LAC基準とは?弁護士保険・弁護士費用特約の保険金支払基準

LAC基準とは弁護士保険の支払基準

LAC基準(ラック基準)とは、日弁連リーガル・アクセス・センター(通称LAC)が協定損保会社と協議のうえで定めた「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」です。

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LAC基準とは、弁護士保険の保険金(=弁護士費用)支払基準です。

 

LAC基準を上回る弁護士費用は、弁護士保険から支払われず、依頼者の負担となるので、弁護士保険を利用する場合は、弁護士費用が LAC基準に対応した弁護士事務所を選ぶことが大切です。

 

LAC基準について、詳しく見ていきましょう。

 

LAC基準とは? 弁護士保険を利用するときはココに注意!

LAC基準(ラック基準)とは、日弁連リーガル・アクセス・センター(通称:LAC)が定めた「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」のことです。

 

日弁連LACが定めた基準なので、LAC基準といいます。

 

保険金の支払基準のほかにも、契約書や請求書の統一書式も定めているので、それを含めてLAC基準という場合もあり、保険金の支払基準を特にLAC報酬基準と呼ぶこともあります。

 

弁護士報酬は、弁護士が依頼者と協議の上で決めるのが原則ですが、弁護士保険の運用では、日弁連LACが、協定保険会社(日弁連と協定している保険会社)と協議の上で、保険金(=弁護士費用)の支払基準を定めています。

 

これは、保険会社が、保険事務処理(保険金=弁護士報酬の支払い)を円滑に行えるようにするためです。

 

日弁連は、協定保険会社の扱う弁護士保険を「権利保護保険」と位置づけています。権利保護保険と一般的な弁護士保険の違いについてはこちらをご覧ください。

 

協定保険会社と弁護士は、LAC基準を尊重する

弁護士保険(権利保護保険)の運用において、協定保険会社と弁護士は、LAC基準を尊重することになっています。
(東京弁護士会「活用してみませんか?権利保護保険」LIBRA2014年6月号 5ページ)

 

つまり、協定保険会社は、LAC基準を尊重して弁護士保険の保険金(=弁護士費用)を支払い、弁護士も、協定保険会社の弁護士保険を利用する事案(LAC事案といいます)を受任する場合は、LAC基準を尊重して弁護士費用を請求する、ということです。

 

LAC基準を超える弁護士費用は依頼者の負担に

ただし、LAC基準の尊重は、義務づけではありません。

 

そればかりか、LAC基準において、依頼者の同意があれば、LAC基準を超える報酬契約をしても差し支えないとされています。もちろん、この場合、LAC基準を超える部分は弁護士保険から支払われず、依頼者の負担となります。

 

そのため、LAC基準を上回る弁護士費用の請求がされ、保険会社とトラブルになることがあるのです。

 

特に、協定保険会社以外の保険会社(日弁連と協定していない保険会社)は、LAC基準に拘束されませんから、弁護士保険の保険金(弁護士費用)の請求をめぐり、トラブルが起きやすいようです。

 

日弁連リーガル・アクセス・センターの「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」(LAC基準)に、こんな記載があります。

 

この基準は弁護士報酬そのものを算定するための基準というわけではなく、あくまでも保険金支払に関して問題がない範囲の基準を示しているにすぎない。

 

したがって、個々の弁護士または弁護士法人が定める報酬基準に従い、この基準を超える報酬契約をすることは差し支えないが、この基準により算定される保険金を超える報酬に関しては、保険金としてではなく事件依頼者の個人的な負担となることが原則となるために、その点を依頼者個人に対して契約書等において確認をすることが必要である。

 

(日弁連LAC「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」前文より)

 

LAC基準に対応した弁護士事務所か、事前の確認が大切

依頼者が弁護士保険を利用する場合は、LAC基準に合わせて弁護士費用を請求するのが一般的ですが、そうしない弁護士事務所もあります。LAC基準を上回る弁護士費用は、依頼者の負担となります。

 

弁護士保険を利用して弁護士に依頼するときは、その弁護士事務所が LAC基準にもとづいて報酬を算定するかどうか、事前に確認することが大切です。

 

 

LAC基準に完全対応なので安心。弁護士保険を利用した解決実績多数。しかも、弁護士費用の請求・支払いは弁護士事務所と保険会社との間で行いますから、依頼者が、いったん弁護士費用を立て替えて、あとで保険会社へ請求する負担もありません!

弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準

「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」(LAC基準)について、具体的に見ていきましょう。金額は、すべて消費税別の額です。

 

弁護士報酬には、次のものがあります。

  1. 法律相談料
  2. 着手金
  3. 報酬金
  4. 時間制報酬(タイムチャージ)
  5. 手数料
  6. 日当

 

以上の弁護士報酬と別に、実費等が支払われます。実費等とは、「収入印紙代、郵便切手代、謄写料、交通費、通信費、宿泊費、保証金、供託金及びこれらに準ずるもので、弁護士が委任事務処理を行う上で支払の必要が生じた費用」です。

 

LAC基準の具体的な内容説明は、日弁連リーガル・アクセス・センターが出している次の文書を参考にしています。

  • 「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」(2014年3月12日)
  • 「時間制報酬に関する留意事項」(2014年3月12日)
  • 「弁護士保険(権利保護保険)制度における日当支払基準」(2014年3月12日)

 

なお、LAC基準は、おおむね日弁連の旧「報酬基準」に準じる内容です。

 

①法律相談料

法律相談料は、1時間あたり 1万円超過15分ごとに 2,500円を請求できます。

 

出張相談

出張相談については、「相談者が障害・疾病・高齢等の原因で移動困難な場合で緊急性がある等、特に出張相談を実施すべき事情があると認められる場合に、出張相談を実施することができる」とし、支払い基準を次にように定めています。

 

  • 法律相談に要する時間が1時間以内のとき、日当(移動に要する対価)を別に要求しないこととして 3万円。超過15分ごとに 2,500円。
  • 移動に要する経費は、別に請求できる。
  • 上記基準によらず、通常の法律相談料(1時間以内、1万円)と共に、日当を請求することもできる。

 

②着手金

着手金とは、「委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて、その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価」です。

 

着手金は、原則として、依頼時の資料により計算される「賠償されるべき経済的利益の額」を基準とし、以下のように算定します。

 

経済的利益の額 着手金
125万円以下の場合 10万円
300万円以下の場合 8%
300万円を超え3,000万円以下の場合 5%+9万円
3,000万円を超え3億円以下の場合 3%+69万円
3億円を超える場合 2%+369万円

 

事件受任時において、事件の種類、委任事務処理の難易等の事情により、上記の金額が不相当であると認められる場合は、受任弁護士と依頼者が協議の上、30%の範囲内で増額できます。

 

なお、経済的利益の額の算定にあたり、次のものは控除します。

  • 既払金
  • 保険会社からの事前支払提示額
  • 簡易な自賠責保険の請求(損害賠償請求権の存否、その額に争いがない場合の請求)により支払が予定される額

 

着手金算定の基礎となる経済的利益の範囲についてはこちらをご覧ください。

 

支払基準では経済的利益の額に対して「経済的利益の5%+9万円」などの表記になっていますが、経済的利益の額を区分し、次のように表すこともできます。

 

別表①

経済的利益の額 着手金

300万円以下の部分
(125万円以下は一律10万円)

8%
最低額10万円

300万円を超え3,000万円以下の部分 5%
3,000万円を超え3億円以下の部分 3%
3億円を超える部分 2%

 

例えば、経済的利益の額が5,000万円の場合で着手金を計算してみましょう。

 

支払基準にもとづき計算すると、経済的利益の額が「3,000万円を超え3億円以下の場合」に該当しますから、

5,000万円×3%+69万円=219万円

 

別表①にもとづき計算すると、

300万円×8%=24万円
2,700万円×5%=135万円
2,000万円×3%=60万円
合計 219万円

 

「+9万円」「+69万円」「+369万円」とは?

経済的利益の額に応じて、着手金は「5%+9万円」「3%+69万円」「2%+369万円」となっています。この「+9万円」「+69万円」「+369万円」は何かというと、こういうことです。

 

経済的利益の額が「3,000万円を超え3億円以下」の場合で考えてみましょう。着手金は「3%+69万円」です。

 

「3,000万円以下の部分」については、

  • 300万円×8%
    =300万円×(3+5)%
    =300万円×3%+300万円×5%
    =300万円×3%+15万円
  • 2,700万円×5%
    =2,700万円×(3+2)%
    =2,700万円×3%+2,700万円×2%
    =2,700万円×3%+54万円

2つを合わせると、
3,000万円×3%+69万円

 

「3,000万円を超え3億円以下の部分」は 3%をかけて計算しますから、経済的利益の額が「3,000万円を超え3億円以下」の場合、着手金は3%+69万円となるのです。

 

他の場合も同様です。

 

③報酬金

報酬金とは、「委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて、その成功の程度に応じて受ける委任事務処理の対価」です。

 

報酬金は、弁護士の委任事務処理により「依頼者が得られることとなった経済的利益の額」を基準とし、以下のように算定します。

 

経済的利益の額 報酬金
300万円以下の場合 16%
300万円を超え3,000万円以下の場合 10%+18万円
3,000万円を超え3億円以下の場合 6%+138万円
3億円を超える場合 4%+738万円

 

委任事務の終了時において、委任事務処理の難易等の事情により、上記の金額が不相当であると認められる場合は、受任弁護士と依頼者が協議の上、30%の範囲内で増額できます。

 

また、同一弁護士が引き続き上訴審を受任したときの報酬金は、特に定めのない限り最終審の報酬金のみを受けます。

 

なお、経済的利益の額の算定にあたり、次のものは控除します。

 

  • 既払金
  • 保険会社からの事前支払提示額
  • 簡易な自賠責保険の請求により支払が予定される額

 

報酬金算定の基礎となる経済的利益の範囲についてはこちらをご覧ください。

 

支払基準では経済的利益の額に対して「経済的利益の10%+18万円」などの表記になっていますが、経済的利益の額を区分し、次のように表すこともできます。
別の書き方をすれば、次のようにも表せます。

 

別表②

経済的利益の額 報酬金
300万円以下の部分 16%
300万円を超え3,000万円以下の部分 10%
3,000万円を超え3億円以下の部分 6%
3億円を超える部分 4%

 

例えば、経済的利益の額が5,000万円の場合で報酬金を計算してみましょう。

 

支払基準にもとづき計算すると、経済的利益の額が「3,000万円を超え3億円以下の場合」に該当しますから、

5,000万円×6%+138万円=438万円

 

別表②にもとづき計算すると、

300万円×16%=48万円
2,700万円×10%=270万円
2,000万円×6%=120万円
合計 438万円

 

「+18万円」「+138万円」「+738万円」とは?

経済的利益の額に応じて、報酬金は「10%+18万円」「6%+138万円」「4%+738万円」となっています。この「+18万円」「+138万円」「+738万円」は何かというと、着手金のところで計算したのと同様で、こういうことです。

 

経済的利益の額が「3,000万円を超え3億円以下」の場合で考えてみましょう。報酬金は「6%+138万円」です。

 

「3,000万円以下の部分」については、

  • 300万円×16%
    =300万円×(6+10)%
    =300万円×6%+300万円×10%
    =300万円×6%+30万円
  • 2,700万円×10%
    =2,700万円×(6+4)%
    =2,700万円×6%+2,700万円×4%
    =2,700万円×6%+108万円

2つを合わせると、
3,000万円×6%+138万円

 

「3,000万円を超え3億円以下の部分」は 6%をかけて計算しますから、経済的利益の額が「3,000万円を超え3億円以下」の場合、報酬金は6%+138万円となるのです。

 

他の場合も同様です。

 

④時間制報酬(タイムチャージ)

時間制報酬とは、「1時間当たりの委任事務処理単価にその処理に要した時間(移動に要する時間を含む)を乗じた額により計算される弁護士報酬」です。

 

1時間 2万円
1事件 所要時間30時間(時間制報酬総額60万円)が上限

 

所要時間が30時間を超過する場合は、依頼者・保険会社と別途協議します。

 

1事件30時間の上限は、多少複雑な事案で交渉から訴訟に移行したとしても、30時間あれば解決に至るだろうという判断です(参考:東京弁護士会「活用してみませんか?権利保護保険」)

 

同一事故で、時間制報酬(タイムチャージ)方式と着手金・報酬金方式は、併用できません。委任契約の段階で、いずれかを選択することになります。

 

時間制報酬(タイムチャージ)方式が導入されたのは、少額事件でも弁護士が受任しやすくするためです。

 

例えば、訴額が10万円で、解決まで10時間を要した場合を考えてみましょう。

 

着手金・報酬金方式では、経済的利益の額が10万円ですから、着手金10万円と報酬金1万6,000円で、報酬は11万6,000円です。

 

タイムチャージ方式では、1時間2万円で解決まで10時間ですから、報酬は20万円となります。

 

⑤手数料

手数料とは、「原則として1回程度の手続または委任事務処理で終了する事件等についての委任事務処理の対価」です。

 

手数料には、次の4つがあります。

 

簡易な自賠責保険の請求手数料

損害賠償請求権の存否、その額に争いがない場合の自賠責保険への請求です。

 

経済的利益の額 手数料
150万円以下の場合 3万円
150万円超の場合 2%

 

証拠保全の手数料

20万円+着手金の10%相当額

※着手金とは別に受けることができます。

 

法律関係の調査の手数料
1件

5万円
(特に調査に労力を要する場合は、10万円以下の範囲で増額)

 

内容証明郵便作成の手数料
弁護士名を表示しない場合 2万円

弁護士名を表示する場合
(作成内容の難易により決定)

3~5万円

 

⑥日当

日当とは、「弁護士が、委任事務処理のために事務所所在地を離れ、移動によってその事件等のために拘束されること(委任事務処理自体による拘束を除く)の対価」です。

 

日当に対して給付される保険金の基準は、移動による合理的拘束時間(乗継等の拘束時間を含む)の区分に応じ、次の額です。

 

合理的拘束時間 日当
往復2時間を超え 4時間まで 3万円
往復4時間を超え 7時間まで 5万円
往復7時間を超得る場合 10万円

まとめ

弁護士保険の保険金(=弁護士費用)支払基準をLAC基準(ラック基準)といいます。LAC基準は、日弁連LAC(リーガル・アクセス・センター)が、協定保険会社と協議の上で定めたものです。

 

ただし、LAC基準は、弁護士報酬の算定基準ではなく、弁護士保険の保険金支払いに関して問題がない範囲の基準を示したものに過ぎないため、弁護士が独自の報酬基準で契約することもできます。その場合、LAC基準を上回る報酬部分は、依頼者の負担となります。

 

弁護士保険を使って弁護士に依頼するときには、弁護士費用がLAC基準かどうか、事前に確認が必要です。

 

 

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【参考文献】
・日弁連「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」(2014年3月12日)
・日弁連「時間制報酬に関する留意事項」(2014年3月12日)
・日弁連「弁護士保険(権利保護保険)制度における日当支払基準」(2014年3月12日)
・東京弁護士会「活用してみませんか?権利保護保険」LIBRA 2014年6月号

 

 

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公開日 2021-06-04 更新日 2023/03/18 13:28:15