計や宝飾品などの高額動産については、購入時期・購入金額の分かる証拠が必要です。領収書等を保管していない場合は、クレジットカードの購入履歴や購入店で確認する方法もあります。購入価格・購入時期を証明する領収書等がない場合日常的に身に付けている物品は、高額なものでない限り、普通は領収書等を保管していないでしょう。正確な購入金額や購入時期を証明することは困難です。そういう場合は、記憶にもとづいて、だいたいの購入時期や価格を申告したり、同種の商品の新品価格を示して証明することになります。なお、着衣類や所持品の損害額については、領収書等によって正確な購入金額や購入時期を立証することができなくても、事故によって損傷し損害が発生した事実が認められる場合には、民事訴訟法248条にもとづき、裁判所により相当な損害額が認定される可能性があります。民事訴訟法248条(損害額の認定)損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。次のような裁判例があります。東京地裁判決(平成25年3月29日)被害者が事故時に身に付けていた着衣(ダウンジャケット、トレーナーのズボン)とバッグの損害額について、次のように判断しました。各物品の銘柄、購入時期、購入価格を認定するに足りる明確な証拠はないが、日常身に付けている物品について、領収書等を保管していないのはやむを得ないことであって、各物品の事故当時の時価額を立証することは困難というべきである。各物品は、購入してから相当程度時間が経過しているものと推認されることを考慮し、民事訴訟法248条の趣旨に照らし、各物品の損傷に係る損害は1万5,000円と認める。東京地裁判決(平成24年9月28日)被害者が事故時に身に付けていたTシャツ、ズボン、靴、時計の損害額について、次のように判断しました。これらの購入時期・購入価格を客観的に把握することができる証拠は提出されていない。しかしながら、日常身に付けている着衣等について、領収書等を保管していないことはままあることであり、購入時期・購入価格を立証することは通常困難であることから、民訴法248条により、着衣等の損害として1万円を認めるのが相当である。まとめ交通事故で着衣や所持品を損傷した場合、厳密には修理費と時価額を比較して損害額を判断しますが、通常、修理費は問題とせず、時価額をもって損害額と認定します。修理費の算定が困難であり、全損となっていることが多いからです。時価額については、購入から事故時点までの経過期間を考慮し、その物の状態もふまえて、購入価格から減価償却の方法により減額した額とすることが一般的です。なお、購入価格や購入時期を領収書等で証明できないことも多いため、訴訟では、民訴法248条にもとづき、裁判所が相当な損害額を認定する場合があります。交通事故による被害・損害の相談は 弁護士法人・響 へ弁護士法人・響は、交通事故被害者のサポートを得意とする弁護士事務所です。多くの交通事故被害者から選ばれ、相談実績 6万件以上。相談無料、着手金0円、全国対応です。交通事故被害者からの相談は何度でも無料。依頼するかどうかは、相談してから考えて大丈夫です!交通事故の被害者専用フリーダイヤル 0120-690-048 ( 24時間受付中!)無料相談のお申込みは、こちらの専用ダイヤルが便利です。メールでも無料相談のお申込みができます。公式サイトの無料相談受付フォームをご利用ください。評判・口コミを見てみる公式サイトはこちら※「加害者の方」や「物損のみ」の相談は受け付けていませんので、ご了承ください。【参考文献】・『プラクティス交通事故訴訟』青林書院 218~219ページ・『物損交通事故の実務』学陽書房 78~79ページ・『交通賠償のチェックポイント』弘文堂 189~190ページ
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